2011年2月16日水曜日

NCAA 2011 Season Preview #7 Notre Dame

さて、先週末からついにシーズンが少しずつ開幕。Delawareを皮切りに、DukeやUNCなどいくつかの上位チームが先行して開幕した。今週末から本格的に全チームがリーグ戦に入っていく。怪我により多くのメンバーを失い早くもQuintから10位圏外の評価を受けているUNCは、全米No.1 Rookie AT Nicky Galassoが4得点と活躍するも、中堅校のRobert Morrisに14-11で辛勝。先が思いやられる船出となった。頼れるMF不在なのがきつい。もしBitter始め他の主力が怪我で倒れたら本格的にやばくなりそう(ILの記事)。

また一方で、記事やファンからの書き込みで指摘があるように、対戦相手のRMUが意外と強いという話もある。HofstraやStony Brook、Lafayetteなども正にそうだが、高校レベルでのラクロスの裾野がこの10年で約3倍と爆発的に広がったことにより、これまで有望な選手を独占していた上位校から溢れたかなり高いクオリティの選手が中堅レベルの学校やDiv 2/3の学校にカスケードしていくという現象が顕著になり、ここ数年で10~20位前後にいる学校のレベルがグッと上がってきている。特にここ10年で10倍に増えているCanadian NCAA選手の影響が非常に大きい。RMUにも複数の有力Canuck選手が在籍している。たった数人のCanuckが入るだけで30位のチームが5-10位のチームを食い得る爆発力を身に付けてしまう。その辺もまた競争の力学の変化として興味深く、NCAA lacrosseの一つの見所でもある。

シーズンを通して随時アップデートされるInside LacrosseのNCAA Div 1の試合日程と結果はこちら、Media/coach poll/rankingはこちら

#7 Notre Dame Fighting Irish

さて、昨年の最大の台風の目。去年国際親善で来日しているのと、梅ちゃんを始め家に選手をステイさせていた選手/スタッフも多いと聞いているので、特に親近感があるんじゃないかと想像する。中西部Indianaに位置するアメフト/バスケ等スポーツの伝統的名門校。「闘うアイルランド人」。(去年の夏までいたSanta Barbaraで教えて貰っていたゴルフのコーチの弟さんが丁度NDの体育会Golf部に入部した。Californiaのジュニアではそこそこ有名な選手だったらしく、今後の活躍を祈りつつ応援したい。)

超保守的で手堅いDFと守護神Scott Rodgersの活躍により、プレーオフ出場ギリギリの所から一気に決勝まで駆け上がり、決勝も延長一点差というギリギリの所まで迫った。Rodgersが卒業し、大きなダウングレードが生じるが、それ以外はほとんどのメンバーが残り、特にMFの二枚目以降、ATは去年のプレーオフから秋の練習に掛けての成長が著しいと言われている。普通に行けばトーナメント進出くらいは行けるはず。Gが機能すれば、また今年も結構いい線行く可能性。

DFの堅さは間違い無い。去年のプレーオフを通して、AT出身の僕ですら感動を覚えた。DF/Gの選手が見て学ぶものが多いチームのはず。クリース前を鬼パックし、統制の取れたチームディフェンスで、危険な場所からのシュートをほとんど打たせない。で、外から/薄い角度から無理矢理打たせて、鉄壁ゴーリーのRodgersが確実に仕留める、というスタイルで並みいる強豪を次々と沈黙させた。(去年のPlayoff 4試合の失点を見ると、Princeton 5点、Maryland 5点、Cornell 7点、Duke 6点と、トップクラスの攻撃力を持つ上位校をことごとく衝撃的なレベルの失点に抑え続けている。ここまで抑えられれば、よっぽどの事が無けりゃそりゃ負けないわ...)

一方で、スローペースで保守的な試合運びに対し、多くのファンが不満/批判を口にし、ショットクロック導入の議論に油を注いだ(スポーツとしてのラクロスの今後の方向性に関する前回の記事)。ちなみに個人的には、ショットクロック導入はもはや時間の問題だと見ている。今後数年で試験的導入が始まり、5-6年のスパンで導入されてくるんじゃないかと。NLL/MLLの試合の展開の速さと面白さを体感すると、どう理屈で考えても導入するべきとしか思えない。

MLLドラフトでは正に今年のNDの可能性を示すべく、何とSyracuseの7人に次ぎ、Marylandと並ぶ5人が選出。去年のプレーオフ、特に全国ネットで放映されたDukeとの決勝でのインパクトが強く、若干評価がインフレしている感は否めないが、それでも尚、DF/MにMLL級の選手が複数人ずついるということ。プレシーズン7位という評価も頷ける。2週間前のUS代表との試合では、比較的しっかりした試合を見せていた。

これまで中西部のパッとしないチームという事で、いまいち実力に見合った評価を得ていなかった面もあるが、去年の躍進で一気にリスペクトを受けることになった。(ちなみにその辺の「正当な評価を得てこなかった」歴史と理由については去年の記事を参照。スーパーどうでもいいが、懸案のメットもCascade Pro 7に修正され、ビジュアル的にも洗練された。)

(当たるかどうかは一切無視して、個人的な予想を言うと、この7位という順位はちょっとoverratedな気がする。恐らく今年も勝ったり負けたりで場合によっては10位前後に落ち着き、プレーオフにはギリギリ進出、1-2回戦で結構早めに負けると見ている。確かにDは強いし、MLL MFも2枚いる。でも、一歩ステップバックして冷静に考えると、やはりGはRodgersじゃない。彼の抜けた大きな大きな穴を埋めるのはほとんど不可能だ。そして、ATと他のMFが強豪校からは明らかに一段落ちる。去年だってRodgersがいなければそもそもプレーオフに出られてなかったし、プレーオフでのupset三連発も起こらなかった訳で。最悪リーグ戦敗退という結果になっても正直驚かない。)

Mark Dixonの解説(リンク

  • 冒頭のMark Dixonのコメント、"Cliche goes offense wins games and defense wins championships"(Cliche [クリーシェイ] /格言曰く「オフェンスで試合に勝つ事は出来る、でもディフェンスが無ければ優勝は出来ない」)が非常に印象的。正に真理を表している。多くのNCAAのHCがDefenseからチームをビルドアップする事の必要性を口にしている。
  • Dは相当鬼固い。Syracuseに次いで、全米No.2のDFを誇る。
  • GでRodgersの後がまの2年生John Kempがどこまでやれるか。(数週間前のTeam USAでの試合では、前半こそ得点を許したが、全体を通し、最高峰の選手達のシュートを比較的落ち着いて止めていた。)
  • #50 4年 LSM Andrew Irving (33位: Denver Outlaws)は小さい(175cm)が機動力があり走れる。(Team USAとの試合では強いMFを抑え、GBも着実に拾い、ブレイクも発生させ、最も高い評価を受けていた)
  • Close defenseは2枚の強力DF。去年はNo.1 DFと言われながら怪我で試合に出ていない#32 Sam Barnes (190cm, 29位: Long Island Lizards)、去年Cornell Rob PannellやDuke Ned Crottyを封殺してその名を轟かせた#35 Kevin Ridgeway (198cm: 18位: Hamilton Nationals)。でかくて、DFの基本姿勢がしっかりしてる立ち姿が二人ともえれえカッコいい。というか、見るからにDFが超堅そう。こんなん2枚いたら相当泣きそうになる。(しかし、去年は大黒柱のBarnes抜きであの堅いDFだったということ...いかに強力なdefenderのパイプラインを確保出来ているかを物語る)
  • 二人ともチェックでボールを奪えるだけじゃなく、ポジショニングも素晴らしい。
  • OFは何と言ってもMFの2枚。#28 Zack Brenneman (190cm/100kg, 5位: Long Island Lizards)。決勝でのNorth-south dodgeでぶち抜いて、ゴールを吹き飛ばさんばかりの鬼シュートをぶち込んでいたのが記憶に新しい。本ハイライトでもクリアで相手をペシャッと潰すダッジ(?)を見せている。相手Dとしては相当厄介。
  • #33 David Earl (13位: Hamilton Nationals)も何でもやりつつ得点源。

HC Kevin Corriganインタビュー(リンク
  • 毎年恐ろしく堅実なDFを作って来る事で有名。Gとタフで手堅いDFの選手を毎年確実にリクルートする能力にも定評あり。
  • 彼も言っているが、多くのコーチが「チーム作りはDFからbuildする」という言い方をする。
  • 「DFはほとんどのメンバーが残っているので頼もしい。」
  • 「プレッシャーは無くはないが、まあ、これは大学スポーツなので、去年上手く行ったって事は何も意味しない。NBAのように去年のメンバーがほとんど残るゲームじゃない。基本的には主力は卒業し、若い奴らが入って来て、雰囲気も含めて毎年全く新しいチームとして振り出しからスタートするというゲーム。なので、去年準優勝したからってプレッシャーを感じるってのは無い。全く新しいチームによる全く新しい挑戦なので。
Brennemanインタビュー

また、今月号のInside Lacrosseのインタビュー記事でのBrennemanのコメントが印象的だった。「去年のDukeとの決勝に関して、ロースコアな展開を指して『NCAA史上最もつまらない決勝だった』と言う人がいるけど、俺から言わせるとそれはラクロスの事を本当に解ってない人のコメントだ。」と。これは己の強みと弱みを解った上で、本当に強い意思と自信、そして実力が伴っていないと言えない言葉だ。正直痺れた。Defensiveで保守的な試合を否定するなら、アグレッシブで攻撃的なラクロスでそれをねじ伏せてからにしろ、という強い覚悟と断固たる決意。

エンターテインメントとしてのラクロスの振興、好き嫌いや、興行/ビジネスとしての成功を無視して、勝敗のみを見れば、はっきり言って正論だ。去年に関して言えば、Notre Dameのラクロスを批判することを許されるのは、唯一、決勝で勝ったDukeだけという事だろう。「文句があるなら勝ってからにしろや」と。個人的に、その揺らがなさは大好きだ。

2005年前後に(まだ日本の格闘技が元気だった頃の)PRIDE武士道時代のウェルター級で超玄人受けする闘い方(所謂「弱者の戦略」)で確実に判定勝ちを重ねて行った、全盛期の郷野聡寛選手の言葉を思い出した。当時毎回欠かさずobsessiveに有明コロシアムや名古屋レインボーホールのリングサイドで武士道を見ていた僕は、素人ながら、彼の試合は無茶苦茶スタイルが出てて美しいと感じた。才能や腕力で勝てないなら、頭を使って、勝てる戦い方をすればいい。それも一つの真っ向勝負の形だと思う。

(激しく脱線するが…)にしてもしかし、未だにこのPRIDE武士道の煽りVの和太鼓の音を聴くとアドレナリンがドクンッと溢れて来るのが解る...「総合格闘技は万人受けはしない。地上波には向かない。数十万人のコアなファンに深く鋭く刺さるコンテンツを作ればいい」という榊原社長の哲学に基づく、計算され尽くされた、音、空間、匂い、間、振動。ドラマと、キャラ。エンターテインメントのイベントとしての完成度は極めて高かった。競技としての格闘技を純粋に突き詰めたUFCには無い、また違った形のMMAの一つの理想型があったんだと感じる。こと煽りVに関しては、このPRIDEのVが生む最大瞬間風速の興奮は、UFCの会場では決して感じることは出来なかった(どっちがいいい悪いじゃなく、種類が違うという意味で)。この時代に生まれ、PRIDEの盛衰と、UFCの隆盛、そして昇華という歴史に立ち会えた事に感謝。

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