2011年3月5日土曜日

NCAAに流入するCanadianの数が10年間で激増

WLC関連の記事でも何度か触れたが、ここ10年でNCAAに大きな変化が起きている。カナダ人の流入増加。ILの記事曰く、2000年には20人前後だったNCAA men's lacrosseのカナダ人の数が、2010年時点で200人にまで膨れ上がっていると言う。
 
広がる裾野
 
スティックのテクノロジーの進化により、よりスティックスキルの重要性が増す中で、インドアで数段上のレベルのスティックスキルを身に付けたCanuck(カナダ人)をfinisherとして入れることの意味が加速度的に増している。今や「US-Canada hybrid」「Field-indoor hybrid」はトリッキーなことでも何でも無く、Div 1で勝って行くための必須条件にすらなりつつある。
 
以前もSyracuseのGait兄弟やDelawareのJohn Grant Jr.などスーパースター級の選手を中心に少数の流入があったが、最近の大きな違いは、準主役級の選手も含めて物凄い数が入って来ている点。また、Syracuse等北部の強豪校だけではなく、Albany、Lehigh、Denver、Robert Morrisなど、中堅校や、北部以外の学校、そしてDiv II/IIIの学校にもガンガン入りつつある点。(2010年に中堅校の中で特に躍進し、プレーオフを掻き回したDenverもStony Brookも思いっきりカナダ人に引っ張られていた)
 
リクルーティングにも影響
 
NCAAのコーチとしての資質に、リクルーティングでどれだけいい選手をidentifyし、連れて来れるか、というものがあるが、その中でも特にカナダ人をどれだけ連れてこられるか、カナダにどれだけパイプがあるかがより重要になりつつある。

Podcastのインタビューでカナダ代表のFace offer Geoff Sniderもコメントしていたが、インターネットやメディアの進化によりフィールドラクロスの情報がより多くカナダに入るようになったことに加え、カナダ国内の学校やチーム/コーチといったインフラも整いつつ有り、カナダ人にとってのアメリカ/NCAA/フィールドラクロスへの流入の垣根がどんどん下がっているという。
 
ラクロスエリート養成学校の登場
 
特にカナダ代表DFのBrodie Merrilと兄のPat Merril、Geoffも関わっていると言っていた、スポーツを軸にしたエリートアスリート養成学校The Hill Academyの話が印象的だった。ジュニアで才能のある選手を集め、規律とフィールドラクロスの戦術を教え込み、多くの選手をNCAAに送り込み始めている。
加速度的に進むフィールドへのアジャスト
 
昔からカナダの選手たちはアメリカのサマーキャンプ/リクルーティングキャンプにちょくちょく参加していたが、せっかくアメリカ人を遥かに越えるスティックスキルを持っていても、いかんせんきちんとしたコーチにラクロスの戦術、特にフィールドラクロスの戦術を教えて貰った経験が無く、どうしてもチームとしてフィールドラクロスをプレーした時に上手くパフォーム出来ないケースが多かったとのこと(要は空気読まずに一人でスゲーボール持ち過ぎてチームとしての機能を阻害したり、ロングスティックに対応出来ずにやられたり)。また、最大の壁として両手が使えるかどうかというのが大きく効いていたはず(インドアでは基本利き手のみでほとんど持ち替えない)。
 
が、ここ10年でNCAA経験のあるコーチが増えたり、Hill Academyのようにきちんと戦術や規律を教えられるチームや学校が出て来たことで、そこが一気に修正されつつあるらしい。高校時代からある程度フィールドラクロスを経験し、且つ基本的な戦術や動き方を理解した選手、NCAAで即戦力になるレベルの選手が増えて来ているとのこと。

加えて、元々地元の草野球的でブルーカラー/荒くれ者のスポーツのイメージが強かったラクロスだが、ここに来てアメリカで高等教育を受けるためのツールとしての見方も広がりつつ有り、NCAAで活躍するカナダ人が増えた事で「俺も出来る!」という見方が徐々に広がりつつあると言う。
 
長期的なWLCでの勢力図へのインパクト
 
今後この流れが加速するとなると、NCAAにももっともっとカナダ人が増え、World Lacrosse ChampionshipでのCanada-USの均衡したパワーバランスが変わっていくかも知れない。Football(アメフト)やバスケ、野球等にも広くtalentが分散してしまうアメリカと違い、カナダはほぼIce Hockeyとの一騎打ちで、多くの選手がジュニア時代には兼業。今後ラクロスでの人生/キャリアが開ける可能性が広がるにつれ、露出度/認知度も上がり、より多くのタレントが流れ込み、より多くの選手がフィールドにアジャストしてくると、結構大きなインパクトが有るかも知れない。長い目で見るとアメリカとカナダの頂上決戦が、お互いの切磋琢磨を通して加速度的にレベルを上げて行く可能性がある。今度どうなっていくか非常に楽しみな現象。

歴史が長く、ともすると伝統的で古いスポーツと見られがちなラクロス。そして、日本を始めとした新興国に比べると遥かに歴史があるのも事実。一方で、いろんな社会的/経済的な環境変化を受け、また自由競争の中でのあらゆる創意工夫を経て、これだけダイナミックに成長している。たった30年弱の歴史しか無い日本のラクロスと同じように(いや、場合によってはそれ以上に)既に数百年の歴史がある(本来なら成熟し、衰退して行ってもおかしくない)アメリカやカナダのラクロスが、未だに大きく成長し続け、変化/進化し、どんどんレベルが上がって行っているというこの事実。結構衝撃的だ。

いたる@13期

0 件のコメント:

コメントを投稿