2010年6月26日土曜日

NCAA 2人のヘッドコーチの移籍② John Tillman (HarvardからMarylandへ)

さて、今回は前回のTambroniに続いて、先々週の大型HC移籍その②、HarvardのTillmanのMarylandへの移籍。(Inside Lacrosseの記事

バックグラウンド

そもそも、今回の話の発端は以前の記事にも書いたMarylandの看板HC、Dave Cottleの解任劇。Loyolaで結果を出した後Marylandに引き抜かれたCottleは9年目のシーズンで、強くて層の厚いAとDに支えられた順風満帆のシーズンを送っていた。それが、格下と見られていたNDに2回戦で完全に塩漬けにされ、7-5で敗北。その次の日に早速学校から解任が報じられるというショッキングな出来事だった。いくらなんでも次の日というのは早すぎたので、「もともと3年連続でFinal Four行けなかったらクビになる契約だった」とか、「短気で非情でラクロス音痴と評判のMarylandのAthletic Director(体育会全体のトップ)の女性Debbie Yowが単純に切れただけ」などと憶測が飛び交った。

ちなみに、この解任の意思決定にに関しては時間が経ち、Notre Dameが勝ち進むに連れ、多くの疑問の声が聞かれるようになった。「そもそもNDが当初印象を持たれていたほど弱いチームではない/決して番狂わせではなかったんじゃないか?(準決勝でCornellを倒し、決勝ではDukeを6点に抑えあと一歩で優勝するところだった)」、「それをたった一回負けたくらいでヒステリックに全否定することもないんじゃないか?」など等。解説者のQuint Kessenich曰く、MDは決して悪いチームではなかった。A, D, Gは最強クラスで、彼らはToughなリーグ戦の相手に毎週全力を尽くし、勝ち続けるという素晴らしい結果を残した。それを近年稀に見る硬いDのND相手に勝てなかったからってすぐに責任を取れというのはMDのためにならないんじゃないかとも。(あ、と書いてたら丁度Athletic DirectorのDebbie YowがNC Stateに移籍するとのニュースが…(リンク)これって連鎖解任なのか…?)

Marylandにとっては苦渋の決断?

ただまあ一方で、毎年強い強いと言われながら最後は結局優勝争いに絡めていなかったのは事実で、「何か大きな変化」が必要だったのは事実。どっかで冷徹にコーチを変える必要があったとの声も聞かれた。MarylandはLacrosse Hot Bed(メッカ)のど真ん中にあり、長らく強豪で、頻繁にFinal 8、Final 4に顔を出しているが、ちょっと意外だが実は過去に一度も優勝を経験していない。女子ラクロスが(皮肉なことにMaryland卒業生HC Hillerが率いるNorthwesternに負けるまで)長らく常勝王国を守ってきたのに比べると「もっとやれんだろ?」感が強かったはず。

Cottleもそろそろ「シニア」な年齢に突入し、今後のことを考えると思い切って若くてエネルギーのある、将来有望な監督にガッと切り替えるというのは後から見れば正しい判断だったのかも知れない。

コーチ探しの数週間

その後数週間に渡り、ラクロス界では候補者予測が始まり、元SyracuseでCanadaの英雄、伝説のプレーヤーGary Gaitや、ScandalでDukeをクビになり、その後Bryant、そして今年のUS代表を率いるPresslerの名前が挙がったりもした。

が、蓋を開けてみると結局至極全うで無難な選択。Harvardで3年間HCを勤め、「まあまあ」の成績を残したTilmanに決定。(GaryはSyracuseの女子のHCとしてコミットしており、家族共々地元を離れる気が無い、PresslerはさすがにBryantでまだやり切ってない?) QuintはInside Lacrosse Podcastで、「ぶっちゃけTilmanが第一候補だったわけじゃないんじゃないか」と指摘していた。また、オフシーズンの夏は有望な高校生を視察し、入学をコミットさせるリクルーティング争いの大事な時期で、この時期にコーチ不在の期間を作ってしまうとその後数年に渡ってのチームのパフォーマンスがダメージを受けることになるという事情もあり、Maryland側も急ぐ必要が有ったという面も。

Who’s Tillman?

10年間NavyでAssistant Coachをした後、HarvardのHCに就任し、3年間で20勝19敗。もともとHarvardは同じIvy LeagueのPrincetonやCornellとは違い、そこまでLacrosse名門校という訳ではなかった(どちらかと言うと典型的高学歴校のちょっとひ弱なイメージ?)。それを、チームの仕組みや規律/意識レベル、組織や施設なども含め、全うなレベルまで持ってきたという点では高く評価されている。正直僕自身も詳しくないが、当然、しっかりした規律と情熱を持った、頭のいい、実力のあるコーチなんだろう。

今後のMaryland

来シーズンに関しては、今シーズンの主力の多く、特に(試合のDVDを見た皆は目に浮かぶと思うが)最強クラスのAT3枚(Grant Catallino、Travis Reed、Ryan Young)がそのまま残る。恐らくTillmanは過去の戦力を存分にレバレッジし、戦術やスタイルはある程度生かした形で多少のMinor Changeを加える程度で戦ってくるんじゃないか。

その後数年間で徐々にリクルーティングで自分の色を出し、戦術や練習も少しずつ変え、彼のチームにしてくるだろう。一体どんなチームに仕上げてくるんだろうか。

Quintは、これまでIvy LeagueでやっていたTillmanはMarylandに移籍してすぐに、そのリーグ戦の対戦相手の顔ぶれの過酷さ、特に同じACCの相手であるNorth Carolina、Virginia、Dukeのレベルの高さに苦しむことになるだろうとのこと。

浮沈の鍵を握るのは、弱さを指摘されてきたMFをどう立て直すか。伝統的にAT、Long Stickで強い選手を採り、育てて来たが、これまた伝統的にMFが手薄。Offenseの負荷がATに集中するため結局ATも失速するという悪循環に陥っていた。その辺をどう梃入れするかも注目。

異例の7年契約

今回の契約、一点だけ明らかに他に例を見ない、注目すべき点がある。7年という超長期である点。学校側からすると彼がワークしなかった場合を考えるとリスクがある。一方でTillmanからするとJob Securityと共に、長期的な施策も含めてじっくり自分の作りたいチームを作りたいという意図も。吉と出るか凶と出るか。まあ、本人も人生/キャリアを懸けてがっつりコミットし、純粋に強いチームを作りたいと思ってるはずで、学校もそうなって欲しい訳だから、Win-winになって欲しいな、それでMarylandが強くなってNCAAをかき回し、もっともっとNCAA Lacrosseを盛り上げてくれればいいなと個人的に思う。


いたる@13期

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