2011年1月30日日曜日

NLLドキュメンタリー

先日記事で紹介したIMGによるNLLのプロモーション契約。早速一つの成果物が出て来た。昨シーズン1年間Buffalo Banditsにプロのカメラクルーとプロダクションを貼り付けさせて作った短めのドキュメンタリーフィルム。"The X"というタイトル(由来は書いてないが、恐らくexclusive[特別編/独占記事]からかな?)。5分×4本なのでサクッと見られる。出来は秀逸。かなりカッコいい。マジ必見。

ミニシアターでやってるハードコアなドキュメンタリーフィルムを思わせる出来。ヘタなドラマ見るより百倍面白く、熱い。先日のWings-Bandits戦の記事で紹介したベテラン、生ける伝説、42歳にして未だリーグトップに君臨するスコアラー、闘う数学教師#11 John Tavaresや、RBKのCMで活躍中のボンバーヘッド#9 Mark Steenhuisもフィーチャーされている。

先日NLLコミッショナーのGeorge DanielがInside Lacrosse Podcastに背景と意図を語っていた。
  • 今後NLLをスポンサーやTV局に売って行く中で、NLLのコンテンツとしての魅力をきちんと伝えて行く必要があった
  • もちろん既存の試合中継やウェブサイトも一つのチャネル/商品だが、それだけでは伝えきれない魅力をプロのプロダクションによって切り取ってきちっと見せたかった
  • また、特に表面的に見られる試合だけではなく、そこに向けての準備、ロッカールームの様子など、裏側(behind the scene)を見せる事でこそ真の魅力を伝えられると思った
とのこと。

確かに、僕自身もこれを見て初めて、NLLの選手や監督が裏でどういう気持ちでやっているのか、どういう言葉をやり取りしているのか、どうやって試合の準備をしているのかをかいま見る事が出来た。非っっっ常に興味深い。

そして、カメラワークや画質や曲など、今まで見て来たラクロス関連のコンテンツの中でももしかしたらこれが最高かも知れないというくらい高い完成度。テレビ放映に耐え得る出来。これを見てますますNLLの持つ魅力に取り憑かれつつある。興味有る方は是非チェックしてみて下さい。NLL DVDを見る上での感情移入や学びがenhanceされること間違い無しなので。

これまで再三述べて来た通り、僕自身は、ラクロスをより一般の視聴者/消費者に売り込んで行くには、アウトドアよりもインドアの方が向いていると考えている。スピード感が全く違う。一言で言うと、「解り易い」。一方で、アメリカでの知名度ではインドアは数段落ちる。下手をすると、YoutubeでNLLを動画検索をすると真っ先に乱闘シーンが出てくる等、マイナスの部分だけが先行して伝わってしまっていた感すらある。

価値訴求の要素を「コンテンツ(中身としての面白さ)」×「デリバリー(それをどれだけ上手く伝えるか)」に因数分解すると、要は後者の問題。せっかく前者でいい物を持ってるのに、それが上手く伝えられていない/知られてない/誤解されているという宝の持ち腐れパターン。その後者の要素にIMGが介入してこうやって賢く売り込んで行けば、必ずブレークスルーに繋がる気がする。

第一話
開幕戦に備えるチーム。ボンバーヘアーのSteenhuisのお調子者っぷりがウケる。また、鬼軍曹で有名なDarris Kilgourのpep talk(檄)が凄い。また、20年の経験を持つJohn Tavaresが如何にチームの技術的/精神的支柱になっているかが伺い知れる。Dの#15 Chris Corbeilがイケメン過ぎて引く。練習前のリラックスした雰囲気と練習中の張りつめた緊張感のギャップ。「チームビルディングが肝。家族の様に絆を作って行く」という選手の言葉、厳しく叱りながらもいいプレーはきちっと褒め、笑顔とユーモアも忘れないKilgourのコーチ力の高さが印象的。

第二話
開幕戦、アウェイのRochester Knighthawks戦。怪我と戦うJohn Tavaresの姿など、裏側の「人間」が見えて非常に面白い。アメリカ/カナダのプロチームのコーチがハーフタイムのロッカーでどういうことを言っているのかなどの舞台裏が見られる。Darris Kilgourに比べればどんな鬼コーチも仏に見える...「It's good to be hated!嫌われてなんぼだろ!?アウェイ上等じゃねえか!」という熱い言葉が飛ぶ。

第三話
敗戦後のロッカーで「『だってあいつがボールくれないから』とか言ってんじゃねえぞボケぇ!?てめえはチームの為に何かやったのかよ!?おお?!コラ」と。その後の練習で、「Rochesterの奴らはお前らの顔思い浮かべて笑ってんぞ!?あいつらならカモれるって喜んでんぞ!悔しくねえのかよ!?おお!?」。高いレベルで実力が拮抗し、シーズンが長く、同じチームとも複数回試合をし、勝ち点ベースで上位半分以上がプレーオフに行くプロリーグでは、負けを経験しないことは有り得ない。こうやって負けた後にしっかりフィードバックして如何に心技体を立て直せるかが肝になってくる。「変化を見る」心のマネジが非常に解っているチームに見える。

第四話(最終回)
引き続き怪我と付き合いながら一人黙々と別メニューをこなすTavares。今すぐに復帰してチームを助けたいTavaresと、下手に無理をさせて支柱の彼を長期的に失いたくないコーチのせめぎ合い。「I don't wanna lose you.」とエースへの信頼と愛情をきちんと言葉に出して伝えるKilgourのacknowledge力の高さが感じられる。雪辱を掛けてホームで宿敵Knighthawksとの再戦に挑むチーム。

これを見てNLLにますます惹き込まれつつある。IMGのマーケティングが着実に何かを変えつつある。今後がますます楽しみになって来た。

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個人的に、この手の、裏事情や、人や組織の普段人に見せないダメな部分や試行錯誤してる部分をリアルに見せる本や番組/映画にobsessiveな程の魅力を感じて見入ってしまう。決してハッピーエンディングでも無く、無駄なカッコ付けも無い素の素材。作りものを越えたドラマや感動があるのと、感情移入し易く、学ぶ事が多いからだろう。なぜかこれを見て思い出されたのは以前渋谷の(今や絶滅危惧種の)ミニシアターで見た、車椅子ラグビーのMurderball。大笑いして泣ける。

いたる@13期

2011年1月28日金曜日

スポーツとしてのラクロスの改善余地

大分前の号になるが、Inside Lacrosseの8月号に面白い記事が載っていたので紹介。(2010年8月号のリンク記事のリンク

"9 ways to improve lacrosse"、スポーツとしてのラクロスをより良くし、もっと人気を出して大きくしていくためにはどうすればいいか、という特集記事。有名なコーチや選手にアンケートを取り、またILの記者達の意見も入れて作ったアイデア。必ずしもファクトベースで戦略立案のプロが作った物でもないし、どちらかと言うとビール飲みながら飲み屋で、またはロッカールームでくっちゃべる話の延長で面白おかしく書いた面もある記事だろうから、全てがシリアスで正しいとも限らないが、いくつか非常に同意出来るものがあったのと、また今後のラクロスのルールや、競技やエンターテインメントとしての進化の方向性を暗示するものがあったのでピックアップして紹介。

ちなみに、9 waysとして実際に記事で紹介されてたのは、以下。
  1. Showcase the game(もっと大規模スタジアムでの集客試合[例: Championship WeekendやFace off classic, Big city classic]をやり、全国ネットのTVで流せ)
  2. Face-offを変えろ
  3. 試合をスピードアップしろ
  4. 統計/データをもっと上手く使え(野球みたいに)
  5. Overtime(延長戦)のやり方を変えろ("Brave heart": オールコート1 on 1、タイムアウト廃止など)
  6. NLL, MLL, NCAAがもっと足並みを揃えろ(シーズンの重なりなど)
  7. Box lacrosseをもっとアメリカでもプロモートしろ
  8. メッシュを廃止してトラッド(traditional leather strings)に戻せ(???なぜ...?これネタでしょ)
  9. プレーオフを整備せよ(NCAA Championshipがあるのに、カンファレンスごとのプレーオフがあるのは無駄)
一つ一つを一歩降りて考えてみる...

まあ、1. Showcase the gameに関してはマーケティングの一プロセスとしては当然やるべきで誰も反対しないだろう。イニシアチブを取っているNCAAとInside Lacrosseは完全にこの方向にコミットしているし、現に早速今年から南部のFlorida州JacksonvilleでDukeとNotre Dameと地元Jacksonville大学をフィーチャーした"Sunshine Classic (LAX IN JAX)"を開始する。

6. MLL/NLL/NCAAの整合性9. Playoff整備はオペレーションレベルで淡々とやるべき事で、異論は無いだろう。6に関しては既に今年からMLLのドラフトをNCAA開幕前にずらす等、いい感じで連携が取れ始めている。が、まあ、共に試合そのもに対するインパクトは恐らくマイナー。

5. Overtime変更はまあ、一つの考え方だけど今の延長戦でも特に大きな問題は感じないので、必要性が薄いだろう。4. Statsはチームレベルで自ずとやるだろうし、スポーツ全体のstats情報強化の流れの中でリーグ/メディアレベルで自然と加速されて行くだろう。8. Trad復帰はどちらかと言うとネタとしてトリッキーなのを入れてるだけに見える。実際にはこれが起こることはまあ無いでしょ。

一方で、結構So what?/implicationがあるなと感じたのが、2. Faceoff変更, 3. 試合のスピードアップと7. Box Lacrosseの普及。なので、以下、ちょこっと広げて議論。
 
(ちなみに、一瞬脱線するが...20代に戦略コンサルティングの世界でロジックを骨の髄まで叩き込まれて来た自分としては、この9項目、軸の切り方、項目を切り出す際の「定義」が混乱してて相当気持ち悪いリストだ…「誰にとっての」(トッププレーヤー、一般プレーヤー、OB、観客/視聴者、リーグやチームのオーナー、etc.)×「何の目的」(競技人口の拡大/普及、ビジネスとしての成功、プレーヤーが競技する上での楽しさ、etc.)に基づいた議論かが定まっておらず、多くの軸がぐちゃぐちゃに混在しまくってて議論の鋭さと深さを削いでいる…リンゴやバナナの善し悪しとキリンやライオンの善し悪しをごちゃまぜに並べちゃっているという...ま、んな細かいこた気にせずに飲んだくれながらあーだこーだいろいろ議論して楽しみゃいいじゃんって話なんですが…)

まずは、今後のメインストリームのフィールドラクロスのルールの方向性を暗示する、2. Fix the face-off3. Speed the game upをもうちょい分解。

2. Fix the face off

ここ数年face offについては相当な議論がなされている。もちろん、face offこそラクロスらしさ、という意見も多い。一方で、反対意見も結構ある。

簡単に言うと、問題意識としては、今の形式のface offがラクロスを面白くなくしている面がある、というもの。端的には、
  • ①純粋なスキルの戦いだけじゃなく、フライイングや相手のスティックを指で抑えたりと、cheating(ズル/インチキ)の要素が公然と入って来てしまっている
  • ②ボールや相手のスティックを地面に押し付けたまま長時間(時には30秒ぐらい)膠着することがあり、つまらない上時間の無駄
  • ③ラクロスを知らない観客からすると何が起こっているか解りにくく(バスケのジャンプボールなどに比べても)、ラクロスへの取っ付きにくさを助長してしまっている(よくMMA/総合格闘技の黎明期にグラウンドの攻防が同様の事を言われていたが、最近はほとんど議論されなくなった。アップやスローの映像を通し、技術解説の質が上がり、オーディエンスの観戦スキーマが出来る事で「よくわからん感」が無くなったためだろう。一方でface offが同様のレベルに至るとはちょっと考えにくい。)
  • ④先日のFOGOの記事でも述べたが、そもそも得点後に相手に優先的にポゼッションを与えない事自体が不公平/不均衡を助長して面白さを減らしている
といった辺りだろうか。どれもそれなりに当たっている面もあると思う。

提案されていたソリューションは、
  • バスケのジャンプボール形式(解り易いし早い)
  • そもそもface offを無くす(サッカーのように失点チームにポゼッションを与える)
  • 数メートル離れたところからビーチフラッグのようにボールを取りに行く
  • 現行の"set"-whistleから、昔の、"down"-"set"-whistleに戻す(インチキのフライイングが減る)
などなど。

face offそのものが無くなるというのはちょっとradical過ぎるし、ラクロスの良さや伝統そのものを失うことになるので余りrealisticとは思えない(し、個人的にも賛成じゃない)が、現行のルールに何らかの変更が加えられて行くのは必然の流れなのかも知れない。

より変化に対して柔軟なNLLは早速2011年からface offのルールを変更し、ボールから8インチ(20 cm)スティックを離した状態でセットする、というルールを導入した。(更にボールが観客から見やすくなるように既存の白からオレンジに色を変更することも検討していた。最終的には今シーズンでの導入は見送られたが。)

これまでのところNLLのface offを見るに、確かにスピードアップされた様に見える。ゴリゴリの相撲バトルや膠着状態は一度も見ていない気がする。(今年のNLLのDVDを見て頂ければ解ると思うが、face offのセンターポイントの両側に、8インチの位置に白いテープでラインが引いてある。)

ゲームをより面白くするためにはどんどんルールを変えることに躊躇の無いアメリカのカルチャーを考えると、NLLでの成功を見て、フィールドでも何らかの変更が生じるタイミングはそう遠くないかも知れない。

3. Speed the game up

これも散々っぱら議論されているトピック。shot clockの無いNCAA以下の試合では、フライの時間、ちんたらボールを回す時間、要は、観客にとって何も面白くない、試合の展開にとって完全に無駄な空白の時間が多過ぎる、というもの。ボールがアライブな状況で選手交代をさせることにより試合を止める事無くスピードを維持する、という当初の狙いが、皮肉にも「フライするために試合を実質的に止める」という逆の効果を生んでしまっているという話。

これは正直非常にアグリー。MLLを見ても、NLLを見ても、shot clockがあることにより、明らかにより展開が早く、エキサイティングになっている。顧客視点で考えれば間違い無く正しい方向だと思う。去年のNotre Dameが正にnon-shot clock ruleを最大限に逆手に取った申し子だと思うが、一部の玄人受けやDF/G出身の選手受けこそすれ、若い世代の一般の顧客にウケるとは全く思えない。これは明らかにこのスポーツのルール上/構造上の欠陥だと思う。

実際にNCAAの録画DVDを見る際に、フライの時間やただのボール回しの時間を早送りして、本当にプレーが起こっている時間だけを通常再生すると、半分以下の時間で見終わり、それでいて試合の内容の9割をキャプチャー出来る事に気付く。これはユーザー視点から言うと致命的にuser-UNfriendlyで、supplier logic。忙しい視聴者、特にインターネット/マルチタスクで育ったせっかちな若い世代の顧客からすると、「だったらそこ全部ぶった切って1時間で凝縮してやってくれや」となる。

中にはもちろん年配者を中心に、「いやいや、そのボールを回す時間がまたラクロスの趣深さなのだよ」なんて言う人もいそうだが、それに付き合っていたら年寄りと一緒に滅びる相撲/プロレスの二の舞になる。(ん?この話プロ野球のスピードアップの議論で聴いたな...)

審判が自分で数えて警告する、「ストーリング」も、(特に公正で正確なルールをこのむアメリカ人からすると)相当恣意的で気持ち悪い。

ソリューションとして関係者から出ていた意見は、
  • Qごとに2度目のストーリングが出た瞬間相手ボール(そのくらい厳しくしろってことだろうが、まあ、これだとストーリングの判断が恣意的になっちゃうから多少の気持ち悪さが残ってしまう)
  • そもそもボールがアライブな状況での交代(フライ)を辞めちまえ。交代したけりゃタイムアウト取れ(ミディーの心臓がいくつあっても足りんだろうけど...)
  • 90秒shot clock導入(MLLと同じ)
  • どうやらshot clock導入はNCAAが嫌がってるみたいなので、次善の策として、少なくともフライの時はoffensive box内にボールをキープしなくちゃいけないってルールは?(VirginiaのHC Dom Starsiaのコメント。さすが、現実的)
Paul Rabilもブログでショットクロック導入に強く賛成していた。曰く「NCAAはつまらん(バッサリ)。自分もMLLに来てショットクロックがある方が俄然面白いと体感した。NCAAが導入出来ない理由が理解出来ん。バスケだって30秒ルールが導入された今、それが無かった時代のバスケなんてつまらな過ぎて寝ちゃうだろ?」と。

個人的に、全く持って同意。導入するべきだと強く思う。

NCAAがなぜ反対してるのか、何が考え得るダウンサイド/ボトルネックなのかを僕自身理解していないが(ていうか、そんなもんあるのか?)、理屈で考えるに、今のスピード/テンポと展開の早さを重視するスポーツ全体の流行、そして今後増えてくるインターネット世代の観客のニーズとして、よりスピーディーなものを求める流れは強まりこそすれ弱まることはないことを考えると、ショットクロックの導入は時代の必然、そして時間の問題という気がする。下手にショットクロック導入を拒み「伝統」を守ることで、確実に自分たちの首を締めるという構図になってしまっている。

(僕個人の超個人的なガッツフィーリングでは、いろんな議論を経ながらも、恐らく今後数年でより具体的な議論から試験的導入、3-5年の時間軸でNCAAにもショットクロックが導入され、その後数年でIFLや日本を始めとした各国のルールに反映されていくんじゃないかと読んでいる。そうなってくると、VirginiaやSyracuseのようなRun-and-gunで爆発的に点を取るチームが一気に有利になり、Notre Dameのようなスローペースのチームは死滅することになる。もちろん、本当にそうなったらNDも大きく舵を切ってRun & Gunのチームにガラッと作り替えると思うが。)

7. Box lacrosseをもっとアメリカでプロモートせよ

この点も非常に同意。僕自身も強いインドアラクロス普及擁護派。一度NLLの試合をテレビや生で見ると一目瞭然だが、正直、field lacrosseよりも遥かにスピード感があり、エキサイティング(前回の記事での紹介)。且つ、一般のお客さんにとってシンプルで解り易い。ラクロス非経験者のaudienceを虜にする力は圧倒的にIndoorの方が高い。

特にChicagoやWisconsin, Michigan, Seattleと言った、北の広大な未開拓市場があることを考えると、間違い無くラクロスにとってプラスになると思う。

シーズンをずらせば、Boston, Philly, Denverの例を見ても、フィールドとインドアはお互いに観客をフィードし合うことで相乗効果を生み、互いを盛り上げることこそあれ、cannibalizeする(共食いする)ことは無い。

また、非常にいいことを言ってるなと感じた前Denver大学HCで現ESPN解説者のJamie Munroのコメント。「Indoor lacrosseのいいところは、選手が勝手に育つ点、コーチ要らずな点。より複雑で速いコートの上での駆け引き、体の動かし方、技術を、試合を通じて自然と身につける事が出来る。才能のある選手は仮にいいコーチがいなかったとしてもインドアを通して自ずと成長し、抜きん出て、大学コーチの目に止まるだろう。この事がラクロスの競技としての入り口を大きく広げ、東海岸優位の構造を変え、NCAAの勢力図に大きな変化をもたらすだろう」。

なるほど。非っっ常に面白い。ストリートサッカーやフットサル育ちのブラジルのサッカー選手たちが最もボールハンドリングや勝負の駆け引き/maliciaに長けている話に似ている。

映画Gingaでのフットサル出身のロビーニョの話。こういうの見てるとワクワクが抑えられなくなる。

という感じ。なかなか考えさせられる記事でした。

いたる@13期

2011年1月24日月曜日

NLL 2011 Game Review vol.02 Philadelphia Wings-Buffalo Bandits

(NLLのリーグ、チーム、歴史やルール等の基本情報はこちら。)

地元Philadelphia Wingsの第二戦。Buffalo Bandits。今回はホームスタジアムのWells Fargo Centerで観戦。DVD既に梅村亭に送付済みなので、部室/家で、皆で/一人で、気楽に楽しみながら見ちゃって下さいな。


背景

1試合目でBoston Blazersに負け、特にオフェンスの連携での修正を強いられるWings。Mundorf, Westervelt, Boyle, Seibald, Sweeneyが揃う'10 US代表軍団。前回の試合では2シーズンぶりに怪我から復帰した'08 MVP Athan Iannucciはまだ本領発揮出来ていなかった。どこまで感覚を取り戻せるか。複数回優勝を成し遂げた黄金時代を選手として支えたJohn TuckerがHCに就任。苦しむチームをどこまで立て直せるかも注目される。

対するBuffalo Bandits(山賊の意味)は20年目のシーズン。NY州北部、カナダとの国境近くにあるCanadian主体のチーム。共に最古参のWingsとは長年のライバル。エースで大ベテラン、All Time Scoring Leaderの#11 John Tavaresは何と42歳、20年目のシーズン。中学の数学の先生。同じくベテラン、10シーズン目の#9 Mark Steenhuisも老獪なプレーを見せる。(これだけベテランが存在しているということからも、フィジカルはもちろんのことながら、やはりスキルや判断/ラクロスIQ、経験値といった要素が重要な競技であることが解る。)


会場で見てみての感想

僕自身、NLLの試合を会場で見るのは2008年の(今は亡き)Chicago Shamrocksの試合以来。ラクロス新興地域のChicagoと違い、Wingsは25周年の古株チームだけあって筋金入りのダイハードファンが多い。楽しみにしていた。会場はNBAの76ers、NHLのFlyersが使っているWells Fargo Center。スタジアムが大きいこともあり、客先には空席もある。が、会場は熱気に包まれており大盛り上がり。一部の超ラクロス好きなハードコアファンの集いというイメージ。シカゴはラクロス新興地域だったこともあり、Kidsの比率が高かったが、こちらは中年男性のファンが多い。若いカップルや家族連れも。

今回はWingsのベンチの真裏、シーズンチケットホルダーの熱いファンの中に混じって観戦。野次や声援が凄い。これぞアメリカのライブスポーツ観戦文化。ビールを飲みながらホットドッグを頬張り、思いっきり楽しませて頂きました。

試合の見所

Buffaloは長年プレーして来たメンバーによる効率的なBox Lacrosseのオフェンスを出来ているように見える。Righty 2枚、Lefty 2枚を配置して、ピックとスクリーンを上手く使いながらポジショニングを変えながら、フリーで高い確率のシュートを打てている。特にオフボールでのフリーの作り方が上手い。しかも、決定率が極めて高い。

Wingsは...うーん、引き続きオフェンスが機能してない...不要なturn overが多いのと、fast break等での1 on 0のシュートを外し過ぎなのと、ちょっと単発のロングシュートが多過ぎる気がする。特に後半に入っていいシュートが打てず、30秒ギリギリで無理なシュートを打たされるケースが多い。BoyleやMundorfのフィールドラクロスQB型のアプローチだと、ボールを持って見る時間が長過ぎるような気がする。30回くらい溜め息出てしまった...あとは無駄なペナルティがクビを締めた。Dが時々ちょんぼをやりながらもそこそこ手堅く守ったのと、ベテラン守護神Goalie Millerが素晴らしいセーブを連発したため大差は免れたが、勝てる感じがしない...


個別の選手/プレーの注目点

Wings 1点目、#2 Mundorf to #26 WesterveltのUMBC/Team USA/Denver Outlawsで培われたホットラインの得点。Westerveltのダイブショット。ファーサイドに思いっきり飛びながらニアに瞬間的にスルッと入れる。ATの選手は砂場や芝生やマットを使って練習して確実に身に付けたい。Westervelt 2点目もフィールドでそのまま使える技術。リバウンド後、ゴールから離れながら小さいモーションでクイックにスクリーンを使って正確なシュート。ゴールが小さく、ゴーリーが大きいNLLではこういった騙し/ずらしの技術が洗練されており、本当に参考になる。

2Q Bandits 4点目、fastbreakでの#11 Tavaresのリバウンドへの寄りと反応。20年NLLで生き残るだけのことはある。こういうgarbage goalのチャンスを確実に作って行く。

3Q残り1分のMax Seibaldによる殺人ボディチェック。相手が壁に激突して失神KO。ファウルになっちゃったが、ファウルじゃない気がする。パワーがヤバ過ぎる...軽自動車に当たられた衝撃。ぶっちゃけこの日会場で最も盛り上がったプレー。

4Q残り7分のBandits 2 on 2でのフリーの作り方と、ダイブショットのニアサイドへのダブルフェイク。
あと、一点印象的だったのが、怪我による2年間のブランクから復帰したAthan Iannucciに関するコメント。正直08年にMVPを取った時の水準からすると、本調子からは程遠い。もう少し時間が掛かるだろうとのこと。ただ、そこで言及されていた、復帰に向け「少しでも早く同じ水準に戻れるよう、リハビリ中は文字通り一日中wall ballをやり続けていた」という点。ここでも登場。トッププレーヤーがwall ballを超重視している事例。
  
結果
 
悲しいかな、Wingsはホームゲームで致命的な2連敗…しかも2試合で12点て…Brian Shanahanのweekly rankingでも最下位の10位が定位置に…切なすぐる…
 
ハイライト


いたる@13期

2011年1月22日土曜日

MLL 2011 Collegiate Draft

先日の記事でお伝えした通り、MLLドラフトが昨年までの6月から、2011年以降はNCAA開幕前の1月に早期化され、昨日そのドラフトが行われた。ドキドキしながらESPN3 (onlineテレビ放映)で見守った。以下その結果。

MLL史上最高の豊作イヤー

解説者で元Hopkins All American Goalieで自身もMLL経験者の頭脳派イケメンQuint Kessenich(NCAAやMLLで解説しているあの人)曰く、「今年のNCAA 4年生はMLL史上最高のタレント豊作年」。今後のMLLやTeam USA/Canadaを背負って立つような人材が多いと思われる。

また、上位10-15人の上澄みのタレントのレベルが高いという点のみならず、deepである(数が多い/層が厚い)、という点も指摘。例年であればドラフト5-6巡目、つまり30-40位の指名以降は、実際には試合に出ることは無い練習要員として、または練習にすら呼ばれない「形だけの指名」になるが、今年の場合は最後の8巡目、最後の48人目まで、十分に試合で活躍する可能性を感じさせる選手が入って来ているとのこと。(確かに、昨年のDuke優勝に貢献したAT Zack Howell、そして今年の4年生Goalie 2番手のAdam Ghitelman (Virginia)ですら最終8巡目にやっと指名されている...しかも衝撃なのは、HopkinsのエースAT Kyle Whartonが何と指名から漏れている点。今年のドラフトがどれだけcompetitiveかを物語る。)

記憶に新しいWhartonのネットを突き破るシュート

今後のMLLのマーケティングに貢献

結論から言うと上位では大きなサプライズは無かった。QuintはMock(予想) draftで上位5人を的中。彼らが各チームに入って1年目からチームの戦力に影響を与えて行くであろう事を考えると、ワクワクして心臓がばっくんばっくん言ってしまう。また、NCAAのシーズン中も「この選手はCannonsでどういう絡み方をするんだ?それまでにどういう弱点を克服する必要があるんだ?」という見方が出来るようになる。加えて、現時点ではMLLよりも遥かにファン層が厚く、視聴率も高いNCAAでシーズンを通してMLLを言及することになり、ファンベースを上手くMLLに流し込める。マーケティング戦略的には賢い選択。

また、秋から冬のオフに掛けて多くのファンが完全にラクロスから離れ、春から夏に掛けてゆっくり盛り上がるというこれまでと違い、今回のドラフトでシーズンの初っ端にグイッとボルテージを上げさせられる。NFLの取った、1年間を通してファンの頭に居場所を確保するという戦略に近い。

今回のこのリストがほぼそのまんま、今年のNCAAの注目選手リストになる。直感的に、選手としても明確に次のステージ、具体的に所属するMLLチームを理解して最後の1年を過ごすことで、より伸びるんじゃないだろうか?(ちなみにSyracuseのHC Deskoは「最後の一年はNCAAタイトルに集中して貰いたかったから雑音になるかも」と言っていた。でもどうだろ?選手としては別に次のステージが見えてようがなかろうが、全力で優勝を目指す事には変わりないだろう。NCAA Championの称号はどの選手もガキの頃から憧れて来た目標だろうし、今年が人生最後のチャンスな訳だし。)

2012年に2チームを追加

また、2012シーズンから、Columbus, Ohio(中西部:つまり東海岸の内陸部)、Charlotte, North Carolina(東海岸のちょい南)の2都市を新たに加え、8チームに再拡大することが発表された。それにより選手の受け皿も増えることになり、ますます盛り上がるだろう。(また、Toronto Nationalsが近くの街のHamiltonに移転し、Hamilton Nationalsに。ChicagoからRochesterに移転したRattlers(旧Machine)と合わせ、これでCanada 2チーム体制に。)

Source: Inside Lacrosse

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ROUND ONE

1. Hamilton Nationals: Kevin Crowley, M, Stony Brook: "He's an unbelievable midfielder. We just felt he was the best player in the draft." He's a playmaker with great size and can play both ends of the field, said Jody Gage, GM of the Nationals.
  • 鉄板過ぎる選択。どこまで凄い選手になってしまうのか、未だに底が全く見えない。Gary Gait以来の待望の大型Canadian MF。2010年に続き、2014年、恐らく2018年もCanada代表の主軸であり続けるだろう。

2. Rochester Rattlers: Joel White, D, Syracuse: "He's got everything we're looking for in a top draft pick," said BJ O'Hara head coach and GM. "He's got the athleticism that all teams look for. He's a local boy with a great following."
  • これまた納得の選出。機動力、DF力、スティックスキルと攻撃力。恐らくShortyとして使うという線も考え得る。

3. Denver Outlaws: Billy Bitter, A, UNC: "He's got a great first step, explosive. He's very tough. He's a great finisher," Tom Slate, head coach said. "He's going to fit in well with the attack we have now. We're excited to have him."
  • Brendan Mundorf, Drew WesterveltとBilly Bitterの3人?どんだけ華やかなんだ?Denver OutlawのAT陣は。ファンタスティック過ぎて鼻血出そう。スピードとダッジ力を生かしてOF MFで入って掻き回すって使い方も考え得る。Dan Hardyとの絡みも楽しみ。
  • が、Quintも指摘しているのが故障のリスク。爆発力に身体が着いて行けないのか、過去に何度か大きな筋肉系の怪我を経験している。線が細く、サイズが無いBitterが本当にMLLのハルク軍団のDF相手にsurviveして行けるのか?と言うかそもそも今年のNCAA最終学年を怪我無く過ごせるのか?
  • 先日のBilly Bitterの紹介記事と動画
  • 記憶に新しい昨年のlate hit。総合格闘技でカウンターが入った時の様に、「脳と身体を繋ぐコードをぶった切る」と表現される脳震盪失神KO。

4. Boston Cannons: Shamel Bratton, M, UVA: "It's a midfielder's league, and when you can create offense like top like Shamel can do, it's hard to pass him by," Bill Daye, director of player personnel. "Midfield is something we can use."
  • キターーーーッ!!!ってことは、Paul RabilとShamel Bratton!?Quintのコメント「NBAでLeBron JamesとKobe Bryantが一緒のチームにいるような物だ」と。反則過ぎる。右のPaul, 左のShamel。ATを捨ててLong stick 2枚を彼らに付けるか?これは恐ろしいことになりそう。
  • 待て待て、Kevin Buchananもいるぞ!?間違い無くMLL最強1st string。
  • Virginia HC Dom Starsiaのコメントが印象的だった。「真の一流MFは、毎試合long pole (LSM)に付かれることはもちろん、long poleが付いても尚最も活躍出来る選手。彼はそういう選手だ」

5. Long Island Lizards: Zach Brenneman, M, Notre Dame: "We wanted to fill a spot at midfield," said Jimmy Mule. "He's gotten better his first three years at Notre Dame, and we think he's going to be productive in the MLL."
  • 昨年の決勝での活躍でも解る通り、大型、機動力あり、シュートの破壊力抜群。Early dodgeで直線的に相手を抜き、long rangeの弾丸シュートをぶち込んで来る。大学3年間で大きく成長しており、まだまだ伸びそう。正にプロ向けのプレーヤー。2014年のUS代表に入ってくるんじゃないだろうか?
  • Quintの、「MLLチームが成功するためには、消耗の激しく、ピーク期間が短い傾向にあるMFのパイプラインを如何に維持し続けられるかが肝になる。大きく、身体能力が高く、何でもこなせて、頑丈なMFを毎年出来るだけ多く取り続ける必要がある」というコメントが印象的

6. Hamilton Nationals (From Chesapeake Bayhawks): Jeremy Thompson, M, Syracuse: "Jeremy's one of those great athletes," said Gage. "One of those guys who can do everything: dodge, shoot, take face-offs and play D. He's going to be a nice addition to our club."

ROUND TWO

7. Hamilton Nationals: Ryan Flanagan, D, UNC: "We're excited to get him at 7. We had him as one of the best pure defenders in the game. We just like his presence," Gage said.
  • 納得納得。大型、身体能力高い、手堅いD。

8. Rochester Rattlers: Jovan Miller, M, Syracuse: "We were hoping he'd be around." He's fast, he's athletic, he plays wings, plays offense, plays defense. "If he can do all those for a great program like Syracuse" we think he can do it all in the MLL, O'Hara said.
  • DF MFが上位指名されるところにファンの感覚とプロチームのシビアなニーズのギャップが生まれる。Millerのversatility(何でも出来ちゃう度)は正にMLL向け。彼もDFMFでUS代表に入りそうな予感。

9. Denver Outlaws: Steve Serling, M, Hofstra: "He was a little bit under the radar playing for Lafayette," GM Brian Reese said. "He's a guy who's a very savvy, crafty offensive midfielder. I think he's going to have a breakout year for Hofstra and be one of the best middies in the country."
  • これが上位の中では一番意外な指名。去年まで弱小校のLafayetteにいたため、ほとんどのファンが見落としていた。一般のファンの間での知名度とプロのスカウトの目のギャップが生じたパターン。
  • 既にLafayetteを去年卒業しているが、MLLを目指すため、そしてNCAAでやり残したことをやり遂げるため、怪我で失った残り1年のeligibilityを使うため、強豪校のHofstraの大学院に入学し、プレーする。Lacrosseのキャリアのためにそこまでする情熱と意思。応援したい。

10. Boston Cannons: Josh Amidon, M, Syracuse: "We feel that Josh is a great player offensively. He plays that Syracuse style", that run-and gun-, MLL style of lacrosse, Daye said.

11. Long Island Lizards: Jay Card, A, Hofstra: "He plays with an edge," said Mule. "Very good shooter, and in this league he'll get a lot of opportunities to shoot." He's built a balance to his game; he can pass the ball, and he's not just a finisher.

12. Boston Cannons (From Chesapeake Bayhawks): Brian Farrell, D, Maryland: "He's great in transition, he's got a phenomenal stick, and he can score goals," Daye said. He's a very versatile player. He can play close, he has played up top and he sucks up everything on the ground, Daye said.
  • サイズと機動力とスティックスキルが高いLong stickが如何にMLLで重宝されるかが解る。
ROUND THREE
13. Hamilton Nationals: David Earl, M, Notre Dame
14. Rochester Rattlers: Jordan McBride, A, Stony Brook
15. Denver Outlaws: Brett Schmidt, D, Maryland
16. Boston Cannons: John Lade, D, Syracuse
  • Syracuseの最強DF陣の大黒柱。Quintのコメントが印象的だった。「DFをよーく理解し、フットワークや角度のマネジ等、完璧な基本を持っている。2年前に練習で彼を見かけた時に、フットワークやポークチェックドリルといった基礎練習を、あたかもそれがNCAAの決勝戦であるかのように全力で一切手を抜かずに容赦無くプレーしていた。その徹底っぷり、忠実さ、全力さに、『自分がゴーリーだったら、最も必要とするのは正にこういうDFの選手だ』と感じた」。痺れた。
17. Long Island Lizards: Rhamel Bratton, M, Virginia "We have a very talented team, but the more depth the better," said Chris Fiore, middie for the Lizards, referring to the Lizards drafting Bratton and Brenneman. "The fact that they are in the area geographically is a home run."
  • 地元出身の選手(仕事や引っ越しが理由で退団になるリスクが低い)を重視していることが解る。
18. Hamilton Nationals (From Chesapeake Bayhawks): Kevin Ridgway, D, Notre Dame:

ROUND FOUR
19. Hamilton Nationals: Dan Burns, M, Maryland
20. Rochester Rattlers: John Galloway, G, Syracuse
  • 今年のゴーリーの最大の目玉と目されていたが、意外と下位での指名になった。やはりどのチームも2枚の正/副ゴーリーを既に揃えており、competitiveなポジションになっている。
21. Denver Outlaws: Grant Catalino, A, Maryland
  • この辺がNCAAとMLLで活躍の基準が変わってくる例だろうか。大型の大砲のCatalino。NCAAでは得点を量産し、今年もAll American候補。一方で、必ずしも最もスピードと機動力があり、フィードやカットも含めて何でもこなせるという感じではない。しかもDenverのATは既にかなりタイト。MLLのロースターはたったの19人。EMO要員だけとしてのメンバー入りも難しい。彼のような選手がどうサバイブしていくのか、注目したい。
22. Boston Cannons: Kevin Kaminski, M, Delaware
23. Long Island Lizards: Ryan Young, A, Maryland
24. Chesapeake Bayhawks: Barney Ehrmann, D, Georgetown: "We think Barney Ehrmann is one of the best defenseman in the draft," said Dave Cottle, whose position with the Bayhawks will be announced at a ceremony Saturday. "We projected Barney to be gone by the time we got here."

ROUND FIVE
25. Hamilton Nationals: Stephen Keogh, A, Syracuse
26. Rochester Rattlers: Tom Montelli, LSM, Duke
27. Denver Outlaws: Jack McBride, A, Princeton
28. Boston Cannons: Tom Compitello, A, Stony Brook
29. Long Island Lizards: Sam Barnes, D, Notre Dame
30. Chesapeake Bayhawks: Steve DeNapoli, M, Hofstra

ROUND SIX
31. Hamilton Nationals: Adam Rand, FO, Stony Brook
32. Rochester Rattlers: Brian Caufield, M, Albany
33. Denver Outlaws: Andrew Irving, D, Notre Dame
34. Boston Cannons: Pat Dowling, D, Delaware
35. Long Island Lizards: Brian Karalunas, D Villanova
36. Chesapeake Bayhawks: Michael Burns, M, North Carolina


ROUND SEVEN
37. Hamilton Nationals: Bill Henderson, D, Army
38. Rochester Rattlers: Adam Jones, M, Canisius
39. Denver Outlaws: Andrew Lay, M, Denver
40. Boston Cannons: David Holley, M, Brown
41. Long Island Lizards: Peter Mezzanote, M, Towson
42. Chesapeake Bayhawks: Dan Hostettler, M, Georgetown

ROUND EIGHT
43. Hamilton Nationals: Jeremy Boltus, A, Army
44. Rochester Rattlers: Matt Chadderdon, M, Le Moyne
45. Denver Outlaws: Adam Ghitelman, G, Virginia
46. Boston Cannons: Zach Howell, A, Duke
47. Long Island Lizards: Matt Stefurak, D, Delaware
48. Chesapeake Bayhawks: John Austin, M, Delaware

And it's over. "We look forward to seeing you all at the stadiums this year," Gross ended with.
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今年は準決勝、決勝を含め、出来れば何試合かMLLの試合を会場で観戦したいと思っている。(開幕はまだ半年も先だが)やべえ、今から楽しみ過ぎる...

いたる@13期

2011年1月21日金曜日

NLL観戦ガイド vol.01

前回の試合の見所紹介はこちら

今シーズンは東海岸のPhiladelphiaの近所に引っ越して来たので、2年前までのChicago、昨年までの西海岸Californiaと打って変わって多くのラクロスに生で触れる機会に恵まれる。スケジュール的に許される範囲でいくつか会場で試合を見に行こうと思っている。そのうちの一つがNLLの地元Philadelphia Wings。残念ながら今シーズンはプレシーズンランキングで最下位の評価を受けているが、Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D), Shawn Nadelen (D)といったフィールドのWorld Lacrosse Championshipで'10 US代表を勤めたメンバーを6人も擁しており、観戦するのは非常に楽しみ。

地元スポーツを放映するComcast Sports Networkでホームゲーム数試合を放映するらしいので、これまた出来るだけ観ようと思う。NCAA/MLLとはまた違う楽しさや学びが満載なので、興味がある方は是非チェックしてみて下さいな。(何がどう面白くて学びがあるのかは去年の決勝の紹介記事をご参照下さい。)

このブログでも再三述べているが、僕個人はNLLの方がフィールドよりもスピーディー且つエキサイティングで面白く、一般向けの売り込みに向いていると見ている(IMGによる売り込みにより、アメリカでもMLLより人気が出るなんてシナリオも十分あり得る)。リーグの歴史が長く、試合数も多くコンペティティブなため、シーズンを通してチームや選手個々人が見せるドラマもより味わい深い。また、ラクロスIQやstick skillを学ぶ場としても非常に優れいているともよく言われる。

(また、最近で言うと日本を代表するラクロス選手、丸山伸也選手が2007年末にCalgary Roughnecksの開幕前トライアウト&トレーニングに参加しており、彼自身のブログでもその様子が紹介されていた。(開幕ロースターの一歩手前で残念ながら外れてしまったが、大学から始めた小柄な選手で、しかも非アメリカ/カナダ出身者がそこまで残る時点で驚異的な話だ。)ちなみに当時は僕自身が不況の中アメリカでの就職に挑もうとしていた時期でもあり、その挑戦から多くの勇気を頂いた。)

しかしながら、現役の選手/OBの皆さんも、NCAAやMLLについては試合の映像も見てある程度知識がある方もいらっしゃると思うが、Box Lacrosse/NLLになると途端に良く解らない、という方も多いはず。という訳で今回はそもそも論として、NLLを観戦/視聴する上で最低限知っておく必要のある基本情報をいくつか紹介。一歩踏み入れてみると実は意外と簡単。食わず嫌いの典型。この辺の話を一回バチッと知ってしまうと何のことはない。後はビール飲みながら試合の映像とウェブサイト見てひたすら楽しむべし!

以下、WikipediaやらNLLのウェブサイトやらラクロスフォーラムやら、ざっくりgoogle searchしたベースで。超無理矢理シンプルに詰め込んだ紹介。

1. 歴史(リンク
  • '87年にEagle Pro Box Lacrosse League (EPBLL)として米東海岸の4チーム、年間6試合/チームからスタート
  • '88年にMajor Indoor Lacrosse League (MILL/ミル)と名前を変え、徐々に拡大
  • '97年に、単体企業としてのMILLが全チームを保有経営するというスタイルに限界を感じたメンバーによって、アメリカ型フランチャイズオーナーシップモデルを取るライバルリーグのNLL (National Lacrosse League)が設立される。直後にMILLチームがNLLに飲み込まれる形で合併
  • 2000年代を通して多くのチームの参加/離脱、フランチャイズの交代、地域移転を繰り返しながらも徐々に拡大。現在の10チーム、年間16試合/チームに落ち着く

2. 会場
  • アイスホッケーリンクのある会場やバスケのスタジアムでの試合(都市によるが、PhiladelphiaなどNHL/NBAのホームスタジアムを使っているところも)
  • 床は当然氷を張っていない状態で、プラスチックや木材を合わせて作られた合板のハードフロアの上に毛足の短い人工芝を貼っている。従って選手達が履く靴もバスケットシューズに近いイメージ
  • アイスホッケーと同様にコートの周りに透明の板が張り巡らされており、逸れたパスやシュートは跳ね返るため、基本的にアウトオブバウンズになることがほとんど無い。それがノンストップで試合が展開し続けるというNLL独特のハイペースを生んでいる
  • フィールドラクロスに比べると会場がコンパクトで、観客席からコートまでの距離が圧倒的に近く、それがインドア独特の熱狂的な雰囲気を生んでいる

3. コート(リンク
  • 約60m x 25m。バスケコートとフィールドラクロスのコートの丁度間くらい
  • 四隅の角がアイスホッケー同様丸くなっている
  • クリースのサイズは同じ。正し、裏のエンドライン側が少し削られている

4. 形式/基本ルール(リンク
  • 15分4Q。Sudden death over time。
  • ベンチ入り20人でGoalie 2人。フィールドに立つのは5人のフィールドプレーヤー(runner)+Goalie 1人の6人。フィールドプレーヤーは、Forward, Deffenderと一部のTransitionに役割が別れ、攻守の入れ替えで結構F/Dを入れ替えている
  • Shot clock 30秒。(なので、展開がフィールドラクロスよりも圧倒的に早い。バスケに近い)
  • 反則/ペナルティもほぼフィールドと同じ。但し、「Extra-man offence」とは呼ばず、アイスホッケーと同じく「Power play」と呼ぶ

5. Fighting
  • これがちょっと最初は解りにくいのだが、アイスホッケーと同じく、一試合に一回から数回、fighting、つまり殴り合いの喧嘩が起こる。一応、ルール上「ペナルティが与えられるが、認められている」ということになっている。フィールドの感覚だとかなり驚きがあるが、審判も傍観し、決着が着く/膠着するまで敢えて割って入らない。
  • ある意味文化/伝統として根付いており、選手の多くもそれをスポーツの一部として認めており、観客もそれを見て思いっきり盛り上がる。
  • チームによっては20人のメンバーのうち1-2人、「喧嘩要員」を入れているとも言われている
  • ただ、最近の流れとして、特にアメリカでの普及を考えた時に、大人の男性以外のファンに受け入れられにくいこと、NBA等での徹底したviolence排除の流れから、これがボトルネックになっているという見方もあり、結構議論の対象となっている。
  • (個人的には好きだが...)やはりアメリカの平均的な親の多くがkidsにこれを見せたいとは思わないだろう。既存のコアなファン層と彼らのニーズや伝統に安住して変化を拒むと、本来開拓するべき市場を逃し、顧客と共に高齢化/縮小して再起不能になるという相撲やプロレスの轍を踏む事になりかねない。残念ながら純粋なviolenceはスポーツの成長を阻むというのが今の世の中の流れな気がする。総合格闘技のUFCですら競技としてのルールを整備し、徹底して不要なバイオレンスを排除してから世の中に受け入れられた訳で(当初は噛み付き金的有りの文字通り「何でもあり」で全米のPTAから総スカンを喰らった)。
  • 若い有能な経営陣/マーケターだったら今のNHL Chicago Blackhawksが取った、クリーンで洗練されたcoolでオサレでカッコいいイメージで売る気がする。恐らく先日プロモーション契約を結んだIMGもそっちの路線で売ってくるんじゃないかと想像する。もちろん、選手やOB、今の既存顧客の抵抗があり、簡単な改革では無いと思う。で有るが故に外部のコンサルタントが変革者としての付加価値を付け易い状況ではある。ちなみにこの辺のスポーツ経営学に関して以前ちょこっと触れた関連記事

6. チーム(リンク
  • 全10チーム。Eastern/Western divisionの2つに別れる。カナダに3チーム、北米に7チーム。(Wikipediaのチームロケーションの地図
  • 以下、チームのホームシティーとチーム名。チーム名が攻撃的なものが多いのが印象的
  • Eastern Division
  • Boston Blazers (火炎) 2007年設立
  • Buffalo Bandits(山賊) 1991
  • Philadelphia Wings(翼) 1986
  • Rochester Knighthawks(鷹) 1995
  • Toronto Rock(岩) 1998
  • Western Division
  • Calgary Roughnecks(荒くれ者/猛者) 2001
  • Colorado Mammoth(マンモス) 2003
  • Edmonton Rush(突撃/襲撃) 2005
  • Minnesota Swarm(蜂の大群) 2004
  • Washington Stealth(隠密?ステルス戦闘機?) 2000
7. シーズン
  • レギュラーシーズンは1月から4月までの4ヶ月。毎週末ホーム&アウェーで試合
  • 5月の3週間で8チームでプレーオフ
  • 2010年はMLLと2週間ほどシーズンが重なってしまうため、兼業の選手で準決勝/決勝に出る選手はMLLの最初の1-2試合を逃すことになってしまった(Rabilなど)。

8. 選手
  • ほとんどがカナダ人のインドアラクロスメイン(フィールドはやってないかオマケ)。選手としてのサラリーの平均は100〜150万円前後(ってことは、貰ってる選手だと300とか500万とか?行っても1,000万は行かない気がする)。ほとんどの選手が別途フルタイムの仕事を持っている。一部のエリート選手はRBK等から個人のスポンサー契約が数百万、別途キャンプ等で稼いで数百万?恐らくラクロスのみで食べて行ける選手はほんの一握りだろう
  • むちゃくちゃバクっと言うと、9割がカナダ人。アメリカ人はフィールドでもトップクラスで、特にスティックスキルの高い選手のうち、一年中ラクロスをやりたいという選手がほとんど。チームとしてはPhiladelphia Wingsが最も多く(半分近く?)、Colorado, Washingtonに数人ずつ。他はほとんどいなくて、Canadaの3チームはほぼ全員カナダ人。
  • ただ、最近特にDやTransitionを中心に少しずつアメリカ人選手の数も増え、NCAA出身で体も大きく身体能力の高い傾向にあるアメリカ人選手の影響を受け、カナダ人選手も努力してフィジカルのレベルを上げて来ているという
  • 伝統的にCanadianは地元の高卒のやんちゃな悪ガキの成れの果てのブルーカラーのオッサンのイメージ?John GrantやGeoff Sniderを見ればよーく解るが、結構鼻っ柱が強い、喧嘩上等の「輩(やから)」といった感じ。対してアメリカ人はCanuckに比べるとどちらかと言うと高学歴でさわやかなスポーツエリートという感じだろうか。そういうカラーの違いがあって面白い。そうは言っても最近はNCAAを経由するCanuckが増えつつ有り、その辺の違いも若干薄れつつあるらしい
9. ギア&ユニフォーム
  • ギアはNLLと全面スポンサー契約を結んでいるRBK(アールビーケー)ことReebok。防具も靴もスティックも基本的にはRBKのもののみ使用が許されている(ちなみにRBKはAddidasの子会社。またWarrior & Brineは実はNew Balanceの傘下)
  • メットはCascade等フィールドの物と違い、visor(庇)が無く、よりタイトなデザイン。好みが別れるところ。個人的にはフィールドの方が戦隊っぽくてスピード感があって好き。フィールド程距離を取っての過激なヒットが無いから多少衝撃吸収力を犠牲にして身軽さと軽さを取ってるのかな?アイスホッケーに近いイメージ
  • ユニフォームは、これまたアイスホッケーに近いイメージ。アッパーは半袖ではなく七分袖のイメージ。パンツはちょっとタイト。(ちなみに90年代は何と下はタイツでやっていた...)これまたちとイマドキのアメリカのスポーツからすると、ダサイ感じがしなくもない...色遣いは何故か黒赤系が無茶苦茶多く(Boston, Philadelphia, Washington, Toronto, Calgary =10チーム中5チーム...)、全体的にどす黒い。あんましオレンジ基調とか、水色ベースとか、ビビッドな色が無い...これまたアメリカスポーツとちとカラーが異なって面白い
  • また、明確にフィールドと違うのがゴーリー。全身にパッドを着ける完全なアイスホッケースタイル


てな感じでしょうか。試合を見たりチーム/選手をフォローして行く上で知っておきたい基本情報としては。今後地元PhillyのWingsの試合を中心にレポートしていく予定。乞うご期待。

Highlight

いくつかカッコいいハイライトをピックアップ。ちと古いのと、選曲が好み別れるが、画質が他のNLL動画と比べるとましなのと、中身自体は秀逸。(Embedする時に画面サイズを縮小して画質が落ちちゃってるので、左上をクリックしてYoutubeを開いて見てもらった方がいいかもです。)


いたる@13期

2011年1月18日火曜日

Princeton 2011のギアとユニフォーム

またしてもギア周りの小ネタ。

いやもうこれはやばいでしょ。下の方に載ってるグラブとクリーツ。Alum(OB)の設立したWarriorの全面バックアップを受けるPrincetonの2011年のユニフォームとギア。グラブは両色ともカッコ良過ぎ。タイガーロゴの白も奇麗だし、黒も渋い。白のBurn 4.0クリーツの格子柄とか。オレンジユニの肩のタイガー柄とか。黒クリーツのソウルのタイガー柄とか。誰が見んねんってとこまでの細部へのこだわり。堪らない。

最近のこのユニフォーム/ギアの中での柄(がら)遣いの進化っぷりが凄い。


んでもって前回載せたWarrior TIIのメットと合わせると。

いたる@13期

2011年1月17日月曜日

NLL 2011 Game Review vol.01 Philadelphia Wings-Boston Blazers

Box LacrosseのNLL、僕の地元Phillyを拠点とするWingsの開幕戦。レギュラーシーズン16試合の初戦。地元テレビ局、Comcast Sports Networkで放映があった。
以前からくどい程書いているが、現役の選手の皆さんには騙されたと思って是非一度NLLの試合見て頂きたいと心底思う。一部の技術要素を切り取って見れば、フィールドの試合よりも遥かに学ぶ事が多い。特に、NCAA出身のNLL選手がよく口にする、「数手先を読む力」が圧倒的に大事である事がわかる。ボールを貰ってから判断していたのでは遅い。ラクロス頭がフィールドの3倍速くらいで動いているイメージ。基本延髄反射で動く感じ。クリース前でのスペースの感覚、相手の裏を掻く駆け引き、シュートのモーションの速さ/フェイク(動きと目線)/正確さ等、要素によってはフィールドの数段上の戦いが演じられている。特に2 on 2のpick and move/roll、off ballでの動きはバスケを見ているかのような錯覚に陥るほど繊細。フィールドラクロスで活かせれば相当なedgeになるはず。

また、DFも、角度/間合い/ゴールとの距離のマネジ、short stickによるチェックやホールド等、もう一段正確且つアグレッシブで多彩。特にピックへの読みや対応の速さ、敢えてリスクを取ってダブルに行き潰しに行くなど、より細やかで正確な状況判断とコミュニケーションをしているように見える。DFの選手が見ても学べる点は多いはず。

MLLでIndoor-Field HybridのToronto Nationalsが2連覇したこと、NCAAでCanadian finisherたちが大活躍出来るのも頷ける。

背景

設立3年目のBoston Blazersは大型補強により今期3人のスーパースターを揃え、NBAのMiami Heat (LeBron+Wade+Bosh)のNLL版とも言われる。昨年MVPのCasey Powellを筆頭に、MVP投票2位、3位のDan Dawson, Josh Sandersonという、2010年のNLLベストプレーヤー上から3人を攻撃陣にラインナップ。それがどう絡み合い、有機的に機能するかが注目される。

対する地元PhillyはNLL最古のチーム。エースで現1シーズン最多得点記録保持者のAthan Iannucciが2年ぶりに怪我から復帰。伝統的に最も多くのアメリカ人を抱えるチーム。Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D), Shawn Nadelen (D)ら、6人もの2010 WLCのUS代表メンバーを抱え、Dan Hardy (A), John Christmas (M)らMLLの主力級選手が脇を固める。ほぼNLLにいるNCAA/MLL選手のAmerican All Starと言ってもいいメンツ。が、ここはフィールドではなく、ボックス。カナダ人の牙城。彼らもあくまで「いい選手」に過ぎない。Pre-season rankingでも悲しいかな最下位の評価...アメリカ人主体、強いカナダ人抜きでどこまでやれるのかが注目されている。

結果

結果は10-6でボストンが手堅く勝利。見終わって、Bostonは期待以上にBig 3が大きなインパクトを生んでいると感じた。しかも、まだ1試合目で慣れておらず、互いの連携が完全に機能しているようには見えなかったにも関わらず。あくまで個人技中心での勝利。ということは今後シーズンを重ねるに連れどんどんコンビネーションが生まれて行き、更に強くなっていくということ。Washingtonなど他の強豪の仕上がり具合にもよるが、間違い無く今シーズンは上位に食い込んでくるような気がする。

試合全体を通しての見所

●勝敗を分けた要素。①turn overの数と、②shot selection。Bostonはstick skillがsolidでミスがほとんど無い。一方のPhillyは残念ながらかなりturn overが目立った。また、如実に違いが感じられたのがshotの選択。Bostonはpatientに無理なシュートを打たずに、確実に確率の高いシュートを作れている。Phillyは攻めあぐねて外からの強引なシュートが多い。本来ポイントガードをするべきIannucciが2年のブランクでいまいち機能出来ていない。またRyan BoyleやMundorfもフィールドの試合と違い、Canadianのベテランに比べるとちょっと試合巧者さに欠けて見える。全体的にまだチームとしてcohesion(有機的に連携)出来ていないように感じられる。今後修正を強いられそうだ。

●Boston Big 3一人一人のスタイルの違い。これが非常にクリアに見て取れて面白い。Box LacrosseのForward(オフェンス選手)の大きな3つの典型的なパターンを表している。170cmと小柄だが、器用ですばしっこく、特にクリース周りでのスティックスキルと狡猾さ、出だしの一歩の早さが際立つJosh Sanderson。188cmで重く、がっちり体を預けて相手を押し込み、ズドンとシュート/フィードを出してくるタイプのDan Dawson。そして、オールラウンドに何でも出来、司令塔としての機能をこなしつつもミッドレンジからの恐ろしく正確なシュートで得点を重ねる唯一のアメリカ人Casey Powell。


個別のプレー/選手の注目ポイント

●Philly McGlone #33の4点目のダイブショットが正にNLLの醍醐味。正面からダイブし、長い滞空時間を利用し、空中で右手から左手に持ち替えつつ、完全にゴールの裏に回った後にダブルクラッチ気味にねじ込む。これは一般のお客さん向けにハイライトで見せられるコンテンツ

●PhillyのTurner による5点目、Power play (EMO)でのQuick shotのスティックの使い方。超Box Lacrosseならでは。ポケットではなく、シュートストリングで平になっている「土手」の部分で直接ボールをパチッと跳ね返す使い方。ボールそのものは速くないが、球離れとしては最も早い。スティックのフェイスの感覚を研ぎ澄まし、下のポケットの部分で受けるのか、上部の土手で受けるのかを繊細に使い分ける感覚。(グローブの綿を抜き、真芯で受けて「バチッ!」と音が鳴るように捕球する事を徹底させた元巨人桑田真澄投手の父親の指導の話を思い出した)

●Casey Powellの間合いとタイミングと視線。彼に関する説明は不要だろう。Powell三兄弟の長男。90年代後半から2000年代前半は彼の時代だったとも言える。95-97年に栄光の22番を背負いSyracuseを優勝に導き、4年連続All Americanに選ばれる。MLL、US代表でも主力として活躍し、ATの新しい時代を築いたスーパースター。

NLLでも、 (途中何年か間が抜けながら)8シーズン目の34歳にして今尚Indoor Lacrosseの技術に於いて成長を続けるモンスター。遂に去年はアメリカ人としては初のMVPを受賞するに至った。今回初めてNLLでプレーする彼の姿を見てその理由がよーーーく解った気がした。身体能力が突出している訳でもないし、スティックスキルがカナダ人以上に突出している訳でもない。ただ、間合いやタイミングをよーく見て、理解し、上手くレバレッジしている。視線のずらしや騙しなどの駆け引きも。恐ろしくlacrosse IQが高いのが非常に良く解る。難しいことをやっていないのに「ひょろっと」または「にゅるっと」簡単に点を取ってしまう。ある意味魔法の様なプレースタイル。「何で!?」とか「これで点取れるんかい!?」と思わされることがしょっちゅう。AT/OF MFの選手が見て学べる点が非常に多い。

インタビューでの、「なぜあなたは長年経って尚Indoorでsurviveしているのみならず、更に成長し続けられるんですか?」という質問に対し、「ま、結局はラクロスが好きで、プレーを楽しんでやってることだと思う」とあっけらかんと答える言葉が印象的だった。RyanやMikeyといった兄弟達と裏庭でじゃれあって遊ぶように、あくまで遊び/駆け引きとして楽しんでいるからこそこういう境地に到達するんだろう。

●そしてオマケでもう一人。MLL Toronto Nationalsのぶっ飛びゴーリー、毎試合に一回はゴールを飛び出して相手ゴールまで猛突進してシュートを打ち観客を盛り上げ、All StarのFreestyle Shooting Contestでは毎年Creativeな動きでKidsに大人気の、IL 2008 Personality of the Year (キャラ大賞)のBrett Queener。ラクロス大好きな彼はIndoorではゴーリーを出来ないため(ゴールが小さく技術が異なる)、ななな何とフィールドプレーヤーとしてショートスティックを持ってBostonのロースターに入っている。果敢にボディチェックをかまし、乱闘寸前まで盛り上げる。どんだけ多彩なんだろうかこの人は...

MLLで突っ走るQueener。つか、脚めっさ速いのと、stick skillが突き抜けてる。ここまで来るともはや笑うしかねえ。

2009 Freestyle Contestで大ウケして優勝したQueener

試合のハイライト

来週はスタジアムのWells Fargo Centerで観戦予定。相手はBuffalo Bandits。今から楽しみだ。

いたる@13期

2011年1月15日土曜日

留学先:IMG Lacrosse Academy Camp

以前General Managerのウドさんから東大の現役選手向けにMichiganにプラスアルファで追加出来る新しい留学先は無いかと質問を受け、アンテナを立てていろいろと見ている。これまでAustraliaやCanada/Iroquoisのクラブチームを候補として言及してきたが、それ以外に留学先のオプションとして比較的現実的に考え得るかな?と思ったものがあったので紹介。

個人的には、少しでも上手くなりたい、勝ちたいなら、今の環境で毎日全力で練習するのと同じ様に、最も効率的に/確実に/早く強くなれる環境そのものを全力で作る/探すことにも工夫と努力を注ぐべきだと思う。同じ時間と労力を割いて練習するなら、可能な限り筋のいい/ROI(費用対効果)の高い使い方をして最大のリターンを目指すというのは極めて健全なアプローチ。毎日限界まで全力で努力して、変化して、それでも尚、もっともっと上を目指したい!という方、是非、検討してみて下さいな。ま、単純にワクワク出来るし楽しいと思うので!

上手くなるってのも勿論だけど、せっかく大学で出会ったこの素晴らしいスポーツ、人生を楽しむためのツールとして最大限に使うべく、"get out of your comfort zone(自分が心地よいと感じる環境を敢えて越えて新しい事にチャレンジする)"の手段としてレバレッジすべく。どうせこれからの日本人のプロフェッショナルにとって、国内に閉じてグローバルの舞台で戦わないという選択肢は、楽しみのレバーを無駄に制限する事にしかならないので。ガンガン楽しみながら海外に飛び出して行っちゃおう!の一貫として、海外進出の第一歩を踏み出すきっかけとして。

(ちなみに、OBの選手が行っても全然オッケーな選択肢かと。)

IMG Lacrosse Academy Camp


最近Lacrosse関連メディアに触れる中で存在感を増しているのが、先日のNLLのプロモーション契約の記事でも触れたスポーツマーケティング/マネジメント会社IMGが主催するIMG Lacrosse Camp。ここ数週間、ILのトップページにもバナーを出し続けている。

スポーツの世界のマーケティング戦略に関しては非常に鼻が利く/機を見るに敏なことで有名なIMG。そのIMGがここ数年、ガンガンラクロスへの投資を強化している。NCAAの人気拡大が確実にファン層を広げ、ジュニアレベルでの競技人口が爆発的に増加。ゴルフやテニスなどの既存のジュニア向けキャンプに加え、ラクロスでも同様に多くの選手を集め、稼げると踏んだのだろう。

Head instructorのKevin Finneran (元US代表、NLL/MLLプレーヤーで、MLLのHC/GM経験者)による紹介。施設のクオリティが引くぐらい凄い。完全にテニス/ゴルフのアカデミーの発想。(日本だと僕自身渡米前に何週間かお世話になった宮崎のPhoenix Golf Academyが近いイメージか。)来年からはフルタイムのコースも開講するという。ガキの頃から英才教育を受けて育ったラクロスエリートがNCAAやMLLのフィールドに立つ日も遠くないのかも知れない。

昨夏のlaunchのニュース。(映ってる選手自体は恐らくフツーの中学生?なので別にさしてimpressiveじゃないが...)

インストラクターの、「地上最強のラクロス選手」、Paul Rabilらによる講義の映像

日本の現役選手の留学先候補として

ラクロスキャンプのページ。週末のみのものから、3週間、5週間、レベルもKids向けからHigh-school向け、さらには大学生/プロ向けまで。既存のラクロスキャンプのほとんどが高校生/ジュニア向けで、日本の大学生の選手が参加するには(ラクロスのレベル的には低くはないとは思うが)必ずしもベストフィットでは無いかなと感じるものが多かったが、IMG Campは恐らくバチッとハマるものがある気がする。または、先方と相談の上ある程度フレキシブルに組める気がする。

しかも、さすが他スポーツで世界中から集まるスポーツエリートを育てて来た経験があるだけあり、ESL (English as second language、つまり英会話)とセットになっているものまである。これはつまり今から日本を含めた非英語圏からのキャンプ参加者を見越して作り込んでいるということだろう。その先見性と戦略性に敬服の意を感じる。

チームでのキャンプも可能。場所的にも年中暖かくてプレー可能なフロリダという理想的な立地にある。直感的に、アメリカの学生ラクロスのシーズン中に当たり、日本のリーグ戦前の準備期間にあたる1-6月が空いてて狙い目じゃないだろうか。そのタイミングならMLLシーズン前なので、恐らく設計/交渉次第ではMLL選手達に直接指導して貰える気もする。チームとして検討してみてはどうでしょ。最初は試験的に数人に絞って派遣して様子を見てみてもいいし。

もしチームで行くなら、NCAAやMLLのチームを対象にした一番レベルの高いものが最もフィットする気もする。(アメリカでも高校生と大学でチームとしてのレベルに大きなジャンプが生じることと、今の東大の基本技術や戦術理解のレベルを考えると、所謂初歩の初歩よりはある程度解ってるチームとしてのもう一段上、というのが目的だと想像するので。)

Michiganとの共存/併用

単純にアメリカでラクロスを学ぶという意味ではMichigan留学とoverlapしてしまう部分もあると思うが、チームの中に入って生活ごと体験することに大きな意味があり、どちらかと言うと「お客さん」として滞在するMichigan留学とは違い、純粋に最高レベルのラクロス教育を短期間で凝縮して吸収するという意味合いが強く、目的に応じた使い分け/棲み分けも可能な気がする。また、「お客さん」としてではなく、自分たちが主役になるため、指導内容もよりカスタマイズ可能で、ピンポイントで痒い所に手が届く物になるはず。英語が解らなくても解るまでみっちり訊きまくれるし。

下級生「でも」、いやむしろ下級生「こそ」?

カスタマイズ度の高さ、対象とする実力の幅の広さを考えると、必ずしもこれまでMichiganに派遣していた3-4年生じゃなくても、モチベーションと向上心さえ有れば1-2年生を送っても十分にmake senseするはず。「ある程度ラクロスを知ってないと/プレー出来ないと送れない」ではなく、「まだ知らない/染まってないからこそ送るべき」、「出来るだけ早い段階で本場を経験させた方が後の成長余地が大きい/刈り取り期間が長い」という理屈が成り立ち易い。

4年生が経験し、「良かったよ!楽しかったよ!」となるが、すぐに卒業してしまい、末端も含めたチーム全体への技術や情熱の伝達/還元率がボトルネックになるという問題も解消出来る。「せっかく素晴らしいことを学んだのに1シーズンしか試せない...あと2-3年あればもっといろいろ出来たのに」の「2-3年」を実際に意図的に作れることになる。

これがチームの多くの選手が若い学年から通る標準プロセスになってしまえば、結構恐ろしいことが起こる気もして若干鳥肌が立つ。一度目標地点を(世界標準で)高い位置に設定し、塗り絵の枠組みさえバチッと作ってしまえば、残りの期間での日本での1年間の練習の効果が全く違った物になってくるはず。

お金がボトルネックなら、派遣人数を絞って、OB会に(きちんと情熱と理屈を提示した上で)お願いして援助して貰い、奨学金制度を立ち上げてみてもいいし。協力したいというOBは必ずいるはず。

ま、難しく考えずに、純粋にミーハーにPaul Rabilの弟子になりたい!でもいいし。毎日MLLの選手達に1 on 1 100本ノック志願してひたすら最高峰を体に叩き込むでもいいし。動機はなんだっていいので。(僕がオーストラリアのクラブチームに行ったのも合コン戦闘力向上という空っぽの動機に突き動かされた面も否めないし。しかもGC戦闘力は1ミリたりとも向上しなかった。)

他のキャンプよりも効果は高い?

直感的に、トレーニングの内容、効果に関しても、恐らく過去にゴルフやテニスで実績を残して来たIMGのナレッジを最大限にレバレッジし、長期的な視野に立った科学的/論理的アプローチと効果測定により改善を重ねているはず。

リクルーティング目的も大きい大学コーチによるキャンプや、副業としての意味合いも強い有名選手によるキャンプと違い、専業のインストラクターによる育成メインのプログラム。今後他のプログラムよりも高い育成パフォーマンスを達成していくんじゃないかと想像する。今後参加選手達の目が肥え、「どのキャンプが一番費用対効果が高いか/上手くなれるか」という厳しい目と評判に晒されて行くはずで、恐らく時間が経つにつれ勝ち馬キャンプの一つになって行くんじゃないだろうか。

ラクロスの成長と可能性を表す

いずれにせよ、これもアメリカで感じられる、ラクロスというスポーツが形を変えながらダイナミックに成長していく大きな大きなうねりの一部。IMGやNikeやaddidasといったスポーツ界の巨人達がこぞって参戦し、新しい試みに向けて投資し始めている。LXM PROの様に、ハリウッド寄りの動きも起こり始めている。このスポーツはホント行く所まで行っちゃう気がする。

一応、日本語も

一応、ページ上部の言語選択を変えることで日本語でも読める。が、案の定Google Translationばりのマシーン翻訳なのでどっちかっつうとギャグとして...

Onlineでインストラクションビデオをガンガンアップ

昨年の11月くらいから既にYoutubeのアカウントでガンガンインストラクションを載せ始めている。過去にもいろいろ似たような動画があったが、IMGのこれは圧倒的に深く、実戦的で、体系化されている。Re-dodgeやoff-ball、シュートの間合いとタイミングなど、「ど基礎」から一歩応用に近づいた、痒い所に手が届くインストラクションが多い。(リンク

いたる@13期

2011年1月13日木曜日

NLLがIMGとのプロモーション契約を締結

先日のInside Lacrosse PodcastとIL Indoor.comの記事で、先週末2011年シーズンが開幕したNLL (National Lacrosse League: インドアのプロリーグ)が、最大手のグローバルスポーツマネジメント企業、IMG (International Management Group)とマーケティング/プロモーションの契約を正式に結んだと発表があった。TV放映権とスポンサー獲得の分野で主にサポートを受けることになると言う。

IMGはご存知の方も多いと思うが、ゴルフ発祥のスポーツマネジメント企業。多くのプロ選手のマネジメントやメディア戦略を手掛けている。(Wikipedia(日本語)のリンク

スポーツマネジメント/経営に関しては一日の長があり、スポーツコンテンツを顧客に売り込んで行く力に関しては定評がある。そのIMGが数あるスポーツの中から敢えてラクロス、NLLを選んだ点に、このスポーツが秘めた可能性を感じさせてくれる。コンテンツとしての魅力に比して十分に売り込みきれてないという白地の大きさ、そして今後の伸びが期待出来る割にまだ混んでない/競合が多くないこと、加えて中流階級の子供達が多くプレーしている事から、彼らの主力事業の一つ、academy/campでの収益が見込めると踏んだことも関係してるんじゃないかと推察する。

NLLについては今後いくつかの記事で徐々に紹介していこうと思っているが、メディアに関してはこれまでローカルテレビ局の放送に留まっており、去年も所謂全国ネットで放映されたのは決勝戦の一試合のみ。せっかくexcitingで素晴らしいコンテンツなのに地元のコアでニッチなファン層にしかリーチ出来ておらず非常に勿体ないなと感じていた。(何度か過去の記事でも触れているが、個人的には、特にラクロス非経験者に向けての解り易さや面白さという意味ではMLLよりもNLLの方が上だと感じている。)

この契約がNLL/ラクロスにとって大きなブレークスルーを生む事を願ってやまない。

昨年の決勝のハイライト。結構いい出来のビデオかと。試合の見所紹介記事はこちら

いたる@13期

2011年1月11日火曜日

「ラクロス浪人」

クリスマス休暇にガッと吐き出したシリーズのラスト。去年の夏くらいからoutputにしときたかったことほぼ全部カバー出来たのでスッキリ。今後仕事の状況次第で頻度ガクッと落ちると思われるのでDon't hold your breathでお願いしやす...

Inside Lacrosseの記事で興味深い話があったので紹介。NCAAの大学に入学する前の「ラクロス浪人」の存在に関して。

僕自身アメリカのundergraduate(4年制大学)の教育制度や入学制度を自ら体験して深く理解していたわけではなかったためよく知らなかったが、最近NCAAのラクロス選手のリクルーティングの話をいろいろ見聞きする中で、「ラクロス浪人」なる制度が存在していることに気付いた。この辺の、表面的な試合や選手を見るだけでは見えてこないメカニズムやドラマは非常に面白いし学びもあるので、ちょこっと語らせて頂こうと思う。

今のNCAAを代表するAT二人も実は浪人出身

例えば、UNCのエースATでMVP候補の一人、昨年のOffensive Player of the Yearで4年生のBilly Bitter, CornellのエースATで昨年のBest ATで3年生のRob Pannellの二人も実は高校卒業後に一年「ラクロス浪人生」をして大学に入学している。(二人の落ち着きや活躍を考えると納得出来る。)

Billy BitterのHighlight。難しいこと一切せずに、シンプルなchange of paceと切り返しだけでトップレベルのDFをここまで翻弄出来てしまうという衝撃。切り返し後の加速がチョロQ並み。相手Dが全く付いて行けずにコロンコロン転ばされている。

Prep-schoolという仕組み

浪人生と言っても、日本のように河合塾に行ってガリガリ勉強する日本の大学受験浪人とはちょっと違う。地元の一般的な高校を卒業し、Prep-School (University Preparation School)と呼ばれる、全寮制の予備校兼私立進学校に編入し、最高学年に1年間籍を置いて大学入学に備えるというもの。予備校と高校の中間のようなイメージか。

大学受験浪人自体は日本程一般的ではない

面白いのは、一般の大学受験に於いては日本程浪人生が一般的ではない点。アメリカの大学入試の場合、受験一発勝負の面が強い日本と違い、高校生活全体を通してのGPA(Grade Point Average: 通知表の平均評定)が重く見られ、またエッセイも見られる。従って、いい高校に行ったか、そこで長期間優等生としてパフォームし続けたかで自ずと行ける学校が決まってしまう面があり、一年浪人することによるcandidacyの上乗せがあまり生じないとう事情がある。

(完っ全に余談だが、高校時代に学校の授業からはドロップアウト気味で優等生とは程遠かった僕からすると、受験一発勝負で逆転可能な日本の受験システムに救われた面も大きく、アメリカの受験制度だったらと思うとゾッとする...)

背景となるリクルーティング事情

ラクロスに限らず、NCAAでプレーするstudent athleteの多くが、高校時代の活躍に基づき、各大学のコーチやスカウティングスタッフの目に止まり、リクルーティングされるというプロセスを通って行く。日本の高校/大学での強豪校によるスポーツ推薦と基本的には同じ仕組み。

基本的には本当に突出した選手は高1くらいからコーチの連絡を受け始め、多くの上位選手は高2ぐらいのシーズンの活躍を基に複数の大学から連絡を受け、口頭でコミット、高3で正式に入学をコミット、という感じ。従って、高1、高2での活躍が非常に大事になってくる。高3のブレークだとちょっと遅いという感じ。

超ざっくり仮り置き試算すると、現時点で高校男子チームは全米で3,000校、仮に平均で各チーム学年10人いるとすると、3万人の中から上位校20校程度の上位指名枠100人のプールを目指すイメージだろうか。Survival rateは0.3%。非常にコンペティティブで時間軸もタイトな競争だ。

ギャップが生じるパターン

基本的にはメディアや口コミによりそれなりに情報共有がなされたマチュアな自由競争市場で、名門高校と名門大学同士、コーチ同士のパイプもあり、子供の頃からの積み上げで、フェアに評価されて行くため、それなりに分相応な/正しい評価が下されるケースが過半数だとは思う。一方で、時々個別の事情で本来の実力と評価にギャップが生じるケースがある。

例えば、
  • ①遅くラクロスを始めたためまだまだ発展途上にあり、伸びしろが大きい
  • ②他のスポーツをメインでやっていたため/ラクロスへの興味が低かったため、本気でやっていなかったため伸びしろが大きい
  • ③怪我により大事な高1、2のシーズンでプレー出来なかったため気付かれなかった
  • ④弱小チーム、地方/ラクロスマイナー地域出身のため、知られていない/伸びしろが大きい

ちなみに、名将Jeff TambroniがCornell時代に必ずしも高校卒業時点でトップランクではなかった選手たちを集めて結果を出していたのは、①、②、④を徹底的にレバレッジしていたからだと思われる。

選手にとっての浪人の意味

選手として悩ましいのが、上記の①〜④のケースに当てはまる場合。特に、ラクロスで身を立てて行こう、ラクロス推薦でいい大学に行こうと思っていた選手にとって、top tierの大学に行けるか否かは正に人生を分ける程のインパクトを持ち得、それが不慮の怪我や無名校故の露出の少なさというuncontrollableな原因で潰えるのは泣くに泣けないだろう。

そこで出てくるのが浪人制度。強豪Prep-Schoolに行き、一年余分にプレーし、より高いレベルのチーム/環境でラクロスもレベルアップし、実力を証明し、ついでに勉強的にもレベルアップし、全寮制の生活とレベルの高い授業で大学生活に備える。

単純に一学年ダブることになるので、周囲のレベルが一学年分繰り下がることになり(伸び盛りの高校時代の1学年は馬鹿に出来ない)相対的に目立て、名門prep-schoolで活躍すれば多くの強豪大学の目に触れ、また勉強的に問題があった場合はキャッチアップの猶予を貰える。

もちろん、リスクとコストを伴う

一方で、Prep-schoolの年間300〜500万円という高い学費に加え、単純に一年余分に時間を使うことになる上、浪人制度が一般的ではないアメリカでは精神的な「同級生に置いて行かれてる感」は日本以上にあるはず。しかも、浪人したからと言って強豪大学に行ける保証が有る訳でもない。それなりのコストとリスクを伴うオプションではある。

Billy Bitterの場合

地元NY州で既にいい選手だったが、高2のタイミングで臀部を疲労骨折してしまい、シーズンを通しほとんどプレー出来なかったため、どの大学からも存在に気付いて貰えず、一切連絡を受けなかった(今の彼の活躍を考えると信じられないが...)。その後父親の勧めにより、無理して現役でしょぼい大学チームに行くよりは、一年我慢して浪人し、再度アピールするチャンスを作った方が絶対にBillyのためになると判断し、浪人を決意。

そこからMassachusettsの名門Prep-school, Deerfield Academyに出願し、合格。高3のシーズンは高2をやり直すつもりでプレー。高2として1学年下の選手たちに混ざってキャンプにも参加し、そこで派手に活躍して徐々に頭角を表し、卒業前に晴れてUNCからオファーを貰う事に成功する。その後Deerfieldでも大活躍し、高校ベストアタック賞を受賞し、鳴り物入りでUNC入りを果たし、一年目から活躍し、2年生のプレーオフで爆発。1年待ったことが大成功に繋がったパターン。曰く「結果として上手く行った。大学に近い環境、厳しい規律の中で生活するいい練習になった。」

Rob Pannellの場合

高1の段階でそこそこの活躍をし、NCAAの中堅チームQuinnipiac大学からオファーを貰い、口頭でコミットしてしまっていた。が、高2のシーズンに急成長を見せ、70ポイントの活躍、さらに高3で化けて130ポイントをたたき出すに至る。この段階で親戚のラクロスコーチからの、「想定外に上手くなっちゃったから、Quinnipiac行くの勿体無いから、一年延期してコミット取り消した方がいいんじゃね?」という勧めに従う。(捨てられたQuinnipiacは涙目...)

Billy Bitterと同じDeerfieldに1年遅れで行き、そこで99ポイントという学校記録を築く活躍。Ivy League複数校からのオファーを受け、TamnroniのいたCoenell入りを決める。その後の活躍は多くのラクロスファンが知る通り。1年目からRookie of the yearを獲得し、準優勝の立役者となる。曰く「Prep schoolは生活、学問、ラクロスに於いて大学へのスムーズな繋ぎになった」とのこと。

思う事

考え様によっては、もし彼らが浪人していなければ、今のUNCの大スターBilly Bitterも存在しなかったかも知れないし、Cornellを準優勝に導いたPannellはQuinnipiacなるマイナー校のエースとして「そこそこ」の注目を集めるに留まっていたかも知れないということ。正に人生どう転ぶか解らないと改めて思わされる。

大好きなラクロスのために、そして夢を叶えるために、若い頃から積極的にリスクを取って主体的に人生をデザインして行く姿が清々しいな、と感じた。また、今のNCAAを代表する選手ですら順風満帆でストレートに選手人生を歩んで来た訳ではない事を知り(本人達は別に「苦労」とは捉えず意外とあっけらかんと楽しんでたかも知れないが)、非常に面白いと感じ、またこの2人のことを応援したい気持ちがより強くなった。大事なのはその時その時で全力を尽くし、最善の判断を下し、時には必要なリスクを取って、そのプロセスと変化を楽しみ続けることなんだろう。

流動的/効率的な人材市場が生む全体最適という幸せ

また、スポーツのために浪人をし、自分を高め、売り出し、より良いチャンスを掴むという、人生に対するproactiveでpositiveな姿勢と、それを許すflexibleな仕組みが非常にアメリカの文化や哲学を表していて面白いとも感じた。能力はあったのに甲子園に出られずドラフト指名されなかった高校球児が大学で活躍し夢を叶える話にも似ている。こういう、より合理的/流動的でより透明な人材市場が選手にとっても学校にとってもよりフェアで良い結果をもたらし、社会全体としても全体最適に近づけるといういい例。

先日の在学中のチーム間のトランスファー(転校)の話と合わせて、アメリカの大学スポーツの人材市場の柔軟さ/流動性の高さをかいま見た気がした。スーパー余談だが、最近の本「7割は課長にさえなれません」(城繁幸)等で指摘されている、一般の人材市場でも、国として良かれと思って正規雇用/終身雇用を守ろうとすると結果として人材市場の流動性を阻害し、個人にとっても企業にとっても、引いてはシステム全体の効率を落として競争力を下げるという意味で国のためにもならない、という話が思い出された。(日本も結構それで大きな機会損失を被っており、さらに労働組合が強い西ヨーロッパのいくつかの国は大きく損してしまっている。)個人的には自己責任/自分の意思重視である程度trial and errorを許しながら自由に柔軟に動ける仕組みに賛成。

2011年1月10日月曜日

NCAA 1996 Game Review Final Princeton-Virginia

先日の07年のHopkins-Dukeに続き、ESPN Classicからの過去のFinal名勝負のその2。

個人的には非常に想い出深い試合。大学に入学し、所属する部活としてラクロス部を考えていた僕は、新入生歓迎イベントで見たこの試合のビデオにより、文字通りラクロスに一目惚れし、即入部を決めた。スポーツそのものの持つスピード感や、見た目のかっこ良さや新しさ、何ともアメリカ的な雰囲気に一発でやられてしまったのを覚えている。

往年の名選手

この試合で活躍している選手は既に30代半ばなので、残念ながらもうほとんどMLLには残っていない。UVAのGoalie、Chris SandersonがTeam Canadaで2010年に素晴らしいプレーを見せてたくらい。10年前にラクロスをやっていた方なら懐かしい響きのPrincetonの強力AT陣、Jesse HubbardもJon Hessも数年前に引退してしまった。

PrincetonのBill Tierney(今はDenver)、UVAのDom Starsiaのコーチ二人がまだ若い。Starsiaはいつものmustache(口ヒゲ)を蓄え、完全にスーパーマリオ。

如実に感じられる進化

しかしまあ、こうやって15年前の試合を見ると、ラクロスも本当に進化したんだなと改めて実感させられる。

何と言ってもビジュアル。当時は画期的なデザインだったCascade helmetが導入された直後。とは言え、今のPro7なんかからすると、ドボッとしてて、ださい...Chinガードのプラスチックが真っすぐ...そして、ユニフォームのパンツ短っ!ついでに上のユニフォームの丈も短っ!下のシャツも短くて結構みんなお腹見せちゃってる。今見ると本格的にやばい感じだ...

やはり大きな違いを感じるのがヘッド。丁度1996年は、その後のラクロスに大きな大きな変化を与えることになる、Offset head (Brine Edgeに始まる、段差になったヘッド)とCurving head(Warrior Cobra/Revolutionに繋がる、カーブしたヘッド。下がpinchされている/絞られているのも特徴)が導入される前。見ると全員STX ExcaliberかSTX Viper(最近出たcurving headのViper 2じゃなく、初代)という、今は亡きstraight headを使っている。

また、今はほとんど見られないtraditional mesh(女子ラクロスで使われている革ひもをベースにstringで編まれたメッシュ。網の目が大きくなるためhold力が上がる一方、volatilityが高く安定したスティックを維持するのが難しかった)の選手がオフェンスを中心に多い。

プレースタイルも、ヘッドの性能の限界から、見ていると結構あれ?というパスミス(抜けたり引っかかったり)が起こったり、ほんのちょっとチェックされただけでボールが落ちたりしている。

その結果クレイドルも大きく、スティックをより垂直に立てており、パスやシュートのスピードも一段遅く見える。(当時は凄く速いと思っていたが、こうやって2010年のラクロスに見慣れた上で見直すと、やはり遅い)

一方で、その裏返しとして、トランジッションが多くなってより面白いのと、球離れがより早く、ball carrierの1 on 1に限界があるため、よりパスを中心にゲームを組み立てていて面白い。DFは逆にかなり積極的にチェックしてボールを落としに行っている。スライドも早くて積極的。

当時この試合を見た頃、更に4年前の1992年の決勝を見て、うわっ!ユニもださくて技術も違うわ!と衝撃を受けたが、今回(当時のその新しかった試合を見て)全く同じ感覚を受けた。やはりこのスポーツは本当に大きく大きく進化し続けているんだなと感じる。他のスポーツ(バスケやサッカーやアメフトや野球)に比べ、プレーのギアへの依存度が高く、道具の進化が根源的にプレーの性質を変えるため、よりドラスティックで速いゲームの進化に繋がっている。それもまたラクロスの持つ面白さだと思う。

Highlightのリンク

いたる@13期

Brine King 3 Custom College Glove

カッコよすぎるグラブ。Brine King 3。Dukeが着けていてバチバチに目立っていた。Custom Collegeモデル。DukeとGeorgetownのがヤバい。Georgetownのwhite navyとか東大のユニフォームの白に合わせたら相当カッコいいはず。KingロゴのモノグラムがNew Era hat的で美し過ぎなのと、甲のメッシュがハイテク感というか、マシーン感というか、ミニ四駆感があって個人的に好き。


いたる13期

2011年1月9日日曜日

Fiddlestick/mini-stick

クリスマス前にILにpostされた記事で、アメリカのラクロスの新しい流れを表していて面白いなと思った記事があったので紹介。(動画記事のリンク

来年North Carolinaに入学する予定の高校生、Patrick KellyがBaltimoreの自宅の地下のバスケコートで開催した、"fiddlestick tournament"。同級生や先輩の上手い選手たちに加え、Hopkins-Toronto Nationalsで現Canada代表のKevin Huntleyも参加。

"Fiddlestick(フィドルスティック)"はイコール"mini-stick"。「チビスティック」とか「なんちゃってスティック」とか「オモチャスティック」みたいな感じだろうか。(最近は日本でも結構出回ってるんじゃないかな?と想像するが)アメリカではこれを目にする機会が多い。近所のSports AuthorityやDick's sporting goodsといった大型スポーツ用品店に行くと、どっさり置かれたラクロスギアの中に、必ずこのミニスティックが置いてある。試合会場に試合を見に行くと、ほぼ必ず駐車場で子供達が小さいゴールを置いてこのミニスティックを使ってストリートバスケ的なpick-up gameをやっている。ちゃんとゴーリー用にも小さいスティックがある。

何と言っても持ち運びも楽だし、プレーするのもボールを投げるのも手軽なのがいい。家の庭でギアも身につけずに気軽に出来ちゃう。ボールも小さくて軽くて柔らかいし、スティックも小さいので、人に優しい。メットやグラブも不要。ゴーリーも丸腰。コンタクト無しルール。誰かにガツッとぶつかって流血、とか、ボールが逸れて通行人に直撃、みたいな心配も無い。空気を読んであんましボール持ち過ぎてぶつかったりとかやらない。細かいパスをサクサク繋いで、ゴール前でcreativity満載のフェイクをしまくって遊ぶ。ラクロスというスポーツの持つ最大のボトルネックだった、「気軽にどこでも出来るわけじゃない」という難点を取り去ってくれる、大きな可能性を秘めたツール。

そして何よりも、stick skillのいい練習になる。

最初見た時は子供の練習用なのかな?と思ったが、全然それだけじゃない。大人がめちゃくちゃ使ってる。

日本で2006年くらいかな?当時の箕輪(弟)主将と一緒に地元駒場小学校のクラブ活動でボランティアで小学生にラクロスを教えるのを手伝った記憶があるが、その時はプラスティックのスティックだったと記憶している。グラウンドボールの際に地面に打ち付けることで結構ヘッドが割れるという問題が起こっていたし、ラクロス本来のメッシュを使ったスローやキャッチの感覚とはほど遠い物だった。(速いパスは投げられないし、クレードルもしにくいし、正直難易度が上がる気すらした。)

今のfiddlestickの違いは、本当にラクロススティックな点。ちゃんとメッシュがあり、編んである。Evolutionなどの実際のフレームを純粋に相似形で小さくしたイメージ。シャフトもちゃんと八角形シェイプ。ゴーリースティックもちゃんと小ちゃいバージョンがある。ゴールも同じく小型のものがある。

どうでしょ。オフにちょっと遊んだり、寒い冬も体育館でこれでやったり。OBになって20年経って、さすがにガチのラクロスは毎週は出来ねえな、という人でも、これなら楽勝。息子や娘と楽しむにも持ってこい。彼女ともこれなら気軽に公園で出来ちゃう。こないだうちのマンションの近所のおじさんはこれでボールを投げて飼ってるラブラドールレトリーバーに取りに行かせていた。賢い。

ぱっとGoogle shopping検索した感じ、山ほど引っかかる。STXがfiddle stickとしてゴールも含めて力を入れて売ってるっぽい。(それだけニーズと市場があって売れるってことだろう。)
もう少し時間が経てば、幼少期からfiddlestickを使って遊んでいた世代がNCAAに入ってくる。本物のスティックからいきなり入るのに比べ、stick skillが早く成熟しているはず。このスポーツがまた一段高いレベルに到達する予感がする。

いたる@13期

2011年1月7日金曜日

MLL選手製造工場UMBC

10年のMLLや、WLCに向けてのメディアカバレッジを見る中で、頻繁に耳にした話題がある。UMBC (University of Maryland Baltimore County)のトッププレーヤー輩出っぷり。解説者のQuintもよく指摘しており、去年のInside Lacrosseでも特集記事が組まれていた。非常に興味深い話だったのと、選手/コーチにとって、また一ファン/ビジネスパーソンとしても学ぶべき点があると感じたので、ご紹介。ちなみにUMBCは過去にも親善試合で何度か日本にも来ており、コーチのDon Zimmermanは日本のラクロスとも縁が深い方。

UMBC出身者の活躍

  • 昨シーズンの頭くらいからだろうか。ILやESPNで、「UMBC出身選手の活躍が目立っている」という話をよく耳にするようになった
  • 具体的には、2010シーズン時点で6人のMLL選手がおり、そのうち4人がスコアリングランキング上位25位以内、そして2人がUS代表、もう一人はMIP (Most Improved Player)獲得
  • 更に彼らの多くが大学時代必ずしもトップレベルの選手として注目されていた訳でもない。それがMLLに来て花開き、更に物凄い勢いで成長を続けている
  • 代表的なのはDenverの主力でありTeam USでも中心となった、Brendan MundorfとDrew WesterveltのATコンビ。そして、2010年に大ブレークし、Most Improved Player賞を受賞し、実質Rookie of the yearとも言われたChesapeakeのPeet Poillon(イヨン)。さらに、Terry Kimener (Chicago), Alex Hopmann (Denver), Kyle Wimer (Chesapeake)といったオールラウンダー系で活躍するMFたち

なぜそれが凄いのか

  • 別にMLLの選手数で見ればもっと多い学校はいくらでもある。Virginia, Syracuse, Duke, UNC, Hopkins, Maryland
  • しかし、UMBCが注目されるのには理由がある
  • NCAAレベルでは決してトップレベルの強豪校ではない事。例年20位前後をうろうろし、ファイナル4のChampionship Weekendにはここ30年縁がない。ぶっちゃけ「中堅校」
  • また、その裏には、学校そのものの背負うハンデも。学校としてのサイズも小さく、知名度もかなり落ちる。エンジニアリングとコンピューターサイエンスというニッチな学部が中心。大型総合大学と違い、家から通学する地元の生徒が多い。ボルティモアの郊外という、必ずしもベストな立地にある訳でもない。従って、選手を集める上で必ずしも上記の強豪校/マンモス校のような魅力を兼ね備えているとは言い難い
  • 結果、毎年集まる選手の質としては、上記強豪校からは一段落ちる。高校生で既に完成された有名選手を取っている訳ではなく、地味な選手が多い(DVDで試合を見たら解る通り)
  • にも関わらず、MLLレベルでトップ校に負けるとも劣らない人数と実績を残している。一体何がそうさせているんだ?何か秘密があるはずだ、というのがそもそもの話の発端

理由①Zimの教える基本に忠実なsimple lacrosse

  • MLLに来ている選手たちが口を揃えて理由としてあげるのが、ヘッドコーチDon Zimmermanの、超基本に忠実な指導方針
  • 例え花形選手だろうと、補欠選手だろうと、入学した瞬間から「ただひたすら基礎を固め続けるためのboot camp」を味合うことになる
  • 「シュートは必ずオーバーハンド」、「groundballは絶対に両手」、「make the simple pass。派手なパス、リスキーなパスはするな」。それらを繰り返し刷り込まれ、骨の髄にまで叩き込まれると言う。極めてシンプルな、初心者に教えるレベルの基本。別に何ら複雑なこと、高度なこと、派手なプレーは必要ない、という考え方。ある意味今の複雑化する戦略や多様化して派手になる現代のラクロスに頑固に逆行するやり方
  • しかし、Mundorf曰く「これが自分たちのMLLでの成功に最も役に立っている。大学の次のステージ、プロのレベルでは、DFは一回り大きく、上手く、速い。そんな状況では高度で複雑なプレーは出来なくなる。むしろ基本に立ち返り、シンプルで正確なプレーを確実にやることが返って重要になる。大学時代に派手なプレーで目立っていた選手が同じ事をプロでやろうとしても長続きせず結局消えて行く。シンプルにやること。基礎。それがトップレベルで成功し、生き残って行く上で最も大事なことだ」

理由②選手自身に考えさせる

  • さらにWesterveltは、「Zimは選手自身に考えさせることを重視する。選手一人一人がIntelligenceを持つ事を要求する。結果として、それが4年間を通じて習慣化される」
  • Zim曰く、「自分が選手を『創る』なんてとんでもない。自分の役割は、あくまで選手達をサポートすることに過ぎない。自分が教えた選手たちがプロとして将来活躍する。それほど嬉しいことはない」
  • その瞬間の勝ちを手っ取り早く求めた場合、役割を与え、機械的にそれを「やらせる」、という考え方もあるだろう。が、彼は(恐らく)時として目先の効率や勝利を捨て、長い目で見て選手にとって最も成長出来るやり方を取っているんだろう

理由③"Lax rats"(ラクロス馬鹿)

  • Terry Kimener曰く、「UMBCの選手たちは、一言で言うと『Lax rats(ラクロス大好き野郎)』の集団。名門校程華々しい高校時代の実績は無いが、ラクロス大好き度では群を抜いている。だから、大学時代の伸びの大きさでは負けないし、また、卒業してプロになってもさらに貪欲に吸収し、成長し続ける。
  • 「MundorfもWesterveltもPoillonも、全員に共通するのはプロに入ってから大きく成長していること。名門校出身の選手の中には大学時代の実績に満足し、大学時代の貯金をプロで切り崩す、というやり方の選手も多い。でもUMBCの選手はそこが違う」

理由④Chip on the shoulder(雑草魂)

  • また彼は、他に「負けん気」、「雑草魂」の存在も挙げる。大学時代に優勝やベスト4を経験し、多くのメディアの注目を集めた選手たちは、ある程度の達成感/満足感をそこで得てしまうのかも知れない。プロに入って尚成長し、優勝し、プルーブしようという意思を持ち続けるのは簡単ではない。
  • 一方で、UMBCの選手たちは、大学時代に見過ごされる/注目されないでいることに大きな不満を持ち続けて来た。自分たちはもっとやれることを証明したい、大学時代に果たせなかった全米制覇の夢をプロで叶えたい、名門校出身のやつらを見返してやりたいという強い気持ちを持ってプレーしている。それが長い目で見て成長や気持ちの入ったプレーに繋がっているとのこと

以下、実際にMLLで活躍しているUMBC alum(卒業生)の紹介。


具体例①最強ATコンビに成り上がったBrendan MundorfとDrew Westervelt

  • 大学で3年間共にプレーし、Denver Outlawでも一緒になり、NLLのPhiladelphia Wingsでも共にプレーし、更にはUS代表でも鉄板ATコンビとしてプレーし続けている。(つまり、7年間の間文字通り1年中一緒にプレーしているということ。二人Duke-Long IslandのDino-Greerも近いがここまで徹底していない)
  • 左利きと右利き、ダッジャーとフィーダー、スピードとパワー、等々あらゆる意味で補完関係にあり、お互いがお互いのパフォーマンスを何倍にも引き出す相性とコンビネーションを持っている。
  • 互いに切磋琢磨すると共に、長年一緒にやることで、お互いに何がやりたいかを知り尽くしている。お互いを生かし合う事で、一人でやるよりも高いレベルのパフォーマンスを生み続けて来た
  • 2010年のUS代表選出では、Duke-Long IslandのDanowskiら有名なAT達を差し置いて、NCAA時代に必ずしも最も有名な選手では無かった二人が選ばれたことに軽い驚きがあったが、今の実力、MLLに入って以降の伸び、短い準備期間の中既に完成されたコンビネーションを持っていたことを考えると納得。そして何よりもHC Presslerの下、派手さを捨てて基本に忠実に勝ちを取りに行き、我を捨てて徹底したチームプレーを求めたUS代表にとってはUMBCで叩き込まれたスタイルは正にうってつけだったのかも知れない

具体例②Peet Poillonのシンデレラストーリー

  • 雑草魂っぷり、諦めずに超粘り強く底辺から這い上がるっぷりが半端無い...
  • テレビで見たNCAA決勝に感化され、父親と共に高校にラクロスチームを立ち上げる。
  • 短大Howard Community Collegeでの2年間の活躍が認められ、当時Joe Breschi(現UNC HC)がHCをやっていたOhio Stateの目に留まり、4年生として転校し、そこでエースになる
  • そのシーズンでUMBCに負けた際に、「目から鱗が落ちた」と言う。「UMBCのラクロスは明らかに自分たちより効率の良いラクロスだった。自分たちの方が遥かに能力があったはずなのに、試合では負けた」と。「だから、そのチームを作ったDon Zimmermanの下でプレーして、その秘密を学んでやろうと思った」と言う。(転んでも決してただでは起きない...)
  • そして、UMBCでZimの教えを受け、初日から誰よりもハードに練習し、大活躍し、2nd team All Americanに選ばれる
  • MLLではBostonにドラフトされる。Bostonまで車で5時間掛けて毎週気合いで通うも、練習生としてしか使われず、1シーズン目はほとんど試合に出られぬままChesapeakeに放出トレード。
  • それでもめげずにハードな練習を続け、遂に2年目のシーズンで大ブレークを果たす。それまでNational Spotlightを浴びる事が無かったこともあり、多くのファンや関係者から「あいつ誰やねん!?」となったという話。期待されていなかったため、練習生の付けるような大きな番号、背番号57のままシーズンを戦い、それがいつの間にか彼のトレードマークになった
  • 一気に人気が爆発し、遂にPaul Rabil率いるMaverik Lacrosseと契約を結ぶ。解説者のQuint Kessenichも2014年のUS代表に入ってくると予想


具体例③雑用処理から這い上がるutility MF 3人

  • Terry Kimener (Chicago), Alex Hopmann (Denver), Kyle Wimer (Chesapeake)の3人に共通することは、自我を殺し、チームプレーに徹し、求めればどんな役割もこなすということ。Ground ballを拾ってクリアする役目、DFMFなどなど、チームに求められる役目を黙々とこなす。そして、結果として主力としてのチャンスをモノにして行く。
  • 基本がしっかりしており、派手さは無いが、オールラウンドに何でもこなせる。コーチとしても使い勝手がよく、頼りになる存在だと各コーチ


などなど。基本の大事さ、自分自身で考えることの大事さ、特に、高いレベルになればなるほどその重要さが増すという点、そして、ラクロスを愛する気持ちや楽しむ気持ち、名門チームじゃなくても気にせずに自分が今やるべき事/出来る事/求められる事をやることが長期的に見た成長と成功に繋がっているという点など、非常に本質的で学べることが多いと感じた。ラクロスだけに限らず。

いたる@13期

2011年1月5日水曜日

NCAA 2007 Game Review Final Johns Hopkins-Duke

先日ESPN Classicという過去の名試合を放送するESPNの兄弟チャネルで、NCAAの過去15年間の名勝負と言われる決勝戦を再放送していた。録画してDVD梅ちゃんに送っといたので興味ある人は是非。

ちなみにピックアップされていたのは3試合。96年のPrinceton-Virginia、07年のHopkins-Duke、そして記憶に新しい09年のSyracuse-Cornell。どれも最後の最後まで結果の読めない1点差の試合。ラクロスの試合としてもレベルが高く、エンターテイメントコンテンツとしても非常に完成度が高い。歴史に残る名勝負。納得の選出。

今回は07年の決勝の見所紹介。

1. そうそうたる顔ぶれ

今見ると、実は錚々たる選手が出ている。後のMLL、US/Canada代表を引っ張る選手がフィールド上にゴロゴロ。JHUは過去10年間で最高のNCAAチームと呼ぶ人も多い。そして、Dukeはご存知の通り3年後の2010年に雪辱の初優勝を果たすのだが、その際の主力メンバーが既にこの頃から下級生として活躍している。以下、試合に出ている主な現MLLメンバーたち。

Hopkins

#2 G Jesse Schwartzman Sr. (現Denver)
#9 M Paul Rabil Jr. (現Boston, team USA)
#12 M Stephen Peyser Jr. (現Long Island, team USA)
#24 A Kevin Huntley Jr. (現Toronto, team Canada)
#15 M Mike Kimmel Fr. (現Chesapeake)
#10 A Steven Boyle Fr. (現Boston)

Duke

#40 A Matt Danowski Sr. (現Long Island)
#25 A Zack Greer Jr. (現Long Island, team Canada)
#16 A Max Quinzani Fr. (現Boston)
#22 Offensive MF Ned Crotty So. (現Rochester, team USA)

Dukeのオフェンスコートでは今のMLLを代表するAT4人が同時にプレーしていたということになる。なかなか恐ろしい。

ちなみにDinoとGreerのコンビはこの時それぞれ94ポイント、93ポイントとポイントランキング1-2位。そのコンビをそのままLIでも引き継いでいる。

2. 背景

JHUは80年代まで長く続いた栄光が終わりを告げた後の、長い不振を経て、00年にOBのDave Pietramala(Coach Petro)が就任し、05年に天才Kyle Harrisonを擁し、悲願の復活優勝。2年越しの優勝を狙う。

一方のDukeは、元々弱小/中堅校だったのを、HCのPresslerが16年掛け地道に強豪へと導き、05年に遂に決勝に進出するも、JHUに惜しくも一点差で敗れる。06年にはラクロス界に激震が走るレイプスキャンダル(結局冤罪)により、コーチは解任、チームはリーグ戦を棄権。すったもんだを経て一時は廃部と思われながらも新コーチ、Dinoの父親John Danowskiの下復活。再び決勝の舞台に帰って来た。それでも尚、ラクロスに泥を塗ったと非難され、金持ちお坊ちゃま学校のイメージと、ラクロスでは新参者ということから、多くのアンチファンがいるのも事実(会場も完全にアウェイの空気)。不遇の1年間を経て、強い向かい風の中、なんとか見返してやりたいという状況。

3. 試合の見所

前半

前半全体を通してJHUの統制された、ロジカルなハーフコートオフェンスが非常に印象的。またDも非常に規律ある素晴らしいチームDを見せている。

1Q 8:24の、JHUのMF 2 on 2 offense。Peyserが右に抜き、スペースを中央に作り、fade awayでトップのRabilにパス。そこからがら空きの左のスペースに切り込みシュート(惜しくも外れるが)。MFの2 on 2の美しい教科書。

JHU 2点目。Rabilがトップからのダッジで3人引きつけ、トップでサイドに逃げながらのHuntleyの隙を付くサブマリンの動きが素晴らしい。そして、まったりと掃けながらもそれをしっかり見ててバチッとボックスにパスを出せるRabilの視野とstick skill。完全にステップバックしながらほぼ真後ろにスナップだけで鋭いパスを投げている。これはMFの選手、特に突破力があってスライドを呼べる選手はマスター出来れば相当アシストを稼げるはず。MF-ATのコンビネーションの教科書。

Duke 1点目、(当時)2年生のOFMF #22 Ned CrottyのXからのフィードを受けての#10 MF Brad Rossの得点。Rossは毎日朝一でバッグいっぱいのボールを持ってシュート練習を1.5時間やり、昼食後にチーム練習という、一日ダブルセッションをこなしているとのこと。上半身の被せ方と目線から、バウンドショットを打つように見せて実は上。JHU GのJesse Schwartzmanも一瞬反応を遅れさせられている。

Duke 2点目、EMOでのNed Crottyの左手での得点に繋がるDuke Offenseのパスワーク/スティックワークが恐ろしく参考になる。貰ってから投げるまでの一人一人の動きの早さ。ボールはほとんど「どボックス」。ボールがほぼノンストップでグルンとコートを一周する。これだとどんなにDFが頑張っても必ずどこかにスペースが生まれる。ショートスティック陣はこのレベルを是非目指したい。

2Q JHU 5点目、またしてもRabil-PeyserのMFのトップから2 on 2での得点。クリースのATが動いて2枚目のスライドを行かせず、上でスペースを作ってロングシュート力のある2枚のMFが確実に仕留める。気持ちいい。つか、PeyserとRabilが一緒のstringにいたら、まあ、無敵だわな...この状態でほぼMLLで通用する。

2Q終了間際、残り1分でのJHU G、Schwartzmanのクリアパスが衝撃。スンッって感じで軽く投げ、オフェンスコートのゴール横にいるATにバシッとクリアパス。Gはこれが出来ると本当に強い。クリアの怖さが数段増す。セーブされた瞬間から文字通り相手ゴールを脅かせる。野球のキャッチャーの二盗阻止のイメージか。パシッ−シュパッ−ズビシッ!という流れるような一連の動作。Gの選手はしっかり下半身/体幹のウェイトトレーニングを積み重ねて是非とも身に付けたい。

前半を通し、12/16でJHUが完全にFOを支配。DukeのDinoもGreerもほとんどボールに触れていない。ゲームプランニングが大成功。戦術のマネジとしても非常に学びが多い。

後半

3Q JHU G Shwartzmanが好セーブを連発し、得点を許さない。Dが危険な位置、危険なシチュエーションでシュートをほとんど打たせてない。

が、そこから、沈黙していたDuke offenseが爆発。一気に試合の流れが変わる。

解説者のQuintがPaul Rabilについてコメントしていた。教室でも常に最前列に座って勉強する努力家。とにかく集中力と努力で突き抜けていると。この時点で3年生だが、今後MLL、USAを背負って立つ、恐らくラクロス史上最高の選手の一人になるだろうと言っている。(そして4年経った今、2010年現在、確実にそうなっている。)持って生まれた才能ではなく努力と集中力に言及している点が印象的。外からパッと見るとそのサイズと身体能力に目が行きがちだが、彼が本当に凄いのは、RabilをRabilたらしめているは(彼自身インタビューやCMで再三言及している通り)やはり努力と集中力と練習量。 Matt StriebelやBrendan Mundorfもそうだが、MLLに入っても大きく成長する選手、最高峰の中でも更にもう一歩抜きん出る選手、US代表に複数回入ってくるような選手たちはほぼ例外無くかなりイっちゃったレベルで練習の虫だという事実。

Duke 6点目、EMOでのCrottyの左手でのDをスクリーンにしてのシュートが気持ち良過ぎて吹いた。Leftyの選手は100回見て刷り込みたい。EMOで確実にこれを決められれば間違い無く得点量産出来る。

Duke 7点目、Rossの得点、substitutionで相手のDに一歩先行したのを見逃さず、単純にそのままゴールに向かう事で生まれた得点。新人戦で見るようなプレーだが、このレベルのこの舞台でも起こり得る。Oとしては常に狡猾に狙いたいし、一方でDとしては絶対にやりたくない失点。

Duke 8点目、MF #29 2年生のMike Catalino(現Maryland 4年ATのGrantの兄)の、ショート相手のインバートからのインサイドロールでの得点が非常に参考になる。直線に近い大きな切り返し角度で、流れるように素早くロール。十分にゴールの前まで行って角度を稼いだ上でシュート。MFの選手は何度も見て、スティック無し→ボール無し→D無し→Dありの順で練習して体の使い方を刷り込み、確実に自分のものにしちゃいたい。

JHU 11点目、Paul Rabilのトップからの1 on 1 to running shotが彼らしさの真骨頂。Quintも指摘しているが、精度重視でスピードを少し押さえ、必ずしも全身全霊でのシュートではない。一方で、スティックを完全に体の後ろに背負って隠した状態からスパッと一瞬で打っているため、ゴーリーにシュートの瞬間のスティックとボールが見えず、極めてセーブしにくくなっている。そしてこの肩の回転。左肘の引き、打つ瞬間の右足の向き(思いっきりゴールに向いている)。

最後の10分間は完全に気持ちの戦い、魂のこもった固いDのぶつかり合い。そして何よりも双方の4年生Gのグレートセーブが素晴らしい。ポジショニングや球筋の読み、フェイクへの対処、フットセーブ等、Gの選手が見て技術的に学べる点が特盛り。

残り5分で1点差を追うDuke、2 men upの好機にDanowskiがノーマークでシュート、これで同点!と思いきや、何と不運にもボールがパイプの真っ正面に当りそのまま逆コートまで転がりJHUボールに。この時ばかりは運に見放されたか。が、直後のbroken situationでQuinzaniがキャッチミスしたボールが奇跡的にゴールに!今度は運が味方に。

残り4分半で11-11の同点。会場の緊張感は最高潮に。

その後もbrokenな時間が続く。が、Rabilの素晴らしいアシストパスからHuntleyが落ち着いて勝ち越し点をねじ込み12-11。この人の大舞台でのこの勝負強さと落ち着きは本当に凄い。

残り2分半でのRossのノーマークのシュートが再び不運にもパイプの真芯に当り逆コートまで転がる。何か大きな力がDukeの勝利を邪魔しているかのような錯覚すら覚える。

残り1分44秒でDukeのEMO。ここでエースDinoがまさかのキャッチミスでボールはセンターラインにこぼれ、JHUボール!気合いのライドで取り返すも、クリアパスをミスし、Quinzaniも取り損ねる。最後の最後でお互いにメンタルが揺らいでいる。

最後の最後、残り30秒からボールを回して崩し、最後にRossがshorty相手に最後の望みを掛けた渾身のシュートを放つが、Shwartzmanが最高のfoot saveで弾き返す。その後もJHUがしのぎきり、12-11で試合終了。

Hopkinsが2005年以来2年ぶりの優勝。そしてDukeは2年前に続き、またしてもHopkinsに決勝で1点差で敗れ涙を飲んだ。喚起に沸くHopkins。インタビューに答えるCoach Pietraの声も感動に震えている。Dukeの選手たちは最後の最後であと一歩のところで勝利が手からこぼれ落ちた事実を受け入れられず、フィールドに泣き崩れる。 エースとしての責任、最後の最後で痛恨のミスをしてしまった悔しさから、Dinoはなかなか立ち上がれない。(この姿を見ると、2010年のCrottyやQuinzaniの優勝はredemptionとして本当に大きな意味を持つものだったことが分かる)

DinoとGreerを二人合わせてたったの1点に押さえた元All American DFで鬼軍曹のcoach Petroの下で鍛えられた、JHUの統制されたDF陣と守護神Shwartzmanがもぎ取った勝利だろう。

1年前のRape scandal(冤罪)からコーチの解任、学内でも、社会的にもメディアから白い目で見られ、仕打ちを受けて来たDuke。困難に立ち向かい、それを乗り越え、あと一歩のところまで迫った姿は本当に心を打った。(優勝は3年後の2010年までのお預け。)


その他

ちなみに、試合終了前残り1分で挿入されるTips講座はfast breakでのトップからゴール前へのパス-フィニッシュ。Dukeの準決勝Cornell戦、Fast breakのZack Greerのゴール前での、Dを文字通り背中でがっちりブロックしてのキャッチとシュート。え!?このスペースの狭さ、Dからのマークで点取れちゃうんだ!という驚き。必ずしも1対0を作らなくても全然点取れちゃうっていう。バスケのセンターによるポストプレーのポジション取りのイメージ(しかもGreerは決して大きい選手じゃない)。インドアラクロス仕込みの是非とも真似したい技術。

シーズンを通してのMVP、TewaaratonはDukeの#40 AT 4年生のDanowskiに。

今見てもNCAA lacrosse史に残る素晴らしい試合でした。DF出身じゃない僕は恐らくきちんと捉えきれてないが、双方エース級の選手たちの得点をかなり抑えることに成功している(特にDuke OFの前半、JHU OFの後半)。お互いしっかり対策を立てて互いのいいところを徹底的に封じにいってるはずで、恐らくDFとGの選手が見て唸る部分が多い試合のはず。

2011年1月1日土曜日

IroquoisのThompson兄弟

引き続き、休み中にガッと書き留めた/吐き出したネタを随時小出しにポスト。Inside Lacrosseの10月号にSyracuseの4年生MFで去年のAll American、Iroquois代表のJeremy Thompsonを始めとしたThompson四兄弟の話が出ていた。(Iroquois、及びSix Nationsの解説は以前書いたWLCのIroquois Nationalsの記事をご参照下さい。ざくっと言うと、米北部に住むNative Americanの子孫。コミュニティぐるみで部族の伝統であるラクロスを生活に根ざした形で伝承する。)
  • ILの表紙と記事はこちら。
  • あと、Thompson兄弟の写真はこちら。Magazine: Thompson brothers photo shootのところ。写真番号で19番以降が実際にプレーしている絵。動きがナチュラル過ぎて野生動物の身のこなしみたいに見える。それがまた超style出ててカッコいい。
非常に興味深く、また心に残る記事だったので簡単に紹介させて頂きたい。

Iroquoisのラクロスとの繋がりの深さ
  • 兄弟四人でTシャツ短パンに裸足でメットもグラブも付けず、裏庭の芝生の上で遊びで2 on 2やface offをやって遊んでいる写真が載っていた。無邪気な顔をして兄弟で戯れる姿、時として真剣な目も見せる。正に典型的なIroquoisの日常を表している
  • 文字通り生まれたときからスティックを与えられ、遊びと言えば基本的にはスティックとボールを使ったラクロス。一日中いろんな投げ方でキャッチボールをしたりシュートを打ったりして育つと言っていた。そしてそれが普通の育ち方
  • 先日同じくOnondaga出身で昨年のSyracuseのエース、Codie Jamiesonのインタビューでも同じ事を言っていた。ラクロスが日常で、それが当然の行為だと。(ちなみにJamiesonは先日NLLの地元チーム、Rotchesterと10年契約を結んだ。10年て...聴いた事ねえ...)
  • 子供の頃からインドアを中心にリーグでプレーし、過去にも多くのNCAA選手、NLLのプロ選手を輩出している。

地元Syracuseとの繋がり
  • Upstate NY(NY州北部)からカナダ国境沿いにあるNative Americanのコミュニティのreservation(保護区)に彼らは住む
  • 子供の頃からインドアを見て、そしてSyracuseの勇姿をCarrier domeの会場で見て、Syracuse Orangeのユニフォームを着る事を夢見て育つ子供たちも多い
  • SyracuseにはNative American向けの奨学金制度があり、代々Iroquoisの優秀な選手を取っている
  • DVDで見ると一目瞭然だが、SyracuseのラクロスはHopkinsやMarylandといった教科書然とした南のラクロスとは明らかに一線を画す。よりCanada臭さ、インドア臭さを持った、高いstick skillとcreativityによって支えられた、ファンタスティックラクロス。その裏にはこの地域性、CanadaやIroquoisからの選手のパイプラインがある

Thompson家の4兄弟
  • NY州北部、Syracuse大学から車ですぐのreservation(保護区)に住んでいるコミュニティの一員。そこにあるThompson家。父親も有名なラクロス選手。
  • 長男 Jerome: Under Armour High School All America
  • 次男 Jeremy: UA All America, IL player ranking(全米高校生ランキング)No. 4, 現Syracuse 4年, Iroquios代表
  • 三男 Miles: UA All America, IL ranking No. 16, 現Albany 1年、Iroquois代表
  • 四男 Lyle: US All America, IL ranking No. 1, 来年Albany入学予定
  • なかなか錚々たるレジュメ。4人とも子供の頃からラクロスエリートとして頭角を表し、イラコイのみならず全米のラクロスコミュニティの中でもその名前が認識され、去年のJeremyのSyracuseでのブレーク、MilesとLyleのUA All Americaでの突出したスキルで一気に一般のファンの間でも有名になった

Iroquoisのラクロス選手たちが直面するチャレンジ
  • Iroquoisの有能な選手たちも、必ずしも皆がみんな簡単にアメリカの大学に行き、ラクロスで成功する訳でもない。それまでには多くのネイティブアメリカンならではの障壁に直面し、才能を開花させることなく散って行く者も少なくないと言う
  • 言語の違い: コミュニティの中では彼らのnative languageを使っている。従って、当然大学受験も大変だし、仮に入ったとしてもハンデを負った状態。Jeremyのインタビューを聴くとアクセントがあり、英語が1st languageでは無い事が解る
  • 教育システムや文化の違い: 要は外国からいきなりアメリカの学校に行くようなもの。そりゃチャレンジングだ
  • 経済的チャレンジ: コミュニティとして、資本主義経済にがっちり入ってホワイトカラー中心で、という感じになってはいないはず。1次産業、2次産業従事者が多いんじゃないだろうか
  • 結果としての、学力的チャレンジ: 多くの若い選手たちが大学への入学、編入で苦戦するという
  • アルコール依存症: また、記事に、Iroquoisの男性のアルコール依存症の出現率が一般よりも高いと書いてあった。教育や経済基盤の違い、文化の違い、社会的なチャレンジからだろうか。
  • そして、コミュニティ内にある保守的な考え方: ラクロスの力を使ってコミュニティを出て、アメリカで大学教育を受け、より良い仕事、より幸せな人生を手に入れるのはいいことだ、というリベラルな考え方もある。一方で、年配の方を中心に、「アメリカの大学なんぞに行ってもいい事なんか何も無い、外の世界に被れて帰ってくるだけだ、親としては子供をアメリカの大学にやったら二度と帰って来ないと思え」的な保守的な考え方もあると書いてあった

長男Jeromeのチャレンジ
  • 長男のJeromeも高校時代から注目されていた選手で、どこの大学に行くのかが注目されていた
  • が、結局、Syracuseを目指すも、高校、Onondaga Community Collegeで勉学面で付いて行けず断念する。何度も学校の授業に適応しようと試みたが、全く理解出来ず、結局諦めざるを得なかったと
  • Iroquoisの能力もあり将来を期待されるラクロス選手がアメリカの大学に行くのが簡単ではない事を端的に物語るエピソード
  • そして今は学校を経由せず、直接NLLのプロを目指して試合と練習を続けているという。是非成功して欲しい

次男Jeremyのチャレンジとbreakthrough
  • 同じく子供の頃からの憧れ、Syracuseを目指し続けていたが、入学時には学力の問題から断念。一度地元Onondaga Community College(短大)で活躍しながら、学力向上を目指す
  • しかし、プレッシャーも有り、Native Americanの男性に多い問題である、アルコール依存症になってしまい、人生からドロップアウトするかに見えた
  • その後、夢を捨てきれず、奇跡的にそれを乗り越え、勉強も努力の末克服し、遂に憧れのSyracuse入りを果たす
  • 昨年2月のDenver戦、最初にSyracuseで決めたゴールは、彼にとっても、家族にとっても、そしてIroquoisのコミュニティ全体にとっても大きな意味のある一歩だった
  • Syracuse入学後のインタビュー。憧れのチームでプレー出来ることの幸せに溢れた笑顔が印象的。試合中のあのシリアスな表情とは打って変わって、無邪気で明るい青年という印象。
  • プレーを見ると、Native Americanの末裔としての気品と言うかオーラと言うか迫力が漂う。Iroquoisの伝統を守った後ろ髪を三つ編みにしてメットの後ろから出している姿も渋カッコいい。2010年のInside Lacrosseが選ぶ、"Sweeterawaraton"賞=「最もカッコいいで賞」に選ばれていた

Jeremyが変えた事
  • 彼の成功がIroquoisのコミュニティに与えたポジティブなインパクトは計り知れないとのこと
  • 去年の決勝での同じくIroquois出身のAT Cody Jamieson (現NLL/MLL)やDF Sid Smith (現NLL/MLL)の活躍とも合わせ、多くの若い選手たちが「俺たちにも出来る!」と勇気を貰っているという

弟のMilesとLyleが変えた事、そして新しい流れ
  • さて、弟たち。MilesとLyle。Milesは先日のUnder Armour All Americaの北軍代表として、一人際立って成熟したstick skillを見せた。また、現在高3のLyleは全米最高の高校生と評価されている。その二人がどの大学に行くのかは大きな注目を集めていた
  • が、Milesは何と大方の予想を裏切り、Syracuseでも他の強豪校でもなく、中堅校(30位前後)のAlbanyを選択。多くの関係者を驚かせた。しかも同級生で従兄弟のTy Thompsonも引き込み、弟のLyleにも来年来るように説得。その後に続く有力な若い選手たちに一緒にAlbanyに来るように説得していると言う。
  • Miles曰く、Albanyのヘッドコーチ、Scott Marrの熱意に惹かれたのと、「これまでのSyracuse有りきの規定路線じゃ面白くないので、何か新しいことをやってやりたかった」とのこと。なるほど...面白い。
  • もしかしたらAlbanyが同じくUp state NYの地元にあり、チームカラー(黒、紫、黄色)がIroquoisと全く一緒だったってのも効いてたりするのかも知れない。
  • 彼らは今年一年生で確実にAlbanyの主力として試合に出てくるはず。1年目はさすがにlong stickへのアジャスト、一段上のレベルへのアジャストに当てられるだろうが、来年、再来年となるに連れ、大きなインパクトを生んで行くだろう。今後どうなるか非常に楽しみ。Albanyが数年後にはDiv 1を掻き回す台風の目になってくる可能性がある
昨夏のWLCでは、この辺のメンツが入ったIroquoisが見られる「はず」だった。例のパスポート問題(Iroquoisのパスポートをイギリス政府がパスポートと看做さず、入国出来ないというアクシデント)さえ無ければ。これもある意味Iroquoisの選手が受けるマイノリティならではの苦難だったとも言える。であるが故に、彼らの試合が見られなかったのは本当に残念でならない。インドアWorld Championshipと、次回のWLCに期待。

以下、いくつかJeremyとIroquoisの映像

①昨年のRutgers戦での得点


②インタビュー。相方のCody JamiesonやJohn Deskoもコメントしている


③衝撃のface-offから6秒でのゴールと、その解説。相手face offerの右足の位置を見て、右横に脚を引いてなければ、相手の背中側に直接かき出せと。秒殺で相手を斬り捨てる、侍の居合い抜きに近い印象を受ける。


④Iroquoisのラクロスの伝統と、地元Onondaga Community Collegeの話。文字通り生まれた瞬間にスティックを与えられる話、素晴らしい選手の多くがアルコール依存症で潰れてしまう話など。OCCのプレーがSyracuseに負けず劣らずファンタスティックなのが良く解る。


⑤ハードコアで心に刺さるドキュメンタリーを数多く作っているUKのNational Geographic ChannelによるIroquoisの特集。ラクロスがただのスポーツではなく、生活であり、spiritであり、伝統であることが子供達の映像と共に紹介されている。スポーツが、ラクロスが人を作り、コミュニティを創る。あと、Wood stickの作り方を職人の肩が説明していて非常に面白い。


彼らを見てとにかく印象に残るのは、遊び、競争、生活、アイデンティティとして、心底ラクロスを楽しむ姿。躍動する体から発せられる喜び、そして笑顔。改めて、自分が大学で出会ったこのラクロスというスポーツは、他の球技には無い特別な歴史と意味を持つ、spiritualで素晴らしいスポーツだったんだと思い知らされる。

どうでしょ。もし興味があってイラコイ辺りに人生勉強も兼ねてラクロス留学してみたいという現役の選手がいらしたら、気軽に連絡下さいな。一緒にどうやりゃ実現出来るか考えるくらいはお手伝いさせて頂くので。

いたる@13期