2010年8月28日土曜日

LXM PRO

(一瞬、私事で恐縮ですが、一瞬近況報告をさせて頂きます。ちいと仕事の方で動きがあり、今のボスの出世&転勤に引っ張られる形で今月いっぱいで同じく転勤に。同じ事業、同じボスの下で若干守備範囲を変え/広げつつ、西海岸のカリフォルニアから、東海岸のデラウェアにある本社に帰還することに。前回本社勤務だった際は近所のPhiladelphiaの街のど真ん中に住んでいたが、今回は通勤時間をセーブするべく、Delawareに住む予定。気候の素晴らしい南カリフォルニア、しかも「地上の楽園」とも称される風光明媚なSanta Barbaraを離れるのは正直悲しいが、一方で、ラクロスを含めたカレッジスポーツ/プロスポーツとの距離感がぐっと縮まることに加え、NY, DCにもサクッと行ける距離なので、楽しみではある。)

さて、今回は今までとはガラッと違う話題。ラクロス関連の新しい動き/面白い取り組みについての紹介。

LXM PRO

これまでアメリカでは、1987年に始まったインドアのNLL、2001年に始まったフィールドのMLLという二つのプロリーグが存在していた。ここに来て、LXM PROという、全く新しいコンセプトのプロラクロスのmovementが起こりつつある。個人的に、凄く共感する部分があり、その雰囲気やビジュアル、コンテンツとしての美しさが刺さったこともあり、是非もっと盛り上がって欲しいな/応援したいなと思ったこともあり、紹介させて頂こうと思う。

クイックに雰囲気を掴んで頂くためにはウェブサイトや動画を見て貰うと早いかな?と思うのでいくつか紹介。
 ● ウェブサイト
 ● 動画①(この空気。脳幹が痺れさせられる。子供達の笑顔!)
 ● 動画②(熱狂っぷりはこっちのが伝わるかな?)
 ● 動画③(ドラマThe HillsのLo Bosworth)
 ● ギア

所謂通常の「プロスポーツリーグ」とは全く異なるコンセプト。
●特定のホームは無く、各地を廻るツアー形式
●チーム、メンバーも固定ではなく、主要メンバー以外は毎回入れ替え
●シーズンも決まっておらず、年間に何回か行われるイベント形式。各都市での一発勝負
●Lacrosseの試合だけではなく、人気のバンド/ミュージシャンによるライブ、celebrityを呼んでのお披露目パーティー等のイベント盛りだくさん
●毎回ユニフォームやメットやギアのデザインが変わり、色使いやロゴがお洒落でカッコいい
●TwitterやFacebookといったSocial mediaをフルレバレッジして、流行やファッションに敏感なearly adopterたちを取り込み

と言うもの。動画を見てもらうと解ると思うが、毎回テレビで人気の若いCelebrityたちを呼んでプレスをやり、ギラギラした、チャラチャラした(悪い意味じゃなく)、なんかワクワクさせられるような、coolな/sickな/sweetな雰囲気を醸し出している。恐らくラクロスのことを全く知らないオーディエンスが見たとしても、「あれ?何かカッコよくて楽しそうなことしてるぞ?」と気になる/見てみたくなる空間を作り出すことに成功している。(もちろん、ラクロスを知っている僕が見ても、「ああ、このスポーツを知っててよかった…」と思わせられる。)

メンバー

現時点のメンバーを見ると、多くの元NCAAのスタープレーヤー、及び、つい最近までMLLの第一線で戦っていた選手たちの名前も見られる。何人か紹介すると:
 ● Casey Powell (Syracuse 98, MLL, NLL, Team USA)
 ● Kenny Nims (Syracuse 09, MLL)
 ● Kyle Harrison (Hopkins 05, MLL, USA)
 ● Joe Walters (Maryland 06, MLL, NLL, USA)
 ● Steven Brooks (Syracuse 08, MLL)
 ● Matt Ward (Virginia 06, MLL)
などなど。結構錚々たるメンバーが名を連ねつつある。個人的にはMikey Powellなんて凄くハマると思う。

設立の背景とコンセプト

元MarylandでLA在住のXander Ritzが、彼のコンセプトに賛同する仲のいいトッププレーヤー達と楽しみながら立ち上げたイニシアチブ。

立ち上げ時の記事を読む限り、裏には彼なりのいろんな想い、そしてそれに賛同したメンバー達のいろんな想いがあったことが読み取れる。

東海岸をベースにしてきたラクロスもここ10年で爆発的に全米に広がりつつあり、大学レベル、高校レベルでは西海岸にも多くのチームが生まれた。2008年の不況まで、西海岸にはLAとSan Franciscoという二つのMLLチーム、そして2つのNLLチームがあるという状況だった。が、そうは言ってもやはりまだスポーツとしてはマイナー。両リーグ共に安定した集客には苦しみ、結局不況後は解散してしまった。

それらの経験から彼らが感じたのは、
●ニーズは、ある
●見に来る奴も、プレーしてる奴も、いる
●そして、上手くやれば、lacrosseをプレーした事がない、見た事が無い一般のお客さんを取り込む事も出来る。

ラクロスはそれだけのポテンシャルを秘めたエンターテインメント/コンテンツだという事。

そして、

●1ヶ月に何回もある試合を毎回見に行くことはないが、仮に年に一度のお祭りイベントだったら?
●純粋なラクロスだけじゃなく、その前後のライブやパーティー、それらを全部ひっくるめた、一つのイベント/エンターテインメントとして売り出したら?
●もっともっとファッショナブルでsensationalな見せ方、作り込み方をしたら?
●そして、celebrityを巻き込んで、彼らから「お洒落でカッコ良くて新しいもの」というポジションを発信して行ったら?
というもの。

恐らく、ラクロスが成長し成熟する中で、競技としてどんどんレベルが上がり、コンペティティブになり、完成度が上がって行く現状への疑問、そして、より真剣に、そしてより敷居が高くなりつつ有るNCAAやMLLへのアンチテーゼもあるんじゃないかと想像する。

もちろんそれら本流の、最高峰の、競技としてのラクロスは絶対に必要だし、そこがベースだし、それはそれでrespectしながらも、「いやいや、待てよ、lacrosseってそれだけじゃないぜ?もっと肩の力抜いて、純粋に楽しめる、お洒落でカッコいい最高の遊びなんだよ!」という考え方。彼自身、記事の中で、「MLLやNLLとは競合するとは考えていない。自分たちはまた別の形でラクロスを広める使命がある。自分たちはNBAやNFLといったハードコアな競技スポーツではなく、(SkateboardやSnowboardのような、ストリートスポーツ、ファッションやストリートカルチャーと強く結びついた)X-Gameのようなコンテンツを目指したい」と語っている。

そこに丁度彼自身のお気楽でノリノリなpersonality、LAという立地やそこで彼が感じたWest coastならではのラクロスやスポーツや人生そのものの楽しみ方をミックスした形で始まったプロジェクト。

毎回各都市でのイベント毎に、LXM 949 Orange CountyやLXM 610 Philadelphiaのように、その都市のエリアコード(日本で言うところの市外局番。東京03や横浜045、名古屋052みたいな)を冠し、ロゴを作っている。んでまたそのロゴがかっけえ(リンク。下の方)。

丁度今週末の明日、Philadelphiaでのイベントが行われる。引っ越しが間に合えば是非見に行きたかったが、引っ越しは来週なので残念ながらニアミス。

気になる今後

まだ立ち上がったばかりで、果たして今後定期的/継続的に集客し続け、movementとして確立して行くのかはまだ未知数。ただ、個人的には、素晴らしいイベント、取り組みだと思うし、ラクロスの持つ競技としての素晴らしさだけでなくそれを取り巻く空気やファッションをも伝え、それをラクロス関係者だけではなく一般のaudienceに露出/浸透させて行くという意味に於いては最高のチャネルだと思う。是非応援したい。

もちろん、これ「だけ」じゃダメで、ハードコアな競技としての土台は必要。でも一方で、基本経験者の中で閉じてしまうNCAA/MLLだけでもだめで、この二つが両輪として機能する/相互にフィードする関係を築く事が必要なんだと思う。(頭の固い東海岸の古いファンの中には、「こんなチャラチャラしたのlacrosseじゃねえ!スポーツの品格を貶める!」なんて批判をしてる人たちもいるみたいだが、個人的な意見としては...、まあ、いいじゃん、もっと純粋にlaid-backで新しいこと楽しみながら試せばいいんじゃない?とも思う。そういう内向きに閉じたところが自らのクビを締めてる部分も多分にあったと思うし。)

Xander Ritzへのインタビューが今週のInside Lacrosse Podcastでフィーチャーされていた(リンク)。西海岸らしく、laid-backで、人生を楽しむ一環としてLXM PROをやっていることがよく解る。こういった形で、個人の利害やお金を越えたところで、純粋な、楽しみたい、いいものを伝えたい、新しい物を創りたい、伝えたい、そういう想いやvisionや情熱を持った一人の人が動きだし、それに共感した周りの人が巻き込まれ、どんどん人々を共振させ、それが大きな大きなmovementになって行くと言う一つのリーダーシップの形。見ていて凄く感動するし、ポジティブなエネルギー/勇気を貰える。

と、いうLXMの紹介でした。アメリカのラクロスを見る中で、ずっと感じていた、「本当の良さ、素晴らしさは、実は選手やプレーのレベルの高さじゃなくて、こういうカルチャーやファッション、そしてこういう『Enjoy Life!!』な空気の中にこそあるんじゃないかな?」という気持ち。そしてそれを現役の皆さんに少しでも伝えられたらいいな、そしたらきっと皆今よりも更にもっと楽しく強くなるだろうな、という想い。それらを解り易くそこだけ切り取って結晶にしてくれたような気がして、一ファンとして何だか嬉しかった。

いたる@13期

2010年8月23日月曜日

MLL 2010 Game Review vol. 05 Final Chesapeake-Long Island

さて、2010年のラクロスシーズンの集大成。今日行われた決勝、10年間リーグを引っぱり、終世のライバルであり続ける2チーム、Chesapeake Bayhawks vs Long Island Lizards。NY州Long Islandの北のラクロス対Marylandの南のラクロスという、ラクロスでもよく引き合いに出される対照的スタイルによる激突。(先日誰かが[Dinoだったかな?]インタビューでロン毛のジーパンのちょっと繊細で尖った都会っ子 対 短パン+ビーサン+ショートカットの無神経なスポーツ馬鹿、というファッションやキャラの対比を面白おかしく語っていた。ちなみに彼自身は生粋のLong Islandっ子)

以下、試合の見所を紹介。

前半

LI 2点目、Duke/Team CanadaのZack Greerのゴール前で貰っての電光石火のクイックミドルショットで得点。この人の2ポイントエリア内のシュート成功率は半端無い。外す絵が全く浮かばない。フリーで持たれたらほぼ終わり。ミドルシュートでクイックながら、置きに行く事無く、遠慮する事無く必ずかなり速い弾道で恐ろしく正確に空いたスポットに突き刺して来る。小さなゴールと大きいゴーリー相手に針の穴に糸を通すようなaccuracyが求められるCanadian indoor lacrosseの真骨頂。

Chesapeake 1点目、Huntの得点。左手でパスをはたいた直後に右に持ち替え、リターンパスをバックハンドでキャッチしながらすぐに左足のキックで切り返して右に鋭く方向転換、Dをかわしつつ表に角度を作りつつゴールに向かう動き。

LI 3点目、Peyserのrunning shot、classicで基本だが、上手い。LSMが本来ATだがOF MFで出ているBurgerに着く事で生まれるショートスティックD相手のミスマッチを確実に突いてくる。背中に背負ったスティックからオーバーハンドでのシュートでGoalieからリリースが見えずセーブしにくい。

CSPは、先日MarylandのHCをクビになったDave Cottleが”Consultant”なる肩書きでチームに帯同している。試合中もベンチの裏からかなり戦略的な指示を出している。シーズン途中でHCを解任したCSPにとって彼の存在は大きいはず。

しかしまあ改めて、クリアクロック、ショットクロックのあるMLLのスピード感はNCAAに比べて一段、WLCに比べて二段階ほど早い。かなり急いでクリアするし、休む間も無くガンガンゴールに向かって行くし、リスクを取ってシュートを打つ。結果としてめまぐるしくポゼッションが入れ替わりトランジッションが発生するため、見ていて飽きない。個人的にはこっちのルールの方がラクロス普及、経験者以外のAudienceの取り込みという意味に於いては向いている気がする。やはりラクロスのスポーツとしての構造的欠陥は、フライを待って攻めるまでに生じる無の時間、待ち時間なので。このスポーツをエンターテインメントの商品/コンテンツとして見た時に、ここはユーザーフレンドリーではないので。

2Q残り8分、パイプに当り得点にはならなかったが、クリースでのLI Zack Greerのシュート、リバウンド、behind the backが有り得ない動き。

創設者Jake Steinfeldの話とここ10年でのUSラクロスの進化

2Qの途中で挿入される、MLL創設者Jake Steinfieldの話が胸を打つ。ラクロスへの愛、起業家精神。10年でアメリカでどれだけ爆発的にラクロスが育ったか。MLLが子供達に夢と目標を与え続けてる話。「SyracuseやHopkinsでNCAA制覇すること」が多くの選手の夢だった時代から、「MLLの舞台に立ち、Steinfeld cupを掲げる事」が子供達の夢になりつつある。「上がり」「ラクロスキャリアの実質的終着駅」がNCAAではなく、そこから先のMLLになり、NCAAの選手たちがMLLでやることを目標にさらにhumbleに精進を続けるという絵が生まれつつある。

MLLが産声を上げた10年前1,000チームだった高校の男子ラクロスチーム数は、MLLの進化と歩調を合わせる形で10年間で3倍の3,300チームに。信じられない爆発だ。500年の歴史を持つアメリカのラクロスが、たったの25年前に始まった日本のラクロスよりも遥かに速い速度で大きくなっているという衝撃の事実。その大きな大きなプールの中から選りすぐられた上澄みのエリートがNCAA Div 1に進み、さらにその中のたった一握りだけがMLLという夢の舞台でプレーする事が許される。そしてその中のさらにトップ20人がUS代表のユニフォームを着る。それだけの競争を勝ち抜いて来た、精子の様な確率でサバイブしてきた選手たち。そりゃ上手いわな...

再び試合に戻って...

Chesapeake #51 MF、JHUから加入したルーキーMike KimmelがDFにトランジッションにと大活躍している。特にShort stick DFは角度のマネジの仕方をよーく解った素晴らしい教科書。

Chesapeake 4点目、PoillonのBehind the backでの得点を生むまでのOF 6人の動きが非常に参考になる。1 on 1からボールをシェアしてスペースを作り、そこでサクッと得点。Poillonは本当に今シーズンのたったの数ヶ月で2年目にして全くの無名選手からリーグ屈指の大スターになってしまった。

LI GoalieでPenn State出身のDrew Adamsが試合を通じて素晴らしいセーブを見せ続ける。特にロングシュートへの反応は秀逸。

LIのクリース前のオフボール状態でのプレッシャーが凄い。クリース前をタイトにパックし、フィードが出てなくてもガンガン相手のスティックをチェックしており、クリースの選手は相当やりにくそう。

後半

試合を通してFace offでのTeam USAのFace offer、ChesapeakeのAlex Smithの強さが光る。後半の初っ端。彼の必殺技"Pinch and pop"でパチッとボールを前に飛ばしそれを直接拾ってノーマークでゴール。

LI 5点目、EMOにてDuke '08デュオのDino-Greerのホットラインがまたしても炸裂。Dinoのトップからの愛の無い鬼パスを涼しげにキャッチしてサクッと決めるGreer。この人に取れない球はあるのか?QuintもそれがDinoにアグレッシブにリスクを取ってパスを出す余裕を与えていると指摘。

3Q残り9分、LI DF Spallinaがボールデッドの状態でのヒットでファウル。ガラが悪い事で有名なLI DF陣はマジでビジュアルからして怖い...トラッシュトーク(試合中の挑発トーク)も半端なさそう。FxxxやらShxxやらの言葉が乱れ飛んでるのが想像付く。

Chesapeake 6点目、EMOでの裏の2枚からのプレッシャー、クリースでのVirginia CaptainでルーキーのCarrollへのフィード&シュートが教科書。

新星Peet Piollonの凄さ

CSP8点目、またしても全く同じ形でPoillonが電光石火のカットからbehind the backで得点。本物のシンデレラストーリー。テレビで見たNCAAに感銘を受け、ラクロス不毛地帯のPittsburgで父親と一緒にラクロスチームを立ち上げて高校からプレーし始め、中堅校のOhio Stateにスカウトされてチームを躍進させた後、Div 1の名門校UMBCに転校。そこで名将Don Zimmermanの指導を受け土台を築く。

それでもMLLからは見向きもされず、MLL1年目の去年は手弁当で片道5時間掛けてBostonの練習生をボランティアで買って出る。が、結局Bostonでは出場機会が得られず解雇。今年拾われたBayhawksで燻っていた鬱憤を大爆発させるかのように大活躍を見せた。多くのラクロスファン/選手に夢を与える存在。小さいくせに元気があって、パワーとスピードがあって、見てて本当に楽しい。自分がちびっ子ファンだったら絶対大好きになってたと思う。個人的にこういう雑草魂溢れる話は本当に大好きで、勇気とエネルギーを貰える。(Poillonの躍進と、MLL選手を多数輩出するUMBCの記事

再び試合

CSP 9点目、Carrollがクリースから鋭いジャンピングショットを突き刺す。この人の全身を使ったミドルレンジのシュートは本当にパワーがあり、正確。シューターは是非繰り返し見てパクりたい。

LI G Drew Adamsの、一度セーブした直後に再び立ち上がるまでのQuicknessがフィーチャーされていた。リバウンド、またはフェイクからの次のシュートへの反応に於いて非常に重要。恐らくGoalieの個人練習でも、ダイブしてすぐ立ち上がる、split saveで足を出して尻餅をついて一瞬で立ち上がる、という練習を繰り返しているはず。

4Q終盤、4点差を追いかけるLI EMOでのCromwellのLong standing shotの体の使い方。ヒップの使い方、体軸のトルク(捻り)の大きさ。

最後はBayhawksが4点差を守り切り、フランチャイズ3度目の優勝を飾る。

優勝カップのSteinfeld Cupを掲げる選手たち。いつみても優勝のシーンは胸がジーンと熱くなる。初期の栄光の後5年にわたる低迷と、Baltimore-Washington-Chesapeakeと、ホームタウンとオーナーを転々と変えながら苦しんでいた歴史を考えると尚更。

MVPは珍しくDefensive playerから、CSP LSMのKyle Hartzell。先日のRusty Gate Checkの記事でもフィーチャーされていた。準決勝でのPaul Rabilを完封したのに続き、この試合ではLIの得点源Stephen Burgerにほとんど仕事をさせていない。勝利への貢献度の高さを考えると納得の選出。必ずしもHighlightで最もフィーチャーされる訳でもないDの選手が実質的に勝敗を決める程のインパクトを持ち得るという例。

さて、これにて2010年のラクロスシーズンは終了。個人的には今後College Football, NFL, College Basketball, NBAと各種スポーツで順繰りに盛り上がりつつ、再び2月以降のラクロスシーズンに備える予定。Inside Lacrosse等で面白いラクロスネタがあれば都度紹介して行く予定。現役の皆も引き続き最高の夏を過ごして下さいな!応援してるので!

Lax UnitedのHighlight


MLL 2010 Game Review vol. 04 準決勝

昨日の準決勝、双方予想外の結果に。

1試合目: Boston Cannons-Chesapeake Bayhawks

大方の予想を裏切り、13-9でBayhawksが勝利。GoalieのChris Garrityが神懸かったセーブを連発し、前半終了時で10対3のリード。結局後半もそれを守りきり手堅く勝ちきった。LSMのKyle HartzellとP.T. RicciがBostonのPaul Rabilを0点に抑える活躍。Bostonの良さを消し去った。Team USAの大黒柱を複数要したBoston。Paul Rabil, AT Ryan Boyle共に、いまいち本来のパフォーマンスを出し切れてないように見えた。こちらはTVのESPN2で放映されてたので、DVDで梅ちゃんに送ります。

Inside Lacrosseの試合の詳細

2試合目: Denver Outlaws-Long Island Lizards

TVではカバーされず、Online放送のESPN3にて。これまたDenver有利の予想を裏切り、Long Island Lezardsが16-12で危なげなく勝ちきった。

無名大学Washington College出身でMLLに入ってからブレークしたベテランATのStephen Burgerが6得点の大活躍。Denverのリーグ最強ゴーリーの一人、Jesse Schwartzmanを攻略した。こちらも、Denver大黒柱のAT Brendan Mudorf, Drew Westervelt, MFのMax SeibaldなどTeam USA組がいまいち本来の活躍を見せられず。

詳細へのリンク

2試合を見ての感想

そんなに単純な話じゃないし、いろんなその他の要素も作用してるはずなので一概には言えないが、乱暴に言い切ってしまうと、WLC yearの今年、結局、Team USAのメンバーへの依存度が高かった1位と2位のBostonとDenverが準決勝でこけ、逆に代表入りを逃した選手が多かったChesapeakeとLIが決勝に。USAのメンバーは間違いなくWLCに向けてピーキングをしていたはずで、試合を見ても明らかに疲れており、本調子ではなかった。一方のWLC不参加組は順調にコンディションを整え、気持ち的にも戦術的にもこの準決勝に照準を合わせ、正に今週にどピークを持って来れている。何とも皮肉な結果に。

(あまり表立っては声を上げないが、現状のMLLのシーズンのど真ん中でWLCをやるというフォーマットに対しては文句を言いたい選手とファンはかなりいるはず。そもそもMLLが世界のラクロスの頂点であることは間違いなく、決勝のUS-Canadaのメンバーのほぼ全員がMLL。ラクロス全体の利益を考えたとしても今のスケジュールは明らかにタイミング的に無駄/機会損失が大きい。何でMLL終了後にやらないんだろか。)

まあ、そうは言っても、基本的には、実力のバラつきの大きいNCAA LacrosseやNBAなどとは違い、6チーム全ての実力が高いレベルで拮抗した接戦のリーグ。正直6チーム全てに優勝の可能性があり、どこが優勝しても驚きは無い、と言うのがボトムラインだが。今日の決勝はChesapeake-Long Islandという、2001年の第一回大会決勝、02、03、05と過去4回実績のある伝統のカード。10年間に渡りお互い犬猿の仲。これまでは2勝2敗。昨日の2試合を見た限り双方非常にコンディションはいい。好試合に期待。

いたる@13期

2010年8月21日土曜日

MLL 2010 準決勝、決勝 Preview

現役の皆さん初戦勝利おめでとう!引き続きがっつり楽しんじゃって下さい!こっちも引き続きNever graduate精神で楽しく応援してまっす。(先日OBMLでも紹介した、アホで熱いOBファンの例...ESPNのCMより。プレーヤーに会いつつ最前列で応援したいあまり...)

さて、あと数時間で今年のUS Lacrosseシーズンの集大成、MLLのChampionship Weekendが始まる。先駆けて、いくつか今シーズンのリーグ戦のレビューと、Inside Lacrosse PodcastでのQuintによるPreviewの紹介(リンク)。ESPN2では準決勝一試合と決勝が放送されるっぽいので、DVD録画して梅ちゃんに送っときます。

1. リーグ戦振り返り

●WLCイヤーの今年はいろんな動きがあった。2連覇を成し遂げたToronto Nationalsが、NLLの疲れを回復しきれず、チームとしてのバランスを失いシーズン当初から大コケ。ボロボロのシーズンに(3勝9敗)

●多くの主力選手が残り、ドラフトでのピンポイント補強もハマったBoston CannonsとDenver Outlawsがシーズンを通して手堅く勝ち(それぞれ8勝4敗)、1位、2位でプレーオフ進出

●シーズン当初にスタートダッシュを見せ、ドラフト補強も巧く行き、初のプレーオフ進出を決めるかに見えたChicago Machineが終盤失速...(元地元ファンとしては残念)

●比較的豊作だったNCAAからのルーキー組が、早速活躍(Duke-ChicagoのAT Ned Crotty, Duke-BostonのAT Max Quinzaniを筆頭に、JHU-ChesapeakeのMF Kimmel, Notre Dame-TorontoのG Scott Rodgersなど、期待通りの活躍を見せた)

●無名選手だったUMBC-Boston練習要員-ChesapeakeのMF Peet Poillonが大ブレーク(41ポイント)

●Virginia 06-BostonのMatt Poskayがクリースの魔術師として大活躍。45得点で得点王+MVPに

●シーズン後半、Team USA/Canada組が不在&疲れて失速する中、選考から漏れた燃えるAT Long Island LizardsのMatt Danowski (Dino)がMVP級の活躍でチームのプレーオフ進出に貢献

●TorontoのBrodie Merrillが引き続き世界最高DFの名に恥じぬプレーを見せ、5年連続のDefensive Player of the Year受賞

2. 準決勝、決勝プレビュー

準決勝はBoston Canons vs Chesapeake Bayhawks、Denver Outlaws vs Long Island Lizards
いくつか、QuintのPodcastで面白いと思った/印象に残っているコメントを紹介

例年、準決勝の方が決勝よりいい試合が多い

過去3年間の準決勝6試合全てが1点差の名勝負。練習時間が短くほぼ毎回ぶっつけ本番で望むリーグ戦と違い、2週間のコンディショニング+準備期間を掛けて、特定の相手に向けて十分に対策を練って臨む試合。準決勝の次の日にこれまたほぼぶっつけで挑む決勝と比べても非常にレベルの高い試合になる傾向。

(この点、やはり双方のチームがきちんと準備をして、本来の実力を出し切ってがっぷり四つに組み合った場合、やはりどのチームも実力的には伯仲しているということ。「混戦と接戦、試合の最後まで、シーズンの最後まで勝敗が分からないことこそが最高のexcitementを生む」という哲学に基づき、ドラフトで下位チームから指名権を与え、リーグ全体での戦力均衡を目指すという典型的アメリカのプロスポーツのアプローチが成功しているとも言える。まあ、その分決勝が粗くなっちゃってるのが改善の必要な点とも言えるけど...)

Boston-Chesapeakeの見所

●Boston AT Matt Poskayが凄い。元々Virginia時代はMFだったが、クリースでの才能を開花させ、ATの得点源として大爆発。昨シーズンは癌と戦い、克服しての復帰。右しか使わないが、カットの上手さと早さ、リバウンドの反応の異様な上手さにより得点を重ねる。またの名を"King of garbage" (Garbage goal、すなわちゴール前のリバウンドやルーズボールをひょこっと押し込むゴールの王様。ゴミゴールの王。一点はどんな形であれ同じ一点なので、名前とは裏腹に最高に価値のある称号。)

●Bostonの看板は何と言ってもPaul Rabil。彼が確実に4-5ポイント取れると大体勝てる。左に抜いて点を取れるかが鍵になってくる

●ChesapeakeはKyle Dixon, Peet Poillon, RookieのKimmelを要するMFは厚くて強い。若干影の薄いATがどこまで頑張れるか

Denver-Long Islandの見所

●Long Island シーズン後半5試合でのDino (Danowski)の凄さ。ブレーク状態での得点力は、ロングシュートも含めて間違いなくリーグ最強

●Long IslandのAT 2毎看板、Dino-Zack GreerのDuke 08コンビが凄い。Dinoの超アグレッシブなフィードはturn overに繋がる可能性のあるhigh-risk high-returnなプレー。ところが、CanadianのZack Greerが冗談抜きで全部キャッチしちゃうのでワークしている

●Denverは、エースBrendan MundorfがWLC以降明らかに疲れて失速している。どこまで持ち直せるか

●DenverはMFの柱、Max Seibaldが活躍するためにも、他のMFがどれだけやれるかが鍵になってくる。Syracuse 09優勝の立役者で元ATのDan Hardy、34歳のベテランで高校教師のBrian Langtry当りがどこまで活躍出来るか

●Long IslandのDFはScuderi, Plancoを要し、強いATを封じるという意味では最強。DenverのAT 2枚看板、Team USAのMundorfとWesterveltを封じる可能性がある

●一方で、LIのDの弱みは、そのアグレッシブさ故のファウルの多さ。諸刃の剣。特にDenverはMLL最高のEMO成功率を誇るため、危険

その他

●ジュニアレベルの試合から、NCAA、MLLとなっても変わらないのは、得点機会が多く、ポゼッションが極めて大事なラクロスというスポーツに於いて、勝負を分けるのは結局Face offとGround ballという点

●金曜の夜は練習が一般公開される。ジュニアの皆は出来れば試合だけじゃなくてこっちも見に行くべし。選手たちとよりオープンに話したりサインを貰ったり出来る上、練習を見る事が非常に勉強になる。時として、試合よりも練習を見る方が勉強になる

いたる@13期

2010年8月16日月曜日

Rusty Gate Check

今月号のInside LacrosseでのSkill講座は、Chesapeake BayhawksのDF Kyle HartzellによるLong stickの超かっけえチェック、Rusty Gate Check。総合格闘技(もしくは立ち技系でも)で言うところのスピニングバックブロー。OFの技術だけじゃなく、こういうDFの技術もフィーチャーしてるところが素晴らしい。そしてこの技術はDFでもハイライトを狙える派手な技。

Youtubeの動画リンク。カッコよすぎて鼻血出そうになった。Team USAのRyan Boyleを一撃で仕留めている。やられたBoyleはMLLのハイライトにカモられた映像が繰り返し流れることをその場で理解し激しく凹んでいる。相手のスティックとボールがスパーンと弾かれ、クルクルと中を舞う様がまた何とも残酷でいい。

LSMFとDFに分けてのHow toが記事に載ってたのでご紹介。なるほどなーと思うのが、決してただの派手な、目立つための技ではなく、純粋に勝つための試合での一つの純粋な技術として見ている点。反復練習とDisciplineでのみ可能になると語っている。そして、一発やって終わりではなく、ちゃんと当たらなかった場合も継続してDFするために足を動かしてポジショニングを維持しながらやること、やる場所を限定する事(ゴール付近ではやらない)など、非常に実践的なことを語っている。(記事のリンク)技そのものは「大技」で相手の意表を付くものだが、同時にリスク/ダウンサイドを最小化する考え方。

脚力、トップスピードを維持しながら体軸を安定させて上半身とスティックを鋭く回転させる体幹の強さ、スナップを効かせながら、スピードと遠心力でかなりの重さになるスティックをボトムで支えるリストの強さなどを考えると、この技を出せる人は限られるか?東大でも身体能力高くてある程度熟練したDFの選手なら練習次第で現実的に試合で出せるレベルはなるはず。特に日本の大学の選手相手であればなかなかこういうプレーには慣れてない/準備出来てないケースも多いはずなので、逆に成功できる可能性は高いかも。しっかり足を動かし、体軸を安定させた上で、コンパクトに、スナッピーにパチッ!と。Running shootと同じように右足でキックして、左手を逆に振り抜く。上半身と顔はほぼ真逆を向くところまで回転。

ちなみに、Rusty gate = 錆びた門。転じて大振りのこと。

2010年8月9日月曜日

Team USA post game interview: Matt Striebel (MF), Max Seibald (MF), Mike Pressler (HC)

まだまだWLC関連記事。これがラストかな?

既に大会が終わって2週間が経ちますが、最後の最後まで味わい尽くす/しゃぶり尽くすべく...Inside Lacrosse Podcastで決勝戦終了直後のUSA 2選手( Matt Striebel (MF), Max Seibald (MF))とHead coachのPresslerへのインタビューがあったので紹介。(リンク

マンチェスターに遠征していた皆にとっては生で見たあの決勝の裏舞台を知って二度おいしく召し上がって頂き、そうじゃないメンバーはDVDを見る上での予習用&感情移入用に。

3人とも優勝直後で感極まっていた部分もあってか、かなりがっつり本音や裏事情を話してくれている。Lacrosse関連のインタビューでここまで裏事情を明かし、感情や想いの部分をかいま見る事が出来るものはあまり見た事が無い。いろんな苦労やドラマがあったことを改めて思い知らされる。聴いていて思わず感情移入して涙腺が緩んでしまった。また、前回優勝を逃したことを受け、アメリカのラクロスが大きくアプローチを変えたことなど、裏事情が紹介されており非常に面白かった。選手としても、コーチとしても、General Managerとしても学べる事の多い内容だと感じた。(もっと言うとラクロスを越えたあらゆる分野や、人生そのもの、というより広い意味でも。)

インタビューは3人別々に行われているが、3人まとめて僕個人が印象に残っていること、感じた事を箇条書きでまとめると、以下。

1. WLCの重要さ、国を代表して戦うことの重要さ

3人とも口を揃えて、World Championshipの重要さ、国を代表し、星条旗を背負って戦う事の誇りと重さを語っていた。高校、大学、プロと全てのレベルで優勝を経験して来たラクロスエリートのStriebelでさえ、このWorld Championshipは特別な意味を持つ、最も重要な試合だと。

そして今回初めてWLCを経験したSeibaldも、試合をしている最中の雰囲気から、NCAAやMLLとは違う特別なものを感じたという。「決勝の前にチーム皆で集まり、一人一人が立ち上がって試合に懸ける想いを皆の前で話した。皆の想いが伝わり、感極まって涙を流すメンバーもいたし、自分自身も話す際に、感情が込み上げて来て言葉に詰まってしまった。これはNCAAの決勝でもMLLの決勝でも経験した事の無いこと」。

2. 今回の大会でCanadaに勝ち、優勝を取り返すことの重要さ

Striebelのコメントが非常に印象的だった。「前回のWLCの決勝でCanadaに負けた後、自分は悔しさの余り貰った銀メダルをそのまま宿舎に置き去りにし、持ち帰らなかった。USのロゴの付いたユニフォームやギアもすぐに友人やファンに上げてしまい、2006年のWLC関連の物は身の回りに一切残さなかった。それだけ悔しかったし、優勝を逃したという事実を受け入れられなかった。しかもその負けは、Canadaが奇策でスルッとまぐれ勝ちしたなどではなく、真っ向勝負でやってボコボコにやられたもの。フィールドラクロスの本家本元であるアメリカにとって、World Championshipは絶対に優勝しなくてはいけないもの。」

3. 如何に批判に晒されて来たか、如何にプレッシャーが大きかったか

Pressler曰く、開始当初からいろんな批判に晒されて来た。メンバー選びや戦術、練習試合でDukeやNCAA選抜に負けた時。今回の大会は正に優勝を取り戻す事が至上命題だったし、もしそれが出来なければ自分たちは否応無しに『史上最悪のUS代表』のレッテルを貼られることになっていた。決勝はESPNでアメリカ本土で全国放送され、多くのファンの注目にさらされていた。もちろん試合中はいちいちそれを口に出す事は無いが、プレッシャーにならなかったと言えば嘘になる。最後の最後は本当に紙一重。今勝者としてインタビューに答えられて本当に良かった。

4. 前回大会から大きくやり方を変えた

Striebel: 「06年に優勝を逃したことは、USラクロスの歴史の中で、後から振り返ると本当に貴重な経験だった。そこから全てを見直し、深く自省し、ベストなやり方は何かを考え、仕組みそのものを大きく変えるいい機会になった。そういう意味で、06年と10年のWLCはTeam USAにとって双子というか、陰と陽の対を成すセットの関係。

前々回(02年)の大会はMLL立ち上げ直後という特殊な状況で大学生/卒業直後の若手中心のチーム。CanadaやAustraliaから「今回のUSは弱いからカモれる」と言われ、見返してやろうと挑戦者としてがむしゃらにプレーし、結果として優勝する事が出来た。

一方、前回(06年)のチームのメンバーは、紙の上では、名前の凄さで言えば、恐らく史上最高。Powell三兄弟に、Kyle Harrison、誰がどう見ても、世界最高のラクロス選手を上から順に集めた文句の付けようの無い豪華メンバー。ところが、結局、最後の最後までチームとして”Gelしなかった(まとまって、有機的に機能しなかった)”。ただ単に有名な選手/強い個を集めればいいって訳じゃないと言う事が身に染みて理解出来た。」

Pressler: 「それを踏まえて、全てをゼロから設計し直した。選手の選考基準、選考プロセス、大会までの準備の仕方、戦術にいたるまで。とにかくチームメンバーとして、 我を捨て、プライベートやプライドを捨て、 USの優勝のために全てを捧げる事が出来るか。がむしゃらに頑張れるか、を基準に厳しい選考を行った。時間を掛け、トライアウトを行い、実際に努力してそれを証明した者だけを取った。

一部の関係者から『何であの有名選手が入ってないんだ?』、『なんでこんな脇役選手入れるの?』と批判されたが、それには耳を貸さなかった。(前回メンバーでスーパースターの)Ryan Powellが自分も代表に加えて欲しい、Canadaに雪辱を果たしたい、と言って来た時、『お前は本当に自分のエゴやプライベートを捨ててやれるのか?』と確認し、彼もそれに同意した」

Striebel: 「今回の選考は、精神的にも肉体的にも本当に追い込まれ、苦しい経験だった」、「今回のアプローチを試し、実際に成功したことはアメリカのラクロスにとって大きな成功体験。今後の代表チームにとっても貴重な財産を残すことができた」

5. 試合のレベルの高さ

Striebel: 「今回のWLCの試合は、過去の歴史上最もレベルの高いものだった。最も熾烈な戦いだった。 ルールがNCAAともMLLとも違い、スローな展開だったが、それでも尚、 Post Collegiate Lacrosseとしては間違いなく世界最高峰のものだった。」

6. 試合中は一つの試合として淡々とただひたすらやるべきことをやった

Pressler: 「試合が終わって初めて、この試合の重さと意味を感じ始めているが、試合中はそんな事は考えなかった。DukeやBryant大学で大きな試合を戦うのと同じ。コーチとして、その時その時に最適な選手をフィールドに送り、最適な戦術/プレーを選択させること。ただそれだけに集中して、あくまで一つの試合として淡々と戦った。」

7. 今回のTeam USの戦い方/スタイル:「軍隊式」

Pressler: 軍隊式で、あたかも大学ラクロスのように強い規律を持って戦った。コーチの自分がこれをやれと言えば問答無用でそれをやり、あれをやれと言えばそれをやる。その点、自由度が高くその場の選手の主体性に任せていた過去のUS代表とは明確に違う。それに従えないメンバーは選ばなかった。一人一人がrole playerとしてやるべきことを自覚と責任を持って、エゴを捨てて遂行してくれた。

Seibald: 今回の優勝は正に24人(控えのKevin Leveilleもメンバーの一人)の選手全員で勝ち取ったもの。そして24人全員が、 シュートを打てと言われれば打つし、キープしろと言われればキープする、 例え誰が何をやることになったとしても、一メンバーとして全く同じ事を遂行する積もりでやっていた。

8. 試合を決めた要因としての、Docの凄さ

「試合を決めたプレーは?」の質問に対し、3人が3人ともDoc (Brian Dougherty)のセーブを挙げていた。大事な場面で驚異的なセーブを連発し、チームを救ってくれたと。

印象的だったのはStriebelのコメント。「自分はDocとはPhiladelphia Barrage時代に何年も一緒にプレーした。自分は自分自身のことを相当Competitiveな(競争心の強い/負けず嫌いな)人間だと思うが、Docは更にその上を行っている。彼ほどCompetitiveな人間は見た事がない。彼と共にプレーする事で自分は選手として大きく影響を受けた」

9. 気持ちの大事さ

Striebel: WLCは、世界最高レベルのフィジカルと技術のぶつかり合い。最後に勝負を分けるのは結局気持ち。02年の若手主体のチームが優勝出来たのも、「嘗められてたまるか、見返してやる」という”Chip on your shoulder”で戦ったこと。前回負けて、今回必ず復讐してやるという気持ちが最大の勝因

10. 二試合続けて勝つ事の難しさ

Striebel: 予選のCanada戦で負けた直後の感想は「よし、これで次回までにやるべきことが全部見えたな」だった。負ける事で、慢心は一切生じず、尚の事勝ちたい気持ちが強くなった。実力が拮抗した戦いに於いて、2回続けて同じ相手に勝つのは難しい。

11. Canadian lacrosse

Striebel: 試合を見た人は解る通り、決勝は世界最高峰の戦いでありながら、Canadian LacrosseとAmerican Lacrosseという二つの全く違うスタイルによる一騎打ち。もちろんEnglandやAustraliaはいいチームだが、LacrosseのWorld Championshipは10カ国以上が実際に優勝の可能性を持ち高いレベルで鎬を削るSoccer等とは違い、いいか悪いかはさておき結局最後はUS対Canada。Canadaは本当にいい、手強いチームだった。決勝もどっちが勝ってもおかしくない試合。今後もこの戦いは続くことになる。NCAAではここ1-2年何度も「Canadian-Field hybrid lacrosse」という言葉を聴いた。Princetonで顕著なように、Canadianの選手たちがNCAAのフィールドに多数雪崩れ込んで来ている。何でそれだけ増えているかと言うと、当然それが機能しているから/効果的だから。この流れは今後も続き、強くなって行くだろう。

12. 個々人の秘めた想い

Seibald: 自分はこれまでのラクロス人生で、(彼ほどの傑出したプレーヤーで各年代のMVPを総嘗めにしてきたにも関わらず)実は一度もチームとしての優勝を経験していない。高校時代も決勝で負け、大学もCornellで決勝のSyracuse戦は最後の最後にOver timeに逆転で負け、Denver Outlawsで戦った昨年のMLL決勝もToronto Nationalsに負けて優勝を逃した。そんな自分に取って初めての優勝経験。前日にトレーナーにその事を話したが「まあ、いつも通りやりなよ。あくまで一つのラクロスの試合。普通に試合に出ていつもと同じお前のプレーをすればいいんだよ」と言われ、気持ちが落ち着いた。今改めて「世界大会覇者」の言葉を聴き、首に金メダルを掛け、これまでの一年を思い出して鳥肌が立った。

Pressler: 06年のアメリカのラクロス界はどん底だった。そして自分の人生もどん底だった。DukeのRape scandal(冤罪)でHCの職を失い、メディアに悪人呼ばわりされた。そこから長い苦しみを経て、一歩ずつ、Bryantのコーチに就き、USのコーチになり、仕事を取り戻し、プライドを取り戻し、そして再びNational spot lightの下に戻ってくる事が出来た。

いたる@13期

2010年8月3日火曜日

Team USA 2014 in Denver

Inside Lacrosseに2014年にDenverで行われる次回のWorld Lacrosse ChampionshipのTeam USAのメンバー予想が出てたので紹介。

アメリカの分析&Debate文化

もちろん基本的にはどの国でもそうだと思うが、特にアメリカで強い傾向として、どのスポーツでも、この手の予想や議論がメディアやファンの間でかなり熱く、盛大に交わされる。Debate文化、stats文化の国民性がもろに出る部分。Vegasを通じてのカレッジスポーツやプロスポーツの勝敗に関するギャンブルや、"Fantasy football"と呼ばれる、シーズンを通して自分が最も活躍すると予測する(または応援する)選手を選んで、そのパフォーマンスで友達とバトるという遊びが異様な盛り上がりを見せる。

ESPNでも、筋金入りのスポーツ馬鹿(でも賢い)のアナリストがゴリゴリに熱い議論を繰り広げる。「このチームにはこの要素とこの要素がある、絶対こっちの方が上だ」「いやまて、でもそのチームにはこういう弱点がある。逆に相手チームにはこういう好条件がある。こういうシナリオになったらわからんぞ」「いやでもXX年のあのチームを覚えてるか?ああいう例もあるからわからんぞ?」などなど。で、またそれがクソ熱くて面白い。一つのシーズンや大会や試合がある度に、何ヶ月も前からガンガン議論を重ねて盛り上がり、試合で盛り上がり、終わったらさらにそれを肴に感想を言い合ったり、分析してあーだこーだと議論して盛り上がる、という、preview-game-reviewの三度味わうスタイル。で、普通のオッサンや兄ちゃんたちはビール飲みながらそれで大盛り上がりするっていう。

(MMA[総合格闘技]では、更にここにPRIDE/Dream煽りV的な、伏線としてのtrash talkや背景/思い/ドラマがflavorとして注入されることで、ファンの感情移入を促し、更に舞台を盛り上げる)

記事のリンク

予測

以下、元JHUのAll American GoalieでMLL経験者、現ESPNの解説者、燃える頭脳派イケメン、Quint Kessenichの予測。

ATTACK
Ned Crotty (Chicago, Duke '10)
Mike Leveille (Chicago, Syracuse '08)
Brendan Mundorf (Denver, UMBC '06)
Steele Stanwick (Virginia '12)
Rob Pannell (Cornell '12)

MIDFIELD
Paul Rabil (Boston, Hopkins '08)
Max Seibald (Denver, Cornell '09)
Kevin Buchanan (Boston, Ohio State '08)
Shamel Bratton (Virginia '11)
Mike Kimmel (Chesapeake, Hopkins '10)
Peet Poillon (CHesapeake, UMBC '09)
Zach Brenneman (Notre Dame '11)
Jovan Miller - def mid (Syracuse '11)
Chris Lapierre - def mid (Virginia '12)
F/O - RG Keenan (North Carolina '14)

DEFENSE
Ryan Flanagan (North Carolina '11)
Kevin Ridgeway (Notre Dame '11)
Chad Weidmaier (Princeton '11)
Joe Cinosky (Chesapeake, Maryland '08)
DJ Driscoll (Chicago, Notre Dame '05)
Joel White - LSM (Syracuse '11)

GOALIE
Scott Rodgers (Toronto, Notre Dame '10)
John Galloway (Syracuse '11)

見て思う事

さすが長年第一線でプレーし、プロとして冷徹にラクロスを見て来た彼だけあり、極めてdown to earthで筋のいい予測をしているように見える。Crotty, Mundorf, Rabil, M Leveille, Seibaldなど、ここ数年のNCAAのMVP級のメンバーで今年のTeam USAの若手だった選手たちが4年後にベテラン大黒柱としてバチッと土台を固める。

そこに、Stanwick, Bratton, Kimmel, Scott Rodgersなど、今年来年のNCAAの柱の選手たちが加わる形。Poillon, Kevin Buchananなど、Up and comingで既にMLLを引っ張る活躍を見せているが、「長年掛けて積み上げられてきた経験、証明された実績」という意味での実績不足で今回のWLCの選考を漏れた選手も入っている。

Syracuseの新4年、Jovan MillerをDFMD、同じくチームメートのJoel WhiteをLSMとして手堅く入れているところなど、さすがによく見てらっしゃるなー!と唸ってしまう。

また面白いのが、MFのBrenneman, DFのRidgeway, GのRodgersと、今年のNotre Dameの準優勝メンバーが3人も入っている点。そしてそれがさほど違和感無く見える点。3人とも確かに個としてサイズがあり、身体能力も高く、技術も手堅い。正にTeam USA向け。それだけ今年のNDは何だかんだ言っていいチームだったとも言える。

全体的にかなり大きく若返りを図ってくるという予測。しかし、さすがに長年プロの解説者として多くの選手たちの成長と変遷を見て来た彼だけあって、かなりしっかり4年後に各選手がどうなっているかというポテンシャル織り込みで見ている(単純に今凄い選手じゃなくて)。

実際今後4年で誰がどうなって、最終的にどんなチームが選ばれるんだろうか。実際には恐らくこのうちの何人かはMLLでパッとせずに散って行ったり、全く予想もしていなかった選手が急成長して食い込んでくるなど、いろんなX factor(想定外の要素)が入ってくるはず。個人的にはATのStanwick (Virginia)やPannell (Cornell)は、確かに素晴らしい選手だが、サイズや爆発的なスピード/パワーという「素材」よりも、むしろ技術や賢さや老獪さで戦っている選手なので、果たしてtop of topの競り合いになった時に本当に残ってくるかね?という気もする。ちょっとNCAAの活躍に引っ張られてbias掛かってないか?評価インフレしてないか?と。

結局MLLで最後に抜きん出てくる/Team USAに食い込んでくるのは、(素材次第の要素の強い)前者が元々備わっていて、(trainableな)後者を限界まで磨き上げてきた連中なので。例えばNCAA時代の注目度以上にMLLに入ってから大きく花開いた今大会でのTeam USAのWesterbeltなんかが典型。Ryan Powellもスキルが際立つが、実は前者が圧倒的に凄い(あのでかさであのspeed/agilityで動けるATって実はほとんどいない)という前提がある人なので。

やっべ、なんか、考えただけでワクワクして鳥肌立って来た...ね?おもしろいでしょ?こういうの議論したり考えたりするの。特に一度NCAAやMLLのことを少し知ったり、実際に今回のWLCを見たりすると、手触り感が出て来て尚。でまたそれに乗っかってファン達が、「ちょっと待てーーーい!何でXXが入ってないんじゃい!」とか「いやーXXは無いでしょ」と熱い議論を繰り広げている。(建設的で鋭いものから、ただの野次馬コメント、批判的なものまで様々)いやー、こういうのがホントたまらんですよね...といってどんどんハマって行く訳ですな。

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後日追記

ただ名前だけ並べてもよくわからんかってことで、出身校と卒業年、MLL選手の場合は所属チームを併記してみました。僕自身もよく理解してない選手が何人かいたこともあり。しかし、こうやって見ると、10年に一度の豊作年と言われる来年の4年生(Class of 2011)が如何に選手層が厚いかが解る。来シーズンのNCAAは必見のシーズンということが改めて感じられる。また、必ずしもVirginiaやSyracuseなどの超名門校だけでもなく、UMBCやNotre DameのDF/Gなど、「上位5校ではないが毎年そこそこ強い」学校でもいい選手をポツポツと輩出してるということも見て取れる。

いたる@13期

2010年8月1日日曜日

Under Armour High School All America 2010 Review (2)

引き続き Under Armour High School All America 2010。DVDは今週か来週か再来週くらいに梅ちゃんに送るだす。(WLCの決勝とUS-MLLは、すまぬ。先週一週間出張で送ってなかったので、明日くらいに送るっす。)

マニアック度はグッと上がるように聞こえるHigh School All Starだが、恐らくこのメンバーがそのまま3年後、4年後のNCAA All Americaになり、この中の多くがMLLにドラフトされていくことになるはず。Tewaaraton (MVP)もこの中から出るだろうし、8年後には確実に誰かがUS代表になってくるはず。正に将来のエリートの見本市。

以下、試合の見所

試合開始前、最初の注目選手紹介のシーンでの各選手のstick trickがsmoothでかっけえ。今の若い選手たちはPowell兄弟の流行らせたスケボー的なと言うか、剣玉的なと言うか、X-sportsとしてのLacrosseに存分に触れて育った世代。Youtubeで小学生の頃からMikeyのsickな技に酔い、真似しようとしてきた連中。この手のstick trickが本当に上手い。面白いのがLong stickの選手でさえ軽々と滑らかにspin trickを決めている点。選手の紹介での「2歳からLacrosseをプレーしてた」というコメントが印象的。

前半

試合では、Northが黒、Southが白。

South 2点目、#14 Frederick (Ohio State入学予定)のXからの1 on 1、Jump shotが巧い。

1Q残り2分でのSouthのクリア、GoalieのGreg Dutton (Ohio State)のクリアでのダッジ力とstick skillの高さ。ほぼショートスティックの動き。左手にサクッと持ち替えてビシッとパス。short stickのfield playerをある程度若い頃に経験してからGoalieになるとこういう副産物が。

South 6点目、Duke commitの# 9 Jordan Wolfが今年卒業した得点王Max Quinzaniを彷彿させるquicknessとシュートを見せる。jumping over hand shotで高低差のある軌道が効果的。彼は間違いなく主力がごっそり抜けた来年以降のDuke再建の鍵を握ることになるはず。

後半

3Q North 10点目、MF #7でPrinceton commitのThomas Schreiberのトップからのdodgeのスピードとその後のバックハンドショット。でかくて速くて巧い。間違いなく一年目からPrincetonの核になってくるはず。

3Q以降登場したNorth #22のGoalie, Eric Shneiderが66%という高いセーブ率に恥じない好セーブを連発。特にゴール前での1対1で勝負強さを見せる。Goalieの層が薄いJHUでの早くからの活躍が期待される。

South AT #9 Jordan WolfがまたしてもXからのスピードある1 on 1で3得点目。彼のスピードは本物。Dukeでも1年目から活躍の予感。

4Q South 9点目#17-#1 Quint Haley (Maryland committed)の美しいfast break. HaleyのOff ballのDの裏を取る動き、ゴール前での落ち着いた得点など既にベテランの風格。

North 11点目、Syracuse #4 4年MF & Iroquois Nationals代表で、プレー中の姿や動きが優雅でカッコ良くて有名なJeremy Thompsonの弟、Albany commitのMiles Thompsonのリバウンドをゴーリーからサクッと奪っての得点が巧い。このAnticipationと事前のポジション取り。弟の彼もJeremyと同じ三つ編みの後ろ髪を垂らし、やっぱり動きがカッコいい。なんでだろ、滑らかだから?なんか、Styleが出てるんすよね。カッコいい匂いが漏れ漂う。これがX-gameのスノボやスケボーのfree style/slope styleやone-makeだったら彼が優勝する気がする。(ちなみに兄貴のJeremyは今月のInside Lacrosseで、最もカッコいい選手に与えられるSweetewaaraton賞を受賞...やっぱ皆カッコいいと思ってんだな!と思った次第)

更に12点目、またしてもThompsonの1 on 1からのシュート、そのリバウンドを片手で拾ってbehind the backでの得点など、MLLでハイライトになるレベルのプレーを見せる。信じられん。兄貴やIroquoisの先輩のCody JamiesonがいるSyracuseに行くと思われていたが意表を付いてAlbanyに行くという意思決定にラクロス界に衝撃が走ったと言う。結構兄弟って意外とライバル校に行ったりする。なんか気持ち悪かったり、ライバル意識が働いたりするんだろうか。

13点目、MF #5 Mark Cockertonのシュートもスローブレークから意表をつくタイミングでのシュート。スクリーンを使っての速くて正確なシュートをゴール角に突き刺す。本日3点目。彼も頭一つ抜けた印象で目立っている。Canada出身のMF。去年の主力がフルに来年、再来年と残るVirginiaのAT/OFMFの層をさらに厚くする事になるはず。Cockertonは4得点でこの試合のMVPを獲得。

終了間際のNorth 17点目、CathersからThompsonというIroquoisの従兄弟同士によるno look pass & behind the back shot。こりゃもはやプロの世界...彼らのstick skillはやはりこの高校生トップレベルのメンツの中にあっても際立つ。

Inside Lacrosseの10 who impressedの記事。

Casey Ikeda選手を将来の日本代表候補にどうでしょ?

最後にオマケで一点。SouthのDに#5 Casey IkedaというPensylvania出身の選手がおり、Marylandにコミットしている。名字と見た目から判断するにLacrosseでは珍しくJapan backgroundっぽい。試合前から注目選手に挙げられており、今回の試合でもDにクリアにGBにと大車輪の活躍で目立っていた。身体能力も高く、サイズもあり、stick skillに加え、賢い選手だなという印象。ぶっちゃけDFでは最もimpressiveだったんじゃないだろうか?

機動力とstick skillがある一方で、サイズ(体重)とパワーが若干落ちる(もちろんMarylandでがっつりweight trainingを積んでtrainerによる食事管理を受ける中で一回り大きくなると思われるが)ので、直感的にボトムではなくLSMで出るんじゃないかという気もする。

4年後にちょうど卒業することになり、さすがにその時点でUS代表に選ばれる可能性は低いだろうから、もしeligibleなのであれば日本代表に引き込むっていうのはありかな?と思った。(完全に素人の思いつき以外の何者でもないですが...見当違いなこと言ってたらごめんなさい。)EnglandやItalyは実際にその国の国籍はなくても2世、3世のNCAA選手/卒業生を出場させており、即席で実力を底上げすると共に、本場の風を吹き込ませる手段として有効活用している。バスケでは一昔前の高橋マイケル(元いすゞ)の例など。総合格闘技のBrazilian, Lyoto Machidaを日本人とカウントするみたいな。

彼を土台にしてMarylandと日本のパイプを作っていけば将来の日本のラクロスに間違いなくプラスになると思うし。Marylandのコーチは先日7年契約での就任が決まった若き頭脳派HC Tillman。長期的な関係を築くには持ってこいな気もするので。Marylandは元々Australiaから選手を輸入する伝統があり、今年は卒業直後のMF Adam SearがAUS代表で出ていた。そういう意味ではある程度理解もあるはず?

ハーフで3世くらいだと日本語一切話せなかったりして、口頭でのコミュニケーションの重要なDだと難しいかな?LSMやるならまだピンポイント使いし易い?そもそもUSとの差が大きいstick skillの比重が相対的に低いDだとあんましプラスにならないか...

いたる@13期

Under Armour High School All America 2010 Review (1)

さて、今回はESPN Uで先日放送されていた、高校オールスター、Under Armour All AmericaのDVD。これまでHigh Schoolの話はあまり触れてこなかったが、今後も機会があれば少しずつ紹介出来ればなと思ってます。

Under Armour All Americaとは

今年で第5回を迎えるUnder Armour High School All America Lacrosse(公式HP)。 その年に卒業したばかりで、秋に各強豪校に入学する、全米+カナダから選抜された44人の高校3年生が集まり、北軍と南軍に分かれて戦うオールスターゲーム。

バスケのMcDonald All Americaが先駆け。バスケの方は既に完全にNBAへの登竜門としてのポジションを確立し、そこに選ばれることが高校生を始めとしたジュニア選手たちの大きなステイタス/目標となっている。

それと同じコンセプトでUnder Armourをスポンサーとして始まったイベント。第一回から大成功で回を重ねるごとに注目度を増している。次の年以降の大学のスター選手を知る場でもあり、各大学のコーチやファンも注目している。実際に今年上位校で活躍した1年生のほとんどが、そして今年のMLLドラフト上位指名された4年生のほとんどがUAAA出身。今年のFinal Fourに出場した4チームのうち、実に27人がUAAA出身者。それだけに選手たちは自分をアピールしようと必死。

東大の現役選手の皆に取っては、(寄せ集めチームによるshow case eventという性質上)チーム戦術を学ぶ教材としては機能しないが、高い個人技術を学び、自分よりも若くて巧い選手を見て刺激を受ける/「クッソ4年間の間に絶対こいつら超えてやる!」とやる気の炎を燃やすニトロに使うという意味では役に立つかも。(まあ、後はただのLacrosse/NCAAファンとして楽しみつつ、後々の有名選手を理解するために?)

全体を見ての感想

試合を見終わって受けた印象をいくつか。全部で5点。

1. 大学入学前の時点で既にかなり巧い

当然の事ながら、全北米から集められたその学年の上澄み。はっきり言って、上手い。高校生としては信じられないくらい、上手い。感覚で言うと、Div 1のトップクラスで活躍してる選手とさほど大きく変わらないようにも見える。Div 1の中〜下位校の主力選手、上位校の脇役選手よりは間違いなく上という感じ。もちろん体も出来てないし、粗さも目立つ。変なミスもちょくちょくある。ちょっと強引過ぎたり、プレーの選択が未熟だったりもする。ただ、全体を通してのstick skill、そしてLacrosseの理解/経験という意味では非常にレベルが高いと感じる。やはりガキの頃からこのスポーツに触れてきた経験の差、周囲を取り巻くラクロス文化/コミュニティの深さを感じさせる。強豪校に入り、一流のコーチの下バチッと規律と戦術を教えられる事で、一気にNCAAトップレベルの選手になるのも頷ける。それだけ、素材としての土台がしっかりしている。

2. 勝ちパターン/得意技を明確に持ち、使ってくる

全体的に基本がしっかりしているのはもちろん。ただ、見ていると、「Xからの1 on 1では絶対に点を取る」「速攻でのロングシュートは超鉄板」「ground ballからのクリアでは絶対シュートまでfront courtでOFに絡む(long stick)」など、長年の経験から自然淘汰されて残ってきた、「誰にも負けない自分の得意技」「必殺技」「鉄板ギャグ」みたいなものを持っている。そしてそれらの効果的な使いどころをよーく解った上で、実際にそれを使ってくる。これもまた質の高い、competitiveなラクロスを若い頃からやってきたが故のナチュラルな知恵/野生の強さの一つだろう。

3. Gameとしてのラクロスをよく理解してるな

試合終盤のゲームのペースや流れのコントロール、行くべきところと待つべきところの明確で戦略的な使い分け、点差に応じたペース配分など、寄せ集め即席チームであるにも関わらず、チームとして試合巧者である点が非常に際立つ。これもまたやはりガキの頃から接戦を繰り返し、またNCAAやMLLを見る中で当然の事/共通言語として身に付けて来たリテラシーなんだろう。(恐らく他のスポーツを見たりやったりする中でも磨かれて来たものだろうから、一概にラクロスリテラシーが高いというよりも、アメリカ/カナダのスポーツリテラシーが高い、という要素の方がむしろ大きいのかもしれない。そういう意味では日本でガキの頃からサッカーやミニバスのエリートでやって来た子達も似た感覚を持っているはず)

4.「今時」のプレーをするなー

単に上手い、という部分を超えた、プレーの”style(流儀や見た目)”の部分の話。ボールの投げ方やクレイドルの動き一つ取っても感じられる。Swim dodgeやwing dodge, step backしながらのフィード、XでのFinalizerやジグザグの動き。90年代には余り見られなかった、新世代のoff-set & curving head eraの独特の動き方を皆当然のようにやっている。MLLだとまだclassicなプレーの選手がいる中で、彼らは完全にガキの頃から新しいstick technologyとそれに基づいたプレーを見て育って来た選手。今のNCAAでも既にそうだが、それを前提とした新しいゲームに徐々にシフトしていくのを感じる。

5. 鮮明な地域性

サッカーのworld cupでよく見られる国ごとの文化を表したプレースタイルの違い。それに近い、エリア別のlacrosseのスタイルの違いが如実に感じられる。CanadianやIroquoisの選手を多く含むNorthのATのスティックスキル。Behind the back, no lookが極めてナチュラルにバンバン飛び出す。シュートはice hockeyとoverlapするリストを使ったunderhand shotが多い。

対してSouthは伝統的なデカいathleteが目立つ。手堅い保守的なD、機動力のあるrunning back系MF。クリア力。キャノンショット。オーバーハンドでの愚直なバウンドショット(でも効果的)。

大学では各エリアの選手が各大学にドラゴンボールの様にバラバラに散っていくため、この色は相対的に薄れてしまう。(もちろんSyracuseの北とJHUの南などのある程度伝統的な色はあるが、そうは言ってもどのチームも最低限の持ち駒のポートフォリオを揃えてくるので。特にここ数年competitiveさが増す中で、その手の色は更に薄れつつある。)

一方で、高校までは完全に地元のlacrosseのカラーでやってくることに。従ってlacrosseが本来持つこの手の地域性/コミュニティ性が如実に感じられて非常に面白い。

Roster

Rosterはこちら

大学別の人数

大学別にUAAAの選手を何人取っているのかというのが毎年話題になる。その学校の数年後の強さに直結するため。もちろん無名の選手が大学入学後大化けしたり、逆に鳴り物入りで入学したsensational rookieが怪我やチーム戦術とのフィット等の理由でパッとしないまま噂先攻で終わってしまうケースもあるため一概には言えない。

が、一方で、大学から始める日本と違い、既に5年10年のキャリアを積み、過酷なcompetitionを経る中で多くのメディアや指導者の眼に晒される、実力とポテンシャルを十分に証明した上での人買い市場。基本的には大学で行われるのは最後の上乗せとアジャストの部分。原石を買って磨くと言うよりは、完成品を買って来てシステムに当てはめる作業という意味合いの方が強い。従ってやはり高校での有力選手をどれだけ取れたのかは極めて重要な指標。

(であるが故に、NCAAのHCとしての能力の中でリクルーティング力が大きな比重を占める事になる。また、それを考えると、UAAAをほとんど取れていないにも関わらず毎年結果を出していたTambroniのCornellが如何に凄かったが解る。彼の場合は実際の実力に比べて評判が落ちる選手、ポテンシャルの高い選手、努力する能力と賢さを持った選手を集め、入学後の指導と競争で強豪に仕立て上げるアプローチ。個人的には大好きだし、全面的に応援したい。その雑草魂/underdog spirit。)

試合でも紹介されるが、今年はNorth Carolinaが7人でトップ。続いてMarylandの6、JHU 4, Syracuse 4, Duke, Harvard, Princeton, Virginia, Ohio state 3, Notre Dame 2。やはり強豪校と学問名門校が多い。North Carolinaが新HC Joe Breschiの下、リクルーティングでも力を発揮しつつあるのが解る。恐らく彼には今の若い選手を惹き付ける何か、恐らくカリスマのような物があるんだろう。就任3年目で着実に土台となる選手層を積み重ね、長期的な強豪校への地盤を確実に固めつつある。

次回以降、試合での見所を紹介。

いたる@13期