2012年3月31日土曜日

Mark Millonのスキル講座 vol.04 Outside shot

2011年2月16日水曜日

The Ultimate Guide to Youth Lacrosseからの抜粋、Millonの講座第四弾。Outside shot。NCAAやMLLで決まっている派手なロングシュート。裏側でどういう技術を意識してやっているのかがかいま見れて非常に参考になる。これも他の講座と同様、皆も知っている基本もあるが、一方で、なるほどなと思わされる部分もちらほら。


シュートには大きく3つのタイプがある
  • Inside shooting (ゴール前のシュート)
  • Shots on the run (ランニングシュート。一番使用頻度が高く、一番練習するシュート)
  • "Time and room" (相手が来るまでに時間と間合いがある、つまりlong distanceのアウトサイドショット。アメリカのラクロスではよく"Time and room"、または"Time and space"という呼び方をしている。実は日本でよく言う「スタンディングシュート = Standing Shoot」という言い方はしない。日本のガラパゴス和製ラクロス英語の一つという事か...)
以下、彼のコメント
  • 当然、ゴールからの距離があるため、スピードが非常に重要
  • だが、決してそれだけではなく、闇雲に速く打てば言い訳ではない。他にも重要な事が多くあるので注意が必要。
  • グリップは、両手の間を12-13インチ、つまり30cm間を開ける事。下の手はボトム、上の手は真ん中よりちょい上くらい。(でも彼の実演の映像を見る感じ、さすがに30cmは空けてない気がする…ちと盛ってるな…下から3分の1くらい、20cmってとこかな?)
  • (→この点、僕が日本で教わったのと若干違う。出来るだけ上の手もボトムの近くを持ち、スティックを出来るだけ長く持ちなさいと言われていた記憶がある。確かにそれだとモーションのスピードと精度が落ちるので実戦での実用性ではちと劣る。野球のバッティンググリップの発想に引っ張られていたんだろうか?NCAAやMLLの選手を見ると、確かに上の手は結構真ん中辺りを持って打っている選手も多く、両手でボトムを持っているケースは少ないことに気付く。CanadianのIce hockey出身の選手がアンダーハンドで打つ時にそういう使い方をしているくらい?要は、Pro-conを理解した上での、プレースタイル/状況に応じた使い分けが大事という事なんだろう。)
  • 非常に大事なのは、腕をしっかりextentionして(伸ばして)、手とスティックを出来るだけ身体から離すこと肘が曲がって手が縮こまっている状態は、"alligator hands"(ワニの短くて曲がった前脚)とアメリカのラクロスで一般に呼ばれる典型的なヘタクソの腕。それだとスピード/パワーが出ない。
  • (→アメリカのlong/mid rangeのシュートのインストラクションを聴くと、ほぼ毎回、特にこの点、腕をextentionして体からスティックと手を離すことを物凄く強調している。現役時代に毎年入って来る一年生をコーチする際に、最初は2/3くらいの選手がアリゲーターになっていて、少しずつそれを教えて修正して行ったのが思い出される。それでも最後の最後までアリゲーターで酸っぱいシュートだった選手が数人残っちゃってた気がするが...きちんとこの動画を見せて最初から教えていれば皆extention出来てたかもなと悔やまれる...)
  • 次に大事なのは、大きなhip and shoulder turnゴルフと同じ。体幹を大きく大きくコイルする/捻転する動き。それをする事によってヘッドスピードが生まれる
  • (→ちなみに、この肩のラインの回し、spineの捻転/コイルこそがスピードとパワーを生むというバイオメカニクスは、ゴルフを始めて初めてその本質的な重要さに気付かされた。クラブヘッドのスピードと軌道の安定性にダイレクトに効いて来て、結果として飛距離と方向性というパフォーマンスにダイレクトに大きく影響する。その辺を理解して初めて、Tiger WoodsやAdam Scottの肩の角度、Spineの柔軟性が如何に常人離れしているか、そしてそれが如何に彼らのパフォーマンスの土台になっているかを理解した。また、石川遼選手が肩甲骨の柔軟性を高めるトレーニングとして、両手を腰に当てて、両肘を90°前に突き出す動きを見せていたが、あれも同じく肩のラインの捻転を最大化する上で非常に合理的だと感じた。↓TigerとAdamの腰と肩のラインが生む角度のギャップ。有り得ない。)

  • テイクバックの動きはクレイドルの考え方と同じ。コツは、水平よりも/ボトムよりもヘッドを下に下げない事。ボールがこぼれない様に。
  • そして最後にスナップをバヒュッと効かせること
  • そして、もちろん、下半身をしっかり安定させ、athletic positionで。固く棒立ちで伸ばした状態では決してパワーのあるシュートは打てない。野球のピッチングと同じ。膝を柔らかく使い、重心を低くし、下半身をしっかり使ってパワーを生むこと。
彼のデモンストレーションのシュートのフォームと、「バヒュッ!!」「バヒュッ!!」という音が素晴らしい&カッコいい。こんな感じでボール100個バケツに入れて打ち続けたい。

Mark MillonのTime and room shot (Outside shot) Highlight
これ見ると本当に上から下から横からと、あらゆる形で安定して正確に速くゴールを突き刺しているのが良く解る。

いたる@13期

2012年3月30日金曜日

Mark Millonのスキル講座 vol.03 Change of direction/Quick inside roll

もういっちょ再掲。

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2011年2月14日日曜日

Mark MillonのThe Ultimate Guide to Youth Lacrosseから3個目。とっとと最高峰の選手/指導者の技術指導にバチッとアンカリングしちゃった方がより速く確実に上手くなれるでしょということで。AT/MFのオフェンスで参考になりそうな技術を2つ。結構がっつり内容詰まってるので、消化/咀嚼しながら、練習しながら繰り返し見て貰った方がいいかもです。

ちなみに、Mark Millonの再来とも言われる、UNC 4年のBilly Bitterが非常に忠実にこの辺の動きをやっている。(彼のHighlight動画を載せた「ラクロス浪人」の記事) 間違いなくMillonをロールモデルにし、彼のプレーやDVDを見てイメージを作り、練習して育って来たパターンだろう。


まず、Change of direction

Change of Direction (COD)の動画(リンク)。Millonの代名詞とも言える必殺技。ここでは大きく切り返すRoll dodgeのことを指してそう呼んでいる。

以下、彼のコメントとキャプション。
  • 小さくて速いプレーヤーには非常に向いている。特にでかいDFとのマッチアップに於いて
  • 常時逆の手でスティックをプロテクトすること
  • 外足でしっかり支えて(plantして)鋭く切り返せるだけの下半身の強さが必要
  • ロールとロール後の爆発的スピードが肝
  • DFが予想出来ないタイミングでいきなり切り返すことが大事
  • ロールの際にDFは本能的に身体から遅れてはみ出るスティックを狙ってくる。従って、先にスティックを回して肩と背中で隠してしまうことが大事。
  • もっと言うと、相手DFが振りかぶって大きなチェックを投げてくる場合は、Dの動きをよーく見て、そのタイミングを意識的に見計らい、空振りさせるようにロールする(そうすると相手ロングはズルッとなる)。
  • もっと言うと、慣れてくれば敢えて意識的にスティックを見せて「貰った!」とチェックさせるfakeを仕掛けることも出来る
  • このダッジはシンプルに見えるが、実際には相当数の反復数とフィジカルの強さが必要
  • 最初はゆっくりDF無しで反復練習し、徹底して身体の使い方をmustle memoryとして刷り込みまくり、ある程度出来るようになったらスピードと爆発力を上げて行く、というように、段階的に練習して行け(いきなりDF付きの1 on 1でやっても上手く行かず、技そのものを習得する機会を逸する/完璧なフォームじゃない状態で身に付いてしまうので)
  • 映像の最後に入っている彼自身のCODが鋭過ぎる...文字通りDFがズルッとなっている...ここまで自由自在に使いこなせるようになれば相当DFにとっては怖いだろう。
→動画の最後に入っている彼の試合中のCODのシーンで(一時停止をしながら)是非注目して欲しいのが、軸足の向きと腰の向き。ターンする一歩前の左足の踏み込みが既に後ろの方向を向き始め、切り返しの軸足/蹴り脚の右足は、思いっきりターンの方向、つまりこれまでの進行方向と逆の方向に向けた状態で着地している。そして、次の一歩の左足は完全に180°逆に向かっている。結果として、腰もターンに入る時点で既に逆を向いている。これならターンのキックを蹴った瞬間にバチッ!と鋭角に鋭く切り返しつつ、そのまま弾く様に全速力に入れる。

もう一つの注目点は上体の角度と重心の低さ。前傾を保ちながら、重心を低く維持して下から潜る/抉るように左の肘を引くイメージでグッと抑えつつスッ...とスムーズに回している。これだとバランスを失わない。(逆にダメなのは、のけぞるように軸を後ろに「煽られる」形で回しちゃうパターン。スノボのワンメイクのスピンで言うと、「まくられる」状態。ボディコントロールを失ってしまい、素早く身体を回せない。)

是非ともスティック無しの状況でカラーコーンでも木でも相手にして何度も何度も練習して身体の使い方を刷り込んじゃいたい。最初はゆっくり、一つ一つチェックポイントを確認しながら、そしてだんだん速く。もちろん左右両方。そして、言うまでもなく、ハムとQuad(太もも)とカーフ(ふくらはぎ)、体幹の強さ、股関節の柔らかさ/可動域の広さは大前提。ばっちりウェイトとストレッチで土台を作る必要あり。(でも一度その「物理的な差」を作ってしまえば間違い無く絶対に裏切らない最強の武器になる。相手DFに対してどうあがいても埋める事の出来ないギャップを作れることになる。)

(僕自身も(今は亡き)VHSでMillonの正にこのシーンを100回くらい反復した動画を作り、延々網膜に焼き付け続け、無茶苦茶このターンをイメージしながら駒場のトレ体でスクワットとカーフレイズをやっていた。)

続いて、Quick inside roll
  • シュートと同じく、Great dodgerになるためには、必ず、一つの得意技だけではなく、全ての種類のダッジを高いレベルで使いこなせるようにならなくちゃダメあらゆる種類のダッジを引き出しにストックしておき、試合中に状況と相手に応じて自由に使い分けられるようになっておかなくてはならない。DFから見て予測不能になる必要がある
  • そして、自分がどういうタイプのプレーヤーなのか、その特性をよく理解する必要がある。小さくてスピードのある選手であれば、Power inside rollではなく、自分の強みが生きるquick inside rollの方がより効果的。
  • まず、Xからスタートして、5 & 5 spot(両ポストから横、前に5 yards (4.5メートル)、即ち斜め前6メートルくらいの地点)に向かって行くこと。
  • その際にしっかりスティックプロテクションすること。
  • その際に極めて大事なのは、DFに対して、本気で表に抜いて来ると思わせること。DFは鉄則として絶対に表側に抜かせないよう教育を受けている。従って、それを上手く利用する。
  • それをやるためには、①速いスピードで表側に向かうこと、②前の肩を少し入れて/下げて、表側に抜くモーションを見せること。(→これは非常に痒い所に手が届くティップスだ。ちんたら遅いスピードでやっててもDFは表に抜かれる恐怖を感じないので簡単にロールを防げてしまう。しっかり表を防がないとそのまま表からがっつりシュート決めちゃうよ、というプレッシャー有りきという事。そして、ただ単調に速く走るだけでも足りなくて、ある瞬間に肩をグッと下げて、表に抜かれる恐怖感を瞬間的に作り出さなくちゃいけないということ。この辺の強弱/メリハリの使い方。前の肩を入れる/下げる、という体の使い方/演技力の細やかさ。DFからどう見えるか、自分がDFだったらどう反応するかをよーく研究し尽くしたアドバイスだ。)
  • これも同じ様に、5&5(ゴールポストから横に5ヤード(4.5メートル)、前に5ヤード)、斜め前45度の方向に行った地点)にカラーコーンを置いて、まずはスティック無し、次にDF無しでスティック有り、そしてダミーD付けて、最後は実戦で、と段階を踏んで徹底的にマッスルメモリーを刷り込むのが有効だろう。もちろん左右両方で。
この辺の理論と、意識化の徹底っぷり。非っ常に参考になる。やはり偉大な選手は本当にいろいろ考えてるんだなと。

いたる@13期

2012年3月29日木曜日

NCAA 2012 Game Review vol.14 Maryland @North Carolina

去年の準優勝校Maryland。今年のTV放映は初めてじゃないだろうか?去年#27 Ryan Young, #1 Grant Catalinoを始めとしたAT3人を含む約20人の4-5年生を卒業で失い、今年はメンバー一新して再スタートの年。

迎えるUNCは、これまで再三レポートして来た通り、HC Joe Breschi就任4年目、彼がリクルーティングし始めた学年が1-2年に貯まり始め、試合で主役になり始めている。が、ここまでターンオーバーの多さとDFの未熟さに苦しみ5勝3敗。もう後が無い。

試合は土砂降りのChapel Hillにて。地元なのでTar Heelsを応援しに行こうと試合のチケットは買ったが、さすがにこの雨の中行く気にならず自宅でテレビ観戦。

明らかに昇り調子のMDに対し、ぐずぐずしっぱなしのUNCなので、ぶっちゃけ派手にやられるかな?と思ったが、以外にもUNCが善戦し、予想外にも11-10で勝利。ここから盛り返せるか?いや、でも来週再来週とHopkins、そしてVirginiaと1位、2位との対戦。ま、きついっしょ。

その後残りのHofstraを取れるか、残りのACCトーナメントでそれなりに結果を残して、最後にMichiganを確実に抑えて、Playoff出られるかどうかスレスレ...なんちゅう危険なシーズン...

見て印象に残ったのは、

  • 結局これまでの結果を踏まえ、UNC HC Joe BreschiとOF AC MeyersはATをやっと固めて来た。思った通り、上級生まで含めた約10人のATの中で最も突破力のある2人、1年生2枚、#4 Jimmy Bitter (Billy Bitter弟)とちびっ子#11 Joey Sankey (165 cmくらい)。そして、まだ怪我上がりで本調子じゃない本来のエース#42 Nicky Galasso (So)は諦めて、ここまで安定してQB機能を果たしている頼りになるキャプテン#1 Marcus Holman (Jr)  の3枚。Galassoや転校生のEmala, McBrideは、贅沢に聞こえるが、もう腹を括ってEMOやOFMFのピンポイント使い止まり。個人的に、正しい采配だと感じる。
  • #11 AT Joey Sankey (1年)マジですげえ選手なのかも知れない。まずすばしっこさが尋常じゃなく、かなり確実に相手をbeat出来る(1 on 1で抜ける)。加えて、シュートの技術もかなりある。そしてクラッチ(勝負強い)。でもって今回の試合もそうだが、ほとんどのシュートがダイブしながらだったり、ダイナミックな動きで鋭く点を取っており、単純に見てて超楽しいしカッコイイ...ライドも鬼の様に走って頑張っている。こりゃもしかするとBitter & Sankeyが柱となって闘う今後3年間はUNCかなり面白いチームになるかも。
  • あとUNCはこれまでそんなに目立ってなかった1-2年生のMF達が存在感を示しつつある。やはり明確にBreschiコーチが来てからのリクルーティングクラスの方が素材の質も量も上。スパークするのはやっぱ来年再来年かねー。
  •  Marylandは悪くないが、単純にやはり去年の穴がまだ埋めきれていない印象。ATのダッジ突破力が落ちてるかな。それでも、DFを中心にMarylandらしいでかくて強いアスリートが多く、GoalieのNiko Amatoは相変わらず実力のあるG。今回の試合はイマイチ本領発揮出来てない印象を受けたが。まあ、来年以降っしょ。
  • あと、最後に、UNCが来週のBig City Classic向けにNike/Cascade/STXのバックアップを受けて今回デビューさせた、All Blackユニフォーム&ギア。ぶっちゃけ雨が降ってたため、太陽の下でどう見えるかが良く解らずインパクト感が欠けたが、人によっては結構好みかも。(リンク
  • 最後の乱闘は頂けない...明らかにFrustrationの溜まったMarylandがUNCの選手の頭にクロスチェッキング...した上にグーパン2発。やられた仲間を守る為に3人のUNCの選手が速攻でタックルにいって防いでいる姿に仲間意識の高さを感じさせる。

Highlight

2012年3月28日水曜日

NCAA 2012 Game Review vol.13 Johns Hopkins @Virginia

どこまで期待値を越えれば気が済むんだNCAA Division 1 Lacrosse...また今シーズンベストゲームを更新して来た。やべえよ。コンテンツの充実度が。どんだけ盛り上がらせるんだ?ホント。

レギュラーシーズンに何試合か存在する、「関心する」や「盛り上がる」を越えて、「感動する」ゲーム。今回は正にそれ。Syracuse-Virginia, Hopkins-Syracuse, Hopkins-Princetonを確実に越える試合を届けてくれた。

05-08年のRabil-Peyser時代の隆盛の後、完全に凋落したかに見えたHopkins、10年には負け越してギリギリのプレーオフ進出と文字通り「底」を経験した。そこから一気に当時一年生だったメンバーが成長し、V字回復。今年は完全に開花している。が、Virginia州CharlottesvilleにあるVirginiaのホームKlöckner Stadiumでは実は1998年以来実に13年間勝てていない。何としてでも雪辱を果たしたい所。ここまでVirginiaが無敗の1位、Hopkinsも同じく無敗の2位。この試合に勝った方が1位の座を不動の物にする。決勝の前哨戦、Game of the Seasonとも言われる一戦。会場は前半雨にも関わらずVirginiaの地元ファン、Hopkinsのファンによって埋め尽くされている。

今回の試合のもう一つの注目は、昨年の優勝の立役者でTewaaraton Trophy Winner (MVP)で、MLL 2位指名のUVA #6 AT Steele Stanwickと、その弟Hopkins #42 AT Wells Stanwick (Fr)の兄弟対決。BaltimoreのStanwick家は3人姉妹、3人兄弟全てNCAA Div 1でプレーしていた/いる超エリートラクロス一家。会場には父親と姉の姿も。

プレーのレベルも高い。申し分無し。試合の内容がまたマンガか映画かって言うぐらい面白い。前半Virginiaがバッと突き放すも、その後Hopkinsが追いつき、逆転。その後再びVirginiaが追いつき、逆転。更にHopkinsが最後に同点に持ち込み、OTへ。そこで何度かのドラマの後、最後は大黒柱#31 MF John Ranagan (Jr)が黄金の左を叩き込んで決着。

約2時間、息をつく間もない程白熱した試合。雨で足場が悪いながらも、それに対応した素晴らしいプレーを連発してくれた。

いくつか印象に残った点。つか、多過ぎて書ききれないが、ばーっと思いつく点だけ書き殴り。
  • UVAの#6 AT Steele Stanwick (Sr)と#10 AT Chris Bocklet (Sr)の4年目の揺らぐ事なきコンビ芸がまたしても炸裂。特にSteele。視野やべえ...相手を引きつけて、背負いながら、スティックと腕を体から離して完全に隠しながら、レディポジションにスティックをずーっと構えながらバックステップし、スナッピーなパスを超クイックにクリースのBockletのどボックスへ。相手Gがダブルに飛び出した隙を見逃さずに遠くからスコッと取るなど、相変わらずラクロスIQの高さと落ち着きを発揮しまくり。Steele StanwickのラクロスIQの高さ、効率の高さ、このラクロスというスポーツがどういう構造で動くのかをよーく解った上での本当に賢いプレー。加えて申し分の無い「clutch(クラッチ)」っぷり(勝負所ほど実力を発揮する、ピンチになる程頼りになる)。教科書としては今後のNCAAでも恐らくそんなに出て来ないんじゃないだろうかと言うぐらい参考になる。チームの戦力に対する貢献として、自分個人のパフォーマンスによる「足し算」ではなく、他のメンバー全員の力を何倍にもたかめるという、文字通り「掛け算」の働きをし続けている。VirginiaのHC Dom Starsiaが「彼程の選手をコーチ出来る事は光栄」と言うだけの事はある。
  • Hopkins DF恐るべし。解説者のQuintも何度も「Fundamentally sound(基礎が固い)」との賞賛の言葉を連発。でもその通り。無駄なアグレッシブなチェックはしない、角度を徹底してマネジし、しっかりクリース前をパックして、お互いに叫び合いながらコミュニケーションを取り、常にHot, Two, Threeを確認。Swivel(スウィヴル)=首振りも徹底。「fake slide(ホットがスライドに行くと見せかけて行かない)」を効率的に使っている。
  • 双方Goalieが素晴らしいセーブを連発。Gの選手は是非見る価値あり。特にHopkinsの#33 G Pierce Bassett (Jr)は相変わらず鬼クラッチ(大事な場面で特に力を発揮)。
  • Hopkins MFのシュート力相変わらずえげつねえ。特に今回は#27 MF Rob Guida (So)の、小さい体に似合わぬ、鋭く正確なTime & Room(日本の和製ラクロス英語で言う所のスタンディングシュート)が目立った。
  • 今回の試合の全体の傾向として、やはりシュートはover handかquarterでしっかり上から縦に振り抜く、という教科書のようなshot on the run(ランニングシュート)とtime and room(日本の和製ラクロス英語で言う所のスタンディングシュート)が多い。しっかりスティックを体から話して、体のトルク(捻り)を作って、スティックを体で隠して、高低差のあるコースの読めないシュートでしっかり決めると。「シュートは上から」を比較的徹底して教える事で有名な2校。それが如実に見て取れて面白かった。(逆にunderhandで下狙い、side armで上、など、高低差がなく耳がキーンとならない(byフット後藤さん)/コースの読み易いシュートは比較的簡単にセーブされる事が多く、解説者のQuintも再三それを指摘していた。)
いやー、引くぐらいお腹いっぱいになった...伝わりましたかね?この感動と興奮...

これでHopkinsは遂に何年振りかも解らない、文句無しのレギュラーシーズン1位を奪還。Virginiaは今回の悔しさを胸に残りのシーズンを戦い、プレーオフでの復讐に懸けるはず。一昨年、去年と苦しいシーズンを戦い、Final 4をずっと経験してきたVirginiaの方に経験とメンタルの面で分があるという見方も出来る。うおおお今から5月のプレーオフ、BostonでのFinal Fourが超楽しみになって来た...

Highlight

2012年3月27日火曜日

Mark Millonのスキル講座 vol.02 Split dodge

もういっちょ再掲。

Millon DVDから第2弾。Split dodge講座

これも非常に痒い所に手が届くコメントが多く、学びがあったので紹介。最初に教えられるど基本ではカバーされない、Why?や、より具体的で実戦的なHow?が多く含まれている。この人は本当に右脳による直感や感性だけじゃなく、きちんとそれを左脳を使って理屈で考えて形式知化/フレームワーク化している。よって、名選手でありながら名コーチたり得ているという事なんだろう。

以下、彼のコメントとキャプション。(いくつかは1年生が教わる基礎だが、個人的に特に実戦的で深い所を抉ってると感じたのが太字部分。)
  • Split dodgeは自分の最も好きなダッジであり、多くのトップオフェンス選手の得意技でもある
  • 何故かと言うと、このダッジは相手DFをvulnerableな(脆い)状況に置く事が出来るから。相手が自分の動きにreactせざるを得ないため、こちらが主導権を握れるから
  • ブルダッジと共に、スプリットダッジは、所謂North-south dodge(南北、即ち縦に一直線に抜くダッジ)と言われる。East-west dodge、即ち横の動きで相手を交わそうとするロールダッジ/CODダッジと異なり。
  • North-southは肩のラインがゴールに正対した状態で直線的に抜いてくるため、DFにとっては極めてやりにくい。バックステップで後ろに動きながら対応しなくては行けないので。受け身にならざるを得ない。一方のEast-westはサイドステップで防げるし、肩のラインがゴールに向かっていないため、DFにとってはより止め易い
  • →個人的に、Xでプレーする事が多くなり、Roll-dodgeによるChange of directionが出来るようになり、それに依存し過ぎてついつい直線的にゴールに向かう動きが少なくなり、結果抜けなくなるというジレンマを抱えた時期があった事を思い出した。にょろにょろとロールを捏ねくり回すだけで、抜けないというあの状況。DFとしては全然怖くない。やはり王道は直線的にゴールへ向かう動き。
  • コツは、ゴールからある程度距離があり、走るだけのスペースがある場所でやること
  • 次に、DFとの間合い(「DFとの」スペース)を十分に持つ事。一つのやり方は単純にボールを持った状態で外に動いて間合いを作る事。もう一つのやり方は、ボールを貰う時にV-cut等で外にポップアウトして貰うことでDFとの距離を自分で作ること。
  • ボールを貰ったら即ゴールに正対し、相手に準備の余地を与えずに攻め始めること。
  • スティックのどこを持つかが見落とされがちな重要なポイント。上の手はヘッドの近く、下の手はスティックの真ん中からちょい下を持ち、かなり短くスティックを持つこと(映像を見ると、かなりがっつりエンドを余らせていることが解る)。それにより持ち替えのスピードとコントロールが強化される。ボトムを持って、スティックを長く持ってしまうと、持ち替えが遅く、難しくなり、無駄にボールを落としてしまったり、チェックを受け易くなってしまう
  • →個人的に、本能的に、また実戦からの経験則として自然とこうなったが、下級生時代にこれを「explicitに」「最初から」「正しいやり方」として教えて貰った記憶は無い。この辺の形式知の集積が大事なんだろう。
  • ダッジはトップスピードで、出来るだけ直線的に、直接ゴールへ向かう方向で掛ける。
  • 間合いが超大事。特にLong stick相手の時。近いと持ち替え時にポークチェックが当たるので。イメージ相手から「スティック2本分」の距離でダッジすること。(この間合いは結構長い。Long stick相手だと、1.8m x 2 = 3.6m。特にShorty相手にやってきたMFの選手にとっては感覚的にかなり長い距離に感じるはず。)
  • 持ち替え/ダッジをする前に、一度肩とスティックのヘッドを逆に振る事で小さなフェイクを入れ、相手を逆に一回振る。
  • ダッジの際は出来るだけ手とスティックを身体から離さずに、近い位置にキープする
  • 持ち替えた直後は逆の手でチェックに対してスティックをプロテクト(彼の場合持ち替え後は一瞬片手で持つスタイル。すぐに両手になっている。)
  • ダッジ後はexplosionでトップスピードに乗る。
  • その際に必ず顔を上げ、視野を確保し(スライド、フィールド、ゴーリーを見て)、即座にパスを出せる/シュート出来るようにしておく事

しかし、これを見ると解るが、Millonの場合本当にダッジを掛ける前から結構なスピードでゴールに向かって行き、かなり手前からダッジを開始し、且つほとんど角度の無い鈍角でほぼ直線的にゴールに向かって行き、その後もトップスピードで走りきっている。極めてシンプル。所謂「相手に触らせない」ダッジ。確かに、単純に理屈で考えると、これだとDFは正面を向いて 走るOffenderに対し、バックステップ/クロスステップで競争しなくてはいけなくなる訳で、よっぽどDの方が身体能力とサイズで勝ってない限り、ほぼ間違い無くOFが勝つということになる。

やはりこれも練習方法としては、①まずはスティック無しで身体の使い方、特に下半身/体幹の使い方/マッスルメモリーを刷り込み(カラーコーン20本くらい並べて連続でやっても効果的)、②スティックを持ってボール無し、③別途持ち替えは死ぬ程練習、④組み合わせてボールを持って、⑤DFを付けて、といった具合に段階を踏んで練習して行く感じだろうか。

ちなみに僕がAustraliaのチームに帯同した時に練習方法を教えてくれた現Australia代表のMFの選手は、公園の林で木に向かってランダムにいろんなダッジをしまくれと教えてくれた(記事)。(で、駒場公園の林でそれを2年間延々やりまくって、確かにダッジは相っ当comfortableになった。)

2012年3月26日月曜日

Mark Millonのスキル講座 vol.01 ゴール前のシュート

去年の記事再掲。

2011年2月7日月曜日

ここ数週間で、Mark MillonのDVD "The Ultimate Guide to Youth Lacrosse"からの抜粋という形で、Millonのスキル講座の動画がIL Videosにアップされている。ど初歩を一歩越えた、痒い所に手が届く内容の物が多いと感じたので、いくつかピックアップして紹介。非常に理詰めで細やか。チームで数本買って、皆で徹底的に擦り切れる程見倒して分解/咀嚼しきってみてもいいかも。特に下級生の初期の頃から見れば、長い目で見ればチーム全体の力を数段底上げしてくれるインパクトを持ち得るかも。

ちなみにMillonは、90年代後半から2000年代に掛けてUSとMLLを引っ張っていたスーパースター(Wiki)。98年のWLCではカナダとの決勝戦で、同点で迎えた終了間際、裏からのアイソレーションで電光石火のダッジからランニングシュートをぶち込みUSを優勝に導いた映像が未だに瞼に焼き付いている。身長が5-9 (175cm)とNCAA/MLLレベルでは小人だが、突出したスピード/爆発力と、極めて高いラクロスIQ、シュート力で一時代を築いた。

Mark MillonのHighlight


彼が出しているオフェンス講座DVD「Offensive Wizardry(オフェンスの魔術)」も選手やコーチから高い評価を受けており、ラクロス界の中では異例のメガヒット。Mark Millon Lacrosseキャンプも論理的で細やかな始動が噂を呼び、最も人気のあるキャンプの一つになっているっぽい。(Denver Outlaws/Philadelphia Wingsで10 USAのDrew Westerveltも手伝っているとインタビューで発言していた。)

(自分の話ばっかで恐縮だが、僕自身、現役時代は(同じ左利きで身長も近く、目指したいプレースタイルだったというのもあり)彼の映像を文字通りすり切れる程見続け、授業そっちのけで黙々と完コピ目指してダッジからシュートまでを真似し続けた。)

今回は一番面白いと思った、Inside shooting(ゴール前のシュート)の講座リンク
以下、彼のコメントとキャプションからポイントを抜粋。
そもそもシュートの種類には大きく3つある
  • アウトサイドからのスタンディングシュート
  • ランニングシュート(shooting on the run)
  • インサイドシュート

インサイドシュートの技術は、(同じシュートでありながらも)アウトサイドとは全く別の物として捉えるべき
  • アウトサイドではスピードを生むために手/スティックを出来るだけ身体から離すが、インサイドではスピードは不要な上、コントロールとプロテクションが重要なので、スティックと手を身体に近づける
  • 同様に、スティックを持つ長さも明確に変える。スピード重視で長く持つアウトサイドと打って変わって、スティックをchoke upして(短く持って)、両手の位置を近づける
  • その際に、下の手はボトム(butt end)を持たない。ちょっと上を持つ。そっちの方が圧倒的にスティックのコントロールが上がるので。ボトムをプロテクションしなくていいのか?と言う人がいるが、ゴール前でボトムをピンポイントでチェックされることはないので関係無し。
  • ボールそもののスピードは不要なので、アウトサイドのように上半身の回旋は不要。パワーは手首を柔らかく使い、スナップでスパンと打つ。上の手のpushと下の手のpullでスピードを出せ。
→個人的に、ここまでexplicitに別の種類のシュートとして完全に使い分ける事、エンドを持たないこと、スナップだけで打つ事を教えられた記憶は無かったので、非常に合理的だと感じ、腹落ちした。多くの選手が結果として本能的に/経験則でそうやっている気もするが、こうやって元トップ選手から正しい技術として「カチッと」教えられることで上達も速くなり、安定する。(自分の場合、ヘッドの振り幅を大きくしようと/キャッチのrangeを広くしようと、敢えてボトムを持ち、スティックを長く持ってしまい、返ってコントロールとスピードが落ちるという間違いを犯していたことも多々あった気がする...

ボールのplacement(どこに打つか)が大事。
  • 打っては「いけない所」をまず理解することが大事。原則、スティックサイドの上は低確率。(自分とゴールの間でバウンドさせる)バウンドショットも避ける。バウンドのスペースが無く、単純にゴーリーに反応の時間を与えるだけなので。(もちろんゴールライン付近や、ゴールラインを越えてネットに当たる前にバウンドするのはオッケー)
  • 下の奥のパイプの内側、または足下が最も高確率
  • ただ、忘れてはいけないのは、「絶対だめ」や「絶対ここに打つべき」がある訳ではない。大事なのはあくまで確率論。
  • 確かに、Goalieとの至近距離でセーブされてしまっているケース、goalie highlightに使われる映像は、多くの場合上に打ってgoalie stickをバチッと合わせられてしまっているケースが多いような気がする。フットセーブも無くはないが、やはり確率は圧倒的に落ちるはず。
練習方法
  • クリースのトップにパイロンを置き、毎回カットしてやる。実戦を想定して。試合中のゴール前のシュートは実際ほとんど脚を動かしながらなので。
  • 必ず両手をやる。交互に。
  • シュートは極力Downward trajectory(下向き軌道)で。
  • 完璧にcomfortableに打てるようになるまで延々反復し続ける。
個々の技術指導や練習法もさることながら、この辺の理論化/意識化の徹底度合いが非常に参考になる。

いたる@13期

2012年3月25日日曜日

オフェンス効率:ポゼッション当たりの得点率

最近忙しい上に、NCAAバスケのトーナメントも大詰めになっており、加えてラクロスも各カンファレンスの試合が始まりいよいよリーグ戦が本格的に熱くなって来ている事もあり、記事を書くのが追いつかない...時間との戦いの様相を呈している。

一応書きたい事はカバーしたいので、若干クオリティを犠牲にしてでも、一個一個が短くなってしまっても、ガンガン書きたい事を書いて行こうと思う。

最近のILの記事で一個気になったのが、「Introduction to Pace Statistics: The Most Efficient Offenses in the Nation」と言う記事。オフェンス関連のスタッツ(Stats: Statistics = 統計数字)を分解/分析してラクロスを考察する系の記事。

アメリカのStats文化

個人的に、昔から数字やファクトに基づいて、物事をより科学的に、ロジカルに観察、分析、考察するのが好きだった事、及び大学卒業直後から長年戦略コンサルティングの世界でAssociate/Consultant/Project Leaderとして科学的アプローチに基づいて経営戦略/経営管理に携わって来た事もあってか、スポーツや競争に於けるメカニズムの解明、統計による分解に対して異様に興味のアンテナが立っている。

アメリカに来て感じたのは、ことスポーツに関してはその手のscientific approach/statistical approachに関しては恐ろしく進んでいる/突き詰められていると言う事。Money Ball等でも解る通り。特にESPNを始めとしたスポーツ専門メディアのスタッツの分解/分析っぷりはこっちも感動してしまう程。それとは別に個人コンサルタント的にあらゆる事象を新しい角度から分析してオンラインで公開している人もおり、この手の話が好きな人にとってはたまらない。

(原因としては、①一つにはスポーツそのものの規模(選手/関係者/ファン/そして市場)が圧倒的に大きい事、②もう一つはアメリカのカルチャー/習慣として、新しい物/考え方/物事のフロントラインを開拓して行く事が大好きで大得意と言う事、③専門のスポーツチャネルとスポーツメディアの存在。④そして、ラスベガスを介した、全てのスポーツに対する大きなギャンブル市場の存在。そこで多くの賢くストリートスマートな人々が日々統計分析をしていかに周囲を出し抜いて勝敗を決する要素を見つけるかに躍起になっている点)

さて、そんな環境の中、当然ラクロスに関しても日本の平均値以上にあらゆる数字/統計をストックし、分析し、示唆を取り出して、打ち手に結びつける、と言う事を各チームのコーチ陣も、メディアもやっているわけだが、その一つの例で、「あ、示唆あるかもな」と感じた話。

ポゼッション当たりの得点率

記事に載っていたのは、「ポゼッション当たりの得点率」。各試合の得点数を分子に、総得点数を分母に取って出したパーセンテージ。

通常、あるチームのスピードやオフェンス力を見るには、単純に一試合当りの平均得点数を見る事が多いが、それだと、速いペースのRun & Gun主体の攻めか、じっくりセットオフェンスで責める遅いペースの攻めか、等のチームのペースによるバイアスが掛かってしまうため、必ずしもオフェンスの「効率」を現す指標には使えない。

この数字を見れば、如何にターンオーバーせずに限られたポゼッションの機会を確実に得点に結びつけられているかが解り、正にオフェンスの「効率」、「如何に効果的に攻められているか」が解るという話。

(ちなみに、シュート成功率とも違う。シュート成功率が低くてもチェイスを取り続ければポゼッションは支配し続けられる訳で。ただ直感的にシュート成功率とこの数字は結構相関する気もする。シュート成功率が低いと言う事はセーブされる、チェイスを取られる可能性も高くなるはずなので。)

そこで出て来たのが以下の数字。今シーズン平均。

ちなみに、60分を通してのポゼッション数は、NCAA Division 1全体の平均で、50回。最も多いDetroit Mercyが70回と言う事らしい。直感的にDMは強豪校じゃないので、ターンオーバーも多く、加えてRun & Gunでミスを顧みずガンガン攻めている、一方でDFが固くなく結構失点もしちゃってる、というパターンじゃないかと想像する。(これ、日本だとどうなんだろうか?直感的にミスがより多いため増えるファクターはあるが、一方でペースがNCAA程速く無いとすると下げるファクターとして働くことになる。)

で、2012年のこれまでの実績に基づいた上位校は、

1. Denver (43.4%)
 2. Bucknell (43.4%)
3. Virginia (41.1%)
4. Maryland (40.5%)
5. Cornell (39.6%)
6. Villanova (39.5%)
7. Duke (39.4%)
8. UMass (38.8%)
9. Hartford (38.0%)
10. Loyola (37.1%)

という事らしい。パッと見て感じるのは、

  • 全体の傾向としては、やはり順位の高いチームほどこの数字が高い傾向がある。基本的にはより高い確率で得点出来ていると言う事なので。
  • 明らかに突出してTurn overが多いUNCは相当低いはずで、当然10位に入っていない。今年はSyracuseが10位以内に入っていないのも面白い。確かに若手の多い今年はまだオフェンスがぎくしゃくしており、シュート成功率が低く、ターンオーバーも多いように見える。(それでも最後は力で捩じ伏せて何となく勝っているが。)
  • Denverが1位というのは納得。しかし、43%ってのは結構考えたら凄い数字だ。10回ポゼッションしたら4回得点するってことでしょ?どんだけ効率的なんだっちゅう話だ。#22 AT Mark Matthewsらベテラン実力者を軸に、ターンオーバーが少なく、ある程度じっくり時間を掛けて、無理せず確実に得点出来る機会を待って確実に得点していると言うことだろう。加えてMatthewsらの高いスティックスキルとオフェンスIQもあるはず。そしてこれこそ正に知将Bill Tierneyコーチの狙いでもあるはず。(一方で、DenverはDFが苦しんでいるため、実際にこのオフェンス効率の高さが必ずしも勝率/順位に繋がっていない。)
  • Virginia, Marylandあたりが上位に入ってるのも納得。
  • UMass, Loyolaなど、例年に比べて明らかに強く、上位にいる(3-5位)2チームは、明確にこの数字が上位校並みに高い事が解る。
などなど。考え始めたら何時間でもいろいろ考えたり議論出来る気がする...

2012年3月23日金曜日

NCAA 2012 Game Review vol.12 Syracuse @Johns Hopkins

この試合を見ての感想は、「Hopkinsこれマジだぜ...優勝相当現実的な着地点として見えて来てるな...」という感じ。

先日のVirginia対Syracuseの時にも、「やっぱりこの2チームが強くなくちゃNCAAは面白くない」と書いたが、それ以上に「この2チームがあってこそ」なのは、やはりSyracuse vs Hopkinsだろう。1950年代以降長くNCAAラクロスを引っ張って来た2チーム。優勝回数も、Final 4出場回数もずば抜けて多い2チーム。

スタイル的にも、南はBaltimoreの手堅い規律のDF/OFとMFの走力に物を言わせた軍隊型ラクロスの典型Hopkins対、北はNY州北部のインドアに根ざした自由奔放でクリエイティブなAT主導のラクロスを繰り広げて来たSyracuseと対極にある。

07年のPaul Rabil + Stephen Peyserの黄金時代/優勝時代に勝って以来、5年間なんとHopkinsが5連敗中。数年の低迷を経て、遂に形になって来たHopkinsは同じく数年に渡っての連続敗戦記録を持っていたPrincetonに数年振りに復讐。今回も同じく汚名返上なるかが注目された。

結果は、思った以上にHopkinsの圧勝。11-7で現時点での力の差を見せつけた。

記憶に残っている点をばーっと吐き出すと、
  • まあ、レベルの高いラクロスの試合だ。11年に多くのエリート選手を卒業で失ったNCAA Division 1。今年はレベル低下が危惧されたが、全くの杞憂だったと先日のVirginia-Syracuse、そして今回の試合を見て確信した。やはりトップチーム同士の戦いは絶対に裏切らない。間違い無く学ぶ事は多い。繰り返し映像を見て真似したい。
  • Hopkinsまじで強い。素晴らしい。感動した。一昨年は1年間苦しみに苦しみ、去年もブレークスルー一歩手前で力尽き、遂に今年、やりたかったことを体現し、大きな大きな花を咲かせつつある。開幕から比べてもグイグイラクロスの完成度が上がっている。選手の皆さんには是非見て欲しいと素直に感じるチーム。OFの完成度、個々人のサイズと磨き抜かれた身体能力、切り替えやクリア/ライドでの統制と効率、DFのプレッシャーと穴の無さ、Gのセーブ力とDF統制力。全てに於いて極めて完成度の高い、強くていいチームだ。ここ数年見て来た全てのNCAA上位校の中で、最も基本に忠実で、ロジカルで、統制の取れた教科書のような、王道中の王道のチームだと感じる。
  • 終止試合を優位に進めたHopkins、特にMF 1st setの3人、#31 Ranagan, #9 Greeley, #27 Guidaの3人が芸術の域に入って来ている。特にRanaganとGreeleyは「どうやって止めろっちゅうねん」という空虚なDFの顔が思い浮かぶ。馬というか牛というか虎というか、獣だよこれ。しかもシュートの精度も明らかに上がってるし、左しかなかったRanaganもPaul Rabil先輩のアドバイスを忠実に実行し、右に鋭く抜いて、左と遜色無いシュートをぶち込んでくるようになっている。繰り返すようだが、極めてシンプル。だが、シンプルであるが故に止められない。是非映像で注目してみて下さい。ホントRabil-Peyser時代の再来。しかも3人ともまだ3年、3年、2年なので、まだ来年がある。そして、Ranaganに関しては、どう考えても次の2014年Team USAに入って来る気がしてならない。彼とPaul RabilとMax Seibaldの1stとか鼻血出して卒倒しそうになんわ。マンガの世界だろ。
  • あとDF。やばい。でかい。強い。手堅い。穴が見あたらん。これも間違い無くDFの皆が見て学べる点が多い。基本に忠実。個人とチームでしっかり守っている。こんなんATとしては絶対やりたくない。抹殺されんわ。と、表面だけ見ても十分に威圧感ありでカッコいいし楽しめるのだが、一つ是非注目したいのが、その異様な程のコミュニケーション取れてるっぷり。常にどういうDFやるのか、誰がHotで、2で3で、ピック後の対応どうして、というのをガンガン会話している。文字通り、会議室でのスピード感溢れる議論の様に、会話し、そして意思疎通出来ている。DF全体が一つの生物として完全に統率されつつある。(寄生獣で言う所の後藤さんみたいな。)これが5月のトーナメントに向けて一体どうなっていくんだ?
  • 最後にやはり触れねばならぬのはG Pierce Bassett (Jr)。ラクロス後進地域アリゾナ州出身。2年前に一年生でケージを守った際にはまだまだ気持ち先行で頼りなかったが、去年一年掛けて立派な守護神、そしてリーダーへと成長し、今年はもう文句無くこのチームの大黒柱。Gが固い限り、このチームは間違い無く安定する。Gの選手の方は是非彼の映像を徹底マークで追い続けたい。
  • Syracuseはやはり、才能は間違い無くあるが、まだ経験不足感がある。あとダッジで確実に抜けるメンツがまだいない。加えてGallawayの後釜のGがやはりまだ弱い。プレーオフまでにどこまで立ち上げて行けるか。
  • ここまでHopkins何試合か、Virginia何試合か見て感じるが、個人的には、ほぼ互角か、Hopkinsの方が上かもしれないな、という気もして来た。いずれにせよ現時点ではこの2チームが明らかに頭一つ抜けている。特にCornellのPannellが怪我で復帰するまでは。決勝をこの2チームで、ってシナリオ相当有り得る。そんな2チームが来週末激突。文字通りGame of the Season。決勝の結果を占う前哨戦という事になるのかもしれない。
  • あと、これだけ手堅いチームに成長し、ゲームも完全に支配してるにも関わらず、JHU HCのCoach Petroのキレっぷりがえげつねえ...またしても選手を怒鳴り散らしている。Obsessiveなまでに妥協を許さず、更に上、完璧を、理想を求めるこの姿勢。もうここまで来るとカッコいいでしょもはや。

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2012年3月22日木曜日

NCAA 2012 Game Review vol.11 North Carolina @Duke

Princetonに勝って5勝2敗と連敗を食い止めたUNC。今週は地元ライバル対決。Dukeと。UNCのあるChapel HillからDukeのあるDurhamは同じNorth Carolina州Triangleエリアにあり、車で15分。バスケでは共に超名門で、毎年2-3回の対面は全米を巻き込んで盛り上がる名物ライバル対決。

地元なので見に行こうかなとも思ったが、時間が早かったので録画してTVで観戦。

ラクロスでは、ここ7-8年の過去14試合中13試合でDukeが勝利。UNCが数年前までそこまで強くなかった事に加え、どうも相性が悪いっぽい。

ここまでDukeは4勝3敗、UNCは5勝2敗と、双方明らかにぱっとしない成績。Dukeも例年3月に1試合くらい落とすが、さすがに3敗というのはここ数年聞かない。明らかにエンジンが掛かっていない。双方、今後更に強豪と当たって行くため、これ以上負けると結構プレーオフ進出に黄色信号が点灯してくるという状況。負けられない一戦。

結果は13-11。前半9-3でDuke圧勝ムードで折り返すも、後半UNCのいつもの緊急追い上げモードに火が付き一気に追いつく、が、一歩及ばず力つきたパターン。(スコアボード

もうこれ以上UNCに対してネガティブな事は申し上げたく無いが、どうしても思い入れのある地元ファンとして考えさせられる点が多い...いくつか印象に残ったのは、

  • Duke、ここまで調子が出てなかったようだが、さすがに尻に火が付いたのか、単純にやっと噛み合い出したのか、全然悪くない。特にTurri, Rotanz, TripuckaのMF 1st stringが身体能力も高いし、走れるし、抜けてシュートも決められて、かなり強力。ATも下級生中心ながら#31 Jordan Wolf (So)、Christian Walshなど、手強い。何で今まで負けてた...?こっからガンガン巻き返してプレーオフでのブレークも全然有り得る。大体去年もほぼ同じメンツでFinal 4まで行ってる訳だし。
  • UNC...まじで...頼むよ...ファンをこれ以上がっかりさせないでくれ...何がやりたいのかよくわかんなくなっちゃってんよ...NCAA Division 1でここまで混乱してるチームそんなに見た事無いぞ...?これまでの試合でも再三書いて来たが、①OFメンツがいまだ固定されてない。未だメンバー入れ替えまくり。②結果、chemistry(円滑な連携、相性)が全く見えない、③それもあって、あと単純に練習の仕方が悪いのか、ターンオーバーが鬼の様に多い。
  • Mr. Positiveとも言われるHC Joe Breschiコーチの敗戦の弁が、何と言うか、ファンとしてはちと「?」を感じざるを得ない。「いやー、練習では凄いシャープでミスしないんだけどねー。」って...。いやいやいや。シーズン8試合目で未だにメンツを色々いじくって、スタメン大幅に変えて、試してる状況ってのも気持ち悪いし、ご本人DF出身なんだし、もうちょいDFしっかり立て直したい...掲示板等では少しずつ「おいおいBreschiコーチ大丈夫か?変えた方がいいんじゃねえのか?」というコメントが出始めている。一昨年去年と全米トップクラスのリクルーティングクラスを集め、今年はPrincetonとGeorgetownからエースATを転校で獲得し、タレント面では明らかに他チームのコーチが羨むような状況でありながらこの成績...批判されるのもやむなし。
  • 毎試合のパターンだが、前半丁寧にやろうと考え過ぎて、シュート行く前にボール失いまくり、後半「やべえこのままじゃ負ける」と火が付いてからやっと本来の良さが出てアグレッシブにゴールを奪い始め、相手とタイミングによってはそれで追いついて逆転し、今回のDuke戦みたいに相手が強くて、火が付くタイミングが遅いと、逆転前に力尽きると言う...Lehigh戦での敗戦と全く同じパターンだよ...
  • ただ一方で、火が付いてからの攻撃、主に個人技による得点は、確かに目を見張る物がある。一人でシュートまで持って行って決められる選手が多い。今回も後半に掛けて「うおっ!!」と目を覚まされるゴールを何度か見せてくれた。つか、だったら最初からそれやりゃいいじゃんと毎試合感じる...
  • 今回、#4 AT Jimmy Bitter (1年)が、兄Billy Bitterの生き写しかと見紛わんばかりの鋭いスピードと、180°の鋭角ダッジでDFを置き去りにする姿が何回か見られた。その後のシュート等まだ改善の余地は感じるが、明らかに持っているポテンシャルが違う。これは来年以降強力な武器になってくるなと感じる。
  • 加えて、#11 Joey Sankey (1年、身長164cm)が、これまた巧さと速さを見せた。シュートも尋常じゃ無く巧え。1年生だろ...?文字通り小さな巨人。ぶ「NCAAでやるには小さすぎないか?」と言われていたし、実際にコートの中に立つと、平均身長180-185cmの巨人達の中に入るとまじで小人のように見える。が、この存在感。ぶっちゃけ、今のATの中で一番頼れるのはBitterとSankeyの二人の小さい1年生じゃねえか?って事が明らかになりつつある。この二人と怪我から少しずつ復帰しつつある#42 Nicky Galasso (2年)の3枚で固定した方がいいんじゃねえか?という気もしてくる。せっかくいるんだから3-4年生ATも使っとたいと言う気持ちも解らなくも無いが、どっかで腹括って非情な決断をしないとダメな気がする...。このままだと中途半端で終わっちまうぜと。
  • まあただ、いずれにせよ、UNCに対しては地元といういこともあり、ちと開幕前、及び開幕直後の4連勝でちと期待値高めになってしまってたが、段々いろんな問題が見えて来た。一方で今後に向けての光が見えたのも事実なので、今後はちと期待値下げて、時間軸長めに設定して、むしろ来年再来年に期待したい...

Highlight


2012年3月21日水曜日

最短最速の上達法:"wall ball" vol.04

超久しぶりにWall Ball関連の記事。去年の時点で漏れちゃってたYoutubeインストラクション動画。

Duke '10でNotre Dameを破り悲願の初優勝を成し遂げ、直後にTeam USA唯一の大学生メンバーとして世界制覇、その後もMLL Rochester Rattlersの揺らぐ事なき大黒柱として2シーズンを戦い、去年はPaul RabilとMVPの座を掛けて最後まで争っていた、#22 AT Ned Crotty。特にシーズン後半、ACCトーナメントからNCAAトーナメント、特に準決勝でのVirginiaとの熱戦での活躍が記憶に残る。大学生であれ程までの完成度に到達する選手もそうそういないだろう。文字通り現時点での世界最高のATの一人。

以前Quintによるインタビューでも、「何でそんなにフィードが巧い?」と聞かれて「常に脚を動かし続ける事。パスが上手く行かない時はほとんどの場合スティックやハンドワークじゃなくて、脚が動いてない事が原因」「常にヘッドアップして視野を取り続ける事」等非常にpracticalなアドバイスをしてくれていた。

Boston Cannons & Team USAを長く引っ張って来た元PrincetonのAT Ryan Boyleが率いる、「世界最高峰の選手が、自分たちのやっている事を教える」という触れ込みで、ロジカルな指導に定評のあるラクロススクール、Trilogy Lacrosseに加入して後進の指導に当たっている。

そんな彼のWall Ballインストラクション動画。かなりしっかり分解して教えてくれている。(全然関係無いが、喋り方と声がUFCのMichael Bispingに超似ている...何となくBritish寄りの訛りも微かに聞こえなくもないか?)


  • 自分がスティックスキルを維持し、スティックをシャープにメンテするために一年中を通してやっているwall ballについて紹介する。
  • ガキの頃から始めて、高校、大学、プロになった今ですら毎日やっている
  • ぶっちゃけ、このwall ball以上の練習方法は無いと思う。
  • しっかり時間を使って、右手、左手両方で、壁の一カ所のスポットをターゲットにして、出来る限り多くの球数を投げ続ける事。
  • キーは、試合中のスローイングと同じスタンス/グリップを維持する事。スタンスと肩のラインを壁に対して正対させるのではなく、横向きに構え、グリップは実戦と同じく、シャフトの下を持って少し長めに持つ。
  • しっかりスナップを使って投げる。(ちなみにこの時のテイクバックでヘッドが水平よりも下まで落ちている、つまりボトム/エンドが水平よりも上を向いている点にも注目)
  • ここで大事なのは、ただ漫然と投げるのではなく、壁の一点のスポットをターゲットにして、そこを狙って当て続ける事で、試合で必要となるaccuracy(正確さ)を磨く事。で、出来るだけ多くの球数を投げる。
  • もう一つ忘れずにやっておきたいドリルは、片手だけで投げる事。スローイングの全体の動きを習得する上で有効な事に加え、スナップ/リストを鍛える上でも有効。これも同じ。左右両方。スポットを指定して、出来るだけ多くの球数を投げる。(見た感じシャフトの真ん中よりちょい下を持って、スナップを使っている。ヘッドが両手の時と近い角度まで落ちており、ある程度ボトムが水平より上を向くくらいまで大胆にシャフトを倒している。)
  • もちろん、Strong hand(利き手)の方がWeak hand(非利き手)よりもスムーズに出来る筈。でも、辛抱強く非利き手も繰り返し続ければ、必ず利き手と同じように出来るようになる。
  • もう一つ練習しておきたいのは、必ずしも試合でしょっちゅう使う訳では無いが、やはりBTB (Behind the Back)。しっかり肩を回す習慣が強化される事で通常のスローにも役に立つし、スティックに慣れ、stick skill(日本の和製ラクロス英語で言う所の「クロスワーク」ですな)全般を磨く上で有効。
  • (実演を見ていて感じるのは、肩のライン、顔のラインを結構横に向けており、結構壁に対して背中を向けて投げている点、通常のスロート同じく、テークバックでヘッドがかなり低い角度まで落ちている点、肘関節を伸展する(上腕三頭筋/トライセプスを使って腕を伸ばす)事で投げる通常のスローと違い、こちらはupper handの肘関節を曲げる(上腕二頭筋/バイセプスを収縮させる)動きで投げている点。まあ、反復練習すれば慣れて自然とベストな/最適解な動きが見つかるとは思うが。)


2012年3月19日月曜日

Warrior新CM Paul Rabil

先日のMaverikのオサレCMに続いて、今年のNCAAの試合を見る中で頻繁に目にするのがWarriorの新CM。こっちもクソかっけえ。また毛色の違った、がっつりハードボイルドにカッコイイバージョン。昔は結構Warriorは若干お笑い要素も入れてたりしたが、今回のは真っ正面からカッコつけに行っている。

これもやる気醸成する上で非常に有効かも。毎日練習の前にバチッと見てアドレナリンの蛇口をグッと開ける上で。

皆さんお馴染み、Hopkins '08 (05, 07に優勝) - MLL Boston Cannons (11に優勝) - NLL Stealth (10に優勝) - Team USA 2010 (優勝)と、ラクロス界に於いて欲しいの全てを手に入れて来た男、現時点での世界最高のラクロス選手、Paul Rabil (ール=イブル[ビよりもブの方が正しいアメリカ発音に近いな...アクセント無しの音なので。])。

ぶっちぎった身体能力と、数人ロングスティックに付かれても物ともせず左右どちらにも抜いて決められるダッジ/シュート力。そして何よりも、誰よりも努力を怠らず、フィジカルと技術を磨き続けるその飽くなき向上心。


メッセージは、「我々は、一つのunstoppable force(止める事の出来ない大いなる力)を、もう一つの強大な力を持つ者に与える。WarriorをPaul Rabilの手に。All Hail.(Warriorの合い言葉。「万歳!」的なちとクラシックな響きのある言葉。)」

今年からMaverikからWarriorに移籍したPaul。NikeのLeBronと同じく、彼のロゴを作ったっぽい。今後Rabilのシグニチャーモデルのギアが出てくる筈。

WarriorのwebsiteにHDの映像あり。(リンク


2012年3月18日日曜日

NCAA 2012 Game Review vol.10 North Carolina vs Princeton

さて、毎年恒例の集客イベント、Face Off Classic @Baltimore, Maryland州。今年も会場のM&T Bank Stadiumで観戦。

会場は去年同様各メーカーが店を出しており、多くのファンや選手達で賑わっている。写真はMaverikのブースで子供達に大人気だったAT Billy Bitter。Maverikのパンフにサイン中。去年はUNC #4でBig City Classicに出ており、その後MLL Denver Outlawsにドラフトされ活躍した後、今年は大学時代の地元North Carolina州の新チームCharlotte Houndsに移籍。

さて、一試合目は我が地元North Carolina Tar Heels vs 古豪Princeton。UNCは開幕から4連勝の後、Lehighにホームでやられ、その後Pennにもう一つやられて、一気に4勝2敗の崖っぷちに。Princetonも今年こそはと言われながらも勝てず、同じく崖っぷち。ここの試合を落としたチームは一気にプレーオフ進出に向けて黄色信号が点灯する事に。

試合は、まあ、上位〜中堅校の試合としてはそこそこ楽しめるかな、という感じ。双方MLLにドラフトされている4年生も数人おり、レベルの高いプレーも垣間みれた。

結果は9-8で辛くもUNCが勝利。何とか下り坂を一端食い止めた。

ちなみにUNC #16 AT Jack McBride (院1年)は去年まで4年間Princetonに在籍した得点源でキャプテン。最終学年を怪我で欠場したため、残り一年のeligibility(合計4年のプレー可能年数)の最終学年を大学院生としてUNCに移ってプレーしている。異例の卒業生対母校の対決。(相手の特徴を掴んでいたからか、ガンガン活躍していた。)

どうしても地元で応援しているUNC視点になってしまうが、見て感じた事は、


  • 言ってもDivision 1のラクロスですよ。レベルはもちろん高いですし、学ぶ事も多いですし、会場で見ててもちろん、盛り上がりましたよと。TVで見直してももちろん楽しめる試合。その上で...
  • UNCは相変わらずターンオーバーが多過ぎる...シュート数よりターンオーバーが多いってどういう事?しかも、その多くが所謂"Unforced Turnover"つまり、相手によって誘発された/落とされた/奪われた"Caused Turnover"ではなく、自分たちのミス/自爆によって起こったturnover。頼むぜ...。試合を見ていて「ああああ!」と髪の毛をかき乱したくなる様なシーンが散見された...せっかく攻撃力が高くても肝心のシュートが打てないと、ポゼッションをこれだけ失ってしまうとこれだけ無駄に苦しむことになるのね、という意味で勉強になる。
  • HC Joe Breschi曰く、まだオフェンスのメンバーが固定出来ておらず、イマイチChemistryが発揮出来ていない/ハマっていないとの事。エースの#42 AT Nicky Galasso (So)も最近怪我から復帰したばかりでまだ本調子ではない。加えて、# 5 Emala (Jr), #16 McBride (院1), #4 Bitter (Fr), #1 Holman (Jr), #2 Wood (Sr), #11 Sankey (Fr), #41 Foster (So)と、実質NCAA一線級のATが無駄に8人もいる...「NCAA Lacrosse界のMiami Heat(タレント満載)」とも言われる所以。まあ、日本で言ったら、他球団の4番打者級が4-5人いる巨人って感じか...。毎回メンバーチェンジして、Qごとにごそっと3人入れ替えたり、ピンポイント使いのOFMFとして、またはEMO専門として使っているが、明らかに無駄が生じている途中からちょこっとだけ出ても試合の波/流れに乗れず、力が入ってしまい変なミスをしてしまったり。OF全体がぎくしゃくしてうまく回っていない。強いATが無駄に多くても、有機的に意味のある形で使わないと意味がない、多くのメンバーを絞らずに固定せずにいろいろ出す事による明確なダウンサイドが見て取れる。ある意味チームマネジメントとしては正直反面教師になっちゃってる面も。とっとと腹括ってメンツ固定しちゃった方がいい気がする...
  • 一方で、いくつか好材料があるとすると、
  • ①そうは言っても、やっぱり個々人のオフェンス力は高い。ハマったときのプレーはやはりカッコ良くて壮快だし、特にシュートの技術レベルは間違い無く高い。個人技として見て学べる点は引き続き多い。(ハイライトでもいくつか目の覚めるようなシュートが出て来る。)
  • ②頼りなかったDFが、後半に入ってそこそこ良くなったかな?特にGの#19 Steven Rastivo (Jr)がこの試合では怒濤のセーブを見せまくり、何とか勝ちを引き出した。
  • (③スーパーどうでもいいというかもはやプレーじゃないけど、ユニフォームとギアが真っ青なCarolina Blueでカッコイイっすよね...)(写真満載のILのGame Day Gearのページ
  • まー、でも、いずれにせよ現時点では凸凹が目立つ。今後ACCの強豪校とやって行く中で常勝していく感じはしない...期待を集めて始まったUNCだが、一部から心配されていた通り、DFの薄さと、OFのタレントが多過ぎる割に1年生と転校生による即席チームの面も否めずChemistryが発揮出来ていない点もあり、頼みの綱であるFOのRG Keenanが勝てなかった場合一気に脆さが出る...うーん、何とも胃の痛いシーズンになりそうだ...気長に、辛抱強く見守って行こう。とにかく一刻も早くOFのメンツ固めないと...
  • 一方のPrincetonは...やはりG Fiorito, #9 DF Weidmeyer, #22 MF Schriberなど、素晴らしい選手も複数いる。が、全体として「あの強かった頃のPrinceton」の感じは明らかにしなくなってしまった。DFもこれだけのタレントがいながら穴があり、OFも元NLL WingsのHC Chris Bateの2-on-2主体の攻めも、イマイチはまったりはまらなかったり...Side armで鬼速いがコースが読み易くてボックスセーブされちゃうシュートが結構散見された。DFのシステムも穴が有り、Bill Tierneyヘッドコーチ時代のPrincetonからすると隔世の感が...残念ながらもうNCAA D1「Top校」にはならないんじゃないだろうか。試合を見に来ていた栄光の6回制覇を成し遂げた黄金時代を知る卒業生達が悔しそうな顔をしていた。

Highlight

2012年3月17日土曜日

最短最速の上達法:"wall ball" vol.03

過去記事再掲シリーズ3発目。極めて大事な話だと信じるので。リマインドの意味も込めて。


2011年1月25日火曜日

Wall ball第三弾(はこちら)。まだまだしつこく刷り込んで行きます。例えくどいと言われても。なぜならそれだけ大事だと信じるので。

(大学4年間に限って言えば)日本の大学ラクロスの競争も成熟し、基本的な戦術や練習方法、フィジカルなど、ある程度の強豪校であれば一通りのことは共通する知識として持つようになり、情報の非対称性が薄れつつあると耳にする。これまであった戦略変数が飽和し、組織がしっかりしている/知識が蓄積しているといった既存の競争力の源泉が力を失う中、まだ余り手を付けられていない白地をガンガン開拓してしゃぶり尽くしちゃおう!の精神で。まだ見ぬ競争のフロンティアを真っ先にゴリッゴリに切り開いて行くcutting edgeなパイオニアチーム/選手を目指して行こう!ということで。

1. 壁が無いというボトルネック

散々これまで壁打ちの重要性を提示してきたが、「つかそもそも壁ねえし!」または「壁はあるけどボールぶつけてたら怒られるよ!」という問題があるかなと感じていた。学校内に壁建てるってのも、そもそも国の土地だからそう簡単にも行かないだろうし。相応のコストも掛かるだろうし。アメリカでも、皆がみんなそうそう近所に壁のある環境に住んでる訳でもない。住宅街に住んでいれば尚更。

2. Lax wall、またの名を"Rebounder"

そんな問題をある程度解決してくれるツール。ポータブルタイプのwall ball用lacrosse wall、またの名を"Rebounder(リバウンダー)"。(というか、情報収集力のある今の現役の選手達はもしかしたら既にこんなのご存知で持ってるかも。そうだとしたら付加価値ゼロです。ごめんなさい。)

もし、まだだったら、導入検討して下さいな。例えば、駒場に壁が無くて1, 2年生が練習出来ない状況であれば、これをまとめて10-20個くらいドカッと買って導入しちゃえばいいし。ラクロス始めたての一年生が授業の合間に毎日これでガツンガツンwall ballし続ける光景が繰り広げられれば数年後のチームの戦力が目に見えて変わるだろう。折りたたみ&持ち運び可能なので、倉庫に保管すれば迷惑も掛からない。本郷のグラウンドに導入して授業の合間に上級生がガンガン練習するもよし。足の怪我で練習出来ない選手が練習中にコートの横で一人でガシガシ壁打ちするのにも使える。

値段的にも数百ドル(数万円)と、グラウンドに大きな壁打ち用の壁を建設するのに比べれば一気に現実的なレンジに入ってくる。円高の今はタイミング的にもベスト。

3. 動画
以下、実際にどういうものかご紹介。

動画①

2000年のSyracuse優勝メンバーで元MLL(New Jersey Pride, San Francisco Dragons, Chicago Machine)のLiam Banksのキャンプ、LB3 Lacrosseでのwall ball instruction。使っているwallに注目。結構サイズがある。若干上向きに角度が付いているため、距離を取って上にボールを投げなくてもボックスにボールが返ってくる。また、テニスコートの横に有るような防球ネットやフェンスに投げるのと違い、ある程度のスピードの球が返ってくるためキャッチの練習にもなる。
「自分は別に大きくも無いし、大して速くない。でも、stick skillだけは負けた事が無い。ラクロスの素晴らしい所は(サイズや身体能力といった先天的に与えられる要素ではなく)stick skillが最も大事であると言うこと。そして、stick skillは練壁打ちによって、努力によって後天的に上手くなれるということ。」とのこと。BTB (Behind the back)やAround the worldなどもやっている。滑らか。幼少時から相当繰り返していることが解る。実際にこうやって練習する事でサイズのハンデを乗り越えてラクロス選手として身を立てて行った彼の言葉には説得力がある。

動画②

続いてこちら。ご存知CPことCasey Powell。Brineのrebounderを使ってガンガン速い球を投げている。なるほど、こうやって連続でやるのねと。更にゴールへのシュートと組み合わせることで一人でパスを受けてシュートの練習が出来る。足下のバケツにボールを100個入れて、100本連続でパス投げて-捕って-シュートとか。実際にこれを見てCPに憧れて狂ったように毎日裏庭で壁打ちをしてるような子達が毎年NCAAに入って来る訳だ。

動画③

Kidsがやるとこんな感じ。球威が無くても上向き角度のバウンドで戻ってくるように設計されてる訳ですな。

動画④

こんな感じで裏庭でゴールと組み合わせて使っているkids/juniorの選手が多いっぽい。

動画⑤

こちらはまた別のタイプ。伸縮性のあるネットで出来ているもの。サイズも大きく、返ってくる球もソフトになるので恐らくビギナーにはこちらが向いているはず。強度的には落ちるんじゃないだろうか?速い球をぶつけ続けるとネットが破れる気がする。初期の一年生の練習用にはこっちの方が向いてるのかも。
他にもいくつかネットタイプの例。

4. メーカーのウェブサイト
  • Brineのwebsite。正式名称は"Lacrosse Wall"みたい。
  • 上記の動画でLiam Banksが使ってたのはこちらの無地バージョン
  • 直感的に、無地のものよりもschoolものを買った方が、ロゴの一点をターゲットに出来るので便利な気がする。Virginia, Syracuse, UNC, Hopkins, Dukeと5校揃えてみてもよし。一番人気のSyracuseで統一するもよし。又は、チームカラーの整合性を取ってDukeで行くもよし(但しDukeは数年低迷する気がするので悲しい気持ちになるかも...)。
  • STXからもBounce back targetという名で出ており、Accessoryのページで見られる。(リンク)。写真を見た感じ後ろのパイプが透けて見えるので、もしかしたらBrine Lax Wallのような固いプレートではなく細かいメッシュなのかな?また、大型のメッシュタイプのものも"rebounder"として売られている。
5. オンラインショップ
  • Google shoppingで、「lacrosse wall」や「lacrosse rebounder」と入れて検索すると、いくつかヒットする(リンク)。海外からも買える店もあるんじゃないかな?店検索しまくってコンタクトしまくれば海外に売ってくれる店はあるはず(僕が現役だった頃はそれでアメリカの店からちょくちょくWarriorのバッグなどを買った記憶がある)。
  • ついでに直接店かBrineに掛け合って、チームで大量購入してvolume discountするって余地もあるんじゃないかな?
  • Amazonで普通に売ってますな。日本には送れないみたいだけど(リンク
  • それか、日本のラクロス用品を売ってるお店(QB Clubやプルータス)にチームとして頼んで輸入して貰う?
  • Sports Unlimitedのonline shoppingの、lacrosse training aidsのページにいくつも出ている。(リンク
  • ユーザーレビューを見ると「鬼シュート打ったら壊れた」と書いてあったので、恐らくシュートは厳禁なんだろう
  • と、思ったらLax.comにreplacementが売っていた。要は使い続ければどこかで壊れるんだろう..消耗品として何年かに一度買い替えなくちゃ行けなくなるのかも(リンク)。それでも尚大きな壁を建築するよりは遥かに安上がり。
  • Chemical/Material science/Polymer engineering系の学部の選手がreverse engineeringして素材を突き止めて、東急ハンズやその上の材料メーカーまで遡っていろいろ材料を組み合わせて独自に作っちゃってもいいし
もし僕自身の現役時代にRebounderが売られていたら、間違い無く速攻でカテキョーバイト固め打ちして個人でSyracuse versionを即買いしていた気がする...こんなの校庭にあったらそれこそ猿のように一日中ボール投げて遊んじゃうだろう。

てなわけで是非導入検討してみて下さいな。

または、代替手段でこんなんとか...

いたる@13期



(最初見た時はなぬーーー!?と吹いてもうたが、実は3本目からは合成...)

2012年3月15日木曜日

最短最速の上達法:"wall ball" vol.02

Wall ball第二弾。去年の記事掲載から丁度一年。

新2, 3, 4年生の皆さんは引き続きガンガン壁打ちしてリーグ戦までに一皮も二皮も向けて、NCAA D1上位校並みのスティックスキルを身に付けたい。そう出来たら試合中楽しくて笑いが止まらないはず。GoalieもLong poleも同じ。Virginiaのロング陣がクリアで安定して滑らかに自由自在にスティックを操れているのも、去年のSyracuse Goalie John Gallawayがセーブして1秒後にフロントコートのATのボックスのど真ん中にレーザービームで突き刺せていたのも、ひとえに壁打ちをずっと積み重ねて来たから。

これから入って来る新一年生には実験として入部当初から壁打ちをキャッチボール以上に標準装備で教え込んでみればいい。「毎日3-4時間考えながら壁打ちをやってみなよ。夏までにあの4年生の先輩より巧くなれるから。そしたら一年生で試合出られるから。」と刷り込めばいい。過去10年のどの一年生とも全く違った成長カーブを描くはずなので。

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2011年1月18日火曜日

先日がっつり紹介させて頂いた、wall ball(壁打ち)の記事①の続編。畳み掛けるようにもう一発。追加の動画と記事の紹介。いいものは積極的にどんどん柔軟に取り入れよう!の精神で。(次回は近くに壁が無い場合の解決法、portable lax wall/rebounderの紹介、記事③

1. IL Instruction Archiveより

ILにちょうど良過ぎるタイミングでwall ballのインストラクションの記事が出てたので紹介。(リンク

体育館の中で壁打ちをやっている写真がいくつか紹介されている。名門&強豪Prep school(進学校)Georgetown Prepのcoach Kevin Giblinによる解説。先日の記事でも紹介したいくつかのパターンのうち、動画でカバーされていなかった練習法が写真付きで解り易く解説されてた。
  • 膝を床に着けてやる事で弾道の角度を変え、体幹をしっかり安定させて投げる練習。正確さを養う練習
  • 横方向に走りながら、一人ランニングパス。横向きに投げて取るというより実戦的なパスキャッチが練習出来る
  • 体育館の壁でやっている。確かに、アウトドアでのビルの外壁だと、なかなか長さがある壁、ボールをぶつけ続けて迷惑が掛からない/窓が無い壁ってそうそう見つからない。(アメリカ東海岸北部だと北海道並み/以上に寒くて雪国のため冬は出来ないという事情もある。また、故に体育館の壁がレンガ製という強みも。)日本の体育館だと木製の壁が多いのでむつかしいかな?正規のボールだと難しいなら例えばちょっと軽くて柔らかいlow bounce ballやテニスボールで代替するとか?
そして、ここでも力いっぱい壁打ちの重要さを語ってくれている。
  • 「stick skillを磨きたいなら、壁打ちをやりまくることが『唯一の方法』。揺らぐ事無き信念としてそう強く信じる」
  • 「毎日何分かなんて足りない。『何時間か』やれ。とにかく地道に泥臭く壁と向き合え」
ってことなんですね。やっぱり。「壁は裏切らない」、「壁と向き合った時間は、必ず実力となって返ってくる」

2. 鋭く直線的な成長曲線

ま、実際に暫く壁打ちをやってる選手の皆さんは既に肌感覚として十分に実感済みだと思うが、ぶっちゃけ短期間でどんどん変化するのが感じられて単純に最高に楽しいし。文字通り、「バキバキと成長する音が聞こえるかのように」伸びる。

Learning curveが結構鋭く切り立って、しかもかなり長い期間(それこそ数年間)そのペースで上昇し続ける。なかなかサチらない(saturate/飽和しない)。相手がいる事でもないし、フィジカルとは関係ないので、(よほどやり方を間違えない限り)不可抗力で成長しないということは有り得ない。これだけ「外部の環境に影響される事無く」「自分のペースで」「確実に変化を見て、感じて、楽しめる」プロセスって実は世の中にもそんなに無いと思う。

(またしても激しく脱線するが、例えば細かいmechanicsがかなりsensitiveに効いてしまうゴルフスイングの習得プロセスだとプロのコーチに教わったとしてもどうしても上手くいったりいかなかったりの「上り下がり」や「踊り場」を何度も経験せねばならず、一段上のpatienceが要求される。スノボの初期の伸びが近いかな?とも思う。ターン習得の立ち上がり、フェイキーを覚えて、ground trickでしなりや弾き、回しをマスターして、小さいキッカーでのone makeのグラブやFront/back 360くらいまでの一連の直線的な伸びの感覚。が、そこから先の540から720あたり、キッカーが大きくなったり怪我のリスクが上がってくるとどうしてもプラトーが訪れる。)

よく言われる1万時間の法則や、かの有名な桜木花道のジャンプシュート2万本(「2万で足りるのか?」)のように、1年以上徹底して量を積み重ねれば、いつか必ず「量が質を凌駕する瞬間」が訪れる。
壁打ちをやる → 変化が感じられて楽しくなる → 更に、「一生懸命やること」自体が楽しくなる → もっともっと壁打ちをやる → もっともっと上手くなる → 遂には練習や試合のプレーに目に見える違いが現れる → 更に壁打ち中毒になる、というHappy cycleが回り始めたらこっちのもん。そしてこの成長スパイラルに入った選手の数がチーム内で支配的になれば、恐ろしいことが起こるはず。1年生だったら文字通り狂ったように一日中やっちゃっていいと思う。

3. 「裏切らない」ことの意味

練習で強い相手と1 on 1をして何故か上手く行かない、試合でシュートが最近調子悪い、脚を怪我して若干フローなメンタルコンディションから遠ざかっている、という状況でも、wall-ballだけは関係なく確実に変化し続けられる。「今やるべきことをやり」、「変化を楽しみ」、「好きを大事にする」というflowな精神状態を意識的に安定して作り出すためのルーティーン/儀式に使える。

日々の細かい結果の積み重ねや、悩み、不安、後悔によって乱されがちな、「心」のコンディションを整えるための「毎日の日課」としては正に持ってこい。(そういう意味では野球の素振り、空手の型に近い。)やればやるほど、「揺らがず、とらわれない」心の境地を簡単に作り出せる。

4. 環境や時間軸、DNAの制約を乗り越える

体の出来上がり具合や試合経験も必要としないので、冗談抜きで、1年生が4年生を越える事も出来る。センスもクソも無く、ただの投下時間×質の勝負なので、ここだけに絞って言えば、やり続ければ必ずいつかNCAAのトップクラスの選手に追いつける。若いくせに突然変異体で化け物みたいにstick skillだけ突き抜けちゃった奴に、計画的になれてしまう。(ラクロス知識の偏在を容赦なく越えられるので、立場を変えて言えば、出来たばかりの3部リーグのチームの選手、地方リーグの選手が努力次第で関東の1部のスターターを越える切符にもなり得る。)正に最高の下克上ツール。雑草魂の最強の味方。

与えられた環境やDNAによって規定される身体能力、始めた年齢如何に関わらず、自分の意思の力で力強く人生を切り開ける/運命の軌道をグイッと捻じ曲げられるという所に代え難い魅力を感じてしまう。

上級生はもちろんだが、今の新2年生、新しく入ってくる新1年生の選手達に、実験的に、これまで以上に徹底した壁打ち刷り込みを行って、極限まで壁打ちをやって貰い、後の成長をトラックしてみたらどうだろう?壁打ちをそれほど徹底していなかった世代と比較して際立った差が出るんじゃないかという気がする。

もちろん、初期に壁打ちをやってなくて、今3-4年生だったり、OBだったりしても大丈夫。壁打ちを始めるのに遅すぎるなんてことは有り得ない。やればそこから成長カーブを駆け上がれる。逆に言うと、これまでキャッチボールや練習・試合で積み重ねられてきた「ありたい姿」や経験が、壁打ちを始めることで爆発的に解放されるというシナリオすら考え得る。(IL PodcastでもGood old days interviewで、高校の後半や大学からラクロスを始めたのに壁打ちを必死でやってAll Americanになった選手の話も出ていた。)

5. Long stick, Goalieであれば尚更

ロングスティックやゴーリーであれば尚更。こと日本の学生レベルでは、相対的にstick skillへの意識/優先順位が低い選手が多いため、ここで突出出来れば極めて大きな差別化に繋がる。Longを短く持ってやってもいいし、Shortyでやってもいいし。(今年のMLLドラフトの目玉、共に卓越したstick skillに定評のあるSyracuseのLMS Joel White (#11)も、GoalieのJohn Galloway (#15)もジュニア時代にshort stickとしてのキャリアを積んでいる。間違い無く相当量の壁打ちをこなしているはず。前回のNLLの記事で紹介したMLL NationalsのGoalie Brett Queenerなんてそれが高じて遂にはNLLのフィールドプレーヤーにまでなってしまった...)

という訳で、皆で満面の笑顔で楽しく毎日ガンガン壁打ちやっちゃいましょう!(壁が無いなら学校に掛け合ってコンクリやらレンガやら駆使して壁作っちゃいましょう!)

6. いくつか動画の追加

●これももう一歩extremeを突き詰めていて参考になる。立体的に使う。円を描きながら、8の字に動きながら、壁と平行して走りながら、といった、より実戦に近いシチュエーションで動きながらの練習が参考になる。コンクリートで四方を囲まれたこういう場所、ないだろうか?高架下?廃ビル?スカッシュコート?

●もういっちょ。元Boston Cannonsで現UNCのAssistant CoachのPat Myersの名インストラクションDVD「ScoreMoreGoals.com」より。非常にいいことをいくつも言っている。「ラクロスを上達させるための唯一絶対の方法だ」、「要はmuscle memory。とにかく反復して体に動きを覚え込ませること」、「世の中の全ての優れたラクロス選手に共通して言える事は、全員例外無く、相当量の時間をwall ballに費やしている事だ」。そして、彼自身が非lacrosse hot bed地域のMaine州で独学で上手くなった経験を踏まえ「必ずしもラクロスが盛んじゃない地域出身でも、壁打ちを一生懸命やれば本場の選手に必ず勝てる」とのこと。日本のラクロス選手にとって非常に勇気を与えてくれるコメントだ。
●UNC '91の優勝メンバーで、元MLL選手、現Boston Cannons HCのBill Dayeによるwall ballインストラクション動画。個人だけに留まらずチームの練習でもガンガン壁を使わせているところが面白い。横に並んで、またはバスケのtapみたいに連続でやったり。「常にスティックを耳の横の高さにキープし続けることが大事」と指摘。

●番外編。こりゃどっちかって言うとギャグとして。思わず吹いてもうた動画。LA空港、通称LAX(エルエイエックス)の有名なでっかいモニュメントで文字通りLAX (lacrosse) wall ballをやっちゃうというおバカ企画動画。Skateboardのstreet film shootやSnowboardのstreet railでのjib sessionで禁止されてる歴史的/芸術的建造物でトリックを決めるノリに似ている。深夜に六本木ヒルズの映画館前の噴水の縁石やらモニュメントでバチッとトリック決めて警備員に怒られてダッシュ、みたいな。超西海岸。Grafitti guerrila的な。一応、「決して真似しないように」とメッセージ...

●最後は、皆のヒーロー、地上最強プレーヤー、Paul Rabilのwall ball instruction動画(リンク)。やっぱりRabilもやっている。動画のクオリティが高い...1) Over hand, 2) Side arm, 3) Under-hand, 4) One hand, 5) Quick, 6) Behind the back (BTB), 7) Behind the hip (BTH)の7種類を左右それぞれでやるべしと。特にSide/underではきちんと手首を柔らかく使ってスナップを効かせること。手首固定で肩の振りだけでやらないようにと。

●ついでに、女子の追加動画。前回のはインストラクションメインで、実演している選手自体は普通の選手だった。今回は、Div 1の強豪James Madison '06卒、'09 Canada代表で、同じくDiv 1の新興強豪校Stanfordの現assistant coach、Brook McKenzieのwall ball。

ハッキリ言って、巧い。もう女子ラクロスもcurving head era以降は完全に男子ラクロスのスティックスキルと同じと考るべき時代に突入してしまったんだろう。Quickも、Behind the back (BTB)も、Around the world (ATW)も。持ち替え、クレイドルの少なさ、バックハンドからのセット→投げの速さと正確さ。One-handでの時はかなり短く持って、実質的に手首だけで投げているイメージ。体幹と下半身をしっかり安定させている点にも注目。パッと見Body frame(骨格)が大きく、パワーもある点が目を引くが、あくまで最低限スティックを持ってボールを投げられるのであれば、体格やパワーは関係無い点に留意。彼女自身小柄な小1の頃からこれやってたんだろうし。
にしても、これを見ると如何に単位時間当たりの反復回数/密度が、相手のいるキャッチボールよりも多いかが非常に良く解る。ほんの10分の練習で、極端な話キャッチボール1時間分ぐらいの「投げて捕る」という動作を繰り返せる感じじゃないだろうか。

いたる@13期

2012年3月13日火曜日

最短最速の上達法:"wall ball" vol.01

再掲。一昨年の年末に書いたWall ballの記事。その突出した重要性を鑑みて。一部の読者が世代交代しているため新しい読者の方に一度目を通して頂きたかった事に加え、既に一度読んで頂いた皆さんにも再確認という意味で役に立つかもと言う事で。もし既に読まれていて得るものゼロの場合は容赦なくスキップして下さいませ。

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2010年12月30日木曜日

引き続き、年末年始にガッと書いちゃおうと思ってたことをガンガン書いちゃいます。今回は、"Wall ball" (ウォールボール、壁当て/壁打ち)。いくつかのインストラクション動画とセットで紹介。

1. 誰もが認める重要性

MLLやNLLの選手たちがインタビューで若い選手へのアドバイスを求められた際に、かなりの頻度で出てくるのが、「毎日wall ballをしろ」というもの。「Lacrosseは 何よりもとにかくstick skillが最も大事。そして、それを鍛えるための最も効率の良い手段、極めるための唯一の方法は、壁打ち」、というもの。本当にどの選手も判を押したように、まるで示し合わせたかのように同じ事を言う。

恐らくNCAA/MLLのトップレベル選手たちが、ほぼ全員例外無く、かなり若いころから毎日壁当てをし続けて育ってきており、そして今尚習慣として続けているという事実がある。野球で言うところの素振り、バスケで言うところの一人でやるドリブルやシューティングや壁に向かってのパスの練習、ボクシングのシャドーやミット打ち。基本中の基本。全ての技術の土台。彼らほどのレベルに到達している選手ですら未だにそれを習慣としてやり続けているという事実。日本人で、比較的遅い年齢から始め、尚高いレベルを短期間で目指そうとしている僕らにとって、やらない手は無い。

もし、本当にラクロスを上手くなりたくて、勝ちたいなら、恐らくこれ以上費用対効果の高い練習は無いと言い切れる。「魔法のように飛躍的に上手くなれる方法は無いか?」と多くの選手が考えると思うが、恐らくこの方法が最も「魔法」に近い位置にあると思う。(特に初期の2-3年間は)「数ヶ月間でラクロスが見違えるように上手くなる」、という現象が起こるとすると、この方法が最も多くの人にとって多くの伸びを与えてくれる手段だと思う。

2. オーストラリアでの体験

以前の記事でも少し書いたが、僕がAustraliaのクラブチームに短期的にお世話になった際にも、チームのクラブハウスにはでっかい(大学や高校のテニスコートに時々あるような)壁があり、そこに向かって実際に子供達や大人の選手たちも壁打ちを結構やっていた。また、後のnational teamのメンバーになった若い選手に「どうやったら君みたいにstick skill上手くなれる?」と聴いたところ、即答で「壁打ちしなよ。毎日」と言われた。オーストラリアでもトップレベルにある選手の言葉に強い説得力を感じたのを覚えている。

(自分の話を語るのはちょっと痛痒いし、大した選手でもなかった手前大変恐縮だが、あくまで一つの事例として紹介させて頂くと)僕自身、下級生の頃からとにかく早くリーグ戦の試合で活躍しようと毎日試行錯誤していた。ちょくちょくstarting ATで試合に出られるようになった2年生の頃は全く持ってパッとせず。ほとんど活躍できぬまま(いやむしろチームの足を引っ張って)シーズンが終わり、悔しい思いをした。3年になる前の春にオーストラリアの名門クラブチームに2ヶ月ステイし、3年生のリーグ戦で初めてある程度思うように活躍出来るようになり、安定して点も取れるようになった。ささやかながら確かなbreakthroughを感じたシーズンだった。

明確に変わったのはstick skillで、周りからは「あいつはオーストラリアで経験を積んでから変わった」と言われた。が、これは実は正しくなく、本当は「オーストラリアで壁打ちの重要性とやり方を知ったから、そしてそれを日本に帰ってから継続的にやり続けたから上手くなった」が正解だった。壁打ちを毎日することで飛躍的に試合でcomfortableになるのが手に取るように感じられた。ある意味目から鱗な体験だったこともあり、それ以来壁打ちの強い信奉者になった。

3. アメリカやカナダの強さの根源

僕らはWLCやMLLやNCAAの試合を見て、「うわー上手いなー」と感じる。「結果」として表面的に現れているパフォーマンスの違いは散々認識するが、その裏にある、違いを生んでいるメカニズムや背景、「原因」の部分について深く考える事はそんなに無い。

下の動画を見てもらえれば解ると思うが、「wall-ballが上手くなるための最短最速で唯一の方法」という認識がアメリカ全体のラクロス社会の中でかなり基本的なこととして認識/共有されている。Kidsに親やコーチが最初の基本動作として教えている。こんな感じでアメリカ全土で老若男女のラクロッサーが毎日ガツガツ壁にボール投げているということだと思う。

(実際に、Championship WeekendやFace Off Classic、Big City Classic等のラクロスイベントを見に行くと、地元の子供達がスタジアム内外の壁で我を忘れて壁打ちをしており、軽く迷惑だったりする...)

「アメリカ人は昔から/ガキの頃からやってるから上手い」は実は嘘で、「昔から毎日壁当てしてるから/壁当てが習慣として根付いてるから上手い」というのが正しい分析じゃないかとも思う。もし仮に壁打ちをやっていなければ、長年ラクロスをやっているアメリカ人のスティックスキルも日本人と大して変わらないんじゃないだろうか。そのくらい決定的に彼らのスティックスキルに違いを生んでいると感じる。

4. 日本のラクロスの大きな成長余地?

どうでしょ。日本の平均的ラクロスプレーヤーの場合、恐らく典型的なラクロスとの出会い、初期の技術の立ち上げって、大学の練習に初めて行き、先輩に基本的なスティックの持ち方、投げ方/キャッチの仕方を教わり、そこから同級生とパスキャッチを始める、という感じじゃないだろうか。この初期の数ヶ月、1〜2年の立ち上がりの部分で徹底した壁打ちをやっていないことが、実は日本のラクロス選手たちにとって大きな機会損失を生んでいるんじゃないかという気もする。技術や戦術、練習法、道具やファッションと言った他のいろんな要素がどんどん追いついて耳年増になっている一方、実はこの根元/土台の、一番重要な要素、最も受け継がれるべき「実」または「骨肉」の部分がゴッソリと抜け落ちちゃってる気もする。

従って、個人的には、新入生に対する正しい提示は、「キャッチボールを出来るだけやりなさい」ではなく、「wall-ballとキャッチボールを出来るだけやりなさい」だと思う。

実はラクロス先進国アメリカ、カナダとの差は、経験年数の差/スポーツとしての規模の差、結果としての素材の質とcompetitionの差もさることながら、実はこの部分、壁当ての総量、そして壁当てが文化/伝統として根付いているかどうかという差も結構大きいのかも知れない。「幼稚園の頃から始めて15年やっている」vs「大学で始めて5年やっている」の差は直接的/本質的差の要因じゃなく。

指標として、壁打ちの総投下時間/反復回数を単純に比べた場合、実は大学からのスタートであっても大学4年間で10年やってるアメリカ人よりも多く壁打ちすることは物理的に不可能ではない。本来日本人が持つ勤勉さと器用さを考えると、ここさえ梃入れして追いつければ、案外stick skill的には相当近いところまで行けるのかも、とも思う。

5. 壁の存在という物理的な差?

もちろん、壁打ちの壁が無い、ビルにぶつけてると怒られる、みたいなインフラ由来の差はあると思うが。特に東京都内にある学校にとっては致命的なボトルネックじゃないだろうか。(ちなみに、もし壁打ち用の高さのある壁が駒場や本郷にないなら、学校やOBにお願いしてレンガかコンクリの壁をガッと作っちゃうとか、高さが低い壁でバウンドを前提としてやるとか、記事③で紹介しているリバウンダーを数万円出してチームで買うとか、工夫すればいくらでもやり様はあるはず)

よく、アメリカやオーストラリアにはふかふかの芝生のフィールドがあるのに、日本は土のグラウンド。ダイブも出来ないし、スクープも独特のものになる。それが差に繋がっている、という話を聴く事があるが、もしかしたらそれよりも遥かに「壁打ち用の壁が少ない事」の方が大きな差なのかも知れない。

(小中学校の頃に関東と地方の間で何度も転校を繰り返した自身の経験から思い出すに)直感的に、例えば九州や東北/北海道といった大学にはより多くのスペースがあり、壁打ち用の壁や、壁打ちをしても怒られない建物の壁がより多く存在する気がする。もし、地方の大学チームが壁打ちの重要性に気付き、本気でコミットして、この未開拓の広大な狩り場を最大限に利用し始めたら、もしかしたら大学選手権での力関係が変わってしまうかも知れないとすら思う。(例えば「九州大学は、最先端の戦術に関する知識では関東よりも一段落ちるが、個人のスティックスキルだけは突き抜けてる」、「京都大学が恒常的に関東のチームに勝ち続ける」、みたいな状況がいつか起こるのかも知れない。壁へのアクセスの有無という極めて原始的なファクターにより。)


6. なぜ相手がいるキャッチボール/パスキャッチよりもいいのか?

もちろん、それぞれの良さがある。なので、実際には当然壁打ちだけしてりゃいいわけじゃなく、普通にキャッチボールも併用してやらなくちゃいけない。が、壁打ちにしかない良さが相当ある。

①自分一人で出来るため、頻度が圧倒的に上がる
  • いちいち相手なんかいなくたっていつでも出来る。四六時中出来る。授業の合間に15分時間があればサクッと出来ちゃう。一年中出来る。オフだろうと寒かろうと出来る

②単位時間当りの反復回数/効果が圧倒的に高い
  • 実際にキャッチボールをしている時間のうち、相手が取って投げる時間、取って構える時間、(特に初期は)後逸して取りに行く時間が掛かっており、実際に自分が取り、投げる時間はその1割も無いんじゃないだろうか。
  • その点、壁打ちだと、同じ場所に連続してかなり速いペースで投げられるため、同じ10分の時間の中で場合によっては何倍ものパスキャッチを出来ることになる。同じ時間を使うにしても、密度が圧倒的に高くなる
  • 実はこの点、忙しい学生の皆さんにとっては極めて重要な要素だと想像する。限られた時間で効率的に上手くなれるので

③より高い正確さが養われる
  • 実際にやってみると解ると思うが、相手が動いて取ってくれるパスキャッチと違い、球を投げられる許容範囲が狭い。ちょっと高さや横の位置関係がずれると、取れなくなる。結果として強制的にaccuracyが養われる
  • また、壁にテープでターゲットを張ったりする事で更に高い精度を作れる

④全く同じ動作を機械的に反復するのに適している
  • (特に最初の頃は)毎回ちょっとずつ違うところに行ってしまい、練習したいキャッチやパスがバラバラになりがちなパスキャッチに比べると、同じキャッチポジション、スローの形を機械的に反復出来るため、効率が高い

⑤カスタマイズ度が高い
  • 下から投げたり、back-handで捕ったり、走りながらやったり、相手無しで自分でいくらでも変えられる
  • 例えば相手がいるパスキャッチではunderhandやshovel passなど、特に初期は狙い通りに投げられず相手に迷惑を掛けたり、それに遠慮して練習を躊躇してしまい、結局「確実に投げたいところに投げられるスロー」しか練習しなくなり、技術の幅が広がらないというジレンマを抱えてしまう
  • その点wall ballならミスろうがしったこっちゃないので、ガンガンいろんなスローをリスクを取って試せる
  • 一般的なアメリカ人選手と日本人選手を比べた時に、シュートの形のバリエーションは日本人も案外あるが、いかんせんパスの技術のバリエーションが相対的に劣るのはこの辺の事情も大きいんじゃないかと直感的に感じる

⑥より高い集中力で出来る
  • 二人のパスキャッチよりも遥かに、「熱中して我を忘れる、時間を忘れる、ラクロスや練習や上達が楽しく楽しくてしょうがなくなる」という、Zoneに入り易い。最も練習効率が高く、成長速度も高いFlowの精神状態になり易く、維持し易い。雑念を排除し易い
  • 別にキャッチボールでも出来るが、相手がいなくてはいけないし、相手を選ぶ。いつでもその気になれば毎日同じコンディションで練習出来るwall ballはやはり効率がいい
  • 実はこれが一番でかいかも知れない

てな感じだろうか。二つの関係は、「まずは壁打ちで徹底して基礎を作り」→「パスキャッチで相手を付けてより実戦的な動きとして使えるようにチューンナップする」→「試合にも自然と出る」という感じじゃないだろうか。イメージ、壁打ち:パスキャッチの投下時間比率が9:1とかになるぐらい、徹底的に壁打ちをして基礎を固めちゃっていいと思う。

7. インストラクション動画

以下、いくつかwall ballのやり方を解説している動画があったので紹介。しかし、これだけ一流の選手がわざわざ壁打ちのインストラクションを紹介しているというところからも、その重要性が伺い知れる。

①黙々といろんなパターンを見せてるが、これが一番イメージ掴めるかも。メトロノームのリズムに合わせてやっている。iPodとかでリズムを刻むクロックのアプリあるだろうからそれ使うと同じ効果。それこそ好きな曲のリズムに合わせてやってもいいし。(リンク

②元MLLでUS代表のJoe Waltersのインストラクション。Lacrosseに於いてstick skillが死ぬ程重要で、その上達にはwall ballが必須であると強調している。あまりふわっと高い球を投げない事、出来るだけワンクレイドルで投げる事等コツを説明。持ち替えを組み合わせたり。あと「とにかく一回一回はべらぼうに長くなくてもいいので、毎日やること」。


③Hopkins出身のTewaaraton(MVP)、元US代表のKyle Harrisonの説明。相変わらずカッコいいぜこの人...曰く「壁打ちしなくちゃいけないなんてアメリカ中のどのコーチも言うし、皆も当然知ってるだろ?Highest levelの選手、プロの選手だって当然のように習慣としてやってるよね。注意が必要なのは、ただ単にover handだけじゃなく、必ずstickの角度を変えて練習すること。横、下からも投げろ。何故なら試合中の現実的なプレーを想定すると、それは絶対に必要だから。Long stickのスライドが来てチェックを交わしながら横や下からピンポイントでフィードやパスを出さなくちゃいけないから」とのこと。

④このコーチの動画はquickがめちゃくちゃ上手くて参考になる


⑤これChicagoのケースですが、こうやってコーチ達がこういう小学校低学年の子供達にやり方や理屈を教え込んで行く訳ですな。10年後に将来この中からNCAAのスターが生まれてくるわけだ。で、「壁打ちやるべし」と次の世代の子供達に伝承していくと。Weak handをstrong handの2倍やること、そして特定のレンガをターゲットにすることを指摘している。最後に小さい子供達が早速練習している。こうやって何人かがハマって行って、本当に毎日やって、凄い選手に育って行くんだろう。


⑥このコーチの方も上手い。Behind-the-backとかも上手い。脚をしっかり動かすことが大事とのこと。彼も多くの親や子供から「どうやったら早く上手くなれる?試合出れる?」と聴かれると、必ず「wall ballが唯一の方法だ」と答える。


⑦こちらはUS Lacrosse協会から、女子の。今はもう女子でも両手使い、non-cradleでのquickpassは必修基礎科目になっている。ボールを複数使い、キャッチミスしたら横から別の人がボールを渡してあげる、というデザインがより効率的で参考になる


⑧もういっちょ。こういう感じで家でやってるわけですな。これついでにATの実戦的なダッジのドリルも入ってて非常にいい。"The wall will make us all champions"(壁打ちさえやれば全ての選手がチャンピオンプレーヤーになれる)という標語が真理を表している。


8. Tips(コツ)

動画で言われているものも踏まえ、パッと思いつく範囲でコツを上げると:

●一つのフォームを50球1セット/1分1セット等、一定の反復回数/時間繰り返す。

●でも度を越えて繰り返し過ぎない。50球ごとに投げの種類を変える(あまり同じフォームで高頻度で休み無く20分も30分もやってると、肩のインナーマッスルを損傷するリスクが生じるので)

大事なのはconsistency(一貫して継続すること)とsustainability(持続可能性)。最初の3日間毎日3時間やって終わり、ではなく、一日10分15分でいいので、出来るだけ毎日やること、そして、それを複数年続けること。一日数時間等そもそも続けられない非現実的なメニューは組まない事。結果が見えるまで数ヶ月以上は掛かるだろうし、プレーでbreakthroughが起きるまで1-2年掛かるかもしれない。でも、決して焦らない。変化は必ず起こるので、習慣として、淡々と粛々と楽しんでやる

●特に慣れるまでは、ボールを複数個(場合によっては10個以上)用意して、ミスしても毎回取りに行かずに、すぐに足下のボールに切り替える/横にいる別の人に新しいボールを投げて供給してもらう(毎回取りに行ってると練習効率が上がらない)

慣れて来たら壁にテープを貼ってターゲットを作り(10cm四方の正方形でも、円でも、最後は点でも)、相手スティックのボックスをイメージして精度を上げに行く

●想像力を働かせて、あらゆるバリエーションを作り、常に実戦に即した形でやる
  • ①体の向き、②動き、③投げる位置、④取る位置、⑤持ち替え/クレードルの有無、⑥球筋、⑦両手/片手の全てを場合分けして、組み合わせを変えてワンセット10〜30球で、一定数を反復して繰り返した後、次の形、と回していく
  • ①体の向き: 正面を向いて、体を180°閉じて、体を180°開いて(360°どの方向にもにフィードを出せるように、DFに対して体を入れて隠しながら投げる局面を想定)
  • ②動き: 止まって、右に動きながら、左に動きながら、壁からstep back/fade awayしながら(特にXでフィードを出すAT、トップから抜いてスライドを引きつけてパスを出すMFにとって、バックステップしながらのパスは必須。ちなみに壁に向かう動きはボールがめっさ早く戻ってくる事になり結構きつい...ま、この動きはラインドリルで散々やるからいいでしょ)
  • ③投げる位置: over hand, side arm, underhand, shovel pass, behind the back, reverse, 体の前で、体の横で/後ろで(DFに対してスティックを体で隠しながら、体の横や後ろでリリース)
  • ④キャッチする位置: 体の前に野球のストライクゾーンの感覚で9つに分割された仮想ゾーンを作り、その9つで捕る。バックハンドでも上、中、下、体の正面でも上、中、下。ヘッド側のボールを取れるのは当然。投げと同様に、正面で、そして横で(スティックを体で隠しながら)
  • ⑤持ち替え/クレードルの有無: 持ち替え無し/有り × クレードル有り/無し。特にクレードル無しで長い距離を正確に投げる技術はEMOやフィードで不可欠。
  • ⑥球筋: ライナーで、ワンバウンドで、転がして
  • ⑦両手/片手: 片手での投げ/キャッチも必ずやる。リストやグリップのトレーニングにもなるし、上の手のschemaを強化できる。加えて実際に試合中に片手で投げざるを得ないシチュエーションも有り得る。(NCAAやMLLで時々ATがリバウンド後のgarbage goal等でDにチェックされながら片手で得点するが、こういう積み重ねがあってこその咄嗟の動きと思われる。Gary GaitやJohn Grant Jr.、DenverのMark Matthewsなどデカいカナダの選手は標準装備している。)
●安全に注意。周囲に一般の通行人の方、車、ガラスが無いか確認

ロングスティック、ゴーリースティックでやりにくいならショートスティックでやる(別にshortyでやっても練習にはなる。いや、むしろshortyでやった方がstick skillの基礎を作る上では役に立つ)

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てな訳で、皆で毎日楽しく目ぇ輝かせながらガンガンwall ballしちゃいましょう!

無理矢理指標化するならば、壁打ちがチームとして浸透してる度合い、つまり、①壁打ちをやっている選手の数(または率) × ②一人当たりの総壁打ち時間 × ③一人当たりの壁打ち時の集中力と質、みたいなものをKPI (Key Performance Index)的に統計化して時系列の推移を見た場合、またはチーム間でベンチマーク比較した場合、結構如実にパフォーマンスとの相関性が見えてくるんじゃないかと。


いたる@13期

2012年3月12日月曜日

NCAA 2012 Game Review vol.07 Lehigh @UNC

おいおい。9-8でまさかのアプセット。4位のUNCがランク外の伏兵、Philadelphiaの西の方にある中規模校Lehighにやられてしまった。会場で観戦。ショック。がっくし...(記事スコアボード


ただ、冷静に考えるといくつかの示唆が。
  • Lehigh、全然弱くない、いや、結構強いぞ、と感じた。5年前から元MLL/US代表選手&コーチのKevin Kassese氏がHCに就任(Duke 03のMF。まだ31歳とかだろうか。若い。が、相当有能なコーチである事は一目瞭然)。去年ぐらいから、Canadianの有力選手を数人獲得し、上り調子にあると聴いていた。が、実際に見てみて、for realだと感じた。
  • まず、Face offが鬼強い。目を疑ったが、ここまで勝率80%のUNC #25 FOGO RG Keenanが全く歯が立たずにことごとく負けていた。途中で遂に交代させられたが、最後までやられっぱなし。UNCはこれまで弱いDFをFOの強さで補って来たが、そこが途切れると一気にDFの不安定さを露呈させてしまった。
  • UNC Turn over多過ぎ。悪天候(雨)で、人工芝のフィールドが異常に滑っており、パスの軌道もおかしくなっていた。が、にしてもパスミス多過ぎ。ボール失い過ぎ。せっかくの限られた攻撃機会が「ほへっ?」という形で終わるケースが相当数あった。UNCのオフェンススタイルは、物量&機動力とスティックワーク/シュート力に物を言わせた、めまぐるしく走ってポジションを入れ替えつつ、抜いて、ボールをガンガン移動させて、どフリーからクイックモーションでえげつないシュートを打つという見ていて超楽しい&クソ盛り上がる「スーパースピーディーダイナミックラクロス」。が、ここが「転ける/滑る」&「パスミス/キャッチミス」という形で切られると、一気にシンプルなオフェンスよりも見劣りしてしまう。シュートにすら行けずにオフェンスが秒殺で終わってしまう...まあ、晴れの日にもう一回見たいな...って感じか。
  • DFどうにかならんかね。個人のぶつかりあいでそこまで負けてる感じはしないが、コミュニケーション/連携/カバー...。まだまだ修正/改善する必要満載。まあ、幸いまだシーズン前半。これ何とか後半までにfixしないと...でもUNCのDFって(DukeやHopkinsと違って)あんましシーズンを通して改善していくイメージが無い...このチームは乱打戦でクソオモロい試合を提供してくれるけど、結局被弾しまくってやられるいい感じの優勝校の引き立て役になっちゃうリスクを相当感じる。
  • Lehighいいじゃねえか...。完全に舐めていた。まず、サイズと身体能力がそこそこあるイメージを受けた。加えて、OFのCanadian及びNY州出身者を含めた数人の技術、特にシュート力は秀逸。あと、Goalieもかなり固い。①Face Off勝率高い、②Goalie手堅い、③Canadian/北NY出身者が超クラッチで(勝負所に強く)決めまくる、の、定番の「番狂わせ三種の神器」が全部揃っている(去年のDenverもこのパターン)。安定して勝つかどうかは解らないが、tournamentに絡んで来る可能性も感じなくも無い...長期的にはKevin Kassese Head Coachの下、安定して強いチームを作って来る可能性も高い。リーグ全体のレベルが底上げされ、どんどん競争が激しくなり、上位校が結構足元を掬われるという今のNCAA Lacrosseを象徴するようなチームだ。
試合後、ロッカールームに引き上げるUNCの選手たちとすれ違ったが、文字通り葬式のような雰囲気。無言。苦虫をかみつぶした様な表情。まさかこんな所で負けるとは思っていなかっただろう。まあ、NCAAのいい所は、こうやってシーズン前半に負けても長いシーズンを通して立て直し、最後に優勝する事が出来ると言う点。切り替えて、しっかり修正して、前を向いて今後に生かそう。

次戦はFace Off Classic @BaltimoreにてPrinceton戦。危険な相手だ。

(ちなみに会場の観客席の隅にはDukeのHC John Danowski氏とアシスタントコーチ達の姿が。PC片手にがっつりUNCのスカウティングをしていた。)

2012年3月10日土曜日

NCAA 2012 Game Review vol.09 Syracuse @Virginia

NCAAラクロス最高!今シーズンここまでで間違い無く最高のゲーム。アグレッシブに点を取りまくるヘビー級の2チームによる殴り合い。K-1黎明期の、脚を止めて、敢えて被弾やむなしで正面から打ち合うKO必至のあの興奮がここに。

オフェンスの個人技術を学ぶなら、この試合を100回見れば間違い無い。

めまぐるしく攻守が入れ替わり、broken situationで容赦なくリスクを取ってシュートまで狙って行く。所謂Coast-to-coastまたはend-to-endで、エンドラインからエンドラインまで行ったり来たりをかなりの頻度と速度で繰り返した。逆転したと思えばまた逆転し返し。激しい当たりと鋭いスティックワーク、そして目の覚める数多くのシュートに彩られた珠玉の一戦。テレビ見ながら心拍数上がりっ放し。日曜の夕方に叫びまくり。

現役の選手の皆さんには是非映像を見て楽しんで頂きたいという想いが強い。学ぶ点も極めて多い上、純粋にエンターテインメントとしても最高に楽しい。もし、これからNCAAを見ようと思っている下級生やスタッフがいたら、正にこういう試合から入ると一気にハマるはず。

ここ数年で、ポゼッション重視でスローペース、stall warningも頻発、ショットクロック導入が叫ばれて久しく、中堅チーム同士の試合では一桁代半ばの点数同士の、野球スコア、下手したらサッカーに近いスコアの試合も時々見られるほどラクロスのスピードは落ちてしまっている。が、そんなことスッキリ忘れさせられてしまう程、華々しく、見る人を魅了するラクロス。

結果は、14-10でVirginia(1位)がSyracuse(6位)を下す。が、Syracuseも決して格下ではなかった。去年7人のAll Americanを卒業で失いながらも、やっぱりSyracuse。強力な選手が無尽蔵に控えている。全く違うメンツで余裕でこの強さ。前半終了時点ではSyracuseが2点リード。火が付いた時のこのチームは間違い無く全米最強。この2チームでの決勝も正直全く違和感が無い。レベル高し。やはりNCAAラクロスはこの2チームが有ってこそ。「SyracuseとVirginiaがいる限りラクロスというスポーツは大丈夫」と思わされた。

見所は、
  • 双方のトランジッションでのアグレッシブさと上手さ。「弾丸ラクロス」ここに有り。特にVirginiaのは本当に感動的。ボールを拾ってからの走り出し。コートの端から端まで積極的にボールを投げ、コート全体を本当にいっぱいいっぱいに使ってのRun & Gun。最っ高にエキサイティングでカッコイイ。
  • Virginiaは、先日のHC Dom Starsia氏のインタビューでも触れられていたが、去年Lovejoyを怪我で欠いた事により、苦肉の策として20年振りにzoneを導入。それが予想外にハマって以来、zone DFは完全に技の引き出しに正式な戦術として装備されている。今回も細かくman-toとzoneを頻繁に切り替えて使用。Syracuseの機動力と大学ラクロス界最高のパスワークを持ってしても尚攻めあぐねていた。今年は間違い無くUVAはzoneを軸に勝利を量産する予感。中からのシュートがほとんど不可能になってしまっていた。
  • Virginiaの#34 MF Collin Briggs (Sr)が去年に引き続き、地味だが効率的。完全にエースMFの座を確固たる物にしている。見ていて非常に参考になる/見習いたいと感じるのは、その効率の高さと合理性。走る際もとにかく脚の回転を速くして、歩幅を切り替えながら、トコトコトコトコッ!とチョロQばりに細かいスペースを切り裂いてDFを交わして行くダッジ。その際に、スティックを短く持って肩よりも低く保ち、身体の前にしっかりキープする事で隠し、囲まれてのチェックを防いでいる。スティックを長く持って、ダイナミックで大きなダッジでズバッ!と抜く派手で見栄えがするタイプではないが、それよりも遥かに合理的で効果的。
  • Virginia, Syracuse共に、シュートまじゲロうま。吐きそう。感動。Cuse #21 ATTim Desko (Sr, Coach Deskoの息子)の股間からのsignatureショットは勿論、その他にも何度も何度も動画で見直したい教科書のようなシュートが何本も見られた。特に、解説者のPaul Carcaterraも指摘していた、Virginiaで伝統的に教えられる、(1) 身体からスティックをしっかり離してテイクバックする事、それによって、①身体/体幹のトルク(捻り)を生んで速いシュートが打てる事、加えて②スティックがgoalieから隠される事により、球筋が読めなくなる事、そして、(2) over handで打つ事(同じく球筋が読みにくい)、と言う「シュートの鉄則」がVirginiaの選手たちによって徹底されている事が解る。特にBriggsのバウンドショットの、クリースの手前付近でバウンドして、下からアッパーカット気味にゴールの上に突き上げるように突き刺さるシュートなど、goalieが完全に置いて行かれていた。
  • 引き続き、昨年のMVP #6 AT Steele Stanwick (Sr)が感動的に巧い。職人。スライドのDFをこれでもかと言うくらいよーく見て、ステップバックしながら、ボディバランスを保ちながら、常にボールを投げられる肩の上のready positionにスティックをかざしながら、的確なタイミングで「どボックス」に鋭くも優しいパスを。これはATの選手は何度も巻き戻し再生して完コピ目指したい。今年も去年以上にアシスト量産間違い無し。
全体的に、UVAはやはり評判通り。パスミスやターンオーバーが目立ったが、3月ならまあこんなもん。逆に、これが4-5月になって締まって来たら結構無敵なチームになってくる気がする。

Syracuseも、若いメンバー主体で全くUVAにひけを取らなかった。いやむしろ下手したら去年よりもバランス取れててフィジカルじゃねえか?という気ぃすら。伸びしろで言えばSyracuseの方が上の筈。だとすると、playoffでの再戦が有った場合、どうなるか全く解らない。早速面白い筋書きが生まれそうな予感。

ハイライト



2012年3月9日金曜日

NCAA Basketball 2012 UNC vol.17 @Duke

さて、その後ラクロスのシーズンが始まった事により一切触れなくなってしまったNCAA Men's Basketball。その後も激熱のシーズンは続いており、UNC(3月4日の時点では全体6位)も所々残念な試合をしながらも、怪我で主力一人を失いながらも、全体としては心強い試合を続けており、僕自身もがっつりフォローさせて頂いている。

3月3日(日)はレギュラーシーズン31試合の最終戦。所属するACC (Atlantic Coast Conference)の終世の宿敵Duke(全体3位)と、ACCレギュラーシーズンの優勝掛けて激突。

実はUNC、数週間前にホームゲームでDuke相手に善戦しながらも、試合終了2分半で11点のリードをDukeによる脅威の3 point攻勢による追い上げで逆転を喰らい、最後は相手エース1年生の#0 Austin Rivers (Boston Cannons HC Doc Rivers氏の息子)によるブザービーターにより、まさかの敗戦。全米の批判に晒された。

それを受けての、相手のホームコート、狂ったようにお祭り騒ぎで盛り上がる学生で埋め尽くされ、visitorにとっては全米で最もやりにくいコートと言われるCameron Indoorでの対戦。

結果は、前半を48-24のダブルスコアで余裕で折り返し、最後は88-70の大差での勝利。前回の敗戦から確実に反省/学びを生かし、相手の攻撃の要である3-pointに対して敢えて外側までDを広げてプレッシャーを掛ける事で潰し、こちらは得意の速攻&インサイドからの攻撃に加え、エース#40 SF Harrison BarnesのNBAレベルの1-on-1 & シュートでゴリゴリにやっちまい、文句無しの勝利。雪辱を晴らすと共に、ACC優勝を手に入れた。Dukeファンに埋め尽くされた会場は、まさかここまで差があるとは予想しておらず、完全に静寂に包まれてしまった。

さて、今後はACCのトーナメントを経て、再来週からはいよいよ一ヶ月の間全米が熱狂する「March Madness(3月の狂気)」、即ち全米約70校が参加して全米チャンピオンを争う、「アメリカの甲子園野球(でも規模と注目度/熱狂度はざっくり日本の10倍)」、NCAA Tournamentが開催される。(僕も早速地元NCで開催される3回戦のチケットを購入...)

UNCはこの試合が終わった時点で全米6位だが、恐らく一歩順位を上げて来るはず。ACC tournament次第では、1st seed 4校の中に入って来る可能性も。優勝に最も近いと言われているのは、11月に1点差でUNCを下した宿敵Kentucky(現1位)、そしてここまで手堅く勝ち続けているSyracuse(現2位)辺り。UNCはここに来て明らかに集中力を増して来ており、圧倒的に噛み合いつつあり、少しずつ期待値が高まって来ている。本来であれば去年の時点で中途退学してNBAに行ってしまっていてもおかしくない選手3-4人が、「優勝のために」敢えてドラフトを見送り、戻って来た今年。才能に溢れながらも頼りなかった一年生達が30試合をの経験経て、少しずつ本来の能力を開花し始めている。一体どこまで行けるのか、2009年以来3年振りの優勝は有り得るのか、今から心臓バクバク言って来た。


2012年3月8日木曜日

NCAA 2012 Game Review vol.08 Johns Hopkins @Princeton

伝統のライバル対決。80年代以降常に強豪であり続けたHopkinsと、90年代にCoach Bill Tierney (現Denver)の指導の下、弱小校から破竹の6回NCAA制覇を成し遂げたPrinceton。

ここ数年はHopkinsでやっていたが、今回は久しぶりにPrinceton。Princetonはここ数年低迷していたが、なぜかHopkins戦だけは10年、11年と勝っている。相性か?

スタジアムには両校のサポーターが詰めかけ、熱気を醸し出している。試合もお互い引かず一進一退の攻防。プライドを掛けた意地と意地のぶつかり合いで、ところどころで激しい当たりも散見され、乱闘寸前のヒートアップも。

結果は接戦の末10-8でHopkins。久々のPrinceton戦勝利。

ちなみにここまで数試合で上級生顔負けの司令塔っぷりを演じたHopkins #42 AT Wells Stanwick (Steele弟)は手の怪我で欠場。

いくつか見所/印象に残ったのは、

  • Hopkins #33 G Pierce Bassett (Jr)の気合いのセーブが凄い。去年から見ていて感じるが、明らかに「クラッチ(勝負所で普段以上のパフォーマンスを発揮するタイプ)」。ここぞという場面で「んマジかっ!?」というセーブを見せる。大事な場面で優れたポジショニングを見せ、Footsave、グラブに当てる、身体に当てる。高校まではラクロス後進地域のArizona。高校選手権の決勝で、試合前のロッカールームで、チームに「7点だけでいい。取ってくれ。そしたら俺が必ず6点以内に抑えて勝つから」と言い、実際に7-6で勝ったと言う逸話の持ち主。彼の存在が今年のNCAA Tournament、Final 4で大きな大きなものになってくる筈。
  • HopkinsのOFがいよいよ完成されつつある。トップから1st setの#31 Ranagan, #9 Greeley, #27 Guida、2ndの#16 CoppersumithというNCAAトップレベルのMFダッジャー達がlong poleだろうと何だろうと物ともせずにぶち抜いて来る。で、隙あらばそこから弾丸シュートを叩き込む、打てなくてもスライドを確実に発生させ、素早く下に落として、サイドを変えて、スライドのマークマン、またはスライドのスライド、そのまたカバーのマークマンのフリーの選手に配給してズドンと決めて来る。これ以上無いくらいシンプル。だが、シンプルであるが故に止められない。これがCoach Petroが一昨年からやりたかったにも関わらずやれていなかった事だったのか。去年まではMFのスターターの経験不足が否めなかったが、ここに来て一気にクリティカルマスを越えつつある。10年は彼らが一年だったためボロボロ、11年の去年に少しずつか立ちになり始め、3年目の今年一気に爆発か。07-08年辺りのPaul RabilとStephen Peyserがいた頃のえげつないMF王国のラクロスが帰ってきつつある。多くの強豪校の中で明らかに際立った、他には真似出来ない「Hopkinsならでは」の形を完成させつつある。正直カッコいい。
ハイライト

2012年3月6日火曜日

ESPNU Lacrosse Podcast 2/29/2012

毎年恒例のweeklyのESPN Lacrosse Podcast by Quint。ロジカルに、熱く、約40分でその週のNCAAの話題をガッと分析して話してくれる。話題の選手やコーチを呼び、突っ込んでインタビューをしてくれる。

今週のリンク

英語の勉強としてももってこいの教材なので、興味のある方は是非iPodなりPCなりに落として毎週3-4回聴いてみてもいいかも。結局リスニングの勉強の最大のボトルネックは教材への興味の持てなさだったりするので...「旧ソ連の経済がその後どうなったか」とか「深海魚の生活」とか、TOEFL然としたイマイチピンと来ないリスニング教材を聴くぐらいなら、SyracuseのMFがやべえ勢いで成長してるとか、VirginiaのSteele Stanwickがどういう事を意識してプレーしてるかとか、来週の試合の見所はどこかとか、そういう盛り上げれる内容を英語で聴く方が圧倒的にsustainableだし現実的。

日本の変な教科書の興味の持てない話題によって、英語に対して全く不要な拒絶感/苦手感/つまらない感を持ってる方は、こうやって自分の好きなスポーツ/映画/ドラマ/音楽を切り口にしてガンガン楽しみながら英語をツールとして使って行く、それらをもっと楽しみたいから英語を進んで楽しみながら勉強したくなっちゃう、というサイクルでアプローチするのが一番手っ取り早い。無駄に苦行というか一人SMばっかやってても長続きしないしストレス貯まるので。

と、余談はさておき、今回の放送で印象に残った点は、

  • Syracuse、去年7人のAll American 4年生を卒業で失い苦戦するかと思われていたが、そして少なくとも現時点ではやはり経験の無さが垣間見えるが、一方で、去年まで目立たない脇役だったMFたちが結構でかくて身体能力高くて強いらしく、徐々に経験を積んで強くなって来ているらしい。Quint曰く、恐らく5月のプレーオフには結構なチームになっている可能性があるとの事。
  • NDにUpsetされたDuke。が、曰く、毎年Dukeは2-3月は結構転けるが、5月に明確にパフォーマンスのピークを持って来るチーム。今負けたからと言ってガッカリする必要は全く無い。Coach Danowskiは前半は敢えて多くのメンバーに経験を積ませ、競争させ、試行錯誤する事で成長効率を高め、シーズン後半にぐっと作り込んで来る、明確に如何に5月の最高到達点を高くするか、を軸にチームを作っているという話。
  • Virginia #10 AT Chris Bockletのインタビュー。#6 AT Steele Stanwickの入学時以来の相方。二人でガンガン2 on 2をやり、また、クリースで頻繁にフリーを作り、Steeleのフィードを受けバッシバシに点取りまくり。ザ・クリース職人。超省エネ高効率で得点荒稼ぎ。「何を意識してるの?」という質問に対し、「クリースではとにかく絶えず脚を動かし続ける事。」そして、「何で必ずシュートはoverhandで上から振るの?」に対しては「結局それが一番成功確率が高いから。自分は高校時代に既に相当シュートは完成したと自負していたが、大学のハイレベルなGoalieを相手にした時、途端にside armは入らなくなってしまった。コースを読み易いから。もちろん、一般論ではside armの方が、単純な弾の速度自体は速くなる。そして、中には時速160kmでシュートを突き刺せるため、ロングシュートはサイドで打った方が入るという恵まれた一握りの選手がいる事も事実。ただ、自分の場合、というか多くの選手の場合それは出来ない。結局目的はゴールを決める事であり、速いシュートを打つ事ではない。スティックが隠れる上、高低差が出る事でゴーリーが球筋を読みにくく、軌道がより正確になり、狙ったスポットを確実に捉えられる上降り/overhandか3 quarter(45度)が最も得点に繋がり易いと経験から/統計的に学んだ」との事。元HopkinsのAll American GoalieのQuintは「俺も現役時代、君みたいなシューターが一番やりにくかったよ。縦振りでポストの内側に当ててくるようなシューターが。」とのこと。これは非常に示唆深い。

2012年3月4日日曜日

Maverik新CM - The Future is Here

毎年TVでNCAAの試合を見る上で、一つの密かな楽しみは、ラクロス関連のCM。今年放映された数試合で再三目にしているのが、MaverikのThe Future is Hereという今シーズンのCM。

Maverikは去年Boston Cannons #99 MF Paul Rabil (Hopkins 08)がWarriorに移籍するまで、彼を軸にしてカッコイイCMを作り続けて来た。

今回のもまたMaverikらしい、選手の心の琴線に触れる、オサレで渋カッコイイCM。余りにも心を打って、自分のアドレナリン/脳内モルヒネの蛇口をぐいっと開いてくれたので、選手の皆さんも自分のやる気を引き立てる上で役に立つかもと言う事で紹介。


ちなみに高画質版はこちらのMaverik websiteに(リンク)。

今年からMaverikと契約したスター選手たちをふんだんに使っている。去年までのPaul Rabilという大黒柱一本やりから、複数選手の競演という形に方針転換している。が、契約してるのは、いずれも只単に優れた選手であるだけでなく、生き方やプレーに「スタイル(粋/味)」が醸し出される、子供達に人気の若い選手ばかり。

  • Denver Outlaws #57 MF Peet Poillion (Ohio State / UMBC 09)がグラウンドで、ゴールに向かって一人孤独に黙々とストイックにバッグいっぱいのボールを延々シュート練習(ちなみに全部コーナーの内側のポストに「ガゴッ!!」と当てている...)。すると、仲間でもあるCharlotte Hounds (去年まではDenver Outlaws)#10 AT Billy Bitter (UNC 11)が とことこと同じくバッグいっぱいのボールを持って同様にシュート練習に。お互いを認識してニコッと「おっ、頑張ってんね。俺も負けねえよ。」と共闘の笑顔。
  • 別の選手(多分BayhawksのDF Joe Cinoskyかな?)が一人黙々と片田舎のあぜ道を走っていると、農家の倉庫のレンガの壁で黙々とwall ball(壁打ち)でstick-workを磨くBilly Bitterを目撃して、思わずニッコリ。
  • Virginia 05 MF Jonn Christmas (元NLL/MLL)がkidsをクリニックで指導してる横で、ルーキーのRochester Rattlers #23 MF Jovan Miller (Syracuse 11)が鬼シュートをぶち込んでるのを見て、先輩のJohnが「いいねっ!」(これまたパイプの内側にバチッと当てている)
  • ロードワークをしに来たBitter。砂浜で(彼の得意技でもある)swim dodgeでダブルチームを交わすkidsを見つけ、「おっ!やってるね!」と微笑む。そして、"Growth is never by chance"(成長は偶然や運によって生み出されるんじゃない。自分の意思の力、努力によってしか手に入れる事は出来ない。)、" The future is here"(未来ってのは、「今」だ。つまり、今の自分が何をやっているか、どういう時間を過ごしているかによって未来は決まんだぜ。思い描く未来を手に入れるために、今、やるべき事をやろう。[辻先生の言葉を借りると「今に生きる」べし])という力強いメッセージが。

思わず、「うん。そうだ。」と頷いてしまった。時々見てやる気の起爆剤、常にセルフイメージを大きく保つための材料として利用しよっ、と思った次第。