2011年11月10日木曜日

NCAA流 "冬休みの過ごし方"

もういっちょ。前回の「一年生の心得」に続き、今月のILに載っていたコネタ。これまた別の角度からの視点でNCAAの文化/仕組を映し出していて面白いと思ったので紹介。

"How to NOT be a fallball legend"(1学期目の秋学期の練習試合期間の伝説 [=シーズン最初の練習試合期間は超活躍して目立ってたのに、結局春以降の公式戦では試合に出られずに/ぱっとせずに消えて行った痛い奴] にならないためには)

どうやら結構多いパターンらしい。特に秋学期はチームの方針として、敢えて競争を加速し、才能を発掘するためにも学年や実力に関係無く敢えて均等に試合に出す傾向が強く、そこで思いっきりやって爆発的に活躍したのに、シーズンが近づくに連れて勢いを失い「あれ?そういやあいつどこ行った?」となるケース。ポテンシャルはあるが経験の不足する下級生などは特に。

年明けにシーズンが始まり、そのまま夏のリーグ戦までノンストップでシーズンが続く日本と違い、アメリカは長い夏休み後の9月の新学期に一度練習期間が始まり、その後11月のThanks Giving休暇から年末のクリスマス休暇と一度大きな休みが入り、直後に2月末の公式戦スタート、とちょっとトリッキーなシーズン構成になっている。日本で言う所の盆休みと正月休みがセットでどかっとリーグ戦の前に来てるイメージ(であるが故にシーズン初期はどのチームも試運転状態で、アプセット[番狂わせ]も頻発する)。

その辺の事情も踏まえて。

1. 冬休み中もtop shape(ベストコンディション)を維持するべし

せっかく秋学期にgreat shapeで始められたんだったら、秋学期中にゴリゴリにウェイト/カーディオやって鍛えたなら、冬に調子乗ってマッシュポテトとかステーキ食いまくって年明けに5-6キロ太って登場なんて失態は犯すな。

(日本だとやはりお餅とかお節料理か...)

2. 余計な怪我は避けろ

冬休みに帰った地元で久々にあった友達とやるスケートボード/スノボ、遊びでやるフットボールで怪我をして冬学期に戻って来たら選手として失格。どんなに友達に誘われても、それをやらなくちゃいけない理由なんてないんだし。羽目を外さない。高校までとは違うんだという自覚と責任を持つべし。

(これ、Hopkinsの不動のエースMF #9 John Greeley (Jr.)が、今年の夏のイベント、大学とは全く関係無くプレーしていたLake Placidで膝を怪我し、これから靭帯の手術→リハビリをこなすことになってしまったという話なんか典型的な例だろう。チーム作りの構想をぶちこわされたHead CoachのCoach Petroからすると泣くに泣けない...)

3. チームのシステム/戦術の中で活躍出来るようになっておけ

秋学期のOB戦で試合を見に来た彼女や家族を喜ばせるためにswim dodgeからのroll dodgeからのBTB (Behind the back)とかやってたよな?そういうの一切忘れろ。戦術無しで個人技のみで自由にやれるのは秋学期まで。冬学期からは本格的にチーム戦術/システム最優先でミッションをこなせるようになっておけ

(これもまた極めてNCAA的だ。そして高校までとの最大の違いだろう。よく見るとNCAAには才能があるのにシステム/戦術にフィットしないが故に試合に出られていない選手がゴロゴロいる事に気付かされる。)

4. 期待値マネジメント

超熱狂的に応援してくれる両親や親戚にはあんましラクロスオンライン掲示板にやり過ぎな応援ややらせ賞賛メッセージを書きまくるなと注意しておくべし。実力以上に期待値が上がると後でキツくなる。静かに、水面下で実力を高めておけ。

5. メディアの注目度を敢えて下げろ

背番号を敢えて変えて、Inside Lacrosseや地元メディアの注目度を敢えて下げろ。「あいつ誰だっけ?」と思われてるくらいがスタートとしては丁度いい。何点取ったかとか、何回ターンオーバーしちゃったかとか、そういうのは自分とチームメートとコーチが知っとけばいい。いちいちメディアで出来を評価されて、それを気にしてもしょうがない。

(ちなみにこれ、正にUNCのNicky Galassoがやっている。去年は#34。今年はこっそりと#42になっていた。練習試合で見た時に、「はて?あいつ誰?」となっており、ある程度作戦成功。確かに彼の場合は入学時から高校No. 1プレーヤーとして明らかに注目され過ぎていた。去年はACC Rookie of the Year取っちゃったし。)

以上が記事に載っていた5つの項目。

注目度のマネジ

この辺の感じ、面白いなーと感じる。日本と比べると圧倒的にファンの数も多く注目度が高い分、ILやESPNを始めとしたメディアの評価に晒される選手たち。5月の決勝ではNFLのスタジアムで、全米から数万人の観客を集め、試合は週末の昼に全国ネットで放映される。地元や大学のコミュニティでも注目される。

ネガティブな事も書かれるし、結果を常に気にしてセルフイメージを小さくさせられる事も多いと想像する。ちょっと無得点の試合が有っただけで「調子悪い」やら「怪我したか?」などと書かれてしまう。どんな大エースだって試合によってはアシストに徹する事だってあるだろうに...フォーラム(オンライン掲示板)ではバンバン悪口を書かれ、裏話をバラされる。どんなに雑音をシャットアウトして自分の事に集中しようとしても、嫌でも周囲の声が聞こえてしまうはず。

その辺のマネジがコンスタントにパフォーマンスを発揮し続ける上で鍵になってくると言う事だろう。

思い出させられるメンタルの基本

まあ、こういう話を読むと尚の事、辻先生に教わったメンタルの基本をリマインドさせられる。
  • 「他人でも環境でもなく、自分」
  • 「過去の後悔(あのシュートこっち打っときゃよかった)でも未来の不安(次の5分を凌げば勝てるかな?)でもなく、今を見る。今やるべき事のみに集中する。今に生きる」
  • 「結果じゃなく変化を見る。この試合に勝てるかどうか、このままじゃ負けちゃうかどうかじゃなく、今この瞬間この瞬間のベストを積み重ねていく。」
  • 「怒りや苛立ちの感情のスイッチはブチッとオフる。感謝、尊敬、信頼、応援、賞賛、憧れ、というポジティブな感情を周囲に投げ続ける。なぜならそれが結局自分に跳ね返って来てセルフイメージを大きくするから」
  • 「目の前にぶら下がるどの思考の紐を引くかが感情を作り、感情がセルフイメージを作り、セルフイメージがパフォーマンスを作る。故に、自ら正しい思考の紐を常に選び取って行く」
  • 「コントロール出来ない事は考えない/心配しない、コントロール出来る事に集中して全力を尽くす」
  • 「なぜならそれがセルフイメージを最大化させ、セルフコンセプトを安定させ、結果、パフォーマンスを最大化させる事になるので」
といったメンタルのマネジメントの基本。

正に、イチロー選手の、「今日打てませんでしたが、調子悪かったんですか?」という記者からの意地悪な質問に対して「別に。ただ自分は自分のやるべき事をやるだけですから。その質問に何の意味が?」という受け答え。松井選手の「NYのファンやメディアは活躍出来ないとボコボコに叩きますよ?」に対する「ま、別に僕はファンやメディアの意見をコントロールすることは出来ませんから。僕は僕の出来ること、つまり練習してパフォーマンスを高める事を淡々とやるだけですから。」的な。「大活躍ですね!」と言われても、「いや、自分の中での目標設定/ゲームプランを達成/遂行出来てないので問題外でしょ。」と答え、逆に「点取れませんでしたね」と言われても「いや、自分の設定した目標をクリアして変化出来たから合格でしょ」と返す本田圭祐選手のように。

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