2011年11月13日日曜日

ラクロスのスピードアップに向けたルール変更の動き vol.02

..の前に、現役の選手/スタッフの皆さんに一言だけ...

今年一年間、最高の感動と、勇気と、エンターテインメントを有り難う!!!

決勝戦は、結果だけ見ると残念っちゃ残念だけど、(最早卒業から時間が経ち、完全に「先輩」とか「Alum(卒業生)」というよりはむしろ純粋な「一ファン」になっている僕個人の感想としては...)まあ、結果は結果でしかなくて、やっぱりここまでcompetitive(強い)で素晴らしいチームを作り上げた事、実際にそれをフィールドで発揮してここまで勝ち続けて来た事、その過程でやるべき事を全力でやって挑戦/変化/成長し続けて来た事、そして僕らファンにポジティブなエネルギーを与えまくってくれて来た事、その全てが一番大事な最高の結果/成果物だと感じてます。

アメリカにいて、football, basketball, lacrosse等、(日本には存在しないレベルで)想像を絶するほどコンペティティブ(競争の激しい)な大学スポーツの世界を見ていて感じるのは、競技として成熟し、競争のライフステージが成熟した舞台では、本当に、「確実に、長期間安定して、絶対的な王者になる」ことは、不可能に近い程難しいなと言う事。

プロになる選手が各学年に10人近くいるくらい有り得ないくらい強力な布陣を整え、文字通り死ぬ程努力/練習し、しかもそれを最も合理的で科学的な方法で、メンタル/フィジカル/技術/戦術/環境、全ての変数を限界まで高めきって、磨ききって、理屈上これ以上無い所まで高めて、プレシーズンにほとんどのファンやメディアが優勝候補と目したチームが、その手前であっさりと倒されて行く過程を何度も目にして来た。NCAAや、NFL/MBAと言ったプロでは、それがもはや日常になり、ファンや選手たちも、多少のショックは受けながらも、最後は、「that's what it is(ま、勝負ってそういうもんだろ)」としか感じなくなっている。

「このチームなら優勝しても違和感全く無いな」、という、正に隙の無い、オーラ漂うChampionship級のチームが3-4チームあって、加えてアプセットでシンデレラストーリーを生みうるチームが5-10チームくらいあって、それらが熾烈な接戦を演じ続け、予測不能な結末とドラマが待ち受けている、それが醍醐味になっている。であるが故に、決勝戦だけではなくシーズンを通してのランキング/順位に大きな価値があり、決して優勝出来なくても伝説的に語り継がれるチームはいくらでもある。(去年のSyracuseやMaryland、2007年のDukeなんて典型だろう。Syracuseなんて、あれだけの想像を絶するドリームチームを持ってしても尚2年連続で決勝にすら辿り着けなかった。)

4年間夢見て来た目標、この一年間、文字通り全身全霊を懸けて挑んでいた日本一の目標が、最後の最後に手のひらからスルッと抜け落ちた感覚は、恐らく僕らからは想像も着かない程悔しくて、言葉では言い表せないくらいのものじゃないかと想像する。未だに現実として信じられない、受け入れられないという選手/スタッフ/関係者の方も多いと思う。(僕自身、卒業して10年経った今ですら、本当に、3年生の準優勝だったシーズン、4年生の3位だったシーズンで、自分がパイプに当てて外したシュートのシーンを未だに年に何回か夢で見て、追体験している。悔しさと共に。冗談みたいな話だが、本当に。色や音まで鮮明に。で、今戦っているこのビジネス/経営のフィールドでは絶対に後悔を残さないように全力でやろっ、と思いながら目を覚ます...)

一歩引いて、あくまで一ラクロスファンとして冷静なというか場合によっては若干興醒めな事を申し上げてしまうと、(試合を直接見ていないので根拠/自信を伴った形で言いきれないが、試合のレポートから想像する仮説で申し上げると)直感的に、今回の試合の前後3時間を切り取って、10回リセットボタンを押し直して、10回試合をやり直した場合、サイコロを振り直した場合、ルーレットを回し直した場合、またはゲームや映画のマルチエンディングとしてシナリオを見た場合、恐らく10回中5回なのか、8回なのか、2回なのかは全く分からないが(直接見てないので)、そこそこの割合で勝つ絵になってたんじゃないかな?と想像する。(もちろん、そうは言っても相手チームの接戦の局面で個の力で扉をこじ開ける力、メンタルの強さが働いて、若干ディスカウントしなくちゃいけないかもだけど...)

やはりそれだけのチーム、日本一になり「得る」チームを作ったと言う事は恐らく事実で、誇れる事だと信じている。(選手やスタッフの皆さんから「そんなの言い訳で、やっぱり結果でしょ!」と突っ込まれる気もするが、あくまで冷徹にファンの視点を貫いた場合...)

まあ、これまたもう一歩引いて、(自分への慰めの意図全く抜きに)そもそも環境要因や土俵の違いも込みでそもそもの議論をしちゃうと、体育推薦でスポーツエリートを取れるという要素が片方に有って片方に無い時点で明確にハンディキャップを負っている訳で。(もちろん、やってる選手や関係者の皆さんからすると、そんなの関係無くて、それも込みのゲームとして勝つ大前提でやってらっしゃるのは百も承知で、実際に勝ったり負けたりを繰り返して来た訳ですが...)

例えばこれがNCAAだとすると、scholorship(体育推薦/体育入試)無しのチームが有りのチーム相手に、決勝まで進んだり、そもそも接戦を演じただけで、全米が注目するニュースになるはず。要は、それだけ難しい事をやられた訳で、十分に胸を張っていいと信じている。

(繰り返しになるけど、言い訳作りや慰めの意図じゃなく、今後の現役の皆さんのモチベーションを削ぐ意図も一切無く、あくまで一ファンとして客観的に冷静に競争の力学/構造を見ると...という話。そして相手チームの皆さんも当然最高の努力と工夫を積み重ねて来られたが故の強さだし、決して「体育推薦/体育入試/体育学部があるから」強い、というファクターは強さを構成する一部の要素に過ぎなくて、やはりこれだけの素晴らしいチームを作られて来た事はまぎれもなく最大限の尊敬と賞賛に値するという大前提で。そもそも体育学部以外の選手も多い上、別に体育学部であってもトップアスリートだけが純粋に身体能力やスポーツのパフォーマンス「だけ」で入学されてる訳ではないと伺った事もあるので恐らくそんなに単純な話でもないんだろうと想像する。


もっと言ってしまえば、そもそも体育学部を持つ/作るか否か、athlete向けのscholorshipの有無/数/額、大学のコミットメントも含めてより広いラクロスの戦略変数の一つだとすると、「じゃあ体育学部作ればいいじゃん。そういう努力してんの?それも含めて実力だろ?」というロジックも成り立ち得る訳で...(NCAAだとかなりそういう考え方に近い。)加えて、最も大事なのは、そういう素晴らしい好敵手に恵まれたが故に周囲のチームも成長出来るという事実に感謝しなくちゃいけないという前提で。また、ファン視点としても、入学時には線の細いどちらかと言うと勉強メインでやって来た選手たちが努力/成長して体育大学に勝ちに行く所にドラマや面白さがあるって話もあるし...


そして何よりも忘れちゃいけない最も重要な事は、「身体能力はtrainable(鍛える事で上げられる)」という点。科学的に、賢く正しく努力すれば、カーディオもスピードもパワーもバランスも柔軟性も、全て相当なレベルまで変化させ得ると言う点。サイズ/体重ですら。動体視力や反射速度ですら。『動物的勘』や巷で言う所の『センス』ですら、相当な部分までパターン認識と学習で作り込める。ある意味本当に与えられた物有りきで戦わなくちゃいけないのは極端な話、骨格だけ(ジャック=ハンマー(グラップラー刃牙の)ばりに骨格そのものを改造しない限り)。恐らく入学時点での身体能力の差は、4年間で変化出来る延び幅からすると相対的には結構小さい物なのかも知れない。DNAや素材の違いが議論になってくるのは、本当にそれら全ての変数を限界まで高めきった、競争の飽和の先にある極の極の戦いに於いてのみ。で、恐らくまだ日本の大学ラクロスはそこまで突き詰めきっている気はまだしないし...

と、脚注が異様に長くなって訳が分からなくなってしまったが、要は何が言いたかったかと言うと、入学時の素材としてハンデを負った状態にも関わらず、間違い無く良くやった!という事ですな。

特に、今年のチームは、2010年に、Maryland 2011やSyracyse 2011のように、明確に強力で分厚い4年生が率いる「波」の代を経験した直後の代で、一般的には経験不足でパフォーマンス的には「谷」が訪れても全くおかしくなかった年のはず。ここだけの話、一ファンとしては、heartbreakを避ける意図で、シーズン当初には「今年はちょっと期待値下げた方がいいのかな...?」とも思っていた。であるが故に、リーグ戦を通して勝ち続ける姿には去年以上の感銘を受け、力強いポジティブバイブレーションを頂いていた。

と段々話が無駄に広がり続けて来たので強引にwrap-upしに行くと...

繰り返しになるが、僕個人としてはとにかく、皆さんの活躍を聞く事で、最高の興奮と感動と勇気を貰い、応援する事を通じて自らの中にポジティブなエネルギーを生ませて頂いた1年間でした。ただただ、尊敬と感謝の念を感じてます。本当に、有り難う!!

と言う訳で、今後も何か協力出来る事が有れば喜んで協力させて頂くので、何か役に立てる事があれば気軽にご連絡下さいな。チームの事でも、キャリアの事でも、留学の事でも。

++++++++++++++++++++++++

で、こっからが本題というか、元々の記事。

先日紹介したショットクロック等のラクロスのスピードアップに向けた記事のアップデート動画がILに載っていたのでクイックに紹介。Quintと並ぶIL & ESPNのラクロス解説者、Mark Dixonによる解説。

リンク


いくつかポイントを要約すると...
  • 散々議論されて来た通り、近年のNCAA Men's Lacrosseは(スティックの進化に伴いボールが落ちにくくなった事でポゼッションが変わりにくくなり)、ペースの鈍化が顕著になり、経験者以外からすると取っ付きにくい/面白くないスポーツになってしまっている
  • 今年の秋の練習試合期間に、NCAAのルールコミッティの管轄下で、いくつかのスピードアップに向けた実験が行われた
  • 最大の変更/実験は(MLLやNLLと同様の)60秒ショットクロックの導入。
  • 正直自分も最初は導入に懐疑的だった。
  • が、実際に何試合かオフィシャルをしてみたり、観戦してみて、意見がガラッと変わった。今は完全に支持している。
  • 試合を止めどなく流れさせ、オフェンスのテンポを明確にアップさせる効果がある。
  • 実施に於いて新たに検討が必要になってくるのが、屋外用のデジタルクロック。スタジアムの備え付けのクロックを使うのか、(バスケの30秒タイマーみたいに)外付けで付けるのか。
  • もう一つの変更は"Counts on clears"または"Clearing counts"。
  • 一つのケースでは20秒以内にフロントコートのルールでやっていた。
  • これも大事なのは、オフィシャルが数えるだけじゃなくて、実際に選手やコーチから時間が見えるようにすること。
  • いくつかのtake awayは...
  • よりノンストップで走り続けなくてはいけなくなるため、オフィシャル/審判が結構good shapeになくちゃいけなくなるということ(走れるようになっておかなくちゃいけないということ)。
  • MFが同様に相当走れるようになれる必要があり、よりOF/DF両方をこなせるようになることが求められるようになる。
  • OFに於いては、ここ数年ATが主役になってきたが、60秒ショットクロックが導入される事で(MLLで実際にそうなっているように)OFに於けるMFの重要性が一気に増して来る。(ボールを落として、ATがXから「じゃ、いきまっか」とやる時間が無くなり、取りあえず一発目はMFからガンガン崩して行って、打てたら打っちゃおう、となる)
とのこと。

Lacrosse Hot Bed(メッカ)のBaltimore出身&在住で、HopkinsでMFとしてプレーしていた彼。現在もオフィシャルやメディアとして深くラクロスに関わっており、ESPNやILでの発言も冷静で深い分析に基づいている。その彼の意見なので、恐らくそんなに関係者全体の平均値とズレていないんじゃないだろうか。

結論から言うと、非常にポジティブということだろう。選手やコーチやオフィシャルがブーブー文句を言っているという話も聞かない。具体的なタイミングがいつになるかは別として、恐らく方向性としてはこの流れで行くんじゃないだろうか。

MFの重要度が一気に上がる点に関しては、理屈で考えても納得出来る。実際にMLLで一番目立ってるのは最強MFのPaul RabilやStephen PeyserやMax Seibaldだし。Chesapeake BayhawksやHamilton Nationals等、MF軍団の活躍で躍進しているチームも多いし。身体能力の高い大型MFの時代が来るということか。

日本代表に取ってはどうだろう?純粋なフィジカル/athleticismの戦いの度合いが増すという面に於いてはネガティブ。トランジッションの数が増え、セットオフェンスの重みが減り、ブレーク/uunsettledの点が圧倒的に増えると言う面に於いてはポジティブ?結局試合の平均得点が大きく上がる事により、得点機会が増え、格下が格上に勝つための定石である、ロースコアの展開に持ち込んで、忍耐で耐え忍んで、限られたチャンスで鋭く刺して勝つ、という戦略が使えなくなり、純粋な上手さがより如実に出るようになるとすると、頂上はより遠くなる?

いろんな変数が+と−の双方に振れて、netで見ると差し引きどっちなんだろう。直感的には−の方が多くなってしまう気もする。が、いずれにせよちと累積思考とインプットが足りてない...NCAAでどう作用していくのかに注目。

5 件のコメント:

  1. 応援ありがとうございました。
    決勝までいけたときは嬉しかったですが、やはり負けてしまうと、本当に悔しいですし、後悔も感じます。しかし、4年目にして初めてのリーグ戦で決勝まで行け、延長戦に入ったときは純粋に試合を楽しんでました。勝てると思ってましたが、あと一点及ばなかったです。


    去年からいたるさんのブログを拝見させていただき、NCAAやMLL、NLLといったラクロスの本場について知る機会を得たことで、本当にラクロスが好きになりました。壁打ちにも目覚めました。今ではいたるさんのブログはもちろんのこと、inside lacrosseも毎日見てます。このブログのおかげで僕もかなり変われたと思いますし、24期もいい影響を受けました。
    僕らはこれで引退ですが、これからもNCAAやMLL、ブログは見ますし、後輩もこのブログを楽しく読んでるので、ぜひよろしくお願いします。

    ありがとうございました。

    24期 豊馬玄徳

    返信削除
  2. 玄徳
    いやーお疲れお疲れ!ホントよくやったっしょ!感動したよ!
    一緒に来年以降のチームもがっつり助けていこうぜ!

    返信削除
  3. いたるさん一年間ありがとうございました。

    あと一歩でしたがその一歩がでかかった気がします。

    スピードアップしたラクロスは競技としての面白さがさらに増しますね。日本でもいつ変更されるんでしょうか。

    いたるさんの論理的かつ鋭い意見が並ぶこのブログに現役一同よい刺激をもらっていました。これからもよろしくお願いします!あーいま俺からっぽですね。

    返信削除
  4. いたるさん

    はじめまして。コメントするのは、初めてです。24期の森です。応援ありがとうございました。
    いつも楽しくこのブログを読んでいました。
    このブログを読むようになって、本当にラクロスが大好きになりました。
    毎日このブログやInside lacrosseをチェックして、いつもグラウンドで玄徳や上野と意見を交わしていました。
    ラクロス大好きになることが一番部活する上でモチベーションになると思います。
    四年目は、海外のラクロスのサイトばかり見ていて、外人に憧れて、新しいgearを輸入し、クロスの編み方も外人っぽくし、個人的にすごく楽しんでいました。

    後輩にもこのブログを読んで、ラクロス大好きになってほしいですね。
    これからもこのブログの更新楽しみにしています。
    ありがとうございました。

    24期 森 健樹

    返信削除
  5. 上野、森両氏

    お疲れ!ま、これからの人生でラクロスよりももっともっと面白い成長や挑戦や試合がいっぱい待ってるよ!引き続き楽しんで行こう!

    返信削除