2010年5月29日土曜日

Cornell Head Coach Jeff Tambroni

深夜3時に無事Santa Barbaraの我が家に到着。今日は連休前の金曜なので午後はとっとと仕事を切り上げて帰り、浜辺で波の音を聞きつつビール飲みながらInside Lacrosse Podcastをチェック。まあ、たまにゃあ完全に脳みそ溶かす週末ってのもありかなと…

昨年のCornell 09の準優勝メンバー、MVP(Tewaaraton Trophy)、現Denver Outlaws MFで、Team USAの柱でもあるMax Seibaldのインタビュー(リンクはこちら)。運動能力測定検査では、Cornellの全スポーツを合わせた中でも最高レベルの身体能力を発揮していたという。185cm 90キロ、脚もクソ速く、シュートは全てをなぎ倒す破壊力。去年のFinal Fourで初めて見た印象は、『馬のように走れる熊』。

もともと「古豪」でありながら、この4年で3度のFinal Four進出を果たし、一気に注目を集めるCornellと、それを率いる若きリーダー、Head coach Jeff Tambroniについていくつか面白いコメントがあったので紹介。チームとして、リーダーのあり方として余りにも学びたい点が多かったので。

1.Tambroniの実績

そもそも、Tambroniはラクロス界でもここ数年確実に結果を残し、尊敬を集めているが、CornellがIthakaというNY州北部の田舎(失礼!)にあることに加え、Syracuse、JHU、Virginiaに比べるとラクロスに於ける「格/ブランド」が落ちるため、必ずしも最も注目を集めてきた訳でもなく、その人となりに関して広く知られている訳ではない。そんな中、Seibaldは「Tambroniは今よりももっと全然Respectを受けて然るべきだ」と主張する。毎年毎年「どうせCornellは噂だけだろ、今年こそは駄目だろ。Cornellが5位以内は無いでしょ。すぐ化けの皮剥がれるよ」とクソミソ言われながらも毎年必ずその期待値を裏切るいいチームに仕上げてくる。

Cornellは上位5-6校に比べると、有力選手を獲得するのは簡単ではなく、実際に入学時の顔ぶれでは正直それらの学校と比べて1-2段落ちる。そのハンデを乗り越えて毎年確実にFinal Fourに残ってくるというのは、明らかに他のコーチには無い何かを持っていないと出来ない。表面的なTrack recordでは図れない、ROI(Return on Investment/投下資本対効果: 与えられた素材/環境に比しての達成度)の指標で見ると、恐らくNCAAの中ではぶっちぎりの結果を残しているということになる。上位5校から遥かに落ちる素材を与えられながら(分母が圧倒的に小さい)、彼らと並ぶ/超える結果を残しているので(分子がでかい)。

2.人間力/リーダーシップ

以前Interviewを受けていたエースAT 2年#3のRob Pannellも、彼とコンビを組む4年#26AT Hurleyも、そして今回のSiebaldも口を揃えて、Tambroniのリーダーとしての資質、人格、日本語で言うところの「人間力」の高さを指摘している。若くてロッカールームでは選手たちにとって親近感のある兄貴分でありながら、いざ練習や試合になると強いリーダーシップを発揮する。Off the courtでも絆や礼儀を大切にするGentlemanだと。その人柄に惚れて、ある意味「粋に感じて」、「この人について行こう」と選手たちが思うからこそ、他の強豪チームを超える「プラスアルファの何か」を生んでいるように見える。

加えて、先日の記事でもちょっと書いたが、ラクロスやゲームに対する愛情、ある意味狂信的とも言える情熱。それが常軌を逸した熟練を生み、選手たちの中に憧れやエネルギーを生んでるんだろうか。インタビューで話しているのを聴く限り、沈着冷静で超Logicalな言葉の奥底に、青白く燃える熱い炎が見え隠れするのが感じられる。

3.選手を見る視点/軸の違い

リクルーティングや出場選手を選ぶ際の目の付け所、Criteria(判断基準)が明らかに他の一流コーチたちとも違うように見える。特待生制度/奨学金が使えず、高い成績が要求される癖にラクロスでのブランドが一流校からは一段落ちるCornellならではの事情と、彼自身のスタイルに拠る部分が大きいだろうか。
必ずしも生まれ持っての驚異的な才能に恵まれてなくても、「Work ethic」即ち、上昇志向/学習意欲があり努力する能力/習慣がある選手、高校の時点で必ずしも完成していなくても、教えればその後大きく化ける「伸びしろ」の大きな選手を意図的に採っているとのこと。

加えて、Quintも以前触れていたが、恐らく頭のしなやかな選手、彼の考えるLacrosse theoryを合理的に理解でき、自ら思考し、実行できるLacrosse/sports IQのある選手という視点も重視してるんじゃないだろうか。

4.健全な競争原理

Seibaldの、「Cornellはなぜこんなに強くなるの?」という質問に対する答えが面白かった。Tambroniは基本的にどんなに優秀な選手も決して固定する/ポジションを約束することなく、「毎日がTry out」というスタイルを取り続けるらしい。Seibald自身も(これだけ明らかに突き抜けた能力と技術のある選手でありながら)決して自分がスタメンとして安心出来るポジションにあると感じなかったとのこと。Tambroniからの「努力し、成長しないなら、君がいる意味無いよ?パフォーム出来ないなら他に代わりに出たい下級生はいくらでもいるんだよ?」というプレッシャーを常に感じていたと言う。オープンで健全なCompetition(競争原理)。それを最初だけじゃなくてずっと継続すること。これこそがチームを強くする力、Work ethicの源泉だと言う事か。

そんな中だからこそ、高校ではUnprovenだったPannellは昨年1年生からチームの大黒柱になり、ラクロス過疎地Minnesota出身で、Ice hockeyからの気分転換の積もりでLacrosseを始めたHurleyは、いまやPannelと共にAT2枚看板を背負うまでに成長した。一年で突然変異的な急成長を遂げゴールを守るFioreもその恩恵をもろに受けた一人だろう。もう一人のATのMockやDの柱二人も1年生。UNCのように当初は調子よくても伸び悩むチームがある中、Cornellがシーズンを通じて高いモチベーションを維持し、チームとして変化/成長し続けている理由の一つがその辺にあるんだと思う。

5.Chemistry再び

以前DukeのNed Crottyのインタビューの話でも紹介したが、またしても”Chemistry”(相性、お互いを理解し合う事)の大切さに関する話が出ていた。NCAAを見ていると、日本でラクロスに触れていた頃に比べると圧倒的にこの言葉/概念に出会う頻度が高い。AT 2枚看板(PannellとHurley)を見てどう思う?との質問に対して、ChemistryとWork ethicが強みだと答えていた。Pannellの入学直後から二人でシュート練習をし、ネチネチと2人で2 on 2を練習しまくっていたと。上から、裏から、横から、一人が抜いて一人がカットと。

この辺の、2 man gameに対するSensitivityがNCAAのオフェンスでは圧倒的に高いと感じる。自分が日本でやっていた時はただひたすらに個人で強くなれば結果としてAT 3人としての強さがついて来ると思っていたが、NCAAくらいに高いレベル、個としての能力/技術は飽和点近くまで来てるレベルになると、やはりそこから先のMarginalな差を生む要素として、同じように2 on 2を鍛えるアプローチが必要になってくるんだなと。個として十分に鍛えきった上で、という前提で、時にはATの2人、3人で敢えてコンビプレーの練習をゴリゴリやり込む、一緒に飯食って仲良くなる、ってのはそれはそれで意味があるのかも知れないなと思った。

いよいよ明日はFinal 4。既に当初のFinal 4の顔ぶれ予測(UVA, Duke, Maryland, Syracuseで、決勝UVA-SyracuseでUVA優勝)は2週間前に無残に砕け散ってしまったが、敢えてまた予測すると…UVA-DukeはびっくりするぐらいDukeの圧勝。Notre Dame-Cornelは無茶苦茶タイトな試合で、8-6みたいなスコアでCornell。決勝は拍子抜けするくらいDukeの圧勝で、Dukeが悲願の初優勝のパターンじゃないかと。See what happens…(過去の優勝/準優勝校リスト

先日21期のオリケンからメールにて選手数人とFinal fourを見に行くとの連絡を受けた。あの独特の空気に触れ、脳幹痺れて筋金入りのラクロス馬鹿になって帰ってくるに違えねえ、と思った。本当に素晴らしいこと。失うモノなんて何も無いんだし、失敗や恥かしい思いなんて今のうちにしたもん勝ちなんだから、引き続きガンガン国境越えていくべし!必ず今まで見えていなかった何かが見えるし、その後の人生の幸せの引き出しが増えるので!

いたる@13期

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