2010年6月6日日曜日

MLLの紹介 & ドラフト選考クライテリア

一昨日通勤中の車で聴いていたInside Lacrosse Podcastで、解説者のQuint KessenichがMLLのドラフトで各チームのHead Coach、General Managerたちはどういった点に注目して選手を選ぶのかという話を掘り下げて語っていたのでクイックにご紹介。今のMLLを理解する上でも非常に学びの多い話だったので。(リンク

ちなみに、World Championshipを理解する上でもMLLの理解は避けて通れない。現時点でのLacrosseに於ける世界最高の舞台はMLL。今日現在のRosterを見ると、Team USは26人中23人がMLL。Team Canadaは同じく26人中15人がMLL(うち13人がCanadian主体、インドアスタイルのToronto Nationals)。実質的にWorld ChampionshipはMLL USA all star vs MLL Canada all starと言っても過言ではない。

大前提としての、MLLの理解

Major League Lacrosse。世界初の「アウトドア」プロラクロスリーグ。今年でちょうど10年目の節目を迎える。ラクロスには長らくインドアのプロリーグ(NLL: National Lacrosse League)はあったが、フィールドはその競技特性からプロ化は難しいだろうと言われていた。そんな中、競技人口の拡大、人気の高まりに背中を押される形で、元All AmericanでWarrior社長のDavid Morrowらによって設立。BostonやWashingtonなど東海岸の6チームからスタートし、2006年には人気の高まりにより、ChicagoやDenverといった中西部、LA/San Franciscoの西海岸も加えた10チームに拡大。その後2008年の不況で再び6チームに落ち着く。(どちらかと言うと布教としての意味合いが強かった西海岸のチームは当然解散したが、面白いことに、コアで根強いファンが意外といたChicagoとDenverでは両チームが生き残り、根強い人気を保っている。Denverのホームスタジアムの盛り上がりはもしかしたらMLL一かも)

「プロ」とは言っても当然NBAやNFL、MLB、NHL(アイスホッケー)といった4大プロスポーツと比べると当然大きく規模、人気、歴史の面で遅れを取っており、まだまだ発展途上という感じ。

シーズンも5月中旬から8月中旬までの4ヶ月間と短く、レギュラーシーズンも1チーム12試合。多くの場合、地元の中規模の競技場(Chicago Machineの場合Major League Soccerと共有、Boston Cannonsは地元Harvard大学)をホームスタジアムとする。観客動員数は、どうだろ、数千人って感じかな?江戸陸くらいの競技場のメイン観客席一面が3分の1から半分埋まればいい方。TV放映に関しては、08年までは毎週一試合を全国ネットのESPN2の平日の昼間の時間帯に流していたが、09年以降は全試合をWeb baseのESPN3で、4-5試合をテレビのESPN2で流す、といった状況。イメージ、ラクロスを経験していたコアなラクロスファンがファン層。NCAAのFinal Fourに比べるとラクロス出身者以外への露出度は低い。

選手の実態

多くの場合、元NCAAのトップレベルの選手たち。毎年のドラフトで20-30人が選ばれ、何年かかけて振り落とされて行く。Div 1の名門校(Syracuse, Hopkins, Virginia)も多いが、中堅校(UMBCやHofstra、Georgetown)も結構な割合でいて、中には下位校(Ohio StateやPenn State etc.)やDiv 2出身者もいる。サイズと身体能力的にNCAAよりも一段上がり、技術的には数段上がるイメージ。

ほとんど全員がフルタイムで通常の仕事をしており、週末に練習、及び試合に出場、というパターン(日本のクラブチームの選手にかなり近い)。職業を見ると、ガチなビジネスマンもいるが、大学院生、学校の先生、体育/スポーツ系のインストラクター、WarriorやBrineなどのラクロスEquipment会社勤務も多い。

かなりの割合の選手がチームのホームタウンとは別の街に住んでおり、週末に飛行機でホーム/アウェイの試合に向かう。なので、ぶっちゃけかんなりタフな生活。ChicagoやDenverの選手なんてかなりえぐいはず…

給料はあんまし議論に上らないが、リーグの規模や経済性、他のプロスポーツとの比較感から想像するに、恐らく一試合数万円?でシーズン通して100万円から数百万円って感じじゃないだろうか?フルタイムでやってるJ リーグほどじゃないけど、Matt Danowski曰く、まあ、全米の都市を経費で旅行できて好きなラクロスをやってお金貰えるならそんな嬉しいこと無いでしょ、ぐらいの感覚らしい。直感的に歴史が長く、集客によるチケット収入がより多いNLLの方が給料高い気がする。なので、おそらくトップレベル20人くらいのレベルになって、MLLとNLLを掛け持ちしてると、ギア会社のスポンサー収入も込みで、Lacrosseだけで食える/そこそこ全うに暮らせる、みたいなイメージじゃないかと。後は夏休みに各地でやる「キャンプ」(主にジュニア向けのクリニック)も選手にとっては大きな収入源のはず。

このレベルになるとほとんどNo lacrosse, no lifeな人生=ラクロスな人々なのだが、中には普通にビジネスでのキャリアを真剣に考えてる人もいるはずで、Lacrosseを取るか、キャリアを取るか、みたいな現実的な意思決定が生じているんじゃないだろうか。

選手を選ぶ際の着眼点

ドラフトでどういう選手を選ぶか?という判断基準。前回の記事でも触れたが、今回Quintが更に突っ込んだ話をしていたので。

もちろん、土台となる高いレベルの身体能力や技術は大前提。その上で…

実は意外にも、第一に、「MLLで、そしてそのチームで物理的にやれること」だそうだ。つまり、どの街に住んでいて、実際にそのチームの街に毎週通えるのか、その意志があるのか、というLogistics上の前提条件。ここをしっかり見極める必要があるとのこと。実際に上位指名権を費やしていい選手を取っても、物理的に通えなかったから使えませんでした/コンディション崩しましたでは笑えないので。Denver outlawsが地元Denver大学から地元で働く地元っ子を何人か採っていることからも偲ばれる。

第二に、「MLLでやっていくという強い意志/Hungryさ」。気合というか根性というか。上記の選手の実態でも書いたとおり、かなりタフな生活。1チーム20人のRosterで6チーム、たったの120人という極めて狭い門。Competitionも熾烈。その中で生き残って、向上し、結果を出し続けるというのは生半可な気持ちでは決して出来ない。目標もDisciplineも与えられたNCAA時代とは違い、一年の大半を自分自身の責任と意思で設計しなくてはいけない。ラクロスで名を成したいという強い意志、ちょっとイッちゃったレベルでのラクロス愛と競争心(負けず嫌いさ)が必要。既に大学時代にある程度の達成感と勲章を持ってしまったNCAAで花形だった選手が数年で消える一方で、ハングリーでギラギラした中堅校出身者が生き残っていたりするという面白い構図もこの辺から生まれてくる。(日本のValentiaなんかも近いこと起こってるのかな?)

Quintが、Chesapeak BayhawksのMF、UMBC出身のPeet Poillonなんて典型だと言っていた。最初はドラフト下位で指名され、去年一年はBostonで一年間毎週5時間掛けて車で通ってレギュラーチームの練習相手役を務め、今年Bayhawksにドラフトされ、そこで花開きリーグPoint leaderにまで上り詰めた。

そして、第三に、スキルに於いては、NCAAとは別の、MLLというコンテクストに於いての真の実力を見極める必要があると。前回の記事でも述べたが、40人でやるNCAAでは専門化が極端に進んでおり、また特定のコーチのもと、学校ごとにガチッとシステムが組まれ、その中でのProductとして決められたロールを演じることが求められる。Outside shooterやDefensive MFとしての限定された役割を与えられていたが故に物凄い目立ってただけ、とか、その逆で、実はそれ以外にもAll roundに何でも出来る才能がある、など、その辺のズレの見極めが大事とのこと。

MLLのRosterはたったの19人。ほとんどの選手が「一芸だけ」ではなく、幅広くいろんなことが出来るAll rounderたち。Face offerでもシュートもDも高いレベルでやるし、結構な割合のATがMFもこなす。Long stickのうち何人かはNLLでショートスティックでプレーしている。この辺の台所事情の違いからくる、「優秀さの定義のズレ」。

Notre Dame準優勝の立役者、GoalieのScott Rodgersに関してもちょっと議論されていた。NCAAではドミナントだった彼だが、元All AmericanでMLLでもプレーしていたGoalieでもあるQuintの意見では、恐らく彼もアジャストに多少苦しむだろうとのこと。一部の人は、「Rodgersは本当に速いボールをちゃんと見られるだけの動体視力があるのか?でかいだけじゃないのか?」と訝しがってたりもする。Quint曰く、Rodgersは才能はあるが、Fakeに対して大きく反応しすぎ、ジャンプし過ぎる傾向があると。MLLでは超技巧派のCanadian Finisherたちが鬼Fakeしてくるので、恐らく最初は無様に転がされ、点を取られまくるだろうと。もっとPatientに待つことを覚える必要があると。が、持っている能力は高いのと頭もいいので、恐らく夏の終わりにはスタメンになるかも知れないと。実際どうなるのか注目したい。

などなど。興味あれば是非Podcast聞いてみて下さい。非常に面白いので。
今後、暇を見つけてUSやCanadaの注目選手の話など、少しずつ書いて行ければと思ってます。(でも仕事の忙しさ次第なので、Don’t hold your breathベースで…)あと、いつか書きたいなと思ってるのはアメリカでのラクロスの成長/拡大の話(日本以上に育ってる…)と、Michiganの話。

0 件のコメント:

コメントを投稿