2010年6月7日月曜日

Team US特集 vol. 1 AT

さて、NCAA決勝も終わり、USラクロスコミュニティの話題は一気にMLLに向かっている。と同時に、少しずつではあるが、World Championship、Team USAの話題も少しずつ取り上げられるようになってきた。今回現役の皆、及びOBの一部の方々がマンチェスターに行かれるということなので、観戦のお役に立てばということで少しずつ時間を見つけてTeam USやCanadaのことを書かせて頂こうと思う。

第一弾の今回はAT。どういうメンバーなのか、見所はどこなのか。

まず、大前提として、今回のTeam US、「ほぼ」現MLL最強メンバーと言っていいと思う。「えー?この人じゃなくてこの人選ぶべきでしょ」と人によっていくつか意見が別れたり、怪我で出られない/選ばれていない選手が数人いるが、それ以外は恐らく誰が選んでもかなり近い面子になるであろうDream memberで固められている。

その中でも最もスポットライトが当たるであろうポジション、AT。6月6日のNCAA 4年生代表とのexhibition matchでのメンバーは下記。
# Name MLL Team College cm kg
14 Ryan Boyle Boston Princeton '04 180 82
19 Kevin Leveille Chicago UMass '03 178 84
91 Mike Leveille Chicago Syracuse '08 191 93
2 Brendan Mundorf Denver UMBC '06 180 88
26 Drew Westervelt Denver UMBC '07 193 93
12 Ned Crotty Chicago Duke '10 188 86
22 Ryan Powell N/A Syracuse '00 185 93


コンセプト

まず、全体をぱっと見て、いくつかの戦略的意図が見て取れる。

一つ目が、MLLでの既存のコンビをそのまま使っている点。Denver OutlawsのAT 2枚看板MundorfとWesterveltはUMBC時代からの1年違いの先輩後輩コンビ。Chicago Machineのtop 2, Kevin 、MikeのLeveilleの兄弟は大学こそ違えど、当然子供の頃から裏庭でStickと戯れていた気心の知れたコンビ。NLL/MLLの試合により練習時間をほとんど取っておらず、何試合かのExhibitionを経てほぼぶっつけで本番に挑むTeam USにとって、サッカー日本代表のように合宿を通して連携を高める、なんて余裕は無い。最初からバチッと波長が合うこと(Chemistry)は生命線。既に各チームでProvenなコンビをそのまま生かすことでここを解消したいという意図か。

二つ目が、しっかり役割分担を考えて選んでいる点。もちろん、皆恐ろしいレベルで何でもこなす。その上での「誰にも負けない強み/尖り」という意味で…SpeedがあるDodgeで確実に相手をBeat出来、Finisherとしてロングシュート、ゴール前、ブレークでと、圧倒的な決定力を誇るMundorfとKevin Leveille、Ryan Boyle。サイズがあって押し負けず、且つ器用で何でも高いレベルで出来、クリースフィードでのターゲットにもなるMike LeveilleとWestervelt。Quarter Back/司令塔としてエックスでボールを持ち自在にフィードすると共に試合をコントロール出来るRyan Powell、Ned Crotty。恐らくこの辺の組み合わせを考えながら、疲労や怪我の様子を見つつ、試合では実質2セットで回すイメージになって行くんじゃないだろうか。

背番号ウンチク

あ、あとトリビア的オマケ情報を放り込んじゃうと、Team US、よく見ると背番号は基本的に彼らのホームチームでの背番号を使っている。Leveill兄弟の19と91、Paul Rabilの99、Max Seibaldの42など、(一部は大学時代からの愛用番号も含め)現在のMLLの背番号をそのまま継承。ポジション別に若い番号から順に振っているCanadaやJapanに比べると遊びがあって自由な印象。

注目選手

そもそも、全員NCAAでAll American First TeamかMVPクラス、MLLでも結構頻繁にPlayer of the weekの注目選手だが…いくつか、PRIDE(今はDREAMか…)の煽りV的に背景となるストーリーなども含めて僕の知ってる範囲でご紹介。

#19 Kevin Leveille (Chicago Machine/UMass '03/178cm/84kg)

動画①動画②動画③

まずは僕の大好きな選手、Kevin Leveille。発音は、「レヴェル(アクセントはヴェ。)」MBAでシカゴに2年留学していた時に何度か見に行ったChicago Machineの試合でも最も目立っていた選手。今のMLLの中で、最も華のあるプレーをする選手と言ってもいいだろう。有り得ないステップでとんでもない体勢から矢のようなシュートを突き刺したり、Long 2枚にスクラップにされかかりながらダイブしてでんぐり返りしながら意味不明な動きでBehind the backで得点したり。毎試合決まって「なんじゃこりゃあ!?」という見たことの無いCreativeなプレーを出してくる。Highlightニュースの常連。会場でも常に子供達の人気を集める。

「どうすればそんなプレー出来るんですか?」という質問に対して「いや、特に考えて無いんだよね。ぶっちゃけそん時のとっさの思いつき。」との答え。天才肌というか、本能で動くタイプ。典型的な、NCAA以上にMLLで花開くタイプ。

MLL選手達への「どの選手が最もFun to watch?」という質問に対して最も名前が挙がった3人の選手の一人(ちなみにあと二人は既に引退してしまったSuper Star Mikey Powell、そしてもう一人はChazz “Air” Woodson。この三人は僕も一番好きな三人で挙げる名前。奇しくも最新のBrineのCMで共演)。

今回のWorld Championshipでもどんなミラクルプレーを出すのか楽しみ。と、ここまで盛り上げておきながら、実は、悲しいお知らせがございまして…彼は現時点では正式な23人のロースターには入っておらず、リザーブ役…なぜ彼が入っていないのか個人的に理解できず、一部のファンも激怒してるという状況。なので敢えて最初に入れてみました。Powell辺りがコンディショニングイマイチって理由で入ったりするんじゃないかと期待してます。

#91 Mike Leveille (Chicago Machine/Syracuse '08/191cm/93kg)

Kevinの弟。Syracuseの08年の優勝の立役者。準決勝のVirginia戦での最後の逆転ゴールなど、異様な勝負強さが印象深い。でかくて、でもかなり動けて、且つ何でも出来る。飄々と走り回って、そんなに一生懸命やってるように見えないのにきちんと抜いて、サクッと点を取る。クリースでのOff ballにも定評があり兄KevinからのFeedを受けて得点するケースも多い。

対戦したDFの多くが言うのが、「脚が速い」ようには見えないが、でかくて押せないのと、高いラクロスIQに基づいた賢い動きにより流れるようにスルスルとDをかわして行く。ゴルフで言うところのBig Easy Ernie Elsみたいな…

#2 Brendan Mundorf (Denver Outlaws/UMBC '06/180cm/88kg)

動画
インタビュー

恐らく、今のMLL最強AT。つまり、現時点での世界最高のAT。そう評価する人も多いし、僕も個人的にそう思う。元々はUMBC。決してNCAAで最もスポットライトを浴びていた訳ではない。Denverに入団後、努力を続け、大きく成長している。

Physical trainerを付け、毎朝5時に起きハードなトレーニングをこなしているという。Coloradoの高地でのトレーニングでCardioも間違いなく強い。努力家。左利き。ゴール周りで圧倒的な安定感と勝負強さを発揮する。シュートの決定力抜群、Feed力も高い。1 on 1でのスピードに加え、でかくて動けてパワーのあるDFに対して決して押し負けないパワーとボディバランスを兼ね備えている。加えてシュートも上手くて速い。今や最高のAll rounderかもしれない。

08年のAll Star辺りから、存在感あるプレーであれっ?こいつ実は凄くねえか?となり、09年、10年とだんだん押しも押されぬMLLを代表するATにまで成長してきた。鼻っ柱が強く、若くしてAll Starでも臆することなく堂々とプレーしていた姿が印象的。

この辺の、必ずしもNCAAでSyracuseやVirginiaでエース張ってて全米制覇経験者って訳じゃなくても、むしろMLLに入ってからの努力次第で成り上がってくるというのがMLLの一つのドラマ。素直に敬服すると共に、生き方として見習いたいと思ってしまう。(ま、見た目やキャラは普通のナイスなアメリカの兄ちゃんっすけどね。)

#26 Drew Westervelt (Denver Outlaws/UMBC '07/193cm/93kg)

動画

この人はMundorfの片割れ。UMBCの1年後輩。大学、プロとコンビを組む。でかくて上手いという意味ではMike Leveilleと同じ。ぶっちゃけあんまし意識してみてなかったというか、そんなにDenver Outlawsの試合でも気にしてなかったのであまり知らず…何試合か見た中ではシュートがクソ上手い印象。

もっとこの選手のこと知りたいなと思ってたら、(同じように感じてたファンが多かったのか)丁度Inside LacrosseのPodcastで紹介されてたのでご紹介(リンク)。

#22 Ryan Powell (No MLL team/Syracuse '00/185cm/93kg)

言わずと知れた生ける伝説、Syracuseのラクロス最強三兄弟、Powell兄弟の真ん中。パイオニアで人気者の長男Casey、小さくて爆発的なスピードと身体能力で一番人気の末弟Mikeyに挟まれた真ん中。顔やキャラは一番地味。あだ名はRhino(ライノ)。

数年Denver Outlawsでオフェンスのリーダーシップを取っていたが、今年はMLLではなくクラブチームでプレーしている。実力/体力的に辛くなったからなのか、Life style上の選択なのか、詳しい話は分からないが。

Syracuse時代はCasey、Mikeyと同様にGary Gaitから脈々と受け継がれるエースナンバー22番を背負いチームを優勝に導く。彼の何が凄いのか?実はパッと見、そこまで凄いプレーヤーであるようには見えない。何か動きがねっちゃりしてるようにも感じる。が、DFが口を揃えて言うのは、いやいや、実はかなり速いぞ、と。サイズと下半身の強さ、ボディバランス、切り替えしでの敏捷性、そして何よりもDFを、そしてラクロスを知り尽くしたラクロスIQ。ちなみにゴール裏でDをゴールの網に引っ掛けてコケさせる”Finalizer”の産みの親。面白いようにDFを手玉に取り、クリースの裏からひょろっとボールをゴールに刷り込ませてくる。フィードももちろん上手い。バスケに例えると元LakersのMagic Johnson?

ただ、恐らく今回のAT選出で個人的に一番疑問を感じたのが彼。正直キャリアのピークは過ぎている。ボールを長い時間保持しネチネチ1 on 1をするスタイルには賛否両論。チームのスタイルによってハマッたりハマらなかったり。そのスタイルが元で前回のWorld ChampionshipでCanadaとの決勝に敗れた際に戦犯扱いされたのも彼と弟Mikey。恐らく彼の中ではそのRedemption(雪辱)を果たしたいという気持ちから今回のWorld Championshipに臨んでいるんじゃないだろうか。日本サッカーで言うと今よりピークを過ぎたけど経験は凄いある4年後の俊輔的ポジション?

#14 Ryan Boyle (Boston Cannon/Princeton '04/180cm/82kg)

ザ・優等生。Princeton第二の黄金時代を支えたエリートエース。真面目かっ!。よりロジカルで科学的な指導で最近人気急上昇中のキャンプ、Trilogy Lacrosseのコアインストラクター。Inside Lacrosseでのクリニック記事はマジで引くぐらい賢くて素晴らしくて勉強になる。本当に頭使ってる。

ちなみに彼が1年生でPrincetonに入学した時の4年生キャプテンがMFのMatt Striebel。当時ATだったMattはRyanを見て、ああ、こんな凄い奴がいるなら仕方無いなと素直にMFコンバートのリクエストに従ったらしい。

02年、06年に引き続き三度目のWLC。もはや大ベテラン。抜いてよし、シュートして良し、視野広くてフィードして良し、ライドもしっかりこなす優等生。しかし、MLLの試合見てると彼なんて小っちゃく見える。が、それでも180…このサイズの感覚の違いは如何ともし難いっすな。

#12 Ned Crotty (Chicago Machine/Duke '10/188cm/86kg)

言わずと知れた今年のDukeのエースでシーズンMVP。なんでも出来る凄えやつ。Dukeでも下級生時代はMFでATにコンバートされた。でAT最強になっちゃうところが凄い。抜けて、フィード力高い。実は彼がPoint Guardとして一番機能しちゃうかも。ちなみに先週のドラフトではChicago Machineに全体1位指名された。これでChicagoのAT 3枚は全員US代表ということに。Chicagoは今全体的に上り調子。元地元ファンとしては嬉しい限り。

と、今回はこんなところで。

いたる@13期

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