2010年5月30日日曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 34 Tournament Semi-Final第一試合Cornell-Notre Dame

またしてもNotre Dameに予想を裏切られた。一回戦のPrinceton、準々決勝のMarylandに続いてこれで三度目。(ワタクシの予測既に一回戦からズタボロ…)Cornellオフェンスを封殺して、12-7での手堅い勝利。ほぼ全ラクロスファンの予想を裏切り、ついに決勝に行ってしまった。ここまで来たらもう笑って応援するしかねえなあと思わざるを得ない。

まずは試合の見所から。

CornellがクリースからLangの得点で先制するも、その後NDがチームOでボールをシェアしていい形で2点を返す。2点目のTriangle offenceは完璧な形。GoalieのRodgersがまたしても鉄壁のセーブを連発。1Q終了間際にCornell #3 AT Pannellが判断ミス。残り30秒でボールを保持しながら、早いタイミングでシュートを打ってしまいTurn overに。Possessionを奪還したNDはそのままQ残り6秒でMFのAdam FelicettiがDを3人交わして崩れ落ちながら得点し、3-1に。

2Q以降もNDのクリース前を徹底して固めるDがハマり、Cornellは攻めあぐねる。Cornell2点目のPannellのXからの1 on 1、1年AT #6 Mockへのフィード/得点でのMockのクリースでの裏取り/「Spaceを埋める」動きに注目。

しかし、プレーオフも3試合目になってくると…今頃になってやっと理解してきた…NDって、もしかしたら、思ってたより、強いのかも…というか、「本当に」強いのかも…全米で多くのラクロスファンが同様に感じ始めてるかも。

2Q終了前に残り3分、CornellはMockの得点で5-3とし再び2点差に詰め寄る。クリースでのOff ballの動き、及びキャッチしてからシュートまでのBanana moveでDをかわしつつゴールに向く動きが賢い。前半終了間際のND #11 AT Hicksの得点がATの選手は是非真似したいInside role。Quintも指摘している通り、早いタイミングでRole turnするミスを犯しがちだが、Hicksはかなり表まで行ってからターンしているため、シュートを打つのに十分な角度とスペースが生まれている。

3Q、ND 7点目、MF #28 Brennemanの得点、左利きだが右での長い距離のRunning shootに違和感を感じずに決めてくる。直後のCornell 4点目、1年生AT Mock の3点目、MFのトップからの1 on 1の際のゴール裏からこっそりSneak inしている動きが賢い。

最後は試合終了残り5分で3点差を負うCornellがゴーリーをDに出してダブりに行った為さらに点差が開いて試合終了。終わってみれば12-7でNDの圧勝。Notre Dame Fighting Irishが学校の歴史上初めての決勝進出を決めた。5年生G、キャプテンのScott Rodgersが15セーブの大活躍。でかいのはでかいが、やっぱり読みと反応、ポジショニングの良さとHand speedがかなり大きく効いている気がする。

決勝ではDuke Virginiaどっちが上がって来たとしてもOffence力は国内Top。Rodgersと鉄壁Dがどう抑えるのか今から楽しみ。

さて、ここで一歩立ち止まって、Notre Dameについて考えてみる

(関係者以外で)全米でNDの決勝進出を予想していた人はほとんどいないんじゃないだろうか?Las Vegasのギャンブルでも完全に万馬券状態に。しかし、今まで見てきた15年分近いNCAA Final Fourで、ここまで不思議な、というか「変な」決勝進出チームは見た事が無い。なんでNDがこんなにもUnderrated(馬鹿にされてきた)で予想外なのか、そして、なぜそれをひっくり返し、ここまで勝ち続けて決勝まで辿り着けたのかを一歩立ち止まって考えてみる。

Why underrated? (1)学校の立地と歴史、「キャラ」

そもそもIndianaというという中西部。ラクロス的には完全に田舎。ラクロス部自体の歴史は決して新しくないが、NCAAトーナメントの常連になり始めたのはこの15年くらい。HopkinsやSyracuseやIvy leagueのチームなど歴史ある強豪に比べると未だ新参者のイメージ。

加えて、大学スポーツ界に於ける「芋キャラ感」が否めない(失礼!)。Fighting Irish。紺にゴールドにIrish Clover Greenの地味カラー。元々アメフトが強い時期もあり、地元工業地帯のBlue colorたちの星として一時代を築いていたが(映画RudyもNDが舞台)、最近は完全にパッとしない。それでも昔の栄光に浸り、未だに夢を見ているファンも多く、『Football hangover』と揶揄され、痛キャラ扱い。

東海岸のEstablishmentのエリート学校から見ると、「何?あの芋チーム」となる訳だ。

Why underrated? (2)採ってる選手個々人の「素材」としてのレベル

当然、Recruitingに於ける人気も一段落ちるため、取れる選手のレベルも一段落ちる。従って、これまた上位校のBlue chip(一流)選手たちと比べると「ああ、あの残りっかす軍団だろ?」と見えちゃう。見ていると、得点シーンもDukeやVirginiaやSyracuseみたいな、口あんぐりな素晴らしいシュートはそんなに多くない。ドタバタやってゴリッと捻じ込む感じ。パスやダッジやシュートやDのチェックの動きも、NCAA上位校特有の「ビシッ!バシッ!!」という小気味良さや、滑らかさを感じさせない…ぐちゃっ、とかねちゃっ、って音が似合う感じ(これまた失礼!)。

Why underrated? (3)Visual

加えて、「見た目」の違い。Virginia、Duke、Syracuseの主力選手たちは均整の取れた骨格で、多くの場合でかくて筋肉量が多く、Athleteの体をしているのが見て取れる(加えて往々にしてイケメン)。一方でNDは上手くてもちょっと身長が低かったり、高くてもヒョロッとしてたり、ユニフォームがブカブカに見えたりして、何だか見た目が頼りなさげ。つかユニの短パン短くね?メットが強豪校やMLLのDefacto Standard、流線型でスピード感のあるCascadeのPro7じゃなく、Riddellなるメーカーのエラが張ったドボッとしたメットだからか?何なんだろこの見た目のモッサリ感は…

正直、見ていてホントにそんなに強いのか?と思わされてしまう。VirginiaやDukeのファンたちも恐らく表立っては口にしないものの、同じようなキモさを感じてるんじゃないだろうか。そりゃ認めたくねえわな…

Why underrated? (4)今年の成績

昨年はリーグ戦15戦全勝で文句無しのトーナメント出場だった。が、今年のリーグ戦の成績は、Rodgersの怪我の時期に負けが込み7勝6敗。NCAAトーナメントも出場できるかどうか微妙な、Bubble(崖っぷち) teamの一つで、直前まで選手たちですらお呼びが掛かるかどうか相当微妙に感じていたと言う。実際にNDの名前が呼ばれたとき、より良い成績を収めていたGeorgetownをNDの代わりに出すべきだという声がファンからかなり上がった。

(ちなみにND選出の理由は、勝敗数だけではなく、SOS: Strength Of Schedule: 対戦相手の強さ、及び、強豪校への勝利(NDはDukeとLoyolaに勝っている)が重く見られたためと言われる。実際にTournamentでも格上を三度に渡って倒したわけで、優勝する確率がより高いチームをトーナメントに出す、という目的に基づくと、単純な勝敗数ではなく実際に上位校を食う番狂わせの実績があるチームを優先するというやり方は今回のNDの快進撃を見る限り実際に機能していることになる)

こうやってNDが決勝に進出したことで、それまで「NDを出したのは意味不明!」と叫んでたファンは「うぐっ…」と黙らざるを得なくなった。

Why underrated? (5)凸凹、歪さ

チームとしての強み弱みが物凄くハッキリしている。ほとんど全ての要素で「優」を取っていて、ATやGなどピンポイントで「特優」を取っている優等生の通知表のようなVirginiaやDukeに比べると、Notre DameのSpider chartはむちゃくちゃ歪んでる。Gが突き抜けて最強レベル、Long stickが「優」、MFのDが「良上」、MFの1st stringのOffenceが「良」で、その他のMとATは赤点スレスレの「可」、みたいな。実際に得点の50%はMFの1枚目から、ATはリーグ戦を通して10数点と、点を取るという仕事に置いてはほぼ空気並みの存在感だった。その頼りないAやMの2ndを見ると、とてもトーナメントで上位に食い込んでくるチームには見えなかった。ファンたちが「けっ!どうせNDだろ?」と小バカにしていたのも理解できなくも無い。

じゃあ、何故勝ってるのか?(1)身の丈に合った戦い方

凸凹のところで述べたことの裏返し以外の何者でもないんだが、要は自分たちの身の程を知り、全部の要素でまともに渡り合うことは端から捨てて、自分たちが得意なことだけに尖りまくった戦い方を取ってるから、ということになるだろう。Possessionは最大の防御の考えに基づきひたすらLoose ball、FOを大事にし、ボールを共有しまくり。MFの1 on 1とBreakの数少ないチャンスを確実にモノにする。Dではお馴染みの超Tight packでクリース前を固め、遠い距離、薄い角度からはダチョウ倶楽部ばりの「どうぞどうぞ」でガンガン打たせてRodgersに任せる。

じゃあ、何故勝ってるのか?(2)キーとなる選手たちは確かにレベル高い

GのRodgersは文句無し。でもDも#35 Ridgwayを始め、実はかなり堅い。またMFの1枚目の#33 Earl, #12 Krebs, #28 Brenneman辺りは確かに身体能力も高く、技術も確か。華は無いが確実に仕事をこなせる主力級の選手は確かに揃っている。ブランドが無いが故にメディアの注目に晒されて来なかっただけという面も。

今年のNDを見て、なるほど、爆発的な得点力とスター軍団に支えられた所謂典型的な「強いチーム像」に当てはまるチームじゃなくても強烈な強み/尖りがいくつか有れば、戦い方によってはイケるのね、と思わされた。ラクロス観を広げてくれるチームだ。「エリート感」や「強豪ブランド」の無さなんて物ともせずせずに我が道を信じて突き進む。雑草魂、Underdog魂が大好きな僕としては、ここまで来ると身を預けて応援したい気持ちにもなってくる。

最後にちょこっとCornellについて。

さて、応援していたCornellもついに準決勝で姿を消す。残念。試合終了後のHC Jeff Tambroniの表情から悔しさが滲み伝わってくる…一方で、メンバーを見渡すと主力のほとんどが1-2年生。Pannell, MockのAT、GとD2枚の柱。今の高校レベル、Hot bed(東海岸中~北部)以外でのラクロス普及が加速し、Cornellがここ数年の成績とTambroni株の急上昇を受けてRecruitingでの求心力を増すとすると、恐らく来年、再来年も確実に上位争いに絡んでくるんじゃないだろうか。来年以降に期待!

Highlight video

いたる@13期

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