2011年2月1日火曜日

NLL 2011 Game Review vol.03 Philadelphia Wings @Colorado Mammoth

先週末はTVでWinter X-game、会場でNLLを観戦。Winter X 15のSuper pipeではShaun Whiteが他を寄せ付けぬ圧倒的な強さを発揮し、前人未到の4連覇。ShaunはもはやMichael Jordan, Tiger Woodsの域に達しつつある。幼少の頃からSkateboard, Snowboardの天才児として常にスポットライトを浴びて来た彼。潤沢な資金を背景に自分自身の大型パイプを作り、日夜「闇練」に励んで毎回新しいトリックを出して来る。強いから楽しいし儲かる。儲かるから強くなる。というスパイラルが加速され、誰も追いつけない領域に到達しつつある。完成度、スタイル、メンタル、「好き」や楽しむ心、全てに於いて負ける要素が全く感じられない。


(特に2000年代前半までは世界である程度のプレゼンスがあった日本も、X-game全盛時代を迎え、プロツアーの大型パイプに対応出来ずどんどん蚊帳の外に取り残されつつある。FIS Snowboard World Championshipという「公式」大会にトップレベルのプロが出場しなくなり、そこで勝つ意味が薄れつつある。國母選手を始めとした真駒内出身の選手達も苦戦が続く。アメリカやヨーロッパのプロツアーにガンガン参戦して行くしかもう世界のトップを目指す手段は無いんじゃないだろうか?この辺のビジネスが競技そのものを進化させて行くメカニズムが非常に面白い。)



さて、Philly Wingsのシーズン第三戦のDVD。AwayでColorado Mammothと。(NLLの観戦ガイドはこちら。)

Wingsは三戦目にして念願の初勝利!前半ボロボロから後半一気に爆発し、大接戦の終盤は家でテレビ見ながら大盛り上がりで「ぬああああキターーー!!!」やら「イェスッ!!!」やら絶叫してしまった...

背景

Colorado Mammoth(チームHP

NLLでは今期、オフシーズンにリーグ史上例を見ない程大きなトレードが相次いだ。その一つがJohn Grant Jr.のRochester KnighthawksからColorado Mammothへの移籍。膝の病気から復帰して以来昔の輝きを失ったが、それでも尚リーグ屈指のクラッチシューター。他には地元密着型でMLLのDenver Outlawsも引っ張るベテラン、戦う教師、Kidsに大人気のBrian Langtryがいる。

また、Canada西海岸はVancouver出身、Nenad, Ilija, AlexのGajic三兄弟(「イチ」と発音。クロアチア/セルビア系の名前かな?)も主力として活躍。次男Ilija、三男AlexはDenver大学出身で地元でも大人気。また、NCAAからは今年からNed Crotty (Duke), Ken Klausen (Virginia)が加入。(残念ながらCrottyはまだほとんど目立っていない&KlausenはACL(前十字靭帯)の怪我でリハビリ中)

Colorado州Denverは非東海岸地域として最近ラクロスが爆発的に伸びている都市。2014年のWLC会場にもなっている。NLLのMammoth, MLLのOutlaws共にファンベースが濃く、熱い。またDenver大学にPrincetonからHC Bill Tierneyが来て強豪校の仲間入りを果たしつつある。特にジュニアからハイスクールレベルでの伸びが著しい。スタジアムをパッと見て、客入ってんなー!という感じ。集客数でもMLL/NLL共に全米No. 1を誇る優良フランチャイズ。恐らくNBA Denver NuggetsやNHL Avalanchも保有するオーナーのStan Kroenkeの商才によるんだろう。会場の雰囲気の作り込みも、メディア戦略も一段洗練されている感じを受ける。

WingsHP

対するWingsはここまでの記事で紹介した通り開幕2連敗。Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D)といった'10 US代表軍団を擁しながら、ここまでうまく機能せず。何とか初勝利が欲しいところ。

試合全体を通しての見所

何試合かTVでNLLの放映を見る中で、少しずつ試合を観るスキーマ(認知/思考の枠組み)が出来つつある気がする。いくつかこの試合を通してNLLならではの非常に重要な局面/要素だなと改めて感じた点をピックアップ。

フィールドと違い、ゴールが小さく、ゴーリーも大きい。基本的に構えられた状態でシュートを打ってもほとんど空いているエリアが無く、どんなに速い球であっても確実にセーブされてしまう。で、どうやってゴーリーが構えていないサイドにシュートを打つか?というのがオフェンスの最も重要な命題になっているように見える。基本的には、A. ボールを持った状態で自分自身が大きくゴール前を横断するランニングショットやダイブショットか、B. ボールそのものを動かしてゴーリーが今立っているポジションの逆に振り、ゴーリーがポジションを修正する前に打っちゃう、という2通り。前者は試合の映像見てれば口あんぐりなプレーが連発されるので放っておいてもインプットされると思うので、今回は後者について深掘り。

①リバウンドの重要さ
  • もちろん、フィールドでも重要だが、NLLを見ていると得点の2-3割がリバウンドから生まれているように感じる。シュート直後でゴーリーの体勢が崩れている状況、別の角度からのシュートに反応してポジショニングを修正出来ていない状況で生まれるゴールの空きスペースを狙うことが肝になっている。
  • 試合を見ていると、場合によっては恐らく端からリバウンド狙いのシュート(ある意味、ゴーリーの身体や後ろの壁に当てる「パス」)じゃないか?と思われるものもある。30秒のショットクロックもあるため、尚の事積極的にシュートを打って、とっととリバウンド、という傾向が強い。
  • またクリースにいるForward(=AT)も基本的にはシュートの瞬間から、場合によってはその前から得点機会としてのリバウンドをかなり明確に狙った動きをしている。イメージ、バスケのスクリーンアウトのようにシュートの反射軌道を予測してゴール前のポジションを争うゲームが起きている。また直接シュートに繋がる拾い方、ダイブしながら転がったボールを直接ゴールに押し込むタッチ等、フィールドでクリースをやることの多いATの選手に取っては恐ろしく参考になる動きが多い。是非注目してみて下さいな。
②ボールを逆サイドにパスで振って即シュートの重要さ
  • 逆サイドに展開してゴーリーがポジションを移してゴールの空きスペースを埋める前に如何にシュートしてしまうかが極めて重要になっている。所謂クリース横でのquick tap shotだけに限らず、ミドルレンジのシュートでもnon-cradleのquickで打ってしまっている。
  • さすがにquickでのミドルシュートはNLL選手と言えども簡単ではなく、時々キャッチミスしてしまっている。それでも尚、ミスのリスクを負ってでも、これを打つ事によって点が取れる可能性がある(そうでもしないと点が取れない)ということなんだろう。
  • これもフィールドのクリース周囲のエリアで出来ればロングスティック相手に相当な脅威になるはず。ゴールのサイズが大きいので、多少精度を捨てても成功する可能性が圧倒的に高まるし。
  • 現役の皆もよく二人組で、EMOやfast breakのウィングポジションを想定して、パスを貰って小さいワンクレイドルで瞬間的にシュート、を延々反復してると想像するが、ノンクレイドルのクイックでのミドルシュートもドリルのルーティーンに入れれば得点力がまた一段上がるはず。
上記2点共に、Canadian finisher達がNCAAで大暴れしている理由の大きな要因になっていると改めて感じさせる。

また、今回の試合は試合自体も非常にエンターテイニングで面白い。波の行き来がかなり明確。前半はWingsは相変わらずのダメダメっぷり。ターンオーバーが多く、単発低確率シュートが多い。が、後半になってPhillyの単発攻撃が決まり始める。身体能力の高いAmericanの強引にも見える攻撃が、Mammothの疲れもあってか決まり始める。ああ、これがやりたかったコンセプトなのね。というのが少しずつ見えてくる。そして最後の最後まで勝敗の読めない、手に汗握る接戦。点の取り合いのシーソーゲームというNLLの醍醐味が存分に出たいい試合。

NLLは一回一回の攻撃が短く、ガンガンシュートを打ってトランジションするので、この辺のmomentum(波/流れ)の行き来がフィールド以上に明確に出る。

個別のプレー/選手の注目点

2Q Wings 2点目、Max Seibaldのクリア後の1 on 1からロールしてシュートまで。セットオフェンスまで待たずにチャンスがあれば積極的に1 on 1でシュートまで行く。スペースがあるので、相手との力の差があればセットよりも確実に点が取れる例。(ちなみにロールから左のシュートは完全にフィールドラクロスの動き)

2Q Mammoth 6点目、Langtryの3点目。この人は本当にロングシュートが上手い。何で入るんだ?タイミングのずらし、上下の高さの騙し、そしてスクリーン使いがむちゃくちゃ上手い。元々フィールドの選手で、昔はイケイケでとにかくガンガンシュートを打っていたが、歳を重ねるに連れ確実に学び、チームでボールを共有する事を学び、NLLにアジャストし、老練な頼れるベテランへと成長した。サラサラロングヘアーがカッコいい。

3Q WesterveltによるWings 6点目。ん?この人このシュート毎試合決めてるぞ?恐らく確実に決められる鉄板の得意技。Fade away気味にGLEからトップに向かいながらスクリーンを利用して意表を付く右手のミドルシュート。成功率かなり高い。これもフィールドでも凄い有効なんじゃないかな?是非完コピ目指しちゃって。

Wings #18 Max Seibald ('09 Cornell captainでUS代表)によるクリア時の激突ダッジ。フィジカルに明確に差がある時はいちいち相手をかわさないで、正面からぶつかって潰す...

John Grant Jr.によるMammoth 8点目同点弾。6割くらいの力でスナイパーのようにパイプ内側の角を射抜くミドルシュート。次の9点目も。手首を異様に柔らかく「シュパンッ!」と振り抜いているのが解る。機動力は落ちているが、この辺のシュートの巧さ、勝負強さは健在。8割の力でより全身を使って打つシュートとセットで覚えて、状況に応じてギアを使い分けられると圧倒的に得点の幅が広がるはず。

Highlight

Live streamでの試合中継のReplay

来週は地元Phillyで再戦。会場でばっちり応援させて頂きます。

いたる@13期

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