2010年8月23日月曜日

MLL 2010 Game Review vol. 05 Final Chesapeake-Long Island

さて、2010年のラクロスシーズンの集大成。今日行われた決勝、10年間リーグを引っぱり、終世のライバルであり続ける2チーム、Chesapeake Bayhawks vs Long Island Lizards。NY州Long Islandの北のラクロス対Marylandの南のラクロスという、ラクロスでもよく引き合いに出される対照的スタイルによる激突。(先日誰かが[Dinoだったかな?]インタビューでロン毛のジーパンのちょっと繊細で尖った都会っ子 対 短パン+ビーサン+ショートカットの無神経なスポーツ馬鹿、というファッションやキャラの対比を面白おかしく語っていた。ちなみに彼自身は生粋のLong Islandっ子)

以下、試合の見所を紹介。

前半

LI 2点目、Duke/Team CanadaのZack Greerのゴール前で貰っての電光石火のクイックミドルショットで得点。この人の2ポイントエリア内のシュート成功率は半端無い。外す絵が全く浮かばない。フリーで持たれたらほぼ終わり。ミドルシュートでクイックながら、置きに行く事無く、遠慮する事無く必ずかなり速い弾道で恐ろしく正確に空いたスポットに突き刺して来る。小さなゴールと大きいゴーリー相手に針の穴に糸を通すようなaccuracyが求められるCanadian indoor lacrosseの真骨頂。

Chesapeake 1点目、Huntの得点。左手でパスをはたいた直後に右に持ち替え、リターンパスをバックハンドでキャッチしながらすぐに左足のキックで切り返して右に鋭く方向転換、Dをかわしつつ表に角度を作りつつゴールに向かう動き。

LI 3点目、Peyserのrunning shot、classicで基本だが、上手い。LSMが本来ATだがOF MFで出ているBurgerに着く事で生まれるショートスティックD相手のミスマッチを確実に突いてくる。背中に背負ったスティックからオーバーハンドでのシュートでGoalieからリリースが見えずセーブしにくい。

CSPは、先日MarylandのHCをクビになったDave Cottleが”Consultant”なる肩書きでチームに帯同している。試合中もベンチの裏からかなり戦略的な指示を出している。シーズン途中でHCを解任したCSPにとって彼の存在は大きいはず。

しかしまあ改めて、クリアクロック、ショットクロックのあるMLLのスピード感はNCAAに比べて一段、WLCに比べて二段階ほど早い。かなり急いでクリアするし、休む間も無くガンガンゴールに向かって行くし、リスクを取ってシュートを打つ。結果としてめまぐるしくポゼッションが入れ替わりトランジッションが発生するため、見ていて飽きない。個人的にはこっちのルールの方がラクロス普及、経験者以外のAudienceの取り込みという意味に於いては向いている気がする。やはりラクロスのスポーツとしての構造的欠陥は、フライを待って攻めるまでに生じる無の時間、待ち時間なので。このスポーツをエンターテインメントの商品/コンテンツとして見た時に、ここはユーザーフレンドリーではないので。

2Q残り8分、パイプに当り得点にはならなかったが、クリースでのLI Zack Greerのシュート、リバウンド、behind the backが有り得ない動き。

創設者Jake Steinfeldの話とここ10年でのUSラクロスの進化

2Qの途中で挿入される、MLL創設者Jake Steinfieldの話が胸を打つ。ラクロスへの愛、起業家精神。10年でアメリカでどれだけ爆発的にラクロスが育ったか。MLLが子供達に夢と目標を与え続けてる話。「SyracuseやHopkinsでNCAA制覇すること」が多くの選手の夢だった時代から、「MLLの舞台に立ち、Steinfeld cupを掲げる事」が子供達の夢になりつつある。「上がり」「ラクロスキャリアの実質的終着駅」がNCAAではなく、そこから先のMLLになり、NCAAの選手たちがMLLでやることを目標にさらにhumbleに精進を続けるという絵が生まれつつある。

MLLが産声を上げた10年前1,000チームだった高校の男子ラクロスチーム数は、MLLの進化と歩調を合わせる形で10年間で3倍の3,300チームに。信じられない爆発だ。500年の歴史を持つアメリカのラクロスが、たったの25年前に始まった日本のラクロスよりも遥かに速い速度で大きくなっているという衝撃の事実。その大きな大きなプールの中から選りすぐられた上澄みのエリートがNCAA Div 1に進み、さらにその中のたった一握りだけがMLLという夢の舞台でプレーする事が許される。そしてその中のさらにトップ20人がUS代表のユニフォームを着る。それだけの競争を勝ち抜いて来た、精子の様な確率でサバイブしてきた選手たち。そりゃ上手いわな...

再び試合に戻って...

Chesapeake #51 MF、JHUから加入したルーキーMike KimmelがDFにトランジッションにと大活躍している。特にShort stick DFは角度のマネジの仕方をよーく解った素晴らしい教科書。

Chesapeake 4点目、PoillonのBehind the backでの得点を生むまでのOF 6人の動きが非常に参考になる。1 on 1からボールをシェアしてスペースを作り、そこでサクッと得点。Poillonは本当に今シーズンのたったの数ヶ月で2年目にして全くの無名選手からリーグ屈指の大スターになってしまった。

LI GoalieでPenn State出身のDrew Adamsが試合を通じて素晴らしいセーブを見せ続ける。特にロングシュートへの反応は秀逸。

LIのクリース前のオフボール状態でのプレッシャーが凄い。クリース前をタイトにパックし、フィードが出てなくてもガンガン相手のスティックをチェックしており、クリースの選手は相当やりにくそう。

後半

試合を通してFace offでのTeam USAのFace offer、ChesapeakeのAlex Smithの強さが光る。後半の初っ端。彼の必殺技"Pinch and pop"でパチッとボールを前に飛ばしそれを直接拾ってノーマークでゴール。

LI 5点目、EMOにてDuke '08デュオのDino-Greerのホットラインがまたしても炸裂。Dinoのトップからの愛の無い鬼パスを涼しげにキャッチしてサクッと決めるGreer。この人に取れない球はあるのか?QuintもそれがDinoにアグレッシブにリスクを取ってパスを出す余裕を与えていると指摘。

3Q残り9分、LI DF Spallinaがボールデッドの状態でのヒットでファウル。ガラが悪い事で有名なLI DF陣はマジでビジュアルからして怖い...トラッシュトーク(試合中の挑発トーク)も半端なさそう。FxxxやらShxxやらの言葉が乱れ飛んでるのが想像付く。

Chesapeake 6点目、EMOでの裏の2枚からのプレッシャー、クリースでのVirginia CaptainでルーキーのCarrollへのフィード&シュートが教科書。

新星Peet Piollonの凄さ

CSP8点目、またしても全く同じ形でPoillonが電光石火のカットからbehind the backで得点。本物のシンデレラストーリー。テレビで見たNCAAに感銘を受け、ラクロス不毛地帯のPittsburgで父親と一緒にラクロスチームを立ち上げて高校からプレーし始め、中堅校のOhio Stateにスカウトされてチームを躍進させた後、Div 1の名門校UMBCに転校。そこで名将Don Zimmermanの指導を受け土台を築く。

それでもMLLからは見向きもされず、MLL1年目の去年は手弁当で片道5時間掛けてBostonの練習生をボランティアで買って出る。が、結局Bostonでは出場機会が得られず解雇。今年拾われたBayhawksで燻っていた鬱憤を大爆発させるかのように大活躍を見せた。多くのラクロスファン/選手に夢を与える存在。小さいくせに元気があって、パワーとスピードがあって、見てて本当に楽しい。自分がちびっ子ファンだったら絶対大好きになってたと思う。個人的にこういう雑草魂溢れる話は本当に大好きで、勇気とエネルギーを貰える。(Poillonの躍進と、MLL選手を多数輩出するUMBCの記事

再び試合

CSP 9点目、Carrollがクリースから鋭いジャンピングショットを突き刺す。この人の全身を使ったミドルレンジのシュートは本当にパワーがあり、正確。シューターは是非繰り返し見てパクりたい。

LI G Drew Adamsの、一度セーブした直後に再び立ち上がるまでのQuicknessがフィーチャーされていた。リバウンド、またはフェイクからの次のシュートへの反応に於いて非常に重要。恐らくGoalieの個人練習でも、ダイブしてすぐ立ち上がる、split saveで足を出して尻餅をついて一瞬で立ち上がる、という練習を繰り返しているはず。

4Q終盤、4点差を追いかけるLI EMOでのCromwellのLong standing shotの体の使い方。ヒップの使い方、体軸のトルク(捻り)の大きさ。

最後はBayhawksが4点差を守り切り、フランチャイズ3度目の優勝を飾る。

優勝カップのSteinfeld Cupを掲げる選手たち。いつみても優勝のシーンは胸がジーンと熱くなる。初期の栄光の後5年にわたる低迷と、Baltimore-Washington-Chesapeakeと、ホームタウンとオーナーを転々と変えながら苦しんでいた歴史を考えると尚更。

MVPは珍しくDefensive playerから、CSP LSMのKyle Hartzell。先日のRusty Gate Checkの記事でもフィーチャーされていた。準決勝でのPaul Rabilを完封したのに続き、この試合ではLIの得点源Stephen Burgerにほとんど仕事をさせていない。勝利への貢献度の高さを考えると納得の選出。必ずしもHighlightで最もフィーチャーされる訳でもないDの選手が実質的に勝敗を決める程のインパクトを持ち得るという例。

さて、これにて2010年のラクロスシーズンは終了。個人的には今後College Football, NFL, College Basketball, NBAと各種スポーツで順繰りに盛り上がりつつ、再び2月以降のラクロスシーズンに備える予定。Inside Lacrosse等で面白いラクロスネタがあれば都度紹介して行く予定。現役の皆も引き続き最高の夏を過ごして下さいな!応援してるので!

Lax UnitedのHighlight


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