ちと今回は特別編。どっかで一回まとめとかなきゃなと思ってたネタ。2ヶ月くらい前からちょくちょくストックして来て、大分貯まって来たのでアップ。
今後Michigan大学または別のオプションでラクロス留学する選手の皆さんのために、また、JPを始めとしてアメリカから来日するコーチの指導を受ける上で、またはもっと日常的にはNCAAやMLLのDVDを見る上でより深く解説を理解するために、という目的で、いくつか日米のラクロス用語の違いを紹介。僕が耳で拾った範囲での言葉を帰納法的に寄せ集めただけなので、抜け漏れ結構あるかもですが...随時新しい言葉の違いに気付いたら付けたして行こうと思ってます。
「三遊間」や「犠打」「併殺」など、戦前から日本の文化の一部として根付き、日本語の呼び方がある程度浸透/定着している野球等に比べると、25年前という比較的最近のタイミングで日本に輸入されたラクロスは多くの言葉を英語のまま転用しているため、ほとんどの言葉が整合している。が、そんな中でも、ごく一部だが日本独自の言葉が育っている(別に悪い意味ではなく、単純に違ってて面白い/海外に行ってコミュニケーションする時に注意が必要という意味で)。それはそれで日本独自のラクロス文化/素晴らしい個性だし、別に正解/不正解のある話でもないので、無理矢理変える必要性なんてなんら無いと思うが、単純にNCAA/MLLのDVDやwebsiteを見る際に、そして日本人以外の選手/コーチとコミュニケーションを取る時の為に理解しておくと便利かもという意図で。
(でもこの辺は選手の皆さんはもう散々MichiganやJPとやり取りする中で重々ご存知だから付加価値ゼロかも...)
* 日本と言い回しが違ったり、余り日本人がピンと来ないであろうものを中心にセレクション。逆に、Accuracy = 正確性みたいに、無茶苦茶頻繁に聴くが、高校/大学受験で普通にカバーされてる言葉や、trade-off = トレードオフやvision = ビジョン(視野)みたいに完全に日本語になっちゃってる言葉はいちいちカバーしてたらきりが無いので意図的に外してます。
1. 日米で呼び方が異なる言葉
(英語でコミュニケーションする時に注意が必要な言葉)
クロス→stick / lacrosse stick
(クロスの)「引っかかり」→whip / hook
ゴールライン→GLE: Goal Line Extended (ジーエルイー。)
ラクロッサー→Laxer(ラクサー)
ラクロス馬鹿→Lax rats
非利き手→Weak hand / Off hand
メットの後ろからこぼれる後ろ髪→Flow
3. そもそも日本ではあまり聴かない言葉/存在しない概念
特にNCAAを中心に独自の仕組みに基づいて初めて見ると良く理解出来ない要素がいくつかある。いくつかピックアップして紹介。
Redshirt
Returning senior
現時点ではとりあえずそんな感じで。他にあれば随時追加して行く予定。この辺の頻出キーワードを抑えておくと、一気にDVDの解説も解るようになるはず。
クロス→stick / lacrosse stick
- Stick Dr.の記事でもちょっと触れたが、会話の中、メディアの表記の中で「Crosse」という言葉は実はほとんどというか、全く聴いた事が無い。Lacrosse stick、またはstickということがほとんど
- NCAAのルールブック等では"Crosse"と表記されているし、年配の解説者の方が時々「He lost his crosse」と言ってるのを何度か聞いた事あるので、厳密な正式名称は「クロス」ということなんだろう。その後アメリカでは段々Stickと言う様になり、恐らく今の若い選手たちは殆どStickで統一されている様に見える。
- 恐らく日本が輸入した当初、ルールブック、または「ラクロスとは」的な古典資料をそのまま引用して使っていたのが日本では名残として残ったんじゃないかと推察する
- なので、「クロスワーク」は和製ラクロス英語ということになってしまう。アメリカだといまいちピンと来ないっぽい...
- また、「クロスプロテクション」もstick protection
ロングレンジのスタンディングシュート/ロングシュート →Time and room / Outside shot
ワールドカップ→ILF World Championship / World Lacrosse Championship / WLC
- 相手のDFが詰めて来るまでに「間(Time)」と「間合い(Room)」があるシュート、という意味。
- 恐らく日本語の「スタンディングシュート」は、「ランニングシュート」の対比として自然に言われ始めたんじゃないかと想像する。
ランニングシュート →Shot on the run
- これも実は意外と「Running shot」とは言ってない
- 日本人的には4年に一回→サッカーW杯の感覚があってよりピンと来るが、アメリカでworld cupとは呼ばれているのはあまり聴いた事が無い。(Wikipediaのリンク)
- が、女子は何故かWorld Cupと呼んでるっぽい。なんででしょ?面白い。(Wikiのリンク)
ナイスシュート/ナイスセーブ→Good/great shot/save
- 何故か余りnice shotという言い方はあんまし聴かない。「いい」はシンプルにgood、という語感
- "That was nice..."とか"Nice shot"(ほうっ。いいじゃんよ...)的なちょっと斜に構えたと言うか、肩の力を抜いた感じの言い回しが別途ある感じ
バウンドシュート/パス→Bounce shot/pass
- 日本語だと「バウンドショット」だが、実は英語だとBoundとは言ってない
メッジ/ビブス/ゼッケン→Pinny/Pinnies
- 日本人的には全くピンと来ない英語だ…
2. 単純に、英語で何と言うか&日本語だとどういう意味か
(英語で言いたい時咄嗟に何と言えばいいか解らなかったり、英語の解説/記事でよく出て来るがいまいち馴染みの無い言葉。特に形容詞系は多分に感覚的な物が多くて面白い。)
(クロスの)「引っかかり」→whip / hook
- ムチとかしなりとか、その感覚のwhipを僕らが言う所の「引っかかり」の意味で使われている。Hookはそのままの感覚に近い。
- I like a lot of whipとかI don't like too much whipとか
- 面白かったのが、Dino (Matt Danowki: Duke-Long Island Wizards)がWarriorのstick stringing談義の中で、「自分はwhipという語感はちょっとネガティブな感じがして嫌いなので、敢えてポジティブな耳障りの"power"という言い方をしている」といっていたのが面白かった
- これは以前記事で紹介した通り。どっちかっつうとそのままっすね。
- ま、これはMichiganとの付き合いもあるし、NCAA見てると百万回くらい目にするので多分ほとんどの選手の方がご存知かと。(超余談ですが、関西では「4回生」と呼んでたりして国内でも呼び方にパターンありで面白い。)
- 1年生→Freshman
- 2年生→Sophomore
- 3年生→Junior
- 4年生→Senior
- 大学院生→Graduate student
- 5年生→Returning Senior
- 怪我や上級生との競合を避け一年登録せずに、2年から選手登録した1年生→Redshirt Freshman
- それとの対比での本当の一年生→True Freshman
Underclassman/Underclassmen→下級生
Upperclassman/Upperclassmen→上級生
- 先日の記事(NCAA Div 1でのAT育成)で触れた通り
ゴール裏→X (エックス)
- これは既に普通に日本でも使ってると思うが(僕は現役時代にMichiganのコーチに聴いて初めて知った)。バツマーク、即ちプレーがスタートするゼロ地点という意味だと思われる。トップではなくゴール裏をオフェンスのスタート地点と考える所にそもそものオフェンスの発想の違いを感じる。
ゴール斜め前のエリア→"Five-and-five spot"
- これもATのインストラクション等で時々耳にする概念。両ゴールポストから横に5 yards (4.5m)、前に5 yards (4.5m)離れた場所。インサイドロールを含めたダッジやシュート、カットの際のターゲットになったりと、オフェンスの戦術を語る上で重要なスポットになっている。ATのドリルでよくここにカラーコーンを置いていたりする。
- こうやって漠然と「ゴール前」と呼ばずに、Xやら5&5やGLEと固有名詞を付けることで、重要さを意識させ、技術スキーマを強化している点が非常に参考になる。
ラクロス馬鹿→Lax rats
- ラクロスネズミってことですね。ジムで一日中ウェイトトレーニングばっかりやってる「筋トレオタク」のことをGym ratsと呼んだり。結構アメリカだとratsに例えられる。
- イメージ、中学/高校で教室でも常時スティックを持ち歩いて、暇さえあれば体育館の壁にボールをぶつけてる、ラクロス中毒者って感じだろうか。
- まあこれも結構日本でも使うかな?どっちかって言うと付け替え用の「鋲」をクリーツと呼んでいた記憶があるが、アメリカだと靴そのものをcleatsと呼んでいる
努力→Hard work、努力する/一生懸命練習・トレーニングする→Work hard
- つかこれラクロスっつかただの一般の英会話になっちゃうが...単純にラクロス会話の中で使う頻度が相当多いので...ああ、そうやって単純に言っちゃえばいいのねっていう
努力すること/努力する能力/勤勉さ→Work ethic
- これも無茶苦茶よく耳にする。全てのスポーツの世界で。そしてビジネスの世界でも。
(主にフィジカルの)追い込み/特訓/追い込む→Torture(拷問/拷問する)
ショートスティックの選手→Shorty
ロングスティック/ロングスティックミディー→Pole (竿)/Long pole
- "Shamel is the guy who always gets the pole"(いっつもロンミに付かれる)
ロングスティックディフェンダー(LSMじゃなく)→Close(クロウス:近い/ギチッとした) defense
- 聴いてると、どうやら「ボトム」/Long stickのDFの事をこう呼ぶ事が多いっぽい。
右利き/左利き→Righty/Lefty
- 試合中にゴーリーがDFに「He's lefty! He's lefty!(そいつ左利きだから左切れ!)」と言ってたり
利き手→Dominant hand / Strong hand
非利き手→Weak hand / Off hand
カナダ人→Canadian/Canuck
身体能力→Athleticism / Athletic ability / Fitness
- これも別にラクロスに限らない英会話だが。NCAAの解説を聴いていても頻出する単語なので。Bratton兄弟の話になった時など特に。
- He's a tremendous athlete.とかHe is so athletic.とも言う。His athleticism is outstanding.って言い方も聴いた事ある
- (ちなみにオーストラリアでは"Natural ability"と言っていた)
身体の大きさ、試合/選手としての当たりの強さ/激しさ→Physicality
- または形容詞でphysical defenders
守りやプレーが堅い/粘り強い/執拗な→Tenacious(テネイシャス)
- または名詞でtenacity
堅いDF→Stingy(けちな)/tight DF
ポジショニングの上手い/ポジショニング重視のディフェンダー/ディフェンス→Positional defender / defense
やばい(すげえ)/ありえねえシュート(ちょっと口語的/俗語的な言い方)→Sick/Wicked/Crazy/Ridiculous shot
- 日本語と同じで本来ネガティブな言葉を「超いい」というニュアンスで
素晴らしい/超いい/驚異的な→Phenomenal / Tremendous / Significant / Outstanding
リーチ(両手を広げた幅)の長さ→Wingspan
DFなどがリーチが長い/守備範囲が広い→Rangy(レインジィ)
- Rangeの形容詞
グラウンドボールなどに皆で「寄る」→Swarm
クリース前を固める/絞る→Pack (the crease)
試合の流れ/チーム間の「波」/「勢い」→Momentum
Dのチェックがどん決まりし、吹っ飛びながらぐるんぐるんに回転するスティック→Helicopter
(ダッジやショートレンジのシュートのために、またはロングスティックがボールを確実に扱うために)スティックを短く持つ→Choke up(窒息させる/詰める)the stick
- これ、ATのインストラクションなどで頻繁に聴く。スティックのネック(首)を持つので
FOGO: Face off and get off→フェイスオフスペシャリスト
- 先日のFOGOの記事で述べた通り
North-south→縦に直線的にゴールに向かうダッジ。一般論としてこっちの方が理想とよく言われている。
East-west→横に動いて相手をずらすダッジ
Finalizer(これも普通にそのまんま日本で使ってるか...)
- クリース裏での切り返しにより、相手DFをゴールの後ろのネットに引っ掛けることで抜く技。
- 2000年前後にSyracuseのRyan Powellによって一般的に認知されるようになった。
Time and room (space) shot→アウトサイドシュート/ロングシュート
- どーでもいい話だし多分ほとんど使うこと無いけど...
ジムに行く/飲みに行く→Hit the gym/bar
3. そもそも日本ではあまり聴かない言葉/存在しない概念
特にNCAAを中心に独自の仕組みに基づいて初めて見ると良く理解出来ない要素がいくつかある。いくつかピックアップして紹介。
Redshirt
- 元々アメフトの言葉のはず。1年目に選手登録をしないこと。赤シャツを着る、という表現をする。その場合、大学的には2年生でも、ラクロスフィールド上では1年目の選手として"Redshirt freshman"と呼ばれる。
- 日本でも同様だが、大学でプレー出来る年数は4年に限定されており、能力のある1年生が、上級生にスーパースターがいて試合に出られない時に敢えて1年目を棄権して5年生までプレーするという戦略的な選択をすることがある。また、シーズン前の怪我でシーズンを通してプレー出来ない事が解っている場合も同様の措置を取る事が有る。選手にとってもチームにとってもより柔軟にプレー出来る期間を選択出来るし、怪我というアンコントローラブルなファクターで1年無駄にするという状況を避けられるので個人的にはこの仕組みには賛成。
- 先日Tom PalasekのHopkinsからSyracuseへの転校の記事で紹介したが、NCAA Div 1ではラクロスに限らず結構頻繁に選手の転校が行われる
Post grad
- (高校の)Post-graduate、即ち卒業後の1年間。浪人の1年。詳しくは「ラクロス浪人」の記事参照
- 2回目の4年生。つまり5年生。Redshirtや怪我による棄権があった場合に、敢えて卒業しないでチームに帰ってくるケース。また2010年のDukeでは無実のrape scandalによる棄権の救済措置により多くのreturning seniorがいた。
- 明確にラクロスをやることを目的として大学に来ている選手も多く、怪我等で1年出られなかった場合、結構の選手がもう一年残って4年間の権利を使い切りたいというケースが多いようだ。
- また、どうせ1年を使うなら何らかの大学院に行って(場合によってはaccelerateで1年で卒業というのも含め)試合に出るというケースもある。その場合学年欄にはGrad (Gradiate school student)と表示されている。
- この辺がNCAA独自の仕組み。Div 1は61チーム、8つのカンファレンス/リーグから構成されている。日本のリーグ戦と違い、カンファレンス/リーグ内の総当たりだけではなく、カンファレンス外のチームとも試合をする。かといってDiv 1内の全てのチームと直接対決をすることも出来ない。
- そこで、Div 1全体の順位に関しては、実際の勝敗やパフォーマンスを受けて、コンピューターを使った統計と記者による投票を合わせて決めるメディアポール、またコーチの投票によって決めるコーチポールといった、合わせ技で決めることになる。なので、勝ち点、得失点差でバチッと文句無く決まる仕組みと違い、順位については常に議論が巻き起こる。ま、それもまた面白さの一つなのだが。
- ILのランキングページ
- これが結構NCAAの解りにくい概念。プレーオフ進出チームを決める際に、単純な勝敗数だけではなく、そもそも対戦した相手の強さも勘案する。弱小校ばかりに10勝するより、上位校に5勝した方が価値がある、という補正措置。その際の対戦相手の顔ぶれ
Tewaaraton trophy(テワアラトン・トロフィー)(リンク)
- NCAAのMVP。2001年から始まった。男女各一人。TewaaratonはNative Americanの部族Mohawkの、今のスポーツとしての形のラクロスの創始者、及びそこから取られたラクロスの呼び名らしい
X's & O'x(エクスィズ・アンド・オウズ)
- これは別に頻出単語じゃないが...コーチがスコアボードに描くオフェンス/ディフェンスの○と×のこと。転じて戦術論。普通にstrategyやらtacticsとか言うが、時々beyond the X's and O'x(戦術を越えた部分)などと言った言葉を聴く。まあこれも別にlacrosseに限定された言葉じゃなくバスケ等でも聴くが。
Hand-eye coordination
- これ、何故かアメリカでラクロスに限らずスポーツで凄くよく聴く言葉/概念。直訳すると「手と目の連動/協調性」...つまり、目でしっかり情報をキャッチして、それに応じて手を正しく/効率よく動かせること。DFのチェックで大事なのは?とか、stick skillって要は何なの?という質問に対して、一流選手達が「要はhand-eye coordinationだ」と決まり文句の如く答えているのをよく聴く。日本語でこれをバチッと表す一語が無いが故に非常に面白いなと思った次第。
現時点ではとりあえずそんな感じで。他にあれば随時追加して行く予定。この辺の頻出キーワードを抑えておくと、一気にDVDの解説も解るようになるはず。
4. 情報ソース
とても役に立ちました。ありがとうございます。ちょうどredshirt-season の意味が知りたかったので、嬉しかったです!
返信削除お役に立てて良かったです!
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