2010年6月1日火曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 36 Tournament Final Duke-Notre Dame

試合の見所

ともに初優勝を目指す2チーム。4回連続でFinal Fourに進出しながら未優勝の無いDukeか、鉄壁Goalie Rodgersに率いられるNotre Dameが4回連続のUpsetでシンデレラストーリーを描くのか。

この試合の勝負を分けると言われるFace off、一本目はNDが取る。直後にND#28 3年のBrenneman(190cm, 100kg)が得意の左のRunning shootを突き刺す。同じく2点目のStanding shootも秀逸。

相変わらずのQuinzaniとCrottyのAT 2枚看板のStick skillの滑らかさに溜息が出る。バターナイフでパンにバターを塗るように滑らかに流れる。パスはほとんど「どボックス」。ショートスティックはこうありたい。

NDのいつもの超PatientなPossessionオフェンスでDukeはほとんどOffenseの機会無し。数少ないチャンスもFrustrationからからしくないTurn overを繰り返す。2対2でお互い得点出来ぬまま2Q終了間際にQuinzaniのフィードからトップのMFのSchoeffelが決めて3-2 Duke 1点リードで前半終了。ハーフで3-2て…今までNCAAのFinalでこんなロースコアな試合見たことない。

後半、NDの4点目のOffenceはMFの3 on 3の教科書として非常に参考になる。Earlが左切りをダッジで振って交わして、Slideが来た隣のOを飛ばして、もう一個先にいるShooterのBrennemanまでパスを出すことで1 on 0の状況を作る。Brennemanがまたしても左のStanding shootを突き刺し4対4。

4対4の同点迎えた4Q。Rodgersが脚でStickで体でと神セーブを連発する。Rodgers一人で相手の得点の3分の2ぐらいを毎回減らしてんじゃないか?Gの皆は彼のセーブの技術をスローモーションで何度も見て解体してみるといろいろ発見があるかも。その後MFのInvertでDをSwitchさせてCrottyがShort相手のミスマッチから1 on 1、が、フィードがこぼれ、NDのエースMF #33 Earlがフィールドを爆走し、ATシュートでついに5-4でND逆転!

残り9分準決勝で爆発したDuke MF TurriがDのSwitchの混乱の一瞬の隙を突いてUnderhandで得点。再び5対5の同点。Dとしてはやっちゃいけないミスコミュニケーションとして反面教師になるはず。OとしてもDの隙を付くシチュエーションとして学びたい。その後もNDのゆっくりしたPossessionが続くが、残り6分でTurn overからDuke fast break。が、Quinzaniが絶好のチャンスを外す。Flag downでDuke EMOだが、またしてもRodgersが鉄壁セーブ。

残り14秒でDuke ballでDuke time out、Quinzaniのシュートは再び枠外でOver timeに。Sudden victoryの延長ではFace offが鍵になる…と思ったら最初のFOでDuke LSMの2年生 #9 CJ CostabileがLong stick face offで秒殺で掻き出し、そのまま自分で拾って独走、自らゴール左上にシュートを突き刺し試合終了。Dukeが悲願の初優勝を遂げる。

試合のハイライト映像

なぜ勝てたのか?

Inside Lacrosseで早速なぜDukeが勝ったのかの分析記事が載っていた。非常に面白いと思ったので紹介。的を得てるなと思ったのが、「Notre Dameの試合に自ら付き合ったこと」という点。確かに、これまでNDにやられたチームは、NDのペースに付き合わないように自分たちのBreak Lacrosse、アグレッシブなオフェンスを貫こうとし、リズムを崩して消えていった(Marylandなんて典型)。そんな中、今回のDukeは確かに敢えてOffenseのペースを落とし、Patientにpatientにボールを共有して安いシュートを打たず、決して焦る事無く、メンタルに揺らぐ事無く、持久戦に対して真っ向勝負を挑んだ。何度かDVDを見直すとその辺の「波」の行き来を見られてGame planning/Game managementとしては非常に学びになるんじゃないだろうか。

試合後のInterviewでHCのDanowskiやエースCrottyも言っていたが、やはり本当に強いチームは相手に応じて柔軟にスタイルを変えられ、スローペースのポゼッションラクロスを仕掛けられてもFrustratedになることなく、辛抱強く、規律有るDFと手堅いセットオフェンスできちんと得点を重ねられるものだと。その通りだなと思った。

もう一つ個人的に感じたのは、エースのATコンビ(QuinzaniとCrotty)が完全Shutされる中、準決勝、決勝ではこれまで存在感が薄いと批判されてきた3枚目のAT Howell、そしてMFのSchoeffel, Turri, and Catallinoなど脇を固める選手たちがStep upし、All Americanの名に恥じない素晴らしい活躍を見せたことも大きいと思う。彼らの活躍により後半Quinzani、CrottyのDがSlideに行かざるを得なくなり、結果として彼らが自由にプレーできるようになるという現象が起きていた。大事ですわ。駒の多さ。

Dukeの夢叶う

Dukeにとっては長い長い数年間だった。2nd tier呼ばわりされてきた90年代から、HC Mike Presslerの下少しずつ実力を蓄え、04-05年前後に強い新入生をごそっと取り、初優勝を期待されながらも05年は決勝でJHUの前に涙を飲む。06年のRape scandalで全米から叩かれ、HCのPresslerは首になり一年棄権。PresslerとDukeはドロドロの訴訟争いに突入し喧嘩別れ。

その後冤罪が証明されるがチームのイメージはなかなか回復せず。人気のあるSyracuseやHopkinsとの比較で「悪の帝国」扱い(Blue Devilsという名前や、「エリート白人金持ち学校」的なStereotypeから来るのやっかみ、無敵だったバスケでのAnti-Dukeな雰囲気なども相まって)。1年越しで挑んだ07年には再びPaul Rabil率いるHopkinsによって夢は挫かれる。試合後泣いて立ち上がれないMatt Danowskiの姿は今でも印象的。1年棄権→無罪を経て、NCAAから例外措置として、当時在学していた選手への「5年目Eligibility」が与えられる。それでも、エースATのZack Greerは、昨年のInside Lacrosseのインタビューで、その後もキャンパスで向けられる目は決して優しいものではなく、居心地は悪かったと言っている。(彼は最終学年の5年目に、辞任した恩師Presslerの後を追って弱小Bryant大学に転校してプレーした)

新コーチJohn Danowskiの元、Blue Devilsは、事件からの学びを生かし、学業への集中、Community workへの積極参加、Lacrosseへのハードワークを通じて少しずつイメージを回復し、Lacrosse界にサポーターを増やしていった。それでも05年から4回連続でFinal Fourに進出しながら一度も優勝できず。「結局Dukeは二流止まりなんだよ」が定説になりつつあった。

試合中も紹介されるが、QuinzaniやMcKeeら今年の5年生はscandal直後に入学したメンバー。既に入学をコミットした直後に事件が起こり、入学チームを考え直すかどうか迷った挙句、このチームとDanowskiを信じようということで皆で入学を決めた代。優勝への思いは誰よりも強かったはず。入学以降ずーっと叩かれ続け、それでもぐっと歯を食いしばって頑張って、最後の最後に大輪の花を咲かせた。4年生と5年生合わせて17人。来年以降は一気に新しいチームになり苦戦が続くと思われる。Dukeの長い長い旅の最後の最後に感動の幕切れが待っていた。トロフィーを掲げるQuinzaniを見て思わずジーンと来てしまった…やっぱり、NCAA Lacrosseは最高っす。毎年のドラマが、そして選手たちの魂が本当に心を打つ。

(ま、もちろん一方で「そりゃ5年生として楽な授業のBusiness Schoolとか行って1年余分に練習しまくりゃ優勝もするわ!Dukeだきゃあ認めねえ!」って見方をするファンはいっぱいいるはず。)

NCAA Championship

にしても、過去のNCAA Tournament Finalの歴史を見ると、過去10年のうち、ほとんどの試合がOver timeか1点差。NBAのサラリーキャップ制度(チームごとの合計年俸に上限を授けることで一部のチームの独走を避ける)やNFLの収入分配制度(チーム収益をリーグで分配することで大都市と過疎地の不公平を是正する)じゃないが、NCAAのしっかりした制度(人数制限、リクルーティングの透明性/公平性)により、ある程度成熟したスポーツは上位校数校は本当にギリギリの接戦を演じることになる。そしてそれが感動と興奮を生み、ファンを増やす事に繋がっている。スポーツマネジメントとしても勉強になるなーと感じる。

Shot clock

さて、一方で、この決勝戦の後、Internet上ではラクロスファンたちが熱い議論を始めている。その一つが、今回の試合が余りにもスローペース/ロースコアでつまらなかったという点。正直言って僕自身もその点は同意。現行のルールでNotre Dameの戦力を与えられたら、勝つための最適解として、可能な限りTransitionを減らし、超スローペースの試合にするのはLogically正しい。ただ、ファンとしては堪らないし、それがLacrosseのメジャー化を妨げているとの声も多い。既にプロのMLLでは60秒のShot clockと2 point shot lineを導入しており、圧倒的に展開が速い上、15-20点近い得点が生じる別のゲームになっている。(09年までのここ数年の東大の戦術も同じ方向性で(?)、一ツ橋もそれに近いと伝え聞いているので、恐らくいろんな批判/議論(一部言われなき誹謗中傷も含め)やチーム内の葛藤/Frustrationを生んでいたんじゃないかと想像する。MichiganもVirginia級のSuper star不在という意味では台所事情は似たようなもんなので、恐らく同じ部類に属する戦術を取ってるんじゃないかな?想像ですが。)

今までも議論は散々あったが、「そういう"亜流"のチームは優勝争いには絡めねえ。優勝に相応しいのは王道の爆発的Offense力のあるチームだけ」という先入観に掻き消されて来た。が、今回、NDが決勝にまで行ってしまったことで一気にその議論が熱を帯びつつあるという状況。

この点に関していくつか議論を紹介。現地上最強プレーヤーのPaul Rabilなど一部のMLLプレーヤー達は完全にShot Clock導入賛成派。言い分としては、「昔はバスケだってShot clockも3-pointも無かった。今からは想像付かないだろ?それらの導入によってゲームが一気に進化し、人気が爆発した。LacrosseだってMLLで実際にワークしてるわけだし、Why not!?」っていう。絶対にそっちの方がスポーツとして面白く、そしてプレーのレベルも上がると。

一方で、ESPNの解説者で元Hopkins All American GoalieのQuint Kessenichなどは、審判がきちんと早めのストーリング警告をしてRestraining zoneから出られない状況にして試合をコントロールすれば問題無い筈という意見の持ち主。しかし、にも関わらず今回のNDはトーナメント4試合全てでスローペースの試合を遂行し切ってしまった(別にBox内から出られなくなっても頑張ればいくらでもボールは回せる訳で)。恐らく今後のルール改正の大きな議論の焦点になるんじゃないだろうか。

Next step

さて、何はともあれ、これで長いようで短かった4ヶ月間のNCAA Lacrosseのシーズンも終わり。本当に楽しませて頂いた。ご馳走様でした。(個人的にはバチッと切り替えてNBA FinalとCollege Football(アメフト)で盛り上がらせて頂きます…College footがこれまた涎出ちゃうくらい激熱且つオモロイんすわ…)LacrosseではMLLの試合も時々放映されるのと、恐らくUS National teamの話、今年の高校3年生(来年の新入生)オールスターの話題等のニュースがちょくちょく入ってくると思うので、様子を見て時々ブログにUpdateさせて頂こうと思います。あと気になってる話題としては、「Michiganはどんだけ強いの実際?」って話など。

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