2012年7月29日日曜日

MLL 2012 vol.14 Hamilton Nationals @Long Island Lizards

これで負ければ3勝8敗でプレーオフ進出が断たれるHamilton Nationals。後が無い。去年の準優勝から一気に落ちぶれてしまった。

対するLong Islandは6勝4敗の勝ち越し。プレーオフ進出を確実なものにしたい。

19-12でLIが勝利。

Hamilton Nationals

これでHamilton Nationalsは残り3試合を残してリーグ戦敗退が決定。去年の準優勝から一気に後退。一説には既に今年いっぱいでHamiltonのフランチャイズは解散が決定しており、来年以降選手たちがどうなるのか気になる。

最終年の今年、去年と打って変わって勝てなくなってしまった...やはりインドアも戦場にするCanadianが多いため、シーズンが1ヶ月オーバーラップしてしまっているNLL(インドアリーグ)の影響で最初の4-5試合主力がほとんどいない状態でぼろ負けした状態からシーズンが始まるのがキツい。去年と比べてチーム数が増え、試合数が増え、日程が早まった事によりその影響が強まった。Casey Powellが途中から出なくなった事もあるか。DFとGが最後までザル感があった。正ゴーリーのScott Rodgers (Notre Dame 10)が怪我でごっそり出られず、#23 Brett QueenerがDFを統率しきれなかったか。

シーズン途中でHCのRegy Thorpe氏が、ルールと審判がCanadianに不利になるように出来ていると文句を言っていたが、MLLが意図的にそうした訳じゃないだろうが、結果としてそうなっている面は否めない。

噛み合えばボールがぐるんぐるんに回って有り得ないシュートを連発して来る超面白いCanadian OFが来年以降見られなくなるのかと思うと悲しい。来年以降フランチャイズを引き継いでくれる奇特なカナダ人オーナーはいないだろうか...

Long Island Lizards

若干波があるが、引き続きいいチーム。オフシーズンの大改造からここまで力強く復活してるというのは賞賛に値する。上手くやればプレーオフ進出はもちろん、優勝も全然有り得ると感じる。

圧巻はルーキー#22 Tommy Palasek (Syracuse 11)。怒濤の6得点。マジか。元々スピードはあるし手元もしっかりしてるとは思っていたが、ここに来てMLLの1 on 1重視のスタイルの中で完全に才能を開花しつつある。Hopkins時代(1-2年生)にはシステムの中に埋もれてイマイチ活躍出来ず。Syracuseに転校して1年目の3年生では遠慮とアジャストで脇役止まり。最終学年の4年目は、チームの主力になったが、チーム自体が強く無かったためこれまたそこまで目立てず。MLLに来て報われたパターン。しかしここまで活躍出来るとは正直予想してなかった。

Highlight

2012年7月27日金曜日

MLL 2012 vol.13 Denver Outlaws @Boston Cannons

うっを...やっべえ...ビール3本くらい飲みながら見たが、エンターテインメントとしてこれ以上のコンテンツあるかね?マジで熱い。面白過ぎる。レベル高過ぎる。

最高の娯楽を提供してくれた。上位2チームの激突。17-13でDenverがAwayでBostonを制した

さて、一気に面白くなって来た。シーズン序盤独走していたBostonが、何とここに来て6勝5敗でRochsterと並んで同立4位...。このまま行けばPlay off進出が「?」というところまで落ちて来てしまった。マジっすか...

一体何が?去年優勝してから監督が変わった事もあるか?

不動のエース#99 MF Paul Rabil (Johns Hopkins 08)はもちろん凄いが、それ以外に意外と抜けるキャラがいない...抜ける上に何でもこなせてゴールまででゴミ処理しまくっていたAT Max Quinzani (Duke 10)が抜けた穴が何気にでかいようにも見える。#7 Matt Poskay (Virginia 06)は凄いクリースプレーヤーだが、彼に放り込めなければ点は取れない。全体的に攻め手のオプションが無くなって、単発になって来ている。明らかに歯車が回らなくなって来ている。

Denverやべえ。マジで。これ相当締まって来てる。今もしかしたら一番強いかも。今の状態で試合したら優勝する気がする。完成度が高い。穴が見当たらない。DF MFやFOも含めて。全てのポジションで役者が揃ってる。

#2 AT Brendan Mundorf (UMBC 06)がマジで神過ぎる。現時点でOF最高プレーヤー。MVPの可能性を強く感じる。MLLトップレベルのDFを相手に確実に抜ける。シュートの完成度やばい。ラクロス選手として未知の領域に入って来ている。この人は一体どこまで行くんだろうか。

あと、#10 AT Jordan McBride (Stony Brook 11)がCanadian鬼フィニッシャーっぷりを発揮しまくり。加えてATには#11 CHris Bocklet (Virginia 12)と#22 Mark Matthews (Denver 12)の強力なルーキーフィニッシャー2枚もいる。極めて効率的。

MFも#57 Peet Poillon (UMBC 09), ここ数年UKで教えてたりBayhawksの控えで完全に隠れキャラ化していた#20 Jeremy Sieverts (Maryland 09), これまた超効率的ルーキーの#23 Drew Snider (Maryland 12)辺りがやべえ。シュートが上手過ぎ。

DFも堅い上にG #19 Jesse Schwartzman (Johns Hopkins 07)が驚異的に止めまくってる。今の世界最高ゴーリーはこの人だろう。

8月25-26日に行われるSemi Final & Final。今年こそ悲願の初優勝を果たせるか?

Highlight

2012年7月23日月曜日

2012 U-19 vol.01 勢力図の変化

7月12日からフィンランドで行われている2012 Under 19 World Lacrosse Championship(19歳以下世界大会)。

(参加チームリストを見る限り日本は参加されていないようなので、恐らく何らかの事情で方針を変え、参加しない意思決定をする事になったんじゃないかと推察する)

リンク

ここまで予選リーグと決勝トーナメントをやって来たが、一つの大きな時代の転換、勢力図の変化を告げる現象が起きている。

これまでのU19は1988年からの過去6回、全てUSAが優勝。36試合全勝の負け無し、パーフェクトレコードを誇って来た。(Wiki

が、今回、何と予選リーグでUSAがCanadaにOvertimeで11-9で敗北、更に弟分のIroquois Nationals (Native Americanの6部族によるチーム)にまで15-13で負けてしまったのだ。

これはかなり衝撃。

一言で言うと、ことジュニアレベルに於いては、Canada、Iroquoisが一気に国際的なラクロスのCompetitionの中で伸びて来て、独走体勢だったUSAに追いついていると言う事。

逆に、Australia以下、日本を含めた4位以下とTop 3の差が更に開きつつあると言うこと。

間違い無く言えるのは、USAのラクロスのレベルが下がっていると言うことは絶対に有り得ないと言う点。高校レベルでの競技人口は過去10年で3倍以上になっている。ジュニアの選手たちはどんどん早熟になり、優秀な選手になると、中学レベルから大学のスカウトの話が出始め、高校1年で推薦の話を貰い始め、高校2年で大学をコミットし始めている。メンバーにはNCAA Division 1の上位校でプレーする新2年生もちらほら入っている。10年前のU-19のチームに比べてレベルが下がっているとは考えにくい。にも関わらず。

Canadaが強くなっている事情の裏には、元々分厚かったIndoorの人材を、Hill Academyなどの体育エリート育成私立高校でフィールドラクロスの経験を積ませてNCAAに送り込む仕組みが出来つつある点。その中で、早い段階で質の高い選手が質の高いフィールドラクロスに触れる様になって来たことが大きい。(NCAA上位校でプレーするCanadianの数は90年代には数える程だったが、今や100人規模。Stony BrookのCrowley (Hamilton Nationals)やDenverのMark Matthewsらスーパースターも毎年で始めている。)

Iroquoisも同様。Jeremy Thompson (Syracuse 11)らThompson兄弟の例からも解るように、元々文字通り生まれた頃からスティックと共に育って来た彼らがNCAAに多く進出してくる中で、若い頃からこれまでのインドアに加えて質の高いフィールドラクロスに触れる様になって来ている。

 Australiaは、僕が10年前に滞在していた時の感覚、その後インターネットで知る情報で想像するに、やはり地元のクラブチームを軸としたコミュニティなので、爆発的な成長は期待出来ない。(時々突出的な神童が出ることはあるかも知れないが)

いずれにせよ、USA, Canada, Iroquoisいずれも、既にU-19の段階で、①かなり広い人材プールの中から相当熾烈なスクリーニングを経て技術/フィジカル/ラクロスIQに於ける上澄み中の上澄みを選べている、②幼少期から高い質のラクロスに触れ、高い質のCompetitionに触れている事、が大きな強さの源泉になっている事が解る。

(加えて、現行の緩い出場国選定のルール上、正代表ではEnglandを始めとしたヨーロッパ各国は実際にはNCAAでプレーしている/していた、「ひいひいおじいちゃんがEnglandからの移民」「一応イタリア系アメリカ人だし」みたいな選手たちが即席で所属してチームを作るため、実質的にアメリカ人の主力に率いられたチームになりつつある。)

日本が国際的なCompetitionの中でトップ2国に勝って行こうとするならば、やはりこの辺の構造的な、土台の部分の差が占める要因の方が、既にサチっている大学レベルでの普及度やその後の技術的な育成を磨く事よりも遥かに大きくなって来ている事が感じられる。もし打倒USA/Canadaを目指すなら、高校/中学以下での大きな大きな普及の梃入れが絶対に必要だと断言出来る。(US/Canadaに勝つ/少なくとも試合になるレベルでやり合う、という尺度でのROIを測ると、あらゆる戦略レバーを机の上に並べて比べた時、これ以上血眼になってクラブチームのエリート選手を鍛えて乾いた雑巾を絞りきる事と、ピラミッドの土台を広げる事を比べた時に、明らかに後者の方がROIが高くなっている筈)

逆に、USAとCanadaは蚊帳の外なので、そもそも目標からは外して、WLCではUS/Canadap「以外」の中で一番になる(AustraliaやIroquoisやEnglandに確実に勝つ)、という「身の丈に合った」「現実的な」目標設定にするなら、今の方向で突き詰めて行けばそこそこ勝機はあるって話になる気もする。一番てっぺんを目指すかどうかで施策が大きく変わって来るはず。

2012年7月21日土曜日

MLL 2012 vol.12 Charlotte Hounds @Denver Outlaws

先週全体一位のChesapeakeをホームで敗り、一気に勢いに乗りたいCharlotte Hounds。

今週はDenver。アウェイで。

若干期待したワタクシがバカでした...見事にカモられ、ボコられ、21-7なる大量得点で粉砕された。

しかしDenver #2 AT Brendan Mundorf (UMBC 06)の完成度高過ぎだろ。

Highlight

2012年7月17日火曜日

MLL 2012 vol.11 Chesapeake Bayhawks @Charlotte Hounds

地元Charlotteの試合なので一応ESPN3で観戦。ま、新規参入のHoundsと一位のBayhawksなので結果は見えてるっしょ。

と、思ったら、まさかの大逆転サヨナラ満塁ホームランでのHounds勝利。13-12。

最後に#40 AT Matt Danowski (Duke 08)が気合いの2 pointerを決めて試合を決めた。

Houndsが根源的に別のチームになったとは言わないが、一人一人がかなり頑張った事、チームOF/DFが、今までの中で一番形になった、という感じか。

あとは単純にあらゆる要素がラッキーな方向に振れたか。

逆にBayhawksはプレーオフを前にいい薬になったはず。

圧巻はHounds #7 MF Jovi NationことJovan Miller (Syracuse 11)のAir Gait。ゴール裏からダンク気味に片手で決めた。今年のベストゴールの一つだろう。

Highlights

2012年7月15日日曜日

MLL 2012 vol.10 Rochester Rattlers @Long Island Lizards

7月6日、7日の金土でBack-to-back(二連続)での、双方のホームを行き来しての2チームの対決。

前回は13-8でRochesterが前評判を覆して勝利。

今回はLizardsがホームで雪辱なるか。

が、接戦の末17-15で今回もまたしてもRochesterが勝利。(詳細

Rochester Rattlers (Roster)
  • マジで、認めざるを得ない。このチーム強くなってる。プレーオフ進出に値するレベルになって来てる。
  • #16 G John Gallaway (Syracuse 11)率いるSyracuse 11 DF軍団& Manley (Duke 12)相変わらず素晴らし過ぎる。相当レベル上がって堅くなって来てる
  • #11 LSM Joel White (Syracuse 11)の中盤での存在感/貢献度半端無し。マジでBrodie Merrill越え見えつつある。GBやクリアでのスティックワークがやべえ。最後に相手にぶつかられて膝を負傷したか?心配だ。もし今シーズンここから出られないとするとかなり痛い...
  • また来たよ。#29 MF Jordan MacIntosh (Div 3 RIT 11)の鋭い活躍。シュート上手い。Canadian Indoorの技術炸裂。
  • ただ、今回はそれ以外のメンバーもまんべんなく活躍。復活したエース#22 AT Ned Crotty (Duke 10)も重要な所で貢献。そして「ザ・地味上手」の#10 Steven Boyle (Johns Hopkins 11)が地味ーに上手ーく3得点。このチームの司令塔になって来た。

Long Island Lizards (Roster)
  • 惜しかった...かなり良くなってたが...
  • めんどいのではしょるが、印象残ったのは今シーズンここまで静かだった元Paul Rabilの相方#18 MF Stephen Peyser (Johns Hopkins 08)の2-pointショット2発連続。

Highlights

2012年7月13日金曜日

MLL 2012 vol.09 Long Island Lizards @Rochester Rattlers

いやー、今回もお腹いっぱいの試合。MLLここ3年で明らかにプレーのレベルも、エンターテインメントとしての質もグッと上がって来ている。ここまでカッコ良くて盛り上がれるプロスポーツはそんなに無い。今個人的なスポーツ観戦ポートフォリオを見ると、何気にUFC、NCAA Lacrosseと並んで首位。NBAやNFLよりもMLLの方をフォローしている...(で続いてCollege Basketball, College Football, X-Gameって感じだろか。)

さて、今回はプレーオフ出場権争いの正念場。5勝2敗で2/3位だが今後上位チームとの試合しかなく油断は出来ないLong Island Lizards対、4勝3敗で5位のRochester Rattlers。双方崖っぷち。金、土と双方のホームコートでBack to back(連続)で試合する週末。この週末で大きくプレーオフ進出が決まってしまう。

Long Islandは大幅なメンバー入れ替えでここまで意外と勝って来た。が、よく見るとそのうち3勝はExpansion team(新規参入チーム)のCharlotteとOhioなので、イマイチ本当の強さを反映しているとは言えない。

Rochesterは先週大エースの#22 AT Ned Crotty (Duke 10, Team USA 10)を怪我で欠き黄色信号点灯かと思いきや、伏兵#29 MF Jordan MacIntosh (Division III RIT 11)なる謎のCanadian新人の爆発的活躍等によりNatsを倒してプレーオフ戦線にとどまった。

試合は前半互角も、後半Rochester Rattlersがグッと突き放して13-8で見事に勝利。勢いのあるLIが勝つかと思われたが予想外。一気にプレーオフ進出を現実的な物にした。

Rochester Rattlers (Roster)
  • やべえ。ここに来てグイッと一気に一番勢いのある、面白いチームになって来た...移転一年目の去年は「ドアマット」状態だったが、ここに来て急激にチームとして立ち上がって来た...
  • またしてもこの男。完全に謎だった#29 MF Jordan MacIntosh (RIT 11)がマジで驚異的に凄え。絶対見た方がいいっすこの選手。クソ上手い。何故今まで存在消してた...カナダ人でDivision 3のためノーマークだったが、半端ねえ。活きが良過ぎる。今回も4得点で得点王。もはやCrotty以上に得点源になってるじゃねえか...シュートえげつねえ。つうか上手い。今回はクリースでのCanadianの典型的なクイックやBehind the backなども見せてくれた。何気に身体能力も高い。飛び跳ねるように抜いてる。なんなのこの隠れキャラ...
  • DF来だしてる。明らかに。#16 G John Gallaway (Syracuse 11)が鬼の20セーブ。セーブ力急激に伸びて来てる。NCAA時代並みになって来た。明らかMLLに慣れて来てる。
  • DF陣も素晴らしくなって来た。#40 DF John Lade (Syracuse 11), #11 LSM Joel White (Syracuse 11), #8 Kevin Drew (Syracuse 11)のCuse軍団と、漢(オトコ)のフィジカルDF  #37 Michael Manley (Duke 12)の若い布陣がスゲー連携出来てる。Manleyのエース封じっぷり鬼。
  • このチームの核は圧倒的に若い。今後も期待出来る。07-08年の旧Rochster Rattlersの黄金時代の再来も近いか
Long Island Lizards (Roster)
  • 若いAT軍団が結構RattlersのDFとのガチンコ勝負に負けた感じか。
  • #42 MF Max Seibald (Cornell 09, Team USA 10)は完全復帰感漂いまくり。2-pointも含めてしっかり活躍
  • #25 LSM Brian Karalunas (Villanova 11)が超重要な役目を負い始めている。LSMで相手エースMFを止めたかと思えばClose DFに降りてCrottyらエースATを持ち前の機動力で封じるというパターン。この人想像を越え始めてる。
Highlight

2012年7月12日木曜日

MLL 2012 vol.08 Ohio Machine @Denver Outlaws

数日遅れでMLLのサイトにハイライトがアップされたので再掲。(リンク

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シーズン全14試合のうち8試合が終わり、折り返し地点のAll Star Gameが終わり、いよいよレギュラーシーズンの後半戦に突入したMLL。上位4チームによるプレーオフ出場権を懸けた順位争いがいよいよ熾烈になって来る。

ここまで5勝3敗で3位のDenverは確実に勝ってプレーオフ出場を獲得を固めたい。

一方のOhio Machineは今年から参入の新規チーム。ここまで1勝6敗で苦戦中。

7月4日のアメリカ独立記念日に行われた試合。

今年Ohio Machineの試合をTVでちゃんと見るのは初めて。何気にどんなもんか気になっていた。特に全体2位で指名されたがここまで怪我で出場していなかったルーキー#66 AT Steele Stanwick (Virginia 12)の活躍に注目。

さすがに地元3万人の観客の応援もあってDenverが圧勝するだろうと予想していたが、何とOhio Machineが予想外の善戦。後半ぐっと追いつめDenverを苦しめる。が、最後は地力の差でDenverが17-13で辛くも逃げ切り。

にしても思った以上にいい試合だった。特にOhioの短期間での成長には正直Impressされた。

Ohio Machine (Roster)
  • 感心を越えて感動した。Steele Stanwickがたった一人入るだけでここまでチームって変わる物なのかと。予想を遥かに上回るインパクトを与えている。Steeleが入る前のOhioは典型的な新規参入チーム。一段落ちるタレントで、チームとしての戦術や連携が固まっていない状態で個人プレー主体の単発オフェンスでターンオーバーを繰り返し。が、今回Steeleが一人入っただけで圧倒的に形になっている。締まっている。彼がボールを持つ事で一気にバラバラだったOFが一つの形にまとまって統制されてくる。彼のアシストによる得点が5得点。司令塔のQuarter Back、Point Guardとしてバンバンボールを配給。常に頭の横のレディーポジションにアップライトクレイドルでスティックを構え、ピクッ、ピクッとフィードを狙い続け、「ここ!」と言う所で「どボックス」に絶妙のタイミングでスパッとパスを投げて来る。MLLでどれだけ活躍出来るか疑問に思っていたが、彼が一人で引っ張らざるを得ない弱小チームであるOhioに来た事で、思った以上に存在感を発揮出来ている。
  • あとやはり相当印象に残ったのはChesapeakeから放出された#81 LSM Kyle Hartzell (Div II - Salisbury 07)。10年のChesapeake優勝に貢献しておきながら去年涙の放出トレード。その怒りをぶつけるかの如く一人獅子奮迅の活躍。十八番のRusty GateチェックでPoillonをカモり、All StarのFastest ShotコンテストでRabilと並ぶ111 mile per hour(時速179キロ)を出した鬼の2 point shot打ちまくり。EMOに普通にロングスティックで参加ってよ...
  • いずれにせよ、Steeleが入った事でいきなり形になって来た。後数年でそこそこ戦えるチームになってくる気もする

Denver Outlaws (Roster)
  • 前半爆発的に点取ったんだけどな...なぜか後半失速。Denverなぜか昔からそういうとこあるよね...そういう詰めの甘さを無くして行かないと優勝は出来ない気が。
  • にしても#2 AT Brendan Mundorf (UMBC 06)が相変わらず最強ATっぷりを発揮。ホント安定して速くて上手くて正確。ATの現役選手は彼のプレー毎日100回見て頭の中でトレースしまくれば上手くならない訳が無い。
  • 今回はSteeleとトリオを組んでいたVirginia 12の二人、#11 AT Chris Bockletと#34 MF Colin Briggsが大活躍。
  • 全体的にDenverは相変わらずどのポジションもしっかりした選手がしっかり存在していて、チームとしても安定している。FOだけちょっと不安があるか?あと後半のDFの弛み。が、現時点でChesapeake, Bostonに続いて優勝候補である事には変わりない。
あれ、何故かハイライト映像が無い...已む無くRecap

2012年7月9日月曜日

日本へ

余り僕自身の事をこのブログでは書いて来なかったのですが&私事で大変恐縮ですが、一点身辺で動きがあったのでクイックにご報告。

半年程前から決まっていたのだが、8月の頭以降、所属する米系企業のエレクトロニクス関連事業の事業部長とHeadquarter(本社機能)が東京に移る事に伴い、グローバルの経営企画部長に就任する形で彼と一緒に東京に転勤。2007年に渡米して以来5年振りに晴れて日本の土を踏ませて頂ける事になった。数千億規模のflagship事業の舵取りをして行く事になる。身の引き締まる思い。

思えばアメリカで過ごしたこの5年間、ビジネススクール2年、Corporate America勤務3年、Chicago - Philadelphia - Santa Barbara, California - Delaware - North Carolinaと5カ所を転々としつつ、公私共に充実した素晴らしい時間を過ごさせて頂いた。機会を与えてくれた全ての方に心から感謝。

いろんな世界や人や価値に触れ、自分自身が人間として、Professionalとして、5年間掛けて少しずつ、でも確実に変化して行くのを感じたアメリカ滞在だった。特にこの国で出会ったスポーツを取りまく全ての環境とドラマ、生で触れる事が出来た本場のラクロスは、心から笑わせ、酔わせ、奮い立たせ、そして泣かせてくれる、一生の宝とも言える最高の体験だった。

ここからは今や最前線/主戦場となったアジアを軸に、グローバルの舞台で、ビジネス/経営の世界で、引き続き全力で楽しみ、変化/成長し、世の中にポジティブな価値を生み続けて行ければと思う。

このブログに関しては、ちと日本に移ってからの生活がどうなるか次第なので見えないですが、まあ、気が向いたら、ネタがあったらちょこちょこ書くことになるのか、はたまたぱったり終わっちゃうのか...ぶっちゃけちと現時点では良く解りませんが、流れに身を任せつつSee what happensで。

とは言え、一つの区切りとして、現役の選手/スタッフや卒業生の皆さんを始め、これまで読んで下さっている皆さんには改めて心から感謝です。(なかなか身の周りに筋金入りのラクロス狂がいる訳でもなく、ただ観戦するだけじゃなくてこうやってアホみたいにビール飲みながら語る様につらつらと書くのが何気に一つの楽しみになってました...)

2012年7月7日土曜日

MLL 2012 vol.07 Boston Cannons @Chesapeake Bayhawks

シーズン折り返し地点のAll Star前の週。全体1位Bayhawks対2位Cannonsの頂上対決。恐らく2ヶ月後の決勝のカード。

接戦の末Bayhawksが14-13で勝利。文句無しの1位を証明。

とにかくレベル高い。双方隙無し、穴無し。これぞ世界最高峰のラクロス。高いレベルの個人技とチームプレー、目の覚める様な速攻と2-point shot。驚愕のスーパーセーブ。とても書き尽くせない程エキサイティングな2時間を提供してくれた。

Chesapeake Bayhawks (Roster)
  • 何気に今年に入ってたまたまこれまでTV放映が無かったためBayhawksの試合を見て来なかった。が、見て納得。こりゃ強えわ。優勝候補筆頭である事間違い無し。
  • 明確に見て取れるのは、HCに2010年までMaryland大学HCを勤めていたDave Cottle氏が就任した事により、選手のポートフォリオマネジメント(選定)、戦術、意思疎通、プロ意識、全てに於いて今までのMLLのどのチームも到達していなかった高い到達度に達しつつあるという点。週末のみ集まって、個人技の高い選手が比較的自由にやる、という感の強かったMLLの中にあり、今年のBayhawksは明確にチームとしての規律、「決め事」、統一された戦略的意思の下に極めて効率的なラクロスをしている。NCAAのトップ校の第一線でやっていた監督によるチーム作り。MLLに新しい時代が訪れつつある事が明確に示されている。
  • 特に印象的なのが、2-pointショットの使い方。今までどのチームも何となく流れの中で、または60秒ショットクロックが切れそうになってやむを得ず、または終了間際に複数点差を埋める為の最後の手段として使っているという印象だった。が、Bayhawksは恐らくMLLの歴史上でも初めて、2-point shotを明確なセットオフェンスのカードとして、完成されたセオリーに基づいて効果的に使え始めている。ほぼバスケのスリーポイントと同じレベル、近いレベルの成功率。#51 MF Mike Kimmel (Johns Hopkins 10), #44 MF Steven Brooks (Syracuse 08), #5 MF Kyle Dixon (Virginia 06), #14 AT Drew Westervelt (UMBC 07)と、身体能力が高い大型選手が、コンパクトな振り抜きで、正確に遠距離でゴールを射抜いて来る。6人で意思疎通をし、意図的にスクリーンを作り、「え?いきなしそこで打つの?」というゴーリーの虚を突くタイミングでズバッと決めて来る。当然それを警戒してDFが広がり、クリース前のパック、ダッジへのスライドが甘くなり、全体が攻め易くなる、という現象が生まれている。全体的に極めて効率的で勉強になる。2-point shotが無いNCAAとは違うMLL独自の方法論が確立されつつある。NCAAの延長ではなく、2-point有りきのMLLのためのラクロスの時代が幕を開けつつあるのを感じる。
  • 加えて、「あの男」が完全に息を吹き返している。「ジュニア」ことCanadian #24 AT John Grant Jr. (Delaware 00, Team Canada 06, 10)。08年にRattlersで優勝を果たし、MVPに輝き、史上最高のラクロス選手にまで上り詰めたジュニア。その後膝の病気と手術により機動力を失い、全盛期の輝きを失ってしまった。去年古巣のHamilton NationalsからLong Island Lizardsに放出されるも、同じくボールを支配するスタイルの#40 AT Matt Danowski (Duke 08)とイマイチ融和せず、「一人でボール持ち過ぎ。OFの流れ止め過ぎ」と批判を浴び、今年からBayhawksへ。「もうピークを越えた選手」と見られていた。が、今回の試合で未だにトップクラスのATである事を証明。意外と動けるようになっている。加えて、巨体を利用したゴリゴリの1-on-1から信じられないBehind the Backからの得点が復活しつつある。ボールを一人で抱え込む事無く、全体の流れで駒の一つとして機能出来るようになっている。これもHC Cottle氏の手腕か。
  • 去年BostonでJordan BurkeにStarting Gの座を奪われ、トレードでChesapeakeに来た#15 Kipp Turner (Virginia 07)が素晴らし過ぎるセーブを連発。古巣に勝利して見返した。「それ捕るかね?普通」というシュートをサクサクキャッチ。アウトレットパスも素晴らし過ぎ。

Boston Cannons (Roster)
  • ここは相変わらずだ。最も安定したパフォーマンスを発揮し続けている。一歩及ばなかったが。
  • 引き続き#99 MF Paul Rabil (Johns Hopkins 08)が鬼。利き手の右手と非利き手の左手の両方で2-point決めるって...マンガすか。
  • 不動のAT トリオ(#14 Ryan Boyle (Princeton 04), #7 Matt Poskay (Virginia 06), #27 Kevin Buchanan (Ohio State 08))が芸術的に効率的。ま、いつもの事だが素晴らしい。

Highlight(リンク



2012年7月5日木曜日

Loyola優勝の余波 vol.05 メディアのコメント(1)

Loyola優勝後に何人かの記者達が面白い記事を書いていたり、インタビューでのコメントを発していた。舞台の裏側でチームを追いかけていた彼らのコメントもまた鋭く、面白く、そして学びがあると感じたのでいくつか紹介。

いかにLoyolaの優勝が衝撃的な出来事だったか、いかに彼らが特別なチームだったのかが後になってからいろいろと解って来る。

この辺の、フィールドやTVの画面と言った表舞台では見えて来ない、裏側の意図、ドラマ、感情、人間模様が実は一番面白いと感じる。

リンク

1. Inside Lacrosse編集者Terry Foyのコメント

やはり準決勝のNotre Dame戦、決勝を向かえるLoyolaにとって最大の懸念事項は、これまで大舞台を経験した事の無い彼らにとって、初めての大舞台でスポットライトを浴びる経験により萎縮しないか、揺らいで本来のパフォーマンスが発揮出来ないんじゃないかと言う点だった。
  • 正にその通り。だが、その点に関し彼らを見て感動した。Denverに準々決勝で勝った後、Notre Dameに勝って決勝進出を決めた後、彼らのベンチを見て衝撃を受けた。普通初めての決勝戦なんて舞い上がってもおかしくない。ところがLoyolaの面々は完全に次の試合に向けて「Business(仕事)」モードに入っており、全く浮かれる事なく、何ら特別な事をする事無く、通常の一試合に勝つためのメンタリティに入っていた。
もう一つの心配は披露のマネジメント。QuintがBostonのホテルでLoyolaと同じ宿舎だったが、準決勝後に決勝に向けて大量の氷を持ち込んでアイシングの準備をしていたのが印象的だった。気温も湿度も高い中での中一日での試合。伝統的強豪校に比べてメンツの薄いと思われていたLoyolaにとってここがアキレス腱になる恐れがあった。(→ちなみにこの点、僕自身も多いに同意。LoyolaとMarylandの決勝を考える上で、Loyolaの層の薄さ、一枚目のメンバーの疲労が間違い無くボディブローの様にLoyolaを蝕む筈、と考えていた。)ところが、実際にはこれは杞憂に過ぎなかった事が証明され、Loyolaは最後まで本来のパフォーマンスを維持し、優勝を果たした。
  • 3枚目のShort Stick DF MFである#23 MF Kyle Duffy (So)が隠れたヒーロー。コーチ陣も決勝前に一番心配していたのは、2枚のDF MF、#5 Josh Hawkins (Jr)と#34 Pat Laconi (So)。準決勝でもフル稼働していたし、突破力もあり層も厚いMarylandのOF MFの攻撃をどこまで凌げるかが肝になると見られていた。実際にMarylandもそれを明確に意識して、執拗にその二人からアイソレーション&インバート&ピックで攻めまくり。一時期5-6ターンフライ無しでオールコートを往復した上でDFをし続けるという時間が生じ、ズタボロに。そこでDuffyが控えからステップアップしてがっつり相手OF MFを抑え切った。
  • 加えて、Close DFがばっちり1-on-1でATを抑え、相手に一度もGLEより上に行かせなかった。
  • やはり印象的だったのはDFコートでのGB力。基本的にボールが落ちたら必ず拾ってTurn-overにしていた。
今年のコアメンバーが殆ど残るLoyola。What's next?来年はどうなる?
  • 今年のパフォーマンス、集中力を来年も維持するのは本当に難しい。特に今年の様に明確な成功を手に入れてしまった後は尚更。一番大事なのは、左のスナイパー#12 AT Eric Lusbyをどうリプレイスし、OFのバランスを維持出来るか。彼がいたお陰で右のエース#4 AT Mark SawyerがTewaaraton Finalistに残る程の活躍が出来た。
  • もう一つ肝になるのは、今後数週間で動きが出て来るコーチの移動。優勝チームのアシスタントコーチは自動的に他チームのヘッドコーチ候補になって来る。このコーチ陣が来年もそのまま戻って来ない可能性も高い。
そうは言っても強力な選手が怪我から復帰したり、新入生として入学して来る。来年のプレシーズン時点ではLoyolaを上回るチームがあるとは思えない。1位で文句無いんじゃないか。
  • Loyolaは大学全体として、卒業生や体育会部門も巻き込んで10年間掛けて準備をして来た。施設やスタジアムも一新し。全体として正しい方向に向かっている。やっと最後にPay offし始めている。
  • 今回のLoyolaの成功と「完全制覇」での優勝は、多くの中堅校/新興校(Penn State, Lehigh, Delaware, Hofstra, Drexel, Fairfield, Denver, Villanova, Jacksonville, Michigan, Boston College等々)にとって勇気を与える前例になったはず。

2012年7月3日火曜日

MLL 2012 vol.06 Hamilton Nationals @Rochester Rattlers

共に2勝4敗で負け越しているRattlerとNationalsの対決。

Rattlersは先週Denverにボコられた上、エースの#22 AT Ned Crotty (Duke 10)が捻挫で欠場。一気に黄色信号点灯。

一方のNationalsはやっとこさNLL組が合流から暫くして噛み合い始め、いよいよ毎年恒例の後半の怒濤の追い上げに向けて準備が整いつつある。先週はChesapeake相手に鬼の追い上げを見せ、ギリギリの1点差まで追いつめた。が、ベテランの#22 MF Cassey Powell (Syracuse 99)が故意の危険なファウルにより一試合の出場停止。

一般的にはプレーオフはChesapeake, Boston, Denverが手堅く、最後の一枠をLong IslandとHamilton Nationalsが争い、Rochester RattlersはBクラス、最下位争いはCharlotteとOhioの新規参入2チームと見られていた。

従って、今回の試合もエースCrottyのいないRattlersをNationalsがカモって終わりと見られていた。

が、ふたを開けてびっくり。これがMLLの解らない所、素晴らしい所でもあるが、何とRochsterが予想外の善戦。Crottyがいない分を全員でカバーし合い、伏兵がステップアップし、17-10で堂々の勝利。

Rochester Rattlers (Roster)
  • 大エースCrottyがいなくなったら攻め手が無くなると見られていたが、全く間違っていた...MF軍団がゴリゴリ抜いてしっかり決めまくり。つうか、ぶっちゃけCrottyいない方が皆がボールを共有して、バランスよく攻められており、下手したらそっちのが強いチームに見えなくもない...
  • これまで脇役だった選手たちがステップアップ。特に今まで見た事も聞いた事もない地元Division 3 RIT大学なる無名校出身のCanadian #29 MF Jordan MacIntoshなる選手が怒濤の5得点の大活躍。今まで練習生としてRochesterで貢献していたが、その才能に気付かれチャンスを与えられ、今回の試合で隠れキャラ/秘密兵器としていきなり大ブレーク。こんな選手がいたんかい...MLLではどのチームにも数人ずつ、この手の大学時代無名だった社会人(プロ)デビュー組がいる。大学時代にスポットライトを浴びていなかっただけにハングリー。
  • 07-09年辺りにChicago Machineで一時代を気付いた強力ベテランAT #91 Kevin Leveille (UMass 03)が膝の怪我と去年の一年間の結婚による休養から復帰。まだ本来の動きは取り戻せていないが、それでも尚当時の片鱗を見せ驚異的な得点を見せた。
  • DFが明らかに成長している。#16 G John Gallaway (Syracuse 11)がここに来てメキメキと実力を上げ、MLL屈指の守護神へと成長しつつある。彼の統制の下、チームDFがかなり良くなって来ている。Nationalsの強力なCanadian OFをチーム全体で頑張ってカバーし合い、守り切った。Close DFも#40 John Lade (Syracuse 11)に加えて#37 Michael Manley (Duke 12)が入った事で明らかに厚みが増している。Manley今後かなり凄いMLL DFになりそう。
  • あと、明らかに、#11 LSM Joel White (Syracuse 11)の存在感半端無し。相手MF止める、拾う、トランジッションする、クリア後シュートまで行く、更にセットOF参加する。Brodie Merrillの後継者。

Hamilton Nationals (Roster)
  • とにかく印象に残ったのは#1 AT/OFMF Joe Walters (Maryland 06)巧さ。クソ勉強になる。ラクロスと言うスポーツをよーーーく解った賢いプレーをいくつも見せてくれる。横に2-pointアーク沿いに抜いてスライドを引きつけてヒョイッと空いたクリースにパスして得点を演出。マークにShortyが着いた瞬間隙を付いてズバッと抜いて得点。身体能力やパワーに任せたプレーではなく、単純に賢さと巧さだけで個々まで突出したレベルでパフォーム出来るという例。感動的。

Highlight



2012年7月1日日曜日

海を渡る侍

これ、2008年に別のブログに書いた記事。最近きっかけがあって読む機会があった。当時の気持ちが思い出されて懐かしかったのと、初心を思い出させてくれた。

参考までに転載。(リンク)当時まだブログ書き始めたばっかで、我ながらちょっと文体がぎこちないっすね...

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先日お伝えしたラクロスNCAAトーナメント決勝戦観戦ツアーの、ボストンでの男子ラクロスの準決勝、決勝の観戦では、日本から試合を見に来ていたラクロス仲間の方々とご一緒させて頂いた。学生時代にラクロスをプレーしていた頃にお世話になった方々だったのだが、その時以来の再会で、非常に懐かしかった。「お互い変わってないねー」「ちょっと太ったね」とその後の話や将来の話をしつつ、盛り上がり、最高に楽しい時間を過ごさせて頂いた。
そこで、その中の一人の方から非常に心を打たれる話を伺った。
てな訳で、ごめんなさい。ここらでまたしてもアッツイ話を一発書かせて頂きます。

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1.出会い
彼は、高校時代からラクロスをプレーし始め、大学では最も強かった伝統校のチームでプレーし、その後も社会人になって強豪クラブチームのエースとしてチームを何度も日本一に導いた方で、日本のラクロスの世界での第一人者。骨格が大きいのに加え身体能力も高く、またスティックワークも安定しており、且つスポーツで必要なクレバーさと揺らがぬメンタル、そして何よりも大事な、『努力する能力』を兼ね備えた素晴らしい選手で、日本のラクロス界でも、「最も日本人離れした選手」の一人として認知されて来た方。
IMG_0932.JPG高校時代から日本代表としてプレーし、それ以来過去のワールドカップ全てで日本の大黒柱としてプレーし続けてきた。僕が大学1年だった頃、4年生として某強豪校のキャプテンをやってらして、僕のチームとの試合でも要所要所で素晴らしいプレーをし、勝利に貢献していた。その時にフィールドでプレーする彼を見て、文字通り『鬼神のような』人だなー、と思っていた。その後も日本代表の合宿の手伝いをした際に多少言葉を交わしたことはあったのだが、それ以来彼がプレーする姿を見ることこそあったものの、直接お会いしてお話させて頂く機会は残念ながらこれまで無いままだった。
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2.知らなかった過去
彼にお会いするに当たり、ここ数年ラクロスの世界から遠ざかっていたこともあり、お会いするに当たっての基本動作ということで、事前に彼がここ数年どういう活動をされていたのかを下調べしておこうと思い、ググッて(Google検索して)みた。すると、僕の知らなかったここ数年の彼の軌跡に関する情報がいくつか引っかかった。どれどれ、と思って見てみると、スポーツ関連のメディア系のホームページで、海外に挑戦する日本人アスリートの特集記事の中で、インタビューを受けていた。おりょりょ?そんなことされてたんだ、と思い、じっくり読んでみた。
IMG_1018.JPGこの方、社会人クラブチームで数年間プレーし、日本一を何度か達成した後(ここまでは僕も知っていた)、どうやらラクロスの本場であるアメリカでプレーしていたらしい。しかも、過去2年間に至っては、アメリカのプロラクロスリーグ、MLL(Major League Lacrosse)のトライアウトに呼ばれ、そこで何週間かの開幕ロースターへの生き残りを掛けたトレーニングに出て、残念ながら最終的な開幕メンバーには残れなかったものの、最後の一人というところまで2年連続で行っていたらしい。
IMG_1014.JPGこれはラクロスをご存じない方には伝わらないかも知れないが、無っっ茶苦茶凄いことだ。野球や卓球やテニス、ゴルフ、バレーボールと言ったスポーツと違い、ラクロスには思いっきりボディコンタクトがある。柔道や格闘技のように体重による階級制度がある訳でもない。彼自身180センチ以上あり、日本人としては大型なのだが、アメリカのトップレベルでは俄然小さい方だと思う。また、アメリカのトップアスリートたちなので、パワーもスタミナも一回りどころか二回りも三回りも日本人よりも上。また、高校からプレーし始めた彼と違い、多くのトッププレーヤーたちはそれこそ物心つかないころからラクロススティックを握り、毎週試合や練習をしながら育ってきたような奴ら。スティックを体の一部であるかのように巧みに扱ってボールをハンドリングする技術が肝であるこのスポーツに於いて、このキャリアの差は致命的とも言える。
IMG_1015.JPG従って、ハード面で大きなハンディを負った状態。もちろん、ゲームに対する知識や経験というソフト面も、大きく足りない状態だったと想像する。少しでもご感覚を持って頂くためにもう少し補足すると、(もちろん本当の国民的スポーツであるアメフト、バスケには比べるべくも無いが)競技人口数十万人という大きなピラミッドの中で本当にえりすぐられたエリート・オブ・エリートのみがプレーする場であるプロリーグに挑んだ。しかも、その環境の中で実際にパフォームし続け、実力を認められ、そのフィールドに立つ本当に一歩手前のところまで行ったのだ。
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3.挑戦
その話を聞いて尚更お会いできるのを楽しみにしていた。実際にお会いすると、非常に紳士的で、成熟した、尊敬できる大人という印象。意思の強さと、人間としての魂の強さが伝わってくる。そして、一緒にいた2日間の中でいろいろとお話を聞かせていただく中で、いろんなことを知った。
彼は日本のトッププレーヤーとしてプレーし続けながら、常に、世界最高峰のフィールドであるアメリカでプレーしたいという想いを抱き続けて来たという。高校時代からワールドカップで世界最高峰の選手たちと渡り合って来て、(もちろんラクロス後進国の日本と、ラクロスの発祥の地であり本場でもあるアメリカとでは大差の戦いになるのだが、)その中でも彼はそのレベルを肌で感じたのだと言う。そして、個人として本気でぶつかり合った時、そのレベルでやれるのではないか、少なくとも通用するのかどうか試してみたい、最高峰の環境にどこかで一度チャレンジしてみたいという想いが強くなったという。
IMG_0965.JPG実際に彼は、社会人になって何年かの間、自分たちが作ったクラブチームの大黒柱として度重なる日本一に貢献した後、遂に、アメリカに行くことを決断する。それまで勤めていた、世の中一般的に見れば誰もが羨むであろう一流大企業を辞めて。
その後の挑戦も、決して平坦な道のりではなかったらしい。
最初に、何とかアメリカのチームでプレーするために、過去の国際大会で知り合ったクラブチームの伝を辿り、最初の一年間、アメリカ東海岸のそこのチームに混ぜて貰ったとのこと。そこで、アメリカのラクロスに慣れると共に、実績を残し、名前を売り、ラクロス界の重要人物たちとコネクションを築いていったという。その過程で、最初はプレー面でもかなり苦労されたと仰っていた。国際大会で日本代表の一員として米国代表と試合をするのと違い、実際に彼らの中に入ると、そのプレースタイルや哲学が、日本のラクロスとは全く別のスポーツであるかのように錯覚してしまうくらい、全く異なっていたと仰っていた。それにアジャストするのにかなり苦労されたらしい。
IMG_0915.JPGその後、さらに挑戦を続け、次の年、もう一歩高いレベルのクラブチームに移籍。そこでさらに実績と信頼を積み重ね、コネクションを作り続けた。その年の最後に、結局ダメかも知れないと一度諦めて日本に帰った後、思いがけずプロラクロスリーグMLLのシカゴにできる新チームのトライアウトに声が掛かったという。先ほど書いたとおり、最終的なロースターには残らなかったが、最後の一歩まで残ったという状況。次の年も再度西海岸のチームのトライアウトに呼ばれ、こちらも最後の一枚までもつれて、最後の席を争う二人、というところまで残ったのだが、残念ながら、やはり最終的な一軍メンバーには残ることが出来なかったとのことだった。
IMG_1016.JPG実力や体力は十分なのだが、どうしても年齢的に30歳を超えているため、席を取り合う相手の20代前半の若いアメリカ人と比べられたときに、「実力は同じ。でも、申し訳無いが、より将来のキャリアが長く、投資対効果の高いあいつを選ばせてくれ」となってしまったとのこと。実際の実力とは別の、周囲の選手たちの、東海岸の伝統的名門強豪校でプレーしていたという『レジュメの強さ』も感じたと仰っていた。(この話はアメリカのキャリアのレジュメ文化的な側面を非常によく表していると思う。)それでも尚、本場アメリカで、全国ネットで放映されるレベルのプロスポーツの世界で実質的にフィールドに立つ一歩手前まで行ったのだから、文句無く物凄いことだ。
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4.道程
そして何よりも僕の心を打ったのは、そのプロセス。彼はどちらかと言うと物静かな性格で、明らかに、生まれ付きのお喋りの超社交好きというキャラではないように見えた。英語力も、帰国子女でもないし、(大変失礼ながら)決して上手くはなかったと彼の友人が仰っていた。そんな状況で、何回か試合をしたからという伝を辿って、たどたどしい英語を省みずチームに合流し、そこで地道にコネクションを作っていった。
トップクラスの選手、経営サイドの人間のほとんどが東海岸の伝統的名門校出身者でがっちり固められたコミュニティであるプロラクロスの世界に徐々に入り込んで、「つか、誰あいつ?」「ああ、なんか日本人らしいよ」「ふーん」という状況から、「○○っていう日本から来た面白い選手がいるから今度見てみてよ」となり、遂には「結構いいね、今度トライアウトに呼んでみるか」というところまで地力で持っていったのだ。ラクロスの実力を磨くことはもちろん、そうやってアメリカ独特の「ネットワーク文化」を理解し、本来弱みであるはずのコネを、地道に積み上げ、最終的には強みとしてレバレッジすることで夢の実現へとゴリゴリと近づいて行ったのだ。
IMG_0923.JPGこれは、既に日本人選手の評価の相場が出来上がっているメジャーリーグに、今のプロ野球選手が高い報酬とポジションをある程度約束された状態で、鳴り物入りで入るのとは違う。もちろんそのケースが簡単だと言う事では決してないが、全く見えない道を切り開いていくというパイオニア度の高さはでは、今回の話は群を抜いている。そもそもプロになる方法すら全く判らない上、過去の事例からどれだけ通用するかの確度を読むということすら出来なかったのだ。どんなに実力があったとしても、恐ろしく強い意志と憧れが無いとできないだろう。
IMG_1005.JPGネイティブアメリカンの部族間の戦闘訓練にその起源を持ち、400年の歴史を誇る、コミュニティに深く根を張ったアメリカのラクロスと異なり、日本のラクロスは、まだ輸入されてから20年が経ったに過ぎない。まだまだ世間的な認知度が高いとは言えないだろう。マイナースポーツ故の悲しさか、彼の挑戦の話は、今まで新聞や雑誌Numberに載った訳でも、Top RunnerやプロジェクトXで特集された訳でもないのだが、そうなっててもおかしくなかったと思えるくらい、この話は物凄いし、身近な人の話だったこともあり、僕の心を深くえぐった。

5.「リスク」
そこで、彼のチャレンジにいろいろと想像をめぐらせる。恐らく、いろんな不安や葛藤があったのかも知れない。
彼は日本のラクロスの世界では誰もが知っている、ヒーロー的、カリスマ的選手だった。日本に残り続ければ、そういう立場で他の選手やファンたちから尊敬され、誰もが羨むキャリアを歩めただろう。アメリカに行ったところで、どれだけ試合に出られるか、どれだけ通用するかも見えない。そこでキャリアが行き詰ってしまうリスクだって想定されただろう。人によっては、敢えてリスクなんか取らずに、迷わず日本に残り続けるという選択をするケースも多いだろう。
 IMG_0956.JPG記事を読んだ範囲では、やはり親戚からのプレッシャー等もあったらしい。恐らく、知人の中には、そんな挑戦上手く行かないんじゃないか、現実的じゃないんじゃないか、リスキーだからやめておけと言う人もいたのではないかと想像する。会社を辞めた時点で、会社の方々の中には、もちろん理解して応援してくれた人も多かったと思うが、一方で、理解できない、やめておけ、馬鹿げていると反対した人たちもいたんじゃないかと想像する。それは、会社で彼のことを買っていた人であれば尚のこと。
それでも尚、彼は、それらの不安や反対する声を振り切って、自分の夢を信じて、挑戦した。悔いの残らぬよう。結果としては、最終的にプロ選手になることは出来なかったのだが、その一歩手前まで行けた。
IMG_0925.JPG彼の表情や言葉を見ても、全く後悔は感じられなかった。むしろ、自分の夢、想いのために挑戦して全力を尽くしたという、自信とすがすがしさに満ちていた。揺らがぬ、強い信念を感じた。「僕はこの世界で身を立てていく、この世界に軸足を置いて生きていくと決めたから」と仰っていた。そして、その言葉からは強い意志がほとばしっていた。
恐らく、自分のcomfortable zoneから飛び出し、新しい世界で試行錯誤するプロセスで、大きく成長されたのではないかと想像する。
彼と会い、この話を聞いて、心の底から痺れた。そういう生き方に強く共感を覚えた。心底、むちゃくちゃカッコいいと思った。
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6.生き方
人それぞれ、夢や想いがあって、価値観があって、人それぞれ取れるリスクや経済的な制約条件があって、そんな中で各々がいろんなチャレンジをしたりしなかったりして生きて行くんだと思う。夢があっても、チャレンジできるだけの実力が無かったり、実力があっても、そういう機会が無かったり、機会があっても、いろんな理由で敢えて踏み出さないことを選択したり。もちろん、どんなに実力とチャンスが有っても、これまで積み上げて来たものを失うことを勿体無く感じたり、先の見えない道へと踏み出すことに躊躇を覚える人も多いだろう。
IMG_0913.JPGそんな中で、『人生を後悔する』という最大のリスクを回避するために、周囲から見たら馬鹿げていたり、短期的な損得勘定で見たらどう考えても大赤字だったり、キャリア的に見たら回り道だったりしても、自分がその時に心底情熱を感じられる選択肢を敢えて選び取って行くという生き方もあると思う。「人生に於ける本当のリスク」って何なんだろうか。自分が死の床で人生を振り返った時に、「ああ、俺は70年間賢く計算して、ちゃんとリスクを回避し続けて、最高に安全な生き方をしたから一個も失敗しなかった!我が生涯に一片の悔い無し!(ラ○ウ風)」なんてことになるのだろうか、と思う。
IMG_1013.JPG自分の夢を信じ、敢えてcomfortableな環境を飛び出して、安全に富と地位と名声が得られる道を捨てて、勝てるかどうか判らない戦いを挑んで、でもそんな生き方にドキドキワクワクし続けながら(『オラ、もっとつええ敵と戦えると思うとワクワクすっぞ!』〔ゴ○ウ風〕みたいな)、新しい環境で苦しみながらも、大きく変化し、成長する。新しい世界を見る。今まで知らなかった自分を見る。そして何よりも、そのプロセスを心底楽しむ。そういう生き方もあるよなと。
IMG_0960.JPG彼の、夢を信じて前に進む強い意志の力が漲る目を見て、そしてその鍛え上げられた肉体と魂と、精悍な表情を見て、正に古武士みたいな人だなーと、これこそホントの侍だぜと。そして、こういう大和魂もあるんだなー、と、思わされた。
ラクロス観戦に行った旅行で、試合そのものとは別のところで、思わぬ感動と刺激を受けた。
IM class of 2009