2011年3月17日木曜日

NCAA 2011 Game Review vol.07 Syracuse-Georgetown

3月12日(土)にMaryland州BaltimoreのNFLチームBaltimore Ravensの本拠地、M&T Bank Stadiumで行われたIL主催の集客試合、Konica Minolta Face Off Classicを会場で観戦した。その一試合目。

試合のレビューの前に、いくつか会場でのobservationと感想
  • 会場ではFan Zoneとして多くの店/メーカーのブースが出されており、多くのファン/子供達が群がっていた。(ILの記事
  • 各ブースでは契約選手のMLL選手たちがファンと握手したりサインしたり。
  • ESPNUの小型ラクロスケイジの中では同じみMikey Powell(Syracuse '04/USA '06)がKidsに囲まれて新しい遊び方&練習方法を説明。
  • 試合では、2006年にBlood Cancerで命を落とした元HofstraのNicholas “Head” Colleluoriにちなんで作られた、Blood Cancer患者を支援するNPO、Head Strong Foundationのシンボル、Lime Green(蛍光黄緑)のゴールネットと審判のユニフォームを使用
  • 観客を見渡した感じ、半分近くがkidsやジュニアの選手たち。特に地元Baltimoreは正にラクロスのHot Bed(メッカ)。この国のラクロスの懐の深さを思い知らされる。隣に座っていた高一くらいの選手たちの話を聴いていて感じたのは、非常によくチームや選手のことを名指しで知っていることと、プレーや戦術、ルールに関しても相当深いレベルで理解しているなということ。「今のJoJoのプレーは彼らしくないね」「いや、でもあいつ高校時代あれよくやってたよ」みたいなクソマニアックなコメントを中三の子達が交わしてるみたいな。
  • ちなみに、先日ILで取り上げていた例の新ヘッド、Tribe7の名物オジさんが店を出していた。気さくでエキセントリックな面白いおじちゃんって感じ。結構皆面白がって群がっていた。「見ろよ!先端が平だからスティック垂直に立ててもスクープできるだろ!?」と熱くアピールされた...


    Syracuse vs Georgetown

    両チームのプレビュー: SyracuseGeorgetown

    戦前は手堅くSyracuseが勝つかな?と思っていたが、意外にも一進一退の接戦に。Run & Gunが持ち味で、得点力が売りの両チーム。点の取り合いになると思われていいたが、Georgetownの作戦により、真っ向からのノーガードでの打ち合いでは分が無いと踏んでか、Zone Defenseを軸にローペースな展開に持ち込まれる。1-2点差でSyracuseが終止リードするも終了前残り数秒で同点を許し、延長戦に。延長ではSyracuseの頼れる4年生エースAT #28 Stephen Keoghが手堅く決めて辛勝。最後は図らずもNCAA Tournamentじゃないかぐらいの大盛り上がりに。

    改めて、NCAAの上位20校は、極めて高いレベルでチーム間の実力が拮抗していることを再認識させられる。現時点でトップ争いに絡んでいないGeorgetownにも能力の高い選手はゴロゴロいて、チームとしても戦術としても素晴らしいラクロスを見せ、トップ校を食う一歩手前まで迫る。近年盛んに指摘される競争の激化と実力の拮抗を如実に感じさせる。

    いくつか、試合前のアップを見て感じたこと

    考えると、NLL/MLLはChicago時代(07-09)、そしてPhillyに来て今シーズンを通して会場で観戦して来た。が、NCAAをTVではなく会場で観戦するのは実は08年のFinal Four @Boston以来。久しぶりに会場で至近距離で試合を見て、改めて「うをっ」と感じたのが...

    (MLLやNLLの会場でも毎回感じるが...)まず、選手たちが思った以上に、デカい。最前列に陣取ってウォームアップから眺めていたが、やはり日本の感覚からすると2-3回りくらい大きい印象。画面で見ると相対的に小さく見えるSyracuseのAT陣も、普通にでかい。平均して180前後はある感じ。Cuseの小さい選手が日本だと結構大型選手になる感覚だろうか。DF陣に至っては190前後の巨人軍団という感じ。ひょろっとしてる訳じゃなく、がしっとした巨漢軍団。#11 Joel Whiteとかも普通にずるいぐらいでかくて歩幅もリーチもえれえ長い...

    もちろん、国民/民族としての平均サイズの違いもあることながら、competitionの厳しさから、結構このレベルに選抜されてくる過程で、サイズも含めた才能で相当タイトに上澄みが選ばれて来ている。実際にアメリカでアメリカ人に囲まれて学校に行ったり仕事をしていて感じるのは、日本にいた頃(映画やスポーツを通じて)先入観として感じていた程は一般の平均的なアメリカ人は大きくないということ。まあ、言っても一回り、身長にして5-10cmくらいの差のイメージだろうか?感覚的に。思った以上に小さい人も細い人も多い。国際大会のフィールドで生じるサイズの差の因数としては、実はそういうDNA由来の違いではなく、この辺のボトムのプール(競技人口)のでかさと、そこからの淘汰のタイトさの差が実は日本との最大の差なんだろうなと感じた次第。

    「アメリカ人だからでかい」は恐らく要因としては1-2割で、「膨大な人材プールの中で相当数の弾をパイプライン内に確保した上で、(巧くて身体能力高いだけじゃなく)結構でかくないとトップでやれないくらい激しい競争と自然淘汰を通じて選手の上澄みを選べてるから(そしてそういう仕組みを作ったから)でかい」という要因が8-9割、というのが正しい認識だなと思った。(逆にここをしっかり理解してメスを入れて行かないと、国としてのholisticで効果的な強化策は打てない気もする。例えば、今早い段階で野球やラグビーに流れてしまっている、サイズを伴った本当の上澄み日本人エリートアスリートを本当に何割かラクロスに奪い取ることが出来れば、恐らく体格差はかなり埋まるはず。日本代表に集まった駒をどれだけ育てられるかではなく、そもそも集まる駒そのものの質を上げる部分を戦略変数として思いっきり梃入れしに行く考え方。)

    そして、もう一つは、高さだけじゃなく、「太さ」というか「厚さ」。至近距離で見て結構な「塊」感がある。カーフ(ふくらはぎ)もかなり太い選手が多い。Cornellの#3 Rob Pannellのふくらはぎとか、つか太ももかいって感じ。もちろん元々のBody frame(骨格)のでかさもありながら、やはりコンタクトスポーツとして、体育推薦メインのvarsity sports(ガチの体育会)としてプロのトレーナーを付けて相当徹底してweight trainingを積んでいることが一目瞭然で感じ取れる。セミプロのアスリートの身体を作り込んで来ている。

    以下、いくつか試合全体を通しての感想

    まず、GeorgetownのZoneがバチッとハマった。真っ正面から点の取り合いをしても格上のチームには勝てないことは既に前回のMaryland戦で身を以て理解しているHoyas。Syracuseの良さを潰すという戦略に。試合を通して、Zone DF主体にして試合のペースをスローにしてコントロール。トランジッションの数を一気に減らした。また、途中で所謂Box-1 (1人がman-toで残りがZone)の"Combo" DFや、マンツーを状況に応じて使い分け、Syracuseは非常に攻めあぐねていた。この試合だけを見た感じ、SyracuseにはZoneは相当有効に見えた。DF陣の皆はこれ見て学ぶ点は多いはず。

    一方のCuseも、Zone対策のOFを頭できちんと理解した上で、セオリーに沿って攻めようとしていた。いくつかは上手く行かずに失敗し、いくつかは思惑通りに攻められて得点。EMOのように全体を動かしながらパスを回し、少しずつ包囲陣を狭め、動きの中でフリーを作りミドルレンジやクリースでシュート。見ていて感じたのは、散々コーチに言われることだとは思うが、改めて、Zoneを攻略する上では高いスティックスキルが必須だなという点。パスを回す中でプレッシャーにやられてボールを落としてしまっては思うつぼなので。

    全体的に、Syracuseのライドが効果的に機能していたのが印象的。Georgetownのクリアを結構な確率で阻止出来ていた。Zoneを攻めあぐねたにも関わらずリードを許させなかったのにはこの辺もボディーブローのように効いていた。ATがかなり気合いで走っている。

    あとは、メンタルの話で、反面教師として参考になるなと思ったのが、Syracuseの慢心と、対照的に見習いたいGeorgetownの「締まった」感じ。Syracuseは先週のVirginia戦に気持ち的な照準を合わせていた部分もあってか、明らかに試合前の雰囲気からも緊張感が欠けていた(一言で言うと舐めていた)ように見えた。一方のGeorgetownはMarylandに派手にやられ、高い緊張感を持って、強い意志を込めてupsetを狙いに来ている感じがした。やはり、揺らがず、結果を見ず、今やるべき事/変化を見る、都度都度切り替えて全力を尽くすことでセルフイメージを最大化し続けるというメンタルは本当に重要で、パフォーマンスに大きく影響するなと改めて感じた次第。


    以下、個別のプレーで印象に残っている点

    2Q残り7分のCuse G GallowayからATへの直接パス。相変わらずクソ効果的。この試合でも何回か彼のレーザービームパスを見ることができる。自陣でセーブした数秒後に相手ゴールにシュートが打たれているという早さ。完全にバスケのリバウンド後のショットガン&ワンパス速攻。アップを見ていたが、Gallowayはやはりかなりthrowingにこだわりを持っているのが見て取れた。キャッチボールでも相手の「どボックス」に直線的な(というか、イメージ豪速球投手のストレートの様にボールの高速回転でグインとホップするイメージさえ受けるような)弾を投げ続けていた。また、最後にゴーリースティックでゴールにロングシュートを打っていたりしたが、ピンポイントでゴール左上の角にビシッ!ビシッ!と鋭いシュートを連続で当てていた。スティックの振りが完全にショートスティック。間違い無く相当壁打ちを積んで来ている。強い下半身と体幹を土台としてドシッと安定させ、ズビシッ!!としっかり振り切り、フォロースルーが力強い。巷でよく見る「振りかぶってー、よいしょー!」みたいな典型的なダメGoalieの、大きくて遅いへたれスローと明らかに異なる。Goalieの選手は是非ここを目指したい。会場でも下手な得点よりも歓声が上がり、目立っていた。

    2Q Syracuse 3点目、#4 MF Jeremy Thompsonのミドルシュートを生んだ一連のオフェンス。Zone DF対策のチームOFはこうやれ、というお手本。動きの中でボールを動かして、少しずつ狭め、ポジションを変えて、スキップパスを通してスライドが追いついていないポジションで打つ。チーム全員の高いミドルシュート力が必須。そして相変わらずオーラが...引くぐらいカッコいい。

    Cuse #28 AT、CanadianのStephen Keogh 4点目。Syracuseの中で彼の気持ちの強さが特に際立った。全身で気持ちを表現する熱いファイターという感じ。大事な所で気持ちで確実に決めて来る。Garbage goalも見逃さない。責任感の強い頼れる4年生。髪型もMohawk(モヒカン)。ベンチでも率先して声を上げてチームを引っ張っているリーダーシップに感銘を受けた。コーチとしては頼もしい限りだろう。

    ハーフタイム。ESPNUの放映ではDuke 08/LI LizardsのAT Dino (Matt Danowski)のAT 1 on 1講座。Xからの1 on 1後、ゴール右前の5 and 5 spot(ゴール斜め前5 yards x 5 yards) からのシュートのパターンを説明。(なんか、年を追うに連れこのWarrior Skill講座がどんどん実戦的なものになって来ている...)①通常のインサイドロールだけでなく、②表に抜いて右で打つ、③プッシュを利用してrollしつつ、左手でjumping fade-away shot、または、④間合いを利用してそのまま右でstanding shot。なるほど...まず、これだけ技のレパートリーがあったのか...特に最後の2個は一歩応用に入っており、学生レベルでは技として持っている選手も少ないだろうから、練習しまくって安定したレベルで身につければDにとってかなり脅威になるはず。また、これだけ技を形式知化して、意識化して引き出しにストックするというアプローチが非常に参考になる。Dinoでさえナチュラルに何も考えずにやってる訳じゃなく、相当左脳を使って意識的に技術を使い分け、習得してるのねと。

    3Q途中で挿入される、Paul Carcaterraの実演付き解説とQuintの指摘が非常に印象に残った。KeoghのCanadian独特の、スティックを短く持ち、身体に近づけて持ち、スティック自体をほとんど動かす事無く、肩と身体でフェイクし、完全にゴーリーを転ばした上で得点するという至近距離でのGoalie 1 on 1の技術。Quint自身もHopkins時代にGoalieとしてSyracuseと対戦した際に、「神様」Gary Gaitの同様の技術に完全に翻弄されたと言っていた。とにかくスティックの位置そのものを犠牲にすることなく、スティック以外の身体全体の動きでめっさシュートっぽいフェイクを掛けて来ると。Keogh自身もPodcastのインタビューで小さいゴールと大きいパッドを付けたゴーリーを相手にしたインドアの技術が生きていると言っていた。

    にしても、全体を通して、Georgetownの良さが非常によく出ている。前回見たMaryland戦では完全に相手の得意なフィストファイトに真っ正面から挑み、スピードに着いて行けず玉砕していたが、今回はペースをコントロールしたことで良さが出た。よくよく個々人の選手を見ると非常に能力の高いいい選手が多い。#5 AT Davey Emala (So)、#13 MF Zack Angel (Jr)、#7 MF Brian Casey (So)、#23 DF Dan Hostetler (Sr, Boston Cannons指名、ロン毛がメットの後ろからover-flow)など、下級生から上級生まで、かなり個として強く、ラクロスを知っている選手が多い。いずれも地元Lacrosse Hot BedのMaryland州出身。一人一人を見て学べる事は多いので是非注目。

    あと、試合全体を通して、会場で見て改めて気付かされたが、Syracuse G #15 GallowayのChaseの反応とダッシュとダイブの気合いがむちゃくちゃ凄い。試合の大事な場面で複数回ボールを奪っている。これ、恐らく彼自身相当意識的に技術として意識し、練習して試合で使っている気がする。シュートが枠から外れると解るや否や、ほぼ延髄反射でゴールの裏にスルッと瞬間移動してそのまま躊躇無くエンドラインに向かって猛ダッシュ&ダイブ。「一応走りました」じゃなくて、ガチでボールを奪い取りに行っている。

    多分、「Chaseは大体OFが取るもの」という先入観/常識から意思を込めて自分を解き放っている。「Chaseは努力/工夫すりゃ半分くらいGoalieが取るもの」ぐらいのマインドセットで挑んでいる感じを受ける。確かに、これでボールを奪うのはある意味DFがボールダウンしてグラウンドボールを拾ってturn overを起こすのと同じだけの重みがある訳で。Face off一本取るのと同じ重みがある訳で。いや、OFの凹みっぷりや会場やチームの盛り上がりを考えると、「流れ」を呼びこむmomentum shifterとしてはそれ以上のインパクトがある。これをGが当然の習慣として自分のものにし、試合中に実際に何度かボールを奪えれば、ポゼッション/得点への貢献度は相当なものがあるはず。実はセーブ数やセーブ率、DF全体の防御率といった数字に現れていない極めてインパクトの大きな技術だなと思った次第。

    (あと、Gallowayのダッシュ&ダイブのハッスルっぷりが相手ATの涼しさ/ルーティーン感と対照的で、審判から見ても咄嗟にGallowayにポゼッションあげたくなるかもなと感じた。実際ほぼ同着でグレーな時はGallowayにあげちゃった方が観客からのブーイングも少ないだろ的な...大事っすこの辺の印象点。)

    Gallowayは全体的に極めて頭を使ってプレーしていることが感じられ、Gの選手が見て学ぶにはいいかも。GPA 3.5と、結構勉強も頑張っている。Quint曰く、理論家で完璧主義者。見ていて本当に素晴らしい選手だなと感じさせる。

    最後のKeoghの決勝点のシュートも完璧。本当に魂が込もっている。彼は今年はヒーローになるかも。

    てな訳で、油断もあり、Zoneに苦しみ、ちと危ういところを見せたSyracuse。でも一方で、これで再び緊張感を持って挑めるだろう。加えて、ハイレベルの競った展開で、やはり層の厚い頼れる上級生の存在の重要さを再認識。

    ILのハイライト(リンク

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