2011年3月14日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.06 North Carolina @Princeton

昨日、3月12日(土)にMaryland Baltimoreで行われたFace Off Classicの会場で、第一試合のSyracuseとGeorgetownの試合開始前に、地震の被害で亡くなった方々の為に、選手と観客を含めた会場の全員が遠く日本に向けて黙祷を捧げた。アメリカで流されるCNNのニュースでは文字通り24時間日本のニュースを伝えている。一刻も早い救助と回復を心から祈ります。
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両チームのシーズンプレビュー: UNCPrinceton

今年二度目のOnline/TVでのUNCの試合の観戦。前回はOhio State戦での後半失速からまさかのupsetを喫している。一方のPrincetonは先週Hopkinsを完封

戦前の注目

見所は、両チームで主力として活躍する一年生対決。今年のリクルートクラスの1位、2位が顔を合わせる。PrincetonのMF #22 Tom Schreiberは名門のラクロス一家出身で、ここまで堂々の活躍。そして何と言ってもUNC #34 Nicky Galasso。高校No .1プレーヤーとしてその名を轟かせ、UNCでも一年生にして既にスタメンどころかチームの柱としての風格を漂わせつつある。解説でも触れられていたが、ここ10年でラクロスがスポーツとして成熟して来る中で、この、高校までに選手として完成し、大学一年から主力で活躍出来る選手が昔に比べて増えて来ているという。(Powell brothers等の一部の突然変異体的な例外を除くと)特にNCAA Div 1の上位10チームで1年生がスタートとして出るというのは以前であればかなり珍しかった事を考えると、これもまた一つの大きな潮流ということだろう。

UNCはHCのJoe Breschiが就任後初めてリクルートしたクラスが現1年生。上級生の怪我による戦線離脱もあり、何と1年生10人が試合に出ている。Galassoだけに留まらず、1年生にしてFOGO最強とも言われるRG Keenan、高い身体能力とポテンシャルを感じさせる#43 MF Mark McNeil、1年生にしていぶし銀の#22 MF Duncan Hutchinsなど、NCAA Div 1で一年目から戦えるレベルの選手がそろっている。

また、UNC #4 でMLLドラフト2位AT Billy Bitterと、先日HopkinsのATをほぼ完璧に封じきったPrincetonの強力DF陣、#9 Chad Wiedmaier、#41 Long Ellisらとの対決も注目。Bitterはここまで期待程の活躍を見せているとは言い難い。一昨年見せていた爆発的なダッジは陰を潜めている。本当にMLLで活躍出来るのか?という不安が少しずつよぎり始めている。

試合での見所

解説でも指摘されているが、Princetonは引き続きHC Chris BatesによるIndoor outdoor hybrid offenseを展開。スペースを作って、はい、1 on 1仕掛けます、ではなく、2 on 2とピックを流動的に連鎖させる事でフリーを作って来る。

全体を通し、Princeton DF Long EllisのBitterに対するDFが非常にいい。脚でしっかりと着いて行き、ポジショニング/角度をきっちりとマネジし、下手にプッシュし過ぎず、チェックし過ぎず、Xからの1 on 1に対し、ひたすら上へ上へと少しずつ少しずつ押し上げて行く。無駄に押し過ぎてズルッとロールで抜かれるということも無い。背負った状態で力の無い無理なシュートを打たせセーブすることに成功している。もちろんBitterが昔のダッジ力を取り戻せてない事もあるが、Ellisの1 on 1 DFの技術は間違い無く素晴らしい。DFの選手としてはスピードのあるダッジャー対策として是非参考にしたい。

UNC 3点目、Xからの#1 AT Holmanの1 on 1に対して#34 Nicky GallasoのマークマンのDがスライドに行った瞬間のpop upが超絶妙。DFの動きをよーく見て、かなり大きく速く外にpop outし、両手を挙げてボールの呼んでいる。その後のシュートもルーキーとは思えない落ち着きとスナイパーっぷり。本当に18歳か?信じられん。

中盤、#43 McNeilの高い身体能力が垣間見える。Kyle Harrison以降、SyracuseのJovan MillerやVirginiaのBratton BrothersらAfrican Americanの選手がどんどん増えて来ている。彼もその流れの一人。1年生で技術は荒削りで未完成だが、今後経験を積み技術的に洗練されて行けば、あと3年でかなりの選手になる可能性を感じる。

しかし、試合を通し、UNCの1年生FOGO #25 RG Keenanが引くぐらいFO強い...後半特にイリプロを取られて勝率自体は落ちているが、局地戦ではほぼ全勝に近いくらい勝っている。Pinch & popやってるのかな?毎回居合い抜きを連想させる秒殺でサクッと相手の背中側に掻き出し、単独速攻を作り出している。これはFace offersの選手たちは是非注目。何か秘密があるはず。(ただ、シュートが...改善の余地大。Princetonもそれを解って意図的にDFはATのマークを外さず、そのままどフリーでKeenanにシュートを打たせている。怖くねえと...で、実際それで得点出来ていない...大事です。Face offerのシュート力。逆にCuseの#4 Jeremy Thompsonが恐いのはここ。)

3Q UNC 7点目3年AT #3 Thomas Wood の点を生んだ1年AT #34 Nicky Gallassoの1 on 1からのフィードがむちゃくちゃすげえ。この試合を見て、なぜ彼が学年No. 1選手と言われているかが非常に良く解った。安定したフィジカルはもちろんのことながら、相当しっかりしたスティックスキル、そして何と言っても視野とフィードを出すタイミングと判断。引くぐらい上手え。「周りにいる全ての選手のパフォーマンスを数段引き上げる」と言われる理由が解る。でこれで1年生ってんだから恐ろしい。UNCは間違い無く来年、再来年、再々来年と確実に強くなってくるはず。

同じく1年生、Princetonの4点目、MF #22 Tom Schreiberのトップの1 on 1からの左のロングシュートで更に一気に目を醒せられた。むあじかっ!?Off-handの左だぞ!?Splitで一歩交わしてトップからoff-hand左でピンポイントでぶち込んで来た。1年生でこの動きはどう考えてもおかしい。1年生にして既にチームの大黒柱になっており、上級生が、「一発お願いします!」とパスを預けている。今後3年間でどうなっていくんだろうか。

試合最後、十分なリードを持ってのUNC徹底したコントロール。絶対にシュート打たないでとにかく時間を殺して行く。ゴールがら空きで確実に点が取れる状況でも決してシュートを打たず、チームの勝利を最優先。この徹底したdiscipline。得失点差の概念の無いNCAAでは、この辺の、リードを守り、時間を殺し、確実に勝つ確率を上げに行くという考え方が非常に洗練/徹底されている。下手に得点しに行って相手にポゼッションを与えてしまい、momentum(流れ)をシフトさせてしまうリスクを負うくらいなら、1点差でも確実に守って試合を終わらせちゃうという考え方。確かに、仮に点を取れたとしてもその後のFO以降相手にポゼッションを支配され続ければ負ける可能性が出る訳で。日本でもトーナメントの状況を想定すると是非ともこの辺の試合のマネジの巧さと徹底度合いは真似したい。

全体を通しての感想

UNCが非常にいい試合をしたという感じ。ペースとポゼッションをコントロールし、またFOとground ballを頑張り、出来るだけPrincetonにオフェンスの機会を与えなかった。オフェンスでは、broken/unsettled situationで確実に点を取り、セットではPrincetonの固いチームDFをよーく研究し、オフェンス陣全体が高いラクロスIQを持って、スライドの発生し際をよーく理解し、見極めた、非常にいいチームオフェンスをしていた。ちょっと抜いてスライド引き出してすぐそこで攻める、とか、逆にスライド来なかったらそれをよーく見て思い切って打っちゃうとか。Princetonは途中から珍しくDFがそれに対して対応出来ずちょい崩壊気味になっていた。

Princetonはちとturn overが多過ぎた。先週のJHU戦での完勝で若干気持ちが緩んだか。

いずれにせよ、やはりシーズン初期、特に若い選手の多い両チーム。共に初期は結果が大きくバラつき勝ち。この辺の一進一退、勝ったり負けたりの中で如何にシーズンを通して揺らがず毎試合ベストを尽くせるか、そしてそのプロセスを通して成長し続けられるかが大事なゲーム。今後5月下旬までの2ヶ月ちょい、どう変化していくかを見守りたい。特にUNCは間違い無く前回のOhio State戦から多くの点を修正してきている。しかも一年生主体なので、あとはただひたすら成長するのみ。結構楽しみだ。

若干気がかりなのが、UNCエースAT #4 Billy Bitterの影の薄さ。この日も無得点。もちろん、相手も最も危険な選手として徹底的にスカウティングし、エースDFを付けて来るし、スライドも早めに飛ばして来る。にしても、2年前の彼であればそんなもん物ともせずに持ち前の爆発的スピードで蹴散らしていたはず。この試合でもボールを持ってねちょねちょやって何も起こらない(最悪転んだりチェックされてボールを失ったり...)、というケースが散見された。ヘルニアや脳震盪といった去年の一連の怪我以降輝きを失っている。本当にMLLでやっていけるのか...?

ILのレビュー(リンク

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