2011年3月30日水曜日

NCAA 2011 Game Review vol.13 Virginia @Johns Hopkins

見終わっての感想は...「これだからNCAA Lacrosseファンはやめられねえ」だ。常に驚きと感動、そして学びと勇気を提供してくれる。あの若手主体のHopkinsが2位のVirginiaに12-11で勝利。感動した。これで、個人的な今週末の2試合の予測、VirginiaがHopkinsに手堅く勝ち、MarylandがNorth Carolinaをボコるという予測は両方外れ...(逆にこの2つの結果予想してた人がいたら万馬券だ...)何が起こるか本当に解らない。

以下、何が起こったのか、何故起こったのか、個人的に感じた事。

起こったこと
  • 前半最初にHopkinsが連取。前半終了時点で4点リード。後半3Qに入ってVirginiaが追いつくも、最後まで粘りきり、終了間際にJHUが決勝点を決め、一点差で勝利。
  • 正直Hopkinsが勝つ事を予想していたファン/関係者は少なかったんじゃないだろうか。だが、試合を見て感じたのは、今回の勝利、「たまたまポロッと勝てた」感じではなかったということ。運や奇策ではなく、がっぷり四つで正面から組み合い、至近距離で殴り合った末の力での勝利。

Hopkinsの姿を見て感動
  • 若いHopkinsがシーズン初期から試行錯誤しながら、初期にPrincetonに手も足も出ずにやられたあのチームが、ここに来て急成長してきている。
  • 若手、特に去年No. 1 Recruiting Classと言われた2年生達が一気に花開きつつあり、本来持っていた才能を発揮し始めている。
  • IL Videoにアップされていた5度に渡る密着取材ビデオ、Road to Face Off Classicで練習やミーティングでのスタッフや選手たちの姿を見て、真摯に努力し、ポジティブに変化しようとする姿を見て感銘を受けたが、それがこうやって実を結び始めているのは映画やドラマさながら。
  • 恐らく先週のSyracuseとの延長1点差敗北(しかも最後の疑惑判定によっては勝っていた)が、大きな自信になっている。明らかにセルフイメージがどかっとデカくなっている。今回の試合では2位のVirginia相手に全くひるむ事なく、堂々と、そして全力でプレーしていた。
  • 特に、このチームを見て感じるのは、その「一生懸命」な姿勢。マジで高校球児かと。GBやトランジッション、フライも全力疾走。ミスしても清々しく切り替えてすぐ次!一人一人がチームのための駒になりきって、貢献しようとしている。見ていて気持ちいい。この「一生懸命さ」「全力を尽くす姿勢」、それによってセルフイメージを最大に保つ姿は、間違い無くチームとして、心/メンタルの状態として、非常に学ぶべきだなと感じた。
何で勝ったのか

いくつか個人的に感じたことを。
  • HopkinsのDFが、非常に良かった。僕自身AT出身なので普段ちゃんとフィーチャーしなさ過ぎなのだが、母校JHUでAll American DefenderだったCoach Petro。徹底したDFシステムが本来の強さ。それがシーズン中盤に来てバチッとハマり始めている。
  • そして、引き続き、Arizona出身の2年生Goalie #33 Pierce Bassettがキテる。14セーブ。シーズンセーブ率65%。去年のNotre Dameの守護神Scott Rodgersと同じ数字だ。彼、ホント凄い。ここ数試合で完全に開花している。かなり止めている。何が秘密なんだ?軌道を読んでるのか?スポットを空けて打たせてるのか? 純粋に動体視力と反応が物凄いのか?その全部?何なんだろ。明らかに反応が野生動物並みに柔らかく速いのは間違い無い気がする。(クリアパスを普通にSteele Stanwickにカットされられたり、無駄に同じくStanwickダブりに行って無人のゴールにサクッと決められたりと、まだまだ経験不足な面もあるが、そんなもんはすぐに修正されるだろうし。)
  • この、強いゴーリーと、統制されたDFシステムという二つの要素が揃ったチームは、間違い無く安定して強い。今年のCuseしかり、去年や今年のNotre Dameしかり。圧倒的に負けにくくなる。
  • 圧巻だったのは、Shamel Bratton対策。確かに、2点取られてはいる(その2点は、まあ、しゃあねえなって得点。Shamelのいつもの有り得ないシュート。ま、この人、もはや化けもんだし...)。が、それ以外の所で仕事をさせていない。セットで彼を起点に攻められそうになっても、かなり1 on 1で止められている。基本的には左しか無いので、左を切って、右のダッジのフェイクに一切付き合ってプッシュに行ってない。解説で指摘されていたが、Coach Petroがビデオを分析しまくり、Shamelのプレーを丸裸にし、何十通りかのシュートまでの動きのパターンを特定し、止める策を練りまくったと言う。なるほど、そこまでやれば止められるのか...大事だ、徹底したスカウティングによる「傾向と対策」。
  • 2枚看板MFの一人、#9 John Greeleyがハイヒット(つうかほぼ頭突きアッパーカット)で脳震盪になり退場するのだが、その後その穴を埋めるべく、#16 Lee Coppersmithというこれまで脇役だった別の2年生の伏兵MFがステップアップ。2枚看板その一の#31 MF John Ranaganばりのダッジ力とミドルのランニングショットでハットトリック。特に3点目の貰い際のスプリットから右のランニングシュートは教科書として何度も見直したい完成度。スティックを完全にゴーリーから隠して一気に振り抜いている。何!?まだ隠れてたの?こんなに能力高いMF。実は結構talent deepだなHpokins...ちなみに彼も2年生。こりゃ来年再来年Hopkins間違い無く来る匂いがプンプンして来た。ちなみに彼の出身はFlorida。Lacrosse hot bedのど真ん中にある伝統校HopkinsがArizonaやFloridaやOhioと言ったLacrosse新興地域の才能頼りで復活する姿が何とも象徴的。
  • Virginiaは、以前から指摘されていた、DFの弱さが露呈した感じか。今までは、別に10失点しても、15-16点取りゃ別にいいんじゃね?でやってこれた。が、今回のHopkinsの様にタイトに守られて10点前後しか取れなかった時、失点の多さが致命的な問題として浮上してくる。「点の取り合いの熱いラクロス」って言うと聞こえはいいが、「点を取りまくる事」はいい事だが、「点を取られまくる事」は(野次馬ラクロスファンとしちゃ楽しいが)別にチームとしては別に誇れることでも何でもない訳で、「Virginiaファン」としては頭が痛い訳だし...今のUVAだとイメージ至近距離で多少パンチ貰いながら派手なKOを狙うスタイルのファイターみたいになっている。ハイライトKOシーンを連発するが、時々クリーンヒット喰らうので危なっかしい、みたいな。今後トーナメントに向けてどこまでこの穴を埋められるかがUVAにとっては肝になって来る。
  • あと、Hopkinsの伝統のホームコート、Homewood stadiumの地元ファン達の応援のパワーがHopkinsのメンタルを支え、パフォーマンスを押し上げている感じを受けた。大事だ。応援の力、そしてそれに感謝し、環境に感謝することで生まれる力。セルフイメージ拡大再生産のサイクル。
非Hot bedからのリクルーティングの重要さと、ラクロスの爆発的普及

さて、ここまで書いて、一つ今のアメリカのラクロスを語る上で外せないイシューがちらついているのでサクッと言及。既存のラクロスメジャー地域、所謂Hot Bed(苗床/温床)以外の地域からのリクルーティングの重要さ。上記で述べた通り、この試合でJHUが勝てたのは、ArizonaのBassett、FloridaのCoppersmithの活躍があったから。これは10年前は考えられなかった現象。

既存の優良選手供給源は、Marylandエリア、NY州北部、NYLong Islandの三つ。加えて、Philadelphia周辺やVirginiaがちょいちょいという感じ。それが、Ohioだったり、Floridaだったり、そして西海岸やTexas/Arizonaといった南部に広がりつつ有る。そして外せないのがご存知Denver/Coloradoでの異様な盛り上がり。MLL/NLLがあり、Denver大学のBill Tierneyがいて、Kids/Juniorレベルが急成長することでMCLAもColorado StateやColoradoが急速に力を付けつつ有る。それこそ日本で20〜10年前に起こったラクロスの爆発的普及が今アメリカ各地で起こっているイメージ。

特に西海岸やTexas/Arizonaでのここ数年の優良選手供給っぷりが凄い。背景には、例のLXM PROの面々が率いている、Adrenaline Lacrosse CampやStarz Lacrosseがある。そこでコミュニティを盛り上げ、質の高い指導を与え、同時にNCAAトップ校へのリクルーティング源としての機能を提供している。この辺の話、今後のラクロス界の趨勢を語る上で超重要且つ面白いトピックなので、今度また時間のある時に別途切り出して書いてみようと思う。

印象的なのは、そうは言ってもこれまでの定説として「身体能力が大事なMFに関しては全国から。でも、Skill PositionのG、AT、FOGOはやっぱりHot bedから」という考え方があったのが、今回のBassettの様に、Skill Positionでnon-hot bedの優秀な選手が出始めているということ。Youtubeを始めとしたオンラインでの情報ソースやAdrenaline Lacrosse等キャンプを通じたトップレベルのコーチ/選手との接触が情報の非対称性を薄れさせている面もあると思われる。アメリカのラクロスは確実に大きく変化し始めている。

ESPNのハイライト(リンク

IL Videoのハイライト


来週末はNew Yorkで行われるILの集客試合その3、Big City ClassicでSyracuse-Duke、Hopkins-North Carolinaを観戦予定。HopkinsとNorth Carolinaはもしかしたら再来年辺りの決勝の組み合わせになってもおかしくない気がする...

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