2011年1月5日水曜日

NCAA 2007 Game Review Final Johns Hopkins-Duke

先日ESPN Classicという過去の名試合を放送するESPNの兄弟チャネルで、NCAAの過去15年間の名勝負と言われる決勝戦を再放送していた。録画してDVD梅ちゃんに送っといたので興味ある人は是非。

ちなみにピックアップされていたのは3試合。96年のPrinceton-Virginia、07年のHopkins-Duke、そして記憶に新しい09年のSyracuse-Cornell。どれも最後の最後まで結果の読めない1点差の試合。ラクロスの試合としてもレベルが高く、エンターテイメントコンテンツとしても非常に完成度が高い。歴史に残る名勝負。納得の選出。

今回は07年の決勝の見所紹介。

1. そうそうたる顔ぶれ

今見ると、実は錚々たる選手が出ている。後のMLL、US/Canada代表を引っ張る選手がフィールド上にゴロゴロ。JHUは過去10年間で最高のNCAAチームと呼ぶ人も多い。そして、Dukeはご存知の通り3年後の2010年に雪辱の初優勝を果たすのだが、その際の主力メンバーが既にこの頃から下級生として活躍している。以下、試合に出ている主な現MLLメンバーたち。

Hopkins

#2 G Jesse Schwartzman Sr. (現Denver)
#9 M Paul Rabil Jr. (現Boston, team USA)
#12 M Stephen Peyser Jr. (現Long Island, team USA)
#24 A Kevin Huntley Jr. (現Toronto, team Canada)
#15 M Mike Kimmel Fr. (現Chesapeake)
#10 A Steven Boyle Fr. (現Boston)

Duke

#40 A Matt Danowski Sr. (現Long Island)
#25 A Zack Greer Jr. (現Long Island, team Canada)
#16 A Max Quinzani Fr. (現Boston)
#22 Offensive MF Ned Crotty So. (現Rochester, team USA)

Dukeのオフェンスコートでは今のMLLを代表するAT4人が同時にプレーしていたということになる。なかなか恐ろしい。

ちなみにDinoとGreerのコンビはこの時それぞれ94ポイント、93ポイントとポイントランキング1-2位。そのコンビをそのままLIでも引き継いでいる。

2. 背景

JHUは80年代まで長く続いた栄光が終わりを告げた後の、長い不振を経て、00年にOBのDave Pietramala(Coach Petro)が就任し、05年に天才Kyle Harrisonを擁し、悲願の復活優勝。2年越しの優勝を狙う。

一方のDukeは、元々弱小/中堅校だったのを、HCのPresslerが16年掛け地道に強豪へと導き、05年に遂に決勝に進出するも、JHUに惜しくも一点差で敗れる。06年にはラクロス界に激震が走るレイプスキャンダル(結局冤罪)により、コーチは解任、チームはリーグ戦を棄権。すったもんだを経て一時は廃部と思われながらも新コーチ、Dinoの父親John Danowskiの下復活。再び決勝の舞台に帰って来た。それでも尚、ラクロスに泥を塗ったと非難され、金持ちお坊ちゃま学校のイメージと、ラクロスでは新参者ということから、多くのアンチファンがいるのも事実(会場も完全にアウェイの空気)。不遇の1年間を経て、強い向かい風の中、なんとか見返してやりたいという状況。

3. 試合の見所

前半

前半全体を通してJHUの統制された、ロジカルなハーフコートオフェンスが非常に印象的。またDも非常に規律ある素晴らしいチームDを見せている。

1Q 8:24の、JHUのMF 2 on 2 offense。Peyserが右に抜き、スペースを中央に作り、fade awayでトップのRabilにパス。そこからがら空きの左のスペースに切り込みシュート(惜しくも外れるが)。MFの2 on 2の美しい教科書。

JHU 2点目。Rabilがトップからのダッジで3人引きつけ、トップでサイドに逃げながらのHuntleyの隙を付くサブマリンの動きが素晴らしい。そして、まったりと掃けながらもそれをしっかり見ててバチッとボックスにパスを出せるRabilの視野とstick skill。完全にステップバックしながらほぼ真後ろにスナップだけで鋭いパスを投げている。これはMFの選手、特に突破力があってスライドを呼べる選手はマスター出来れば相当アシストを稼げるはず。MF-ATのコンビネーションの教科書。

Duke 1点目、(当時)2年生のOFMF #22 Ned CrottyのXからのフィードを受けての#10 MF Brad Rossの得点。Rossは毎日朝一でバッグいっぱいのボールを持ってシュート練習を1.5時間やり、昼食後にチーム練習という、一日ダブルセッションをこなしているとのこと。上半身の被せ方と目線から、バウンドショットを打つように見せて実は上。JHU GのJesse Schwartzmanも一瞬反応を遅れさせられている。

Duke 2点目、EMOでのNed Crottyの左手での得点に繋がるDuke Offenseのパスワーク/スティックワークが恐ろしく参考になる。貰ってから投げるまでの一人一人の動きの早さ。ボールはほとんど「どボックス」。ボールがほぼノンストップでグルンとコートを一周する。これだとどんなにDFが頑張っても必ずどこかにスペースが生まれる。ショートスティック陣はこのレベルを是非目指したい。

2Q JHU 5点目、またしてもRabil-PeyserのMFのトップから2 on 2での得点。クリースのATが動いて2枚目のスライドを行かせず、上でスペースを作ってロングシュート力のある2枚のMFが確実に仕留める。気持ちいい。つか、PeyserとRabilが一緒のstringにいたら、まあ、無敵だわな...この状態でほぼMLLで通用する。

2Q終了間際、残り1分でのJHU G、Schwartzmanのクリアパスが衝撃。スンッって感じで軽く投げ、オフェンスコートのゴール横にいるATにバシッとクリアパス。Gはこれが出来ると本当に強い。クリアの怖さが数段増す。セーブされた瞬間から文字通り相手ゴールを脅かせる。野球のキャッチャーの二盗阻止のイメージか。パシッ−シュパッ−ズビシッ!という流れるような一連の動作。Gの選手はしっかり下半身/体幹のウェイトトレーニングを積み重ねて是非とも身に付けたい。

前半を通し、12/16でJHUが完全にFOを支配。DukeのDinoもGreerもほとんどボールに触れていない。ゲームプランニングが大成功。戦術のマネジとしても非常に学びが多い。

後半

3Q JHU G Shwartzmanが好セーブを連発し、得点を許さない。Dが危険な位置、危険なシチュエーションでシュートをほとんど打たせてない。

が、そこから、沈黙していたDuke offenseが爆発。一気に試合の流れが変わる。

解説者のQuintがPaul Rabilについてコメントしていた。教室でも常に最前列に座って勉強する努力家。とにかく集中力と努力で突き抜けていると。この時点で3年生だが、今後MLL、USAを背負って立つ、恐らくラクロス史上最高の選手の一人になるだろうと言っている。(そして4年経った今、2010年現在、確実にそうなっている。)持って生まれた才能ではなく努力と集中力に言及している点が印象的。外からパッと見るとそのサイズと身体能力に目が行きがちだが、彼が本当に凄いのは、RabilをRabilたらしめているは(彼自身インタビューやCMで再三言及している通り)やはり努力と集中力と練習量。 Matt StriebelやBrendan Mundorfもそうだが、MLLに入っても大きく成長する選手、最高峰の中でも更にもう一歩抜きん出る選手、US代表に複数回入ってくるような選手たちはほぼ例外無くかなりイっちゃったレベルで練習の虫だという事実。

Duke 6点目、EMOでのCrottyの左手でのDをスクリーンにしてのシュートが気持ち良過ぎて吹いた。Leftyの選手は100回見て刷り込みたい。EMOで確実にこれを決められれば間違い無く得点量産出来る。

Duke 7点目、Rossの得点、substitutionで相手のDに一歩先行したのを見逃さず、単純にそのままゴールに向かう事で生まれた得点。新人戦で見るようなプレーだが、このレベルのこの舞台でも起こり得る。Oとしては常に狡猾に狙いたいし、一方でDとしては絶対にやりたくない失点。

Duke 8点目、MF #29 2年生のMike Catalino(現Maryland 4年ATのGrantの兄)の、ショート相手のインバートからのインサイドロールでの得点が非常に参考になる。直線に近い大きな切り返し角度で、流れるように素早くロール。十分にゴールの前まで行って角度を稼いだ上でシュート。MFの選手は何度も見て、スティック無し→ボール無し→D無し→Dありの順で練習して体の使い方を刷り込み、確実に自分のものにしちゃいたい。

JHU 11点目、Paul Rabilのトップからの1 on 1 to running shotが彼らしさの真骨頂。Quintも指摘しているが、精度重視でスピードを少し押さえ、必ずしも全身全霊でのシュートではない。一方で、スティックを完全に体の後ろに背負って隠した状態からスパッと一瞬で打っているため、ゴーリーにシュートの瞬間のスティックとボールが見えず、極めてセーブしにくくなっている。そしてこの肩の回転。左肘の引き、打つ瞬間の右足の向き(思いっきりゴールに向いている)。

最後の10分間は完全に気持ちの戦い、魂のこもった固いDのぶつかり合い。そして何よりも双方の4年生Gのグレートセーブが素晴らしい。ポジショニングや球筋の読み、フェイクへの対処、フットセーブ等、Gの選手が見て技術的に学べる点が特盛り。

残り5分で1点差を追うDuke、2 men upの好機にDanowskiがノーマークでシュート、これで同点!と思いきや、何と不運にもボールがパイプの真っ正面に当りそのまま逆コートまで転がりJHUボールに。この時ばかりは運に見放されたか。が、直後のbroken situationでQuinzaniがキャッチミスしたボールが奇跡的にゴールに!今度は運が味方に。

残り4分半で11-11の同点。会場の緊張感は最高潮に。

その後もbrokenな時間が続く。が、Rabilの素晴らしいアシストパスからHuntleyが落ち着いて勝ち越し点をねじ込み12-11。この人の大舞台でのこの勝負強さと落ち着きは本当に凄い。

残り2分半でのRossのノーマークのシュートが再び不運にもパイプの真芯に当り逆コートまで転がる。何か大きな力がDukeの勝利を邪魔しているかのような錯覚すら覚える。

残り1分44秒でDukeのEMO。ここでエースDinoがまさかのキャッチミスでボールはセンターラインにこぼれ、JHUボール!気合いのライドで取り返すも、クリアパスをミスし、Quinzaniも取り損ねる。最後の最後でお互いにメンタルが揺らいでいる。

最後の最後、残り30秒からボールを回して崩し、最後にRossがshorty相手に最後の望みを掛けた渾身のシュートを放つが、Shwartzmanが最高のfoot saveで弾き返す。その後もJHUがしのぎきり、12-11で試合終了。

Hopkinsが2005年以来2年ぶりの優勝。そしてDukeは2年前に続き、またしてもHopkinsに決勝で1点差で敗れ涙を飲んだ。喚起に沸くHopkins。インタビューに答えるCoach Pietraの声も感動に震えている。Dukeの選手たちは最後の最後であと一歩のところで勝利が手からこぼれ落ちた事実を受け入れられず、フィールドに泣き崩れる。 エースとしての責任、最後の最後で痛恨のミスをしてしまった悔しさから、Dinoはなかなか立ち上がれない。(この姿を見ると、2010年のCrottyやQuinzaniの優勝はredemptionとして本当に大きな意味を持つものだったことが分かる)

DinoとGreerを二人合わせてたったの1点に押さえた元All American DFで鬼軍曹のcoach Petroの下で鍛えられた、JHUの統制されたDF陣と守護神Shwartzmanがもぎ取った勝利だろう。

1年前のRape scandal(冤罪)からコーチの解任、学内でも、社会的にもメディアから白い目で見られ、仕打ちを受けて来たDuke。困難に立ち向かい、それを乗り越え、あと一歩のところまで迫った姿は本当に心を打った。(優勝は3年後の2010年までのお預け。)


その他

ちなみに、試合終了前残り1分で挿入されるTips講座はfast breakでのトップからゴール前へのパス-フィニッシュ。Dukeの準決勝Cornell戦、Fast breakのZack Greerのゴール前での、Dを文字通り背中でがっちりブロックしてのキャッチとシュート。え!?このスペースの狭さ、Dからのマークで点取れちゃうんだ!という驚き。必ずしも1対0を作らなくても全然点取れちゃうっていう。バスケのセンターによるポストプレーのポジション取りのイメージ(しかもGreerは決して大きい選手じゃない)。インドアラクロス仕込みの是非とも真似したい技術。

シーズンを通してのMVP、TewaaratonはDukeの#40 AT 4年生のDanowskiに。

今見てもNCAA lacrosse史に残る素晴らしい試合でした。DF出身じゃない僕は恐らくきちんと捉えきれてないが、双方エース級の選手たちの得点をかなり抑えることに成功している(特にDuke OFの前半、JHU OFの後半)。お互いしっかり対策を立てて互いのいいところを徹底的に封じにいってるはずで、恐らくDFとGの選手が見て唸る部分が多い試合のはず。

2 件のコメント:

  1. NCAAの頃のRabilの映像をみたいと思っていたので、梅ちゃんからすぐに映像もらいます!やっぱりこういう熱い試合みると、感動しますし、ラクロスのやる気出てきます。これからも熱い解説よろしくお願いします。

    24期 玄徳

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  2. 玄徳
    おう!楽しんでどんどん成長してくれ!さんきゅ!
    いたる

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