2012年3月25日日曜日

オフェンス効率:ポゼッション当たりの得点率

最近忙しい上に、NCAAバスケのトーナメントも大詰めになっており、加えてラクロスも各カンファレンスの試合が始まりいよいよリーグ戦が本格的に熱くなって来ている事もあり、記事を書くのが追いつかない...時間との戦いの様相を呈している。

一応書きたい事はカバーしたいので、若干クオリティを犠牲にしてでも、一個一個が短くなってしまっても、ガンガン書きたい事を書いて行こうと思う。

最近のILの記事で一個気になったのが、「Introduction to Pace Statistics: The Most Efficient Offenses in the Nation」と言う記事。オフェンス関連のスタッツ(Stats: Statistics = 統計数字)を分解/分析してラクロスを考察する系の記事。

アメリカのStats文化

個人的に、昔から数字やファクトに基づいて、物事をより科学的に、ロジカルに観察、分析、考察するのが好きだった事、及び大学卒業直後から長年戦略コンサルティングの世界でAssociate/Consultant/Project Leaderとして科学的アプローチに基づいて経営戦略/経営管理に携わって来た事もあってか、スポーツや競争に於けるメカニズムの解明、統計による分解に対して異様に興味のアンテナが立っている。

アメリカに来て感じたのは、ことスポーツに関してはその手のscientific approach/statistical approachに関しては恐ろしく進んでいる/突き詰められていると言う事。Money Ball等でも解る通り。特にESPNを始めとしたスポーツ専門メディアのスタッツの分解/分析っぷりはこっちも感動してしまう程。それとは別に個人コンサルタント的にあらゆる事象を新しい角度から分析してオンラインで公開している人もおり、この手の話が好きな人にとってはたまらない。

(原因としては、①一つにはスポーツそのものの規模(選手/関係者/ファン/そして市場)が圧倒的に大きい事、②もう一つはアメリカのカルチャー/習慣として、新しい物/考え方/物事のフロントラインを開拓して行く事が大好きで大得意と言う事、③専門のスポーツチャネルとスポーツメディアの存在。④そして、ラスベガスを介した、全てのスポーツに対する大きなギャンブル市場の存在。そこで多くの賢くストリートスマートな人々が日々統計分析をしていかに周囲を出し抜いて勝敗を決する要素を見つけるかに躍起になっている点)

さて、そんな環境の中、当然ラクロスに関しても日本の平均値以上にあらゆる数字/統計をストックし、分析し、示唆を取り出して、打ち手に結びつける、と言う事を各チームのコーチ陣も、メディアもやっているわけだが、その一つの例で、「あ、示唆あるかもな」と感じた話。

ポゼッション当たりの得点率

記事に載っていたのは、「ポゼッション当たりの得点率」。各試合の得点数を分子に、総得点数を分母に取って出したパーセンテージ。

通常、あるチームのスピードやオフェンス力を見るには、単純に一試合当りの平均得点数を見る事が多いが、それだと、速いペースのRun & Gun主体の攻めか、じっくりセットオフェンスで責める遅いペースの攻めか、等のチームのペースによるバイアスが掛かってしまうため、必ずしもオフェンスの「効率」を現す指標には使えない。

この数字を見れば、如何にターンオーバーせずに限られたポゼッションの機会を確実に得点に結びつけられているかが解り、正にオフェンスの「効率」、「如何に効果的に攻められているか」が解るという話。

(ちなみに、シュート成功率とも違う。シュート成功率が低くてもチェイスを取り続ければポゼッションは支配し続けられる訳で。ただ直感的にシュート成功率とこの数字は結構相関する気もする。シュート成功率が低いと言う事はセーブされる、チェイスを取られる可能性も高くなるはずなので。)

そこで出て来たのが以下の数字。今シーズン平均。

ちなみに、60分を通してのポゼッション数は、NCAA Division 1全体の平均で、50回。最も多いDetroit Mercyが70回と言う事らしい。直感的にDMは強豪校じゃないので、ターンオーバーも多く、加えてRun & Gunでミスを顧みずガンガン攻めている、一方でDFが固くなく結構失点もしちゃってる、というパターンじゃないかと想像する。(これ、日本だとどうなんだろうか?直感的にミスがより多いため増えるファクターはあるが、一方でペースがNCAA程速く無いとすると下げるファクターとして働くことになる。)

で、2012年のこれまでの実績に基づいた上位校は、

1. Denver (43.4%)
 2. Bucknell (43.4%)
3. Virginia (41.1%)
4. Maryland (40.5%)
5. Cornell (39.6%)
6. Villanova (39.5%)
7. Duke (39.4%)
8. UMass (38.8%)
9. Hartford (38.0%)
10. Loyola (37.1%)

という事らしい。パッと見て感じるのは、

  • 全体の傾向としては、やはり順位の高いチームほどこの数字が高い傾向がある。基本的にはより高い確率で得点出来ていると言う事なので。
  • 明らかに突出してTurn overが多いUNCは相当低いはずで、当然10位に入っていない。今年はSyracuseが10位以内に入っていないのも面白い。確かに若手の多い今年はまだオフェンスがぎくしゃくしており、シュート成功率が低く、ターンオーバーも多いように見える。(それでも最後は力で捩じ伏せて何となく勝っているが。)
  • Denverが1位というのは納得。しかし、43%ってのは結構考えたら凄い数字だ。10回ポゼッションしたら4回得点するってことでしょ?どんだけ効率的なんだっちゅう話だ。#22 AT Mark Matthewsらベテラン実力者を軸に、ターンオーバーが少なく、ある程度じっくり時間を掛けて、無理せず確実に得点出来る機会を待って確実に得点していると言うことだろう。加えてMatthewsらの高いスティックスキルとオフェンスIQもあるはず。そしてこれこそ正に知将Bill Tierneyコーチの狙いでもあるはず。(一方で、DenverはDFが苦しんでいるため、実際にこのオフェンス効率の高さが必ずしも勝率/順位に繋がっていない。)
  • Virginia, Marylandあたりが上位に入ってるのも納得。
  • UMass, Loyolaなど、例年に比べて明らかに強く、上位にいる(3-5位)2チームは、明確にこの数字が上位校並みに高い事が解る。
などなど。考え始めたら何時間でもいろいろ考えたり議論出来る気がする...

1 件のコメント:

  1. これ面白いですね!!

    分かりやすい指標で、感覚的になんとなくやっていたものがバチっと数字として出せるのが魅力的です。この数字で明確にOFの状況を捉えて改善点が洗い出しやすくなる気がします。

    続きもあれば読みたいっす!

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