2011年3月22日火曜日

NCAA 2011 Game Review vol.10 Johns Hopkins @Syracuse

昨日は土曜に行われたUFC128のLight Heavy Weight Championship、Shogun vs Jonesの録画を見た。弱冠23歳のJonesが、その才能を遺憾なく発揮し、Shogunを完封。UFCに新しい世代の時代が訪れたことを決定付けた。打撃でも全く危ないところを見せず、グラウンドでも圧倒。最後は完全にShogunがグロッキーになり戦闘不能に。PRIDE時代は無敵に見えたShogunがこんなにも為す術無く完封される姿を見るのはなんとも複雑な気持ちではある。が、それだけJonesが強すぎた。

確かに、ずるいぐらいフィジカルが凄い。上手くて、強い。元々強かったstrikingだけじゃなく、groundも信じられないスピードで成長している。いまやグラウンドが強みになっている観すらある。が、彼の勇姿やコメントに触れるにつけ毎回感じるのは、そのメンタルの素晴らしさ。Humble(謙虚)で、自分に足りないものを常に認識し、常により良くなろう、変化しようとしている。周りの仲間に感謝し、相手にリスペクトを払い、その時その時で自分が出来るベストを淡々とこなしていく。今回も印象的だったのは勝利後のJoe Roganによる勝利者インタビュー。嬉しさを表現した後すぐに表情を引き締め、「自分にとって大事なのはチャンピオンであり続けること。なった以上はどんな挑戦も受けて、乗り越えなくてはいけない。自分にはその心の準備が出来ている」と。23歳ですぜ...「いやー!もう何も考えられないっす!今はとにかく休みたいっす!」じゃないんかい…カッコつけて言ってる訳でも何でもなく、心からそう言っているのが分かる。この人は最初から「チャンピオンになること」を目標にしていたのではなく、「チャンピオンであり続ける事」を目指してやって来たんだろう。畏敬の念を感じる。

Official site

トップ画面の動画での彼のインタビューコメントの中で本気で鳥肌が立ったのが、「対戦相手は試合前に俺のレジュメ(履歴書)を見てimpressされるとよく言ってるけど、俺と試合した後になって、もう一回impressされる事になると思う。なぜなら俺のレジュメに自分の名前が載れることになるから(歴史の一部になれるから)。」これ、彼以外のファイターが言ったら痛い感じになるが、彼が言うと、厭味が無く、全員が頷かざるを得ない...

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Johns Hopkins @Syracuse

またしても...ハラハラドキドキの手に汗握る素晴らしい試合。NCAAは一体一年間に何試合最高のエンターテインメントを生み出してくれるんだろうか。最初はソファーの上でlaid backで見てたのだが、気が付けば試合終了時には画面から1メートルの場所に座り込み、食い入るように画面に見入っていた...3Qくらいから試合終了まで、心臓バクバク言いっ放し。但し、今回のは、Maryland-Georgetown、Syracuse-Virginiaのような、ジェットコースター系のドキドキではなく、例えるなれば、お化け屋敷のドキドキ。物凄い緊張感のある1試合だった。

試合のRecap

Syracuseのオフェンス力と、いまいち乗り切れていないHopkinsの実力を考えると、戦前はCuse有利の声が圧倒的に多かった。が、蓋を開けてみてびっくり。JHUが超善戦。ロースコアのスローペースの展開に持ち込み、終止リードを維持。4Q終了直前までリードを維持し、Syracuseまさかのupsetか!?という去年のArmy戦の悪夢再来の一歩手前まで持って行った。

が、さすがSyracuse。終了直前で追いつき、激戦の末2nd OTでFOを取った#4 Jeremy Thompsonから#28 Stephen Keoghにつなぎ、Keoghが手堅く決めて感動の勝利。地元ファンと一緒に胸をなで下ろした。にしても、冗談抜きで危なかった。何かが一歩違っていれば今頃今シーズン最大のアプセットと、歓喜のHopkins、顔面蒼白のSyracuse &地元ファンという絵も有り得た。後半ずーっと「え?マジで?まさかの?Syrause負けちゃうの...??そんな事無いよね?」と心配しっぱなし。

何が起きたのか?

この結果、スコアボードで5-4というスコアだけ見ると、「ん?何があった?」「またSyracuseが舐めて適当にやったのか?」「まぐれだろ?」と「?」マークが渦巻くことになるが、試合を見ると、なるほど、これはまぐれでも何でもなく、デザインされたSyracuseの苦戦、そして、必然のスコアだなと感じられる。10回リセットボタンを押してやり直しても、1-2回くらいとは言え、それなりにJHUが勝つシナリオは十分にロジカルに有り得たな、と感じた。何があったのか、どういう要素が効いてこうなったのか、自分なりの見立てをいくつか紹介。
  • ①Hopkinsが徹底して試合のペースをコントロール。ポゼッション重視でトランジッションの数を減らし、超Patientに保守的にボールを回し、スローな展開に持ち込み、Syracuseに出来るだけオフェンスの機会を与えなかった。走り合い、点の取り合いになっても勝てない相手に対する定石中の定石。NCAAだと特にその徹底と腹括りが凄い。
  • ②展開としても、最初にぱぱっとエース#34 2年 MF John Ranaganが点を取ってリードし、それを守るという、理想的な先行逃げ切りを徹底
  • ③勝負を分けると言われていた、そしてFO #4 Jeremy Thompson, Wing #11 LSM Joel White, Wing 2 #23 MF Jovan Millerの最強FOトリオを擁するSyracuse有利と見られていたFOでHopkinsが大健闘。
  • JHUが先週のGeorgetownと同様、Zone DFを多用。また、頻繁にMan-toとZoneを入れ替えるという嫌らしいスイッチを繰り返し、Syracuseの面々が攻めあぐねていた。スピードとオフェンス力で歯が立たないチームへの定石戦術だが、Syracuseには特にハマっている。今後使って来る相手が増える予感。Cuseも何とか今後攻略していく必要がある。
  • ⑤そして、何と言っても最大の要因は、JHUのG #33 2年Pierce Bassett。ここまで特に話題になっていなかったラクロス僻地Arizona出身の2年生。この試合で完全にラクロス界にその名を知らしめることになった。文字通り神懸かったセーブを連発。ロングレンジも近距離の1 on 1も止めまくり、鬼の16セーブを記録。試合終盤に掛けてSyracuseのOF陣が「あれ?こいつやべえぞ?シュートマジで入らねえ...」と動揺し、いつもなら気持ちよく打つシュートを、考え過ぎる事で外し始めていた。見た感じ、決してまぐれではなく、コースを読み、かなり軌道が見えた上で、スティックや身体や脚でセーブ出来ていた。彼は今後2年で結構凄いゴーリーになるかも...(しかしArizonaなんてラクロス新興地域からこういう選手が出てきつつ有る事が衝撃的だし、それを発掘してくるJHUのリクルーティング力も凄い。)

それでも強いSyracuse

が、それでも尚、終止リードを許しながら、最後に同点に追いつき、OTで逆転して勝ちきるSyracuseはさすがとしか言いようが無い。本当に、一つのスポーツチームとしてこの勝負強さは尊敬に値する。終盤の負けている状況からの同点、逆転まで、余りメンタルな揺らぎが見られなかった。特にJeremyやStephen KeoghやGalloway、Joel Whiteなど4年生の大黒柱達に至っては、むしろ修羅場になるほど集中力とパフォーマンスが増している気すらする。特に最後の決勝点を決め、これで2試合連続で延長サヨナラ打を決めているKeoghのクラッチシューター振りにはただただ脱帽。人として尊敬してしまう。OT時のメンタルがフロー過ぎる。

NCAAの戦力拮抗と混戦模様

しかし、この試合もまた、1位チームですら10位前後のチームにいつアプセットされてもおかしくないという今のNCAAラクロスの戦力拮抗っぷりを如実に物語っている。特にランキング1位のチームは常に他のチームから目標とされ、標的とされ付け狙われる事になる。勝てれば成績上大きくプレーオフに向けた順位に貢献することにもなり、全国ネットのメディアでも紹介されるため、相手チームは毎回モチベーションマックスで入念に戦術を作り込んで挑んで来る。これまで、Virginia、Georgetown、Hopkinsと、どのチームも明らかに今シーズンのベストパフォーマンスをSyracuse戦にぶつけて来ている。王者故の宿命、1位のチームが歩かなくてはいけない茨の道か(日本一を目指すチームであれば同じattitudeで挑む必要がある)。

しかしNCAAラクロスのレギュラーシーズンは本当に勝ち負けがぐるんぐるんに入れ替わる。アプセットも頻繁に起き、じゃんけんの様に三すくみの勝敗になることもままある。単純に○○が××に10点差で勝ったから、××に5点差で負けている△△には○○に対して勝ち目なんて無いでしょ、という計算がいまいち成り立たないことが多い。であるが故に、結果が読めず、非常に面白い。

JHUは来年、再来年に優勝争いに復帰?

そして、もう一つ、この試合を通じて確信したのは、JHUが徐々に良くなっていると言う事と、このチームは間違い無く来年、再来年、Top contenderとして優勝争いに絡んで来るなということ。没落したと言われながらも、やはりそれはtemporaryな結果ということ。今回の試合でSyracuse相手に一歩も引かない活躍を見せたチームの柱は、MF #9 John Greeley(2年)、MF #31 John Ranagan(2年)、AT #45 Zack Palmer(2年)、G #33 John Ranagan、DF #51 Tucker Durkin(2年)と、よくよく見ると全員2年生。去年全米最強の新入生軍団と言われた面々。去年はルーキーとしてNCAAデビューの洗礼を浴び、今年その才能が徐々に開花しつつある。

1年生から主力としてNCAA Div 1の荒波に揉まれて来た彼らが、今後Play offを戦い、来年、再来年もまた戻って来る。#27 MF Rob Guidaなど1年生の強い選手も目立ち始めている。これ、結構マジで強くなってくるんじゃないだろうか。Hopkinsファンはちょい辛抱強く待たなくちゃいけないけど、応援し続ければ、必ず来年再来年に報われる気がする。

いずれにせよ、見て非常に楽しめる(むしろちょっと心臓に悪い)、且つ教材としても非常に勉強になる点が多く、お勧めの一試合。

Quintのプレビュー(リンク


以下、いくつか個別に記憶に残っているポイント

解説者のPaul Carcatera曰く、自分自身現役時代は傑出したDefenderだったJHUのHC Coach Petroも、Syracuse #40 John Ladeを認めていると言っていた。Tremendous lacrosse IQを持った選手だと。今回の試合でも要所要所で素晴らしい1 on 1 DF、チームDFを見せていた。ポジショニング、フットワークも巧いが、チェックも素晴らしい。相手との差が有った今回は結構ボールダウンを起こしていた。淡々と相手のエースクラスのATを沈黙させる姿は正にDFの鏡。

2年生になり、完全にチームの大黒柱になったHopkins MF #31 John Ranagan。段々とPaul Rabilに近い迫力を感じさせるようになりつつある。最初の2点は共にトップからの王道ランニングシュートだが、印象的だったのが、意識的にやっているであろうコースの打ち分け。一本目はHigh to high。二本目はHigh to low。同じシチュエーションであっても軌道と打つスポットを打ち分けることでゴーリーに予測されないようにしている。やっぱりレベルの高い選手はこの打ち分けを意識的にやっている。

ちなみに、Ranaganの一点目(二点目だったっけな?)、CuseのエースMFキラーLSM #11 Joel Whiteに着かれた状態で、さすがにピンの1 on 1ではbeat出来ず、上手くボールとポジションを動かしながらピックを絡めてWhiteを交わし、フリーでシュートを打つ事に成功している。必ずしも相手の強力LSMに着かれても、こうやって工夫すれば別にフリーでシュートは打てるという素晴らしい例。毎試合LSMに着かれるエースMFの選手、及び彼とコンビを組むMF達は是非しっかり見て覚えておきたい。

Syracuse 2点目。(去年までJHUだった)#14 PalasekのXからの1 on 1からクリースのKeoghへ。Keoghがクリースでじーっとpatientに待って、貯めて、そこからDがスライドに動いた瞬間を狙ってパチッと秒察で裏を取る動きをしているのが印象的。ずっと動き続けてればいい訳じゃなく、敢えて止まる時間を作り、メリハリで倒す。静と動の使い分け。Fly like a butterfly, and sting like a bee(蝶の様にふわふわと舞い、蜂の様に鋭く刺す)を連想させる。

後半、JHUはZoneをやったり、Man toをやったり嫌らしくDFを切り替えて来る。SyracuseもそれまでATの#22 JoJo MarascoをMFで出したり、いろいろ試みる。この辺のコーチ同士の戦術的な駆け引き、チェスゲームが面白い。

Close DFとGのGallowayばかりフィーチャーされがちだが、実はSyracuseの#19 MF 3年のKevin DrewのShorty DFでの貢献がかなり効いている。相手の2枚目エースの#9 John Greeleyを確実に守り切り、ほとんど仕事をさせていない。角度をマネジし、フットワークで着いてポジションをずらさず、細かいチェックとプッシュで流しつつ。ほとんどLong stick DFに着かれてるくらいの固さがある。スターが多過ぎるCuseだと相対的に目立たないが、隠れた名選手。特に去年までDF MFで出ていた#23 Jovan Millerが今年OFでのpresenceを増しているのには、DrewがDFで大きく貢献しているからという面も大きい。

苦戦しながらも、やはり賞賛すべきはCuseのDFの堅さ、Gallowayのセーブの強さ。JHUが攻めている時間は相当長いが、それでも4点に抑えていると言う事の方がむしろ凄い。Deceptive(誤解されがち)だが、実はSyracuseはオフェンスのチームじゃなく、ディフェンスのチームだなと感じる。

JHU Canadianの#45 2年 AT Palmerによる4点目&フラッグダウンを生んだのはCuseのイリプロ後の、Hopkinsのリスタートの切り替えの早さとダッシュ。このレベルのラクロスの、この大事な場面で尚、こんな原始的な要素で勝敗が決し得るという恐ろしさ。逆にCuseはこんなんでやられちゃダメだ...反面教師として学べる。

試合終盤の解説で印象に残ったのは、Coach PetroのDF哲学。Cornell時代もJHUでも、とにかくスライド早めに行かせて素早くリカバリーする、チーム全員でスカ抜きどフリーを絶対に作らせないDFという考え方。また、OFでもどちらかと言うとシステムに則ってプレーするスタイル。で有るが故に現Cuse #14 Tom Palasekはより自由にプレー出来る環境を求めて今シーズンからSyracuseに移籍したという話も出ていた。

あと、全体的に不利と言われていたHopkinsのFOチームが大健闘した。細かく見られてないが、何か秘密が有るはず。FO関係者が見て学べる点があるはず。

ILのハイライト(リンク


ESPNUのハイライト(リンク

2 件のコメント:

  1. 1OT終了間際のKyle Wartonのはインクリとられてもったいないですね。
    ILでRoad to Face off ClassicというHopkinsのドキュメンタリーをみていたので、Hopkinsも応援したくなっちゃいました。今回のDVDも楽しみに待ってます!
    あとSyracuse-Virginia見ました。これもお互い気合い入っててメチャ面白かったです。みんなもこの試合みて、良い刺激もらってます。やっぱり、高いレベルの試合みるのはマジでためになりますね。そういう環境を作っていただいてるいたるさんには本当に感謝しています。

    そして最近、毎日ブログ更新していただいてありがとうございます!
    いまじゃ毎朝起きて、まずこのブログ見るのが日課になってしまったんで、これからもお願いします!

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  2. 玄徳
    さんきゅー。うん、Hopkinsはなんだかんだ言って、(特に与えられた若手中心の戦力を考えると)凄くいいチームになって来てるよね。Road toは俺も見た。ああいう裏側の努力とか見るとどうしても感情移入しちゃうよね。更新は、そろそろ貯めて来た記事が底を着きつつあるので、まーどっかで隔日以下になってくるな...あと仕事的に社内で配属が変わるタイミングで、ちとwork loadが増えそうなのもあり。Don't hold your breathで...

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