2010年5月27日木曜日

生々しい話

大分無関係な話題ですが…(試合以外興味無い方は秒殺スキップして下さいませ。)

今年のNCAAは強豪がことごとくやられている。Syracuseは一回戦でArmyにUpsetを食らう。HopkinsはそもそもPlayoff進出すら危ぶまれギリギリで出場するも、一回戦でDukeに歴史に残る大敗陵辱に遭う。コーチBill Tierneyが去り、新コーチの下新たなスタートを切ったPrincetonも煮えきらぬまま一回戦で敗退。今年こそはと言われたMarylandはNotre Dameに残念すぎる二回戦負け。

Final fourを控えたこの一週間、いくつかのNCAAらしいニュースがあったので紹介。

①Maryland Head CoachのDave Cottleが退任

記事自体は、日米変わらずオブラートに包まれた書き方だが、あからさまにNotre Dame戦の敗戦の責任を取らされた、そこそこ強いメンバーを抱えながら3年連続でFinal Fourに到達で着なかった場合はクビになる契約だったなどの裏事情が実しやかに囁かれた。ショックなのは、敗戦から24時間以内、次の日のVirginia-Stony Brook戦の最中にそのニュースが発表されたこと。

既にInside Lacrosseのフォーラムでは次のコーチ候補予想が大盛り上がりを見せている。今年活躍のCornell Jeff Tambroniや敵のNotre Dame Kevin Corriganの引き抜き、更にはDon ZimmermanやGary Gaitやなどの大穴予測も。

NCAAは特にアメフト、バスケで顕著な傾向として、完全に「セミプロ化」しつつある。MLBや日本プロ野球と違い、NCAAがNFL、NBAの下部組織、育成組織としての意味合いを持ち、選手はそこで活躍すれば○億円という年収でドラフトされていく。Early entry制度によりアメフトは3年まで、バスケに至っては1年のみプレーしてプロ入りする選手も多い。プロにならない選手でも、上位校の特待制度でほぼ成績無視で入学選手達の多くは大学を卒業せぬまま4年の試合出場期限を終えチームを「卒業」していく。(中には端から「大学時代が人生のピーク」と割り切って、卒業する気ゼロで入学する選手も多い。)コーチも同様で、プロチームと頻繁に人材のやり取りが行われ、実績次第で数億円の年収を稼ぐコーチも珍しくない。

もちろん、プロの受け皿が小さく、Establishedな家庭出身で多くがビジネスマンとして普通のキャリアを歩むことになるラクロス選手達は真っ当に卒業するケースが多いし、Head Coachの年収も僕らの想像を超える金額では無いとは思う。

それでも、当然強いチームのコーチのポジションはこの世界に関わる者にとって名誉でエキサイティングなDream jobな訳で、当然そこに向けて熾烈な競争が行われることになる。そういう意味ではVirginiaのDom Starsiaも、UNCのJoe Breschiも、DukeのJohn Danowskiも、そしてもちろん現DenverのBill Tierneyも、皆長い下積み期間を経て、コーチとしての輝かしい成績をレジュメ(履歴書)に刻んだ上で今の仕事を手にしてきた。Cottleも当然例外ではなく、Loyolaでの成功の実績を買われてMarylandに10年前にスカウトされてきた。そんなHCも一定期間内に期待される(期待値もちろん高し)実績が残せなければ容赦なくクビを切られるというこの現実。残酷にも聞こえるが、日本のプロスポーツの世界でも当然皆それを求めてやってる訳で、有る意味強くなり、栄えるためには必要な新陳代謝のプロセスってことなんだろうか。裾野の広い公正なCompetitionと、結果による厳しい評価、選別の仕組。それこそが感動を生むレベルの強さや技術を生んでる面もあるのかも。

②JHUのATの2選手がTransfer(転校)に向けて休部/休学

本件、記事自体はまたしても裏事情については触れず、乾いた書き方をしている。一方で、Forumでは、やれ「イマイチなJHU再建のために、イマイチな選手をクビにして来年以降の強い新入生達にプレーのチャンスを与える方針」だとか、「いやいや単純に学業成績が問題だった」やら、はたまた「そもそもコーチのPetroを変えるべき」なんて意見も飛び出している。

こちらも決して日常茶飯事と言えるほど頻繁に起こる訳ではないが、そもそもラクロスをプレーすることを目的/条件として大学に入学し、結果が出せなければ転校する(させられる??)という、日本のラクロス(というか大学スポーツ一般)ではちょっと考えられない出来事だ。

ちなみにTransfer[転校]はNCAAではどのスポーツでもかなり一般的に行われており、特に強豪校ではスーパールーキーの加入により活躍の場を失った上級生がライバル校に移ったり、怪我で試合に出られなくなったが下位校で再起に掛けたり、はたまたいい思い出を作りにいったり、はたまた強豪校のキャリアを捨ててHarvardのスーパースターになって、Wall Streetの投資銀行に就職、なんてこともちょくちょく起こる。Syracuseもご他聞に漏れず、ちょくちょく他校で実績を残した4年生スタープレーヤーが最終学年でちょい役で加わったりして、選手層の強化に一役買っていたりする。

選手からすると、一歩背伸びして夢の強豪校に行って主力として出ることを狙うのか、はたまた下位校に行ってスターになり、決して高くないNational Sportlightの下で試合をするチャンスを伺うのか、自分自身の実力を客観的に見つめながら、その学校の実力、コーチや戦術とのフィット、他の選手のポートフォリオを見ながらかなりシビアでリアルで戦略的な意思決定を若い頃から迫られることになる。(アメリカって「American Dream」の国でありながら、実はそんなに皆が皆夢見てるわけでもなく、若い頃からこの辺の(いい意味でも悪い意味でも)身の程をわきまえたというか、現実的な考え方をする人が多いのもこの辺に起因していると思う。)

会社の同僚(東海岸在住)も、息子がNCAAの1年生テニス選手で、Div 1でプレーしていたが、試合出場の機会に恵まれず、結局Div 3の学校に転校することになったとのこと。部活のために大学変えるってのはやっぱり日本の感覚ではすぐに腹落ちする話ではない。

自分自身アメリカのBusiness SchoolのCompetitiveな環境に身を置き、アメリカ人の中でアメリカ人としてJob market(就職市場)という名の人身売買の場に身を晒してみて強く感じたが、この国は本当にフェアでオープンで透明な競争の仕組みが行き渡っている。シビアだが、公正で後腐れ無し。実力が無ければそれなりだけど、実績で証明すれば、国籍や人種や家柄やLooks/訛りと関係なく基本的にはそれに見合った評価とチャレンジが与えられる。至ってシンプル。だからこそスポーツでも学問でも世界中からCompetitiveな(優秀な)人材が集まり、そこでPerformし、実績を残し、「レジュメ/実績を築く」ことでどんどん上のステージに登っていく、そういう一握りのリーダー達がぐいぐいと組織や国を引っ張っていくという健全な推進力が生まれる。今回の件を見てふとその辺の国としての文化/仕組みについて考えさせられた。(別にアメリカの仕組みがベストだと言う積もりも毛頭無いし、Downsideもたくさんあることも理解した上で、単純な現象面での観察事実として)

てな訳で、NCAA Final Fourを前に、ちょい生々しいコネタ/NCAA事情でした。

いたる@13期

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