2011年1月17日月曜日

NLL 2011 Game Review vol.01 Philadelphia Wings-Boston Blazers

Box LacrosseのNLL、僕の地元Phillyを拠点とするWingsの開幕戦。レギュラーシーズン16試合の初戦。地元テレビ局、Comcast Sports Networkで放映があった。
以前からくどい程書いているが、現役の選手の皆さんには騙されたと思って是非一度NLLの試合見て頂きたいと心底思う。一部の技術要素を切り取って見れば、フィールドの試合よりも遥かに学ぶ事が多い。特に、NCAA出身のNLL選手がよく口にする、「数手先を読む力」が圧倒的に大事である事がわかる。ボールを貰ってから判断していたのでは遅い。ラクロス頭がフィールドの3倍速くらいで動いているイメージ。基本延髄反射で動く感じ。クリース前でのスペースの感覚、相手の裏を掻く駆け引き、シュートのモーションの速さ/フェイク(動きと目線)/正確さ等、要素によってはフィールドの数段上の戦いが演じられている。特に2 on 2のpick and move/roll、off ballでの動きはバスケを見ているかのような錯覚に陥るほど繊細。フィールドラクロスで活かせれば相当なedgeになるはず。

また、DFも、角度/間合い/ゴールとの距離のマネジ、short stickによるチェックやホールド等、もう一段正確且つアグレッシブで多彩。特にピックへの読みや対応の速さ、敢えてリスクを取ってダブルに行き潰しに行くなど、より細やかで正確な状況判断とコミュニケーションをしているように見える。DFの選手が見ても学べる点は多いはず。

MLLでIndoor-Field HybridのToronto Nationalsが2連覇したこと、NCAAでCanadian finisherたちが大活躍出来るのも頷ける。

背景

設立3年目のBoston Blazersは大型補強により今期3人のスーパースターを揃え、NBAのMiami Heat (LeBron+Wade+Bosh)のNLL版とも言われる。昨年MVPのCasey Powellを筆頭に、MVP投票2位、3位のDan Dawson, Josh Sandersonという、2010年のNLLベストプレーヤー上から3人を攻撃陣にラインナップ。それがどう絡み合い、有機的に機能するかが注目される。

対する地元PhillyはNLL最古のチーム。エースで現1シーズン最多得点記録保持者のAthan Iannucciが2年ぶりに怪我から復帰。伝統的に最も多くのアメリカ人を抱えるチーム。Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D), Shawn Nadelen (D)ら、6人もの2010 WLCのUS代表メンバーを抱え、Dan Hardy (A), John Christmas (M)らMLLの主力級選手が脇を固める。ほぼNLLにいるNCAA/MLL選手のAmerican All Starと言ってもいいメンツ。が、ここはフィールドではなく、ボックス。カナダ人の牙城。彼らもあくまで「いい選手」に過ぎない。Pre-season rankingでも悲しいかな最下位の評価...アメリカ人主体、強いカナダ人抜きでどこまでやれるのかが注目されている。

結果

結果は10-6でボストンが手堅く勝利。見終わって、Bostonは期待以上にBig 3が大きなインパクトを生んでいると感じた。しかも、まだ1試合目で慣れておらず、互いの連携が完全に機能しているようには見えなかったにも関わらず。あくまで個人技中心での勝利。ということは今後シーズンを重ねるに連れどんどんコンビネーションが生まれて行き、更に強くなっていくということ。Washingtonなど他の強豪の仕上がり具合にもよるが、間違い無く今シーズンは上位に食い込んでくるような気がする。

試合全体を通しての見所

●勝敗を分けた要素。①turn overの数と、②shot selection。Bostonはstick skillがsolidでミスがほとんど無い。一方のPhillyは残念ながらかなりturn overが目立った。また、如実に違いが感じられたのがshotの選択。Bostonはpatientに無理なシュートを打たずに、確実に確率の高いシュートを作れている。Phillyは攻めあぐねて外からの強引なシュートが多い。本来ポイントガードをするべきIannucciが2年のブランクでいまいち機能出来ていない。またRyan BoyleやMundorfもフィールドの試合と違い、Canadianのベテランに比べるとちょっと試合巧者さに欠けて見える。全体的にまだチームとしてcohesion(有機的に連携)出来ていないように感じられる。今後修正を強いられそうだ。

●Boston Big 3一人一人のスタイルの違い。これが非常にクリアに見て取れて面白い。Box LacrosseのForward(オフェンス選手)の大きな3つの典型的なパターンを表している。170cmと小柄だが、器用ですばしっこく、特にクリース周りでのスティックスキルと狡猾さ、出だしの一歩の早さが際立つJosh Sanderson。188cmで重く、がっちり体を預けて相手を押し込み、ズドンとシュート/フィードを出してくるタイプのDan Dawson。そして、オールラウンドに何でも出来、司令塔としての機能をこなしつつもミッドレンジからの恐ろしく正確なシュートで得点を重ねる唯一のアメリカ人Casey Powell。


個別のプレー/選手の注目ポイント

●Philly McGlone #33の4点目のダイブショットが正にNLLの醍醐味。正面からダイブし、長い滞空時間を利用し、空中で右手から左手に持ち替えつつ、完全にゴールの裏に回った後にダブルクラッチ気味にねじ込む。これは一般のお客さん向けにハイライトで見せられるコンテンツ

●PhillyのTurner による5点目、Power play (EMO)でのQuick shotのスティックの使い方。超Box Lacrosseならでは。ポケットではなく、シュートストリングで平になっている「土手」の部分で直接ボールをパチッと跳ね返す使い方。ボールそのものは速くないが、球離れとしては最も早い。スティックのフェイスの感覚を研ぎ澄まし、下のポケットの部分で受けるのか、上部の土手で受けるのかを繊細に使い分ける感覚。(グローブの綿を抜き、真芯で受けて「バチッ!」と音が鳴るように捕球する事を徹底させた元巨人桑田真澄投手の父親の指導の話を思い出した)

●Casey Powellの間合いとタイミングと視線。彼に関する説明は不要だろう。Powell三兄弟の長男。90年代後半から2000年代前半は彼の時代だったとも言える。95-97年に栄光の22番を背負いSyracuseを優勝に導き、4年連続All Americanに選ばれる。MLL、US代表でも主力として活躍し、ATの新しい時代を築いたスーパースター。

NLLでも、 (途中何年か間が抜けながら)8シーズン目の34歳にして今尚Indoor Lacrosseの技術に於いて成長を続けるモンスター。遂に去年はアメリカ人としては初のMVPを受賞するに至った。今回初めてNLLでプレーする彼の姿を見てその理由がよーーーく解った気がした。身体能力が突出している訳でもないし、スティックスキルがカナダ人以上に突出している訳でもない。ただ、間合いやタイミングをよーく見て、理解し、上手くレバレッジしている。視線のずらしや騙しなどの駆け引きも。恐ろしくlacrosse IQが高いのが非常に良く解る。難しいことをやっていないのに「ひょろっと」または「にゅるっと」簡単に点を取ってしまう。ある意味魔法の様なプレースタイル。「何で!?」とか「これで点取れるんかい!?」と思わされることがしょっちゅう。AT/OF MFの選手が見て学べる点が非常に多い。

インタビューでの、「なぜあなたは長年経って尚Indoorでsurviveしているのみならず、更に成長し続けられるんですか?」という質問に対し、「ま、結局はラクロスが好きで、プレーを楽しんでやってることだと思う」とあっけらかんと答える言葉が印象的だった。RyanやMikeyといった兄弟達と裏庭でじゃれあって遊ぶように、あくまで遊び/駆け引きとして楽しんでいるからこそこういう境地に到達するんだろう。

●そしてオマケでもう一人。MLL Toronto Nationalsのぶっ飛びゴーリー、毎試合に一回はゴールを飛び出して相手ゴールまで猛突進してシュートを打ち観客を盛り上げ、All StarのFreestyle Shooting Contestでは毎年Creativeな動きでKidsに大人気の、IL 2008 Personality of the Year (キャラ大賞)のBrett Queener。ラクロス大好きな彼はIndoorではゴーリーを出来ないため(ゴールが小さく技術が異なる)、ななな何とフィールドプレーヤーとしてショートスティックを持ってBostonのロースターに入っている。果敢にボディチェックをかまし、乱闘寸前まで盛り上げる。どんだけ多彩なんだろうかこの人は...

MLLで突っ走るQueener。つか、脚めっさ速いのと、stick skillが突き抜けてる。ここまで来るともはや笑うしかねえ。

2009 Freestyle Contestで大ウケして優勝したQueener

試合のハイライト

来週はスタジアムのWells Fargo Centerで観戦予定。相手はBuffalo Bandits。今から楽しみだ。

いたる@13期

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