2011年1月21日金曜日

NLL観戦ガイド vol.01

前回の試合の見所紹介はこちら

今シーズンは東海岸のPhiladelphiaの近所に引っ越して来たので、2年前までのChicago、昨年までの西海岸Californiaと打って変わって多くのラクロスに生で触れる機会に恵まれる。スケジュール的に許される範囲でいくつか会場で試合を見に行こうと思っている。そのうちの一つがNLLの地元Philadelphia Wings。残念ながら今シーズンはプレシーズンランキングで最下位の評価を受けているが、Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D), Shawn Nadelen (D)といったフィールドのWorld Lacrosse Championshipで'10 US代表を勤めたメンバーを6人も擁しており、観戦するのは非常に楽しみ。

地元スポーツを放映するComcast Sports Networkでホームゲーム数試合を放映するらしいので、これまた出来るだけ観ようと思う。NCAA/MLLとはまた違う楽しさや学びが満載なので、興味がある方は是非チェックしてみて下さいな。(何がどう面白くて学びがあるのかは去年の決勝の紹介記事をご参照下さい。)

このブログでも再三述べているが、僕個人はNLLの方がフィールドよりもスピーディー且つエキサイティングで面白く、一般向けの売り込みに向いていると見ている(IMGによる売り込みにより、アメリカでもMLLより人気が出るなんてシナリオも十分あり得る)。リーグの歴史が長く、試合数も多くコンペティティブなため、シーズンを通してチームや選手個々人が見せるドラマもより味わい深い。また、ラクロスIQやstick skillを学ぶ場としても非常に優れいているともよく言われる。

(また、最近で言うと日本を代表するラクロス選手、丸山伸也選手が2007年末にCalgary Roughnecksの開幕前トライアウト&トレーニングに参加しており、彼自身のブログでもその様子が紹介されていた。(開幕ロースターの一歩手前で残念ながら外れてしまったが、大学から始めた小柄な選手で、しかも非アメリカ/カナダ出身者がそこまで残る時点で驚異的な話だ。)ちなみに当時は僕自身が不況の中アメリカでの就職に挑もうとしていた時期でもあり、その挑戦から多くの勇気を頂いた。)

しかしながら、現役の選手/OBの皆さんも、NCAAやMLLについては試合の映像も見てある程度知識がある方もいらっしゃると思うが、Box Lacrosse/NLLになると途端に良く解らない、という方も多いはず。という訳で今回はそもそも論として、NLLを観戦/視聴する上で最低限知っておく必要のある基本情報をいくつか紹介。一歩踏み入れてみると実は意外と簡単。食わず嫌いの典型。この辺の話を一回バチッと知ってしまうと何のことはない。後はビール飲みながら試合の映像とウェブサイト見てひたすら楽しむべし!

以下、WikipediaやらNLLのウェブサイトやらラクロスフォーラムやら、ざっくりgoogle searchしたベースで。超無理矢理シンプルに詰め込んだ紹介。

1. 歴史(リンク
  • '87年にEagle Pro Box Lacrosse League (EPBLL)として米東海岸の4チーム、年間6試合/チームからスタート
  • '88年にMajor Indoor Lacrosse League (MILL/ミル)と名前を変え、徐々に拡大
  • '97年に、単体企業としてのMILLが全チームを保有経営するというスタイルに限界を感じたメンバーによって、アメリカ型フランチャイズオーナーシップモデルを取るライバルリーグのNLL (National Lacrosse League)が設立される。直後にMILLチームがNLLに飲み込まれる形で合併
  • 2000年代を通して多くのチームの参加/離脱、フランチャイズの交代、地域移転を繰り返しながらも徐々に拡大。現在の10チーム、年間16試合/チームに落ち着く

2. 会場
  • アイスホッケーリンクのある会場やバスケのスタジアムでの試合(都市によるが、PhiladelphiaなどNHL/NBAのホームスタジアムを使っているところも)
  • 床は当然氷を張っていない状態で、プラスチックや木材を合わせて作られた合板のハードフロアの上に毛足の短い人工芝を貼っている。従って選手達が履く靴もバスケットシューズに近いイメージ
  • アイスホッケーと同様にコートの周りに透明の板が張り巡らされており、逸れたパスやシュートは跳ね返るため、基本的にアウトオブバウンズになることがほとんど無い。それがノンストップで試合が展開し続けるというNLL独特のハイペースを生んでいる
  • フィールドラクロスに比べると会場がコンパクトで、観客席からコートまでの距離が圧倒的に近く、それがインドア独特の熱狂的な雰囲気を生んでいる

3. コート(リンク
  • 約60m x 25m。バスケコートとフィールドラクロスのコートの丁度間くらい
  • 四隅の角がアイスホッケー同様丸くなっている
  • クリースのサイズは同じ。正し、裏のエンドライン側が少し削られている

4. 形式/基本ルール(リンク
  • 15分4Q。Sudden death over time。
  • ベンチ入り20人でGoalie 2人。フィールドに立つのは5人のフィールドプレーヤー(runner)+Goalie 1人の6人。フィールドプレーヤーは、Forward, Deffenderと一部のTransitionに役割が別れ、攻守の入れ替えで結構F/Dを入れ替えている
  • Shot clock 30秒。(なので、展開がフィールドラクロスよりも圧倒的に早い。バスケに近い)
  • 反則/ペナルティもほぼフィールドと同じ。但し、「Extra-man offence」とは呼ばず、アイスホッケーと同じく「Power play」と呼ぶ

5. Fighting
  • これがちょっと最初は解りにくいのだが、アイスホッケーと同じく、一試合に一回から数回、fighting、つまり殴り合いの喧嘩が起こる。一応、ルール上「ペナルティが与えられるが、認められている」ということになっている。フィールドの感覚だとかなり驚きがあるが、審判も傍観し、決着が着く/膠着するまで敢えて割って入らない。
  • ある意味文化/伝統として根付いており、選手の多くもそれをスポーツの一部として認めており、観客もそれを見て思いっきり盛り上がる。
  • チームによっては20人のメンバーのうち1-2人、「喧嘩要員」を入れているとも言われている
  • ただ、最近の流れとして、特にアメリカでの普及を考えた時に、大人の男性以外のファンに受け入れられにくいこと、NBA等での徹底したviolence排除の流れから、これがボトルネックになっているという見方もあり、結構議論の対象となっている。
  • (個人的には好きだが...)やはりアメリカの平均的な親の多くがkidsにこれを見せたいとは思わないだろう。既存のコアなファン層と彼らのニーズや伝統に安住して変化を拒むと、本来開拓するべき市場を逃し、顧客と共に高齢化/縮小して再起不能になるという相撲やプロレスの轍を踏む事になりかねない。残念ながら純粋なviolenceはスポーツの成長を阻むというのが今の世の中の流れな気がする。総合格闘技のUFCですら競技としてのルールを整備し、徹底して不要なバイオレンスを排除してから世の中に受け入れられた訳で(当初は噛み付き金的有りの文字通り「何でもあり」で全米のPTAから総スカンを喰らった)。
  • 若い有能な経営陣/マーケターだったら今のNHL Chicago Blackhawksが取った、クリーンで洗練されたcoolでオサレでカッコいいイメージで売る気がする。恐らく先日プロモーション契約を結んだIMGもそっちの路線で売ってくるんじゃないかと想像する。もちろん、選手やOB、今の既存顧客の抵抗があり、簡単な改革では無いと思う。で有るが故に外部のコンサルタントが変革者としての付加価値を付け易い状況ではある。ちなみにこの辺のスポーツ経営学に関して以前ちょこっと触れた関連記事

6. チーム(リンク
  • 全10チーム。Eastern/Western divisionの2つに別れる。カナダに3チーム、北米に7チーム。(Wikipediaのチームロケーションの地図
  • 以下、チームのホームシティーとチーム名。チーム名が攻撃的なものが多いのが印象的
  • Eastern Division
  • Boston Blazers (火炎) 2007年設立
  • Buffalo Bandits(山賊) 1991
  • Philadelphia Wings(翼) 1986
  • Rochester Knighthawks(鷹) 1995
  • Toronto Rock(岩) 1998
  • Western Division
  • Calgary Roughnecks(荒くれ者/猛者) 2001
  • Colorado Mammoth(マンモス) 2003
  • Edmonton Rush(突撃/襲撃) 2005
  • Minnesota Swarm(蜂の大群) 2004
  • Washington Stealth(隠密?ステルス戦闘機?) 2000
7. シーズン
  • レギュラーシーズンは1月から4月までの4ヶ月。毎週末ホーム&アウェーで試合
  • 5月の3週間で8チームでプレーオフ
  • 2010年はMLLと2週間ほどシーズンが重なってしまうため、兼業の選手で準決勝/決勝に出る選手はMLLの最初の1-2試合を逃すことになってしまった(Rabilなど)。

8. 選手
  • ほとんどがカナダ人のインドアラクロスメイン(フィールドはやってないかオマケ)。選手としてのサラリーの平均は100〜150万円前後(ってことは、貰ってる選手だと300とか500万とか?行っても1,000万は行かない気がする)。ほとんどの選手が別途フルタイムの仕事を持っている。一部のエリート選手はRBK等から個人のスポンサー契約が数百万、別途キャンプ等で稼いで数百万?恐らくラクロスのみで食べて行ける選手はほんの一握りだろう
  • むちゃくちゃバクっと言うと、9割がカナダ人。アメリカ人はフィールドでもトップクラスで、特にスティックスキルの高い選手のうち、一年中ラクロスをやりたいという選手がほとんど。チームとしてはPhiladelphia Wingsが最も多く(半分近く?)、Colorado, Washingtonに数人ずつ。他はほとんどいなくて、Canadaの3チームはほぼ全員カナダ人。
  • ただ、最近特にDやTransitionを中心に少しずつアメリカ人選手の数も増え、NCAA出身で体も大きく身体能力の高い傾向にあるアメリカ人選手の影響を受け、カナダ人選手も努力してフィジカルのレベルを上げて来ているという
  • 伝統的にCanadianは地元の高卒のやんちゃな悪ガキの成れの果てのブルーカラーのオッサンのイメージ?John GrantやGeoff Sniderを見ればよーく解るが、結構鼻っ柱が強い、喧嘩上等の「輩(やから)」といった感じ。対してアメリカ人はCanuckに比べるとどちらかと言うと高学歴でさわやかなスポーツエリートという感じだろうか。そういうカラーの違いがあって面白い。そうは言っても最近はNCAAを経由するCanuckが増えつつ有り、その辺の違いも若干薄れつつあるらしい
9. ギア&ユニフォーム
  • ギアはNLLと全面スポンサー契約を結んでいるRBK(アールビーケー)ことReebok。防具も靴もスティックも基本的にはRBKのもののみ使用が許されている(ちなみにRBKはAddidasの子会社。またWarrior & Brineは実はNew Balanceの傘下)
  • メットはCascade等フィールドの物と違い、visor(庇)が無く、よりタイトなデザイン。好みが別れるところ。個人的にはフィールドの方が戦隊っぽくてスピード感があって好き。フィールド程距離を取っての過激なヒットが無いから多少衝撃吸収力を犠牲にして身軽さと軽さを取ってるのかな?アイスホッケーに近いイメージ
  • ユニフォームは、これまたアイスホッケーに近いイメージ。アッパーは半袖ではなく七分袖のイメージ。パンツはちょっとタイト。(ちなみに90年代は何と下はタイツでやっていた...)これまたちとイマドキのアメリカのスポーツからすると、ダサイ感じがしなくもない...色遣いは何故か黒赤系が無茶苦茶多く(Boston, Philadelphia, Washington, Toronto, Calgary =10チーム中5チーム...)、全体的にどす黒い。あんましオレンジ基調とか、水色ベースとか、ビビッドな色が無い...これまたアメリカスポーツとちとカラーが異なって面白い
  • また、明確にフィールドと違うのがゴーリー。全身にパッドを着ける完全なアイスホッケースタイル


てな感じでしょうか。試合を見たりチーム/選手をフォローして行く上で知っておきたい基本情報としては。今後地元PhillyのWingsの試合を中心にレポートしていく予定。乞うご期待。

Highlight

いくつかカッコいいハイライトをピックアップ。ちと古いのと、選曲が好み別れるが、画質が他のNLL動画と比べるとましなのと、中身自体は秀逸。(Embedする時に画面サイズを縮小して画質が落ちちゃってるので、左上をクリックしてYoutubeを開いて見てもらった方がいいかもです。)


いたる@13期

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