2012年3月15日木曜日

最短最速の上達法:"wall ball" vol.02

Wall ball第二弾。去年の記事掲載から丁度一年。

新2, 3, 4年生の皆さんは引き続きガンガン壁打ちしてリーグ戦までに一皮も二皮も向けて、NCAA D1上位校並みのスティックスキルを身に付けたい。そう出来たら試合中楽しくて笑いが止まらないはず。GoalieもLong poleも同じ。Virginiaのロング陣がクリアで安定して滑らかに自由自在にスティックを操れているのも、去年のSyracuse Goalie John Gallawayがセーブして1秒後にフロントコートのATのボックスのど真ん中にレーザービームで突き刺せていたのも、ひとえに壁打ちをずっと積み重ねて来たから。

これから入って来る新一年生には実験として入部当初から壁打ちをキャッチボール以上に標準装備で教え込んでみればいい。「毎日3-4時間考えながら壁打ちをやってみなよ。夏までにあの4年生の先輩より巧くなれるから。そしたら一年生で試合出られるから。」と刷り込めばいい。過去10年のどの一年生とも全く違った成長カーブを描くはずなので。

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2011年1月18日火曜日

先日がっつり紹介させて頂いた、wall ball(壁打ち)の記事①の続編。畳み掛けるようにもう一発。追加の動画と記事の紹介。いいものは積極的にどんどん柔軟に取り入れよう!の精神で。(次回は近くに壁が無い場合の解決法、portable lax wall/rebounderの紹介、記事③

1. IL Instruction Archiveより

ILにちょうど良過ぎるタイミングでwall ballのインストラクションの記事が出てたので紹介。(リンク

体育館の中で壁打ちをやっている写真がいくつか紹介されている。名門&強豪Prep school(進学校)Georgetown Prepのcoach Kevin Giblinによる解説。先日の記事でも紹介したいくつかのパターンのうち、動画でカバーされていなかった練習法が写真付きで解り易く解説されてた。
  • 膝を床に着けてやる事で弾道の角度を変え、体幹をしっかり安定させて投げる練習。正確さを養う練習
  • 横方向に走りながら、一人ランニングパス。横向きに投げて取るというより実戦的なパスキャッチが練習出来る
  • 体育館の壁でやっている。確かに、アウトドアでのビルの外壁だと、なかなか長さがある壁、ボールをぶつけ続けて迷惑が掛からない/窓が無い壁ってそうそう見つからない。(アメリカ東海岸北部だと北海道並み/以上に寒くて雪国のため冬は出来ないという事情もある。また、故に体育館の壁がレンガ製という強みも。)日本の体育館だと木製の壁が多いのでむつかしいかな?正規のボールだと難しいなら例えばちょっと軽くて柔らかいlow bounce ballやテニスボールで代替するとか?
そして、ここでも力いっぱい壁打ちの重要さを語ってくれている。
  • 「stick skillを磨きたいなら、壁打ちをやりまくることが『唯一の方法』。揺らぐ事無き信念としてそう強く信じる」
  • 「毎日何分かなんて足りない。『何時間か』やれ。とにかく地道に泥臭く壁と向き合え」
ってことなんですね。やっぱり。「壁は裏切らない」、「壁と向き合った時間は、必ず実力となって返ってくる」

2. 鋭く直線的な成長曲線

ま、実際に暫く壁打ちをやってる選手の皆さんは既に肌感覚として十分に実感済みだと思うが、ぶっちゃけ短期間でどんどん変化するのが感じられて単純に最高に楽しいし。文字通り、「バキバキと成長する音が聞こえるかのように」伸びる。

Learning curveが結構鋭く切り立って、しかもかなり長い期間(それこそ数年間)そのペースで上昇し続ける。なかなかサチらない(saturate/飽和しない)。相手がいる事でもないし、フィジカルとは関係ないので、(よほどやり方を間違えない限り)不可抗力で成長しないということは有り得ない。これだけ「外部の環境に影響される事無く」「自分のペースで」「確実に変化を見て、感じて、楽しめる」プロセスって実は世の中にもそんなに無いと思う。

(またしても激しく脱線するが、例えば細かいmechanicsがかなりsensitiveに効いてしまうゴルフスイングの習得プロセスだとプロのコーチに教わったとしてもどうしても上手くいったりいかなかったりの「上り下がり」や「踊り場」を何度も経験せねばならず、一段上のpatienceが要求される。スノボの初期の伸びが近いかな?とも思う。ターン習得の立ち上がり、フェイキーを覚えて、ground trickでしなりや弾き、回しをマスターして、小さいキッカーでのone makeのグラブやFront/back 360くらいまでの一連の直線的な伸びの感覚。が、そこから先の540から720あたり、キッカーが大きくなったり怪我のリスクが上がってくるとどうしてもプラトーが訪れる。)

よく言われる1万時間の法則や、かの有名な桜木花道のジャンプシュート2万本(「2万で足りるのか?」)のように、1年以上徹底して量を積み重ねれば、いつか必ず「量が質を凌駕する瞬間」が訪れる。
壁打ちをやる → 変化が感じられて楽しくなる → 更に、「一生懸命やること」自体が楽しくなる → もっともっと壁打ちをやる → もっともっと上手くなる → 遂には練習や試合のプレーに目に見える違いが現れる → 更に壁打ち中毒になる、というHappy cycleが回り始めたらこっちのもん。そしてこの成長スパイラルに入った選手の数がチーム内で支配的になれば、恐ろしいことが起こるはず。1年生だったら文字通り狂ったように一日中やっちゃっていいと思う。

3. 「裏切らない」ことの意味

練習で強い相手と1 on 1をして何故か上手く行かない、試合でシュートが最近調子悪い、脚を怪我して若干フローなメンタルコンディションから遠ざかっている、という状況でも、wall-ballだけは関係なく確実に変化し続けられる。「今やるべきことをやり」、「変化を楽しみ」、「好きを大事にする」というflowな精神状態を意識的に安定して作り出すためのルーティーン/儀式に使える。

日々の細かい結果の積み重ねや、悩み、不安、後悔によって乱されがちな、「心」のコンディションを整えるための「毎日の日課」としては正に持ってこい。(そういう意味では野球の素振り、空手の型に近い。)やればやるほど、「揺らがず、とらわれない」心の境地を簡単に作り出せる。

4. 環境や時間軸、DNAの制約を乗り越える

体の出来上がり具合や試合経験も必要としないので、冗談抜きで、1年生が4年生を越える事も出来る。センスもクソも無く、ただの投下時間×質の勝負なので、ここだけに絞って言えば、やり続ければ必ずいつかNCAAのトップクラスの選手に追いつける。若いくせに突然変異体で化け物みたいにstick skillだけ突き抜けちゃった奴に、計画的になれてしまう。(ラクロス知識の偏在を容赦なく越えられるので、立場を変えて言えば、出来たばかりの3部リーグのチームの選手、地方リーグの選手が努力次第で関東の1部のスターターを越える切符にもなり得る。)正に最高の下克上ツール。雑草魂の最強の味方。

与えられた環境やDNAによって規定される身体能力、始めた年齢如何に関わらず、自分の意思の力で力強く人生を切り開ける/運命の軌道をグイッと捻じ曲げられるという所に代え難い魅力を感じてしまう。

上級生はもちろんだが、今の新2年生、新しく入ってくる新1年生の選手達に、実験的に、これまで以上に徹底した壁打ち刷り込みを行って、極限まで壁打ちをやって貰い、後の成長をトラックしてみたらどうだろう?壁打ちをそれほど徹底していなかった世代と比較して際立った差が出るんじゃないかという気がする。

もちろん、初期に壁打ちをやってなくて、今3-4年生だったり、OBだったりしても大丈夫。壁打ちを始めるのに遅すぎるなんてことは有り得ない。やればそこから成長カーブを駆け上がれる。逆に言うと、これまでキャッチボールや練習・試合で積み重ねられてきた「ありたい姿」や経験が、壁打ちを始めることで爆発的に解放されるというシナリオすら考え得る。(IL PodcastでもGood old days interviewで、高校の後半や大学からラクロスを始めたのに壁打ちを必死でやってAll Americanになった選手の話も出ていた。)

5. Long stick, Goalieであれば尚更

ロングスティックやゴーリーであれば尚更。こと日本の学生レベルでは、相対的にstick skillへの意識/優先順位が低い選手が多いため、ここで突出出来れば極めて大きな差別化に繋がる。Longを短く持ってやってもいいし、Shortyでやってもいいし。(今年のMLLドラフトの目玉、共に卓越したstick skillに定評のあるSyracuseのLMS Joel White (#11)も、GoalieのJohn Galloway (#15)もジュニア時代にshort stickとしてのキャリアを積んでいる。間違い無く相当量の壁打ちをこなしているはず。前回のNLLの記事で紹介したMLL NationalsのGoalie Brett Queenerなんてそれが高じて遂にはNLLのフィールドプレーヤーにまでなってしまった...)

という訳で、皆で満面の笑顔で楽しく毎日ガンガン壁打ちやっちゃいましょう!(壁が無いなら学校に掛け合ってコンクリやらレンガやら駆使して壁作っちゃいましょう!)

6. いくつか動画の追加

●これももう一歩extremeを突き詰めていて参考になる。立体的に使う。円を描きながら、8の字に動きながら、壁と平行して走りながら、といった、より実戦に近いシチュエーションで動きながらの練習が参考になる。コンクリートで四方を囲まれたこういう場所、ないだろうか?高架下?廃ビル?スカッシュコート?

●もういっちょ。元Boston Cannonsで現UNCのAssistant CoachのPat Myersの名インストラクションDVD「ScoreMoreGoals.com」より。非常にいいことをいくつも言っている。「ラクロスを上達させるための唯一絶対の方法だ」、「要はmuscle memory。とにかく反復して体に動きを覚え込ませること」、「世の中の全ての優れたラクロス選手に共通して言える事は、全員例外無く、相当量の時間をwall ballに費やしている事だ」。そして、彼自身が非lacrosse hot bed地域のMaine州で独学で上手くなった経験を踏まえ「必ずしもラクロスが盛んじゃない地域出身でも、壁打ちを一生懸命やれば本場の選手に必ず勝てる」とのこと。日本のラクロス選手にとって非常に勇気を与えてくれるコメントだ。
●UNC '91の優勝メンバーで、元MLL選手、現Boston Cannons HCのBill Dayeによるwall ballインストラクション動画。個人だけに留まらずチームの練習でもガンガン壁を使わせているところが面白い。横に並んで、またはバスケのtapみたいに連続でやったり。「常にスティックを耳の横の高さにキープし続けることが大事」と指摘。

●番外編。こりゃどっちかって言うとギャグとして。思わず吹いてもうた動画。LA空港、通称LAX(エルエイエックス)の有名なでっかいモニュメントで文字通りLAX (lacrosse) wall ballをやっちゃうというおバカ企画動画。Skateboardのstreet film shootやSnowboardのstreet railでのjib sessionで禁止されてる歴史的/芸術的建造物でトリックを決めるノリに似ている。深夜に六本木ヒルズの映画館前の噴水の縁石やらモニュメントでバチッとトリック決めて警備員に怒られてダッシュ、みたいな。超西海岸。Grafitti guerrila的な。一応、「決して真似しないように」とメッセージ...

●最後は、皆のヒーロー、地上最強プレーヤー、Paul Rabilのwall ball instruction動画(リンク)。やっぱりRabilもやっている。動画のクオリティが高い...1) Over hand, 2) Side arm, 3) Under-hand, 4) One hand, 5) Quick, 6) Behind the back (BTB), 7) Behind the hip (BTH)の7種類を左右それぞれでやるべしと。特にSide/underではきちんと手首を柔らかく使ってスナップを効かせること。手首固定で肩の振りだけでやらないようにと。

●ついでに、女子の追加動画。前回のはインストラクションメインで、実演している選手自体は普通の選手だった。今回は、Div 1の強豪James Madison '06卒、'09 Canada代表で、同じくDiv 1の新興強豪校Stanfordの現assistant coach、Brook McKenzieのwall ball。

ハッキリ言って、巧い。もう女子ラクロスもcurving head era以降は完全に男子ラクロスのスティックスキルと同じと考るべき時代に突入してしまったんだろう。Quickも、Behind the back (BTB)も、Around the world (ATW)も。持ち替え、クレイドルの少なさ、バックハンドからのセット→投げの速さと正確さ。One-handでの時はかなり短く持って、実質的に手首だけで投げているイメージ。体幹と下半身をしっかり安定させている点にも注目。パッと見Body frame(骨格)が大きく、パワーもある点が目を引くが、あくまで最低限スティックを持ってボールを投げられるのであれば、体格やパワーは関係無い点に留意。彼女自身小柄な小1の頃からこれやってたんだろうし。
にしても、これを見ると如何に単位時間当たりの反復回数/密度が、相手のいるキャッチボールよりも多いかが非常に良く解る。ほんの10分の練習で、極端な話キャッチボール1時間分ぐらいの「投げて捕る」という動作を繰り返せる感じじゃないだろうか。

いたる@13期

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