2011年2月7日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.01 Notre Dame-Team USA

...の前に一瞬脱線。ジムで運動しながら、今週末行われたMMA (総合格闘技)のUFC 126を観戦。
全身鳥肌が立つ瞬間が二つあった。

Middle級タイトルマッチ

一つは、ここ数年Pound for pound(全階級を通して最強)と言われる、MiddleのAnderson Silva(アンデウソン=シウバ)。PRIDE時代はパッとしなかったが、UFCに本格参戦し出した06年辺りから急激に力を付け、今や敵無し。UFC PresidentのDana Whiteをして「He is the best fighter in the world, period」と言わしめる。一方で、相手との力の差があり過ぎ、モチベーションの維持に苦しみ、やる気の無いファイトからファンの怒りを買って来た。そんな彼にとって最も危険な相手と言われたVitor Belford(ビトー=ベウフォード)。1R開始早々、前蹴りをボディーにフェイクしつつ顎にアッパー気味に入れて一発KOという、格闘技史上に残る鮮烈なKO勝利を飾った。K-1も含めた立ち技系格闘技にも詳しく、自身もテコンドーチャンピオン出身の解説者Joe Roganですら、「空手、ムエタイ、テコンドー、全ての格闘技を通じて、こんなKOは未だかつて見た事が無い」と言わしめた。ぶっちゃけ、もう世の中に対戦相手がいなくなってしまったんじゃないだろうか?その位Anderson Silvaの技術レベルがぶっちぎりで抜きん出ていることを印象づけた。

Light heavy級の新星Jon Jones

もう一つは、新世代代表格、Light heavyのJon "Bones(ガリガリ)" Jones。弱冠23歳のエリートアスリート。相手はリアリティショーコンペティション、The Ultimate Fighter Season 8の優勝者でNCAA All AmericanレスラーのRyan Bader。共に次代のUFCを背負って立つと言われる二人。Baderもここまで無敗で、大きく身体能力も高く、技術的にも伸び盛り。戦前はどっちが勝つか?と言われていたが、始まってみて衝撃を受けた。これまで多くの難敵を圧倒して来た、あれだけ大きくAthleticなBaderをいとも簡単に弄ぶJones。危ないシーンを一切見せず、冷静に、Submissionでサクッと仕留めてしまった姿を見て、全身に鳥肌が立った。Jonesは正にReal dealだ。恐らく次の試合で早くもShogunへのタイトルショットを手にする可能性もある。仮に今回勝てなくても、間違い無く今後5-10年はUFCの頂点で戦い続けられる才能。でかくて、身体能力が高く、well-roundedで、動きがcreativeでtricky。未だに鋭く切り立ったLearning curveの真っただ中にあり、試合の度に技術的に大きく成長している。しかも、極めて賢く、謙虚で、相手へのリスペクトを忘れない。試合の度に「自分はまだ技術的に未熟で、もっと練習が必要だ」と発言している。もう一人の絶対王者誕生の予感。MMAは最早、NBAやNFLでトップにいるようなアスリートと同じレベルの選ばれたDNAを持った者だけが頂点に立つ事が出来る、本当のメジャープロスポーツの時代を迎えつつある。


二人の日本人ファイター

日本から参戦した山本KID徳郁選手、小見川選手は残念ながら共に判定負け。ひっそりと行われ、PPVの放送にすら乗れなかった。2000前後の、日本が世界の総合格闘技の震源地だった古き良きPRIDE時代は去り、残念ながら日本のMMAは今やアメリカのトップレベルとの比較感で、4部リーグ、三軍以下に成り下がってしまった。ここまで、秋山選手、五味選手、青木選手と日本のトップクラスの選手達のUFCや(レベルはかなり落ちるが)Strikeforceへの挑戦が続くが、今のところ中堅級の選手相手にやられ、ことごとく上手く行っていない(例外は早くからUFCで地道に実績を積んで来た岡見勇信選手くらい)。もはや、MMAで世界最高峰を目指すなら、テニスの錦織、バレエの熊川哲也、サッカーの10代や20代前半で欧州移籍する選手達のスタイルで、かなり若い段階から本場の熾烈な環境に身を置いて鍛えて行くしか無いんじゃないかという気がする。それくらい、この10年間で、環境やコンペティションやハングリーさ、結果としての技術と競技レベルに埋め難い差が生まれてしまった。(ちなみに、やれピークを過ぎたとか、やれマッチメークで過保護されてきたとか、公私ともにいろいろとメディアや世間から批判されることの多い山本KID選手だが、個人的には、こうやって劣勢の中高いレベルの舞台に挑戦するその想いや姿勢には純粋に敬意を感じるし、応援したいと素直に感じる。恐らく数試合限定、場合によっては1試合のお試し契約だろうから、もう余りUFCでは見られない気もするが...)

と、ラクロス以外の余談はほどほどにして、本題...

US代表2011

さて、お待ちかね、2011年のNCAA DVD 1発目。1月30日に行われた、NCAAシーズン開幕前の集客試合。US Lacrosse Champion Challenge。2011年度のUS代表とNotre Dameの試合。Florida州Orlandoにて。

今回のUS代表はNLLに参加しているメンバーが含まれていないため、本来のフル代表からは数段落ちる。実質的には過去のUS代表メンバー+非NLLメンバー、特に昨年卒業した社会人一年目のメンバーが中心。また、今後数年でMLLの最前線に躍り出て来るであろう2011年卒業組が含まれておらず、Shanahan、StriebelやKevin LeveilleなどOver 30のベテランも含まれているため、実際にこの中から2014年のUS代表に入って来るメンバーは数人程度じゃないだろうか。

とは言え、Peet Poillon (Chesapeake)やMike Kimmel (JHU '10-Chesapeake)など、2014候補と目されているメンバーも何人か入っている。

MFのBrooksとShanahanは'10年も代表入りすると一部から言われていたが、怪我等もあり漏れたパターン。特にBrooksはまだ若く、'14年の代表入りを目指すとのこと。

WLCの次年から即代表チームを始動させる事で、ラクロスコミュニティ内での注目を保ちつつ、候補選手達の中にも一定の緊張感と競争意識を保ち続けるという協会側の戦略。今回も、本来フル代表には入っていなかったかも知れない若手がstep upし、ベテラン選手、今回呼ばれていない選手達の立場を脅かしている。

2011 Champion Challenge Team USA Roster (リンク)

Attack
  • 恐らくATは実際のフル代表と一番大きく顔ぶれが変わるポジションのはず。NLLのシーズン中で今回は参加出来ていないMundorf, Westervelt, Crotty辺りが入ってくると思われる。
Steven Boyle – Boston Cannons – Johns Hopkins ‘10
Craig Dowd – Long Island Lizards – Georgetown ‘10
Kevin Leveille – Rochester Rattlers – Massachusetts ’03 ^
  • '10代表では控えとして帯同。今年は結婚式やら何やらでMLLは1年休むが、復活して14年代表を目指すとのこと
Max Quinzani – Boston Cannons – Duke ‘10
  • 10のDVDを散々見てる皆さんはご存知の通り。準決勝のVirginia戦での決勝ゴールは未だに瞼に焼き付いている。難関Dukeを成績優秀で卒業し、NYの投資銀行で働きながらMLL。凄い。
Chazz Woodson – LXM Pro Tour – Brown ‘05
  • 帰って来たトリックスター。BrineのCMでMikeyと共にフィーチャーされてる彼。

Midfield

Michael Kimmel – Chesapeake Bayhawks – Johns Hopkins ‘10
  • 14代表の本命の一人だろう。去年のJHUでは孤軍奮闘。MLLでユーティリティプレーヤーっぷりが開花。
Matt Striebel – Rochester Rattlers – Princeton ’01 *#$
  • 三度のUS代表。MLL創設時からの大ベテラン。さすがに次は無いんじゃないかな?
Stephen Berger – Long Island Lizards – Washington College ’04 ^
Stephen Peyser – Long Island Lizards – Johns Hopkins ’08 *
  •  NCAA 07決勝DVDを見た方は強烈に印象に残っている、Rabilの片割れ。10代表でも主力。
Steven Brooks – LXM Pro Tour – Syracuse ’08 ^
  • 怪我から復帰。楽しみ。だが、LXM Proに参戦しており、MLLには出ていない。どうなる?
Chris Eck (FO) – Boston Cannons – Colgate ’08 ^
  • Alex Smithと並ぶMLLを代表するFOGO。Alexも26歳とまだ十分行ける。どっちがFOGOポジションを取るんだろうか?
Doug Shanahan – Rochester Rattlers – Hofstra ’01 #$
  • 01年にHofstraで初代Tewaaraton (MVP)、02年US代表でWLC MVPの大ベテラン。Hofstra時代は二足の草鞋でFootballのDefensive backとしても突出した選手。NFLのNY Jetsと開幕ロースター一歩手前まで残った超エリートアスリート。
Peet Poillon – Chesapeake Bayhawks – UMBC ‘09
  • 先日のUMBCの記事でも紹介した、雑草中の雑草から這い上がって来た超新星。ラクロス部の無い高校で自らチームを立ち上げ、短大で活躍してProveし、転校したOhio Stateで更にProveし、更に転校したUMBCで大活躍しながらもMLLからは注目されず、練習生で参加してスタメンを勝ち取り、大活躍。このハングリーさ/雑草魂は半端ねえ。小さいけど速くて上手い。個人的には強く応援したいし、14年代表にも入って欲しい。

Defense

Matt Bocklet – Denver Outlaws – Johns Hopkins ‘08
Lee Zink – Denver Outlaws – Maryland ’04 ^
Steven Waldeck – Toronto Nationals – Stony Brook ‘10
Adam Crystal – Tobay LC – Drexel ‘07
Ricky Pages – Long Island Lizards – Ohio State ‘08
Nick O’Hara – Long Island Lizards – Duke ’07 ^

Goalie

Scott Rodgers – Toronto Nationals – Notre Dame ‘10
  • 来ました。昨年ND準優勝の立役者。影のMVP。でかくて熱くて速くて上手い。MLL初参戦の去年は「見かけだけですぐ化けの皮剥がれんだろ」などフォーラムで散々叩かれてNatsに入団したが、1年間で見事にMLLにアジャスト。Brett Queenerと出場枠を二分するまでに育った。
  • DFを統制する姿も頼もしい。Natural leader。もしこのままパフォームし続ければ、14年代表は十分有り得る。
Adam Fullerton – Denver Outlaws – Army ’08 *
  • 10年WLCでは副ゴーリーとしてDocの後ろから支えた。実力十分。今回の試合でも上手さと落ち着きを見せる。

Coaches: Kevin Cassese *#$, Brian Dougherty *~
  • 共に10年US代表優勝の立役者のCasseseとDocはコーチに退き、裏から支える。

* member of 2010 U.S. men’s national FIL world championship team
^ member of 2009-10 U.S. men’s national training team
# member of 2006 U.S. men’s national team
$ member of 2002 U.S. men’s national team
~ member of 1998 U.S. men’s national team

注目のプレー

1点目、Kimmelの1 on 1からのK Leveilleのクリースへのカットが技巧派。Quintの、「もし自分がアタックで、オフボール状態で対面のDのヘルメットの後頭部が見えたら(相手が自分から視線を切ったら)、それは最高のカットのチャンスだ」というコメントが非常に解り易い。

また、NDのいつものクリース前を鬼パックして、超っ早でスライドに行くDFに対して攻めあぐねるUSに対して、「このタイプのDには一人で突っ込むオフェンスは効かない。また、パスするにしても一発のホームランパスで決着を付けようとすると思うつぼ。複数の細かいパスで繋がないと。」とQuint。

全体的にUS代表のベテランMF軍団のロングシュートが印象的だった。NDの様に外から打たせて取るDFだと、この手のロングシュート力が高い相手には弱い。(まあ、裏を返すと、NCAAでここまでロングシュート力のあるチームなんてほとんど無いので、それだけ効果的とも言えるが)
  • 2Q 5点目のDoug Shanahanのstanding high bound shot。かなり手前でバウンドして、ゴールの上に突き刺さる高低差。Old school。シューターとしては、こういうパターンも引き出しに入れて打ち分け出来るようにしておきたい。
  • 6点目のSteven Brooksの左のStanding shot。MLL時代に2 point shotを量産したミサイルは健在。下半身の土台の安定っぷりが半端無い。
  • 4Q 9点目のPeyserのMiddleもまた違ったタイプ。取ってワンクレイドルからスナップでスパッと突き刺す。

また、前半USのゴールを守ったAdam Fullertonの好セーブが光る。

去年はJHU最高学年で、FOにDFと全てに於いて大車輪の活躍をした一方、疲弊して本来の力が発揮出来ていなかったMike Kimmelが伸び伸びと輝きを放っている。

4Q残り10分、Peet PoillonのクリースへのカットからBTB (Behind the back)が美しい。Ohioなんて不毛地帯出身でここまでナチュラルに...しかも身長も175cmしかないのに...

Notre Dameは、思ったよりいろんな選手が点が取れるようになって来ている。去年のプレーオフはATがボロボロと言われていたが、その激闘と、その後秋の練習を通して成長したっぽい。リーグ戦を通してMLLに上位指名された主力MFのBrennemanとDavid Earlが徹底マークに合うことが予想される中、どこまでATや他のMFが奮起出来るか。GoalieのKempが頑張ればまた今年もそこそこいい線行くかも。

にしても、冒頭の注目選手紹介の写真で、NDのエース、MLL 5位指名のZack Brennemanが見れば見る程、ザ・たっちに見えて来た...

Highlight (リンク)


いたる@13期

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