2011年4月9日土曜日

NCAA 2011 Big City Classicの会場での感想

試合のレビュー自体とは別に、会場で感じた事をいくつかバッと列挙。NFLはNY Giants、NY Jetsのホームスタジアム、NYマンハッタン島の西の対岸に位置する、New Meadowland Stadium。バカでかい。去年完成したばかり。収容人数8万人超。集客試合のスケールが...


(これ前回のFace Off Classicでも書いたが...)改めて、選手がでかい。やっぱり、でかい
  • 今回も最前列で至近距離で練習見学&試合観戦。
  • しかしまあ、前回のBaltimoreでのBig City Classicでも触れたが、改めて、選手たちがTV画面で見る以上に、でかいなと感じる。
  • やはりメジャースポーツとしての、ボディコンタクとのあるスポーツの上澄みのエリート達。日本で言うとラグビーの上位校の選手たちと通常の日本人のサイズの差の感覚ぐらいだろうか。
  • 以前QuintがILの記事で、彼自身ESPNのレポーターとしてNBA/NFL/NCAA Basketball/Collage Footballを取材する中での比較感として、ラクロスの選手たちは大学スポーツの中ではFootball/Basketballの2大メジャースポーツに次ぐレベルのサイズと身体能力のアスリートが揃っているという言い方をしていた。サッカーやバレーボールやレスリングと言った他の有力スポーツよりもいい選手がラクロスに揃っているということ。
  • ラクロスの国家間の競争力、具体的にはWorld Lacrosse Championshipでの強弱を考えた時に、やはりここのスポーツとしての他のスポーツに対しての相対的メジャー度の差が、日本とアメリカの最大の差な気もする。
  • 「民族/国民として平均サイズの差」×「その中でどれだけ上澄み中の上澄みの『素材(サイズ/身体能力)』を集められるか」に因数分解した時に、もちろん前者の差は存在するが、今の時点だと恐らく後者の差の方が圧倒的に大きく出ちゃってる印象を受ける。それだけNCAAラクロスの選手たちはアメリカの中にあっても、メジャースポーツの中でのスポーツエリートとしてのタイトな選抜をくぐり抜けている印象を受ける(ここはラクロスが日本と同じマイナースポーツのオーストラリアとは明確に大きく違う点。)。


特に、Hopkinsが思いのほかPhysical。でかくてごつい。
  • 今回Hopkinsを2008年のSemi-Final & Final以来初めて会場で観戦。TVで感じてた以上にかなりPhysicalityが高い(でかくてごつくて身体能力高い)ことに気付かされた。
  • 特に、#31 2年 MF John Ranagan (190cm, 93kg)#9 2年 MF John Greeley(190cm, 95kg)の2年生MF 2枚看板の身体が尋常じゃない。んでもって機動力というか身体能力が恐ろしい。特に#31のRanagan。間近で見て、ガチで引いた。つか、馬かと。これ競馬場かと。文字通りbeast(獣)以外の何者でもない。
  • Paul Rabilを見て感じる「違う生き物感」が満載。試合中もRanaganにボール持たせて単純に爆走させる、という攻めを何回かやっていたが、笑う事しか出来なかった。あんなでかくてごつい獣が爆走したら、人間には止められんだろ、という感じ。迫力が物凄い。
  • Ranaganはここに来てどんどんPaul Rabil化してきている。RanaganとGreeleyのセットが完全に2007年HopsのRabil-Peyser化して来ている。このレベルにありながら尚急速に進化/成長している。シュートも鬼だし、Long poleが着いても全く関係無い。めんどくさいことせずに、単純にボール持って真っすぐ走るだけでズゴッと抜け、シンプルなランニングシュートを打つだけで、ドカーン!と得点出来る。「どうやって止めんねん...」というやるせない虚脱感を残しながら。個人的な直感だけど、この人多分2014年、2018年のWLCで結構US代表に入ってくるかも。2010年とか見た感じ、フィジカルが異次元ってのはUS代表MFの資質なので。
  • あと、忽然とベストゴーリー候補に躍り出てきた#33 2年 Pierce Basset(Arizona出身)も、TV画面で見ていた時は気付かなかったが、冷静に見るとかなりでかいことに気付いた。彼も190cm。普通にゴールの前で構えてメットの上がパイプからはみ出る感じ。シューターとしてはばっちりゴールを覆われることになるので厄介。
  • しかしまあ、Hopkinsは、というかCoach Petroは実は3年前にとんでもない代を高校からリクルートしていたという事が段々解って来た。それぐらいこの2年生軍団は凄い。

Billy Bitter尋常じゃなく速い
  • 今回、UNC #4 AT 4年生のBilly BitterがHopkins戦で久々の爆発。
  • 1Qに丁度僕たちのいたスタンドの目の前で例の複数人抜きからの得点を三度演じた。
  • 会場で間近で見ていて、改めて、その尋常じゃない速さに気付かされた。TVやインターネットで見て凄いなとは思っていたが、目の前で見て、その明らかに頭一つ抜け出た爆発力に「マジか!?」と文字通り度肝を抜かれた。切れ味が尋常じゃない。ズバッとフィールドを切り裂く音が聞こえそうなくらい。ダッジが鋭すぎる。会場の2万人の観客も彼のダッジの瞬間に「オオッ!!!」と揺れていた。
  • 3点目のFinalizer(相手DFをゴールの後ろのネットで捕獲して倒す例の技)が決まった時は文字通りNew Meadowland Stadiumがどよめいた。
  • なるほど、やっぱ特別な選手なんだなと改めて実感。


皆身体の使い方クソ上手い
  • これも若干マニアックな話なのだが...そもそもの会場で見た感じの「うわっ!」というインパクトの結構な部分が、そのダイナミックな迫力にある。
  • 全力疾走感が物凄い。切り替えや加速が鋭い。従って、見ていて物凄い迫力がある。走ると「ドドドドドッ!!!」と地響きが聞こえてきそうで、切り替えやストップで「ズバッ!!」と音が聞こえ(るような気がし)、チェックやシュートも「スパンッ!」と空気が切り裂かれる音が聞こえる。
  • とにかく見ていて、明らかに日本で持っていたラクロスの感覚と、スポーツとして、身体運動科学として違う次元にある印象を強く受ける。
  • 何でなんだろ、と無理矢理分解してみると...
  • ①重心が物凄く低い。DFもOFも、超腰が落ちていて、「地を這うような」動きをしている印象を受ける。ビタッとに張り付いた状態で動いている。結果、Change of DirectionやダッジやDFのフットワークでも、ムチャクチャ安定しているし、速くて鋭くて細やか。相当なスピードから急激に止まったり方向転換しても、体軸がほとんど揺れていない(当然転ばない)。これがまた見ていてカッコいい。(要は、ダメ選手がよくやるように、高い重心のままフラフラ走ってない。高校までハードコアな運動部を経験して来なかった下級生によく見られた絵だと記憶しているが...)
  • ②股関節の可動域が広くて、その可動域をマックスまでフルッフルに使い切っている。ハム(ケツ)もクアッド(太もも)もカーフ(ふくらはぎ)も。ダッジやトランジッション、もっと言うとフライ時のダッシュを見るだけでも伝わって来る。「脚の回転/回旋が、『でかい』」。ぐるんぐるんに脚が廻っていて、クリーツが動く幅が大きいく高い。走る時の音がズダダダダダ!!!と言う感じ。ちょこちょこちょこっ、じゃなくて。サブマシンガンの音。で、その状態のOFとDFの1 on 1とかマジで迫力あってカッコいい。正に、正しい/効率的な身体の使い方を心得ているなと感じる。
  • ③骨盤の前傾とspine(背骨)の傾斜。何と言うか、常に走るときも、DFの姿勢も、完全にathletic positionというか、前傾/前のめりになっている印象を受ける。走る時に、陸上短距離のスタート板を蹴るように、クリーツの拇指球部分で地面をがっつり後方に蹴りながら走っている。なので、静止状態からの初期加速が尋常じゃなく速い。グワーーーッ!!と瞬間的にトップスピードに乗って来る。方向転換をする時も、イメージ、オートレースや競輪のコーナリングの要に思いっきり軸を傾けて遠心力を脚の裏で支えながら、ビタビタビタッと効果的に曲がっている。
  • ④それらを支えるフィジカルトレーニング。これは別に試合で見える部分ではないが、こんなもん理屈で考えれば明らかに想像出来るが、相当しっかりフィジカルを鍛え上げて来ていないと上記3つは出来ないはず。下半身も体幹(腹筋/背筋)も。ウェイトトレーニングやストレッチはもちろんの事ながら、場合によっては走る姿勢/動く姿勢を科学的に理解して指導出来る専門家/トレーナーが理詰めでドリルとセットでしっかり教え込んでるんじゃないかなと感じる。
  • まあ、要はアスリートとして身体や身体の使い方がかなり出来上がっているという事か。別に日本でもJリーガーやラグビーの体育推薦で上位校でプレーしているような選手たちは出来ている事なんだろうが。

ファン多い&熱い(ILの写真
  • 今回は人口の多いNYということもあり、観客の数も会場の熱気も、前回のBaltiimoreのFace Off Classicよりも数段上という感じ。ILの記事を見ても解るが、ジュニア/キッズを中心に熱狂的なファン&ラクロスバカが多い。
  • しっかしまあ、本当にこの国のラクロスの裾野は広いと実感させられる。これだけの人数を収容出来るNFLのスタジアムで大学レベルのイベントが成り立つというのが凄い。
  • 小学生くらいの子供達がNCAAのチームや選手の名前を個別に知っていて、結構マニアックなプレーまで理解して興奮しながら応援しているというこの環境。

EastonのRaptorヘルメットが流行りそう
  • ILでここ数ヶ月ずーっと取りざたされて来た、Ice Hockeyの巨人、Eastonのラクロス参入(website)。既にCasey Powell、Brett Queenerら人気選手を引き込む事に成功し、Find your wall project等でプレゼンスを確立しつつある。
  • インタビューや記事で見た感じ、かなり本気のコミットメントで、適当に様子見でやってみるという感じではない。
  • ここ数週間でちょっとずつ小出しに写真を出して興味を煽り、今回のイベントに合わせてその全貌を公開、というteasing(じらし)なマーケティング手法を通じてlaunchされたのが、ヘルメットのRaptor。
  • ビジュアルもカッコいいのだが、実際に手を取ってみて、説明を受けてみて、あ、これ結構流行るだろうな、という印象を受けた。元々アイスホッケーや自転車競技、スキー/スノーボードのGiroでかなりしっかりヘルメットのテクノロジーやR&D/Manufacturingの経験を積んで来ている。材質や設計でCascadeやWarriorよりも一段上のqualityを達成しているように感じた。
  • 手に持った感じ、かなり軽く(曰くCascade等の1/3)、またプラスチックのシェルと、中のウレタンフォームが完全に密着/一体化しており、より効率に衝撃を吸収するという触れ込み。明らかに固い。
  • ヘルメットのプロであるBell Helmet/Eastonがその蓄積されたヘルメットテクノロジーをラクロスにそのまま持ち込んだ形。一ラクロスメーカーだったCascadeやWarriorとの知見/経験/技術の差は恐らく結構ある気もする。
  • アイスホッケーの影響が心配されていたvisualも、文句無くカッコいい。
  • 配色のオプションがどうなるのかなどまだ不透明だが、今後結構流行って行きそうな印象を受けた。
  • ぶっちゃけ、ざっくりとしたデザインはCascade Pro7、Warrior TIIの2大最新ヘルメットにかなり似ている。バイザー、チンガード、本体がほぼ一体化したデザイン。正面から後頭部まで、スピード感を感じさせる一つの流線型で繋がっている。被った時に"Tilt"と言われる、つばがちょっと下がって眉毛が隠れ、目が影になり、表情が隠されてカッコいい感じになるイメージ。基本的には今後もこの流れが続いていくんだろう。(全方向から見られるILの記事



    こちらは同じくEastonのStealth Helmetの動画。これ見ると解るが、科学的に裏付けを取りながら、プロ選手のコメントを使って上手くマーケティングしている(よく見ると既にカスケードを比較対象に使っている)。恐らくこの辺のテクノロジーやマーケティング手法をフルにレバレッジして今年の後半に掛けてlaunchしてくるはず。場合によっては大きく市場を席巻しかねない。しかし、これ見るとCascadeっていろんなスポーツヘルメットの中で明らかに一番脆い部類にあるって事か...Eastonから見れば伸びているスポーツの中で、Warriorとの寡占状態にあぐらをかいた井の中の蛙に見えたのかも知れない。正面からガツッとぶつかって実力で捩じ伏せてやるぜ、ぐらいの気迫を感じる。これでラクロスのギアが更にフェアな市場競争によって進化していくのは素晴らしい事だ。伸びているスポーツならではの恩恵。

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