2011年1月7日金曜日

MLL選手製造工場UMBC

10年のMLLや、WLCに向けてのメディアカバレッジを見る中で、頻繁に耳にした話題がある。UMBC (University of Maryland Baltimore County)のトッププレーヤー輩出っぷり。解説者のQuintもよく指摘しており、去年のInside Lacrosseでも特集記事が組まれていた。非常に興味深い話だったのと、選手/コーチにとって、また一ファン/ビジネスパーソンとしても学ぶべき点があると感じたので、ご紹介。ちなみにUMBCは過去にも親善試合で何度か日本にも来ており、コーチのDon Zimmermanは日本のラクロスとも縁が深い方。

UMBC出身者の活躍

  • 昨シーズンの頭くらいからだろうか。ILやESPNで、「UMBC出身選手の活躍が目立っている」という話をよく耳にするようになった
  • 具体的には、2010シーズン時点で6人のMLL選手がおり、そのうち4人がスコアリングランキング上位25位以内、そして2人がUS代表、もう一人はMIP (Most Improved Player)獲得
  • 更に彼らの多くが大学時代必ずしもトップレベルの選手として注目されていた訳でもない。それがMLLに来て花開き、更に物凄い勢いで成長を続けている
  • 代表的なのはDenverの主力でありTeam USでも中心となった、Brendan MundorfとDrew WesterveltのATコンビ。そして、2010年に大ブレークし、Most Improved Player賞を受賞し、実質Rookie of the yearとも言われたChesapeakeのPeet Poillon(イヨン)。さらに、Terry Kimener (Chicago), Alex Hopmann (Denver), Kyle Wimer (Chesapeake)といったオールラウンダー系で活躍するMFたち

なぜそれが凄いのか

  • 別にMLLの選手数で見ればもっと多い学校はいくらでもある。Virginia, Syracuse, Duke, UNC, Hopkins, Maryland
  • しかし、UMBCが注目されるのには理由がある
  • NCAAレベルでは決してトップレベルの強豪校ではない事。例年20位前後をうろうろし、ファイナル4のChampionship Weekendにはここ30年縁がない。ぶっちゃけ「中堅校」
  • また、その裏には、学校そのものの背負うハンデも。学校としてのサイズも小さく、知名度もかなり落ちる。エンジニアリングとコンピューターサイエンスというニッチな学部が中心。大型総合大学と違い、家から通学する地元の生徒が多い。ボルティモアの郊外という、必ずしもベストな立地にある訳でもない。従って、選手を集める上で必ずしも上記の強豪校/マンモス校のような魅力を兼ね備えているとは言い難い
  • 結果、毎年集まる選手の質としては、上記強豪校からは一段落ちる。高校生で既に完成された有名選手を取っている訳ではなく、地味な選手が多い(DVDで試合を見たら解る通り)
  • にも関わらず、MLLレベルでトップ校に負けるとも劣らない人数と実績を残している。一体何がそうさせているんだ?何か秘密があるはずだ、というのがそもそもの話の発端

理由①Zimの教える基本に忠実なsimple lacrosse

  • MLLに来ている選手たちが口を揃えて理由としてあげるのが、ヘッドコーチDon Zimmermanの、超基本に忠実な指導方針
  • 例え花形選手だろうと、補欠選手だろうと、入学した瞬間から「ただひたすら基礎を固め続けるためのboot camp」を味合うことになる
  • 「シュートは必ずオーバーハンド」、「groundballは絶対に両手」、「make the simple pass。派手なパス、リスキーなパスはするな」。それらを繰り返し刷り込まれ、骨の髄にまで叩き込まれると言う。極めてシンプルな、初心者に教えるレベルの基本。別に何ら複雑なこと、高度なこと、派手なプレーは必要ない、という考え方。ある意味今の複雑化する戦略や多様化して派手になる現代のラクロスに頑固に逆行するやり方
  • しかし、Mundorf曰く「これが自分たちのMLLでの成功に最も役に立っている。大学の次のステージ、プロのレベルでは、DFは一回り大きく、上手く、速い。そんな状況では高度で複雑なプレーは出来なくなる。むしろ基本に立ち返り、シンプルで正確なプレーを確実にやることが返って重要になる。大学時代に派手なプレーで目立っていた選手が同じ事をプロでやろうとしても長続きせず結局消えて行く。シンプルにやること。基礎。それがトップレベルで成功し、生き残って行く上で最も大事なことだ」

理由②選手自身に考えさせる

  • さらにWesterveltは、「Zimは選手自身に考えさせることを重視する。選手一人一人がIntelligenceを持つ事を要求する。結果として、それが4年間を通じて習慣化される」
  • Zim曰く、「自分が選手を『創る』なんてとんでもない。自分の役割は、あくまで選手達をサポートすることに過ぎない。自分が教えた選手たちがプロとして将来活躍する。それほど嬉しいことはない」
  • その瞬間の勝ちを手っ取り早く求めた場合、役割を与え、機械的にそれを「やらせる」、という考え方もあるだろう。が、彼は(恐らく)時として目先の効率や勝利を捨て、長い目で見て選手にとって最も成長出来るやり方を取っているんだろう

理由③"Lax rats"(ラクロス馬鹿)

  • Terry Kimener曰く、「UMBCの選手たちは、一言で言うと『Lax rats(ラクロス大好き野郎)』の集団。名門校程華々しい高校時代の実績は無いが、ラクロス大好き度では群を抜いている。だから、大学時代の伸びの大きさでは負けないし、また、卒業してプロになってもさらに貪欲に吸収し、成長し続ける。
  • 「MundorfもWesterveltもPoillonも、全員に共通するのはプロに入ってから大きく成長していること。名門校出身の選手の中には大学時代の実績に満足し、大学時代の貯金をプロで切り崩す、というやり方の選手も多い。でもUMBCの選手はそこが違う」

理由④Chip on the shoulder(雑草魂)

  • また彼は、他に「負けん気」、「雑草魂」の存在も挙げる。大学時代に優勝やベスト4を経験し、多くのメディアの注目を集めた選手たちは、ある程度の達成感/満足感をそこで得てしまうのかも知れない。プロに入って尚成長し、優勝し、プルーブしようという意思を持ち続けるのは簡単ではない。
  • 一方で、UMBCの選手たちは、大学時代に見過ごされる/注目されないでいることに大きな不満を持ち続けて来た。自分たちはもっとやれることを証明したい、大学時代に果たせなかった全米制覇の夢をプロで叶えたい、名門校出身のやつらを見返してやりたいという強い気持ちを持ってプレーしている。それが長い目で見て成長や気持ちの入ったプレーに繋がっているとのこと

以下、実際にMLLで活躍しているUMBC alum(卒業生)の紹介。


具体例①最強ATコンビに成り上がったBrendan MundorfとDrew Westervelt

  • 大学で3年間共にプレーし、Denver Outlawでも一緒になり、NLLのPhiladelphia Wingsでも共にプレーし、更にはUS代表でも鉄板ATコンビとしてプレーし続けている。(つまり、7年間の間文字通り1年中一緒にプレーしているということ。二人Duke-Long IslandのDino-Greerも近いがここまで徹底していない)
  • 左利きと右利き、ダッジャーとフィーダー、スピードとパワー、等々あらゆる意味で補完関係にあり、お互いがお互いのパフォーマンスを何倍にも引き出す相性とコンビネーションを持っている。
  • 互いに切磋琢磨すると共に、長年一緒にやることで、お互いに何がやりたいかを知り尽くしている。お互いを生かし合う事で、一人でやるよりも高いレベルのパフォーマンスを生み続けて来た
  • 2010年のUS代表選出では、Duke-Long IslandのDanowskiら有名なAT達を差し置いて、NCAA時代に必ずしも最も有名な選手では無かった二人が選ばれたことに軽い驚きがあったが、今の実力、MLLに入って以降の伸び、短い準備期間の中既に完成されたコンビネーションを持っていたことを考えると納得。そして何よりもHC Presslerの下、派手さを捨てて基本に忠実に勝ちを取りに行き、我を捨てて徹底したチームプレーを求めたUS代表にとってはUMBCで叩き込まれたスタイルは正にうってつけだったのかも知れない

具体例②Peet Poillonのシンデレラストーリー

  • 雑草魂っぷり、諦めずに超粘り強く底辺から這い上がるっぷりが半端無い...
  • テレビで見たNCAA決勝に感化され、父親と共に高校にラクロスチームを立ち上げる。
  • 短大Howard Community Collegeでの2年間の活躍が認められ、当時Joe Breschi(現UNC HC)がHCをやっていたOhio Stateの目に留まり、4年生として転校し、そこでエースになる
  • そのシーズンでUMBCに負けた際に、「目から鱗が落ちた」と言う。「UMBCのラクロスは明らかに自分たちより効率の良いラクロスだった。自分たちの方が遥かに能力があったはずなのに、試合では負けた」と。「だから、そのチームを作ったDon Zimmermanの下でプレーして、その秘密を学んでやろうと思った」と言う。(転んでも決してただでは起きない...)
  • そして、UMBCでZimの教えを受け、初日から誰よりもハードに練習し、大活躍し、2nd team All Americanに選ばれる
  • MLLではBostonにドラフトされる。Bostonまで車で5時間掛けて毎週気合いで通うも、練習生としてしか使われず、1シーズン目はほとんど試合に出られぬままChesapeakeに放出トレード。
  • それでもめげずにハードな練習を続け、遂に2年目のシーズンで大ブレークを果たす。それまでNational Spotlightを浴びる事が無かったこともあり、多くのファンや関係者から「あいつ誰やねん!?」となったという話。期待されていなかったため、練習生の付けるような大きな番号、背番号57のままシーズンを戦い、それがいつの間にか彼のトレードマークになった
  • 一気に人気が爆発し、遂にPaul Rabil率いるMaverik Lacrosseと契約を結ぶ。解説者のQuint Kessenichも2014年のUS代表に入ってくると予想


具体例③雑用処理から這い上がるutility MF 3人

  • Terry Kimener (Chicago), Alex Hopmann (Denver), Kyle Wimer (Chesapeake)の3人に共通することは、自我を殺し、チームプレーに徹し、求めればどんな役割もこなすということ。Ground ballを拾ってクリアする役目、DFMFなどなど、チームに求められる役目を黙々とこなす。そして、結果として主力としてのチャンスをモノにして行く。
  • 基本がしっかりしており、派手さは無いが、オールラウンドに何でもこなせる。コーチとしても使い勝手がよく、頼りになる存在だと各コーチ


などなど。基本の大事さ、自分自身で考えることの大事さ、特に、高いレベルになればなるほどその重要さが増すという点、そして、ラクロスを愛する気持ちや楽しむ気持ち、名門チームじゃなくても気にせずに自分が今やるべき事/出来る事/求められる事をやることが長期的に見た成長と成功に繋がっているという点など、非常に本質的で学べることが多いと感じた。ラクロスだけに限らず。

いたる@13期

2011年1月5日水曜日

NCAA 2007 Game Review Final Johns Hopkins-Duke

先日ESPN Classicという過去の名試合を放送するESPNの兄弟チャネルで、NCAAの過去15年間の名勝負と言われる決勝戦を再放送していた。録画してDVD梅ちゃんに送っといたので興味ある人は是非。

ちなみにピックアップされていたのは3試合。96年のPrinceton-Virginia、07年のHopkins-Duke、そして記憶に新しい09年のSyracuse-Cornell。どれも最後の最後まで結果の読めない1点差の試合。ラクロスの試合としてもレベルが高く、エンターテイメントコンテンツとしても非常に完成度が高い。歴史に残る名勝負。納得の選出。

今回は07年の決勝の見所紹介。

1. そうそうたる顔ぶれ

今見ると、実は錚々たる選手が出ている。後のMLL、US/Canada代表を引っ張る選手がフィールド上にゴロゴロ。JHUは過去10年間で最高のNCAAチームと呼ぶ人も多い。そして、Dukeはご存知の通り3年後の2010年に雪辱の初優勝を果たすのだが、その際の主力メンバーが既にこの頃から下級生として活躍している。以下、試合に出ている主な現MLLメンバーたち。

Hopkins

#2 G Jesse Schwartzman Sr. (現Denver)
#9 M Paul Rabil Jr. (現Boston, team USA)
#12 M Stephen Peyser Jr. (現Long Island, team USA)
#24 A Kevin Huntley Jr. (現Toronto, team Canada)
#15 M Mike Kimmel Fr. (現Chesapeake)
#10 A Steven Boyle Fr. (現Boston)

Duke

#40 A Matt Danowski Sr. (現Long Island)
#25 A Zack Greer Jr. (現Long Island, team Canada)
#16 A Max Quinzani Fr. (現Boston)
#22 Offensive MF Ned Crotty So. (現Rochester, team USA)

Dukeのオフェンスコートでは今のMLLを代表するAT4人が同時にプレーしていたということになる。なかなか恐ろしい。

ちなみにDinoとGreerのコンビはこの時それぞれ94ポイント、93ポイントとポイントランキング1-2位。そのコンビをそのままLIでも引き継いでいる。

2. 背景

JHUは80年代まで長く続いた栄光が終わりを告げた後の、長い不振を経て、00年にOBのDave Pietramala(Coach Petro)が就任し、05年に天才Kyle Harrisonを擁し、悲願の復活優勝。2年越しの優勝を狙う。

一方のDukeは、元々弱小/中堅校だったのを、HCのPresslerが16年掛け地道に強豪へと導き、05年に遂に決勝に進出するも、JHUに惜しくも一点差で敗れる。06年にはラクロス界に激震が走るレイプスキャンダル(結局冤罪)により、コーチは解任、チームはリーグ戦を棄権。すったもんだを経て一時は廃部と思われながらも新コーチ、Dinoの父親John Danowskiの下復活。再び決勝の舞台に帰って来た。それでも尚、ラクロスに泥を塗ったと非難され、金持ちお坊ちゃま学校のイメージと、ラクロスでは新参者ということから、多くのアンチファンがいるのも事実(会場も完全にアウェイの空気)。不遇の1年間を経て、強い向かい風の中、なんとか見返してやりたいという状況。

3. 試合の見所

前半

前半全体を通してJHUの統制された、ロジカルなハーフコートオフェンスが非常に印象的。またDも非常に規律ある素晴らしいチームDを見せている。

1Q 8:24の、JHUのMF 2 on 2 offense。Peyserが右に抜き、スペースを中央に作り、fade awayでトップのRabilにパス。そこからがら空きの左のスペースに切り込みシュート(惜しくも外れるが)。MFの2 on 2の美しい教科書。

JHU 2点目。Rabilがトップからのダッジで3人引きつけ、トップでサイドに逃げながらのHuntleyの隙を付くサブマリンの動きが素晴らしい。そして、まったりと掃けながらもそれをしっかり見ててバチッとボックスにパスを出せるRabilの視野とstick skill。完全にステップバックしながらほぼ真後ろにスナップだけで鋭いパスを投げている。これはMFの選手、特に突破力があってスライドを呼べる選手はマスター出来れば相当アシストを稼げるはず。MF-ATのコンビネーションの教科書。

Duke 1点目、(当時)2年生のOFMF #22 Ned CrottyのXからのフィードを受けての#10 MF Brad Rossの得点。Rossは毎日朝一でバッグいっぱいのボールを持ってシュート練習を1.5時間やり、昼食後にチーム練習という、一日ダブルセッションをこなしているとのこと。上半身の被せ方と目線から、バウンドショットを打つように見せて実は上。JHU GのJesse Schwartzmanも一瞬反応を遅れさせられている。

Duke 2点目、EMOでのNed Crottyの左手での得点に繋がるDuke Offenseのパスワーク/スティックワークが恐ろしく参考になる。貰ってから投げるまでの一人一人の動きの早さ。ボールはほとんど「どボックス」。ボールがほぼノンストップでグルンとコートを一周する。これだとどんなにDFが頑張っても必ずどこかにスペースが生まれる。ショートスティック陣はこのレベルを是非目指したい。

2Q JHU 5点目、またしてもRabil-PeyserのMFのトップから2 on 2での得点。クリースのATが動いて2枚目のスライドを行かせず、上でスペースを作ってロングシュート力のある2枚のMFが確実に仕留める。気持ちいい。つか、PeyserとRabilが一緒のstringにいたら、まあ、無敵だわな...この状態でほぼMLLで通用する。

2Q終了間際、残り1分でのJHU G、Schwartzmanのクリアパスが衝撃。スンッって感じで軽く投げ、オフェンスコートのゴール横にいるATにバシッとクリアパス。Gはこれが出来ると本当に強い。クリアの怖さが数段増す。セーブされた瞬間から文字通り相手ゴールを脅かせる。野球のキャッチャーの二盗阻止のイメージか。パシッ−シュパッ−ズビシッ!という流れるような一連の動作。Gの選手はしっかり下半身/体幹のウェイトトレーニングを積み重ねて是非とも身に付けたい。

前半を通し、12/16でJHUが完全にFOを支配。DukeのDinoもGreerもほとんどボールに触れていない。ゲームプランニングが大成功。戦術のマネジとしても非常に学びが多い。

後半

3Q JHU G Shwartzmanが好セーブを連発し、得点を許さない。Dが危険な位置、危険なシチュエーションでシュートをほとんど打たせてない。

が、そこから、沈黙していたDuke offenseが爆発。一気に試合の流れが変わる。

解説者のQuintがPaul Rabilについてコメントしていた。教室でも常に最前列に座って勉強する努力家。とにかく集中力と努力で突き抜けていると。この時点で3年生だが、今後MLL、USAを背負って立つ、恐らくラクロス史上最高の選手の一人になるだろうと言っている。(そして4年経った今、2010年現在、確実にそうなっている。)持って生まれた才能ではなく努力と集中力に言及している点が印象的。外からパッと見るとそのサイズと身体能力に目が行きがちだが、彼が本当に凄いのは、RabilをRabilたらしめているは(彼自身インタビューやCMで再三言及している通り)やはり努力と集中力と練習量。 Matt StriebelやBrendan Mundorfもそうだが、MLLに入っても大きく成長する選手、最高峰の中でも更にもう一歩抜きん出る選手、US代表に複数回入ってくるような選手たちはほぼ例外無くかなりイっちゃったレベルで練習の虫だという事実。

Duke 6点目、EMOでのCrottyの左手でのDをスクリーンにしてのシュートが気持ち良過ぎて吹いた。Leftyの選手は100回見て刷り込みたい。EMOで確実にこれを決められれば間違い無く得点量産出来る。

Duke 7点目、Rossの得点、substitutionで相手のDに一歩先行したのを見逃さず、単純にそのままゴールに向かう事で生まれた得点。新人戦で見るようなプレーだが、このレベルのこの舞台でも起こり得る。Oとしては常に狡猾に狙いたいし、一方でDとしては絶対にやりたくない失点。

Duke 8点目、MF #29 2年生のMike Catalino(現Maryland 4年ATのGrantの兄)の、ショート相手のインバートからのインサイドロールでの得点が非常に参考になる。直線に近い大きな切り返し角度で、流れるように素早くロール。十分にゴールの前まで行って角度を稼いだ上でシュート。MFの選手は何度も見て、スティック無し→ボール無し→D無し→Dありの順で練習して体の使い方を刷り込み、確実に自分のものにしちゃいたい。

JHU 11点目、Paul Rabilのトップからの1 on 1 to running shotが彼らしさの真骨頂。Quintも指摘しているが、精度重視でスピードを少し押さえ、必ずしも全身全霊でのシュートではない。一方で、スティックを完全に体の後ろに背負って隠した状態からスパッと一瞬で打っているため、ゴーリーにシュートの瞬間のスティックとボールが見えず、極めてセーブしにくくなっている。そしてこの肩の回転。左肘の引き、打つ瞬間の右足の向き(思いっきりゴールに向いている)。

最後の10分間は完全に気持ちの戦い、魂のこもった固いDのぶつかり合い。そして何よりも双方の4年生Gのグレートセーブが素晴らしい。ポジショニングや球筋の読み、フェイクへの対処、フットセーブ等、Gの選手が見て技術的に学べる点が特盛り。

残り5分で1点差を追うDuke、2 men upの好機にDanowskiがノーマークでシュート、これで同点!と思いきや、何と不運にもボールがパイプの真っ正面に当りそのまま逆コートまで転がりJHUボールに。この時ばかりは運に見放されたか。が、直後のbroken situationでQuinzaniがキャッチミスしたボールが奇跡的にゴールに!今度は運が味方に。

残り4分半で11-11の同点。会場の緊張感は最高潮に。

その後もbrokenな時間が続く。が、Rabilの素晴らしいアシストパスからHuntleyが落ち着いて勝ち越し点をねじ込み12-11。この人の大舞台でのこの勝負強さと落ち着きは本当に凄い。

残り2分半でのRossのノーマークのシュートが再び不運にもパイプの真芯に当り逆コートまで転がる。何か大きな力がDukeの勝利を邪魔しているかのような錯覚すら覚える。

残り1分44秒でDukeのEMO。ここでエースDinoがまさかのキャッチミスでボールはセンターラインにこぼれ、JHUボール!気合いのライドで取り返すも、クリアパスをミスし、Quinzaniも取り損ねる。最後の最後でお互いにメンタルが揺らいでいる。

最後の最後、残り30秒からボールを回して崩し、最後にRossがshorty相手に最後の望みを掛けた渾身のシュートを放つが、Shwartzmanが最高のfoot saveで弾き返す。その後もJHUがしのぎきり、12-11で試合終了。

Hopkinsが2005年以来2年ぶりの優勝。そしてDukeは2年前に続き、またしてもHopkinsに決勝で1点差で敗れ涙を飲んだ。喚起に沸くHopkins。インタビューに答えるCoach Pietraの声も感動に震えている。Dukeの選手たちは最後の最後であと一歩のところで勝利が手からこぼれ落ちた事実を受け入れられず、フィールドに泣き崩れる。 エースとしての責任、最後の最後で痛恨のミスをしてしまった悔しさから、Dinoはなかなか立ち上がれない。(この姿を見ると、2010年のCrottyやQuinzaniの優勝はredemptionとして本当に大きな意味を持つものだったことが分かる)

DinoとGreerを二人合わせてたったの1点に押さえた元All American DFで鬼軍曹のcoach Petroの下で鍛えられた、JHUの統制されたDF陣と守護神Shwartzmanがもぎ取った勝利だろう。

1年前のRape scandal(冤罪)からコーチの解任、学内でも、社会的にもメディアから白い目で見られ、仕打ちを受けて来たDuke。困難に立ち向かい、それを乗り越え、あと一歩のところまで迫った姿は本当に心を打った。(優勝は3年後の2010年までのお預け。)


その他

ちなみに、試合終了前残り1分で挿入されるTips講座はfast breakでのトップからゴール前へのパス-フィニッシュ。Dukeの準決勝Cornell戦、Fast breakのZack Greerのゴール前での、Dを文字通り背中でがっちりブロックしてのキャッチとシュート。え!?このスペースの狭さ、Dからのマークで点取れちゃうんだ!という驚き。必ずしも1対0を作らなくても全然点取れちゃうっていう。バスケのセンターによるポストプレーのポジション取りのイメージ(しかもGreerは決して大きい選手じゃない)。インドアラクロス仕込みの是非とも真似したい技術。

シーズンを通してのMVP、TewaaratonはDukeの#40 AT 4年生のDanowskiに。

今見てもNCAA lacrosse史に残る素晴らしい試合でした。DF出身じゃない僕は恐らくきちんと捉えきれてないが、双方エース級の選手たちの得点をかなり抑えることに成功している(特にDuke OFの前半、JHU OFの後半)。お互いしっかり対策を立てて互いのいいところを徹底的に封じにいってるはずで、恐らくDFとGの選手が見て唸る部分が多い試合のはず。

2011年1月1日土曜日

IroquoisのThompson兄弟

引き続き、休み中にガッと書き留めた/吐き出したネタを随時小出しにポスト。Inside Lacrosseの10月号にSyracuseの4年生MFで去年のAll American、Iroquois代表のJeremy Thompsonを始めとしたThompson四兄弟の話が出ていた。(Iroquois、及びSix Nationsの解説は以前書いたWLCのIroquois Nationalsの記事をご参照下さい。ざくっと言うと、米北部に住むNative Americanの子孫。コミュニティぐるみで部族の伝統であるラクロスを生活に根ざした形で伝承する。)
  • ILの表紙と記事はこちら。
  • あと、Thompson兄弟の写真はこちら。Magazine: Thompson brothers photo shootのところ。写真番号で19番以降が実際にプレーしている絵。動きがナチュラル過ぎて野生動物の身のこなしみたいに見える。それがまた超style出ててカッコいい。
非常に興味深く、また心に残る記事だったので簡単に紹介させて頂きたい。

Iroquoisのラクロスとの繋がりの深さ
  • 兄弟四人でTシャツ短パンに裸足でメットもグラブも付けず、裏庭の芝生の上で遊びで2 on 2やface offをやって遊んでいる写真が載っていた。無邪気な顔をして兄弟で戯れる姿、時として真剣な目も見せる。正に典型的なIroquoisの日常を表している
  • 文字通り生まれたときからスティックを与えられ、遊びと言えば基本的にはスティックとボールを使ったラクロス。一日中いろんな投げ方でキャッチボールをしたりシュートを打ったりして育つと言っていた。そしてそれが普通の育ち方
  • 先日同じくOnondaga出身で昨年のSyracuseのエース、Codie Jamiesonのインタビューでも同じ事を言っていた。ラクロスが日常で、それが当然の行為だと。(ちなみにJamiesonは先日NLLの地元チーム、Rotchesterと10年契約を結んだ。10年て...聴いた事ねえ...)
  • 子供の頃からインドアを中心にリーグでプレーし、過去にも多くのNCAA選手、NLLのプロ選手を輩出している。

地元Syracuseとの繋がり
  • Upstate NY(NY州北部)からカナダ国境沿いにあるNative Americanのコミュニティのreservation(保護区)に彼らは住む
  • 子供の頃からインドアを見て、そしてSyracuseの勇姿をCarrier domeの会場で見て、Syracuse Orangeのユニフォームを着る事を夢見て育つ子供たちも多い
  • SyracuseにはNative American向けの奨学金制度があり、代々Iroquoisの優秀な選手を取っている
  • DVDで見ると一目瞭然だが、SyracuseのラクロスはHopkinsやMarylandといった教科書然とした南のラクロスとは明らかに一線を画す。よりCanada臭さ、インドア臭さを持った、高いstick skillとcreativityによって支えられた、ファンタスティックラクロス。その裏にはこの地域性、CanadaやIroquoisからの選手のパイプラインがある

Thompson家の4兄弟
  • NY州北部、Syracuse大学から車ですぐのreservation(保護区)に住んでいるコミュニティの一員。そこにあるThompson家。父親も有名なラクロス選手。
  • 長男 Jerome: Under Armour High School All America
  • 次男 Jeremy: UA All America, IL player ranking(全米高校生ランキング)No. 4, 現Syracuse 4年, Iroquios代表
  • 三男 Miles: UA All America, IL ranking No. 16, 現Albany 1年、Iroquois代表
  • 四男 Lyle: US All America, IL ranking No. 1, 来年Albany入学予定
  • なかなか錚々たるレジュメ。4人とも子供の頃からラクロスエリートとして頭角を表し、イラコイのみならず全米のラクロスコミュニティの中でもその名前が認識され、去年のJeremyのSyracuseでのブレーク、MilesとLyleのUA All Americaでの突出したスキルで一気に一般のファンの間でも有名になった

Iroquoisのラクロス選手たちが直面するチャレンジ
  • Iroquoisの有能な選手たちも、必ずしも皆がみんな簡単にアメリカの大学に行き、ラクロスで成功する訳でもない。それまでには多くのネイティブアメリカンならではの障壁に直面し、才能を開花させることなく散って行く者も少なくないと言う
  • 言語の違い: コミュニティの中では彼らのnative languageを使っている。従って、当然大学受験も大変だし、仮に入ったとしてもハンデを負った状態。Jeremyのインタビューを聴くとアクセントがあり、英語が1st languageでは無い事が解る
  • 教育システムや文化の違い: 要は外国からいきなりアメリカの学校に行くようなもの。そりゃチャレンジングだ
  • 経済的チャレンジ: コミュニティとして、資本主義経済にがっちり入ってホワイトカラー中心で、という感じになってはいないはず。1次産業、2次産業従事者が多いんじゃないだろうか
  • 結果としての、学力的チャレンジ: 多くの若い選手たちが大学への入学、編入で苦戦するという
  • アルコール依存症: また、記事に、Iroquoisの男性のアルコール依存症の出現率が一般よりも高いと書いてあった。教育や経済基盤の違い、文化の違い、社会的なチャレンジからだろうか。
  • そして、コミュニティ内にある保守的な考え方: ラクロスの力を使ってコミュニティを出て、アメリカで大学教育を受け、より良い仕事、より幸せな人生を手に入れるのはいいことだ、というリベラルな考え方もある。一方で、年配の方を中心に、「アメリカの大学なんぞに行ってもいい事なんか何も無い、外の世界に被れて帰ってくるだけだ、親としては子供をアメリカの大学にやったら二度と帰って来ないと思え」的な保守的な考え方もあると書いてあった

長男Jeromeのチャレンジ
  • 長男のJeromeも高校時代から注目されていた選手で、どこの大学に行くのかが注目されていた
  • が、結局、Syracuseを目指すも、高校、Onondaga Community Collegeで勉学面で付いて行けず断念する。何度も学校の授業に適応しようと試みたが、全く理解出来ず、結局諦めざるを得なかったと
  • Iroquoisの能力もあり将来を期待されるラクロス選手がアメリカの大学に行くのが簡単ではない事を端的に物語るエピソード
  • そして今は学校を経由せず、直接NLLのプロを目指して試合と練習を続けているという。是非成功して欲しい

次男Jeremyのチャレンジとbreakthrough
  • 同じく子供の頃からの憧れ、Syracuseを目指し続けていたが、入学時には学力の問題から断念。一度地元Onondaga Community College(短大)で活躍しながら、学力向上を目指す
  • しかし、プレッシャーも有り、Native Americanの男性に多い問題である、アルコール依存症になってしまい、人生からドロップアウトするかに見えた
  • その後、夢を捨てきれず、奇跡的にそれを乗り越え、勉強も努力の末克服し、遂に憧れのSyracuse入りを果たす
  • 昨年2月のDenver戦、最初にSyracuseで決めたゴールは、彼にとっても、家族にとっても、そしてIroquoisのコミュニティ全体にとっても大きな意味のある一歩だった
  • Syracuse入学後のインタビュー。憧れのチームでプレー出来ることの幸せに溢れた笑顔が印象的。試合中のあのシリアスな表情とは打って変わって、無邪気で明るい青年という印象。
  • プレーを見ると、Native Americanの末裔としての気品と言うかオーラと言うか迫力が漂う。Iroquoisの伝統を守った後ろ髪を三つ編みにしてメットの後ろから出している姿も渋カッコいい。2010年のInside Lacrosseが選ぶ、"Sweeterawaraton"賞=「最もカッコいいで賞」に選ばれていた

Jeremyが変えた事
  • 彼の成功がIroquoisのコミュニティに与えたポジティブなインパクトは計り知れないとのこと
  • 去年の決勝での同じくIroquois出身のAT Cody Jamieson (現NLL/MLL)やDF Sid Smith (現NLL/MLL)の活躍とも合わせ、多くの若い選手たちが「俺たちにも出来る!」と勇気を貰っているという

弟のMilesとLyleが変えた事、そして新しい流れ
  • さて、弟たち。MilesとLyle。Milesは先日のUnder Armour All Americaの北軍代表として、一人際立って成熟したstick skillを見せた。また、現在高3のLyleは全米最高の高校生と評価されている。その二人がどの大学に行くのかは大きな注目を集めていた
  • が、Milesは何と大方の予想を裏切り、Syracuseでも他の強豪校でもなく、中堅校(30位前後)のAlbanyを選択。多くの関係者を驚かせた。しかも同級生で従兄弟のTy Thompsonも引き込み、弟のLyleにも来年来るように説得。その後に続く有力な若い選手たちに一緒にAlbanyに来るように説得していると言う。
  • Miles曰く、Albanyのヘッドコーチ、Scott Marrの熱意に惹かれたのと、「これまでのSyracuse有りきの規定路線じゃ面白くないので、何か新しいことをやってやりたかった」とのこと。なるほど...面白い。
  • もしかしたらAlbanyが同じくUp state NYの地元にあり、チームカラー(黒、紫、黄色)がIroquoisと全く一緒だったってのも効いてたりするのかも知れない。
  • 彼らは今年一年生で確実にAlbanyの主力として試合に出てくるはず。1年目はさすがにlong stickへのアジャスト、一段上のレベルへのアジャストに当てられるだろうが、来年、再来年となるに連れ、大きなインパクトを生んで行くだろう。今後どうなるか非常に楽しみ。Albanyが数年後にはDiv 1を掻き回す台風の目になってくる可能性がある
昨夏のWLCでは、この辺のメンツが入ったIroquoisが見られる「はず」だった。例のパスポート問題(Iroquoisのパスポートをイギリス政府がパスポートと看做さず、入国出来ないというアクシデント)さえ無ければ。これもある意味Iroquoisの選手が受けるマイノリティならではの苦難だったとも言える。であるが故に、彼らの試合が見られなかったのは本当に残念でならない。インドアWorld Championshipと、次回のWLCに期待。

以下、いくつかJeremyとIroquoisの映像

①昨年のRutgers戦での得点


②インタビュー。相方のCody JamiesonやJohn Deskoもコメントしている


③衝撃のface-offから6秒でのゴールと、その解説。相手face offerの右足の位置を見て、右横に脚を引いてなければ、相手の背中側に直接かき出せと。秒殺で相手を斬り捨てる、侍の居合い抜きに近い印象を受ける。


④Iroquoisのラクロスの伝統と、地元Onondaga Community Collegeの話。文字通り生まれた瞬間にスティックを与えられる話、素晴らしい選手の多くがアルコール依存症で潰れてしまう話など。OCCのプレーがSyracuseに負けず劣らずファンタスティックなのが良く解る。


⑤ハードコアで心に刺さるドキュメンタリーを数多く作っているUKのNational Geographic ChannelによるIroquoisの特集。ラクロスがただのスポーツではなく、生活であり、spiritであり、伝統であることが子供達の映像と共に紹介されている。スポーツが、ラクロスが人を作り、コミュニティを創る。あと、Wood stickの作り方を職人の肩が説明していて非常に面白い。


彼らを見てとにかく印象に残るのは、遊び、競争、生活、アイデンティティとして、心底ラクロスを楽しむ姿。躍動する体から発せられる喜び、そして笑顔。改めて、自分が大学で出会ったこのラクロスというスポーツは、他の球技には無い特別な歴史と意味を持つ、spiritualで素晴らしいスポーツだったんだと思い知らされる。

どうでしょ。もし興味があってイラコイ辺りに人生勉強も兼ねてラクロス留学してみたいという現役の選手がいらしたら、気軽に連絡下さいな。一緒にどうやりゃ実現出来るか考えるくらいはお手伝いさせて頂くので。

いたる@13期