2010年5月31日月曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 35 Tournament Semi-Final第二試合Virginia-Duke

これぞNCAAラクロス。この素晴らしいスポーツに出会えたことに感謝…個人的にはGame of the year/今シーズンのベストゲームだと思う。去年のSyracuse-Cornellの決勝並み、07年のDuke-JHUの決勝並みの手に汗握る名勝負。死闘と呼ぶに相応しい、最後まで勝敗の行方の読めない激戦。そして、最後にドラマが待っていた。家でHigh Definitionで試合を見ながら、絶叫しすぎて声が枯れてもうた…

開始前から事実上の決勝戦とも言われる一戦。今シーズン3度目の対戦。リーグ戦ではDukeがVirginiaに今シーズン唯一の黒星を付け、二度目の対戦となるACCトーナメント決勝では前回の負けを受けて修正して挑んだVirginiaがリベンジを果たす。双方の試合で明確に勝敗を分けたのはGround ballとFace off。得点力の高い2チームの戦いはPossessionが高い確率で得点を意味し、ハイスコアな展開必至。Offenceの回数がダイレクトに勝敗に繋がって来る。今回の試合でも両コーチともに、GBとFOを制したチームが勝つと言い切る。

解説者のQuint Kessenichが言っていたが、大体Bratton兄弟と初めて対戦するLSMは、初めて彼らのDodgeを見たときに想定していた以上の速さにびっくりすると。Virginiaは先週のStony Brook戦でメンタルな脆さを露呈。恐らく殺人事件の影響が出始めている。Virginia fanの中にすらさすがに今回は厳しいと見る者も多い。DukeはQuinzani, Crottyという最強5年生AT 2枚を抱え今まさにパフォーマンスのピークを迎えるも、1年生のGが弱点。

試合の見所

立ち上がり、Duke ATの無駄なOff sideからのExtraでエースAT、UVAのQuarter Back(司令塔)、2年#6 Steele Stanwickからのフィードで手堅くUVAが一点。その後DukeがRideからのBroken situationでチームで繋ぐ一点で同点に。その後暫く、お互い緊張しているのか硬さが目立つ。双方Clearで初歩的なTurn overを繰り返す。

Stanwickが高い期待値に応えるべく均衡を破る2連続ゴール。Duke 2点目、EMOでのTurriのStanding shootが教科書。しっかりヒップのターン、体幹のコイルを使い、Over handで高い打点から低いシュート。Shooting projectの選手たちは100回見たい。

UVA Shamel BrattonがまたSickなシュートを。左で来るのが分かっててLSMが鬼左切りしてるが、それを右に振って転ばして交わして、パスフェイクをサクッと入れてSlideを外して、Long rangeでピンポイントでGの左脇に叩き込んでくる。これマジで一日30回見て、ボール貰ったところからの一連の動きとして完コピしちゃいたい。たとえRestraining line付近であったとしても、マジでほんの一瞬、ほんの一歩分の間合いを与えちゃったらおしまい…

2Q、Duke 3点目、EMOでのMcKee(DのUS代表McKeeの双子)のゴール裏からのトップのスペースへの飛び出しの思い切りの良さ、スピード、動きの大きさ、そして振り返り際のシュートの体の使い方。Duke 4点目、Turriの2点目が印象的。頭と肩のフェイクをスパンッ!と入れることで、たった一歩のステップで相手を置き去りにするSplitから再びOver handのロングシュート。Dukeの1年生G、Wigrizerがやはり緊張しているのか、動きが堅く、失点を許し続ける。UVAのDはDukeのAT 2枚看板を徹底的にFace guardする作戦。前半無得点、無アシスト。この2枚からはほとんどSlideには行かない方針。EMOでもCrottyをFace guardして5 on 4状態。一方でそれが完全に当たり、前半2人の得点を完全に封じることに成功。

後半、5年生AT #8のQuinzaniによる6点目、Fast breakでのチャンスと見るやの爆発的加速っぷり、右手のRunning shootの、「ビシッ!!」っていう振り切りが相変わらず素晴らしい。シュートマジで巧過ぎる。彼のシュートは4年前からいつもそう。必ずしも全体重を乗せる訳ではないが、振り切りが鋭く下半身を安定させて打つため極めて正確。一瞬目を疑ったが、Shamelが3QでBehind the back(背中側を通しての持ち換え)のSplit dodgeを見せる。Stick trick contestではよく見るが、試合でガチでやるんかい!?

その後、Duke 7点目、21番HowellのDive shootがカッコよすぎて吹いた…今まで見たDive shootの中でもOne of the best。8点目、Ned Crottyの同点シュートが素晴らしい1 on 1の教科書。XからBest DFのClausenをスピードで抜き、完全にFade awayで後ろ向きにシュート。この技術を身につけられたらATとして相当な破壊力を手出来るはず。ちなみにMVP最終候補はこの二人と言われ始めており、今回の1 on 1でほぼCrotty優勢を印象付けた。9点目、EMOでのCrottyからQuinzaniの鉄板コンビネーションで9-8 で遂にDuke逆転。Crottyのフィールド全体を見る視野、パスの鋭さ、(細かくて見落としがちだが)QuinzaniのDoor step(ゴール前)での貰った瞬間に、よーく見るとそのまま表にターンするんじゃなくて右足を軸足にして後ろ向きにクルンとロールターンしてDをツルンとかわす動きが職人芸。これはATは反復して是非覚えたいmovement。

9-8、Duke一点リードで最終Qに突入。

その後お互い譲らぬ一進一退の攻防が続き、4Q半ばでVirginiaが12-11で再び一点差に詰め寄る。「心が折れる」ことが心配されたUVAだが、気持ちは切れていない。Stony Brook戦でゴリゴリの接戦を乗り越えた経験が心を強くしたか。その後残り5分の重要なPossessionでDuke 3年AT #21 Howellの気合のStanding shootで再び2点差の13-11に突き放す。

残り2分半、プレッシャーDで奪ったボールからのFast breakでBockletが審判を白ユニフォームの見方と間違えてパスするという痛恨のTurn over。万事休すか。が、残り2分のRideからのGround ballからFast breakでStanwickがほとんど気持ちだけで決める。13-12の一点差。更に頼れる4年生キャプテン、#36 Carrollが右手で魂のシュートをねじ込み、残り1分20秒で13-13の同点に。会場のボルテージは最高潮に達する。Virginiaが奇跡の逆転ドラマを描くのか?去年の決勝、Syracuseによる残り6秒での同点劇が脳裡をよぎる。残り1分でDuke PossessionでTime out。

勝利を掛けた最後のオフェンス。エース#22 CrottyがXでボールを持ち、Patientにチャンスを伺い、ベストDのClausenに一騎打ちを挑む。優勝への最後の望みを繋ぐ、1 on 1から、ゴール前にいた、入学以来の親友、チーム得点王の#8 Quinzaniへのフィードが通り、Quinzaniが針の穴を通す正確なシュートを決める!残り12秒で14-13のDukeリード。最後のオフェンスに望みを繋ぎたいVirginia、最後のワンプレー、というところで、何とまさかのOff side。そしてそこで試合終了。愕然とするVirginiaの選手たち、狂喜乱舞のDuke。観客は総立ち。これぞNCAA。マジで皆是非DVD見て!こんな試合そうそう無いので!頑張ったけど1%も伝えられてない。物凄い試合。梅ちゃん、コピー量産/鑑賞会頼む!

いざ決勝へ

さて、月曜日(祝)の決勝戦。どっちが優勝しても初優勝。NCAA Men’s Lacrosse Championshipの歴史上、92年のPrinceton以来の初優勝校ということになる。歴史的な一戦。リーグ戦では、シーズン初期にNotre DameがDukeから金星を挙げている。言うなれば天敵。Dukeの爆発的攻撃力を誇るAT2枚看板のCrottyとQuinzaniを、Notre DameのDとRodgersがどこまで止められるか。

タレントの不足を戦術と気持ちで乗り越える雑草軍団Notre Dameに対する共感も大きいが、一方で、DukeはRape Scandal(06年に選手がパーティーに呼んだStripperをRapeしたとして訴えられる。裁判の末冤罪が証明されるが、その影響で当時のHCは辞任し、1年NCAAを棄権、ラクロス、Dukeのイメージを傷つけるという結果に)を経験した最後の世代。5年生のMax QuinzaniとNed Crottyは、優勝候補といわれ続けた挙句あと一歩のところで毎年潰いえて来た悲願のNCAA Championshipを目指し最後の望みを懸ける。志半ばにして08年に引退した先輩AT、Matt DanowskiとZack Greerの最強ATコンビの意思を継ぐ。DukeはScandalの影響による1年延長制度(5年生でのEligibility)の最後の年となる今年優勝できなければ当分無理だろうとも言われている。07年の決勝、08年での準決勝での悔し涙を見てきた自分としては、Dukeに優勝して欲しいなという気持ちも強い。

どっちが勝っても号泣しちゃうかも…今から楽しみ。

最後まで戦い抜いたVirginia

シーズン最後の事件で、本当に精神的に苦しい3週間だったと思う。HCのDom Starsiaは事件の直後に父を亡くすという不幸にも見舞われた。警察や学校から聞き込みを受けながら、メディアや国民の注目を浴びながら、疲労が色濃く顔に刻まれていた。ここまで戦い抜いたUVAとStarsiaに心から拍手を送りたい。しかし、来年、この修羅場を乗り越え、主力のほとんどが戻ってくるUVAが一体どれだけ無敵になるのか想像も付かない。

試合ハイライト

いたる@13期

2010年5月30日日曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 34 Tournament Semi-Final第一試合Cornell-Notre Dame

またしてもNotre Dameに予想を裏切られた。一回戦のPrinceton、準々決勝のMarylandに続いてこれで三度目。(ワタクシの予測既に一回戦からズタボロ…)Cornellオフェンスを封殺して、12-7での手堅い勝利。ほぼ全ラクロスファンの予想を裏切り、ついに決勝に行ってしまった。ここまで来たらもう笑って応援するしかねえなあと思わざるを得ない。

まずは試合の見所から。

CornellがクリースからLangの得点で先制するも、その後NDがチームOでボールをシェアしていい形で2点を返す。2点目のTriangle offenceは完璧な形。GoalieのRodgersがまたしても鉄壁のセーブを連発。1Q終了間際にCornell #3 AT Pannellが判断ミス。残り30秒でボールを保持しながら、早いタイミングでシュートを打ってしまいTurn overに。Possessionを奪還したNDはそのままQ残り6秒でMFのAdam FelicettiがDを3人交わして崩れ落ちながら得点し、3-1に。

2Q以降もNDのクリース前を徹底して固めるDがハマり、Cornellは攻めあぐねる。Cornell2点目のPannellのXからの1 on 1、1年AT #6 Mockへのフィード/得点でのMockのクリースでの裏取り/「Spaceを埋める」動きに注目。

しかし、プレーオフも3試合目になってくると…今頃になってやっと理解してきた…NDって、もしかしたら、思ってたより、強いのかも…というか、「本当に」強いのかも…全米で多くのラクロスファンが同様に感じ始めてるかも。

2Q終了前に残り3分、CornellはMockの得点で5-3とし再び2点差に詰め寄る。クリースでのOff ballの動き、及びキャッチしてからシュートまでのBanana moveでDをかわしつつゴールに向く動きが賢い。前半終了間際のND #11 AT Hicksの得点がATの選手は是非真似したいInside role。Quintも指摘している通り、早いタイミングでRole turnするミスを犯しがちだが、Hicksはかなり表まで行ってからターンしているため、シュートを打つのに十分な角度とスペースが生まれている。

3Q、ND 7点目、MF #28 Brennemanの得点、左利きだが右での長い距離のRunning shootに違和感を感じずに決めてくる。直後のCornell 4点目、1年生AT Mock の3点目、MFのトップからの1 on 1の際のゴール裏からこっそりSneak inしている動きが賢い。

最後は試合終了残り5分で3点差を負うCornellがゴーリーをDに出してダブりに行った為さらに点差が開いて試合終了。終わってみれば12-7でNDの圧勝。Notre Dame Fighting Irishが学校の歴史上初めての決勝進出を決めた。5年生G、キャプテンのScott Rodgersが15セーブの大活躍。でかいのはでかいが、やっぱり読みと反応、ポジショニングの良さとHand speedがかなり大きく効いている気がする。

決勝ではDuke Virginiaどっちが上がって来たとしてもOffence力は国内Top。Rodgersと鉄壁Dがどう抑えるのか今から楽しみ。

さて、ここで一歩立ち止まって、Notre Dameについて考えてみる

(関係者以外で)全米でNDの決勝進出を予想していた人はほとんどいないんじゃないだろうか?Las Vegasのギャンブルでも完全に万馬券状態に。しかし、今まで見てきた15年分近いNCAA Final Fourで、ここまで不思議な、というか「変な」決勝進出チームは見た事が無い。なんでNDがこんなにもUnderrated(馬鹿にされてきた)で予想外なのか、そして、なぜそれをひっくり返し、ここまで勝ち続けて決勝まで辿り着けたのかを一歩立ち止まって考えてみる。

Why underrated? (1)学校の立地と歴史、「キャラ」

そもそもIndianaというという中西部。ラクロス的には完全に田舎。ラクロス部自体の歴史は決して新しくないが、NCAAトーナメントの常連になり始めたのはこの15年くらい。HopkinsやSyracuseやIvy leagueのチームなど歴史ある強豪に比べると未だ新参者のイメージ。

加えて、大学スポーツ界に於ける「芋キャラ感」が否めない(失礼!)。Fighting Irish。紺にゴールドにIrish Clover Greenの地味カラー。元々アメフトが強い時期もあり、地元工業地帯のBlue colorたちの星として一時代を築いていたが(映画RudyもNDが舞台)、最近は完全にパッとしない。それでも昔の栄光に浸り、未だに夢を見ているファンも多く、『Football hangover』と揶揄され、痛キャラ扱い。

東海岸のEstablishmentのエリート学校から見ると、「何?あの芋チーム」となる訳だ。

Why underrated? (2)採ってる選手個々人の「素材」としてのレベル

当然、Recruitingに於ける人気も一段落ちるため、取れる選手のレベルも一段落ちる。従って、これまた上位校のBlue chip(一流)選手たちと比べると「ああ、あの残りっかす軍団だろ?」と見えちゃう。見ていると、得点シーンもDukeやVirginiaやSyracuseみたいな、口あんぐりな素晴らしいシュートはそんなに多くない。ドタバタやってゴリッと捻じ込む感じ。パスやダッジやシュートやDのチェックの動きも、NCAA上位校特有の「ビシッ!バシッ!!」という小気味良さや、滑らかさを感じさせない…ぐちゃっ、とかねちゃっ、って音が似合う感じ(これまた失礼!)。

Why underrated? (3)Visual

加えて、「見た目」の違い。Virginia、Duke、Syracuseの主力選手たちは均整の取れた骨格で、多くの場合でかくて筋肉量が多く、Athleteの体をしているのが見て取れる(加えて往々にしてイケメン)。一方でNDは上手くてもちょっと身長が低かったり、高くてもヒョロッとしてたり、ユニフォームがブカブカに見えたりして、何だか見た目が頼りなさげ。つかユニの短パン短くね?メットが強豪校やMLLのDefacto Standard、流線型でスピード感のあるCascadeのPro7じゃなく、Riddellなるメーカーのエラが張ったドボッとしたメットだからか?何なんだろこの見た目のモッサリ感は…

正直、見ていてホントにそんなに強いのか?と思わされてしまう。VirginiaやDukeのファンたちも恐らく表立っては口にしないものの、同じようなキモさを感じてるんじゃないだろうか。そりゃ認めたくねえわな…

Why underrated? (4)今年の成績

昨年はリーグ戦15戦全勝で文句無しのトーナメント出場だった。が、今年のリーグ戦の成績は、Rodgersの怪我の時期に負けが込み7勝6敗。NCAAトーナメントも出場できるかどうか微妙な、Bubble(崖っぷち) teamの一つで、直前まで選手たちですらお呼びが掛かるかどうか相当微妙に感じていたと言う。実際にNDの名前が呼ばれたとき、より良い成績を収めていたGeorgetownをNDの代わりに出すべきだという声がファンからかなり上がった。

(ちなみにND選出の理由は、勝敗数だけではなく、SOS: Strength Of Schedule: 対戦相手の強さ、及び、強豪校への勝利(NDはDukeとLoyolaに勝っている)が重く見られたためと言われる。実際にTournamentでも格上を三度に渡って倒したわけで、優勝する確率がより高いチームをトーナメントに出す、という目的に基づくと、単純な勝敗数ではなく実際に上位校を食う番狂わせの実績があるチームを優先するというやり方は今回のNDの快進撃を見る限り実際に機能していることになる)

こうやってNDが決勝に進出したことで、それまで「NDを出したのは意味不明!」と叫んでたファンは「うぐっ…」と黙らざるを得なくなった。

Why underrated? (5)凸凹、歪さ

チームとしての強み弱みが物凄くハッキリしている。ほとんど全ての要素で「優」を取っていて、ATやGなどピンポイントで「特優」を取っている優等生の通知表のようなVirginiaやDukeに比べると、Notre DameのSpider chartはむちゃくちゃ歪んでる。Gが突き抜けて最強レベル、Long stickが「優」、MFのDが「良上」、MFの1st stringのOffenceが「良」で、その他のMとATは赤点スレスレの「可」、みたいな。実際に得点の50%はMFの1枚目から、ATはリーグ戦を通して10数点と、点を取るという仕事に置いてはほぼ空気並みの存在感だった。その頼りないAやMの2ndを見ると、とてもトーナメントで上位に食い込んでくるチームには見えなかった。ファンたちが「けっ!どうせNDだろ?」と小バカにしていたのも理解できなくも無い。

じゃあ、何故勝ってるのか?(1)身の丈に合った戦い方

凸凹のところで述べたことの裏返し以外の何者でもないんだが、要は自分たちの身の程を知り、全部の要素でまともに渡り合うことは端から捨てて、自分たちが得意なことだけに尖りまくった戦い方を取ってるから、ということになるだろう。Possessionは最大の防御の考えに基づきひたすらLoose ball、FOを大事にし、ボールを共有しまくり。MFの1 on 1とBreakの数少ないチャンスを確実にモノにする。Dではお馴染みの超Tight packでクリース前を固め、遠い距離、薄い角度からはダチョウ倶楽部ばりの「どうぞどうぞ」でガンガン打たせてRodgersに任せる。

じゃあ、何故勝ってるのか?(2)キーとなる選手たちは確かにレベル高い

GのRodgersは文句無し。でもDも#35 Ridgwayを始め、実はかなり堅い。またMFの1枚目の#33 Earl, #12 Krebs, #28 Brenneman辺りは確かに身体能力も高く、技術も確か。華は無いが確実に仕事をこなせる主力級の選手は確かに揃っている。ブランドが無いが故にメディアの注目に晒されて来なかっただけという面も。

今年のNDを見て、なるほど、爆発的な得点力とスター軍団に支えられた所謂典型的な「強いチーム像」に当てはまるチームじゃなくても強烈な強み/尖りがいくつか有れば、戦い方によってはイケるのね、と思わされた。ラクロス観を広げてくれるチームだ。「エリート感」や「強豪ブランド」の無さなんて物ともせずせずに我が道を信じて突き進む。雑草魂、Underdog魂が大好きな僕としては、ここまで来ると身を預けて応援したい気持ちにもなってくる。

最後にちょこっとCornellについて。

さて、応援していたCornellもついに準決勝で姿を消す。残念。試合終了後のHC Jeff Tambroniの表情から悔しさが滲み伝わってくる…一方で、メンバーを見渡すと主力のほとんどが1-2年生。Pannell, MockのAT、GとD2枚の柱。今の高校レベル、Hot bed(東海岸中~北部)以外でのラクロス普及が加速し、Cornellがここ数年の成績とTambroni株の急上昇を受けてRecruitingでの求心力を増すとすると、恐らく来年、再来年も確実に上位争いに絡んでくるんじゃないだろうか。来年以降に期待!

Highlight video

いたる@13期

2010年5月29日土曜日

Cornell Head Coach Jeff Tambroni

深夜3時に無事Santa Barbaraの我が家に到着。今日は連休前の金曜なので午後はとっとと仕事を切り上げて帰り、浜辺で波の音を聞きつつビール飲みながらInside Lacrosse Podcastをチェック。まあ、たまにゃあ完全に脳みそ溶かす週末ってのもありかなと…

昨年のCornell 09の準優勝メンバー、MVP(Tewaaraton Trophy)、現Denver Outlaws MFで、Team USAの柱でもあるMax Seibaldのインタビュー(リンクはこちら)。運動能力測定検査では、Cornellの全スポーツを合わせた中でも最高レベルの身体能力を発揮していたという。185cm 90キロ、脚もクソ速く、シュートは全てをなぎ倒す破壊力。去年のFinal Fourで初めて見た印象は、『馬のように走れる熊』。

もともと「古豪」でありながら、この4年で3度のFinal Four進出を果たし、一気に注目を集めるCornellと、それを率いる若きリーダー、Head coach Jeff Tambroniについていくつか面白いコメントがあったので紹介。チームとして、リーダーのあり方として余りにも学びたい点が多かったので。

1.Tambroniの実績

そもそも、Tambroniはラクロス界でもここ数年確実に結果を残し、尊敬を集めているが、CornellがIthakaというNY州北部の田舎(失礼!)にあることに加え、Syracuse、JHU、Virginiaに比べるとラクロスに於ける「格/ブランド」が落ちるため、必ずしも最も注目を集めてきた訳でもなく、その人となりに関して広く知られている訳ではない。そんな中、Seibaldは「Tambroniは今よりももっと全然Respectを受けて然るべきだ」と主張する。毎年毎年「どうせCornellは噂だけだろ、今年こそは駄目だろ。Cornellが5位以内は無いでしょ。すぐ化けの皮剥がれるよ」とクソミソ言われながらも毎年必ずその期待値を裏切るいいチームに仕上げてくる。

Cornellは上位5-6校に比べると、有力選手を獲得するのは簡単ではなく、実際に入学時の顔ぶれでは正直それらの学校と比べて1-2段落ちる。そのハンデを乗り越えて毎年確実にFinal Fourに残ってくるというのは、明らかに他のコーチには無い何かを持っていないと出来ない。表面的なTrack recordでは図れない、ROI(Return on Investment/投下資本対効果: 与えられた素材/環境に比しての達成度)の指標で見ると、恐らくNCAAの中ではぶっちぎりの結果を残しているということになる。上位5校から遥かに落ちる素材を与えられながら(分母が圧倒的に小さい)、彼らと並ぶ/超える結果を残しているので(分子がでかい)。

2.人間力/リーダーシップ

以前Interviewを受けていたエースAT 2年#3のRob Pannellも、彼とコンビを組む4年#26AT Hurleyも、そして今回のSiebaldも口を揃えて、Tambroniのリーダーとしての資質、人格、日本語で言うところの「人間力」の高さを指摘している。若くてロッカールームでは選手たちにとって親近感のある兄貴分でありながら、いざ練習や試合になると強いリーダーシップを発揮する。Off the courtでも絆や礼儀を大切にするGentlemanだと。その人柄に惚れて、ある意味「粋に感じて」、「この人について行こう」と選手たちが思うからこそ、他の強豪チームを超える「プラスアルファの何か」を生んでいるように見える。

加えて、先日の記事でもちょっと書いたが、ラクロスやゲームに対する愛情、ある意味狂信的とも言える情熱。それが常軌を逸した熟練を生み、選手たちの中に憧れやエネルギーを生んでるんだろうか。インタビューで話しているのを聴く限り、沈着冷静で超Logicalな言葉の奥底に、青白く燃える熱い炎が見え隠れするのが感じられる。

3.選手を見る視点/軸の違い

リクルーティングや出場選手を選ぶ際の目の付け所、Criteria(判断基準)が明らかに他の一流コーチたちとも違うように見える。特待生制度/奨学金が使えず、高い成績が要求される癖にラクロスでのブランドが一流校からは一段落ちるCornellならではの事情と、彼自身のスタイルに拠る部分が大きいだろうか。
必ずしも生まれ持っての驚異的な才能に恵まれてなくても、「Work ethic」即ち、上昇志向/学習意欲があり努力する能力/習慣がある選手、高校の時点で必ずしも完成していなくても、教えればその後大きく化ける「伸びしろ」の大きな選手を意図的に採っているとのこと。

加えて、Quintも以前触れていたが、恐らく頭のしなやかな選手、彼の考えるLacrosse theoryを合理的に理解でき、自ら思考し、実行できるLacrosse/sports IQのある選手という視点も重視してるんじゃないだろうか。

4.健全な競争原理

Seibaldの、「Cornellはなぜこんなに強くなるの?」という質問に対する答えが面白かった。Tambroniは基本的にどんなに優秀な選手も決して固定する/ポジションを約束することなく、「毎日がTry out」というスタイルを取り続けるらしい。Seibald自身も(これだけ明らかに突き抜けた能力と技術のある選手でありながら)決して自分がスタメンとして安心出来るポジションにあると感じなかったとのこと。Tambroniからの「努力し、成長しないなら、君がいる意味無いよ?パフォーム出来ないなら他に代わりに出たい下級生はいくらでもいるんだよ?」というプレッシャーを常に感じていたと言う。オープンで健全なCompetition(競争原理)。それを最初だけじゃなくてずっと継続すること。これこそがチームを強くする力、Work ethicの源泉だと言う事か。

そんな中だからこそ、高校ではUnprovenだったPannellは昨年1年生からチームの大黒柱になり、ラクロス過疎地Minnesota出身で、Ice hockeyからの気分転換の積もりでLacrosseを始めたHurleyは、いまやPannelと共にAT2枚看板を背負うまでに成長した。一年で突然変異的な急成長を遂げゴールを守るFioreもその恩恵をもろに受けた一人だろう。もう一人のATのMockやDの柱二人も1年生。UNCのように当初は調子よくても伸び悩むチームがある中、Cornellがシーズンを通じて高いモチベーションを維持し、チームとして変化/成長し続けている理由の一つがその辺にあるんだと思う。

5.Chemistry再び

以前DukeのNed Crottyのインタビューの話でも紹介したが、またしても”Chemistry”(相性、お互いを理解し合う事)の大切さに関する話が出ていた。NCAAを見ていると、日本でラクロスに触れていた頃に比べると圧倒的にこの言葉/概念に出会う頻度が高い。AT 2枚看板(PannellとHurley)を見てどう思う?との質問に対して、ChemistryとWork ethicが強みだと答えていた。Pannellの入学直後から二人でシュート練習をし、ネチネチと2人で2 on 2を練習しまくっていたと。上から、裏から、横から、一人が抜いて一人がカットと。

この辺の、2 man gameに対するSensitivityがNCAAのオフェンスでは圧倒的に高いと感じる。自分が日本でやっていた時はただひたすらに個人で強くなれば結果としてAT 3人としての強さがついて来ると思っていたが、NCAAくらいに高いレベル、個としての能力/技術は飽和点近くまで来てるレベルになると、やはりそこから先のMarginalな差を生む要素として、同じように2 on 2を鍛えるアプローチが必要になってくるんだなと。個として十分に鍛えきった上で、という前提で、時にはATの2人、3人で敢えてコンビプレーの練習をゴリゴリやり込む、一緒に飯食って仲良くなる、ってのはそれはそれで意味があるのかも知れないなと思った。

いよいよ明日はFinal 4。既に当初のFinal 4の顔ぶれ予測(UVA, Duke, Maryland, Syracuseで、決勝UVA-SyracuseでUVA優勝)は2週間前に無残に砕け散ってしまったが、敢えてまた予測すると…UVA-DukeはびっくりするぐらいDukeの圧勝。Notre Dame-Cornelは無茶苦茶タイトな試合で、8-6みたいなスコアでCornell。決勝は拍子抜けするくらいDukeの圧勝で、Dukeが悲願の初優勝のパターンじゃないかと。See what happens…(過去の優勝/準優勝校リスト

先日21期のオリケンからメールにて選手数人とFinal fourを見に行くとの連絡を受けた。あの独特の空気に触れ、脳幹痺れて筋金入りのラクロス馬鹿になって帰ってくるに違えねえ、と思った。本当に素晴らしいこと。失うモノなんて何も無いんだし、失敗や恥かしい思いなんて今のうちにしたもん勝ちなんだから、引き続きガンガン国境越えていくべし!必ず今まで見えていなかった何かが見えるし、その後の人生の幸せの引き出しが増えるので!

いたる@13期

Standing Shootに関するインタビューでのコメント

Memorial Weekend(5月最終週、Memorial day(祝)の週末=NCAA SemifinalとFinalが行われる)を目前にした木曜日。Seattleへの出張からSanta Barbaraへ帰る飛行機の乗り継ぎで、San Franciscoにて飛行機の遅れで深夜に3時間の足止め。とほほ。てな訳で、空港のベンチでビール飲みながら暇つぶしがてら…

いくつか、今週のESPNU Lacrosse Podcastを聴いての話題の紹介。

Notre DameのMFの柱、4年生、#12 Grant Krebsのインタビュー。先週のPrinceton戦でのUpsentに関しての会話の中で出てきた話で、なるほどなーと思わされた話。Standing shootに関して。

①リリースの早さ

「Princeton戦も含め試合中にいいStanding shootをよく決めてるけど、どういううことを意識してるの?」との質問に対して。「自分の場合、とにかくシュートそのものの速さもさることながら、ボールを受けてからリリースするまでを如何に早くするかを高校時代から大学に入ってからの4年間ひたすら練習してきた。ボールを貰った形がシュートのテークバックのMaxの状態にして(ボールをキャッチする瞬間の引く動作とテークバックの引く動作の最後の数センチが重なるイメージ)、クレイドルを一切せずにボールに触れた瞬間にシュート出来るようにしてきた。ボールの速さそのものと言うよりも、貰ってから打つまでの速さにゴーリーが反応できないんだと思う」と。

本当にTapする感じ、クリース前でちょこんとTouchしてシュートするあの早さでStanding shootを撃つって言う。

自分も学生の頃意識してはいたが、ここまでExplicitにこの要素を切り取って、ここまでのこだわりをもって、「自分の誰にも負けない強み」にまで高めてる人はなかなか見たことが無かったので非常に印象深かった。この要素に関しては純粋に練習次第なので、東大のシューターたちの中にも「捕ってからのリリースの早さだきゃあ日本一」、みたいな選手が1年後、2年後に出てきても全然違和感無い気がする。

②Point vs Area(速さと正確さのトレードオフ)

また、非常に示唆深かった会話が、Quintの「君は、一点を狙う”point shooter”?それとも、どちらかと言うとエリアを狙い、全力で撃つことを優先する”area shooter”?」という質問。なるほど、そもそも学生時代にただ一点を狙うことだけを考えて練習していた自分からすると”area shooter”という定義/発想の存在事態が盲点だった。それに対してKrebsは、「自分は完全にArea派だと思う。とにかく球速重視で、『大体この辺』で、(少なくともゴールの枠からは外れないように)大雑把に打つ。結果として、返ってゴーリーが予測出来ないという効果を意図的に狙っている部分もある。同僚のScott Rodgersも俺のシュートはホントに予想できないと言っていた」とのこと。

確かに、1年位前にMLL Denver Outlawで点取りまくりのスターMF、Langtryが全く同じことを言っていた 。某Gのインタビューで、「最もシュートコースが予測できない選手はLangtry」とのコメントに対して、「ぶっちゃけ自分ですらどこ行くか分かんねえし!はは!」みたいな話だったと記憶している。なるほど、逆にそういうやり方/考え方もあるのか、と納得した次第。

①正確さとクイックリリースとのトレードオフ、②正確さと球速のトレードオフ。こっちを取ってこっちを捨てる、この要素のダイヤルをこのレベルに合わせて、その代わりにこっちの要素のダイヤルはここに合わせる、みたいな戦略的な意思決定があるんだなと思って面白かった。要は、どんなに弾が速くても、「打つよん打つよん」と2、3回クレードルして、打つべきところに打っちゃったらがっつりセーブされちゃうっていう。

NCAAやMLLのレベルでは多くの選手がピンポイントでゴールの隅やゴーリーの股下に恐ろしい精度で突き刺してくるので、Area shooterは明らかに少数派だとは思うが。であるがゆえに逆にPointシューターに慣れてるゴーリーからすると予測出来ないことが大きな脅威になるというParadoxicalな現象か…Gの中には、敢えてポジションをずらして立って、ゴールネットの一エリアを思いっきり見せ、シューターが咄嗟にそこに打つという熟練者の本能を逆手に取る戦略を取ってたりする世界だからこそ通用する技か。(例えば1年目のBeginnerが「俺エリアシューター」と言い張ったところで只のノーコン君になっちゃうわけで)

いずれにせよ、Standing shootの成功確率を上げるためのドライバー/レバーを正確さと弾のスピードだけで見るんじゃなく、もっと多くの切り口/ファクターを絡めて見るという点で非常に役に立つし、面白いなと思ったコメント。

いたる@13期

2010年5月27日木曜日

生々しい話

大分無関係な話題ですが…(試合以外興味無い方は秒殺スキップして下さいませ。)

今年のNCAAは強豪がことごとくやられている。Syracuseは一回戦でArmyにUpsetを食らう。HopkinsはそもそもPlayoff進出すら危ぶまれギリギリで出場するも、一回戦でDukeに歴史に残る大敗陵辱に遭う。コーチBill Tierneyが去り、新コーチの下新たなスタートを切ったPrincetonも煮えきらぬまま一回戦で敗退。今年こそはと言われたMarylandはNotre Dameに残念すぎる二回戦負け。

Final fourを控えたこの一週間、いくつかのNCAAらしいニュースがあったので紹介。

①Maryland Head CoachのDave Cottleが退任

記事自体は、日米変わらずオブラートに包まれた書き方だが、あからさまにNotre Dame戦の敗戦の責任を取らされた、そこそこ強いメンバーを抱えながら3年連続でFinal Fourに到達で着なかった場合はクビになる契約だったなどの裏事情が実しやかに囁かれた。ショックなのは、敗戦から24時間以内、次の日のVirginia-Stony Brook戦の最中にそのニュースが発表されたこと。

既にInside Lacrosseのフォーラムでは次のコーチ候補予想が大盛り上がりを見せている。今年活躍のCornell Jeff Tambroniや敵のNotre Dame Kevin Corriganの引き抜き、更にはDon ZimmermanやGary Gaitやなどの大穴予測も。

NCAAは特にアメフト、バスケで顕著な傾向として、完全に「セミプロ化」しつつある。MLBや日本プロ野球と違い、NCAAがNFL、NBAの下部組織、育成組織としての意味合いを持ち、選手はそこで活躍すれば○億円という年収でドラフトされていく。Early entry制度によりアメフトは3年まで、バスケに至っては1年のみプレーしてプロ入りする選手も多い。プロにならない選手でも、上位校の特待制度でほぼ成績無視で入学選手達の多くは大学を卒業せぬまま4年の試合出場期限を終えチームを「卒業」していく。(中には端から「大学時代が人生のピーク」と割り切って、卒業する気ゼロで入学する選手も多い。)コーチも同様で、プロチームと頻繁に人材のやり取りが行われ、実績次第で数億円の年収を稼ぐコーチも珍しくない。

もちろん、プロの受け皿が小さく、Establishedな家庭出身で多くがビジネスマンとして普通のキャリアを歩むことになるラクロス選手達は真っ当に卒業するケースが多いし、Head Coachの年収も僕らの想像を超える金額では無いとは思う。

それでも、当然強いチームのコーチのポジションはこの世界に関わる者にとって名誉でエキサイティングなDream jobな訳で、当然そこに向けて熾烈な競争が行われることになる。そういう意味ではVirginiaのDom Starsiaも、UNCのJoe Breschiも、DukeのJohn Danowskiも、そしてもちろん現DenverのBill Tierneyも、皆長い下積み期間を経て、コーチとしての輝かしい成績をレジュメ(履歴書)に刻んだ上で今の仕事を手にしてきた。Cottleも当然例外ではなく、Loyolaでの成功の実績を買われてMarylandに10年前にスカウトされてきた。そんなHCも一定期間内に期待される(期待値もちろん高し)実績が残せなければ容赦なくクビを切られるというこの現実。残酷にも聞こえるが、日本のプロスポーツの世界でも当然皆それを求めてやってる訳で、有る意味強くなり、栄えるためには必要な新陳代謝のプロセスってことなんだろうか。裾野の広い公正なCompetitionと、結果による厳しい評価、選別の仕組。それこそが感動を生むレベルの強さや技術を生んでる面もあるのかも。

②JHUのATの2選手がTransfer(転校)に向けて休部/休学

本件、記事自体はまたしても裏事情については触れず、乾いた書き方をしている。一方で、Forumでは、やれ「イマイチなJHU再建のために、イマイチな選手をクビにして来年以降の強い新入生達にプレーのチャンスを与える方針」だとか、「いやいや単純に学業成績が問題だった」やら、はたまた「そもそもコーチのPetroを変えるべき」なんて意見も飛び出している。

こちらも決して日常茶飯事と言えるほど頻繁に起こる訳ではないが、そもそもラクロスをプレーすることを目的/条件として大学に入学し、結果が出せなければ転校する(させられる??)という、日本のラクロス(というか大学スポーツ一般)ではちょっと考えられない出来事だ。

ちなみにTransfer[転校]はNCAAではどのスポーツでもかなり一般的に行われており、特に強豪校ではスーパールーキーの加入により活躍の場を失った上級生がライバル校に移ったり、怪我で試合に出られなくなったが下位校で再起に掛けたり、はたまたいい思い出を作りにいったり、はたまた強豪校のキャリアを捨ててHarvardのスーパースターになって、Wall Streetの投資銀行に就職、なんてこともちょくちょく起こる。Syracuseもご他聞に漏れず、ちょくちょく他校で実績を残した4年生スタープレーヤーが最終学年でちょい役で加わったりして、選手層の強化に一役買っていたりする。

選手からすると、一歩背伸びして夢の強豪校に行って主力として出ることを狙うのか、はたまた下位校に行ってスターになり、決して高くないNational Sportlightの下で試合をするチャンスを伺うのか、自分自身の実力を客観的に見つめながら、その学校の実力、コーチや戦術とのフィット、他の選手のポートフォリオを見ながらかなりシビアでリアルで戦略的な意思決定を若い頃から迫られることになる。(アメリカって「American Dream」の国でありながら、実はそんなに皆が皆夢見てるわけでもなく、若い頃からこの辺の(いい意味でも悪い意味でも)身の程をわきまえたというか、現実的な考え方をする人が多いのもこの辺に起因していると思う。)

会社の同僚(東海岸在住)も、息子がNCAAの1年生テニス選手で、Div 1でプレーしていたが、試合出場の機会に恵まれず、結局Div 3の学校に転校することになったとのこと。部活のために大学変えるってのはやっぱり日本の感覚ではすぐに腹落ちする話ではない。

自分自身アメリカのBusiness SchoolのCompetitiveな環境に身を置き、アメリカ人の中でアメリカ人としてJob market(就職市場)という名の人身売買の場に身を晒してみて強く感じたが、この国は本当にフェアでオープンで透明な競争の仕組みが行き渡っている。シビアだが、公正で後腐れ無し。実力が無ければそれなりだけど、実績で証明すれば、国籍や人種や家柄やLooks/訛りと関係なく基本的にはそれに見合った評価とチャレンジが与えられる。至ってシンプル。だからこそスポーツでも学問でも世界中からCompetitiveな(優秀な)人材が集まり、そこでPerformし、実績を残し、「レジュメ/実績を築く」ことでどんどん上のステージに登っていく、そういう一握りのリーダー達がぐいぐいと組織や国を引っ張っていくという健全な推進力が生まれる。今回の件を見てふとその辺の国としての文化/仕組みについて考えさせられた。(別にアメリカの仕組みがベストだと言う積もりも毛頭無いし、Downsideもたくさんあることも理解した上で、単純な現象面での観察事実として)

てな訳で、NCAA Final Fourを前に、ちょい生々しいコネタ/NCAA事情でした。

いたる@13期

2010年5月24日月曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 33 Tournament Quarter Final(準々決勝)第四試合: Virginia-Stony Brook

3週間前にチームメートが殺人容疑で逮捕され拘置所に拘留中、しかもその相手が家族の様に仲の良かった女子選手。警察の聞き込み調査は今も続く。一体どれだけの精神的な影響があるか計り知れない。そんな中Virginiaは本当に良くやっていると思う。一回戦ではその影響を感じさせなかったが、果たしてある程度実力のあるチームに対してどういう対応を見せるのか。

一方のStony Brookは1回戦ではDenver相手に3年生、21番、Canadaは西海岸のBritish Columbia出身のMVP候補Kevin Crowleyが天才的なAll rounderっぷりを見せた。(ちなみに今回の試合もよくよく見るとほとんどFlyしないで出っ放し!あ、新しいMFの使い方…つかどんな体力してんだっ!?)層の厚さと走力に劣るが安定したSet offenseをやれるだけのスキルを持つStony BrookはTransition gameを避け、Settledな展開にしたい。

試合では序盤VirginiaがBratton兄弟らの「らしい」プレーで先行。それにしても、Virginiaと試合していてつくづく怖いのは、しょぼいシュートを打ってがっつりセーブされちゃうと、高い確率でFast breakで得点されちゃうこと。GからのBreak passも早いし、ボールを運ぶ中盤のLong stick、MFの機動力がめちゃくちゃ高く、FinisherのAT達が超決定力高い。にしてもまあDとしてはBratton兄弟は本当に頭が痛い。Long stick2枚を兄弟に付けても、ガンガン抜いてくるのでスライドが生じる。その後の崩れた局面で6人が6人とも高いシュート能力を持つ。オフェンスがキマッてる時のUVAを見ると、このチームが優勝しなくてどこがするんだ?とすら思う。

一方で、SBのDも本当に良くやってる。Bratton兄弟にLongをつけ、さらに鬼早スライド、スライドのスライドも頑張ってカバー。

UVA7番AT、1年生のEnglishが今回はもう一人の1年生Whiteに代わって出場。Long2枚をMFのBratton兄弟に付け、AT1枚を捨てる(Shortで守る)ことで生じるShort stickのミスマッチ相手にATならではのDodgeで抜きまくる。

でもStony Brookも巧いね。3, 4年生中心のラクロスをよーく理解した落ち着いたオフェンスでゆっくりじっくり確実に得点を重ねる。3点目なんか非常に巧いチームオフェンス。

2Qから、およよ?あんなに勇ましかったVirginiaが一気にSlow downし始める。Stony Brookのスローペースにつられて、信じられないような凡ミスを見せ始める。メンタルにNervousになってるのか?殺人事件以降の2週間ちゃんと練習できなかったのか?Cardioが衰えて疲れてるのか?地元Stony Brookの観客に圧倒されてるのか?形勢は一気に逆転し、同点に追いつかれては突き放すという一進一退の展開に。まさかこんなところでVirginiaが消えてしまうのか?Brattonsのシュートもズレ、有り得んパスミスも。要らないファウルも頻発。おいおいどうした?完全に浮き足立ってる。大丈夫か?

そんな中、後半に掛け3年GのGhitelmanが気迫のこもったセーブを見せ、チームを窮地から救う。OではBratton兄弟でも、Steele Stanwickでもなく、入学時は同級生Stanwickの影に隠れて目立たなかった2年生#10 Chris BockletがStep upして大活躍。正確なシュートとフィードでチームを奮い立たせる。2年生とは思えぬ魂のこもったプレーでボロボロのチームオフェンスを何とかもち直させる。こういうメンタルの強い頼れる選手がいることが如何に大事か。

しぶといStony Brookの追い上げを受けながらも、最後はギリギリで何とか逃げ切り。皆心底ほっとしたことだろう。こんなに揺らいだVirginiaは初めて見たが、一方で、事件の影響を考えると仕方ないのか。このままのコンディションで挑んだらDukeにボコられるんじゃないかと心配。一方で、今シーズンのこの苦しい修羅場を乗り越え精神的に成熟/成長したBrattonsやStanwick、White、Englishら今年の1-3年生たちが上級生となって率いる来年のチームは、想像するだけでも恐ろしい…

Warriorスキル講座のWing dodge by Matt Danowski(Duke 08、コーチDanowskiの息子、現Lizards)が超ぬるっとしててカッコいい。Step backして相手を引き付けて、パチッと切り替えて潜る形でCross overし、背中でStickを守るっていう。このツルンとした感じね。これ試合で決められるようになったらマジカッコいいと思う。

ちなみに試合を通してのFace offの戦いが無茶苦茶Dog fightで面白い。これレスリングか?と錯覚するほどの真っ向勝負。

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 32 Tournament Quarter Final(準々決勝)第三試合: Cornell-Army

結論から言うと、Cornellの圧勝。去年抜けた大黒柱の穴(Max SeibaldとJohn Glynn)が大きく厳しいと言われていた下馬評を覆し、2年連続のMemorial Weekend(Final Four)出場を決めた。これでコーチTambroniは名将としての地位を不動のものにしたと言えるだろう(ちなみに見た目ちょっとウドさんに似てないすか?目とか鼻とか顎とか。横顔とか特に)。「東大的」境遇のチームの快進撃に勇気付けられると共に思わず応援したくなってしまう。

先日も述べたRecruiting争奪戦のハンデを昔のやり方の延長で引っくり返せずに苦戦してるのがPrincetonだとすると、それを逆手に取ってProactiveにニッチを取る戦い方(ラクロス過疎地やUnprovenだが才能のある選手を見抜く)で成功してるのがCornellのTambroni。

Cornellが序盤から完全にゲームを支配。大舞台の経験という意味で去年のSemi Final、Finalを経験しているCornellに大きな分があるか。それにしても先週のArmyによるSyracuseへの番狂わせはCornellにとってはまたとないチャンスを生むことになった。加えて、準決勝の相手は既にMarylandを倒しているNotre Dame。Marylandよりは明らかにやり易いと感じてるんじゃないだろうか。トーナメントでは組み合わせや運も大きなファクターだが、Cornellはその面で最も恵まれた。Virginia、North Carolina、Dukeが逆の山で、2回戦で当たるはずだったSyracuseが消え、準決勝で当たる筈だったMarylandが既に消えている。出来すぎた筋書き。

試合では1年生の活躍が目立つ。GのFiore、Defenseの柱2枚、ATの#6 Mock。「毎日がTry-out」と呼ばれる、メンバーを固定しないCompetition重視のスタイルの賜物か。

オフェンスは教科書のようにTambroniのDiscipline/戦略がハマる。引き続き外からのシュートプレッシャー、1 on 1プレッシャーを掛けた上で、スペースが生じたクリースで得点という賢い攻めが続く。中西部Minnesota出身の4年AT Ryan Hurleyが爆発。1番強いDがエースAT#3 Pannellに付く事で生じた1 on 1ミスマッチを存分に利用。

また、Cornellは試合を通してATのXからの1 on 1、Inside rollからのシュートが教科書のように参考になる。身体能力と本能に任せて何とでもなるMFの1 on 1と違い、ATのXからの1 on 1、シュートは「技術体系」として頭と体の双方で学ぶ色合いが濃い。且つ恐らくガキの頃から本能でやってる選手を集めてるVirginiaなどと違い、Cornellの選手達はTambroniの指導の下、形式知として頭で理解して意識的に技術として学習した上で実行しているように見える。ATの選手は必見。

Cornell DのMan downでの連携の完成度、パスへのスティックでのプレッシャーが凄い。
1年生でCageを守るGoalie、AJ Fioreは引き続き急成長を続ける。解説者の元JHU All American Goalie, Quint Kessenich曰く、入学当初見たときはいくつか技術的な欠点があったが、たった1年でそのほとんどを潰し込んできてるのが見て取れると。

Cornellは失点する度にゴーリーを中心にD7人全員が集まって、何が悪かったかをその場でフィードバック、共有して、バチッと切り替えて次に挑む姿が印象的。この積み重ねがシーズンを通して「頭を使う」作業を習慣化し、成長に繋がってるんだと思う。

2年エースAT#3 Pannellがインタビューにて、「Tambroniコーチの何が凄い?」という質問に対して、もちろん頭はいいし、指導力は凄いんだけど、何と言っても「Love of the game(ラクロス愛/勝負を楽しむ心)」がでかいと言っていた。彼のラクロスを好きな気持ちが何よりもチーム皆をInspireすると。

Armyは、SyracuseでハマッたZoneがいまいち機能せず。更に元々Set offenseが弱い中Syracuse戦でも得点源だったBroken Situationでの得点がCornellのLoose ball/ポゼッション支配と少ないTurn over、素早いDの戻りとPackにより封じられる(Cornellが相当Syracuse戦のビデオを見て研究してきてると思われる)。Gの3年#4 Paleskyは引き続き好セーブで食い下がるも、限界あり。

4QにArmyのMaisanoが学業成績優秀者として表彰されたという話と彼の一日が紹介されるが、なかなかのハードスケジュール。そんな中ラクロスをやってる姿に素直に敬服する。(自分の学生時代は法学部の授業は1度も出た事が無く、文字通りラクロス100%だったので…)

そんな訳でCornellが再び夢の舞台へ。徹底して相手のことを研究して良さを封じてきた彼らが、同じく相手を「塩漬け」にしてきたNDとどういう戦いを演じるのか。今から週末が楽しみ…

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いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 31 Tournament Quarter Final(準々決勝)第二試合: Duke-UNC

やっぱりDukeは強かった…

毎年のHC Matt DanowskiとDukeの特徴として、シーズン当初にいまいちな所から始まり(今年も結構「?」な負けがいくつかある)、シーズン後半に調子を上げていくというパターン。選手たちもシーズンを通してコーチがそれを意識して徐々にチームの調子を上げていく/Peakingしていく感覚が判ると言っていた。短期決戦で「一つも落とせない」関東学生リーグと違い、シーズンで15試合近くこなし、16チームがトーナメントに参加出来るNCAA Div 1ならではのSeason 設計/Peaking management。

逆にUNCはシーズン当初から快調に飛ばし全勝街道を驀進したが、後半失速し、Dに綻びが目立ち始め、怪我した後のエースBilly Bitterが精細を欠いてからはOも悩ましい日々が続く。

先週のJHU戦後のDukeのCoach Danowskiのインタビューが面白かった。

当初、多くの主力4, 5年生が残ることで開幕前1位評価という高い期待値に惑わされ、初期に欲張り過ぎていろいろ詰め込み過ぎたため選手たちが消化不良/機能不全を起こしてしまったことが出遅れの原因。敢えてやるべきことを絞り込んでシンプルなことから潰して行ったことが奏功したと。Bill TierneyのDenverと同じパターン。やっぱり基本をしっかりやることの先にしか応用は無い。

今回のUNC戦に向けての課題は、シーズン通して弱さが指摘されてきたGround ball。先週から一週間徹底してGBの練習を中心に行うと。このレベルのチームが、このレベルの試合に向けての準備として「GB」と言い切るという事実。くどい様だが結局Fundamentalなのか。赤木剛憲の「リバウンドを制するものは試合を制す!」を思い出してしまった…

また、スター軍団のATに比べてMFが目立たないとの指摘に対し、ATが点を取ってるのは確か。但し、点が取れてるのもMFがいい仕事をしてるからこそ。逆に言うとATが抜けてない/点を取れてない時は往々にしてMFがいい仕事をしてないためだと。

試合では5年生のNed Crottyに加えて新たにTeam USAに学生二人目として追加されたDのMckeeがそのサイズと身体能力に支えられた堅いD、”Ground ball vacuum(掃除機)”としての本領を遺憾無く発揮。

また、相手エースの3年AT#4 Billy Bitter封じが大成功。2枚目、3枚目のSlideを飛ばし、特に表側に抜いてCenter lineを横断する動きに対して徹底的に押し上げることで確率の高いシュートを打たせない。

やはりトーナメントのような一回勝負で且つ、高いレベルでの拮抗した試合になってくると、どんなに突破力のある選手でもそれが一人だけだととたんに厳しくなる。(逆に言うと相手にSuper starがいてもそれが一人か二人ならビビる必要無くて、やり方次第で全然止められるってことか。)

Dukeの場合ATが3枚とも抜けて点が取れて、Feedが出来る事に加え、ここ数試合で一気にMFが本来の突破力/得点力を発揮し始めることで、手が付けられないオフェンス力を手にしつつある。

いくつか見所を紹介。
●UNC7点目、Bitterの1 on 1からの一人抜いての逆サイドの2 on 1を1 on 0にしての得点。
●3Q、UNCの3-3に対するDukeのPatientなオフェンス。
●UNCのEMOでの8点目。Woodの得点時に#1がクリースからのボールマンへのカバーをブロック(邪魔する)するという隠れたstreet-smart play。

過去数年、Dukeが優勝候補と言われながらも決勝、準決勝で最後の最後に負けていた理由は大きく二つと言われている。Face offが弱かったこと、そして、圧倒的なタレントをATに揃えながら、最後の最後でSelfishになってチームとして必ずしももっとも確率の高いシュートが打てなかったこと。だが、今年のDukeは違うと言われ始めている。MFもDも改善し、唯一の「?」はGだけ。

来週のVirginia戦が実質的な決勝戦になるとも言われる。今から楽しみ。メンタルに揺らぎ本調子じゃないVirginiaに対して現時点ではDuke有利の声が多い。今年のNCAAのカオスっぷり(勝敗の読めなさ)を考えるとこんな予測には何の意味も無いが、仮にDukeが決勝進出すれば相手は格下感の否めないNotre DameかCornell。もしかすると、長らく無冠の帝王だったDukeが終に戴冠する日が来るのか?

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いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 30 Tournament Quarter Final(準々決勝)第一試合: Maryland-Notre Dame

大学ラクロスってやっぱり恐ろしい…NCAA Tournamentには間違いなく魔物が棲む。

NDが先週のPrincetonに続き二つ目の番狂わせ。もはや番狂わせとも呼べないレベルになってきた。2月にシーズンが始まったとき、そしてトーナメントでNDがギリギリ出場できるか否かの話をしていた数週間前に、一体誰がNotre DameがFinal Fourに進出すると予想してただろうか?これでSyracuseもMarylandも消え、ほとんど全ラクロスファンのベスト4予測が裏切られたはず。もう誰もNDを中西部の芋チームと馬鹿に出来ない。

トーナメントの下半分のBracket(山)では先週の一回戦でSyracuseがArmyの番狂わせで消えた事により自動的にMarylandの決勝進出が決まったとまで言い切るファンも多かった。中にはVirginiaへのYeardley Love事件の影響を考えると、35年ぶりのMaryland優勝の可能性を口にする者すら。そんな中、解説者のQuintはそんな事は全く持って無いと言い切る。もはやNCAA Lacrosseでは、○○だから勝つだろう、××に負けるのは恥、的な先入観は通じない時代に突入しつつある。そして、Notre Dameは 去年、今年と大物食いを連発する最も危険なチーム。用心深いファンが頭の中に描いていた「まさか」のシナリオがまた現実になる。

守護神Rodgers(193 cm, 120kg)対策としてMarylandが行った練習が面白かった。控えの高身長Goalieにアメフトのショルダーパッドを付け(Face paintとTattooも冗談半分でコピーして)、実際にゴールの前に立たせてどれだけOpen spotsが少ないかを意識しながらShooting練習を行ったとのこと。試合でどうワークするのか?

試合直前のInterviewで3年AT、#1 Grant Catalinoのコメントが印象的だった。ラクロス一家で育った彼(兄貴はDukeのMiddie)は物心付いたころからStickと共に育ち、裏庭にゴールとバケツに入ったボール100個が常備されていて、子供の頃から文字通り毎日何百本もシュートを打って育ったことが今実を結んでいると。

立ち上がりからNDのGame Planがバチッとはまり、MarylandはTurn overを繰り返し、NDリードで1Qを終える。引き続き守護神Rodgersを中心としたDの、徹底してPaint(クリース前エリア)をPackし、遠いシュートはバンバン打たせちゃうという戦術がまたしてもがっちりワーク。クリースの固めっぷり、ボールが入った時の潰しっぷりが半端無い。スクラップしに行ってる。また、NDはFace Offを支配することでMarylandにオフェンスをさせない。

Rodgersは顔写真見るとほとんどNightclubのBouncerか何かにしか見えない…Notre Dameの名門アメフト部のタイトエンド、バスケのフォワードとしてもプレーしたマルチタンレント。ベンチプレス、スクワット(250キロ?)共に半端無い重さを挙げるという。試合中に解説者のQuintも、そのパワー自体が直接Goalieに役に立つかといったら恐らく否だが、その辺のAthleteとしての自信がプラスになっているようにも見えるとのこと。(全然関係ないけど、個人的には将来はUFCなどのMMA〔総合格闘技〕のヘビー級に挑戦して欲しいなとも思う。このサイズでこの身体能力とQuickness、加えて器用で賢いってのは貴重な素材。数年しっかりトレーニングを積めば現王者Brock Lesnarとやり合えるレベルになるんじゃないか?)

MarylandはシュートでRodgersのでかさとQuicknessを意識し過ぎてるのか?オーラ/プレッシャーが滲み出てるのか?シュートが枠に行かない。少ないオフェンス時間に焦ってか、らしさが見られない。ゴール前を徹底して固めるNDディフェンスに対しこれと言った解決策を見出せぬまま時間切れ…NDの相手の良さを徹底して封じ「塩漬け」にする力は半端無い。MMA(総合格闘技)で言うと、Wrestling出身でとことんタックルしてGroundで上になり続ける(割には一本やPound out出来ない)ひと頃のUFCのMatt Hughesってところか。強いGとDがこんなにも脅威になるのかと改めて思い知らされる一戦だった。

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Scott Rodgersインタビュー。ジャイアンの10年後、みたいな。

いたる@13期

2010年5月22日土曜日

NLL 2010 Final: Washington Stealth-Toronto Rock

番外編。カナダとアメリカを跨ぐプロインドアラクロスリーグ、NLL (National Lacrosse League)のプレーオフ決勝戦を今年唯一TV放映してたのでそれを送ります。

結論から言うと、現役の選手達にはこれを是非見て欲しい!絶対にラクロスのこともっともっと好きになるので。俺自身、NLLを見るのは2年前Chicagoにいた頃に会場で生で見て以来。その時と全く同じ感想を持った。「ぶっちゃけ、Field lacrosseよりもBox lacrosseの方が面白い」。アメリカでアメフト、野球、バスケ、Field lacrosse、Ice hockey、総合格闘技といろんなプロスポーツを見てきたが、ここまでスピード感があって興奮させられるスポーツは他に無い。騙されたと思って一回見てみて。一発でAddictedになるはず。スポーツ不況の中地元の熱狂的ファンに支えられしぶとく人気を保っているのも頷ける。たった一度の人生で、このラクロスという素晴らしいスポーツに出会えたことに感謝。もっとTVでやってくれないかなーと思う。

スポーツとしては、サッカーとバスケくらいFieldとは違う。Field playerは5人対5人。コートはIce hockeyそのまま。選手はAliveでどんどんフライ。Shot clockあり。目まぐるしく攻守が入れ替わり、試合時間の殆どが見所。Fieldのようにプレーが止まる時間、待つ時間、ボールを運ぶ/回す時間が殆ど無い。外れたシュートもChaseではなく壁にReflectされるため、即次のプレーが繋げられる。

そして何よりもこの会場の雰囲気。祭そのもの。音楽がかかってる中でFace paintしたCrazyな客が鳴り物を持って熱狂し続ける。Blue colorの、髭を生やした荒くれものたちがぎゃあぎゃあ言いながらプレーし、ビール片手に応援する、というラクロスのルーツを偲ばせる。Ice Hockeyの会場の雰囲気に極めて近い。一試合に1, 2回殴り合いの乱闘が発生し、審判もある程度それを黙認し、Audienceもそれを楽しみにしている。

プレーに関してはFieldとかなり違った技術体系が必要になる。基本利き手のみ、ダッジは最初の一歩勝負。ボールを貰ったらクレードルなんかしないで一瞬でシュート。狭いゴールにでかいゴーリーがいるため、文字通り針の穴に糸を通すシュートの正確さが必要。Goalieとの1 on 1でも素早いFakeで大きくゴーリーをずらす技術が必要に。クリースのOff ballでのプレッシャーも凄まじい。Box出身のCanadian finisher達がNCAAのFieldで活躍しているのも頷ける。
●昨年の決勝点を決めたSyracuseのCody JamiesonもBox出身Canadian。
●現MVP最終候補5人のうち2人がCanadian(DelawareのDickson, Stony BrookのCrowley)
●MLLでも昨年、一昨年の覇者はNLLとの掛け持ちのToronto Nationals(一昨年当時は前身のTochester Rutlers)、
●前回World cupの優勝もBox出身者主体のCanada
●過去20年の「史上最強クラス」の2選手、GateもJohn Grant Jr.もCanadian

Indoorに比べたらFieldで点を取るのなんてどれだけ簡単か。恐らく彼らにとってはクリースでのLong stickのプレッシャーなんてスローモーションに感じるんじゃないか?ゴールなんてでか過ぎて何処打っても入りそうにすら見えるはず。

マジな話東大の選手でちょっと尖ってて行動力のある選手はCanadaの地元Club teamに人生勉強がてら武者修行でステイしてみたら?絶対にラクロス観変わってBreakthroughするはず。下手に東京でいつもと同じ練習する時間の10倍20倍の効果あるんじゃないかな。僕自身が2年の時にAustraliaの地元クラブチームに数ヶ月Stayしに行った時もそうだけど、思い切ってコンタクトしたらびっくりするくらい簡単に受け入れてくれるはず。今の東大のMichiganと呼応した「大学Athletic club」としての完成系を目指す方向とはグイッと違った方向のベクトル、核融合が生まれるはず。

生活の一部としての、遊びとしての、Extreme-sportsとしてのラクロス、家族や地元と密着した、「町の剣道場」のラクロス、髭生やした荒くれ者がビール飲みながら殴り合いながら大笑いしながらやるラクロス。サッカーに対してのフットサルのように洗練されたCutting edgeなStick skill。優等生に対しての異端児のラクロス。そういうの持った新しい方向性の尖ったプレーヤーがポツポツ出てきたら…と思うとワクワクする…

逆に、Fieldで成功した選手がNLLで成功するケースも稀ながら時々ある。現Field世界最高の選手、米代表のMF、元JHU優勝メンバーのPaul Rabilもその1人。Rookie yearの去年は苦戦したが、今年はWashingtonの主力に成長。逆にNLLでの学びをMLLに生かしてくると思われ、今年のWorld cup、MLLでの活躍が楽しみ。

いたる@13期

2010年5月18日火曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 29 Tournament 1st round⑧: Princeton-Notre Dame

これで今週は終わり。来週いよいよQuarter Final(準々決勝)。(この手の予想って往々にして外れることを理解した上で、後で恥をかくことを覚悟の上で敢えて予想すると…)多分Virginia、Duke、Maryland、CornellでFinal 4じゃないかな。で、FinalはVirginiaとMarylandになってVirginiaが感動の優勝のパターンと見た。Dukeは相当上がってるしAが最強だけど、MFが弱いのと、Dが攻撃力のある相手には弱く、シーズンを通してGが最大のQuestion mark。

待望のUpset(番狂わせ)。名門Princetonを中西部の新興チームNotre Dameが食う。ラクロス先進地域から外れたIndianaにあるFighting Irishはアメフトで昔は有名だったが、ラクロスは長年ギャグ扱い。強い強いと言われながらも、「でもNDだろ?」と馬鹿にされてきた存在。今回の勝利でそれらの見方を一気に見返した。(ユニフォームが一ツ橋…それとも一ツ橋がNDから着想した?)

Notre Dame Fighting Irish #42不動の守護神、今年のMLLドラフトの目玉Goalie、Scott Rodgersが驚異的なセーブを連発。(番狂わせの裏には往々にしてGoalieの好セーブあり。)東大のGの皆は是非チェックしてみて。でかさ(193cm, 120 kg)でCageを塞ぐことに加え、むちゃくちゃクイックで読みが凄い。Skin headで顔も怖いし、グラップラー刃牙の花山薫の「侠客立ち(おとこだち)」を彷彿させる(って今の現役の世代だとわかんねえか…)。Weight trainingでも無駄に筋肥大してスピードが落ちることをケアし、軽い挙上重量をQuick explosionで挙げることで瞬発力/反応速度重視のメニューを組んでいるとのこと。

Princetonはシーズン終盤に掛け、Bill Tierney後の新コーチChris Batesの苦悩が深まっているのが見て取れる。(本人も白髪が増えたと)当初のバスケ的ピックを多様する2 on 2オフェンスの形は影を潜め、若いMF陣による単発1 on 1への依存が顕著になってくる。

これまで神様Tierneyに教えられたくて集まっていたタレントパイプラインが細くなるとすると、今後衰退していくんだろうか。Tierney時代の保守的で硬いDでは絶対に見られなかったOver the head checkが見られるように。Dが全体的にちょっと統制が取れてない印象。Slideが遅くNDのMFにやられてる。NDの一点目、#12 KrebsのJumping running shootはover handでバウンドで高低差のあるシュート。Gはセーブしにくい。

戦術論の観点から試合を振り返ってみると、Notre DameのGame planが面白いようにハマッたことに気付く。戦前の下馬評、現有戦力としては、GのRogersは最強クラス。DはLong stick、Short stick共に、個々で圧倒は出来ないまでもそこそこ互角にやれそう。なので、基本クリース前を徹底して固め至近距離からのシュートだけは絶対にさせない一方、逆に遠いRangeからは打たせて良しとする。Oは、得点力不足に悩むAは身体能力/個々の戦いでは恐らくPrincetonには勝てない。MFは抜けなくはないが、これも圧倒的な差ではない。なので、Settled situationだけだと厳しいのでBroken situationで確実に積極的に点を取りにいく。蓋を開けてみると、得点のほとんどはBroken situation。Princetonのシュートはほとんど「10メートル以上遠い位置から」「何の工夫も無い状況で」「打たされた」シュートばかり。Rodgersにまんまとセーブされ、完全に相手Oを沈黙させることに成功。その辺の戦術の駆け引きに関して学ぶ点は多いかも。

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 28 Tournament 1st round⑦: Duke-Johns Hopkins

Duke 4年ATの#22 Ned Crottyと#8 Max Quinzaniは国内最強ATコンビ。Crottyは唯一の学生US代表で57 assist。Quinzaniは61得点。共にMLLドラフトの目玉と言われる。

ESPNU Lacrosse PodcastのQuint KessenichによるインタビューでのCrottyの言葉が印象的だった。「パスやフィードの上手さが際立つが、何を心掛けてる?」との質問に。「二つ。一つはとにかく脚を動かすこと。カットされたり上手く行かない時は基本的に足が動いてない時。二つ目は、相手のDじゃなくて、フィールド全体の味方全員を見ること。Flyしてるプレーヤーも含めて全体を見る。ガキの頃からそう教えられてきたし、今も意識してる」。「練習以外の時間のすごし方は?」「とにかくシュートの個人練習を重ねること、Weight roomでweight trainingをすること、それと試合で自分や相手のvideoを見て学ぶこと」。また、入学時からコンビを組むQuinzaniとの関係については、「Off the courtでもほぼ一緒にいる。初日から気が合った。ルームメイトで飯も一緒だし、遠征のバスも一緒。Off the courtでの関係の良さ、Chemistry(相性)がOn the courtにも生きている。Quinzaniが何をやりたいか大体解る」。大事だね。Position飲み会。

JHU 1点目、AT#10 BoyleのXの1 on 1からの得点はtextbook。Dukeの3点目のチームオフェンスも素晴らしい教科書。1 on 1から崩して、スペースにボールを運んで、そこでのQuinzaniのシュートの上手さ。体を反転させながらの速く正確なシュート。Duke 4点目のLSM Montelliのシュート、その後の5点目でのパスでも解るように、Face off後、Broken situation後のLong stickのO参加が本当に多い。見てるとNCAA全体的に、Break状態でのMiddle shootに関してはむしろShort stickよりもLong stickの方がGが軌道を予想出来なくてむしろいい/積極的に打つべきと見る向きすら感じる。東大のLong stickの皆もシュートは自分の「強み」と解釈し直して練習/実践してみるといいかも。
全体を通してDuke AT 3人の2 on 2, 3 on 3, Triangle offenceが非常に効果的。引き付けて、3対3を3対2にして、2対1にして、1対0にして得点。Offence陣は見て学ぶことが多いと思う。

JaysはMF#15 Kimmel, AT#10 Boyle, AT#42 Whartonと、頼れる選手が一部に限られるのが辛い。彼らが大車輪の活躍をする一方で、負担が大きく明らかに後半ガスが切れて失速する。Face offもDもOもやり、LSMを付けられるKimmelは特にきつそう。つくづく層の厚さって大事だね…

試合前半で入るWarrior のSkill講座でのDino(Matt Danowski @Long Island Wizards, Duke 08)による、「Wing dodge」のレッスンが非常に素晴らしい。バスケでガードがよくやるステップワーク。右斜め45°にステップバックして、Dがそれにつられて詰めてきた瞬間、外足でキックして持ち替えつつ左前に切り返す。この後ろに下がって、前、という前後の動き。そこでのStickの持ち替え。必ずしも爆発力が無くてもタイミングと体の使い方だけで簡単に相手を抜けるので、AやMの皆には是非マスターして欲しい。

JHUは終始Dが崩壊。恐らくかなり基本的本的なチームDのコミュニケーション、連携が出来なくなってる。DukeのOff ballの動きに面白い様にやられ続ける。東大Defense陣としては反面教師として何が悪いのかを考える上でいい教材かも。

シーズン初期に躓いたBlue Devilsはここに来て一気に調子を上げてきており、シーズン前予想一位の面目躍如。準決勝でのVirginia戦が事実上の決勝戦になるんじゃないだろうか。ここまでシーズン1勝1敗。今から楽しみ!

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 27 Tournament 1st round⑥: North Carolina-Delaware

お互いの気持ちがいい形でプレーに繋がったいい試合。1Qから点の取り合いでExcitingな展開。

これまでTV放映が無かったためNorth CarolinaのAT #4 Billy BitterほどFeatureされてこなかったが、Delawareの4年AT#17 Curtis Dicksonは多くのコーチが国内最強ATと評するほど。MVP(Tewaaraton trophy)最終候補5人の1人。ここまでシーズン62得点、46GB、の驚異的な活躍。またしてもCanadian Finisher。リストの強さとシュートの正確さ/速さからMLLでも重宝されるだろうと言われている。

UNCのBitterはMikey Powell以来と言われる程のSpeed dodger。見るもの全員が”Fun to watch”と言う。D 3枚は、#24 Flanagan195cm, #8 Jarvis 193cmを始め大型選手が多い。Billy Bitterが彼らと毎日練習することで必然的に脚を動かしてスピードで勝負する力が上がったと言っていた。昨年ノーマークで大活躍したBitterは今シーズン開始から徹底マークに合う。Face guard + 他へのSlideに行かないという徹底シャット。Ground ball時の鬼チェック、シュート後のLate hitで狙い打ちに。それを予測し、秋から周りを生かす動きを鍛え、周りのメンバーががstep upすることでそれなりに成功して来た。

Delawareの1点目と3点目の#22 Cahillのシュートはマジ引くわ…UNCの1点目、EMOの3-3から2-2-2へ変化しての得点も見事。2点目の#22 MF Dunsterのsplit dodgeからのシュートが上手すぎ。UNC 3点目、#28 DavieのInvertからholdされた後のInside rollは東大MF陣は何度も見て真似して欲しい。UNC Dの相手エース#17 Dicksonへの徹底した鬼早スライド/double team, triple teamはエース封じの例として参考になるかも。ストーカーばりに文字通りベタッベタに密着。ホントにボール一切見ないでFace guard。EMOでも5 on 4状態。でも実際むちゃくちゃ効果的。

全体を通してUNCのRideが効果的。UNC 5点目はFast breakが一旦落ち着いてからSettle downまでの間を狙った、Slow-fast breakのいい例。Fast break一発目で成功しなくてもその後にもうワンチャンスあるっていう。

しかしNCAA Tournamentってホント一回戦から接戦になる。上位チーム相手でも下位チームが徹底して対策して良さを封じてくる(中には主力選手の背番号入りの相手チームのユニフォームを取り寄せてBチームに着させてまで想定演習をするところも)のと、実際下位チームでも主力の数人は上位チームと遜色無い。いろんなメディアでも言われている通り、特にここ10年で高校レベルでの裾野が爆発的に広がり、10位から30位前後のチームのレベルが上がり、その傾向が特に強まっているという。戦国時代突入か。今後もっともっと接戦とUpset(番狂わせ)が増えてくるんじゃないだろうか。

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 26 Tournament 1st round⑤: Syracuse-Army

試合を見終わった後、正直暫くショックで呆然としてしまった…毎年一回戦8試合のうち1試合で起こるUpset(番狂わせ)。今年はなんと3年連続優勝を目指すSyracuseがその犠牲に。”Biggest upset in NCAA lacrosse history ever”とも。4年生は恐らく何が起こったのかまだ理解できてないんじゃないか。Syracuse史上24年ぶり2度目の1回戦負け。今年のNCAAラクロス界は何かがおかしい。個人的にはSyracuseが今年からBig East Conferenceに所属したことで、強いチームとほとんど当たらないまま高い順位でTournamentに望むことになってしまったことが大きな原因な気もする。負けや接戦といった修羅場をほとんど経験せず、大事な部分が鍛えられず、本人たちも現在位置や目標が見えにくいままちやほやされて、緩ーい感じでプレーオフに突入しちゃったんじゃないだろうか。

東大の皆にとっての見所としては、強いチームが足元を掬われる時ってどういう時なのか、Upsetする側としてもされる側としても追体験/間接学習できる点が多いと思うので是非チェックしてみて。例えば東大がFalconsと試合するとき、どうすれば勝機が生まれるのか、逆に格下チームに負ける時ってどういうパターンなのか。シュートが枠に行かな過ぎ(得点源Danielloのメッシュがおかしいか?)、Turn over多すぎ、GBとClearでSense of urgencyが足りない、Dも気持ちが全然入らず1 on 1で抜かれた上Slideも行けない、無駄なファウル、上手く行かない中でFrustratedになりMentalに揺らぎ過ぎ…最後までエンジンが掛からぬまま、良さを出せずに時間切れ…

Syracuseファンとしては悲しいが、一方で、激しい学業と両立しながらタレントの不足を努力とDisciplineとメンタルの強さでひっくり返した雑草軍団Armyには、ただただ素直に尊敬の念と共感を禁じえない。王者相手に、自分たちを信じて、コツコツと淡々とやるべきことを積み重ねる。人生の教科書。

Syracuseの試合は残念ながら今年はこれが最後なので、Syracuse絡みでいくつか。(今回はいいとこ無しだが…)#11 LSMのJoel Whiteは5人のMVP (Tewaaraton trophy)最終候補者の1人。高校までShort stick MFだったのが大学でLong stickに。高い身体能力とOffenseでのStick skillで派手に躍動する。ESPNU Podcastのインタビューでの言葉。「何でそんなにDF硬いの?相手のエースMFを抑えるコツは?」に対し、「自分はLong歴が短いので、正直スティックでチェックを放るのが上手くない。ただ基本に忠実に一生懸命脚を動かしてポジショニングを守ることに集中してるだけ」。また、同じくMVP候補の最後の10人に残り、史上初のG出身MVP受賞者かとも言われたGallowayはセーブ後のパスの早さ、速さ、正確さが売りのBest break pass goalie。彼に関して「Short stickを含めた全チームメートの中で最もパスが上手い」と評する。「70メートル先のATのボックスに、あたかもコーヒー缶にボールをズゴーン!とぶち込むかのようにビシッとパスを出してくる」と。

プレーに関しては…Syracuse1点目、JamiesonのXからの1 on 1、走りながら速度を緩めずにInside rollの技術はパクりたい。2点目同じくJamiesonのStanding shootのステップが独特(左脚でのSkipが入ってない)ためGoalieがタイミングずらされてる。Army1点目、Slideが来た後にStep upしてSlideが戻った後にさらにRe-dodgeが応用が効く技。3点目のMillerのSplit dodgeの切れ味がやばい。肩のラインの使い方とキックの強さ。5点目、#23 Millerのシュート後のガッツポーズ、カッコいいね…胸→キス→空。やりてえ…2Q終了直前の6点目、SyracuseのFast breakでのMFの飛び出し、ATのポジショニング、Keoghのシュートは完璧な教科書。7点目は左下のJamiesonで同じく。Armyの4Q最後のZone Dが鬼ハマり。

ハイライトはこちら

試合後インタビュー

2010年5月17日月曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 25 Tournament 1st round④: Maryland-Hofstra

古豪Hofstra。何人か有名なMLLの選手も輩出しており、毎年比較的いいチームを作ってくる。
しょっぱなからMD名物#37 LSM Farrellの怒涛のオフェンス参加。この人はガチだね。ホント毎試合点取るし、Oになった時の視野とパスの正確さが尋常じゃない。あとクリースへの居残り方も尋常じゃない。東大のLSM陣もこのくらいになれたら相当楽しいはず。

2Q終了間際、Hofstra 3点目、昨年All Americanの3年AT #20 Jay Cardのボール貰い際のDのかわし方、さらに肩でチェックを受けて、体でStickを守りながらのシュートが教科書。1 on 1チーム、Shootチームは必見。

あと、両Goalie共にすばらしいSaveを連発してるので、Goalieは是非チェックしてみて下さいな。
MD8点目のFast breakからの得点が美しい。その後の乱闘が熱い。やっぱラクロスはこうじゃなきゃ!得点率6割を誇るMDのEMOが引き続き凄い。速く正確なパス回しで簡単に確率の高いシュートを打てる状況を作り出す。(そしてもちろんシュートもLaser Beam。)10点目のYoungの裏からのSubmarineのシュートがただひたすら単純に、クソかっけえ。こんなん試合でやりてえええ!と皆思うはず。

しかし、この試合見てると、HofstraのO、シュート、EMOを見て分るように本当にレベルが高い。Stick skillやLacrosse IQに関しては本当に目を見張る。そんなHofstraもリーグ戦ではランク外(25位未満)。LoyolaやTowsonやGeorgetown、USBC、UMass辺りも似たような感じで、基本的には、上手くていいチーム、だけど優勝には絡めないチーム。この国のラクロスの懐は本当に深く、層が厚いと思い知らされる。

「上手いな!凄いな!」ってチームが30~40チームひしめいてるということ。そんな中でも上位5チームはやっぱり頭ひとつ抜けてるイメージ。ガキの頃からほとんどの子達がNCAAでプレーすることを夢見てラクロスと共に育ち、各地の高校のエースみたいな選手100人が毎年NCAA Div 1の30校に散って行き、「地元強豪校でも何年かに一度の天才選手」みたいな選手がVirginiaやSyracuseに行くイメージか。単に運動神経が凄く良くて上手い、くらいではDiv 1には行けてもTop 5には行けなくて、その中でも本当にとち狂った様に上手いか、加えてサイズがでかくて、身体能力も驚異的な選手たちがTop 5-6校に行くと。(例えば195cm 110kgのCatalinoと同じくらい上手い選手は他校にもちらほらいるが、このサイズでこの上手さと機動力はレア)。日本と比べた時に、歴史や文化やインフラや蓄積された知見の違いもさることながら、実はこの辺の裾野の広さ(競技人口の多さ)、Competitionの熾烈さ、選り抜きと絞り込みの仕組みとその厳しさこそが、実はアメリカの強さの根源じゃないかとも思わされる。

何が言いたかったかって言うと、それを考えると、たかだか高校や大学からたまたま始めた、別に大して選別も受けてない選手(もっと生々しいこと言うと他の競技で一流にならなかった落ちこぼれ組)が相手の学生リーグで優勝することなんて、NCAAで戦うことから比べたら無茶苦茶簡単に見えない?なんて。クラブチームでさえそのタレントの層の深さでNCAAと比べたら、かわいいもんに見えてきたりしちゃったりして…しない?

ハイライト

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 24 Tournament 1st round③: Virginia-Mount St. Mary’s

今週末は朝から晩までNCAA Tournamentという至福の週末…

もう、ビール片手にVirginia大量得点祭りを楽しんで下さいとしか言えないっすわ。このチームと同じ時代に生きられて良かった、ぐらいの。プロモーションビデオかと。シーズンハイライトかと。

Bratton兄弟はもう溜息以外出ねえわ…こんな化け物どうやって止めりゃいいんでしょ。1点目の1 on 1からの左のRunning shootなんて夢に見るまで300回繰り返し見たい。
3点目のBockletの得点とかカッコ良すぎ。5点目のCarrollの左のJumping running shootも何回も見たい。
3年GoalieのGhitelmanのセーブ/スクープ後のBreakへのパスが神業。早いし速いし正確。SyracuseのGallowayと並んで最強Break pass Goalieと称されるだけある。出すまでがマジでむちゃくちゃ早い。フィードの感覚。

ごめん。ぶっちゃけ凄いプレーが多すぎていちいち紹介する意味がなくなって来た…

全っ然関係無いけど、唐突にNCAAというかUSラクロス「あるある」。VirginiaやSyracuseなどの強いチームって、ことごとく、ユニフォームの下からTシャツの裾出てないよね…Tシャツ入れさせてるのか、Under armorだからなのか?逆に二流どころのチームって結構Tシャツ見えちゃっててダサいよね…しかも三流どころになるとその色や柄がバラバラっていう。何となく日本と同じで笑いました。

最後にもう一点だけ。2Qの8点目。MF CarrollのEMOでのクリースからの得点。スローモーションでよおく見て欲しいんだけど、ボールを貰うタイミングでの細かいスキップのステップでボールに向かいつつ、そのまま軽くFade away気味にJumping shot。手首のレバー(梃子)を最大限に生かして速さを生んでる。ボールを貰う前からシュートの形を明確にイメージしてないと、且つシュートの引き出しが多くないと出来ない。Virginiaの歴代MF最多得点記録に達したCarrollは今回も点を取りまくる。Quint Kessenichへのインタビューに対し、ゴールのネットの端を狙う、とかじゃなく、パイプそのものを狙ってる、と答えてた。実際に得点の多くがパイプの内側にズガン!!と当たってる。そこまでやってるわけですな…

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 23 Tournament 1st round②: Denver-Stony Brook

何なんでしょ、このNCAAの懐の深さというか、層の厚さは。Stony Brook大学なんて普通の日本人は、というかアメリカ人ですらあんまし名前を聞かないような学校でも、かなりNCAA Div 1然とした全うなラクロスをやってるっていう...

今年点を取りまくってる#21 3年MF Kevin CrowleyはTewaaraton Trophy(MVP)最終候補者5人の1人。何でも出来るFinisher。ATで去年のAll American #11 Jordan McBrideも同じく3年。ともにCanada西海岸、Vancouverの近くのNew Westminster出身。特にNY州北部でCanada国境に近いSyracuseでは昔からその傾向はあったが、最近は特に中堅校までCanadian Finisherを数人置くのが大きなトレンドになっている。地元密着のクラブチームでBox Lacrosseの狭いコートと小さいゴール前での細かいStick skillを幼少のころから鍛えられ、加えてIce Hockey仕込の強いリストで狭いスペースでクイックに正確で速いシュートを打てる選手が多い。JHUが勝てないのはCanuck(カナダ人)を採ってないからだ、なんて批判もあるくらい。

東大の選手も興味があるなら、Michiganだけじゃなくて春休みとか利用してCanadaの地元のクラブチームとかに数ヶ月ステイしてみたらどでしょ?全く違ったラクロスの世界観が開けるはず。その後の人生絶対もっと楽しくなるはず。Lacrosse界は皆同胞に優しいので声掛けたら簡単に受け入れてくれるはず。若くて勢いと行動力のある尖った選手には是非お奨め。

3QのCrowleyのBehind the backなんて典型的Canadian…Fieldでこれやられるともはや笑うしかない。

しかしDenverは数ヶ月前から比べても明らかに成長してる。さすがHall of fame(殿堂入り)コーチ、元PrincetonのBill Tierney。来年以降Tierneyに師事したい優秀な選手が集まり始め、間違いなく数年後には競合になってくるはず。空気の薄い高地での練習でCardioが強いと言われ、ホームゲームではシュートが若干浮くため相手が苦しむと言う。

S Brook 5点目のCompitelloのXからの1 on 1とDiving shootは上手すぎて吹いた。4Qの8点目も。この人そんな脚速くない、いやむしろ遅いのに、タイミングとステップワークでこういうの出来るんだっていう。あとSwim dodgeの使い方。派手でリスキーなプレーにも見えるけど、Roll dodgeだと時間掛かり過ぎて、かと言ってSplitだとチェックを受けるケースで結構有効。Dの間合いに慣れる必要あるけど。足速くないATの選手は見て学ぶ点多いかも。
3Q Denver 6点目、2 men downでのクリースからのNon-cradleでQuick tapしてのOut-in-outのパスは、ああ、なるほど、クリース前のシュート以外でもこういう使い方するのねと納得。確かにクリースで混んだ状態ではキャッチしてクレイドルする暇も無いので。

3、4年生が多く、且つCanadian Box Lacrosseで大事な試合の経験を多く積んできてるCanadianの主力が率いるStony Brooksは終盤の落ち着きっぷり、試合のコントロールっぷりが印象的。終盤の4年G Paarの気合のセーブが痺れる。なんか…いいっすね。こういう4年生の命懸けの姿、魂みたいなの…

ハイライト

いたる@13期

NCAA 2010 Game Review vol. 22 Tournament 1st round①: Cornell-Loyola

またまたCornell。そしてまたしても名勝負製造機。NCAAトーナメント史上稀に見る接戦。3 over time。去年の準優勝から抜けたMF大黒柱2枚(GlynnとSeibald)の穴は大きいが、去年の脇役や一年生がStep upし、去年までとは言わないまでもFinal Four争いに絡めるレベルにまで成長。 「賢いラクロス」の代名詞。智将Tambroniコーチの戦略が光る。とにかくPossessionを大事に、Lose ball、Face off、Turn over、Clear/rideへの徹底したこだわり。元Princetonで現DenverのHC Tierneyをして「They know who they are(出来ることと出来ないことを分って身の丈に合った/自分に合ったプレーをする)」と言わしめる。

OではOff ball重視、スライドを発生させてからのNon carrierによる攻めを多用。Ball carrierが相手を抜きながらホントによくフィールド全体のPass targetを見てるなーという印象(自分のMark manじゃなくて)。One last passとか、Don’t be selfishとか、”WE”, not “ME”とかPatienceというアメリカでよくチームオフェンス精神を表す際に使われる言葉が本当に当てはまるチーム。(ちなみに、対するLoyolaはそれを知って逢えて遅めのSlideで対応してるのかな?)特にとんでもない身体能力やStick skillを必要とする訳じゃないのである意味東大も練習次第でCornellと同じことは出来るんじゃないかと思わされる。(VirginiaのBrattonみたいな鬼シュート打てって言われても現実味無いけど…)

「確率の高いシュートを打てる状況を作る技術」がとにかく高い。ちょっと半身抜いてシュートのプレッシャーを掛けて、崩して、その隙に動いてるNon-carrierのスペースにパスして、そいつがまたシュートプレッシャー掛けて更にガラ空きになってる別のNon-carrierにパス出して、どフリーでシュート、みたいな。強い相手との接戦だと必ずしも毎回成功するわけじゃないので見えにくいが、今回のように相手のレベルが落ちるとクッキリと見て取れる。

あと、LoyolaのD、4年の#2 Steve Layneが身長174くらいだが、しっかり足を動かして地味に相手エースの#3Pannelをしっかり抑えてるのが隠れた殊勲賞もの。Big Red GのFioreは1年生ながら落ち着いてゴールを守る。(前回も書いたが)脅威の成長意欲/学習能力で、頭を使った正しい努力を重ねることでいまやベテランの風格すら漂う。

しかし何なんでしょねこのCornellの後半の脆さは…

ハイライト

いたる@13期

2010年5月16日日曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 21 Navy-Maryland (4/10)

(今回の試合では特に目立ってる訳ではないが)MDのEMOは56%というリーグ最高レベルの得点率(対戦相手の平均は3割)。相手からするとFlag downしちゃうと2回に1回以上確実に失点に繋がっちゃうということ。恐ろしくてファウル出来ない。以前コーチのDave CottleがESPNU Podcastのインタビューで「なぜそんなに点が取れるのか?」との質問に対し、「面白く聞こえるかも知れないが、実はEMOチームにDefenseを教えている。DFのフォーメーション、相手一人ひとりのポジショニング、スティックの位置、肩の向きがそれぞれどういう意図で何を意味するのかを教えている。結果として他チームよりDを判った上で効率的なEMOが出来ているんだと思う。」とのこと。

以下見所。
●Terps 1点目の#13 1年生MF Owen BlyeのInvert、Xからの1 on 1でのゴールライン越え際の振り向きながらのシュートはAT並みに上手い。MFとしてこういう点が取れると得点の幅が広がる。
●MD#37 3年生LSMのBrian FarrellのOffence貢献っぷりが引き続き凄い。Stick skillも、Offence意識の高さも見習いたい。
●Navy 3点目のLennonの1-4-1からの、ボールがXにある状態でクリース前から左にFlair outしての得点は、クリースエリアでの動きのひとつのオプションとして特にゴール前をぎっちり固めるDに対して効果的。簡単にDのプレッシャーの無い状態で近い距離から成功率の高いシュートを打てる。
●MD3年AT #1 Grant Catalinoがまたしても爆発。シュートがホントに上手い。4点目のキャッチしてからシュートまでの速さ、正確さ。NFL並みのサイズ(195cm)でこの機動力、この上手さ。恐ろしい国です。ホント。
●MD3年AT #2 Travis Reedが左のStanding shootでゴール右上に突き刺すというまったく同じ形で3点取るが、シュートのリストの使い方が物凄い参考になる。貰ってから打つまでが早すぎてゴーリーが分ってても反応できない。こういうシュートレンジの広い鉄板シュートを打てる人が一人いるとFast Break、Ground ball直後のBreak状態、MFの1 on 1で物凄く簡単に且つ確実に点が取れる選択肢を持つことになる。
●6点目MF Cummingsの右に抜いてからのStanding shootはよーく見ると頭で下にHead fakeを入れて上に打ってる。こういう芸の細かさ、意識の細やかさ、技術の高さ。Shooting projectチームの皆は必見。ちなみにCummingsは高校までATで大学からOF MFに転向したパターン

いたる@13期

2010年5月11日火曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 20 Princeton@Cornell (シーズン第2戦, Ivy League Tournament Final: 5/9)

Virginiaの事件(男子選手が女子選手への殺害容疑で逮捕)から一週間、まだLacrosse community全体に悲しみと動揺が残る中、今年から始められたIvy league tournament。冷たい雨の降りしきるIthaca(Cornellの本拠地。NY州北部)、体感温度マイナス3度…勝った場合はIvy Championとして自動的に、負けた場合も全体の順位で恐らくNCAAトーナメントには出場出来るものの、第一回のIvy league覇者を目指し、そして何よりも因縁のライバル対決ということで高まるテンション。先週に引き続き激しい試合。先週のリーグ戦の試合ではCornellが1点差で勝利。準決勝ではPrincetonは7-6でYaleから逃げ切り、CornellはBrownを14-8で退けての再戦。

試合は先週と全く同じ展開。前半はCornellが支配し、後半にPrincetonが爆発。(ごめん。DVDの録画の設定ミスったため4Qの15分がごっそり撮れませんでした…申し訳ない。気付いた時にはOTでした。最後のVictory goalは何とか撮れたのは不幸中の幸いってことでご勘弁を…)

先週のInside Lacrosse podcastでのCornellコーチのTambroniへのインタビューが面白かった。GのAJ Fioreは1年生。高校No. 1 Gとして鳴り物入りで入学。当初は大学レベルとのギャップに苦しんだが、異常なほどの成長意欲と学習能力で急成長を遂げる。毎日試合のVideoを見まくり、コーチに対してFeedbackを求め、細かい点に至るまで技術的を研究し、物凄い速度で成長し、正ゴーリーの座を射止める。2年ATの#3 Pannelは昨年準優勝の立役者。国内最高ATと評価する人もいるほど。Dodgeをした後に一息ついてDがホッとしたところで更に re-dodgeして抜いてくる。ネチネチとロールした後にズバッとスピードで抜きに来る。ゴールに向かえるだけじゃなくHead upして常にFeedを狙うなどDにとっては嫌な相手。Xからの1 on 1でのトップスピードで走りながら後方に振り向きながらのシュートの速さと正確さは秀逸。シュートプロジェクト、1 on 1プロジェクトのメンバーは注目。

あとは、CornellのOff ballの動きは本当によく訓練されてるなーという印象。裏から、横からの1 on 1の際のクリース前のエリアのNon-carrier達の動きが本当にLogicalで激しい。で、実際に効果的。1 on 1で抜かなくても賢くやれば簡単に点は取れるのねということを思い知らせてくれる。後は、本当にPossessionを大事にするチーム。Patientにボールを共有。チームとして学べる点が多い。

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いたる@13期

2010年5月10日月曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 19 JHU-Loyola 5/8

冒頭でも流れる、Virginiaの男子選手が過去に交際していた女子選手への殺人容疑で逮捕されるという全米に報道された衝撃のニュースから一週間。Close knitなラクロスコミュニティ全体から悲しさと動揺が感じられる。Virginiaは被害者の家族と相談の上、男女ともに最終的にトーナメントへ出場することを決めた。JHUも喪章を付けてプレー。冥福を祈るばかり。

レギュラーシーズン(リーグ戦)最後の試合。今シーズンを通して苦しみ続けるJHU。90年代までは文句無しのLacrosseの名門中の名門、本家本元。1898年以来120年間で44度の優勝を誇り、ここ10年も05年、07年の優勝など輝かしい成功を収めてきた。08年にはPaul Rabil、Kavin HuntleyというMLL屈指の名選手を輩出。ところが、今シーズンは打って変わって苦戦続き。ここまで6勝7敗と負け越し。38年連続のNCAAトーナメント出場の記録が遂に途絶えるかという文字通りの崖っぷち。OBからも心配と批判の声が続出し、コーチDave Pietramala解任の声すら聞こえる(試合中にキレてUnsportsman like conductを貰う姿や、強い規律の鬼軍曹のイメージが今時のゆとり世代に受け入れられずリクルーティングに悪影響を及ぼしているとの意見も)。多くの「使えない」2, 3年生がシーズン後に「クビ」(”Politely asked to leave the program”)になるとも言われている。Recruitingが手薄になった数年前の影響から、4年生が少なく、3年生はAT Wharton以外ほぼ無に等しく、GやDも含め1年生7人が主力に名を連ねる若いチーム。一方で、来年以降は強い1年生軍団が経験を積んで着実に復権するとの見方も。

試合を見て分かる通り、Face off、Ground ballが強くないのと、Clearをちょくちょく失敗しちゃうのと、Turn over(ミスして相手ボール)が多い。この辺の「球際」の弱さがBody blowのように効いて、自らの首を絞める。Possession時間が少なくなり、元々不安定なOffenceが更に得点に繋がらなくなるとう悪循環。その点に関しては東大も反面教師的に学べるはず。(見てるとNCAA Div 1 top teamのレベルですら、どのコーチもClear、GB、Turnoverの「ポゼッション3点セット」の重要性を口が酸っぱくなるほど繰り返している)

Blue jaysの1点目、exからのATの1 on 1→スペースのある逆サイドへの展開→貰ってすぐの1 on 1で得点のシーンはチームオフェンスとして、スペースの意味を学ぶ上で参考になる。エースMF、MLL入りが囁かれる頼れる4年生#15 Kimmelのtopからの1 on 1で 左のOver hand running shootでの全く同じ2得点がtextbookで彼の得意技。「わかっちゃいるけど止められない」攻撃の典型。この手の「誰にも負けない」「絶対に点を取れる」一連の型を一つ持っていると強い。恐らく若いころから一人で練習後も延々反復練習したんだろう。
AT #42Whartonが5得点の大爆発。4Qの9点目の右サイドからスペースのある左サイドへ大きく横断し、Dをスクリーン的に使って、Gのポジションをずらして、且つゴールの逆サイドに突き刺す左のRunning shootは100回見て刷り込む価値あり。シュート時のHipのキック、Shoulder turnの大きさ、Snapの強さ、全てが参考になる。

一方のLoyolaは、解説者のMark Dixonの指摘の通り、MFの爆発力に欠け、1 on 1の個対個で相手をBeat(抜く)出来てないのが苦しさにつながっている。ATは器用。チームOFとしても安定。ミスも比較的少ない。が、抜けない、点が取れない。ある程度強い相手には如何に強い個の力、高い身体能力が必要不可欠かがよく分かる。(Weight trainingでスクワットとデッドリフトとカーフレイズガンガンやってAgility/Quickness限界まで上げるべし。)

そうは言ってもやはりDiv 1上位校、巧くて学べる点は多い。Loyola 4点目のcreaseへのspot feedが素晴らしい。高校All star #11 1年生ATのPatrick FanshawのCrease前での、Ball carrierとMark manをよーく見てのOff ballの動きが素晴らしい。ほんのちょこっと動くだけで点は取れるんだ、っていう。Loyola #10 4年のChris Hurstによる5点目のミドルシュートにも注目。ボールを貰った瞬間にクイックにクレードル無しでシュート出来ることが如何にGにとってやり難いか、如何に得点確率向上に繋がるかを示すいい例。(個人でシュートの練習をする際にも必ず誰かにボールをパス/トスしてもらい、「貰って即シュート」でやるべし。もし相手がいないなら自分でボールを投げ上げてでもキャッチ直後のシュートを練習するべし。)

解説者のMark Dixonの言葉で印象に残っているのが、「バスケと同じ。必ずしも得点に繋がらなくても勇気を持って相手を抜いて強引にでもクリースに向かうべき。点が入らなくてもファウルを貰えるかも知れないから。そうしないと何も起こらないから」

ハイライト

いたる@13期

2010年5月3日月曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 18 Syracuse at Notre Dame

ほい。Tips板用のRecap。長すぎたり内容が選手が求めるものじゃなかったりしたら教えてね…最近少しずつ意識的にOだけじゃなくてDやGも興味を持つように、そしてただプレーだけじゃなくてその裏側の背景/top playerの意識の高さ/ラクロス文化等も注入出来るようにFine tuneしてみてます。

Syracuse at Notre Dame

3連覇を目指す北のラクロス王国Syracuse。毎年主力が抜けながらもNY州やCanadaから毎年強力な助っ人新人/転校生を補充することで確実に優勝争いに絡んでくる。2000年以降9年で5度の優勝は他を寄せ付けぬ実績。Quint KessenichのDream Teamでも3人が名を連ねる。

OhioにあるNotre Dame Fighting Irish。長らくLacrosse不毛地帯だった中西部もここ20年で次第に変化が(Michiganもその波の一つ)。シーズン初期にDukeとLoyolaから金星を挙げ、大物食いの名を欲しいままに。

昨年Save王でMLLドラフト候補と言われるND 4年G、Scott Rodgers(193cm, 120kg且つQuick…)と、MVP候補3年G、GallowayのG頂上対決。Goalie陣必見の一戦。Gallowayの直接得点に繋がるパスの鋭さと視野と度胸の良さがむあじでinsane。ガチでSave直後に相手Goal前のATに鬼のレーザービームフィードを突き刺してくる。NDのHCに「Syracuseは110ヤード全てでゴール前と同じ気持ちでDをしなくちゃいけない」と言わしめたのも頷ける。Rodgersも「それ止めるんかい!?」というセーブでCuseを苦しめる。Gが強いと番狂わせの可能性が一気に上がる。

Cuseの1, 4点目のLSM #11 Joel WhiteのOffense貢献っぷりが引くぐらい凄い。その辺のShortyより全然怖い。1点目の爆走っぷりに注目。2点目の#34Pete Colemanのボールの要求っぷり、貰う前の視野とスペース理解、状況判断が正に教科書。Jamieson、KeoghのCanuck(Canadian)ATコンビが引き続きCraftyでCrazyで楽しすぎ。12点目のリバウンドからBehindとか笑うしかない。Jamiesonは既にBoxでプロを経験しており、卒業後もIndoor (NLL)/Outdoor (MLL) hybrid方式のTorontoに指名されると言われる。地元のCanada Ontario州Six NationsではLacrosseが生活そのもの、町の皆、家族皆が3歳からStickを持ち、四六時中Stickとボールで遊ぶ文化だと言っていた。Amidonの3Q 6点目がsick。Leftyの選手は何回も見て脳裏に焼き付けるといいかも。

攻撃が注目されがちなSyracuseだが、国内最強の呼び声が高いDがつくづく凄い。個々人の能力の高さも去ることながらクリース前にカチッとPackし(固め)つつ広い範囲でプレッシャーを掛ける集散っぷり、首振りとコミュニケーションに裏打ちされたチームとしての統制、slide/coverの速さと巧さ、崩された後のsettle down、Stick upによるパスコースへのプレッシャー。NDは本当に攻めにくそう。毎年「今年は??」と言われながらも結局優勝に絡むのにはその辺も大きいのかも。D陣は是非分析してみて。

ゲームハイライト

2010年5月2日日曜日

NCAA 2010 Game Review vol. 17 Hartford at UMBC

UMBC (University of Maryland Baltimore County)は”Hot Bed”(歴史的にラクロスの盛んな東海岸沿いのエリア)のど真ん中、ラクロスのメッカMarylandにあるだけあってラクロスをよーく理解してる地元の選手が多い。ぶっちぎった身体能力や体格の選手に恵まれている訳でもない中基礎のしっかりしたラクロスをしていて個人的には好き。

1点目、2点目の#39 AT Matt Lathamの得点、Paint(クリース前のエリア)のOff ballの動きが非常に上手くて参考になる。Outstandingな身体能力や洗練されたStick Skillを必要とするわけでも何でもなく単純なLacrosse IQの話なので、是非とも東大のATでスピードやパワーが無くて悩んでる選手には参考にして欲しいなと思った。CarrierとDを見てこういう動きを毎回無意識に/Habitualに出来るようになれば自分でもびっくりするくらい簡単に点が取れるようになるはず。ちなみに#20のMF Kyle Wimerは正にBlue colorの仕事人としてESPN、Inside Lacrosseの解説者Quint Kessenichの今年のMLLドラフト予測17位にランクイン。(ちなみにこれを見ると如何に強い選手が多くのチームに分散してるかが判る。)

Hartfordの3点目、12点目のMF #7 Franzeのbull dodge rightyでDを完全に抜いてなくても相手を背負った状態でランニングシュートを決める技術はMF陣がプレーの幅を広げる/得点機会を増やす上で非常に参考になるはず。あっ別に相手抜かなくてもこんなに楽に点取れるんだ、っていう。これをマスターすれば相当チームの得点源として機能出来るはず。

UMBC、今年はランク外(20位以下)恐らくNCAA Div 1の60チーム中ちょうど真ん中くらいに位置する典型的「中堅校」。関東学生リーグで言うと2部の千葉大学みたいなイメージ?昨年6月の東京でのJapanとの試合では1点差で勝利、深澤さんのレポートを読む限り点差以上に実力に開きがあったとのこと。タイミング的にもシーズンが終わった後なので、恐らく卒業旅行のノリで時差ぼけの中来シーズンへの感触を探る意味合いが強かったんじゃないだろうか。想像するに、実際には「流した」UMBC >「ガチの」日本代表という感じなのかな?(否定的になる訳でも悲観的になるわけでもなく。一ファンとして。)

無理を承知で乱暴な言い方をすると、アメリカでは大学レベルに、過去15学年分くらいの上澄みを集めたAdult日本代表を軽く倒すチームが少なくとも30~40個あってピラミッドを形成してるということ?

単純に上手いチームを見ることだけが学びの全てとは思わないが、やっぱり世界最高峰、一流を見ることが「憧れ」のパワーを生み、「なりたい自分の姿」と燃えるような情熱を作るんだとしたら、個人的には、東大の現役の皆には(チームの中で内向き目線にならず、日本で「上手い」とされてるチームや選手だけに囚われることなく)もっともっとアメリカを始めとしたラクロス先進国の本場のトップレベルのプレーにどんどん目を向けて(更に言うとアメリカでも何も中西部/MCLAのMichiganだけに限定することなく)、浸って、かぶれて、楽しみながらAddictedになってほしいなーという想いが強いっす。一OBとして。何て言ったってそれが結局一番楽しいから!!(偉そうなこと申し上げて申し訳無いです…あくまで一ラクロスファンの想いとして。)

純粋に、NCAAトーナメントSemi-Final、Finalの、あの5万人の歓声の中で、このスポーツを取り囲むあの独特の空気を吸い、素晴らしいプレーとドラマを見たら、絶対に一発で虜になっちゃうので!

ゲームハイライト

いたる@13期