2010年12月22日水曜日

NCAA Div 1にMarquetteが新加入

さて、オフにあったNCAA Men's Lacrosseの新しい動き。中西部の北、シカゴのちょい北、ミシガン湖の西側のウィスコンシン州のミルウォーキーにある、Marquette(ーケットと発音)大学が、新たに男女のラクロス部を立ち上げ、2012年からNCAAのDiv 1、Big Eastに参加することを決めた。先日Marylandを辞職したHCのDave Cottleがコンサルタントとして雇われ、急ごしらえで施設/インフラや、選手集め、組織作りを進めて行くとのこと。

本件、NCAAへの新加盟は珍しいことに加え、これまで完全に水面下で勧められており、全くリークが無かったこともあり、USラクロス界というか、ファンの間で結構な話題になっている。いくつか記事やフォーラムで議論になっている点、及び僕自身が思ったことを交えて紹介。

●記事
●IL編集部のコメント
●学校の発表記事

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1. Marquetteが入る事の意味合い

●Marquetteは商学部系が強い、小規模の大学。一方で、バスケが有名で、ランキング20位前後にちらほら顔を出すそこそこの強豪。現Miami HeatでLeBronと双璧を成すDwyane Wadeも出身。スポーツ界での名門校が新たにラクロスに加入する事の意味は大きい

●ちなみに、ユニフォームが非常にユニークで印象的。青と水色と黄色の色を縞で組み合わせてサイドにポイントで入れている。テレビでバスケの試合を見てても一発で認識可能。ラクロスのユニフォームになったらこれはこれで結構個性的でカッコいいんじゃないかと思う

2. ラクロスそのものの成長を象徴

●今回の意思決定の中で印象的なのが、Marquette大学の首脳、特に体育会部門の人たちが、ビジネス(仕事)として大学の体育会の成長戦略を考える上で、合理的に導かれた意思決定であるという点。大学をもっと成功させたい→スポーツも力を入れて、成功させたい→だとするとラクロスは当然今後外せない、というロジックが裏にある。そして、アメフトでも野球でもアイスホッケーでもレスリングでもなく、ラクロスを選んだという点

●高校レベルでラクロスが爆発的に広がりつつある中、NCAA Div 1の男子の受け皿が足りていないという明確な需給ギャップが生じており、そこを突きに行くという意図。ラクロスで成功する事で、より多くの人々のアテンションやお金、そして学生を集められるという読み。それだけアメリカのラクロスが成長しているという事を表している

●ラクロス経験者のスタッフが、ラクロス愛に基づいて、「ラクロス大好きだからやりましょうや!」と想い先攻でボトムアップで成し遂げたケースではないと言うこと。それだけこのスポーツに可能性があるということ表しているとも言える

3. 中西部のラクロスの隆盛を如実に象徴

●ここ数年、シカゴやその北のウィスコンシン、そしてその西のミネソタと言った、所謂Midwest(中西部)の北のエリアでラクロスが草の根レベルで急速に熱くなりつつある。 MLLのChicago Machine(残念ながら今年で解散になってしまったが)やNLLのMinnesota Swarmなどの影響もあり、特にミネソタのインドアを中心に、ジュニア、高校で競技人口/ファン層が広がりつつある。女子の新「帝国」Northwesternもその例の一つ(以前僕がNorthwesternのKellogg Business Schoolに在学していた際のブログでの紹介記事

●また、男子でもNotre DameやOhio State、そして元Cornell HC Jeff Tambroniが今年電撃移籍したPenn Stateなど、五大湖寄りというか、ちょっと内陸の、必ずしもこれまでのラクロスの盛んな東海岸沿い(NY, Boston, Philadelphia, Washington DC, Maryland, Carolina)ではない、もうちょい西側のエリアでのラクロスが育ちつつあるのをいろんなニュースから感じられる。それをもう一段勢いづける出来事

●ちなみに、(住んでみてつくづく痛感させられるが)アメリカの強みは、日本と違ってエリアによってほぼ別の国のように分かれている点。且つそれらの「国」が結構でかいという点。つまり、アメリカという国の中に、5つか6つの大きな独立国家が存在しているようなイメージ。そういう見方をすると、実は伝統的に見えるアメリカのラクロスもほんの東海岸沿いという一つのエリアの話であって、中西部や西海岸、南部やテキサスといったエリアは依然完全なホワイトスペース、成長余地満載の新市場ということになる。ラクロスが未だに育ち続け、それでも尚まだ飽和する事無く成長余地を感じさせるのにはそういった事情が大きい

(●ちなみに完全に余談だが、この点はラクロスやスポーツに限らず、あらゆる企業活動/経済活動として市場を見た時に共通する。同じDevelop"ed" countryでありながら、日本と若干違い、成長のパワーや若い息吹をそうは言ってもそこそこ感じられるのにはこの辺の国としての容れ物のでかさがあると感じる。加えて人口も増えてるし、移民もいっぱい入って来てるし。マクロ経済的にそこまで閉塞していないという。)

4. Big Eastの意味合い

●Syracuse, Notre Dameという強豪2チームが既にいる。ここにMarquetteが新たな強豪として食い込んでくれば、確かにリーグとしてはもっと面白くなるし、レベルも上がってくる可能性がある

5. 2012年スタートというアグレッシブなスケジュール

●ということは、ここから速攻でリクルーティングを開始し、初年度の選手たちをかき集めなくてはならない。Quintは恐らく他校の現1年生をヘッドハントして、トランスファーで引き抜くと言う力技も起こるはずだと指摘

●一方で、有名校が気合いを入れてコミットして、本気で金も突っ込んで第一線で戦いに行くという新しい動き。選手の中には下級生からチームの中心としてDiv 1で試合出来ることを目論み、ヤマっ気のある選手たちが集まってくる可能性もある。そして実際にそうなるとすると、彼らが最上級生になった時にはそれなりに強いチームになっている可能性もある

6. 新しいチームの強み

●100うん十年という歴史があるチームも多い中、新しくゼロからラクロスチームを立ち上げることのメリットは意外と大きいかも知れない。無駄な伝統もうるさいOBも縛りも無い(逆に今これに苦しんでるのがJohns Hopkins?)。昔ならではのステレオタイプな練習やジンクスとも無縁。現代のラクロスの最先端に基づき、ゼロから最適解を設計出来る。施設、組織、選手の選び方、コーチの人選。結果として最もcutting edgeで、最も今のラクロスにフィットしたチームが突然現れる可能性もある。

●特に、Dave Cottleが持っている理想像をMarylandでの学びをベースに体現してくるとなると、しかも学校の戦略的コミットメントと資金の下本気で具体化してくるとなると、結構なものが出来てくる可能性がある

●実際に女子のNorthwesternはそれで全米制覇どころかそのまま5連覇の上、US代表の最大の輩出チームとなった上、女子ラクロスの戦い方のパラダイムそのものを変えてしまった。しかも彼女達の場合、1年生の時にキャンパスで掻き集めたラクロス素人も含めてそれを成し遂げているのがまた偉業

●また、個人的に思い出されたのが、僕が高校時代に福岡でバスケをやっていた頃の話。当時福大大濠や九州産業、福岡商業、東福岡といった強豪校の陰に隠れて、ひっそりと無名の福岡第一高校のバスケ部が立ち上がった。1年目は近くの学区の「そこそこ」上手い子を何人か集めていただけでさして脅威を感じなかったが、既存の高校バスケのセオリーを超越した/無視したアグレッシブなチーム作りで、直後に例の(後に年齢詐称問題が取りざたされた)セネガル人留学生達を掻き集め始め、10年もしない2004年に全国制覇を成し遂げてしまった。「俺たち新興チームで実績も歴史も無いんだから、何かぶっ飛んだ打ち手打たないと勝てっこねえっしょそもそも」、という開き直りは時としてbreakthroughを生み得る

7. Michiganの先を超してしまった

●東大の兄弟チーム、我らがMichiganを一気に追い越しての意思決定/発表という点も興味深い。これまでラクロスコミュニティでも、MCLA(非NCAA)で敵無しの連覇街道を走っていたMichiganのNCAA入りの噂はここ数年絶えず囁かれていた。現にHCのJP始め関係者もそれに向けて長期的に動いていると想像するし。(一部、来年の1月くらいに発表になるんじゃないかとも噂されているっぽい。)「次の加入はMichiganだね、いつだろうね」という空気の中、まさかの伏兵の登場。結構な衝撃

●Michiganとの違いは、イニシアチブの主体がラクロス関係者ではなく、大学のトップ、体育会のトップだったという点。Michiganは逆にJPが大きく伝統的な大学の上層部を説得しなくては行けないというチャレンジがある中、その相手自身が自ら動いているという点

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などなど。
いずれにせよ、Marquetteという、小さいとは言えそれなりに一般的な知名度のある学校がNCAAに新たに加わる事は、ラクロスにとっても、ファンにとっても、高校生やキッズの選手たちにとっても、hopefully学校にとってもいい話であることは間違い無い。長期的に見れば、チーム間、リーグ間の勢力図を変えて行く可能性もある。こうやって新しい流れが生まれ、スポーツが成長して行くのを見るのは非常に嬉しい。

いたる@13期

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