2012年10月31日水曜日

昨シーズン優勝校LoyolaのOFコーチがRichmondへ

もう一つ大型移籍が発表された。今度は選手ではなくコーチ。2012年に全ラクロス関係者の下馬評を覆して文句無しの圧勝優勝を果たしたLoyola大学Greyhoundsの優勝を裏から支えていたOF担当のアシスタントコーチ、Dan Shemotti氏が、今年から新設され、2014年からNCAA Division 1に参入する新チームRichmond大学のヘッドコーチに就任するとの事。(記事

Loyola優勝の理由を考えた時に、堅守はもちろんだが、やはりあのブレークでもセットでもどのポジションからも確実に点を積み重ねて来る流動的且つ重層的なオフェンスは欠かせぬ要因だった。相手チームのDFを試合前、試合中に分析/分解しきり、それらを上手く攻略するOFを即興で作り上げていた。その彼の新設チームへの赴任。Richmondの人選としても、彼自身のCareer Moveとしても非常に理に適っている。

一方で、連覇を狙うLoyolaにとってこれは大きな痛手になる可能性がある。仮に同じタレントが揃っていたとしても、それをブレインとしてベンチから統制していた彼がいなくなる事で若干歯車が狂い始める可能性がある。

にしても、2002年のDuke卒業。33歳とかだろうか?NCAA Division 1のコーチとしては破格に若い。同じく2003年Duke卒のKevin Cassese (MF)はMLL/NLLやUS代表を経て、現在同じくNCAA Division 1のLehighを短期間で強豪校へと育てている。これまでは歴史的に東海岸北部の伝統的名門Ivy League校(Princeton, Harvard, Penn, Brown, Dartmouthなど)出身の名コーチが多かったが、ここに来てAtlanticエリアの同じく学問的名門校Dukeが若い名コーチの輩出校と化して来ている。面白い。

2012年10月19日金曜日

UNCのNicky Galassoが転校先をSyracuseに決定

先週、2011年全米No. 1新入生且つRookie of the YearのUNC #42 AT Nicky Galassoの転校の報について触れたが、今日ILに彼が転校先をSyracuseに決定したとの記事が掲載された。(リンク

彼程の実力があり、Syracuseも伝統的強豪でありながらここの所ATの強力な柱に欠いており、加えて去年Tommy Palasekらが卒業して経験も不足している事から、正にお互いに取って相思相愛、Win-Winの移籍と言う事だろう。

ちなみに、その前に転校を決めた直後の彼のインタビュー記事があったので紹介。いくつか今回の意思決定の裏事情や、今のNCAAの事情を知ることができるコメントがあったのでかいつまんで紹介。(リンク

彼のしっかりした人間性、そしてエリート高校生プレーヤーへの強豪校からの狂った様なリクルーティング攻勢、UNCで一年生として大活躍しながらも二年生として怪我で出られなくなり、下級生にどんどん追い越される中で感じた後悔や葛藤など、胸を打つ物があった。

高校時代のリクルーティング
  • 高校時代はほとんど全ての強豪校のコーチから勧誘された。それは楽しいし、素晴らしい体験だった。
  • ただ、一方で、学校選びは簡単ではなく、全ての選択肢の学校に実際にvisitすることは出来なかった。今考えると、もっと多くの学校をちゃんと検討して実際にvisitしておけば良かったと感じる。
  • 14-16歳の少年に深いレベルでの人生の意思決定を迫るのはやはり難しい
  • 自分自身はUNCに行った事は全く後悔していない。素晴らしい体験が出来た。
UNCでの2年間はどうだった?
  • 素晴らしかった。コーチや仲間と掛け替えの無い絆を築く事が出来た
去年の開幕前の膝の怪我と、そこからシーズンの半分をベンチで過ごすという経験を経て、それは今回の転校の意思決定にどのくらい影響を与えた?
  • ぶっちゃけ相当与えた。今考えると、Redshirt(怪我によるシーズン棄権/登録抹消で、5年生としてもう一年プレーする権利が得られる)せずに無理矢理回復を待って出場するという意思決定は、僕自身、コーチ自身の大きな大きな過ちだった。
  • 今考えると自分は明らかにRedshirtするべきだったと後悔している。
  • 怪我でコンディショニングが完全に狂い、体重が無駄に増え、本来の動きが全く出来なかった。試合に出られず、出ても脇役でスポット出場で、ベンチで他の選手たち(特にATで大エースに成長したMarcus Holmanや1年生でダイブレークした二人のちびっ子ルーキーJimmy BitterとJoey Sankey)が華々しく活躍するのを見て、精神的に苦しい思いを感じた。(「俺、去年はこのチームのエースだったのに、今こんなところで何やってるんだ?」「あいつら来年もいるのに、俺試合出られるのか?」)
  • 怪我から完全に解放された今年、トレーニングによって12kg絞れた。今の自分は信じられないくらいtop shape(最高のコンディション)にある。今年こそはまた活躍出来ると思う。
  • ただ、今まで起こった事や、今年の分厚い選手層を見た時に、「UNCでやるべきじゃないな」という気持ちになった。別の学校で新しいスタートを切ろうと思った。
  • 自分を支え続けてくれている父親も賛同し、転校の意思決定をするに至った。

という話。僕自身、一昨年のNYでのBig City Classicで、一年生の彼が試合の中で司令塔としてUNCの大黒柱として活躍する姿を見て衝撃を受けた。そして、去年一年間、Chapel Hillの試合会場でUNCを見る中で、ベンチにいる彼が、明らかにプレーでも、そして精神的に苦しんでいるのを見て、「大丈夫か?乗り越えられるか?」と応援する気持ちにさせられた。

彼程人生を通して王様扱いされて来た選手が、目の前で下級生に追い越されて行くのを見るのは、そして頑張ろうにも怪我で頑張れないという状況が続いたのは精神的に相当応えたはず。加えて恐らく今年も上記の3人を軸にチーム作りが進んでいた筈で、「このまま行ったらマジで試合出られないかも/脇役で残りの2年終わるかも」と感じ始めていたんだろう。

まあ、ぶっちゃけUNCはOFのタレントが余ってる。彼程の人材がNCAAのフィールドに立てず、才能を無駄遣いする事になるのは正直馬鹿げている。Syracuseでエースとして出直した方が彼の為だし、何と言ってもラクロス界全体の為にもなる。将来的なMLLでのプレーを考えると尚の事。

今回の意思決定は間違い無くUNC、Syracuse、Galasso自身の全員にとってポジティブな意思決定だったんじゃないかと個人的に感じる。来年以降のGalassoのSyracuseでの活躍に期待。

もう一つ感じるのは、こうやって本人の状況や希望に応じてflexibleに転校して出場機会を求められるというNCAAの柔軟な姿勢/仕組みはやはり素晴らしいなという点。長い歴史を経る中で試行錯誤しながら仕組みを進化して来た賜物だろう。

2012年10月11日木曜日

UNCのAT Nicky Galassoが転校へ

軽くショッキングなニュースが。

移籍の報

3年前の高校ベストプレーヤーで2年前のベストルーキーの一人、North Carolinaの#42 AT Nicky Galasso (Jr = 3年生)がTransfer(転校)を希望し、コーチのJoe Breschiから許可されたとの事。(ILの記事

今後数ヶ月で転校先の学校を決め、年明けに転校のスケジュール。

うーん、元地元UNCファンとして彼の事を応援して来た自分としては結構ショック。

NCAAでは珍しくない選手の移籍

過去にも何度か紹介したが、毎年この時期のNCAAでは何人かの選手たちが新しい環境や出場機会を求めてTransferをしている。2年前のTommy Palasek (Johns HopkinsからSyracuse)など、一線級の選手が転校してラクロス界にショックを与える事も。

多くの場合、理由は、①チームの戦術が自分のやりたいラクロスと合わない、②監督と合わない、③人間関係、④今の学校が実家から遠い/実家の近くの学校に行きたい、⑤このままだと3-4年生になっても試合に出られない(特に強い下級生が入って来た場合)等々。

背景と理由を想像

Nickyのケースに関してはどうだろう?まだ現時点では特に理由に関しては書かれていない。

想像してみる。

2年前の1年生のシーズンは文字通り「鮮烈デビュー」だった。ILの選ぶ全米ルーキーランキングで堂々の1位。当時のエース#4 Billy Bitter (AT)の横で堂々の主力ATとして活躍。チームをグイグイ牽引していき、「このまま行ったらあと3年やばいな」と感じさせた。

ところが、不幸にも、去年の2年生のシーズンの開幕前に膝の靭帯を断裂してしまう。結果としてシーズン前半は試合に出られず。シーズンの最後に少しずつ出始めたが、1年生のシーズンに比べると全く本調子では無かった。そこに来てATはMFからコンバートした3年生の#3 Marcus HolmanがNCAAトップクラスの大エースATへと急成長、加えて2人のちびっ子スーパー1年生、#4 Jimmy Bitter, #11 Joey Sankeyがいきなり爆発的な活躍を見せ、「あれ?Galassoいなくてもこんなにやれちゃうの?」となってしまった。

上記の3人がそのまま今年残る以上、Galassoにとっては今年もスターターとしての出場すらも怪しくなっていた可能性もある。(しかもUNCは今年も強力なOFの選手たちが多数入学して来ている)

UNCのダイナミックでスピード感溢れるOFスタイル的に、機動力があってガンガン走って抜けてライド出来る上記の3人は極めてフィットが高い(あとぶっちゃけファンとしても見てて超楽しい)。それに対し、王道の司令塔スタイルでどっしりとセットオフェンスを作るタイプのGalassoは、ちょっとスタイル的にも必ずしもベストフィットとは言えない感じもある。

高校まで突出した全米No. 1選手だった彼が、そしてUNCで下級生からグイグイチームのエースとして引っ張って行く事を想像していたであろう彼が、ベンチから忸怩たる思いで活躍する下級生達を見て、結構ストレスや焦りを感じていたんじゃないかと想像する。そんな中3年生になり、このまま上級生としても試合に出られなかった場合、引き続き脇役に回って「何でNCAA来たんだ?」「試合に十分に出ないで成長出来るのか?」となるリスクも正直否定出来なかった。

しかも記事によると、どうやら今年もまた去年の靭帯の怪我程ではないが、小さな怪我をしてしまい、秋学期の練習が満足に出来ていなかったらしい。年明けのシーズン開幕に向けて、今の時期の練習に参加出来ていない事は、スターティングメンバーを固めて行く中で致命的。最悪このまま行ったら3年生のシーズンを去年同様ベンチスタートで、というシナリオが現実的に見え始めていたと言う事だろうか。

「だったら確実に必要としてくれるチームに行って仕切り直そう」となるのは自然な流れ。

移籍先は?

現時点での移籍先候補は明かされていないが、Syracuse, Penn State, Notre Dame, Loyolaと、トップクラスのATである彼を今すぐ必要とする強豪チームはいくらでもある筈。

元々の出身はNY州Long Island。近いのはStony BrookやHofstra。恐らくガキの頃から見ていたのはSyracuse。どこに行くことになるんだろうか。既にATの層が薄くなっているSyracuseがコンタクトを開始しているらしい。

間違い無く、極めて実力の高い選手。それは1年生時代のプレーを見れば誰の目にも明らか。チームの力を何倍にも高められる貴重な司令塔。加えて左のシュート力は秀逸。どこに行っても通用するのは間違い無い。UNCファンとしては悲しいが、選手個人としては移籍先での活躍を心から願う。