2012年7月23日月曜日

2012 U-19 vol.01 勢力図の変化

7月12日からフィンランドで行われている2012 Under 19 World Lacrosse Championship(19歳以下世界大会)。

(参加チームリストを見る限り日本は参加されていないようなので、恐らく何らかの事情で方針を変え、参加しない意思決定をする事になったんじゃないかと推察する)

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ここまで予選リーグと決勝トーナメントをやって来たが、一つの大きな時代の転換、勢力図の変化を告げる現象が起きている。

これまでのU19は1988年からの過去6回、全てUSAが優勝。36試合全勝の負け無し、パーフェクトレコードを誇って来た。(Wiki

が、今回、何と予選リーグでUSAがCanadaにOvertimeで11-9で敗北、更に弟分のIroquois Nationals (Native Americanの6部族によるチーム)にまで15-13で負けてしまったのだ。

これはかなり衝撃。

一言で言うと、ことジュニアレベルに於いては、Canada、Iroquoisが一気に国際的なラクロスのCompetitionの中で伸びて来て、独走体勢だったUSAに追いついていると言う事。

逆に、Australia以下、日本を含めた4位以下とTop 3の差が更に開きつつあると言うこと。

間違い無く言えるのは、USAのラクロスのレベルが下がっていると言うことは絶対に有り得ないと言う点。高校レベルでの競技人口は過去10年で3倍以上になっている。ジュニアの選手たちはどんどん早熟になり、優秀な選手になると、中学レベルから大学のスカウトの話が出始め、高校1年で推薦の話を貰い始め、高校2年で大学をコミットし始めている。メンバーにはNCAA Division 1の上位校でプレーする新2年生もちらほら入っている。10年前のU-19のチームに比べてレベルが下がっているとは考えにくい。にも関わらず。

Canadaが強くなっている事情の裏には、元々分厚かったIndoorの人材を、Hill Academyなどの体育エリート育成私立高校でフィールドラクロスの経験を積ませてNCAAに送り込む仕組みが出来つつある点。その中で、早い段階で質の高い選手が質の高いフィールドラクロスに触れる様になって来たことが大きい。(NCAA上位校でプレーするCanadianの数は90年代には数える程だったが、今や100人規模。Stony BrookのCrowley (Hamilton Nationals)やDenverのMark Matthewsらスーパースターも毎年で始めている。)

Iroquoisも同様。Jeremy Thompson (Syracuse 11)らThompson兄弟の例からも解るように、元々文字通り生まれた頃からスティックと共に育って来た彼らがNCAAに多く進出してくる中で、若い頃からこれまでのインドアに加えて質の高いフィールドラクロスに触れる様になって来ている。

 Australiaは、僕が10年前に滞在していた時の感覚、その後インターネットで知る情報で想像するに、やはり地元のクラブチームを軸としたコミュニティなので、爆発的な成長は期待出来ない。(時々突出的な神童が出ることはあるかも知れないが)

いずれにせよ、USA, Canada, Iroquoisいずれも、既にU-19の段階で、①かなり広い人材プールの中から相当熾烈なスクリーニングを経て技術/フィジカル/ラクロスIQに於ける上澄み中の上澄みを選べている、②幼少期から高い質のラクロスに触れ、高い質のCompetitionに触れている事、が大きな強さの源泉になっている事が解る。

(加えて、現行の緩い出場国選定のルール上、正代表ではEnglandを始めとしたヨーロッパ各国は実際にはNCAAでプレーしている/していた、「ひいひいおじいちゃんがEnglandからの移民」「一応イタリア系アメリカ人だし」みたいな選手たちが即席で所属してチームを作るため、実質的にアメリカ人の主力に率いられたチームになりつつある。)

日本が国際的なCompetitionの中でトップ2国に勝って行こうとするならば、やはりこの辺の構造的な、土台の部分の差が占める要因の方が、既にサチっている大学レベルでの普及度やその後の技術的な育成を磨く事よりも遥かに大きくなって来ている事が感じられる。もし打倒USA/Canadaを目指すなら、高校/中学以下での大きな大きな普及の梃入れが絶対に必要だと断言出来る。(US/Canadaに勝つ/少なくとも試合になるレベルでやり合う、という尺度でのROIを測ると、あらゆる戦略レバーを机の上に並べて比べた時、これ以上血眼になってクラブチームのエリート選手を鍛えて乾いた雑巾を絞りきる事と、ピラミッドの土台を広げる事を比べた時に、明らかに後者の方がROIが高くなっている筈)

逆に、USAとCanadaは蚊帳の外なので、そもそも目標からは外して、WLCではUS/Canadap「以外」の中で一番になる(AustraliaやIroquoisやEnglandに確実に勝つ)、という「身の丈に合った」「現実的な」目標設定にするなら、今の方向で突き詰めて行けばそこそこ勝機はあるって話になる気もする。一番てっぺんを目指すかどうかで施策が大きく変わって来るはず。

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