2010年8月9日月曜日

Team USA post game interview: Matt Striebel (MF), Max Seibald (MF), Mike Pressler (HC)

まだまだWLC関連記事。これがラストかな?

既に大会が終わって2週間が経ちますが、最後の最後まで味わい尽くす/しゃぶり尽くすべく...Inside Lacrosse Podcastで決勝戦終了直後のUSA 2選手( Matt Striebel (MF), Max Seibald (MF))とHead coachのPresslerへのインタビューがあったので紹介。(リンク

マンチェスターに遠征していた皆にとっては生で見たあの決勝の裏舞台を知って二度おいしく召し上がって頂き、そうじゃないメンバーはDVDを見る上での予習用&感情移入用に。

3人とも優勝直後で感極まっていた部分もあってか、かなりがっつり本音や裏事情を話してくれている。Lacrosse関連のインタビューでここまで裏事情を明かし、感情や想いの部分をかいま見る事が出来るものはあまり見た事が無い。いろんな苦労やドラマがあったことを改めて思い知らされる。聴いていて思わず感情移入して涙腺が緩んでしまった。また、前回優勝を逃したことを受け、アメリカのラクロスが大きくアプローチを変えたことなど、裏事情が紹介されており非常に面白かった。選手としても、コーチとしても、General Managerとしても学べる事の多い内容だと感じた。(もっと言うとラクロスを越えたあらゆる分野や、人生そのもの、というより広い意味でも。)

インタビューは3人別々に行われているが、3人まとめて僕個人が印象に残っていること、感じた事を箇条書きでまとめると、以下。

1. WLCの重要さ、国を代表して戦うことの重要さ

3人とも口を揃えて、World Championshipの重要さ、国を代表し、星条旗を背負って戦う事の誇りと重さを語っていた。高校、大学、プロと全てのレベルで優勝を経験して来たラクロスエリートのStriebelでさえ、このWorld Championshipは特別な意味を持つ、最も重要な試合だと。

そして今回初めてWLCを経験したSeibaldも、試合をしている最中の雰囲気から、NCAAやMLLとは違う特別なものを感じたという。「決勝の前にチーム皆で集まり、一人一人が立ち上がって試合に懸ける想いを皆の前で話した。皆の想いが伝わり、感極まって涙を流すメンバーもいたし、自分自身も話す際に、感情が込み上げて来て言葉に詰まってしまった。これはNCAAの決勝でもMLLの決勝でも経験した事の無いこと」。

2. 今回の大会でCanadaに勝ち、優勝を取り返すことの重要さ

Striebelのコメントが非常に印象的だった。「前回のWLCの決勝でCanadaに負けた後、自分は悔しさの余り貰った銀メダルをそのまま宿舎に置き去りにし、持ち帰らなかった。USのロゴの付いたユニフォームやギアもすぐに友人やファンに上げてしまい、2006年のWLC関連の物は身の回りに一切残さなかった。それだけ悔しかったし、優勝を逃したという事実を受け入れられなかった。しかもその負けは、Canadaが奇策でスルッとまぐれ勝ちしたなどではなく、真っ向勝負でやってボコボコにやられたもの。フィールドラクロスの本家本元であるアメリカにとって、World Championshipは絶対に優勝しなくてはいけないもの。」

3. 如何に批判に晒されて来たか、如何にプレッシャーが大きかったか

Pressler曰く、開始当初からいろんな批判に晒されて来た。メンバー選びや戦術、練習試合でDukeやNCAA選抜に負けた時。今回の大会は正に優勝を取り戻す事が至上命題だったし、もしそれが出来なければ自分たちは否応無しに『史上最悪のUS代表』のレッテルを貼られることになっていた。決勝はESPNでアメリカ本土で全国放送され、多くのファンの注目にさらされていた。もちろん試合中はいちいちそれを口に出す事は無いが、プレッシャーにならなかったと言えば嘘になる。最後の最後は本当に紙一重。今勝者としてインタビューに答えられて本当に良かった。

4. 前回大会から大きくやり方を変えた

Striebel: 「06年に優勝を逃したことは、USラクロスの歴史の中で、後から振り返ると本当に貴重な経験だった。そこから全てを見直し、深く自省し、ベストなやり方は何かを考え、仕組みそのものを大きく変えるいい機会になった。そういう意味で、06年と10年のWLCはTeam USAにとって双子というか、陰と陽の対を成すセットの関係。

前々回(02年)の大会はMLL立ち上げ直後という特殊な状況で大学生/卒業直後の若手中心のチーム。CanadaやAustraliaから「今回のUSは弱いからカモれる」と言われ、見返してやろうと挑戦者としてがむしゃらにプレーし、結果として優勝する事が出来た。

一方、前回(06年)のチームのメンバーは、紙の上では、名前の凄さで言えば、恐らく史上最高。Powell三兄弟に、Kyle Harrison、誰がどう見ても、世界最高のラクロス選手を上から順に集めた文句の付けようの無い豪華メンバー。ところが、結局、最後の最後までチームとして”Gelしなかった(まとまって、有機的に機能しなかった)”。ただ単に有名な選手/強い個を集めればいいって訳じゃないと言う事が身に染みて理解出来た。」

Pressler: 「それを踏まえて、全てをゼロから設計し直した。選手の選考基準、選考プロセス、大会までの準備の仕方、戦術にいたるまで。とにかくチームメンバーとして、 我を捨て、プライベートやプライドを捨て、 USの優勝のために全てを捧げる事が出来るか。がむしゃらに頑張れるか、を基準に厳しい選考を行った。時間を掛け、トライアウトを行い、実際に努力してそれを証明した者だけを取った。

一部の関係者から『何であの有名選手が入ってないんだ?』、『なんでこんな脇役選手入れるの?』と批判されたが、それには耳を貸さなかった。(前回メンバーでスーパースターの)Ryan Powellが自分も代表に加えて欲しい、Canadaに雪辱を果たしたい、と言って来た時、『お前は本当に自分のエゴやプライベートを捨ててやれるのか?』と確認し、彼もそれに同意した」

Striebel: 「今回の選考は、精神的にも肉体的にも本当に追い込まれ、苦しい経験だった」、「今回のアプローチを試し、実際に成功したことはアメリカのラクロスにとって大きな成功体験。今後の代表チームにとっても貴重な財産を残すことができた」

5. 試合のレベルの高さ

Striebel: 「今回のWLCの試合は、過去の歴史上最もレベルの高いものだった。最も熾烈な戦いだった。 ルールがNCAAともMLLとも違い、スローな展開だったが、それでも尚、 Post Collegiate Lacrosseとしては間違いなく世界最高峰のものだった。」

6. 試合中は一つの試合として淡々とただひたすらやるべきことをやった

Pressler: 「試合が終わって初めて、この試合の重さと意味を感じ始めているが、試合中はそんな事は考えなかった。DukeやBryant大学で大きな試合を戦うのと同じ。コーチとして、その時その時に最適な選手をフィールドに送り、最適な戦術/プレーを選択させること。ただそれだけに集中して、あくまで一つの試合として淡々と戦った。」

7. 今回のTeam USの戦い方/スタイル:「軍隊式」

Pressler: 軍隊式で、あたかも大学ラクロスのように強い規律を持って戦った。コーチの自分がこれをやれと言えば問答無用でそれをやり、あれをやれと言えばそれをやる。その点、自由度が高くその場の選手の主体性に任せていた過去のUS代表とは明確に違う。それに従えないメンバーは選ばなかった。一人一人がrole playerとしてやるべきことを自覚と責任を持って、エゴを捨てて遂行してくれた。

Seibald: 今回の優勝は正に24人(控えのKevin Leveilleもメンバーの一人)の選手全員で勝ち取ったもの。そして24人全員が、 シュートを打てと言われれば打つし、キープしろと言われればキープする、 例え誰が何をやることになったとしても、一メンバーとして全く同じ事を遂行する積もりでやっていた。

8. 試合を決めた要因としての、Docの凄さ

「試合を決めたプレーは?」の質問に対し、3人が3人ともDoc (Brian Dougherty)のセーブを挙げていた。大事な場面で驚異的なセーブを連発し、チームを救ってくれたと。

印象的だったのはStriebelのコメント。「自分はDocとはPhiladelphia Barrage時代に何年も一緒にプレーした。自分は自分自身のことを相当Competitiveな(競争心の強い/負けず嫌いな)人間だと思うが、Docは更にその上を行っている。彼ほどCompetitiveな人間は見た事がない。彼と共にプレーする事で自分は選手として大きく影響を受けた」

9. 気持ちの大事さ

Striebel: WLCは、世界最高レベルのフィジカルと技術のぶつかり合い。最後に勝負を分けるのは結局気持ち。02年の若手主体のチームが優勝出来たのも、「嘗められてたまるか、見返してやる」という”Chip on your shoulder”で戦ったこと。前回負けて、今回必ず復讐してやるという気持ちが最大の勝因

10. 二試合続けて勝つ事の難しさ

Striebel: 予選のCanada戦で負けた直後の感想は「よし、これで次回までにやるべきことが全部見えたな」だった。負ける事で、慢心は一切生じず、尚の事勝ちたい気持ちが強くなった。実力が拮抗した戦いに於いて、2回続けて同じ相手に勝つのは難しい。

11. Canadian lacrosse

Striebel: 試合を見た人は解る通り、決勝は世界最高峰の戦いでありながら、Canadian LacrosseとAmerican Lacrosseという二つの全く違うスタイルによる一騎打ち。もちろんEnglandやAustraliaはいいチームだが、LacrosseのWorld Championshipは10カ国以上が実際に優勝の可能性を持ち高いレベルで鎬を削るSoccer等とは違い、いいか悪いかはさておき結局最後はUS対Canada。Canadaは本当にいい、手強いチームだった。決勝もどっちが勝ってもおかしくない試合。今後もこの戦いは続くことになる。NCAAではここ1-2年何度も「Canadian-Field hybrid lacrosse」という言葉を聴いた。Princetonで顕著なように、Canadianの選手たちがNCAAのフィールドに多数雪崩れ込んで来ている。何でそれだけ増えているかと言うと、当然それが機能しているから/効果的だから。この流れは今後も続き、強くなって行くだろう。

12. 個々人の秘めた想い

Seibald: 自分はこれまでのラクロス人生で、(彼ほどの傑出したプレーヤーで各年代のMVPを総嘗めにしてきたにも関わらず)実は一度もチームとしての優勝を経験していない。高校時代も決勝で負け、大学もCornellで決勝のSyracuse戦は最後の最後にOver timeに逆転で負け、Denver Outlawsで戦った昨年のMLL決勝もToronto Nationalsに負けて優勝を逃した。そんな自分に取って初めての優勝経験。前日にトレーナーにその事を話したが「まあ、いつも通りやりなよ。あくまで一つのラクロスの試合。普通に試合に出ていつもと同じお前のプレーをすればいいんだよ」と言われ、気持ちが落ち着いた。今改めて「世界大会覇者」の言葉を聴き、首に金メダルを掛け、これまでの一年を思い出して鳥肌が立った。

Pressler: 06年のアメリカのラクロス界はどん底だった。そして自分の人生もどん底だった。DukeのRape scandal(冤罪)でHCの職を失い、メディアに悪人呼ばわりされた。そこから長い苦しみを経て、一歩ずつ、Bryantのコーチに就き、USのコーチになり、仕事を取り戻し、プライドを取り戻し、そして再びNational spot lightの下に戻ってくる事が出来た。

いたる@13期

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