2010年6月27日日曜日

Team Australia

今回はTeam Australiaについて。

Australiaのチーム名はSharks。キャラもなかなかキャッチーに仕上がっている。

Maryland MF Adam Searのインタビューより

NCAAでは男女共にAustralia出身の選手を留学生として取っていたりする。女子のNorthwestern大学4連覇の立役者、去年の#7 Hanna Nielsenもその一人。

男子ではMarylandにMFのAdam Searが今年まで在籍していた(Bioへのリンク)。その彼が数週間前のInside Lacrosse Podcastでインタビューを受けていたので、その紹介。中でいくつか彼が所属するWLCのTeam Australiaの話やAustraliaのラクロス事情が取り上げられていたので。(Inside Lacrosseの記事&Podcastへのリンク

僕自身も現役の頃、3年生になる前の春休みに、海外での経験/飛躍的実力向上を求め、AustraliaのVictoria州のチャンピオン、Williams Town Lacrosse Clubというチームに二ヶ月半程単身Home stayしてお世話になったことがあり、当時のことが思い出されて非常に懐かしかった。

オーストラリアのラクロス事情

ちょうどよくまとまったWikiのリンクがあったので紹介。

Melbourneを中心としたVictoria, Adelaideを中心としたSouth Australia, Perthを中心としたWestern Australiaの三つの州がコア。その歴史は実は結構古く、100年以上前に遡る。(僕がステイしていたチームのクラブハウスにも100年前の白黒写真に当時の木製スティックを持ったメンバーの写真があった。)競技人口自体は決して多くなく、ハッキリ言ってMinorスポーツ。(ちなみにAustraliaで熱いのは何といってもAussie Football、次いでCricket, Rugby, Soccer, バスケ…という感じだろうか)

面白いことに、アメリカや日本と違い、学校がチームの母体になっていない。基本的に全て地域に根ざした町ごとのクラブチーム。そこに子供のころからおじいちゃん/おばあちゃんまでが所属してプレーするという家族ぐるみ/コミュニティ密着型。イメージ日本の町の剣道場/柔道場/空手道場に近いイメージじゃないかと。

どこのチームもホームグラウンドとClub Houseを持っており、練習は火、木の夜に1.5-2時間ずつ練習、土曜の朝に試合、というスタイル。つまり週たったの3日、しかも数時間。多くの社会人メンバーが仕事を追えて夕方にグラウンドにやってくるパターン。練習や試合の後はClub houseでビールを飲むことも。チームの歌などもあり、歴史を感じさせる。

練習時間は2時間と圧倒的に少ない。一方で、個人的には、練習時間が少ない分、一つ一つの練習に対する目的意識と集中力が高く、練習の設計も非常によく頭を使われていて(どうやったらもっと楽しく出来るか、集中させられるか、目的を達成できるか等)、単位時間当たりの効率は圧倒的に日本よりも高いと感じた。

以下、Adam Searが言っていた話の中で面白かったネタをいくつかピックアップ

Team Australiaの目標

過去のWLCでは長らくUS、Canadaに次いで3位。何とか2位に上がりたいと企んでいる。Adam Searも弱者が強者を食うチャレンジとしてやりがいを感じていると述べた上で、正直競技としての規模の大きさ、ナショナルチームの人的/資金的リソースでの差は如何ともしがたいとしていた。

US、Canadaは当然、大きな競技人口に支えられたラクロス協会、そしてスポンサーから多くの資金的/人的バックグラウンドがある。

一方オーストラリアは、ほとんどの選手が完全にフルタイムで普通に仕事をしており、今回のWorld Championshipの渡航費用も全て手弁当(自己負担)。人によっては大会期間の休暇を取るのもやっと。日ごろの体力向上、Weight trainingといったコンディショニングもほとんど自分でやらざるを得ず、その辺の事情が大きく戦力に影響していると。(その辺は日本と近いかな?)

一瞬女子の事情

ちなみに余談だが、女子は事情が異なり、競技人口で圧倒的な差があるUSに何度か勝ち優勝している。語ると長くなるが、個人的には、USの女子ラクロスは実は意外にも数年前まで結構古くからの「流儀」やStereotypeに縛られ、スポーツ本来の純粋な競争/進化を遂げてなかった面があったのが原因じゃないかと思っている。「女子ラクロスはこうあるべき」という無駄な先入観に縛られて、「このルールの中で勝つための限界を突き詰めたらこの戦い方」というフロンティアに到達できていなかったんじゃないかと。結果、よりシンプルにスポーツとして勝ちに行ったAussieがそこそこ行けてしまったっていう。

ちなみにNCAAでその隙を突いて、科学的で合理的な新しい戦い方により秩序を破壊する事で一気に頂点に上り詰めたのがNorthwestern大学。HCのHillerが2005年の決勝でプレーヤーとして敗れた対面が、若きAustraliaのエース、そして後に彼女の元でNUを5連覇に導いた原動力、Hanna Nielsenだったらしい。負けず嫌いのHillerはNielsenとの入学面接の際には悔しくてWLCの話は一切触れなかったとか…

NU女子は5連覇達成の後、6連覇を掛けた今年は、昨年までの主力が抜けた穴に加え、Maryland初め既存の強豪チームがその戦い方にキャッチアップしてきたことにより優勝を逃した。

NCAAとAustraliaの違い

また、Marylandで実際に4年プレーしてみて、オーストラリアとの違いは何かと聞かれたAdamの答えは、大きく2つ。

1つは専門化の度合い。Aussieはまだ選手間の実力差も大きく、チームの選手の人数も限られ、Competitionもそこまで突き詰めきられてるわけではない。多くの選手がOもDも全部やる。こと能力の高い選手は必然的に出ずっぱりになる。一方で、NCAAは40人で徹底したCompetitionの中に投じられ、チーム戦術/システムがっちりの中でやるので、専門化が相当なレベルまで進んでいる。シュート打つ人、ダッジする人、FOする人、DFする人、とMFでも細分化されている。

2つ目はやはり、Physicalの鍛え方、どれだけ科学的にアプローチするかの違い。AussieでもWeight trainingは何となく個人でやっていたが、Maryland/NCAAでは専門のフィジカルトレーナーが付いて、徹底的に科学的に鍛えられると。おかげで自分がオーストラリアにいてはなれなかったレベルまでサイズ、パワー、スピードの面で飛躍的に向上したとのこと。

そしてこれはSearとは関係なく、僕個人がWilliams Townでプレー/観戦して感じたAustraliaならではの特徴を紹介。①パスワークが速く、昔ながらのCrease前でのPick & Feedが非常に巧い(なので見てるとパチッ、パチッと小気味良くボールが動き、テンポが良くて気持ちいい)、②ファウルの判定がより厳しい(少し乱暴にStick以外をチェックするだけでフラッグダウン。)、③結果、DFのチェックが非常にピンポイントで正確。パチッとスティックを打ってくる。④従って、びっくりすることに試合もShoulder padをつけてない選手がほとんど。僕自身も実際にVictoria州リーグの試合に出る中で、肩や胴体をチェックされることがほとんど無い事に気付き、途中からショルダーを装着するのを辞めてしまった…(この点はもしかしたらさすがに国際大会のルールに則って嫌々ながら着用してくるかも?)

代表選考プロセス

毎年クラブチーム間で行われる州別のリーグ戦、及びState Championshipゲーム(プレーオフ)のパフォーマンスを通し、州選抜メンバーが選ばれ、州対抗のNational Championship Gameが行われる。そこでのパフォーマンスと、併せて行われる数日間のTry outでNational Teamの選手が選ばれるとのこと。

同じ仕組みがジュニアの頃から導入されているため、シニアで選ばれる選手たちは大体ジュニアの頃からNational teamでプレーしているという状況。

今年のメンバー

メンバー表のリンク

すいません。さすがに誰が注目選手なのか等の情報は無しっす。少なくともAdam SearはMaryland卒業直後なので、恐らく大車輪の活躍をするはず。いくつか掲示板に載ってたUSでプレーする/してた選手の情報を転載。
●Gareth Allen played at Drexel
●Jimmy Watson-Galbraith at UMBC
●Darren Nicholas played or practiced at the LI Lizards
●Keith Nyberg at Limestone/NLL practice squad

あと、自分がステイさせて頂いていたWilliams Townから二人が選出。1人目は当時近所に住んでいて、プレーでもめちゃくちゃ目立っていたMFのRyan Garnsworthy。当時15歳だったので、今はもう25歳くらいか。当時から本来はUnder 17やUnder 19でプレーする年代であるにも関わらず、余りにも上手いということで3階級くらい飛び級してAdultのトップチームでプレーし始めており、そこでいきなり主力級の活躍をしていた。「こいつは間違いなく凄いプレーヤーになるな!」と感じたのを覚えている。(彼は間違いなく僕のことは覚えてないと思うが…)

身体能力の高さに加え、シュートも速く正確、そして何と言ってもStick skillが恐ろしく滑らか。チームメートをして、"Sick"とか"Wicked" (Aussie slang)、そして"Smooth like putting butter on the bread with a butter knife.(バターナイフでバターを食パンの上にするするっと塗るように滑らか)"と。正にそんな感じだなーと思ったのを覚えている。

更に弟の当時12歳くらい?のMattという元気のいい天才少年がいたのも覚えているが、彼も兄弟揃って代表入り。ん?従兄弟だったかな?忘れた…

当時Ryanに近所のフィールドで何回かキャッチボールに付き合ってもらったが、若いくせに(且つ割りとLaid backな選手が多いAustraliaの中にあって)非常にしっかりした考え方/desciplineの持ち主で、ラクロスに対する意識レベルが極めて高かったのが印象に残っている。どうやったらラクロス上手くなれるの?と訊いた時の彼の一言目は、「Dedication.(努力)」。そして、「とにかく壁打ちをしまくること。」壁に向かって上から、横から、下から、バウンドでボールを投げ、左右の手で、いろんなヘッドポジションでキャッチする、ということをひたすら毎日繰り返せと。またダッジについては、森の木立に連れていかれ、この木々を相手に全速力してひたすらランダムにダッジしまくれと。スプリットしたり、ロールしたり。自然を利用するトレーニングに、プロゴルファー猿を連想したのを覚えている。

日本体験

Adam Sear、実はジュニア時代にU-19かなにかのAustralia代表として日本を訪れたことがあったと言っていた。キッチンテーブルの無い部屋、泥のグラウンドなど、文化の違いや、江戸陸で数千人の観客の前でプレーした経験など、すばらしい思い出だったとのこと。

Tokyo Jr誕生の裏話

最後に一瞬余談だが、実は、1999年に僕らが現役だった頃、白井さんや沢田さん始めOBの皆さんと共に東京Jrを立ち上げた裏には、多分に僕がAustraliaのクラブチームで見てきたものの影響が含まれている。

Australiaのラクロスは、年代別に細かく区切られたチーム/リーグ、そして成人以降はさらに実力別に4段階に分けられている。実力とコミットメントに応じて所属するレベルを選び、そこで全員がラクロスを楽しみ、学ぶという仕組み。若い頃から試合経験を積み、実力が上がれば上のチームにPromotionする。2軍のチームには第一線を退いた元スター選手がおり、若手と共にプレーしながらラクロスの楽しさとプレーを教える。

当時ちょうどリクルーティングの改革直後で新入生の数が爆発的に増え、コミットメントのバラつきや試合出場機会/上級生との接触頻度の減少という問題が予見される中、まさに東大ラクロス部にとって打って付けの仕組みだった。若い頃からラクロスの楽しさを知ってもらい、試合経験を積み、上級生やOBから学ぶ。OBに対しては引退後のプレー/現役とのコミュニケーションの場を提供し、さらに上級生の中で私生活や授業の関係でフルコミット出来ないがラクロスは続けたいというメンバーに対するプレーの場を提供する(それまではその時点で辞めるケースが多かった…それじゃ勿体無いなと)、というConcept。

当時はいろいろと反対意見もあったJunior(ちなみに名前は当時のテレビ番組I Love SMAPで裏方として売れ始めていたジャニーズジュニアからパクりました…)、手探りで始めたが、10年以上続いて今に至ろうとは正直あまり想像していなかったのでちょっと感慨深い。関係者の皆様、本当に有難う御座いました。

と、完全に関係ない昔話でしたが…

WLCでは?

さて、最後に話題を戻して、WLCでのAustraliaの成績はどうなるだろうか?客観的に見ると、やはり引き続きUS、Canada相手には相当苦しいだろう。最大の見所は、Iroquoisとの戦いがどうなるか。Iroquoisは過去に比べてMLL、NCAAのメンバーも増え、明らかに実力を上げてきている。非常に楽しみ。

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以下、初稿アップ後に一個大事なことを書き忘れたことに気づいたのでクイックに補足。

Michigan以外の留学先候補としてのAustralia

Michigan以外の+αの留学先として、Australiaのクラブチームは恐らく最も現実的な気がしているので念のため言及。強いチームは非常にレベルが高く、一段上の次元のラクロスを経験出来る。且つ、地元のクラブチームで緩い規制/縛りの中でプレーしているため、ぱっと入ってきた外人(日本人)でも練習/試合に参加し易い。

現に過去に複数の日本人ラクロス選手が男女問わず同様のことをしている(Stay先はVictoriaだったりSouth Australiaだったりいろいろみたいだが)。大事なポイントは、必ずしも日本でトップレベルの選手じゃなくても全然可能という点。チームのレベルや、チーム内でのDivisionにばらつきがあるので。Bチームでも試合に出られるレベルの選手なら十分な経験を出来るし、極端な話始めて1年未満の1年生が行っても十分ワークすると思う。ホントに。

春休みが丁度シーズン初期に重なるのでそこで数週間~数ヶ月行くもよし、もしくは英語力向上、人生経験も含めてがっつりやりたいならWorking Holiday Visaで1年休学&留学するもよし。一年異文化体験してレベルの高いラクロスの中に身を投じれば、3年や4年で復帰して一気に大ブレークすることも可能。(長い人生/キャリアの中で一年くらい遅れることなんて超Negligible。敢えて直線的な人生から意識的に脱線を作り、多少の寄り道/回り道をして違う経験を積んだ方が後から大成することすら。)ピンポイントで自分の話ばかりしても説得力はあまりないが、僕自身は、数ヶ月のステイを通して、その後の人生に大きな影響を与える素晴らしい体験を得ることが出来た。(Michiganに行ったメンバーも角度こそ違えど同じような経験をされたんじゃないかなと想像する。)

学校の授業に関しては、学部を選ぶかも知れないけどやり方はいくらでもある気が…僕の場合は試験の直後に渡航し、3年前期の授業登録は友人にお願いし、授業は最初の1ヶ月半全ぶっちというオプションで行った(よくよく考えるとその後も法学部の授業は卒業まで一度も出なかったので結局同じか…)。法学部以外でも事情を説明すれば先生によっては柔軟に対応してくれたりしないですかね…?

何か面白いことをやりたい、他の人と違うことやりたい、人として、選手として線形じゃない変化/突然変異的な進化を遂げたいと思ってる行動力ある若手、与えられた仕組みの中でやるのは面白くねえ、自分は自分のスタイルを切り開くと思ってる尖った個性ある一匹狼は是非ご検討を。もちろん、単純に、純粋に、遊びとして、楽しそうだから行く、というLaid backなスタイルでも良し(いやむしろAustraliaのテンション的にはそっちの方が合ってるか)。僕でよければ相談乗るので。何よりも、日本では得られない、むちゃくちゃ楽しい経験が出来るので!たった一度の人生、後悔無いようやりたいことやって楽しんだ者勝ちなので!(ちなみにかく言う当時のワタクシも渡豪の動機の8割は合コン戦闘力アップですた…「海外留学はモテる」という根拠なき妄信に導かれ…結果GC戦闘力は全く持ってアップしませんでしたが…)

いたる@13期

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