2011年4月25日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.24 Army @Navy

先々週にはWeek of Rivalryと呼ばれる、ラクロス界に歴史的に存在するライバル同士の激突が複数催された。Maryland-Hopkins、Duke-Virginia、そして、最後を締めるのが名物、Army vs Navy、即ち、陸軍士官学校対海軍士官学校。日本で言えば防衛大学の陸軍版vs海軍版。

個人的に、この試合は今年のBest boutの一つかも知れないと思う。スポーツとして、背景や魂も含めた一つのドラマとして。本当にRespectの念を感じざるを得ないライバル同士2チームの戦い。

両校の学生達は、実技もある相当ハードな一日を過ごした上、ラクロス部の練習をやると言う負荷の高い生活を送っている。

(ちなみに、アメリカならではの構造として、軍隊に能力が高くリーダーシップのある人材が集まるという現象がある。僕自身の会社の幹部候補生育成プログラムで一緒に入社した同期にも一人、陸軍出身で、イラクで戦車部隊の一個小隊を率いた後、MBAを取ってビジネスの世界に来ているアメリカ人の友人がいるが、人物的にも絵に描いたような尊敬出来る素晴らしいリーダーだったりする。こういう人が本当に大事な場面に精神的支柱となって人々を導くんだろうなと感じる。彼に限らず、結構な数の優秀な人材が軍を経由し、ビジネスの世界で活躍していたりする。このアメリカという国のリーダーシップ人材の層の厚さを如実に表す一つの例だと感じる。)

この試合も歴史ある伝統の一戦で、卒業生や家族も巻き込んで、毎年異様に盛り上がる。そして試合そのものも例年実力伯仲の接戦。去年も延長決着の熱い試合を繰り広げた。

今年も期待に恥じない名勝負。お互いの良さをフルに出し、プライド同士のぶつかり合い。

アメリカでNCAA Men's Lacrosseをフォローし始めてよーく解って来たが、実はこの辺の、リーグ戦の順位、プレーオフや準決勝/決勝とは別の、伝統のライバル同士の対戦が、非常に重要な意味を持つイベントであるという点。

NavyのHCもESPNU Podcastでのインタビューで名言していた。ぶっちゃけプレーオフに出られるかどうかは二の次。一年の中で最も大事な試合がこの伝統のNavy-Armyの試合だと。これに勝てればプレーオフがどうとか関係無いと。それだけの伝統と意味があると。(これ、結構凄いことっすよね?ライバルとの一戦が全てって言う。)

Navyが試合前に見た煽りV

この試合の意味、この試合に懸ける想いがうかがい知れる。冒頭のPep-talk(檄)が、マジで、激熱過ぎる。Any given Sundayのアル=パチーノの演説張りに。これ試合前に見たらクソ気合入る。



卒業後は海軍で、身体を張って、命を懸けて国の為に戦う事を前提とした学校。懸けている想いが違う。ここで全身全霊を注いで戦う事に、その後の人生への影響を及ぼす大きな大きな意味がある。聴いてるだけで鳥肌が立ち、目頭が熱くなるような、アドレナリンの蛇口をぶっ壊す様な熱すぎる言葉が並ぶ。
  • 自分たちは、この瞬間のためにこれまでやって来た。お前達は、今日、今夜、この瞬間に立ち合う事を運命付けられていたんだ。
  • このチームに関して、一つだけ言える事は、このチームにとって、君たち一人一人、誰一人例外無く、その一人一人が、決して、絶対に欠く事の出来ないメンバーだという事。
  • お前たちの隣にいる仲間の顔を見ろ。そいつの眼を覗き込め!そいつは、最後の1インチの為に自分を犠牲にする奴だろ?何故ならそいつはその1インチが最後の勝敗を分けると知ってるからだ。そして、お前自信も同じことをするだろ?最後の1インチを制するのは、その1インチの為に命を投げ出せる覚悟を持つ者だ。
  • いいか?あいつ等をshut-downしてやろうぜ!俺たちにはそれくらい出来んだろ!
  • これからの人生で、困難にぶつかる事もあるだろう。人々から指差されて「ダメだ」と否定される事もあるだろう。そんな時に大事なのは、どれだけ強く相手にぶつかれるかじゃない。どれだけ強くぶつかられても、それでも尚、立ち上がり、最後まで諦めずに前に進み続けられるかだ。
  • ここからはお前たちの時間だぞ!フィールドに出て勝ちを掴み取ってやろうぜ!
こうやってArmyのメンバーたちはZoneに入り、Flowを作り出し、最大のセルフイメージで最大のパフォーマンスを引き出しているんだろう。実際に試合を見ると解る。そのイッちゃったレベルの魂の乗り方が。これも一つのFlowの作り方、チームとしてのスタイルだろう。

ここまでの気持ちでやるが故に、ルースボールへの執着心や、シュートに乗せる集中力が眼に見えて違う、という事になるんだろう。そして、そうやってここで全身全霊を懸けて、最後まで諦めずに全力で戦い抜く姿勢が、その後の人生で、軍役や社会で困難に遭遇しても、自分を支える自信、土台になっていくという事なんだろう。このラクロスというスポーツの持つ、もう一つの深く、大事な意味を教えてくれる。

こういうの見るとマジ痺れて今日も頑張るぜっ!と燃えられる。

試合の感想

試合を見て感じたのは、恐らくこの2チームの試合は東大の皆にとってはSyracuseやVirginiaやDukeの試合よりも参考になる気がする。それら上位チームのように、明らかにDNAが違い、技術的にもラクロス英才教育を受けて来た上澄みの選手達、という感じではなく、まだ普通のアスリートが、何らぶっ飛んだ技術に頼る事無く、超基本に忠実に、スタンダードな戦術で戦っている感じ。

大学入学時点の素材としては決して日本一ではない雑草集団の東大にとって、「魂/ハート」や「戦い方」の面でこれほど参考になるチームはなかなかいない。

決して世界最高峰のfantasticなラクロスを見られる訳ではない。泥臭さ満載。でも、それでも尚、見ている者を感動させるものを持っている。超教科書のように基本に忠実な技術/戦術だが、一方でミスが少なく、正確で、効率的。あと、シュートやダッジに力と魂が乗っていて、「ビシッ!!!」としている。何と言うか、そういう感じ。気持ちが乗ってる。両チームとも。試合見たらご理解頂けると思うが。決してちんたらやってない。

全体的に、特にNavyのラクロスが非常にチームベースで効率的な事が解る。得点のほとんどがパス/フィードからのフリーでのシュート。特にXからのオフボールでビートしたカットやポップにパスを当て込んでのシュートが多い。別にぶっちぎった身体能力や有り得ないスティックスキルをベースにしている訳では無く、真似出来る点が多い。スティックをほとんど両手で扱っている。

ちなみにArmy #2 Sr. AT Jeremy Boltusは優れたATで、如何せん試合放映数が少なかったため僕らが眼にする機会も少なかったが、現時点でTewaaraton候補の一人とも言われる。実際に、非常に基本がしっかりしており、巧い。フィードにシュートにダッジにと、この人はガチで巧い。Div 1トップクラスのATの一人だと感じる。

こうやって見ると去年ArmyがSyracuseを破ったのも、そんなに有り得ない事ではなかった事が解る。今年もPatriot Leagueを制すればArmyはまたPlay offに出てくる可能性がある。どう掻き回してくれるんだろうか。

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