2010年7月11日日曜日

MLL 2010 Game Review vol. 03 Team USA-MLL All Star

待ちに待ったお祭り、MLL All Star Game。これが終わるとシーズンは一気に終盤に差し掛かり、8月のプレーオフ、そしてファイナルに向けて順位争いが熾烈になっていくことになる。

バックグラウンド

毎年東軍と西軍、又は若手とベテランに分かれて対戦する通常のプロスポーツのall starのフォーマットを取るが、World Lacrosse Championship yearの今年は、4年前に引き続きAll USA vs MLL All Starという特殊な形式。

Team USAはちょうどHead Coach Presslerの大学Bryantにて1週間のtraining campを終えたばかり。来週以降の本番に向け、最後の調整試合ということになる。

一方のAll MLLは、ほとんど全員が去年try outを受け、US代表選考から漏れたメンバーたち。過去のUS代表メンバーも多く、また逆にUp and comingな若手も多く、次回のWLC選考に向けてアピールしたいという意図も。ほとんどのメンバーが選考から漏れ悔しい思いをしており、「俺を選ばなかったことを後悔させてやんよ!」というリベンジの意味合いも大きい。

概して毎年のAll starはどちらかというとお祭り/遊びとしての意味合いが強く、無駄に怪我や疲労をしたくない選手たちはいまいち真剣味に欠けがち。Dなあなあで、シュートは花火大会のように華々しいけど、試合そのものとしては30対20みたいな大味なものになり、いまいち面白くなかった。(であるが故に一部のファンやメディアから「プロなんだから全力でやれよ!」などと批判されてきた。まあ、選手だって本番はレギュラーシーズンの試合な訳で、「プロだからこそ下手にリスク取らないんだよ」という気持ちもわからなくはない)

だが、今年は上記の理由により意味合いが全く違う。US代表は最後の調整として真剣な目で汗びっしょりになりながら、叫びながらプレー。一方のMLL All Starも負けじとハッスル。試合中に乱闘寸前の小競り合いが生じたりと、「え?これホントにお祭りのAll Star Game???公式戦じゃないの?」と錯覚する程のクオリティの高い試合になった。(なので一ファンとしては、一ラクロスの試合として非常に楽しめた!)

去年のMLL All StarのDVDを伊部っちに送る際に、「これ見たら『MLLって面白くない』っていう印象を現役の皆に与えちゃうかもなあ」とちょっと躊躇しながら送ったのを記憶してるが、今年に関しては文句無しで「見るべし!」と言える。

Lax Unitedのハイライト映像。なかなかカッコいい映像作ってきてくれてます。

以下、いくつか見所/学びどころを紹介

Doc

Team US正ゴーリー、98年の代表チーム以来の復帰、Brian Daughertyの力の抜けた構えが際立つ。猫の様に柔らかくリラックスした構え。ゴールのどの場所にもパチッ!と瞬間的に移動できる。テニスでサーブを受ける際の柔らかさ/懐の深さを連想させる。解説者で元All America GoalieのQuintもNCAAの解説でよく多くのGoalieが構えで体を緊張させ過ぎていると指摘していた。ここまでリラックスしている構えは見たこと無いので、Goalieの選手には参考になるかも。

加えて、Dをコントロールするコミュニケーション能力、統率力の高さに定評あり。試合中の声を聞いてるだけでも参考になる。そのコミュニケーションの深さと広さ。機械的で一方的な掛け声だけじゃなく、双方向の会話に近い感じを受ける。Long stick陣から絶大な信頼を受けるだけある。

ちなみにDocは今年からIvy LeagueのU-Penn (University of Pennsylvania)のGoalie coachに就任しており、より包括的なラクロスIQを身につけつつあると言っていた。

Team USの戦術

試合を通し、Team USの戦術のMLLでのやり方との違いに驚かされた。完全にWLC仕様に切り替えてきている。これまでMLLのフィールドで見てきた選手たちとは完全に違う人たちにすら見える。shot clock violationのリスクを冒してでも忍耐強くボールを回し、崩して崩して、スペースのあるところでの確率の高いシュートを狙う。1発目、2発目のシュートチャンスでガンガン打つMLLとは全く違う印象。裏を返すと、やはりshot clockの無い現行のアマチュアのルールを前提とすると、ある程度そのやり方(コート全体を使って、Patientにボールを回し、無理なシュートは打たずにひたすらより確率の高いシュートのみを打つ)がlogically正しい戦略ということなんだろう。

個々の技術

気付かれにくい技術だが、US 1点目のAT #14 Ryan Boyleのクリース前GB後、抜け出してシュートにいく際のスティックの隠し方。上半身を柔らかく使いながら肩でLong stickのtrail checkを交わす。ボクシング/MMAで言うところのweavingの動き。UFCのRashad Evansを彷彿させる。

同じくBoyleの2点目、サブマリンからのlong stickを交わして表まで出て角度を作りつつGをズラす動き。

Daughertyのセーブがやっぱり凄い。柔らかく最小の動きでサクッとセーブする。

3点目、Seibaldのトップからのロングシュートが恐ろしく速い。こりゃ取れん...曰く「一段階上のギア」。

4点目、EMOでのMundorfの得点を生んだチーム全員でのパスワーク、及びMove to the ballの動きが教科書的に参考になる。

Half time skill competition 1: Fastest shot

ハーフタイムのfastest shot contest。昨年はTeam USのMF Paul Rabilが111 mile per hour (時速180キロ)で優勝し、同じくUS MFで昨年のCornell主将 & MVPのMax Seibaldが110 MPHで2位。今年はどちらが勝つか、そして新記録が生まれるかが注目された。

Max Seibaldが昨年の自己記録110MPHを上回り、昨年のPaul Rabilの世界最速記録と並ぶ111MPHを記録!

そして、注目のdefending champion、 Paul Rabil。何と昨年と同じ111を叩き出し、Seibaldと並ぶ!

延長の決定戦、Seibaldは109と2マイル落ち、Rabilは再び111でBack to backで優勝!しかしまあこの時速180キロっていう半端無い速さも去ることながら、2人が同じ111、Rabilは2年連続111。この数字が一つの大きな壁になっている。人間の体の作りや今のstickの構造を前提とするとこの辺が飽和点に近いんだろうか。僕が現役だった2000年前後は確か100MPH(時速160キロ)付近が世界最速と言われていた気がするので、そうは言っても10年で如何に大きく進歩しているかが分かる。RabilかSeibaldが来年この数字を超えてくるんだろうか?

Half time skill competition 2: Free style shot

08年にMikey Powellの”Behind the back flip shot”を生んだもう一つのお楽しみ企画、free style。去年はToronto Nationalsの人気者Goalie、Brett QueenerがMichael Jacksonへのtributeのダンスで優勝した。まあ、NBAのDunk shot contestのように派手なシュートというよりは、どちらかと言うと完全に遊びでCreativityを楽しむイベントになりつつある。

今年はKevin Buchananがなかなか危ないGoal barの上に立つ新しいシュートで優勝(Youtube)。個人的には2年前のMikey PowellのBehind the back flip shotほどの”style”はまだ出てないかなと...

後半

3Q MLLの4点目、Lizards #13 ATのStephen BurgerのBack hand dive shotが単純に見物としてすげえ。BurgerはDiv 3出身の無名選手からMLLに最下位指名で入り、そこから才能を開花させた遅咲きの選手。多くの中堅校/弱小校の選手たちに希望を与える存在。(ちなみにMLLはよく見ると意外と多くの中位/下位校の選手たちがいる。)

MLL 10点目、Team CanadaでMLL史上最高のoffense力を持つLong stick、Brodie Merrillのクリース前でのスティックワーク、 エンドを余らせて短くstickを持っての 、AT並みのシュートフェイクとシュート。Long stickの選手は是非参考にしたい。

4Q終了直前、USAによる同点弾12点目、Brendan Mundorfの6得点目のStanding shoot、パワーを押さえながらも正確で素早いシュート。この人のシュートの引き出しは本当に多い。上から下から横から、バウンドさせたり上と下に打ち分けたり。中でも特に母校UMBCの名伯楽Don Zimmermanの基本に忠実な教えを体現する、Over handのバウンドショットは極めて効果的。この試合を通してやはり期待通りの手堅い活躍を見せている。来週以降の本番でも間違いなく最大の得点源としてUSAを引っ張るはず。(ちなみにどうでもいいトリビアだが、親がAussieのMundorfはUSA/AustraliaのDouble nationality。前回のWLCはAustraliaで出ている。2カ国でWLCに出場するという珍しい例)。

あとは、どこの時間帯だったかは忘れたけど、前半USのG Doc (Dougherty)がDの時にクリースから飛び出してプレッシャーを掛けてダブって成功するシーン(多分決めごとの練習でチームとして意図的にやった?)などが印象的。

Shovel passの実用性

あと、どの時間帯だったかは忘れたけどFO直後のLong stickのscoop、そして即座にshovel pass。今回に限らず、MLLやNCAAを見る中で自分が「もっと練習して使っときゃ良かったな!」とつくづく思わされるのがこのshovel pass。日本でやってた頃の感覚だとちょっと上級技術/trickyなプレーと認識しちゃってたが、見てると全く持って当然の基本動作の一つ。ホントに相当使い勝手がいい。特にLong stickにとって。scoop 直後、face dodge的に切り返した直後、等々。 体の逆サイドにstickがある状態でもボールを投げられるという大きな選択肢の幅を与えてくれることになるので。単純な話、ボールを持った状態で通常は180°しかパスできるレンジ/角度が無いが、それが一気に360°近くに増えることに。ボールキャリアのパフォーマンスにかなり大きなインパクトを与えることになる。(実際Canuck (Canadian)たちはインドアで当然のようにそれをやっている。)

日本だと器用な選手やstick skillへの拘りの強い選手が時々(ちょっとぎこちなく)やる、というイメージかな?と思うが、こんなんキャッチボールや壁打ち、場合によっては正規の練習でのLine drillやTriangle passに取り入れてでも2〜3週間徹底的に練習すればすぐ試合で使えるレベルになるんじゃないかな?と感じた。ちょっと練習するだけで大きくプレーの選択肢が増えるので、極めてROI(費用対効果/投下時間対効果)の高い練習領域じゃないかと。持ち替えが難しく/持ち替えの機会が少ないLong stick、特にScoop直後に混んだ状態で細かいパスを放る必要のある局面に多く直面するLSMFが特に重宝するんじゃないかと。

その他の見所

MLL All StarはOffenseに偏った基準/人気で選んでいるため、Defensive middie/LSMFがいないというAll star定番の悲しいメンツ。やむを得ずコーチのHuntleyはZone Dを選択。意外にもそれがハマってしまい、急ごしらえのチームの癖にUSを苦しめることに。一方でUSのzoneへの攻めも巧く行くシーンもミスするシーンもあり、チームOFを学ぶ上で参考になる。パスを回しつつどこかで誰かが切り込んで崩して、空いたところで素早くclose/mid-rangeのシュートなど。

USを見ての感想

正直USはまだまだ連携が完全に完成してる感じはせず、sloppyな(しょぼい)ミスが目立つ。実際にはWLCの予選を通じて少しずつ作り込んでいく感じになるはず。

Brendan Mundorfが6得点と大活躍し、フィールドでも最も安定したパフォーマンスを見せる。フィード、ダッジ、シュートと全てに於いて基本に忠実で丁寧なプレーをしており、正に教科書にするのに最適な選手。

前回のCanada戦敗戦の雪辱を誓うキャプテンのRyan Powellはベンチでコートで声を張り上げチームを引っ張る。試合終了間際のDiveショットでの得点は感動的ですらあった。

いたる@13期

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