2011年3月20日日曜日

NCAA 2011 Game Review vol.08 Duke @North Carolina

東海岸の南側、North Carolina州の中央部、Duke大学のあるDurham(ダーラム)、North Carolina大学のあるChapel Hill、空港のあるRaleighの三都市からなるエリアを、"Triangle Park"または、Triangleエリアとよく言う。DukeとNorth Carolinaは車で約20分の距離。アメリカ的には完全に目と鼻の先。あらゆるスポーツで競合する"The biggest rivalry(ライバル関係) in college sports"とも言われる。私立の小規模金持ちエリート学校のDukeと、州立の庶民派大学のUNCという構図から、毎回街全体を巻き込んで大きく盛り上がる。水色対青。特に共に何度も全米制覇を達成しているバスケは、North Carolina州最大のスポーツイベントとも言える。そんな2チームの激突。

(ちなみに、NCAAではバスケ/アメフトを中心に、この州内の代表的私立校vs州立校のライバル関係は多い。他に有名なのは、Michigan-Michigan State、UCLA-USC [University of South California]、Oregon-Oregon State、Oklahoma-Oklahoma State、Kansas-Kansas State等々)

ここまで、双方若手主体のチームで、シーズン序盤は苦戦。DukeはU-Pennに、UNCはOhio StateにそれぞれUpsetを喰らう。が、その後徐々に成長し、チームとしての形を整えつつある。今シーズンのNCAA Div 1の勢力図に大きな影響を与え得る極めて重要な一戦。

結論から言うと、がっぷり四つに組み合うも、個の戦いに勝ち、チームとしてもより質の高いラクロスをしたDukeががっちりと14-9で勝利。

試合を通しての感想

まず、双方非常に良くなっている。間違い無く。1年生主体のUNCも、1年生達がかなり堂々とプレーしている。実質的にNotre Dame戦がデビュー戦だった選手が多かったDukeも、肩の力が抜け始め、Ground ballやFast break、シンプルな1 on 1、2 on 2をきちっとやろう、という基礎の基礎から作って行く素晴らしいラクロスが実を結び始め、持ち前の個の素材としての強さが発揮され始めている。やはりNCAA Div 1のレベルのチームですら、シーズンを通じてここまで大きく成長していくものなんだなと改めて実感。その変化を生んでいるUNCのJoe Breschi(ブレッシ)、DukeのJohn Danowski両コーチの育成力、セルフイメージを最大化する「心の力」、人間力、コーチ力に感銘を受けた。やはり小さな結果の積み重ねに一喜一憂する事無く、一つ一つ目の前の変化を見て、毎日こつこつと石を積んで行く事が大事なんだなと改めて教えられる。

全体を通して、両チームの1年生の活躍にまたしても驚かされた。

試合前のimpact playerとしても名前を挙げられていたUNCの1年生Faceoffer #25 RG Keenan。これまでの勝率0.641。マジか?Div 1で1年生だぞ...?実際に試合を見ても、face offer同士の一対一に於いてはほぼ勝っている。ただ、その後のGround ballで相手のLSM Costabillaに拾われたり、wingとの連携が上手く行かず取られたりしている。あと、単独速攻を出せた場合も、ちょっとシュートの改善が必要だなと感じた。どのチームもスカウティングレポートに、「#25にフェースオフで独走されたらATからスライド行かずにそのまま打たせろ。シュートしょぼい。」とかって書かれてそう...この辺がCuse #4 Jeremy Thompsonとの差だろう。

同じく1年生のUNC #34 AT Nicky Galassoの落ち着きっぷりと老獪さが相変わらず半端無い。つか4年生かと。1 on 1の時の下半身の安定、顔の上がり方、視野の取れ方が半端無い。でまたフィードがドンピシャ。Millonも言っていたリードパスの考え方を完全に体現している。パスもまた速いけど優しい。パスによって他の選手を操縦し、オフェンスをクリエイト出来る希有な選手。シュートも巧いし、オフボールや貰い際の動きも一個一個が偉く老練。どういう幼少時代を過ごしたらこんな一年生に育つんだ?Billy Bitterがパッとしない中、もはやUNCの大黒柱になりそうな雰囲気すら感じる。

あとはUNC MF #43 Mark McNeilが引き続き荒削りながらも高いポテンシャルを感じさせる。でかくて身体能力が高く、サクッと数人抜けるタイプ。今後成長次第でどうなっていくのが非常に楽しみでもある。

そして何と言ってもこの試合で真価を全国ネットで知らしめたのはDuke 1年 #31 AT Jordan Wolf。昨年のUnder Armour All Americaでも大活躍し、Max Quinzaniの後継者とも言われる。試合を重ねるにつれ急速に大学レベルにアジャストしつつあり、この日も完全にチームの得点源に。Xからの1 on 1で直接シュートという防御不能な鉄板がある。UNCのAll American DF、4年のRyan Flanaganを相手にしても完全にズゴッと抜いている。(多分試合前に、「まあ、あの一年坊主はRyanが着きゃ大丈夫っしょ。特にスライド早めの決めごとは無しで」って話にでもなったんじゃないだろうか。修正出来ずに3回同じ形でやられている。)でまた5 & 5あたりからの振り返り際のジャンプショットがムチャクチャ巧い。Come "around"せずに、直線的にトップスピードで走り抜けながら体幹と下半身の強さと体軸の捻りを最大限に使ってかなり速いシュートを叩き込んでいる。んでもって驚異的な事に両手でかなり近いレベルで打って来ている。というか、そもそも両方のシュートを見ると、どっちがstrong handかよくわからん。(多分そうは言っても右なのかな?右に抜く事が多いので)このXからの1 on 1からの直接シュートだけに限って言えば多分今のNCAAではCornell #3 Rob Pannellと並ぶか場合によってはそれ以上かも。Agility/爆発力が別次元。

あと、毎回ひたすら気がかりなのが、UNC #4 AT Billy Bitterがいまいちパッとしないこと。1点は正にBitterの「ならでは」が発揮された得点。三人交わしてゴール前まで持ち込み決める。が、それ以外は全く上手く行かず。早めのスライドに囲まれて落とされたり、無理なシュートでセーブされたりチェイスを取られたり。「ピットブルが勇ましく高速道路で車を交わそうとしているようだ」と比喩されていたが、言い得て妙。もしかするとこのスタイルってノーマークの下級生時代は通用しても、スカウティングされてスライドガンガン飛ばされたら通用しないんじゃないか?という気ぃすらしてくる。しかも毎回ゴール前でぐちゃっとやられている。また怪我をするのも時間の問題という気も。残念ながら現時点でのPlayer of the Year Watchの10人にももう名前は挙らなくなっている。3位で指名したDenver Outlawにとって、もしかしたら最大の「やっちった」指名ということにもなり兼ねない気が若干し始めている...もうちょい早くフィードが出せればまた違って来る気もする。どうなんでしょ。本人の表情からも相当なフラストレーションが伝わって来る。で、何とかしようと無理して突っ込んでさらにやられるという悪循環。観客を総立ちにさせられる数少ない選手。何とか頑張って本来の輝きを取り戻して欲しい。

全体的に、Dukeが難しいことせずに、ただただひたすらに基礎をしっかりやろうとしていること、且つそれを、(まるで高校球児のように)全員一丸となって、全力でやろうとしていること、そして、その一生懸命をエンジョイしていることが非常に伝わって来て、清々しい気分にさせられた。Ground ballを超意識して、とにかく低く、直線的に走り抜ける事を意識していたり、必ず速攻やbroken situationではゴールに向かうこと、Offenseでもセオリー通り、Xからの1 on 1で崩して、上からのスライドに対してトップのスペースに出してシュート、クリースのフリーでシュートと、超教科書然としたことを淡々とやっている。で、それだけでUNCと真っ向勝負して勝っている。でまたそれをチーム全員が一メンバーとしてお互いをチアアップしながらチームの為に貢献しようとひたむきに走っている。John Danowskiコーチの指導者としての哲学、強さを見た気がした。試合中に映されたTime out中の指示でも、グラウンドボールの基礎、しっかり走り抜けること徹底して話していた。このレベルのラクロスですら、そしてこの大事な試合の真っただ中、しかもチャンピオンチームのHCのTO中の第一声が、尚、グラウンドボールの基礎というこの事実。

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2 件のコメント:

  1. いつも楽しく拝見さすていただいている社会人プレーヤーです!
    突然で失礼かとは思いましたがちょっと気になったので…………
    ハイライトを見たのですが、#4 bitterは3得点ではないでしょうか?
    いたるさんのブログでbitterファンになり、ファン的に気になったので(笑)
    これからも勉強させていただきます!

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  2. チハルさん
    ぬあっ本当だ!仰る通り3点ですね!大変失礼しました!&ご指摘有り難う御座います。早速訂正しまっす!いやいや、試合の映像を見て記憶に残ってたのが一点だけっていう、印象バイアス掛かってました...暖かいお言葉有り難う御座います!

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