2012年1月27日金曜日

IL Podcast Michigan HC John Paul Interview

東大ラクロス部と10年に渡り人材交流を続けて来たMichigan大学ラクロス部Wolverines。先日での記事でも報じた通り、ここ数年MCLA(非体育会リーグ)で敵無しの強さを誇って来たが、遂に2012年から待望のNCAA Division 1入りを果たすことになった。

アメリカのラクロスコミュニティでも、相当久しぶり、というか、記憶にある時間軸の中では恐らく初めてのバスケ/アメフトの名門でもある超有名大型校の久々の参戦に、多いに期待と注目を集めている。アメリカで爆発的に急拡大/急成長を続けるこのラクロスというスポーツの勢いと人気を象徴する出来事とも捉えられている。2012年のプレシーズンランキングでは61チーム中48位の評価を受けており、体育推薦&奨学金無しの現メンバーとしてはそこそこいい評価。

ILの雑誌の方でも先月トップページで特集が組まれていた。(リンク

そんなMichiganのHC、東大にも何度も来て頂いたJPことJohn Paul氏が先日IL Podcastでインタビューを受けていたので、その内容を紹介。(ILの記事のリンク)彼の人となり、知性とインテグリティ、そしてリーダーシップと信念が垣間みれるインタビューだった。

ちなみに去年4月のNCAA入りの記事、及び、一昨年12月に書いた、実際にMichiganがNCAAに入ったらどのくらい強いかの記事

以下、印象に残った/学びのあった点に絞ってピックアップ。

Q. 一般に、MCLAからNCAAに加入するのは非常に難しく、多くの学校でその噂が立ち、消えて行った。どういう経緯で、どうやってNCAA入り、体育会化を成し遂げる事が出来たのか?

自分は14年前にコーチに就任した。当時は、まあ、もちろん、いつかNCAAに加入出来たらいいなとは思っていたが、まさか本当に加入出来るとは思っていなかった。それが実現されて感無量。

ただ、内容的にはチームとしては既に何年か前から非常に高いレベルの組織、施設を土台にチームとして活動して来ており、ここ数年は実際に非常に完成された強いチームを作り上げ、実際にMCLA連覇や無敗シーズンなど結果も出るようになって来ていた。

従って、自分としては既に中身としてはいつNCAAに入ってもおかしくないレベルまで来ていたと考えており、後は形式上の話だった。パズルの最後の一ピースは、2010年の頭に当時不振に陥っていたMichigan大学の体育会を立て直すべく新しく就任したAthletic Director(AD: 体育会部門のディレクター)である(元Domino's PizzaのCEOでもある新進気鋭のビジネスリーダー出身者)Dave Brandon氏(リンク)で、彼が正式にGo-signを出した事が最後の引き金だった。

(ちなみにこのDave Brandon氏、Michigan大学の卒業生で、Marketing会社のCEOを勤めた後、Bain Capitalに買われたDominoのCEOとしてTurn-around/Value-upに成功し、IPOを成し遂げている。つまり、全米トップクラスの優秀なビジネスリーダーと言う事。その彼がビジネスのフィールドで培って来た知恵とリーダーシップを買われ、凋落するMichiganの体育会の立て直しに向けて、白羽の矢を立てたと言う事。今後恐らくドラスティックで合理的な改革がガンガン行われて行く筈。アメリカのトップクラスのリーダー達は本当に引くぐらい優秀。今後どんな打ち手を打ってくるのか非常に楽しみでもある。)

Q. 資金とかどうしたのか?学校にとってはリスクを伴う大変な意思決定じゃなかったのか?

ハッキリ言って、Michigan大学のADは、全米でも恐らく最も注目され、責任の重い、大変な仕事。そんな中に飛び込んで、即座にいろんな情報を集め、思い切って意思決定したDave Brandon氏の能力と勇気とリーダーシップに感謝と尊敬の念を抱いている。これは決して簡単な仕事ではない。

ただ、チームとしては驚く程、揃えるべき物は全て揃っていた。非体育会のクラブ(日本で言う所のサークルとか準体育会のイメージ)としては例外的に長い歴史を持ち、選手、卒業生、家族から、情熱/想い、そして資金面での極めて手厚いサポートを受けており、いつでも飛び込める準備はできていた。

(これはMichiganラクロス留学をしたメンバーは恐らく身を以て体感した上で重々ご存知の通りかと。)

Q. これまで、実際にNCAA入りが決定した後の、秋学期、そしてリクルーティングはどう?上手く行ってる?

これまでのチームのフォーカスは明確に、Building Division 1 culture。Div 1として恥じないだけのチームの組織文化、規律を作り上げる事。これまではMCLAでは恐らく達成する事の出来る限界のレベルまで高める事が出来たと自負している。だが、それはやはりMCLAでの話。これから我々はハードコアで厳しいNCAAというトップレベルの戦いの中に足を踏み入れる。これまでとは違ったもう一段上のレベルの組織へと進化する必要がある。

特に一年目は関係者やファンにとっても、自分たちにとっても、first impressionを決める事になる極めて大事な年。それなりの物を見せたい。

ここまで選手たちはDedicated(真剣に努力してくれている)。全力でやってくれている。

一方で、長い目で物事を見る事も大事で、今年が全てではなくて、本当に大事なのは将来的に成長/成功して行くための土台を作る事。そのための準備段階としての意味合いも強い。


Q. 具体的に何をやって来たの?

まあ、自分は実際体育科で働いて来た訳で、Athletic Departmentの意思決定や活動に20年近くinvolvedされてきた。実際にアメフトやバスケを始めとしたtop versity(体育会の一軍)のプログラムを見て来ており、それらがどう運営されているかは良く解って来た。要はそれをやって来ただけ。We are pretty well prepared。


Q. 今はシーズンに向けてどうやって準備してるの?

とにかく大事なのは、Hard, passionate, smart lacrosseをやる事。
当然NCAAの体育推薦&奨学金で集められている強豪校を相手にプレーする上で、自分たちに取っての生命線は、ミスをいかに少なくするか。如何にスマートに(賢く、効率的に)プレーするかに掛かってる。

(これ、東大/京大始め国立系/非体育推薦系チームと超共通ですな。(集められ得るベストの人材を質量共に集めきる前提で)身体能力と技術を限界まで磨ききった上で、賢く、効率的に、効果的に、ミスを少なく、そしていい意味で狡猾に、プレーする。無駄な事や、バカなことや、勿体ない事はしない。そして、熱さ、一生懸命さと両立させ、そのプロセスを存分に楽しむ。)


Q. リクルーティング(日本の新歓のイメージとは異なり、高校生選手の体育推薦獲得合戦の話)はどう?

ここまで思った以上に上手く行ってる。やはりMichiganという学校そのものの学業、ブランド、歴史、施設、環境の素晴らしさ、学校による手厚いサポートがあり、それが多くの高校生選手たちにとって魅力的に映っている。

今年は正直リクルーティングシーズンの後半に遅れて参入したが、それでも尚、かなりいい手応えを感じている。

まあ、数年後には間違い無くトップレベルでNCAA Division 1の強豪校とリクルーティングでやり合えるようになるだろう(優秀な高校生選手の争奪戦で勝てるようになってくるだろう)。

(この点、やはり予想はしていたが、正直ここ数ヶ月のMichiganが獲得した高校生のリストを見る限り、正直予想以上に上手く行っているように見える。コミットを決めた高校生達のコメントを見るとやはり一様に、Michiganの学校としての素晴らしさ、施設や環境の良さ、学問面での強さ、加えて、JPを始めとしたコーチ陣の魅力を上げている。若くて知性とリーダーシップに溢れるJPは恐らく今のラクロスのリクルーティング戦線の中でも一際目立っている筈。)


Q. 同様にMCLAからNCAA入りを目指すチーム、クラブから体育会への昇格を目指すチームは全米に多くある。彼らはMichiganの事例から何を学ぶべきか?いいプログラムを作るためにどうすればいいか?大学の体育会部門から注目/興味を引き出すにはどうすればいいか?

一つ言えるのは、「優れたプログラム(チーム)を作る」事こそが本当の目的だと言う事。逆に言うと、下手に中身が伴わないのに一生懸命Athletic Department(体育会部門)の気を引こうと宣伝活動をした所で無益だ。それが目的だと決して上手く行かないだろう。とにかく素晴らしいプログラム、強いチームを作る事がultimate goal。そうすれば自ずと道は開ける。

Michiganも同様で、自分たちはひたすらいいプログラム/チームを作る事だけに集中してきた。そして、それが達成出来たから、結果として大学側の目に留まった。

(これ、逆説的で非常に面白い。やはり、ちゃんといいものを作れば、それだけのアテンションは自然と集まるという話。それも出来てないのに売り込んだって上手く行かないぜって話。)


Q. それらの他の学校にも共通してる事、Michiganと同じ様に利用出来る事って何かある?

一つ明確に言えるのは、今アメリカに於いてラクロスが明確に強力な追い風の中に有ると言う事。そして、どの大学でも、Athletic Director達は、それを明確に認識していると言う事。彼らは完全にビジネスマン。そして、全うなビジネスマンであれば、今のアメリカの状況分かってる。ラクロスが数少ない急速に拡大してるスポーツであると言う事、将来の金脈になり得ると言う事は強く、広く認識されている。その辺のマーケティングとビジネストレンドは良ーく分かっているはず。

もちろん、今の時点でアメフト/バスケ程のbig time sportsじゃないが、成長率は最も高い。可能性は最もある。


Q. Michiganは今後どうなっていくと思う?

この学校のリソースはincredible。これだけの規模の大きな大学で、且つこれだけ手厚く施設や環境面でサポートしてくれる体育会はなかなか無い。今まででも、チーム作りに向ける活動/投資に関して提案して、大学側からNoと言われた事ほとんど無い。つまり「Let's do it.(やってよし)」としか言われた事がない。アメフトのMichigan Stadiumも使っていいし、トレーニング施設も使っていいし。

ADがLacrosseがnational sportsになると思ってるし、Michiganでメジャースポーツになると描いているからこそやってくれている事だと思う。

Q. JP、あなた自身の事についてもうちょい教えて?

自分のキャリアは結構普通じゃないと思う。言うなれば、「Accidental Coach(たまたまそこにいたからなっちゃったコーチ)」って言ってもいいかも。

元々自分はラクロスを始めたのは遅く、大学のサークルでプレーし始めた。で、途中でMichiganにトランスファー(転校)し、ラクロスクラブに所属した。そこで歴史のあるクラブで多くの事を学び、成長し、ラクロスにはまった。

(この話も面白い。大学からだったんだ...しかし、VirginiaのDom Starsiaもそうだし、結構大学から初めてラクロスに完全にハマり、コーチになったパターンが意外と多い事に気付かされる。何か、二十歳前後の若者を虜にさせる何かを持っているスポーツなんだなと改めて思わされる。あと、ラクロスの盛んではないOhio出身で、高校でラクロス部を作り、Ohio StateからUMBCに転校し、今やDenver Outlawsのエースにまで上り詰めたPeet Poillionの話にも似ている。ラクロス盛んじゃなくても、好きだったら一流になれるんだなって言う。)

実は元々卒業後はLaw schoolに行って弁護士になろうと思っていた。ところが、当時丁度ラクロスクラブのHCが辞めることになって、人を探しており、当時の選手たちにコーチになってくれとせがまれて、まあ、2年限定なら、と就任したのが15年前。で、どんどんはまり、気付けばいつのまにかフルタイムの仕事になってしまっていた。

正直自分が今のキャリアを歩むことができたのは、妻が支えてくれたから。自分は最初何年も、無償でコーチをやっていた。それを受け入れてくれ、経済的に支えてくれた妻の存在が無ければ今のMichiganラクロス部は無かった。今回のラクロス部のNCAA入りも、実は影の功労者は自分の妻だと思っている。

(なんとも胸が熱くなる話だ。自分が好きな事のために、自分の好きな仲間のために、目の前の事に没頭して、気付いたら全米最高のMCLAチームにまで上り詰め、ついにNCAA入りを果たしたと言う話。でも、恐らくこの物語はまだ第一章が終わったに過ぎないように見える。今後JP率いるMichiganが伝統溢れるNCAA Division 1 Men's Lacrosseの世界で台風の目となり、革命を起こしてくれる事を期待してやまない。実際に女子のNorthwesternのHC Kelly Amonte Hillerは全てのラクロス関係者の期待を大きく大きく上回る形でそれを成し遂げた訳で(参入から10年で5連覇を含む6回全米制覇)。


まあ、今年は散々ボコられて2-3勝止まり、3年掛けてやっと形になり、5年後からが本当の勝負、10年でトップを狙えるか、みたいな時間軸だとは思うが、気長に見守って行きたいと思う。Go Blue!)

2 件のコメント:

  1. michiganあついっす。今年のNCAAもタレント抜けたとか言われてますが、なんやかんやめっちゃ期待してます。

    もうラクロスやってないですがNCAAは
    がっつり見ようと思ってます。

    michigan勝って欲しいす。

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  2. だな。

    やっぱNCAAラクロスは普通にあらゆるエンターテイメントコンテンツの中でもトップクラスにオモロいよね。

    Michiganは、3年後だね。本当にトーナメントの脅威になってくるのは。今契約し始めてる高校生達が入って来てから。

    今はまだ、多分、試合の映像見たら、NCAA Div 1の上位校と並んだら、「あれ?MCLAであんなに無敵だった、そして中に入って練習してたらあんなにデカくて早くてパワーがあるように感じたMichiganって、実はこんなに小さくて遅かったんだ...」っていう感じを受ける筈。それだけNCAAのトップ校は選抜された素材が入ってるので。

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