2011年3月6日日曜日

NCAA 2011 Game Review vol.04 Virginia @Syracuse

20年の伝統を誇るレギュラーシーズン最大の山場の一つ。Syracuse対Virginia。今年はシーズン開始前から現時点まで1位と2位。早くも長上決戦。5月下旬の決勝戦の前哨戦になる可能性も。Syracuseの本拠地、ドーム型スタジアムCarrier Domeにて1万5,000人の地元ファンが大声援を送る中での一戦。Syracuseは2000年代前半のMikey Powell時代の、ブルーの入っていた頃のレプリカユニフォームでプレー。(リンク)Pro 7のメットにもそれに合わせてブルーのカッティングを入れている。

両チームのシーズンプレビュー: SyracuseVirginia

IL Videoの試合プレビュー(リンク

ESPN U Lacrosse Podcastでのインタビュー

試合に先駆けて行われていたESPN U Lacrosse Podcastでの解説者で元JHU All American Goalieで、MLL経験者でもあるQuint Kessenichによるインタビューでいくつか面白い&個人的に学びがあると感じたコメントがあったので紹介。(リンク

Virginia HC Dom Starsia
  • #6のSteele Stanwickは本当に素晴らしいAT。自分で抜いたりシュートを決めたり出来るのももちろんだが、何と言っても素晴らしいのは、周りの選手の能力を引き出し、チームとしての力を何倍にも高めてくれるところ。パスを出すべき所、出すべきじゃない所、1 on 1に行くべき所、打つべき所、全てに於いての判断とタイミングが恐ろしく的確。
  • Syracuse戦に向けての対策は?という質問に対し、まあ、選手の皆にはとにかく、ラクロスを思いっきり楽しんでくれと言った。Carrier Domeという伝統があり、多くのラクロス大好きな熱狂的なファンが見守る中。Syracuseという最高の相手と、スピードのある最高レベルのラクロスの試合を出来る。人生で何度も経験出来る物でもないので。
  • (→この今を楽しむ、笑顔で臨む、という姿勢に、我らが辻秀一先生のよく言うスポーツ心理学的で語られる、正しい心のアプローチ、最大限のパフォーマンスを生む心の習慣を垣間見て、ああ、アメリカのトップチームらしいな!見習いたいな!と感じた次第。)
Syracuseの4年生Goalie Galloway
  • 今シーズンのチームはどう?と訊かれ、やはり上級生が分厚いのが非常に効いていると。特にDFにJohn LadeやJoel Whiteら4年生の大黒柱がおり、非常に心強いと。自分は下級生の頃からGoalieをやって来て、重責を感じて来たが、今年は「ああ、自分で全部やらなくていいんだ!」と思えると言う。
  • 大事なのは、2月にNCAAトーナメント優勝は絶対に出来ないということ。それが出来るのは5月末。レギュラーシーズンの初期は、やはりチームを組み立てながら闘う時期。特にDFは年が変わるとまた一からチームとしての連携を作り直すものなので、焦らず、一試合一試合確認/修正作業を積み重ねながら、トーナメントでしっかり出来上がってればいい、という考え方。
  • (→この考え方は見ているとNCAAのどのチーム/HCにも共通している。目先の初期の勝ち負けに一喜一憂せずに、しっかりピークに向かって変化することを重視する考え方)

結果と感想

期待に違わぬ、最高レベルのラクロス。大学レベルでは正に世界最高峰の戦い。是非ともここを基準として目指しちゃいたい。共に持てる物を存分に出してのハイペースかつハイレベルな戦い。最後の最後まで接戦で手に汗握る展開。シーズンが終わって振り返った時に、今年のレギュラーシーズンでも間違い無くトップクラスの名試合に数えられるだろう。目を見開かされるようなプレーが随所に。録画して朝に見たが、早朝からテンション上げられまくり。最後は12-10でSyracuseが手堅く勝利。ただ、実力的にはかなり伯仲。どっちが勝ってもおかしくない感じ。Cuseには間違い無くホームコートアドバンテージがあったはず。NCAAトーナメントでの再戦が今から楽しみ。

試合の見所

Virginiaは3人、Syracuseは何と7人ものMLLドラフト指名選手の4年生を抱える。

1Q 2分、Cuse #11 LSM Joel White vs Virginia #1 MF Shamel Brattonのドラフト一巡目指名対決。一発目はBrattonが圧勝。簡単に交わして鬼シュートを叩き込む。今回の試合を通して、正直Brattonの勝ちと言い切れるだろう。Joel Whiteを持ってしても無理。要はpole(LSM)だろうが何だろうが、一人じゃ絶対止められないということなんだろう。どれだけ早くスライドを準備し、飛ばせるかの勝負。その後はスライドが遅れるとやられるが、チームとして超早めにカバー&カバーのカバーを出来た場合は全員で取り囲んで潰す事に成功している。Shamelのような突出した個に対する対策として、いい例と悪い例の双方を見られる教材。

OrangeのCoach Deskoの息子、 #21 3年生 AT Tim Deskoから#22 2年生 AT JoJo Marascoへのの2 menでのシンプルな一点。ラクロスを始めて初期に習うこの手のシンプルな2 on 2でこのレベルでも点が取れる。

途中で挟まれるQuintのコメント。SyracuseのStrength coachは、Footballチームと掛け持ちで多くのトップアスリートを見て来ているプロのトレーナーだが、その彼が、Joel Whiteはworld class athlete cardio-wise(心肺機能に関しては世界最高クラス)とのことらしい。フィールドであれだけの存在感を出せるのにはそれだけの理由が。それだけ走り込んでいるという事なんだろう。

点は入らないが、Cuse #22 Marascoの右からの1 on 1でインサイドロール後、角度が薄く苦しくなった時は無理して左手で表から打たなくても、そのままBTB (Behind the Back)で打っちゃえばいいじゃん、そっちの方が角度出るので、という考え方。

Virginiaは全体的にATがいまいち活躍出来ていない。Cuseの#40 John Ladeやら強力DF陣がStanwickらUVAのAT陣をかなりビタッと抑えている。見ているとClose Defense(ボトム)の三人がポジショニング、フットワーク、チェック、カバー、全てに於いて非常に高いレベルの仕事をしているのが伝わる。

Orange #23 Jovan Millerの左からのjumping shotが美しい。流れながらスティックを垂直に振り、バウンスショットでhigh to low to highの高い高低差でゴール上に突き刺す。これはMFの選手は技の引き出しにレパートリーとして入れておきたい。

UVA #10 3年 AT Chris Bockletのボール貰い際の反転しながらのクイックでスムースなシュート。若い選手達は彼の動きを徹底して見て学べとQuint。相手と状況をよく見て、鋭くチャンスに動き、無駄の無いコンパクトでクイックな動きで正確なシュートを決めて来る。極めて効率の高い選手。

UVA #24 1年 MFのRob Emery 24の4点目、右手のサイドアーム。EMOが切れても落ち着いてボールを回し、トップからside armで鋭いシュートを決めて来る。シュート上手い。一年生なのに。Quintが身体のTork(捻転)の使い方の上手さを指摘。是非スローモーションで何度も見直して頭と身体で刷り込んでおきたいところ。ちなみに彼、San Fransisco, California出身。10年前までと違い、ここ数年西海岸やテキサス等、東海岸以外出身で1年生からVirginiaで主力を張るような選手がちらほら出始めている。ラクロスが如何に全米に広まりつつあるかを象徴。

Syracuse 6点目。裏から。#22 Marascoから#28 Stephen Keogh。Canadian Indoor Lacrosse仕込みの、超スペースの無いクリースでキャッチ、そして、全くスペースの無い状況でも小さいモーションでサクッと打ってしまい、得点。この技術はクリースをやる選手は必見。DFいてスペース無くても全然取れるし決められるっていう。

2Q始まってすぐのGallowayのセーブ連発からの、異様な速さとスムーズさでのクリアパス。秒殺でゴール前まで行きシュートまで繋がってしまう。これが出来ると圧倒的にクリアの危険度が増す。セーブした瞬間が得点機会とイコールになってしまう。

試合全体を通し、両ゴーリーのセーブ、パスの素晴らしさが光る。二人に共通するのは、多くの初心者ゴーリーが陥ってしまいがちな、「ぶわっ」とスティックを振って、フォロースルーをかなり手前で止めてしまう「置きに行く」スロー/山なりの「ションベンパス」では無く、ショートスティックの選手と全く同じようにビシッと相手を真っすぐ指す所まで振り切るスローをしている点。ヘッドスピードがショートスティックと全く変わらない(いや場合によってはショートより速いかも)。ガキの頃から壁打ち等で相当ショートスティックでスティックスキルを鍛えて来ていることが伺い知れる。

Cuse 7点目#22 AT Marascoの1 on 1。ロールで一枚抜いた後に来たスライドを、一歩、超微妙な角度でCOD (Change of Direction)するだけで交わしている。本当に微妙な角度のズレだけでスパッと交わしてしまう技術。是非とも身に付けたい。

Virginia 6点目、#1 Shamel Bratton。Shorty DFのJovan Millerを背中に背負い、バスケのセンターのローポストでのフェイクして逆にロールの動きで、右にクイッと肩で小さくフェイクを入れ、左に一歩だけ交わして、瞬間の動きで左のミドルレンジ。芸術品。電光石火。この鋭さはなんだろ。完全にバスケの繊細さの域だ。

UVA 8点目 StanwickのXからの1 on 1とクリースへのフィード。よく見て欲しいのがフィードの際のスティックの使い方。肩を使って大きく普通に投げるのではなく、猫の様に背中を丸めて、スティックを身体の前に構えた状態で、手首だけのクイックスナップのモーション。小さく、優しく、でも速い球で、そっとポイントにコツンと当てに行くようなイメージ。ポイントガードがアリウープさせるためにそっと球を浮かせてあげる感じ。バレーボールのセッターがスパイクのためにトスを上げるイメージ。

と、そのパスを受けた、またしても#10 Bockletのクリースでの小さいスペースでの超クイックなシュートモーション。この3年生ATコンビ、フィーダーのStanwickとクリースのBockletの補完関係。相当ハマって来ている。

後半3Q、#9 MF Josh Amidon to #28 Keogh。トップからの1 on 1直後のKeoghの裏を取る動きが半端無く素早い。裏取る時はこのくらいやるべしってことですな。

3Q Virginia 9点目同点弾のShamelの動きが...もう、やばい。貰い際に左でシュートフェイクして、さらにもう一歩左に抜き、さらにスライドのトレイルチェックを小さくフェイスを切る形で交わし、倒れながら短く小さく鋭いシュートを尚も左で叩き込む。DFも左で来るって死ぬ程解ってて、散々スライド飛ばしてるのに、それでも尚決めるんかい...

Syracuse 11点目のJeremy Thompsonの得点が神過ぎて吹いた。Iroquoisの三つ編みをなびかせつつLSM相手にゴリゴリに抜いて、スライド2枚くらいに首を刈られても気合いで持ち込み、サクッと得点。ファウルを貰いつつ。その後もいつもの涼しげな顔...侍かっ。

両ゴーリー後半に入ってGhitelmanの活躍がまた凄い。現NCAAを代表する技巧派ゴーリー二人の対決。セーブのみならず、EMOでのパスカットやクリアパス/ブレークパス、更にはフィールドでのステップワークまで、非常に参考になるプレーが多い。ゴーリーの選手は是非この試合は何度も見て学びたい。

残り3分のVirginia 10点目。最後にもう一度Joel WhiteとShamelのドラフト一巡目一騎打ち。またしてもShamelに軍配が。なるほど、もう基本的に、一対一だと止められないわけねと。Joel Whiteでも無理なんだから、一体誰が止められるんだっちゅう話だ。もう「Shamelは俺が何とか止めるから、スライドいつも通りでいいよ。」とか無理して背伸びしちゃったら負けっちゅうことですな...

最後は2点差のリードをSyracuseが手堅くコントロールして守り切り無事勝利。週明けのランキングでは文句無しの1位を確保。

ESPNでのハイライト


来週のBaltimoreでのFace Off Classicで両チームを会場で観戦予定。SyracuseはGeorgetownと、VirginiaはCoenellと。Cuseは結構伸び伸びとやってボコボコにしてくれるんじゃないだろうか。VirginiaはCornellの出来上がり具合によってはひょっとしたら競った試合になるかも知れない。楽しみだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿