2010年8月1日日曜日

Under Armour High School All America 2010 Review (1)

さて、今回はESPN Uで先日放送されていた、高校オールスター、Under Armour All AmericaのDVD。これまでHigh Schoolの話はあまり触れてこなかったが、今後も機会があれば少しずつ紹介出来ればなと思ってます。

Under Armour All Americaとは

今年で第5回を迎えるUnder Armour High School All America Lacrosse(公式HP)。 その年に卒業したばかりで、秋に各強豪校に入学する、全米+カナダから選抜された44人の高校3年生が集まり、北軍と南軍に分かれて戦うオールスターゲーム。

バスケのMcDonald All Americaが先駆け。バスケの方は既に完全にNBAへの登竜門としてのポジションを確立し、そこに選ばれることが高校生を始めとしたジュニア選手たちの大きなステイタス/目標となっている。

それと同じコンセプトでUnder Armourをスポンサーとして始まったイベント。第一回から大成功で回を重ねるごとに注目度を増している。次の年以降の大学のスター選手を知る場でもあり、各大学のコーチやファンも注目している。実際に今年上位校で活躍した1年生のほとんどが、そして今年のMLLドラフト上位指名された4年生のほとんどがUAAA出身。今年のFinal Fourに出場した4チームのうち、実に27人がUAAA出身者。それだけに選手たちは自分をアピールしようと必死。

東大の現役選手の皆に取っては、(寄せ集めチームによるshow case eventという性質上)チーム戦術を学ぶ教材としては機能しないが、高い個人技術を学び、自分よりも若くて巧い選手を見て刺激を受ける/「クッソ4年間の間に絶対こいつら超えてやる!」とやる気の炎を燃やすニトロに使うという意味では役に立つかも。(まあ、後はただのLacrosse/NCAAファンとして楽しみつつ、後々の有名選手を理解するために?)

全体を見ての感想

試合を見終わって受けた印象をいくつか。全部で5点。

1. 大学入学前の時点で既にかなり巧い

当然の事ながら、全北米から集められたその学年の上澄み。はっきり言って、上手い。高校生としては信じられないくらい、上手い。感覚で言うと、Div 1のトップクラスで活躍してる選手とさほど大きく変わらないようにも見える。Div 1の中〜下位校の主力選手、上位校の脇役選手よりは間違いなく上という感じ。もちろん体も出来てないし、粗さも目立つ。変なミスもちょくちょくある。ちょっと強引過ぎたり、プレーの選択が未熟だったりもする。ただ、全体を通してのstick skill、そしてLacrosseの理解/経験という意味では非常にレベルが高いと感じる。やはりガキの頃からこのスポーツに触れてきた経験の差、周囲を取り巻くラクロス文化/コミュニティの深さを感じさせる。強豪校に入り、一流のコーチの下バチッと規律と戦術を教えられる事で、一気にNCAAトップレベルの選手になるのも頷ける。それだけ、素材としての土台がしっかりしている。

2. 勝ちパターン/得意技を明確に持ち、使ってくる

全体的に基本がしっかりしているのはもちろん。ただ、見ていると、「Xからの1 on 1では絶対に点を取る」「速攻でのロングシュートは超鉄板」「ground ballからのクリアでは絶対シュートまでfront courtでOFに絡む(long stick)」など、長年の経験から自然淘汰されて残ってきた、「誰にも負けない自分の得意技」「必殺技」「鉄板ギャグ」みたいなものを持っている。そしてそれらの効果的な使いどころをよーく解った上で、実際にそれを使ってくる。これもまた質の高い、competitiveなラクロスを若い頃からやってきたが故のナチュラルな知恵/野生の強さの一つだろう。

3. Gameとしてのラクロスをよく理解してるな

試合終盤のゲームのペースや流れのコントロール、行くべきところと待つべきところの明確で戦略的な使い分け、点差に応じたペース配分など、寄せ集め即席チームであるにも関わらず、チームとして試合巧者である点が非常に際立つ。これもまたやはりガキの頃から接戦を繰り返し、またNCAAやMLLを見る中で当然の事/共通言語として身に付けて来たリテラシーなんだろう。(恐らく他のスポーツを見たりやったりする中でも磨かれて来たものだろうから、一概にラクロスリテラシーが高いというよりも、アメリカ/カナダのスポーツリテラシーが高い、という要素の方がむしろ大きいのかもしれない。そういう意味では日本でガキの頃からサッカーやミニバスのエリートでやって来た子達も似た感覚を持っているはず)

4.「今時」のプレーをするなー

単に上手い、という部分を超えた、プレーの”style(流儀や見た目)”の部分の話。ボールの投げ方やクレイドルの動き一つ取っても感じられる。Swim dodgeやwing dodge, step backしながらのフィード、XでのFinalizerやジグザグの動き。90年代には余り見られなかった、新世代のoff-set & curving head eraの独特の動き方を皆当然のようにやっている。MLLだとまだclassicなプレーの選手がいる中で、彼らは完全にガキの頃から新しいstick technologyとそれに基づいたプレーを見て育って来た選手。今のNCAAでも既にそうだが、それを前提とした新しいゲームに徐々にシフトしていくのを感じる。

5. 鮮明な地域性

サッカーのworld cupでよく見られる国ごとの文化を表したプレースタイルの違い。それに近い、エリア別のlacrosseのスタイルの違いが如実に感じられる。CanadianやIroquoisの選手を多く含むNorthのATのスティックスキル。Behind the back, no lookが極めてナチュラルにバンバン飛び出す。シュートはice hockeyとoverlapするリストを使ったunderhand shotが多い。

対してSouthは伝統的なデカいathleteが目立つ。手堅い保守的なD、機動力のあるrunning back系MF。クリア力。キャノンショット。オーバーハンドでの愚直なバウンドショット(でも効果的)。

大学では各エリアの選手が各大学にドラゴンボールの様にバラバラに散っていくため、この色は相対的に薄れてしまう。(もちろんSyracuseの北とJHUの南などのある程度伝統的な色はあるが、そうは言ってもどのチームも最低限の持ち駒のポートフォリオを揃えてくるので。特にここ数年competitiveさが増す中で、その手の色は更に薄れつつある。)

一方で、高校までは完全に地元のlacrosseのカラーでやってくることに。従ってlacrosseが本来持つこの手の地域性/コミュニティ性が如実に感じられて非常に面白い。

Roster

Rosterはこちら

大学別の人数

大学別にUAAAの選手を何人取っているのかというのが毎年話題になる。その学校の数年後の強さに直結するため。もちろん無名の選手が大学入学後大化けしたり、逆に鳴り物入りで入学したsensational rookieが怪我やチーム戦術とのフィット等の理由でパッとしないまま噂先攻で終わってしまうケースもあるため一概には言えない。

が、一方で、大学から始める日本と違い、既に5年10年のキャリアを積み、過酷なcompetitionを経る中で多くのメディアや指導者の眼に晒される、実力とポテンシャルを十分に証明した上での人買い市場。基本的には大学で行われるのは最後の上乗せとアジャストの部分。原石を買って磨くと言うよりは、完成品を買って来てシステムに当てはめる作業という意味合いの方が強い。従ってやはり高校での有力選手をどれだけ取れたのかは極めて重要な指標。

(であるが故に、NCAAのHCとしての能力の中でリクルーティング力が大きな比重を占める事になる。また、それを考えると、UAAAをほとんど取れていないにも関わらず毎年結果を出していたTambroniのCornellが如何に凄かったが解る。彼の場合は実際の実力に比べて評判が落ちる選手、ポテンシャルの高い選手、努力する能力と賢さを持った選手を集め、入学後の指導と競争で強豪に仕立て上げるアプローチ。個人的には大好きだし、全面的に応援したい。その雑草魂/underdog spirit。)

試合でも紹介されるが、今年はNorth Carolinaが7人でトップ。続いてMarylandの6、JHU 4, Syracuse 4, Duke, Harvard, Princeton, Virginia, Ohio state 3, Notre Dame 2。やはり強豪校と学問名門校が多い。North Carolinaが新HC Joe Breschiの下、リクルーティングでも力を発揮しつつあるのが解る。恐らく彼には今の若い選手を惹き付ける何か、恐らくカリスマのような物があるんだろう。就任3年目で着実に土台となる選手層を積み重ね、長期的な強豪校への地盤を確実に固めつつある。

次回以降、試合での見所を紹介。

いたる@13期

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