2012年5月23日水曜日

NCAA Tournament 2012 Quarter Final Johns Hopkins vs Maryland

いやー...すげえわやっぱ。NCAA。感動した。試合見終わって15分経つが未だに脳幹が若干痺れて呆然としている。

驚きと感動を与え続けてくれる。予想を裏切り続けてくれる。毎年Quarter Final(準々決勝)4試合のうち数試合がシーズンを代表するいい試合になってくる。

今回は準々決勝4試合の一発目。第二シードのHopkinsとシード無しで一回戦ギリギリでLehighから逃げきったMarylandとの対戦。

実はレギュラーシーズンではMarylandが勝っていたが、シードの順位やレギュラーシーズントータルの成績から、そして往々にして力の近い2チームが再戦する場合、最初に負けたチームが修正して気合いを挑んで臨む為勝つ事も多く、「まあHopkinsが無難に勝つっしょ」、と言うのが大方の見方だった。

それが、どうでしょ。

ボッコボコにMarylandが圧勝。いや、マジで陵辱と言うか、惨劇と言うか。全ての局面で圧倒して、カモって、文句無しの勝利。Hopkinsをスタンドでベコベコにして、タックルで両足テイクダウンして、パウンドで鉄槌を撃ち落としまくり、最後に文句無しの裸締めで失神一本を取ったイメージ。衝撃の11-5。(スコアボード

マジかよ。これでMarylandはCoach Tillmanになってから2年連続でFinal 4。去年準優勝後に22人の4-5年生を失い、今年は出直しと言われてたのが...すげえ。このチームは明らかに何かが一つ突き抜けて違う。

何が起こったか。

端的に言うと、①そもそもHopkinsを倒す為にデザインされたようなチームだった、②準備勝ち、の2点だろうか。

①まるでHopkinsを倒す為にデザインされたかのようなチーム
  • これ、解説者の元JHU All American Goalie Quint Kessenich氏の分析。レギュラーシーズンの試合から再三指摘していた。要は、単純な強弱以上に、マッチアップ/組み合わせ/じゃんけんの組み合わせ的に、HopkinsにとってMarylandは最も苦手とする相手、天敵である、という点。具体的には、
  • 第一に、攻撃の全ての起点であるMFオフェンスに対する、MarylandのMF DFが異様に強いことLSMの#36 Jesse Bernhardt (Jr)の機動力/走力/スタミナが尋常じゃねえ。気合いで脚で並走して、相手を更に越えて走り、やらしさの極みにあるチェックをねちょっと打って来て落とす。Shorty DFも堅い。従って、ATのダッジ力に欠けるHopkinsが完全に攻められなくなる。と言う事が今回も完っ全に再現された。
  • 第二に、FOの強さ。Hopkinsは去年エースFOGOのDolenteが卒業してMLLに行った事で、明確にFOの穴埋めが課題と言われていた。シーズン中はそこそこ善戦していたが、MarylandのFO Curtis Holmesが強かった。FO支配率60%。Hopkinsが攻める機会確実に減らした。
  • 第三に、徹底したポゼッション重視。Set OFでねっちりみっちり時間を使ってピックを多用して、やらしく最後にフリーを作って打って来る攻め。これをやられるとHopkinsはキツい。MFがOF/DF両面使いをやっていることもあり、主力のMFが消耗して何も出来なくなる。

②準備勝ち
  • 明っっっらかにHC John Tillman氏の賢いスカウティングと戦術の準備がハマっていた。
  • 攻撃は二つの波に徹底してフォーカス。具体的には、一発目のFast & Slow Break、そしてだめだったら完っっ全荷切り替えて、ゆーーーーっくりボールを回して、攻める前に確実に1-2分時間を使い、Stallingの警告を受ける所までボールを回して、Stallingを受けても尚辛抱強くボールを回し続けてDFが疲れてコミュニケーションが甘くなり始めるまで待ち、そこからグッと踏み込んで点を取りに行く。ピックを繰り返して、ボールを動かして、崩してから2本以上パスを繋いで、確実に点を取れるシュートを待つ。結果、相手にほとんど攻める時間を与えない。
  • ライドでの中盤から自陣リストレイニングラインに掛けての鬼プレッシャー。JHU MFが中盤でボールを貰って、振り返ったら二人に囲まれててバツッと落とされるケースが複数回発生した。
  • DFでのプレッシャーとストレッチ。DFの機動力が相手OFのそれをを明らかに上回っている事を利用し、ガンガンプレッシャー。で、それを逃れるパスを確実にスティックアップして狙って奪う。面白いようにハマっていた。
  • で、これらがハマり、終始Hopkinsは「あわわわわ...」「ドカーン!」のターンオーバーの繰り返し。結局らしさがほとんど見られぬまま、いやそれ以前にほとんどOFをする機会を与えられる事無く終わってしまった。
  • やらしさを感じたのは、DF MFじゃない1st LineのMFたちがDFに帰った時に、そこからピックを掛けてコミュニケーションミスを起こさせて点を取っていた所。そして、ずーっとボールを回してとにかくDFを疲弊させて両手のガードが下がって来た所で打ち込む、という攻めを徹底していた点。
という訳で、全体的にHC John Tillman氏のコーチとしての実力の高さを如実に感じさせる試合だったと言える。しっかりロジカルにゲームプランを込み立てて、完璧にそれを遂行して、それがバチッと狙い通りにハマって、バカ勝ちしたという。


感想
  • 試合が終わって、呆然とするHopkinsの選手たち、ベンチ、Coach Petro、そしてファン。今年こそはと言われていた。実際にレギュラーシーズンでも、これまで何年も負け続けていたVirginiaに勝ち、Princetonに勝ち、Syracuseに勝ち、全体で2位シードを獲得した。Rabil-Peyserで優勝した07年以来の優勝を狙えるとすら言われていた(し、僕も優勝有り得るなと思っていた)。が、今年もまたFinal 4にすら到達出来ずに潰えてしまった...正直ショックだ。これで09年から4年連続でMemorial Day Weekend (Final 4)に到達出来ていない...
  • もう、このオールドスクールのMFの突破力で崩す事から全てが始まるスタイル、1st Set MFがOFもMFもやるという頑固なまでのold schoolへのこだわりは、最早現代のラクロスでは通用しなくなってしまったのか?トップレベルのDFをダッジで抜けるATが一人もいない、ATはつなぎとゴール前のフィニッシュに専念という役割分担で組み立てられた布陣では、もうトップレベルの試合で、特にトーナメントの後半で競った局面で勝つ事は難しくなってしまったんだろうか?ここまでRabil-Peyserが引退してからの4年間を見て、特に今年リーグ戦では勝てても最後にプレーオフで強豪と当たった時に勝てなかったHopkinsを見ると、残念ながらその思いが確信に近いものになってくる。
  • Hopkinsは今でもラクロス界最大派閥。地元Maryland州BaltimoreはLacrosse総本山。卒業生もファンも含めると、恐らく未だに最もファンの多いNCAAチーム。今回の敗戦でショックを受けている関係者/ファンも多いはず。優勝の期待が持たれていたにも関わらず、レギュラーシーズンでかなり上手く行っていたにも関わらず、そしてMarylandには一度負けており修正のチャンスが有ったにも関わらず、為す術も無く撃沈。ファンや関係者の間で一大論争が巻き起こる事だろう。今年ここまで影を潜めていた「Coach Petroのスタイルとリクルーティングじゃもう今の時代優勝出来ねえ」論が再び再燃するはず。
  • Marylandはすげえわ。マジで。やっぱり何が一番好きかって言うと、チーム一丸となって作り上げるあの「狂乱の祭り」の雰囲気。点を取るごとにベンチの全員が抱きつき合って、お互いに頭をどつき合いながら喜んでいる。ただのフーリガンになりきっている。が、ぶっちゃけクソ楽しそうだ。そして、そのエネルギーをチームとして増幅し、フィールドの選手たちがセルフイメージを大きくする事で発揮されるパフォーマンスを数段高めている。とにかく見てて楽しいし盛り上がるし、応援したい気にさせられる。この伝統がある限りこのチームは間違い無く強くなり続けるはず。よし...Final 4ではMaryland押しで行こっと...
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