2010年6月4日金曜日

年間MVPとMLLドラフトとチームUSA

さて、いくつかトーナメント後の続報。

1.年間MVP

NCAAの年間MVPである、TewaaratonトロフィーWinner。昨日授賞式が行われ、大方の予想通りDukeの5年生AT、#22 Ned Crottyが選ばれた。リーグトップレベルの合計ポイント(ゴール+アシスト)数、チームを引っ張る統率力、いざとなれば1 on 1で相手を置き去りにできるスピード、試合を決める大事な場面での決定的な活躍など、納得の選出。ちなみに先日の記事で載せた彼のインタビューでのパスの話、休日の過ごし方の話が印象的だった。(前回の記事

鮮明に記憶に残っているのは、リーグ戦、ACCカンファレンストーナメント決勝、そしてNCAAトーナメント準決勝と3試合連続で、もう一人のTewaaraton trophy候補、今年のNCAA最強Long stick、Virginiaの大魔神D、#27 Ken Clausenにマッチアップされ、試合後半の勝負どころでXからの1 on 1でスピードとステップで確実に抜いていた点。今年の名勝負の一つ。恐らく二人ともMLL入りするだろうからこのライバル関係は続いて行くんだろう。

Inside Lacrosseでもちょっと記事に書かれていたが、Tewaaratonトロフィー、実は純粋に選手としての能力だけで選ばれてる訳ではなさそうで、選出に於いて毎年ちょっとバイアスが掛かっているというか、一つの傾向があるらしい。①4年生であること②ATかMF③チームが実際に上位まで残ったこと、などなど。今年もStony BrookのCrowleyやDelawareのDicksonなど、NCAA最強プレーヤーと言われながらも選ばれていない(2人とも3年生で、且つチームが1回戦or2回戦負け。ちなみに二人ともCanadian Finisher)。

過去の受賞者リスト。ちなみに、女子の方は今年はMarylandからだったが、昨年までは4年連続で僕の第二の母校Northwestern大から。(このブログではほとんど触れて来なかったが、NU女子チームは創立10年で5年連続優勝を果たした「大学スポーツの奇跡」と言われる超新星。以前別のブログに記事を書いたのでご興味ある方はこちらを。

2.MLLドラフト

今週末は待望のMLLドラフトが行われる。以前Quintが挙げていた今年のドラフト候補リストはこちら。非常に納得感がある。面白い話題をいくつか。

①Notre DameのGoalie、Scott Rodgersがどこにドラフトされるか?
去年今年の数字、今年のPlay offでの神懸かった活躍を見れば一目瞭然。何年かに一度のゴーリー。MLLでも大成するだろうと言われており、何位でどこにドラフトされるかが注目されている。一方で、悩ましいのが、19人という数少ないロースターで、6チームしかないMLLにおいて、且つGoalieという賞味期限/選手生命の最も長いポジションでは、圧倒的に需給バランスで言うと供給過多な状況というのが正直なところ。現時点でどのチームも正ゴーリーには満足しており、それを敢えて変える、将来の投資として取る、という判断をどこまで取るか。悩ましいところ。

②NCAAとMLLでの選手選びの違い
試合のルールもさることながら、より大きな意味での「競争のメカニズム」が異なるため、結果として、NCAAで評価される選手と、MLLで評価される選手に若干の違いが出てくる。この点、NFL(アメフト)やNBA(バスケ)、メジャーリーグや日本プロ野球とも共通するとこもろも。

第一に、サイズと身体能力の基準が数段上がること。NCAAでは身長175くらいでも、凄く器用で足が速かったりすると全然問題なく主力として活躍できるが、MLLだとここのハードルが一気に上がる。Dは190台が基本、2メートル近い選手も多い。AもMも180台ばっかり、190もゴロゴロ。

第二に、Versatility(マルチに全部こなせること)。これは単純に登録選手数の違いから来る部分が大きい。40人近く登録するNCAAに対し、MLLはたったの19人(ルールブック)。NCAAでは現在分業化/専門化がどんどん加速しており、FOのみ/Oのみ/Dのみ/EMOのみ/MDDFのみのフィールドプレーヤーがかなりいる。一方で、MLLでは台所事情からそうも言ってられず、限られた人数で可能な限り高いレベルであらゆることを遂行することが求められる。基本一人で全部こなせることが求められる。Face Offerですらかなり点を取る選手が多い。なので、MFで凄いシューターで目立ってた選手が、Dが苦手、中盤での機動力に劣ってたりすると採られなかったり。ATででかくて重くてキャノン砲みたいなシューターだった選手も同様にVersatileにアシストもブレークOFもRideも高いレベルで出来る訳じゃないので採られない、などなど。

また、上記の要求スペックのズレに加え、ファンにとってのPerceptionと実際の実力のズレも影響している。NCAAでの注目度、人気は多分にチームの強さ、ブランドに拠る部分も大きい。従って、VirginiaやDukeで結構活躍してたように見えた主力選手が全く箸にも棒にも掛からなかったりする一方で、中堅~下位のエースだがほとんどフィーチャーされてなかったような選手が上位選出されるっていう。慶応の主力選手が皆トップクラブチームで通用するわけじゃないし、一方で学生時代は2部に埋もれてた選手がValentiaやFalconsで大きく花開いてスポットライトを浴び、日本代表になることもままある、みたいな話と似てるかも。

③MFの恒常的供給不足、インフレ
見ていると、MFがどのポジションよりも需要が逼迫しているケースが多い。でかくて、走れて、持久力あって、頑丈で、OもDも出来る選手、理想的にはPaul RabilやMatt StriebelやMax Seibaldのような猛者たち。これがなかなか難しい。パフォーマンストータルに占める技術や経験の重要さの割合が相対的に高いGやAやDに比べて、純粋な身体能力に支えられるポジションのため、選手生命も長くない。MVP級の選手でも30歳までにほとんど引退してしまう。従って、毎年のドラフトでもMF株は大体インフレを起こす。そもそも選手の多くがフルタイムで普通に仕事をしており、NFLやNBAやMLBほどLife workとしてラクロスをやっている訳ではない現状では当然Physicalの維持に割けるリソース/時間も少なく、引退の時期が早い中、特にMFは賞味期限切れが早いという事情も。

④シーズン途中でのドラフト
他のスポーツと違って非常にユニークな点がここ。NCAAのシーズンは2月に始まり5月最終週の決勝まで。MLLは5月中旬から8月中旬までの3ヶ月。つまり、3週間重なっており、ドラフトはシーズンの前半に行われることになる。NCAAの4年生はトーナメントが終わった直後にドラフトされ、その後夏休みの間MLLでプレーするということに。選手によっては(特にMFとAT)入団直後からチームの戦力にインパクトを与えることになる、MLLのチームとしてもそもそも即戦力での戦力補強として結構ガチで宛てにしてる部分もある。直感的に、今年の場合DukeのNed Crotty辺りはATの3枚目、4枚目として活躍してくる気がするのと、JHUのKimmelやUNCのDelaney、VirginiaのCarroll辺りのMFの便利なall rounderたちは普通に貢献してくるんじゃないだろうか。

またチームから見ると、即戦力を補強することで一気にTurn aroundを図りたい。3連覇を目指しながら中盤を支配できる機動力のあるMFを欠き機能不全に陥っているToronto Nationals、DodgerばかりでQB/司令塔が欲しいLing Island Wizardsがどう動くかが注目。

⑤X-Factor(予想外の選手)
どのスポーツでもそうだが、必ずしもドラフト指名順位と、その後のキャリアでの活躍の度合いは一致しない。上位指名されたにも関わらず残念な感じで終わる選手もいれば、補充枠で入ってAll starにのし上がる選手もいる。NCAAとMLLでの求められる要素の違い、スタイルの違い、NCAAで決勝まで残りメディアで注目されることから実力以上に評価がインフレしてしまう事などが原因と思われる。去年のSyracuseの優勝の立役者、Kenny Nimsも上位指名されるが、結局ぱっとしないまま今年はもうNYでの仕事に集中しMLLではやらないとのこと(上位指名権を使ってしまったチームは泣くに泣けない…)。また、過去5年でのMLL最強プレーヤーと呼ばれたMatt StriebelはPrinceton時代はキャプテンでありながら注目度はイマイチ。ドラフトでも19位という下位指名。MLLに入ってからも地道な練習を続け、ダッジ、シュートに磨きが懸かり、見る間に最高クラスへと成長した。(彼の場合はPrincetonでATからMFにコンバートされたこと、そもそもサイズと身体能力が高かった割にスキルの伸び幅が大きかった点もさることながら、ムチャクチャ努力家という点において特殊)


3.チームUSAの活動

徐々にUSAとしての活動が始まってくる。そうは言ってもMLLのシーズン中なので、今後はほとんど調整的な試合だけでEnglandに向かうことになると思われるが。今週末にはNCAA 4年生代表との試合(ロースターはこちら。)。7月8日にはAll MLL(もちろん除くUSA代表)との試合。追って情報が入り次第Updateします。

いたる@13期

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