2010年7月5日月曜日

Team Canada vol. 1 そもそも何で強いの?

さて、WLCに向けての(恐らく)最後の記事。僕の一番大好きなチーム、Team Canadaの紹介。見所やら背景やら、いくつか知ってる範囲で語らせいて頂きます。2回に分けて。

まずはロースターのリンクチームHP

一発目の今回は、話をよりシャープにするために、大きな一つの「そもそもな疑問」から始めさせて頂きたいと思う。それは、「なんでCanadaってWorld Lacrosse Championshipで強いの?」という純粋な疑問。もちろん、LacrosseはCanadaにとってIce Hockeyに次ぐ国技。でも、やってるのはあくまでIndoor (Box) Lacrosse。Fieldは正直盛んじゃない。

そして、前回のNLLの記事でも触れたが、同じラクロスでありながら、IndoorとOutdoorは正直ゲームとして大きく異なる。SoccerとFootsalぐらい、いやもしかしたらもっと極端に違う。必要な個人技や戦術にも大きなズレが出てくる。

そんな中、Field Lacrosseの本家本元は当然のことながらUS。NCAAもMLLも全部Field Lacrosse。なのに、なぜ、本来のルーツではないFieldでCanadaが過去にUSに善戦し、そして前回優勝出来たのか?今回もUS相手に善戦、場合によっては勝利すると言われているのか?Gaitがいたから、とか、John Grant Jr.がいるから、という表面的で属人的な理由ではなく、その裏にある構造的な理由を考えてみる。

よく言われているのは大きく5つ。
①インドア/アウトドアの違いを抜きに、そもそも純粋にラクロスが上手い
②インドア主体であるが故の強み
③スタイルの違い/相手にとってのやり難さ
④そうは言ってもFieldにちゃんとアジャストしている点
⑤MLLのToronto NationalsがほぼそっくりそのままTeam Canada
加えて、付け足すとすると、
⑥+αとしての、メンタル

以下それぞれをちょっとだけ掘り下げ。

まず一点目。①インドア/アウトドアの違いを抜きにした、そもそもの純粋なラクロスの上手さ

実は、Canadaの国技はIce Hockeyではなく、Lacrosse。

規模で言うと、冬のIce Hockeyに次ぐ人気スポーツ(気候上の制約上、アメフトや野球はアメリカほどプレーされている訳ではない)。子供の頃から地域、家族ぐるみでどっぷりプレーする文化。且つ若い年代からプロの試合に触れながら、年代別のリーグでがっつり経験を積んで選抜されていく仕組み。多くの選手が子供の頃から春から夏に掛けてはずっとスティックとボールで遊んでいたと言っている。そもそもの前提としての、競技としての歴史と文化、それを支える人気と競技人口。それらが生む、地力として蓄積された技術の高さ。

NCAAでもたった数人Canadian finisherをリクルートするだけでオフェンス力が大幅に改善していることでも分かる。

続いて、②インドアであるが故の強み

以前のNLLの記事でも紹介したが、いくつかの点でIndoorではOutdoorとは全く違った、数段上の技術が必要になるとよく言われている。圧倒的なスピードの速さ、切り替えや状況判断の早さ、細かいエリアでの速く正確な動きとスティックスキル、小さなゴールと大きなゴーリーを相手にせざるを得ないが故のシュートとフェイクの技術。片手限定で持ち替えをせずにBehind the backも基本技術の打ち。Dodgeも走力での誤魔化しが効かない、本当の一歩目勝負。

ESPNの解説者Quint Kessenichも、感覚的にCanadianたちにとってはFieldのゴールは「サッカーゴールにシュートを撃つくらい簡単に感じるはず」とのこと。クリース前のLong stickからのプレッシャーもIndoorでの厳しさからすると蚊が止まる程度にしか感じないんじゃないだろうか。

(例えばサッカーで言うと、映画Gingaで紹介されていたが、Brazilのロビーニョやロナウジーニョの様に、Street soccerやFootsalの小さなボールとコートでボールハンドリングを徹底的に磨いたことが後々フルコートのサッカーで生きてくる、みたいな。)

③結果としてのスタイルの違い/相手にとってのやり難さ

であるが故に、全員indoor出身のTeam Canadaのラクロスはかなり独特なものになる。US的な、しっかり6人がセットして、走力のあるMFがダッジで崩して、スペースのある所で…みたいな優等生/教科書的なラクロスに必ずしもならない。NCAAを見慣れた感覚からすると信じられないくらい混んでるクリースにフィードして1対3くらいの状態でシュートを撃って決めたり、John Grant Jr.のように一人でゴリゴリ両手クレードルしながらBehind backでそのまま決めたり。

やり慣れてない相手からすると相当やりにくいはず。(一方でTeam Canadaはほぼ全員Field経験者なので、別にやりにくくも何ともない。)DやGからすると「え!?こんなとこフィードしてくんの!?」「は?こんな状態で後ろにシュート撃ってくるの?」みたいなプレーを頻発してくることに。

(総合格闘技のAnalogyで言うと先日UFC Light Heavy級でShogunに負けて王座陥落するまで無敗だった、空手バックボーンの独特なスタイルでほぼ攻撃を受けずに異様なヒット率を誇るBrazilの空手家Lyoto Machidaか。独特過ぎて対策が立てられない。スパーリングしようにも同じこと出来る選手がいないっていう。)

④そうは言ってもFieldにちゃんとアジャストしている点

と、③までの要素だけだと、そうは言ってもやっぱり別の競技、さすがに本家本元のUSには敵わないはず。やっかいなのは、ほぼ全員がNCAAやMLLでがっつりfieldを経験している点。Canadian indoor lacrosseの技術を持ちながら、それをどうやればfieldで最大限に生かせるかをよーく分かってる連中。要はIndoor-outdoor-hybrid。

チームとしても、それを十分に理解した上で、上記①、②、③を最大限にレバレッジし、Indoorの選手をベースとした戦術を確立しつつあるToronto Nationalsは去年までMLL2連覇を成し遂げており、「Canadianがフィールドラクロスを進化させている」とまで言われている。

⑤MLLのToronto NationalsがほぼそっくりそのままTeam Canada

実はこれが一番効いてる気がする。前身のRochester Rattlers、そして1年半前に移転してToronto Nationalsと、Team Canadaの過半数、主力のほとんどのメンバーが同じチームとしてMLLでプレーしている。見方を変えると、MLLは5つの米国プロチームとCanada代表1チームの6チームで構成されているようなもの。しかも、Toronto Nationalsは過去2年間MLLで優勝している強豪。只のMLLチームではない。

加えて今回はHCのDave Huntleyまで同じ。従って数年プレーし続けているチームがそのまま、もっと言うとシーズン後半の出来上がった状態でマンチェスターに向かうことになる。この点、ばらばらのチームからの寄せ集めで、直前のキャンプで一夜漬けでチーム戦術を固めなくてはいけないUSとは大きく事情が異なる。仮に2チーム全く同じレベルの個が集まったとしても、確実にCanadaの方が分があるということになる。

(Team USが練習試合でDukeや4年生代表に負けていることからも判るとおり、きちんとチームとして有機的に機能しなければどんなにスーパースターを集めても結局は烏合の衆な面がどうしても出てしまう)

最後に一点だけ、これは僕の個人的な付け足しだが、⑥気合と根性

(これはどちらかと言うと僕の個人的な意見だが…)ハートの強さや先頭本能/「荒々しさ」的な「メンタルな強さ」も多分に強さの源泉。NLLの試合を見て直ぐにピンと来るのが、その雰囲気の違い。圧倒的に野蛮。意図的に相手を潰すためのファウルをするし、審判の前で堂々と殴りあいをする。アメリカが文化的に正々堂々としたスポーツマンシップを大切にし、ラフプレーや乱闘を嫌うのとは対極を成す。(僕は個人的には荒々しいの大好き。そっちの方が熱くて面白くて人間らしいっしょ!)Field lacrosseがサラッとした上流階級の爽やかスポーツマンだとすると、IndoorはBlue colorの無骨で粗野な荒くれ者の集まり、という描写がよりフィットする。

WLCは連戦のタフな戦い。国の威信を掛けてやり合う喧嘩の面も強い。これらの負けん気、肝っ玉の強さは確実に大きな武器になってくる。

WLC最大の見所: USとの一騎打ち、そして2試合を通しての駆け引き

チームUSはそれらを十分に理解した上で、今年はUnder dog(挑戦者)としてhungryに勝ちに行くと言い切っている。USは大会を通じて徐々にチームとしての機能を増していくはず。一方のCanadaは最初からチームとしては完成してるものの、NLLから休み無しでMLLに出ている選手たちがかなり疲れているとも言われている。長期戦では若干パフォーマンスが落ちてくるだろうか?仮にCanadaがリーグ戦の一発目で勝ったとしても、決勝でUSが逆転というシナリオは十分に考え得る。前回はリーグ戦でUSが勝った後決勝でCanadaが雪辱。この辺の駆け引きがどう働くのか。考えるだけでゾクゾクしてくる…

いたる@13期

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