2011年3月2日水曜日

NLL 2011 Game Review vol.05 Philadelphia Wings @Buffalo Bandits

(NLL観戦ガイド記事はこちら。NLLの裏側が見られるドキュメンタリーの紹介記事はこちら。)

Update

先日送ったDVDの記事で、2連敗後、3連勝したところまでお伝えしたPhiladelphia Wings。ファンの中にも「あれ?これもしかしたら行けるんじゃね?」という気持ちを抱かせた。が、その後再び当初のWingsに戻り、一進一退に。2/5にSyracuse 09 #22でRookie of the yearを取りそうな気配のCody JamiesonのいるRochester Knighthawksにアウェイで敗戦、次週の2/12、ホームでは宿敵Buffalo Banditsにボコられ、先週2/19のアウェイでのBanditsとの再戦では相手のファウルに助けられ、辛くも1点差で勝利。

シーズン折り返しの2月下旬時点で4勝4敗。相対的にレベルの高いEast DivisionではRochesterと並んで同立4位の最下位。再びプレーオフ出場の瀬戸際というポジションに立たされている。逆サイドのWest DivisionではPaul RabilのいるWashington Stealthも4勝5敗、Edmonton, Coloradoも2-6, 1-7ともっとボロボロなのだが、現行の東西別々にプレーオフ進出を決める仕組みでは、Eastで4位以内に入らないとプレーオフに出られない。

2月12日(土)Buffalo Bandits戦@Philadelphia

この試合は会場で観戦。残念ながらテレビ放映は無し。今回は子供の癌患者支援のためのfund rasing目的で、ピンクのユニフォームでプレー。ふがいないプレーのエースAthan Ianuntchと不調のDrew Westerveltらオフェンス陣にダイハードファン達は容赦なくブーイングを浴びせる。(けなげに頑張るGoalieのBrendan Millerには惜しみない声援。この、いい物はいい、悪い物は悪いという超シンプルな反応がアメリカ的だ。活躍すれば一気に人気が出るし、ダメなら一気に「てめえラクロス辞めろや!!」となる。ある意味超フェア。)

前半食い下がるも、後半再びダメなWingsが顔を出し一気に突き放される。地元ファンの不満もピークに。


最大の見所はリーグ最強の喧嘩師の一人、Paul DawsonによるKO劇。

今シーズンの乱闘の中でも恐らく最も凄惨な失神KO。丁度僕らのいた席の真ん前で。やられたTravis Irvingはルーキー。手厳し過ぎる「welcome to NLL」の洗礼だ。口からか鼻からか結構派手に流血していた。鼻折れたか歯ぁ折れたかしてるかも。悲しいかな会場でも最大の盛り上がり。にしてもPhillyのファン達も筋金入りだ。「ま、we suckだけど、最後一発KOしてスカッとしたからいいんじゃね?」ぐらいの。

しかし、上の写真見ると解るが、Irving明らかに腰引けてるな...。Indoor Lacrosseの文化として、一度喧嘩になったら絶対に引いちゃだめだ、というのがあり、彼も渋々やっているが、相手は2メーター近いNLL最強の喧嘩師Paul Dawson。向かい合った時に「あっちゃー今日ついてねえなー」って感じだったんだろう。足下おぼつかないままフラフラと歩いて負傷退場...


続いて、2月19日(土)のBandits戦@Buffalo

今回はAwayでBanditsの本拠地、Upstate NYのBuffaloでの試合。Buffaloは82年のレプリカユニフォームのデザインでの試合。今回はComcast Sportsで放映があったのでDVDあり(梅村亭に送付済み)。先週ホームでボコられていたので、まあ、アウェイじゃ尚の事無理っしょ、とタカを括っていたが、以外にも相手のsloppyなプレーと頻発する不要なファウルによって得られたpower play (EMO)を上手く生かし、また、例の如く神ゴーリーBrendan Millerのセーブで10対9で辛勝。これで4勝4敗の借金ゼロまで戻した。

最後のWesterveltの久々の得点でのダイブショットはシーズンを通してのハイライトになりそうなスーパーショット。これには痺れさせられた。



Pickと2 on 2オフェンス

さて、ただ漫然と見てもつまらんので、毎回テーマを決めて観戦。これまで比較的に個人技とシュートにフォーカスしてきたので、今回のテーマは、pickと2 on 2

これこそ正にNLLの試合を見て最も学ぶべき点、そして観て楽しむべき醍醐味なのかも知れない。インドアの本当の「ならでは」。そして、エクストリームであるが故に、フィールドでに持ち込んだ際に際立ったedge(差別化)になる領域。

今シーズンここまでじっくりNLLの試合を観て、非常によく理解できてきたんだが、突き詰めてしまえば、Box Lacrosseは結局「ほぼ全て2 on 2の組み合わせ」と言ってしまってもいいかも知れない。セットオフェンスとして5人で動いているものの、結局、局面局面では局地的な2 on 2を延々と繰り返しているだけという見方も出来る。

まず、フィールドと明確に違い、1 on 1でダッジで抜くという局面がほとんど生じない、というか、そもそもほとんど抜けないし、抜く必要も無い
  • 走って抜くだけのスペースが無い
  • クリース前にタイトにパックしているため、抜いてもすぐに密集エリアに突入
  • 前回の記事でスクリーンショットの話を書いた時にも散々述べたが、そもそも抜いてフリーになってシュートを打つということの意味がフィールド程重くない(フリーになっても結局ゴーリーと正対して解り易いタイミングで打つと確実にセーブされるし、シュート自体は別に抜かなくても近い距離から打てる)
  • 例外はXで抜いて直接diveするケースか、ブレークで完全にGoalieとの1 on 1を作りに行く時
そんな中でフリーを作るには、基本的にオンボールでもオフボールでも、ピックを絡めざるを得ない

なので、観ていると解るが、ほとんどのオフェンスプレーはピックから始まり、ピックを繰り返すことで作られている
  • そもそもボールを貰うにも
  • ボールを持った状態でシュートを作る上でも
  • 当然クリースでフリーを作るためにも
バスケの2 on 2ピックの動きに非常に似ている、というか、恐らくバスケ以上に突き詰められたレベルにある気すらする。もしかしたらこのピックという技術に関して最も使用頻度が高く、洗練されてるスポーツはバスケではなく、ボックスラクロスなのかも知れないとすら思う。
  • バスケ以上に、ほんの少し相手をずらすだけでシュートが打てる
  • バスケ以上に、ピック時のピッカーによるコンタクト/動きに寛容(静止してなくても、腕を伸ばして押しててもほとんどmoving pickやinterferenceを取られない)
  • バスケ以上に、1 on 1で明確に抜けない
であるが故に、フィールドラクロスをやる上でも、このextremeな環境下で磨ききられたNLLのピックを見る事で学ぶ事は絶対に多いはず、という話。
  • 正に、フットサルやストリートサッカーで徹底して足下の技術を磨いたジダンやロビーニョの話のように
また、DFでも、ピック対応のコミュニケーションと判断が超重要になっている
  • 相手がピックに入ったらpicker/pickee双方のDFがかなり早いタイミングでそれを認識し、眼と声とジェスチャーと「あうんの呼吸」でコミュニケーション
  • そもそもピックに当たる前の段階から、①表からファイトオーバーするのか、②裏からそのまま着くのか、③スイッチするのか、④キャリアにダブルで行って潰しに行くのか、⑤ピッカーへのパスを狙ってダブルで潰しに行くのかの5通りを判断。
  • 本当にこの判断のタイミングが相当早い。場合によってはピックに向かってピッカーが動き出したぐらいから判断して、立った瞬間にはもう実行にうつしちゃってる感じ。
  • この辺は正にフィールドでも参考にしたい状況判断の速さとコミュニケーション。
OFもそれを解って、超早い段階で駆け引きを仕掛けて来る
  • ①そのままシュートまで行くのか、②スイッチさせといて逆に抜くのか、③スイッチさせてpick'n rollで瞬時にパス出すのか、④パスをフェイクして更に自分で行くのか...
  • そして、これもまたDFの対応が超早いため、OFの判断も数歩早い。
つまり、ピックに入るか入らないかの瞬間にO/D双方がいくつもの判断を延髄反射でパパパッとやって決着が着いちゃう感じ

なので、見てると、実際にがっつりピックの形で直立して、そこにドカッとDFがぶつかって、という局面はそんなに生じていない。その数歩前に全部判断が行われちゃってるので。パッと近づいて、DFがひょいっと反応して、OFもそれを見るか見ないかで次の判断をしている、という感じ。で、それをオンボール/オフボールでパッパッパッと延々と、高速で繰り返して行くイメージ

この辺、殿堂入りの42歳John Tavaresやボンバーヘッドの10年目Mark Steenhuisらカナダ人ベテラン陣の率いるBuffalo Banditsはメチャクチャ上手い。

逆に、フィールド出身US代表軍団で構成されるPhiladelphia Wingsはこれが出来ていない。(まあ、カナダ人達のレベルでそれをやれってのはそもそも無理なので、意思を込めて違うシステムのオフェンスを採用してると言えなくも無いが)

その辺が如実に2チームのシステムとしての美しさに現れている。
  • Banditsの得点は、セットオフェンスでもパチッパチッと奇麗に且つ簡単にフリーを作り、効率的に点を取って来る。
  • 一方のPhillyは結構単発でゴリッと抜いて外から無理矢理ロングシュートを打ってがつりセーブかshot clock violation...しゃあないのでトランジッションでDFやMax Seibaldが個人技で気合いで点を取り、Power play (EMO)とNoochの個人技で無理矢理点を取るしか無い...故に安定して点が取れず、特に競った局面で確実に点が取れる感じがしない。戦略的に設計して得点を演出している感じがしない...(まあ、敢えてポジティブに見ると、だから展開が読めなくて常時ドキドキさせられる。)
いずれにせよ、言いたかったのは、この辺の超研ぎ澄まされた、ストリートスマートなピックの技術/感覚をフィールドに持ち込めば、間違い無く相当楽に得点を作り出せるはず、ということ。AT同士の2 on 2、MF同士の2 on 2、AT/MFの2 on 2、クリースでのオフボール同士の2 on 2。それら全てにapplicable(横展開可能)な技術。NCAAを見るより遥かに高いレベルで凝縮された形でそれを見る事が出来る。(NCAAだと必ずしもこの局面が常時見られる訳でもないし、必ずしも全員が名手という訳でもないので)

また、単純にエンターテインメントコンテンツとしても、この辺を見られるようになると、一気に中毒性が増す。

是非、注目して見てみて下さい。

試合のハイライト

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