2011年3月31日木曜日

NLL 2011 Game Review vol.08 Boston Blazers @Buffalo Bandits

(NLL観戦ガイド記事はこちら。NLLの裏側が見られるドキュメンタリーの紹介記事はこちら。)

All Star以降、NLLと契約を結んだVersus TVで毎週1試合を放映するスタイルになった。個人的には、今回の試合は今シーズンこれまで見て来た10試合近くの中でベストゲーム。Eastern Divisionで2-3位のBoston BlazersとBuffalo Banditsの熱いライバル同士の試合。双方オフェンスにはスター選手が複数おり、非常に高いレベルの、且つエンターテイニングなプレーを見せる。また、試合自体も終了直前まで勝敗の読めない1点差のシーソーゲーム。もし、NCAAは好きだけど、まだNLLにはいまいちハマれてないという食わず嫌いの方がいたら、この試合から入れば一気に好きになれるはず。NLL、及びインドアラクロスの醍醐味が凝縮された試合なので。

注目のスター選手

両チームのオフェンスにMVP級のスター選手がゴロゴロしている。

Buffalo Bandits
Boston Blazers
  • #22 Casey Powell (10 MVP)
  • #6 Dan "Dangerous" Dawson (09 MVP)
  • #19 Josh Sanderson
で、彼らの織りなすプレーが本当に感嘆の溜め息しか出ねえ...特にBanditsのTavares-Steenhuisの黄金ベテランコンビの2 on 2は芸術品。フィールドラクロスの選手たちが見て学べるpickの技術、騙しやずらしの技術が満載。「こんなにシンプルな2 on 2のpick and rollでこんなに簡単に点取れるのか!」と感動させられる。OF陣必見。

特にBanditsは上述のドキュメンタリーフィルム"X"でフィーチャーされていた事もあり、なぜか思い入れが生じ始めている...ベテラン職人達のプロ意識や技術、若手が一生懸命自分の役割をこなそうとしている姿、脇を固めるソルジャー達のブルーカラーとしての堅実な仕事っぷりが素晴らしく、時々TavaresやSteenhuisがmagicalなプレーを見せる。そして何と言ってもHCのDarris Killgourが熱い。

いくつか個別の注目点

Blazers 3点目の#22 CP (Casey Powell)の完璧なface dodge。ジムで走りながらPC & イヤホンで見ていて一人で「うおっ!」と叫んでしまい、恥ずかしかった...

4点目のCPのbroken situationのシュートの正確さ。文字通り針の穴に糸を通すような。

Bandits 4点目のTavaresのロングシュート。シンプルにbroken situationでDFが詰めて来るタイミングで身体とスティックを隠してコンパクトに鋭く振り抜き、超正確にゴールの角を突く。何っ!?これで点取れるんかい!?これぞベテランの技術。職人技。

あと、Bandits 5点目。これまた感動の技。ゴール右前でミドルレンジのシュートモーションからパスを受けたXのTavaresが、貰った瞬間ゴールの裏の逆からダイブして直接ゴール。Goalieが逆サイドにポジションを移す前に逆から、という定石だが、それを表からじゃなく裏から超素早くやるっていう。

Boston 6点目、数試合前に一度復帰し、その後契約解除され、さらに今回の試合でまた復帰した、CPの弟、Ryan Powellの超ピンポイントのシュート。Powell兄弟のシュートの異様な精度の高さが際立つ。ゴールの編み目一つを狙ってるんじゃないかぐらいにムチャクチャ小さい隙間から決めている。

後半4Qだったかな?Tavaresの表からのダイブ。左前からファーにダイブすると見せかけ、ニアにヒョイッと入れる。

後は、全体的に、Buffaloの会場の観客の盛り上がりっぷりが物凄い。ちょっとイっちゃってるテンション。NLLで一番客が熱いのは恐らくBuffaloかな?TorontoやRochesterも近いかな?

試合は2点差でBanditsが勝利。ホームでの連勝街道を続けている。ショートドキュメンタリーフィルム"X"以来、何だかBanditsへの思い入れが強くなっている。Blazers、Rockとのプレーオフでの優勝争いがどうなるのか、非常に楽しみだ。

BTB (Behind the Back) passの重要性

NLLを見始めて非常によく解ってきたのが、BTBのパスの技術の重要さ、というか、必要性。

フィールドラクロスではどちらかと言うとBTBというとシュートのイメージが強いが、ここで言っているのはパスの方。NLLの映像を見ている皆さんは同じくよく解ってらっしゃると思うが、このBTBのパスの頻度がムチャクチャ多い。タイトで展開の速い中、ゴーリーの裏を掻いていいシュートを打たなくては行けないため、この技術は必須。

特に今回の試合でCasey Powellが使っているのを見て非常に感じたが、この技術、「出来ると便利」ではなく、オフェンス上級者を目指すのであれば、「出来なきゃダメ」な技術なんだなと言う事。特に、EMO (IndoorではPower Play)の状況や、セットオフェンスやZone DF対応でも崩れた状態で、自分が半身になってフリーで貰ってスタンディングショットのモーションに入り、DFが一枚詰めて来た時に、自分の背中を向けた側でフリーになった選手にパスを出したいシチュエーション。

(例えば、右利きの選手であれば、EMOで自分が右上で、トップから右手でパスを貰い、ゴール右前、つまり自分の左手側に瞬間的にパスをはたきたい状況)

これが正面側/スティック側であれば特に問題無くパスすればいい。問題は背中側。この時、もしBTBが出来なければ、詰めて来たDFのチェックをかわしつつ左にはたくために、恐らく①身体を開き直してパス、②ステップバックしてパス、③小さくロールターンしてパス、④Dのスティックが届かなければ持ち替えてoff handでパス、の四通りが有り得るが、どれを取っても無駄に時間をロスしてしまう。

ここでBTBで完全にシュートのステップに入った状態でチェックを受けそうになりながらスパッと出せれば、表側に出すのと同じか、むしろシュートモーションでテイクバックした状態でキャッチしてそこからヘッドの動きだけでヒュッと出すので、場合によってはこっちの方が早く投げられる。で、上記4つと違い、モーションが完全にシュートの寸前なので、DFも思いっきり(プラス二歩分くらい)引きつけられた状態で、Gも完全に身構えてしまい、意表を突かれる形になる。

これは、DFのスライドのスライド、Goalieのポジション修正の上を行く速さでシューターにシュートを打たせる上で、有効、というよりも、高いレベルになれば必要不可欠な技術なんだな、と気付いた次第。EMOをやる選手は特に練習しまくって安定して試合で使えるようになれば、シーズン後半の強い相手との競った試合で、プレッシャーのあるDF&強いGと当たった時に有効な武器になるはず。

Livestreamでのリプレイ

Watch live streaming video from bostonblazers at livestream.com

2011年3月30日水曜日

NCAA 2011 Game Review vol.13 Virginia @Johns Hopkins

見終わっての感想は...「これだからNCAA Lacrosseファンはやめられねえ」だ。常に驚きと感動、そして学びと勇気を提供してくれる。あの若手主体のHopkinsが2位のVirginiaに12-11で勝利。感動した。これで、個人的な今週末の2試合の予測、VirginiaがHopkinsに手堅く勝ち、MarylandがNorth Carolinaをボコるという予測は両方外れ...(逆にこの2つの結果予想してた人がいたら万馬券だ...)何が起こるか本当に解らない。

以下、何が起こったのか、何故起こったのか、個人的に感じた事。

起こったこと
  • 前半最初にHopkinsが連取。前半終了時点で4点リード。後半3Qに入ってVirginiaが追いつくも、最後まで粘りきり、終了間際にJHUが決勝点を決め、一点差で勝利。
  • 正直Hopkinsが勝つ事を予想していたファン/関係者は少なかったんじゃないだろうか。だが、試合を見て感じたのは、今回の勝利、「たまたまポロッと勝てた」感じではなかったということ。運や奇策ではなく、がっぷり四つで正面から組み合い、至近距離で殴り合った末の力での勝利。

Hopkinsの姿を見て感動
  • 若いHopkinsがシーズン初期から試行錯誤しながら、初期にPrincetonに手も足も出ずにやられたあのチームが、ここに来て急成長してきている。
  • 若手、特に去年No. 1 Recruiting Classと言われた2年生達が一気に花開きつつあり、本来持っていた才能を発揮し始めている。
  • IL Videoにアップされていた5度に渡る密着取材ビデオ、Road to Face Off Classicで練習やミーティングでのスタッフや選手たちの姿を見て、真摯に努力し、ポジティブに変化しようとする姿を見て感銘を受けたが、それがこうやって実を結び始めているのは映画やドラマさながら。
  • 恐らく先週のSyracuseとの延長1点差敗北(しかも最後の疑惑判定によっては勝っていた)が、大きな自信になっている。明らかにセルフイメージがどかっとデカくなっている。今回の試合では2位のVirginia相手に全くひるむ事なく、堂々と、そして全力でプレーしていた。
  • 特に、このチームを見て感じるのは、その「一生懸命」な姿勢。マジで高校球児かと。GBやトランジッション、フライも全力疾走。ミスしても清々しく切り替えてすぐ次!一人一人がチームのための駒になりきって、貢献しようとしている。見ていて気持ちいい。この「一生懸命さ」「全力を尽くす姿勢」、それによってセルフイメージを最大に保つ姿は、間違い無くチームとして、心/メンタルの状態として、非常に学ぶべきだなと感じた。
何で勝ったのか

いくつか個人的に感じたことを。
  • HopkinsのDFが、非常に良かった。僕自身AT出身なので普段ちゃんとフィーチャーしなさ過ぎなのだが、母校JHUでAll American DefenderだったCoach Petro。徹底したDFシステムが本来の強さ。それがシーズン中盤に来てバチッとハマり始めている。
  • そして、引き続き、Arizona出身の2年生Goalie #33 Pierce Bassettがキテる。14セーブ。シーズンセーブ率65%。去年のNotre Dameの守護神Scott Rodgersと同じ数字だ。彼、ホント凄い。ここ数試合で完全に開花している。かなり止めている。何が秘密なんだ?軌道を読んでるのか?スポットを空けて打たせてるのか? 純粋に動体視力と反応が物凄いのか?その全部?何なんだろ。明らかに反応が野生動物並みに柔らかく速いのは間違い無い気がする。(クリアパスを普通にSteele Stanwickにカットされられたり、無駄に同じくStanwickダブりに行って無人のゴールにサクッと決められたりと、まだまだ経験不足な面もあるが、そんなもんはすぐに修正されるだろうし。)
  • この、強いゴーリーと、統制されたDFシステムという二つの要素が揃ったチームは、間違い無く安定して強い。今年のCuseしかり、去年や今年のNotre Dameしかり。圧倒的に負けにくくなる。
  • 圧巻だったのは、Shamel Bratton対策。確かに、2点取られてはいる(その2点は、まあ、しゃあねえなって得点。Shamelのいつもの有り得ないシュート。ま、この人、もはや化けもんだし...)。が、それ以外の所で仕事をさせていない。セットで彼を起点に攻められそうになっても、かなり1 on 1で止められている。基本的には左しか無いので、左を切って、右のダッジのフェイクに一切付き合ってプッシュに行ってない。解説で指摘されていたが、Coach Petroがビデオを分析しまくり、Shamelのプレーを丸裸にし、何十通りかのシュートまでの動きのパターンを特定し、止める策を練りまくったと言う。なるほど、そこまでやれば止められるのか...大事だ、徹底したスカウティングによる「傾向と対策」。
  • 2枚看板MFの一人、#9 John Greeleyがハイヒット(つうかほぼ頭突きアッパーカット)で脳震盪になり退場するのだが、その後その穴を埋めるべく、#16 Lee Coppersmithというこれまで脇役だった別の2年生の伏兵MFがステップアップ。2枚看板その一の#31 MF John Ranaganばりのダッジ力とミドルのランニングショットでハットトリック。特に3点目の貰い際のスプリットから右のランニングシュートは教科書として何度も見直したい完成度。スティックを完全にゴーリーから隠して一気に振り抜いている。何!?まだ隠れてたの?こんなに能力高いMF。実は結構talent deepだなHpokins...ちなみに彼も2年生。こりゃ来年再来年Hopkins間違い無く来る匂いがプンプンして来た。ちなみに彼の出身はFlorida。Lacrosse hot bedのど真ん中にある伝統校HopkinsがArizonaやFloridaやOhioと言ったLacrosse新興地域の才能頼りで復活する姿が何とも象徴的。
  • Virginiaは、以前から指摘されていた、DFの弱さが露呈した感じか。今までは、別に10失点しても、15-16点取りゃ別にいいんじゃね?でやってこれた。が、今回のHopkinsの様にタイトに守られて10点前後しか取れなかった時、失点の多さが致命的な問題として浮上してくる。「点の取り合いの熱いラクロス」って言うと聞こえはいいが、「点を取りまくる事」はいい事だが、「点を取られまくる事」は(野次馬ラクロスファンとしちゃ楽しいが)別にチームとしては別に誇れることでも何でもない訳で、「Virginiaファン」としては頭が痛い訳だし...今のUVAだとイメージ至近距離で多少パンチ貰いながら派手なKOを狙うスタイルのファイターみたいになっている。ハイライトKOシーンを連発するが、時々クリーンヒット喰らうので危なっかしい、みたいな。今後トーナメントに向けてどこまでこの穴を埋められるかがUVAにとっては肝になって来る。
  • あと、Hopkinsの伝統のホームコート、Homewood stadiumの地元ファン達の応援のパワーがHopkinsのメンタルを支え、パフォーマンスを押し上げている感じを受けた。大事だ。応援の力、そしてそれに感謝し、環境に感謝することで生まれる力。セルフイメージ拡大再生産のサイクル。
非Hot bedからのリクルーティングの重要さと、ラクロスの爆発的普及

さて、ここまで書いて、一つ今のアメリカのラクロスを語る上で外せないイシューがちらついているのでサクッと言及。既存のラクロスメジャー地域、所謂Hot Bed(苗床/温床)以外の地域からのリクルーティングの重要さ。上記で述べた通り、この試合でJHUが勝てたのは、ArizonaのBassett、FloridaのCoppersmithの活躍があったから。これは10年前は考えられなかった現象。

既存の優良選手供給源は、Marylandエリア、NY州北部、NYLong Islandの三つ。加えて、Philadelphia周辺やVirginiaがちょいちょいという感じ。それが、Ohioだったり、Floridaだったり、そして西海岸やTexas/Arizonaといった南部に広がりつつ有る。そして外せないのがご存知Denver/Coloradoでの異様な盛り上がり。MLL/NLLがあり、Denver大学のBill Tierneyがいて、Kids/Juniorレベルが急成長することでMCLAもColorado StateやColoradoが急速に力を付けつつ有る。それこそ日本で20〜10年前に起こったラクロスの爆発的普及が今アメリカ各地で起こっているイメージ。

特に西海岸やTexas/Arizonaでのここ数年の優良選手供給っぷりが凄い。背景には、例のLXM PROの面々が率いている、Adrenaline Lacrosse CampやStarz Lacrosseがある。そこでコミュニティを盛り上げ、質の高い指導を与え、同時にNCAAトップ校へのリクルーティング源としての機能を提供している。この辺の話、今後のラクロス界の趨勢を語る上で超重要且つ面白いトピックなので、今度また時間のある時に別途切り出して書いてみようと思う。

印象的なのは、そうは言ってもこれまでの定説として「身体能力が大事なMFに関しては全国から。でも、Skill PositionのG、AT、FOGOはやっぱりHot bedから」という考え方があったのが、今回のBassettの様に、Skill Positionでnon-hot bedの優秀な選手が出始めているということ。Youtubeを始めとしたオンラインでの情報ソースやAdrenaline Lacrosse等キャンプを通じたトップレベルのコーチ/選手との接触が情報の非対称性を薄れさせている面もあると思われる。アメリカのラクロスは確実に大きく変化し始めている。

ESPNのハイライト(リンク

IL Videoのハイライト


来週末はNew Yorkで行われるILの集客試合その3、Big City ClassicでSyracuse-Duke、Hopkins-North Carolinaを観戦予定。HopkinsとNorth Carolinaはもしかしたら再来年辺りの決勝の組み合わせになってもおかしくない気がする...

2011年3月29日火曜日

NCAA 2011 Game Review vol.12 North Carolina @Maryland

NCAA Lacrosse最高!の一言。やはり素晴らしい。毎週末本当に学びが多く、楽しめる試合を提供してくれる。後に述べるが、コーチ陣が戦術を考える上で学べる点が非常に多いと感じた。

ここ数週間、放映が続くUNCの試合。怪我で上級生を多く失い、一年生主体で結構大変な状況の中非常に良くやっており、段々感情移入というか、応援したい気持ちが強くなっって来ている。色が大好きなCarolina Blueってのもあるかも。

今回の試合は、同じACC (Atlantic Coast Conference)の強敵Maryland。MDは数週間前のGeorgetown戦を見た方はご存知の通り、超強力オフェンスのチーム。Run & Gunの速攻主体、プレスライド、プレスディフェンスでガンガントランジッションし、攻撃の手を緩めず点を取り続ける大量得点で相手を倒す、というのが得意のスタイル。ここまで同じくDukeに負け、今回は負けられない試合。皆さんご存知AT #1 Big CatことGrant Catalino#27 Ryan Youngら強力4年生AT陣に加え、鬼神の如き存在感、GBとトランジッション、その後のShortyを上回る攻撃力で点を取りまくりの#37 LSM Brian Farrellなどを擁する。またここに来てRed-shirt FreshmanのGoalie、Philadelphia出身で、'10US代表 Brian Dougherty (Doc)の弟子、#31 Niko Amatoが一年生とは思えぬ太々しさと存在感を放っている。1 on 1の強さ、クリアパスの思い切りなど、Cuseの4年生Gallowayを連想させる。

UNCはここまで急激にチームとして形を為して来ているとは言え、やはり一年生主体のチーム。戦前の予想としてはやはりMD有利の見方が強かった。

試合

試合が始まり最初の10分間はその予想の通りに。Face offを支配し、速攻の連続でMDが立て続けに4得点。あー、やっぱUNCきちーかー、と溜め息が出た所から、ガラリと展開が変わる。

UNCがZoneに切り替え、トランジッションを抑えてスローペースにし、セットオフェンスの戦いに持ち込む。そこから一気にTerpsが攻めあぐね始める。陣形を切り裂き、崩せるMFのdodgerがいないという弱みが顕著に出て、ただパスを回すだけでほとんど崩せないというMarylandの隠れた弱みが完全に露呈。そこから3Q途中まで、UNC 8連続得点、MD 0得点の完全なワンサイドゲームに。最後までMDは展開を変えられず、一方のUNCは試合ごとに存在感を高める一年生軍団や#20 Jimmy Dunsterらが本来の力を遺憾なく発揮し、11-6で危なげなく勝利。

恐らくUNC HCのJoe Breschiらスタッフが事前にMDを徹底スカウティングし、Zoneが有効であることを見抜き、徹底してGame planを作り込んだ上で対策を練って来たんだろう。MDはSyracuseと同様、やはり得意のトランジッション/Run & Gunを封じられると弱い。この試合を見て、今後リーグ戦からプレーオフに掛けて、間違い無くZoneを敷いて来るチームが増えて来るはず。Zone対策が緊急課題に。攻撃力のあるチームは、優勝を目指す上でやはりこの壁をどこかで乗り越えなくては行けないんだろう。Zoneの克服、速い展開だけでなく、遅い展開でも相手をねじ伏せられるだけのPatienceと柔軟さ。去年の王者Dukeにはそれが出来ていた。裏を返すと、先週のHopkins-Syracuseに続き、Zone DFが勝つ上で如何に重要な定石の戦略になっているかを理解させてくれる試合だった。

ILのスコアボード

印象に残った点

UNCの1年生がとにかく凄い。つか、むしろ、ほとんど一年生がこのチームを回してる。何が凄いって、メンタル。もちろん、手元の技術も確かだし、足下のフィジカルもしっかりしている。が、1年目のNCAA Div 1のリーグ戦の大事な試合で、普通の選手たちだったらグラングランに揺らいでセルフイメージ小さくなっちゃってもおかしくない状況。そんな中で、確実に今を見て、自分のやるべき事に集中し、淡々と全力を尽くすというモードで仕事を出来ている。Sports Psychologyの教科書の様な心の状態を維持している。特に、最初に4点先取された時点でのUNCのベンチを見ても、あまり悲壮感や揺らぎが感じられなかった。「ま、たまたまポンポンっとやられたけど、予想された事じゃね?試合前に決めたゲームプラン通りにやれば絶対行けるから、大丈夫っしょ。淡々とやろうぜ。」的な落ち着きを感じられた。HC Joe Breschiらコーチ陣のコーチ力による部分も大きいと思うが。

ピンポイントで見ていて面白かったのが、Face off。ここまで1年生としては驚異的な強さ(65%)を誇って来たUNC #25 FOGO RG Keenanに対し、MDが明確に対策を立てて来て、前半は完全に沈黙させることに成功していた。注目は、FO同士の一対一ではほとんどKeenanが勝っているのに、MDがそれを完全に予測し、Wing二人、特にLSMがKeenanが掻き出す左前のスポットに直接ボールを拾いに行っている/または拾った直後のKeenanをマンで潰しに行っている点。なるほど、仮にFOer対決で負けても3対3で勝てるのね、いやむしろ確実に相手が掻き出す所が解っていれば、優位にすら立てるのね、という好例。後半はKeenanも修正してまた勝ち始めたが。Keenanも今回の経験をフィードバックして、さらに掻き出しのオプションを広げたり、Wingをより見られるようになってくるだろう。まあ、今まで高校生だった訳ですから...あと4年間掛けて最強FOGO伝説を築いて行く上での序章に過ぎない、ってことなんだろう。

あとは、やっぱり、またしても1年#34 AT Nicky Galasso。もうAll Americanは当然、下手したら1st teamに入ってくるんじゃね?ぐらいの大黒柱っぷり。何が凄いって、その完成度。フィードやダッジも凄いが、今回はLong rangeのStanding shotのスナイパーっぷりも見せている。解説のPaul Carcaterraが、1年生でここまで完成されていて、且つチームを引っ張れるATは2001年SyracuseのMikey Powell以来とコメントしていたが、確かにその通り。

Long Islandの高校時代に、超コンペティティブでレベルの高いLIの高校リーグに有りながら、下級生時代からエースとして活躍し、高校通算500ポイント(Goal/Assistの双方で200ポイント以上)を達成している。ラクロス一家で4人の兄に囲まれて育ったため、小さい頃から質の高いラクロスに文字通りどっぷり浸かって育って来たらしい(見ているとラクロス界にはこのパターンが非常に多い。兄に憧れて/鍛えられて末っ子が天才になるパターン。ロナウジーニョとかもそうか)。彼が完全にオフェンスを組み立てている。しかも超淡々と落ち着いてやっている。単純にガキの頃からやって来たことの延長という感じで。開幕前はUNCはBitterのチーム、と言われていたのが、今やGalassoのチームになってしまった。

UNCのリクルーティング力

にしてもしかし、UNC...恐るべし...既にDiv 1のトップでやれてるこの1年生軍団を擁し、あとまだ4年あるぜって話だ...

リクルーティング力に定評のあるHC Joe Breschi(ブレッシ)とそのスタッフ達。今年の1年生は文句無くNCAA最強。更に来年入学してくる学年も、Billy Bitterの弟で同じくDeerfield Academy出身のJimmy Bitterら、強力なメンツが入学してくるらしい。聴く所によると、その次の学年、そのまた次の学年でも結構核になるいい選手を確保し始めていると言う。いいか悪いかは別として、リクルーティングでかなりの部分が決まってしまうこのゲーム。このBreschiのリクルーティング力の高さは間違い無く強力なedgeになっている。何でこんなにいい選手集められるんだろうか。非常に興味がある。徹底した情報収集とネットワークは勿論だが、恐らく生徒やその家族をinspireするプレゼン力と言うか、人間力や人柄とか、そういう物なんじゃないかと想像する。

見ていて感じるのは、只単に能力が高いスーパースター選手を集めているだけではなく、明らかに、チームの価値に共感し、チームの戦術スキームやコンセプトを深く理解し、チームの為に自分を捨てて貢献出来る、matureでラクロスIQが高い選手を集めている点スター軍団だが皆我がままでバラバラで、チームとしてcohesion/機能しない、みたいな部分が少ないように見える。(ちと失礼だが、Shamel Brattonとかもしかしたらイマイチフィットしないかもなという気がする…)

それでいて、Hopkinsほどガチガチにシステムでプレーしている感じでもなく、一定のセオリーの下、ある程度自由に柔軟にやっているようにも見える。

今後数年のUNCはHopkinsと並んで非常に楽しみなチーム。


シーズンを通しての成長

にしても、ここ数試合のUNCやHopkinsの変化/成長っぷりには非常にいろんなことを考えさせられる。例えば、初期にOhio Stateに何も出来ずにやられたUNCや、Princetonに手も足も出なかったHopkinsが、シーズンの中盤でここまでグイッとターンアラウンドすることを予想していた人も少なかった気がする。

個人的に示唆深いなと思ったのが、
  • NCAAのDiv 1の競争の熾烈さ。逆に見れば、それだけ中堅校/下位校のレベルが高く、トップ校であってもシーズン序盤に経験不足だったりチーム戦略が固まってなかったりすると簡単に足下を掬われてしまうという事
  • NCAAほどのレベルであっても、且つ強豪校であっても、シーズン初期はバタバタするもの、という事実。まあ、考えてみればそうだ。秋に数ヶ月練習するとは言え、年が明けてすぐにリーグ戦が始まる。かなりぶっつけ本番に近い形。長い公式戦を通じて組織や戦術を作って行くという形にならざるを得ない
  • 高校から大学へのギャップと、アジャストの速さ。結果としてシーズン途中で急激に主力になってくる一年生の存在。この点、非常に日本と違って面白い。ジュニア〜高校のラクロスが分厚く存在し、そこから推薦という形である程度完成された選手を取って来るが故の現象。UNCなど典型だが、特に一年生が主力に入って来た場合、見ているとやはり初期は高校とのレベルの違いに苦しむ。が、一方で、プレーヤーとしての基盤はある程度出来ているため、そこがアジャストされ始めると、数ヶ月であっという間に活躍出来るレベルになってくる選手が一部存在
  • で、それを踏まえての、シーズンを通したチームマネジメント/プロジェクトマネジメントが必要という点。ここが上手いのがDukeのJohn Danowskiだろう。初期はある程度細かく転んでも構わない。ただ、初期に個人技や身体作り、基礎戦術と言った土台をしっかり固めることに集中し、後半そこに花を咲かせ、確実にプレーオフにピークを持って来る。初期に全勝街道を突っ走っても後半失速してプレーオフの予選で負けたら意味ないので。完全に準備してヨーイドン!じゃなく、「走りながら考える」「戦いながら成長する」スタイル。
  • また、メンタルの重要さ。年間十数試合をこなし、週に2試合ある週も。しかもアウェイはバスや飛行機での長旅。一つくらいアプセットを喰らってもメンタルに揺らぐ事無く、すぐに切り替えて目の前の試合を一つ一つ全力でこなして行くことの重要さ。
  • それらを踏まえると、もしかすると敢えて逆説的に(反論を承知で敢えて乱暴に)大胆な事を言うと、ぶっちゃけシーズン途中で何回か負けといた方が結果後から振り返るといいんじゃない?って気ぃすらしなくもない。負ける事で謙虚な自省が促され、self-awarenessが研ぎ澄まされ、技術/戦術の修正が図られ、気持ち的にも引き締まった状態でプレーオフに臨める。逆に負けを経験しておかないと、それだけ強いってのはいい事だが、いざ負けそうになった時に生じる揺らぎが大きくなってしまう。去年のSyracuseはその気を若干感じた。今年は負ける一歩手前の瀬戸際を歩く接戦をもう四度も経験してるのでその心配は無いかも知れないが。(これに関しては一敗が重い関東学生リーグには当てはまらないかな…まあ、最悪一試合くらい落としてもプレーオフで勝ちゃいいって意味では同じか。)まー、こりゃあ結果論だし、チームからすりゃそりゃ全て勝ちにいくべきなのであんましmake senseしないな。流して下さいな。
と言った辺り、日本の学生チームが見ても学べる点が多いなと感じた。


ハイライト(リンク

2011年3月27日日曜日

NCAA 2011 Game Review vol.11 Dartmouth @North Carolina

Dartmouth @UNC

今年のESPNの放映スケジュールを見ると、UNCの試合がかなり多く入っていることが解る。去年シーズン初期に無敗街道を走り、Pre-season Rankingで3位、大型ルーキーを多数擁するこのチームへの期待が高かったことが伺い知れる。5年前には想像出来なかった状況だ。

さて、今回はDartmouth(ダートマス) @North Carolina。ダートマスは、去年、今年と底辺が底上げされ、熾烈な競争の時代に突入しているIvy Leagueのチーム。歴史的には上位校では無かったが、BrownやYale、Penn、Harvardら他のIvy Leagueのチームと並び、ここに来てタイトないいチームになりつつあり、Princetonの(90年代の黄金時代や00年代初期に比べると)戦力ダウンに伴い、Ivy Leagueの乱戦っぷりに拍車を掛けている。10-20位にIvy Leagueが3-4校ひしめくという且つて無い状況に。

これもやはりジュニア/高校レベルでのラクロスの爆発的普及の影響と思われる。学年20〜30人のAll Americanレベル、MLLレベルとまでは言わずとも、50-200番目の人材でも、プールが大きくなったため、フィジカル的にも技術的にもかなりレベルの高い人材が塊で存在するようになって来ている。それらの選手にとって、VirginiaやSyracuseにはいけずとも、Div 1でプレーオフ争いに絡め、VirginiaやSyracuseと試合が出来、且つ、Academic/大学としても最高レベルで、学歴/将来のキャリア的にも申し分の無いIvy Leagueは正に理想の選択肢ということなんだろう。まず親が大喜びだろうし。

一瞬脱線してBusiness Schoolの話

ちなみにDartmouthはMBA(Business School)でも結構有名でいい学校である、Tuck School of Managementを擁するので、Harvard、U-Penn (Wharton)、Duke (Fuqua)、Virginia (Darden)辺りと並んで、トップクラスのB-Schoolに行きつつ高いレベルのラクロスに触れるという設計のMBA留学を考えるなら有りな選択肢だ。Hanover, New Hampshireという東北地方にあるため、都会からは大分離れてしまうが。Snow sports的な環境も完璧で、スノボ狂いだった僕は入学校選びで最後の最後までTuckと迷ってしまった...(ちなみに僕が行ったNorthwestern University, Kellogg School of Managementは、女子ラクロスは5連覇の超強豪だが、男子ラクロス部は中西部だった事もありそもそも存在せず...その点が最後までdownsideだった...)

ここの所卒業から5〜15年のレンジの卒業生達は大体学年に数人ずつMBA留学している(僕のいたBoston Consulting Groupや北見たちのいるMcKinseyを始め、複数の卒業生の受け皿になっている戦略コンサルティングファームでもGlobality強化で若手の留学を強化している事も有り。あとここ2年は同じく受け皿その2の外資系金融機関からの留学も増えており。あと、まだまだ商社や事業会社からの社費/私費留学もあるし)。今後MBA留学を考えている卒業生や現役の皆さんがいたら検討の価値ありかと。

(ちなみに、脱線ここに極まれりな上、私事になり過ぎてかなり恐縮だが、MBA留学に関するWhy?やHow?に関して触れており、そもそもMBAそのものについて基本的な事を知る上で読むべき本等にも触れた記事はこちら。で、実際行ってみて、何で行くべきと信じるかについて書いた記事はこちら。)

試合で印象に残った点

試合の方は、前半Dartmouthが先行するも、UNCが地力の差を見せつけ、12-7で勝利。終了間際にDartmouthがGoalieも含めたダブルチームでプレスを掛け、UNCがそれに乗じて得点を重ねたため、実際には9-7ぐらいのスコアの感覚。

にしても、Dartmouthも意外と全うにいいチーム。柱になる選手たちは普通にDiv 1上位校として堂々とプレーしているし、いくつか光るプレーを見せていた。やはりNCAA Div 1は層が厚い。

UNCは、やはり回を重ねるごとに確実によくなっている。

特に、再三述べている、1年生軍団の成長が目覚ましく、ほとんど1年生主体のチームという感じになってきた(成長、というだけじゃなく、単純にそもそも高校までに持っていた実力を大学レベルで発揮出来るようになって来た、アジャストされて来た、という要素の方が大きい気もするが)。

引き続き、AT #34 Nicky Galassoが信じられないくらいオールラウンドで、落ち着いている。マジで見たら一発で解ると思うが、彼はガチで特別なプレーヤーだ。そして、何度もフィーチャーされてきた事だが、フィードが本当に突出して凄い。シュートやダッジと違い、そこまで「感動させられる」ほど解り易いプレーじゃないフィードで、普通に感動させられる。視野が半端無く取れていて、判断が超的確で、フィードのタイミングも早く、鬼の様に正確。彼がいるだけで彼以外のチーム全体の得点が数点底上げされているのが解る。加えて、シュートもかなり完成されている。1年生なのにコンプリートプレーヤーってどゆこと?マジで。2得点3アシスト。このまま行けばRookie of the Yearは確実、そして場合によっては1年生All Americanも有り得るんじゃないだろうか...

あと、これまた再び#25のFOGO RG Keenanがむちゃくちゃ強い。ギャグの領域で強い。25回中18回勝利。この数字だけでもほとんど試合を決してしまうくらいのインパクトがある。まあ、DartmouthのFOerが弱かったってのもあるし、単純にFO同士の戦いというよりも、Wingの強さの違いもあるので一概に言えないが。でも、まがりなりにもDiv 1の上級生相手に、1年生がって話ですよ。多分どう足掻いても勝てない感じになっちゃってた相手Face Offerは数日間は夜ベッドで夢でうなされるんじゃないかと。今回は拾ってそのまま独走し、得点を決めている。恐らくここまで相手によるスカウティングで「そのまま打たせろ」でセーブされ、その逆を突いて相当シュートも練習して修正してる最中なんだろう。このFOの強さで確実に自分で点を取れるようになったら脅威だ。

試合中も解説のQuintが、昨年のWLCで、US代表のFOGO Alex Smithが引退した後、14年の代表でFOGOをやるのは誰だと思う?と聴かれ、当時高3のRG Keenanと答え、ファンから笑われたが、今は誰も笑わないだろうと言っていた。確かに、ガチだったのねと理解。その更に1年前、Alex SmithのFOGO Campに参加していたKeenanが大学生に圧勝し、Smithと互角にやり合い、その時点でSmithが後継者に指名したらしい。

あと、同じく1年生MFのMcNeil。結構初歩的なtrail checkを喰らってたりして、まだまだラクロスに慣れる必要を感じるが、ただ単純にその身体能力だけで異様な光を放っている。走ったら抜けてシュートまで行ける。バックコートでボールを拾って50メートル走るだけで、breakで1人多い状況が自動的に生まれる。

こういう一年生たちの活躍を見れば、1-2年生の現役選手の皆も間違い無く刺激を受けるんじゃないかな?と感じた。世界に目を向けると、同じ18-19歳でこれだけのレベルでプレーしている選手たちがいるという事実。やっぱり目指すべきはこのレベル。どうせやるならやっぱり最初っから世界最高峰に目線を合わせてやった方が、燃えられるし、早く確実に上手くなれるし、そして何よりも一番楽しいので。


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2011年3月26日土曜日

NLL 2011 Game Review vol.07 All Star Game

の前に一瞬March Madness

3月に行われるNCAAバスケットボールのプレーオフトーナメント。March Madnessとも言われ、全米が熱狂する。順位に応じて選抜されたチーム同士が一試合限定で戦って終わりのbowl形式のfootballと違い、数週間掛けて行われる上位チーム総参加のトーナメント戦なので、甲子園的な異様な盛り上がりが生まれる。

ここに来て、Sweet 16(ベスト16)の試合で、徐々に優勝候補校が食われるアプセットが始まっている。昨日の最大のアプセットは昨年優勝校のDuke Blue Devilsの敗退。勝ったのは二回戦で同じく上位校のTexasを倒したArizona。かなり訓練されたMatch-up zone DFを採用していて明らかに相手がやりにくそうなのと、2年のDerrick Williamsが文字通りNBA級のプレーを見せて圧勝。今年のドラフトではLeBronを失って底辺まで落ちたClevelandが全体一位指名すると言われ始めている。

ESPNのハイライト(リンク

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NLL All Star Game

2月27日にNY州北部Oneida Indian Nationで行われたAll Star。録画見るのが遅れて超時間差の記事だが…

まあ、これはもう純粋なエンターテインメントとして、誰かのうちに集まってビール飲みながらバカ話しながら見る感じだろうか。正にジャムセッション。技の見せ合いっこ。

しかしまあ、これを見ると良く解るが、NLLの選手たちが試合で使っているのは本当に氷山の一角で、普段見せないような、狂ったように凄いスティックスキルや創造性を持ってるんだなと改めて実感。それらの積み重ねがあるからこそ、試合のあれだけ緊張感とプレッシャーのある中でファンタスティックなプレーが出せる訳で。

あとはあれですな、NLLのスター選手が全員集合してるので、これに出てる選手の顔と名前を覚えると、大体NLLのレギュラーシーズンやプレーオフのキーとなる選手たちを一度にカバー出来るってのはいいっすね。

2008年にBostonでNCAA Final Fourを見に行った際に、試合を見に来ていたJohn Grant Jr.始めRochester Knighthawks (NLL) & Rattlers (当時/MLL)の面々が駐車場のキャンピングカーの横でスティックを使ってこんな感じでニョロニョロと遊んでいたのを思い出した。改めて、ラクロスの原点はこういう遊び心、楽しむ心にあるんだなと実感させられた。

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2011年3月25日金曜日

スポーツ用品店でのラクロスの扱い

これまたちとトリッキーなネタなのだが、どこかでサクッと書きたいなと思ってた話。東海岸の普通のスポーツ用品店でのラクロスの扱いがどんな感じか。今いるPhiladelphia近郊の場合。

週末によく買い物に行くショッピングモールにある、Dick's Sporting Goods(日本にも進出しているSports Authorityと似たような大型スポーツ用品店)の例。ラクロス専門店でも何でもなく、普通の店。結構なスペースを使ってラクロス用品を売っている。格闘技、ゴルフ、フィットネス、アウトドア、アメフトと並び、大きな専用スペースを占めている。

写真をばばっといくつか。

靴売り場の中に、アメフト、バスケ、野球と並んで、ラクロスシューズのコーナーが。


セール品のコーナーにもWarriorやNikeのラクロスクリーツが満載。85ドルとかなので、日本円だと7,000円くらいか。

Burn Speed 4.0 Mid-CutのWhite-Black-Silverのチェック柄。

スティック、ヘッド、シャフトもわんさか。

例のFiddlestickも全色。

最近kidsの間で主流になりつつある、派手な色遣いと柄のアパレル。Flow Societyと西海岸でLXM PROのメンバー達がやっているAdrenaline Apparelが熱くなりつつある。感覚が無いといまいち何がカッコいいのかピンと来ないし、アメリカでも明らかに親やコーチといった大人達は着いて行けてないが、今後流行を作って行くkids達は間違い無くこのテイストを支持している。Face Off ClassicでFlowのパンツを買って速攻ジーパンの上から履いて満面の笑みになっている子供達を見てよーく理解した。(まあ、ファッションの流行の行き来の話なので、3年経ったら痛い感じになっちゃうかも知れないし、どうなるか解らないが...)

 言いたかったのは、東海岸のラクロスの盛んなエリアだと、相当身近にラクロスがあると言う事。会社の同僚と話していても皆知っているし、経験者も結構いるし、息子さんがプレーしていたりする。ちなみに、西海岸や中西部(シカゴ等。恐らくミシガンも同じはず)ではそこまでではなかったし、スポーツ用品店でもラクロスの扱いはかなり小さいか、置いてないか。同じアメリカの中でもエリアによってラクロスの浸透度の違いが見られて面白い。

2011年3月24日木曜日

NLL 2011 Game Review vol.06 Toronto Rock @Philadelphia Wings

2月26日のNLLの放映6試合目。今回も会場で観戦。今回は最前列のガラス(正確には透明な強化プラスチック)越し。至近距離で選手たちを見られ、臨場感抜群。

(目の前でバトル)

Wingsはシーズン中盤から再び失速。試合中盤までそこそこ接戦を演じるが、最後に突き放されるパターンが多い。だんだん理解してきたが、Toronto Rock, Rochester Knighthawks, Boston Blazers, Buffalo Banditsと構成するEastern DivisionはそもそもWesternに比べて明らかにレベルが高く、対戦相手が強豪チームばっかりでそもそも厳しい環境に置かれている。西にはColoradoやEdmontonなど明らかにPhillyよりも上手く行っていないチームもあるが、悲しいかなプレーオフはDivisionごとに上位4チームなので、残念ながら今年は厳しいのかも知れない。

(ファウルを取られてペナルティボックスでムスッとする#18 Max Seibald)


今回は敢えていくつか、試合そのものではなく、会場の雰囲気を紹介

そもそもWingsは25年の歴史を持つ、NLL最古のチーム。リーグ制覇複数回の全盛期を知る長年の熱狂的な地元ファンも多い。また、東海岸独特のやんちゃなというか、ある意味軽くガラの悪いファンも多く、盛り上がりも凄いが、同時に野次も強烈。

試合中にも、大声で、「つかオフェンス戦略はどこいったんだよ!?(HCの)Tucker辞めちゃえよ!」とか「(DFの)Dawson!ばか!ボール持つな!お前持ったらターンオーバーするから!おとなしくForwardに渡せ!」とか。「Do----yle (相手のCollin Doyle)!」「Sucks!(『終わってる』とか『うぜえ』に近い悪口)」「Do----yle!」「Sucks!」(リピート)と合唱が起こったり。でも点を取ると隣の席の見ず知らずのオッサンとHigh five(ハイタッチ)、みたいな。

あと、初めて来た観客が皆びっくりするのが、最初の選手紹介。まずはWingsの選手紹介。そもそもこの時点で偉く騒々しい。今シーズンはGのMillerでは皆拍手喝采、IanutchやWesterveltには容赦なくブーイング。が、極めつけはその後のアウェイチームの紹介。最初に、アナウンサーが「それでは皆さん、相手のColorado MammothにPhiladelphia名物のWelcomeの挨拶をしてやりましょう!」と言った後、「#22 Ned Crotty」と超ローテンションで一人紹介するごとに会場全員で「Sucks!!!」の一言。それを全選手に対してやっていく。初めて来たお客さんは大爆笑。小さい子供を連れてるお母さんは顔がピクッピクッと引きつっている。

あとは、Time Out終了後のかけ声。コートの両側に陣取った熱血ファン代表の3人が、それぞれ交互にスタンドのファンを煽り、1---2---3!!のかけ声で、W-I-N-G-S-Wings!!と六拍で拳を交互に掲げて大合唱。

Bench sideの相手側で三拍子を取る「Morpheus」氏。(MatrixのMorpheusをコピッたキャラ)

最悪試合に負けてもこの辺の雰囲気と盛り上がりで、なんとなくエンターテインメントとして十分に楽しめた気分になれるから不思議だ。

もう一人の応援団長。毎回Captainの格好をしてらっしゃる。制帽のロゴはWings。


試合で印象に残った点

何と言っても、Toronto Rockの強さと巧さ。今回初めてRockを生で見たが、ああ、強いNLLチームってこういうことを言うのね、と思わされた。DFが固い。個でもしっかり守り切り、組織の連携も非常にいい。ルースボールやトランジッションといった基本を誰よりもきちんとやりきり、速攻やtransitionで確実に点を取って来る。また、セットオフェンスでも#13 Garrett Billings#7 Collin Doyle、#17 Stephan Leblancなど、カナダを代表するオフェンスの名手達が2 on 2、3 on 3の基本に則った正当なカナディアンボックスラクロスで効率的に点を取って来る。動きの中で全体が連携して、パンパンパン!と3本パスを繋いで得点、みたいな美しい攻めを何度も見せて来た(Phillyと対照的に...)。

あとは、Phillyも、負けはしたものの#2 Brendan Mundorf、#24 Drew WesterveltのUMBC-Denver Outlaw-'10 US代表コンビがこの試合では比較的活躍していた。Mundorfのスピードを生かした2人かわしてのバックハンドダイブショットなどはシーズンハイライトもの。

あと、4QのWings 13点目だったかな?「そういう手があるんかい!!」と思ったのが、Alex Turnerのゴール横でのquick tap shot。超角度の無い所、というかほぼゴールの裏で上からのフィードを受けてシュートしているのだが、スティックがゴールの表側まで届かないので、何とゴールではなくゴーリーの背中にシュートを打っている。で、ゴーリーが慌てて振り返る際に背中側にポコッと当たり、跳ね返ってコロッと転がってゴール。間違い無くこれ狙ってやっている。なるほど、それが一つの定型スキルとして存在してる訳ですな。インドアには。試合でこれ決められたら超カッコいい&気持ちいいだろなと感じた。ゴーリーによっては一日立ち直れないくらい凹みそうだ。

Livestreamでの試合のリプレー
Watch live streaming video from torontorock at livestream.com



2011年3月22日火曜日

NCAA 2011 Game Review vol.10 Johns Hopkins @Syracuse

昨日は土曜に行われたUFC128のLight Heavy Weight Championship、Shogun vs Jonesの録画を見た。弱冠23歳のJonesが、その才能を遺憾なく発揮し、Shogunを完封。UFCに新しい世代の時代が訪れたことを決定付けた。打撃でも全く危ないところを見せず、グラウンドでも圧倒。最後は完全にShogunがグロッキーになり戦闘不能に。PRIDE時代は無敵に見えたShogunがこんなにも為す術無く完封される姿を見るのはなんとも複雑な気持ちではある。が、それだけJonesが強すぎた。

確かに、ずるいぐらいフィジカルが凄い。上手くて、強い。元々強かったstrikingだけじゃなく、groundも信じられないスピードで成長している。いまやグラウンドが強みになっている観すらある。が、彼の勇姿やコメントに触れるにつけ毎回感じるのは、そのメンタルの素晴らしさ。Humble(謙虚)で、自分に足りないものを常に認識し、常により良くなろう、変化しようとしている。周りの仲間に感謝し、相手にリスペクトを払い、その時その時で自分が出来るベストを淡々とこなしていく。今回も印象的だったのは勝利後のJoe Roganによる勝利者インタビュー。嬉しさを表現した後すぐに表情を引き締め、「自分にとって大事なのはチャンピオンであり続けること。なった以上はどんな挑戦も受けて、乗り越えなくてはいけない。自分にはその心の準備が出来ている」と。23歳ですぜ...「いやー!もう何も考えられないっす!今はとにかく休みたいっす!」じゃないんかい…カッコつけて言ってる訳でも何でもなく、心からそう言っているのが分かる。この人は最初から「チャンピオンになること」を目標にしていたのではなく、「チャンピオンであり続ける事」を目指してやって来たんだろう。畏敬の念を感じる。

Official site

トップ画面の動画での彼のインタビューコメントの中で本気で鳥肌が立ったのが、「対戦相手は試合前に俺のレジュメ(履歴書)を見てimpressされるとよく言ってるけど、俺と試合した後になって、もう一回impressされる事になると思う。なぜなら俺のレジュメに自分の名前が載れることになるから(歴史の一部になれるから)。」これ、彼以外のファイターが言ったら痛い感じになるが、彼が言うと、厭味が無く、全員が頷かざるを得ない...

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Johns Hopkins @Syracuse

またしても...ハラハラドキドキの手に汗握る素晴らしい試合。NCAAは一体一年間に何試合最高のエンターテインメントを生み出してくれるんだろうか。最初はソファーの上でlaid backで見てたのだが、気が付けば試合終了時には画面から1メートルの場所に座り込み、食い入るように画面に見入っていた...3Qくらいから試合終了まで、心臓バクバク言いっ放し。但し、今回のは、Maryland-Georgetown、Syracuse-Virginiaのような、ジェットコースター系のドキドキではなく、例えるなれば、お化け屋敷のドキドキ。物凄い緊張感のある1試合だった。

試合のRecap

Syracuseのオフェンス力と、いまいち乗り切れていないHopkinsの実力を考えると、戦前はCuse有利の声が圧倒的に多かった。が、蓋を開けてみてびっくり。JHUが超善戦。ロースコアのスローペースの展開に持ち込み、終止リードを維持。4Q終了直前までリードを維持し、Syracuseまさかのupsetか!?という去年のArmy戦の悪夢再来の一歩手前まで持って行った。

が、さすがSyracuse。終了直前で追いつき、激戦の末2nd OTでFOを取った#4 Jeremy Thompsonから#28 Stephen Keoghにつなぎ、Keoghが手堅く決めて感動の勝利。地元ファンと一緒に胸をなで下ろした。にしても、冗談抜きで危なかった。何かが一歩違っていれば今頃今シーズン最大のアプセットと、歓喜のHopkins、顔面蒼白のSyracuse &地元ファンという絵も有り得た。後半ずーっと「え?マジで?まさかの?Syrause負けちゃうの...??そんな事無いよね?」と心配しっぱなし。

何が起きたのか?

この結果、スコアボードで5-4というスコアだけ見ると、「ん?何があった?」「またSyracuseが舐めて適当にやったのか?」「まぐれだろ?」と「?」マークが渦巻くことになるが、試合を見ると、なるほど、これはまぐれでも何でもなく、デザインされたSyracuseの苦戦、そして、必然のスコアだなと感じられる。10回リセットボタンを押してやり直しても、1-2回くらいとは言え、それなりにJHUが勝つシナリオは十分にロジカルに有り得たな、と感じた。何があったのか、どういう要素が効いてこうなったのか、自分なりの見立てをいくつか紹介。
  • ①Hopkinsが徹底して試合のペースをコントロール。ポゼッション重視でトランジッションの数を減らし、超Patientに保守的にボールを回し、スローな展開に持ち込み、Syracuseに出来るだけオフェンスの機会を与えなかった。走り合い、点の取り合いになっても勝てない相手に対する定石中の定石。NCAAだと特にその徹底と腹括りが凄い。
  • ②展開としても、最初にぱぱっとエース#34 2年 MF John Ranaganが点を取ってリードし、それを守るという、理想的な先行逃げ切りを徹底
  • ③勝負を分けると言われていた、そしてFO #4 Jeremy Thompson, Wing #11 LSM Joel White, Wing 2 #23 MF Jovan Millerの最強FOトリオを擁するSyracuse有利と見られていたFOでHopkinsが大健闘。
  • JHUが先週のGeorgetownと同様、Zone DFを多用。また、頻繁にMan-toとZoneを入れ替えるという嫌らしいスイッチを繰り返し、Syracuseの面々が攻めあぐねていた。スピードとオフェンス力で歯が立たないチームへの定石戦術だが、Syracuseには特にハマっている。今後使って来る相手が増える予感。Cuseも何とか今後攻略していく必要がある。
  • ⑤そして、何と言っても最大の要因は、JHUのG #33 2年Pierce Bassett。ここまで特に話題になっていなかったラクロス僻地Arizona出身の2年生。この試合で完全にラクロス界にその名を知らしめることになった。文字通り神懸かったセーブを連発。ロングレンジも近距離の1 on 1も止めまくり、鬼の16セーブを記録。試合終盤に掛けてSyracuseのOF陣が「あれ?こいつやべえぞ?シュートマジで入らねえ...」と動揺し、いつもなら気持ちよく打つシュートを、考え過ぎる事で外し始めていた。見た感じ、決してまぐれではなく、コースを読み、かなり軌道が見えた上で、スティックや身体や脚でセーブ出来ていた。彼は今後2年で結構凄いゴーリーになるかも...(しかしArizonaなんてラクロス新興地域からこういう選手が出てきつつ有る事が衝撃的だし、それを発掘してくるJHUのリクルーティング力も凄い。)

それでも強いSyracuse

が、それでも尚、終止リードを許しながら、最後に同点に追いつき、OTで逆転して勝ちきるSyracuseはさすがとしか言いようが無い。本当に、一つのスポーツチームとしてこの勝負強さは尊敬に値する。終盤の負けている状況からの同点、逆転まで、余りメンタルな揺らぎが見られなかった。特にJeremyやStephen KeoghやGalloway、Joel Whiteなど4年生の大黒柱達に至っては、むしろ修羅場になるほど集中力とパフォーマンスが増している気すらする。特に最後の決勝点を決め、これで2試合連続で延長サヨナラ打を決めているKeoghのクラッチシューター振りにはただただ脱帽。人として尊敬してしまう。OT時のメンタルがフロー過ぎる。

NCAAの戦力拮抗と混戦模様

しかし、この試合もまた、1位チームですら10位前後のチームにいつアプセットされてもおかしくないという今のNCAAラクロスの戦力拮抗っぷりを如実に物語っている。特にランキング1位のチームは常に他のチームから目標とされ、標的とされ付け狙われる事になる。勝てれば成績上大きくプレーオフに向けた順位に貢献することにもなり、全国ネットのメディアでも紹介されるため、相手チームは毎回モチベーションマックスで入念に戦術を作り込んで挑んで来る。これまで、Virginia、Georgetown、Hopkinsと、どのチームも明らかに今シーズンのベストパフォーマンスをSyracuse戦にぶつけて来ている。王者故の宿命、1位のチームが歩かなくてはいけない茨の道か(日本一を目指すチームであれば同じattitudeで挑む必要がある)。

しかしNCAAラクロスのレギュラーシーズンは本当に勝ち負けがぐるんぐるんに入れ替わる。アプセットも頻繁に起き、じゃんけんの様に三すくみの勝敗になることもままある。単純に○○が××に10点差で勝ったから、××に5点差で負けている△△には○○に対して勝ち目なんて無いでしょ、という計算がいまいち成り立たないことが多い。であるが故に、結果が読めず、非常に面白い。

JHUは来年、再来年に優勝争いに復帰?

そして、もう一つ、この試合を通じて確信したのは、JHUが徐々に良くなっていると言う事と、このチームは間違い無く来年、再来年、Top contenderとして優勝争いに絡んで来るなということ。没落したと言われながらも、やはりそれはtemporaryな結果ということ。今回の試合でSyracuse相手に一歩も引かない活躍を見せたチームの柱は、MF #9 John Greeley(2年)、MF #31 John Ranagan(2年)、AT #45 Zack Palmer(2年)、G #33 John Ranagan、DF #51 Tucker Durkin(2年)と、よくよく見ると全員2年生。去年全米最強の新入生軍団と言われた面々。去年はルーキーとしてNCAAデビューの洗礼を浴び、今年その才能が徐々に開花しつつある。

1年生から主力としてNCAA Div 1の荒波に揉まれて来た彼らが、今後Play offを戦い、来年、再来年もまた戻って来る。#27 MF Rob Guidaなど1年生の強い選手も目立ち始めている。これ、結構マジで強くなってくるんじゃないだろうか。Hopkinsファンはちょい辛抱強く待たなくちゃいけないけど、応援し続ければ、必ず来年再来年に報われる気がする。

いずれにせよ、見て非常に楽しめる(むしろちょっと心臓に悪い)、且つ教材としても非常に勉強になる点が多く、お勧めの一試合。

Quintのプレビュー(リンク


以下、いくつか個別に記憶に残っているポイント

解説者のPaul Carcatera曰く、自分自身現役時代は傑出したDefenderだったJHUのHC Coach Petroも、Syracuse #40 John Ladeを認めていると言っていた。Tremendous lacrosse IQを持った選手だと。今回の試合でも要所要所で素晴らしい1 on 1 DF、チームDFを見せていた。ポジショニング、フットワークも巧いが、チェックも素晴らしい。相手との差が有った今回は結構ボールダウンを起こしていた。淡々と相手のエースクラスのATを沈黙させる姿は正にDFの鏡。

2年生になり、完全にチームの大黒柱になったHopkins MF #31 John Ranagan。段々とPaul Rabilに近い迫力を感じさせるようになりつつある。最初の2点は共にトップからの王道ランニングシュートだが、印象的だったのが、意識的にやっているであろうコースの打ち分け。一本目はHigh to high。二本目はHigh to low。同じシチュエーションであっても軌道と打つスポットを打ち分けることでゴーリーに予測されないようにしている。やっぱりレベルの高い選手はこの打ち分けを意識的にやっている。

ちなみに、Ranaganの一点目(二点目だったっけな?)、CuseのエースMFキラーLSM #11 Joel Whiteに着かれた状態で、さすがにピンの1 on 1ではbeat出来ず、上手くボールとポジションを動かしながらピックを絡めてWhiteを交わし、フリーでシュートを打つ事に成功している。必ずしも相手の強力LSMに着かれても、こうやって工夫すれば別にフリーでシュートは打てるという素晴らしい例。毎試合LSMに着かれるエースMFの選手、及び彼とコンビを組むMF達は是非しっかり見て覚えておきたい。

Syracuse 2点目。(去年までJHUだった)#14 PalasekのXからの1 on 1からクリースのKeoghへ。Keoghがクリースでじーっとpatientに待って、貯めて、そこからDがスライドに動いた瞬間を狙ってパチッと秒察で裏を取る動きをしているのが印象的。ずっと動き続けてればいい訳じゃなく、敢えて止まる時間を作り、メリハリで倒す。静と動の使い分け。Fly like a butterfly, and sting like a bee(蝶の様にふわふわと舞い、蜂の様に鋭く刺す)を連想させる。

後半、JHUはZoneをやったり、Man toをやったり嫌らしくDFを切り替えて来る。SyracuseもそれまでATの#22 JoJo MarascoをMFで出したり、いろいろ試みる。この辺のコーチ同士の戦術的な駆け引き、チェスゲームが面白い。

Close DFとGのGallowayばかりフィーチャーされがちだが、実はSyracuseの#19 MF 3年のKevin DrewのShorty DFでの貢献がかなり効いている。相手の2枚目エースの#9 John Greeleyを確実に守り切り、ほとんど仕事をさせていない。角度をマネジし、フットワークで着いてポジションをずらさず、細かいチェックとプッシュで流しつつ。ほとんどLong stick DFに着かれてるくらいの固さがある。スターが多過ぎるCuseだと相対的に目立たないが、隠れた名選手。特に去年までDF MFで出ていた#23 Jovan Millerが今年OFでのpresenceを増しているのには、DrewがDFで大きく貢献しているからという面も大きい。

苦戦しながらも、やはり賞賛すべきはCuseのDFの堅さ、Gallowayのセーブの強さ。JHUが攻めている時間は相当長いが、それでも4点に抑えていると言う事の方がむしろ凄い。Deceptive(誤解されがち)だが、実はSyracuseはオフェンスのチームじゃなく、ディフェンスのチームだなと感じる。

JHU Canadianの#45 2年 AT Palmerによる4点目&フラッグダウンを生んだのはCuseのイリプロ後の、Hopkinsのリスタートの切り替えの早さとダッシュ。このレベルのラクロスの、この大事な場面で尚、こんな原始的な要素で勝敗が決し得るという恐ろしさ。逆にCuseはこんなんでやられちゃダメだ...反面教師として学べる。

試合終盤の解説で印象に残ったのは、Coach PetroのDF哲学。Cornell時代もJHUでも、とにかくスライド早めに行かせて素早くリカバリーする、チーム全員でスカ抜きどフリーを絶対に作らせないDFという考え方。また、OFでもどちらかと言うとシステムに則ってプレーするスタイル。で有るが故に現Cuse #14 Tom Palasekはより自由にプレー出来る環境を求めて今シーズンからSyracuseに移籍したという話も出ていた。

あと、全体的に不利と言われていたHopkinsのFOチームが大健闘した。細かく見られてないが、何か秘密が有るはず。FO関係者が見て学べる点があるはず。

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2011年3月21日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.09 Virginia-Cornell

先週末にBaltimoreのM&T Bank Stadiumで観戦したKonica Minolta Face Off Classicの第二試合。Virginia-Cornell。Virginiaは前週のSyracuse戦に敗れ、気持ちを引き締め直して挑んでいる。Cornellは今シーズン初めてのテレビ放映。新コーチBen Delucaの下どういうチームが出来ているのか楽しみでもあった。

(ウォームアップに向けて入場してきたCornellの面々。ユニフォームがパキッとしててカッコいい。赤と白のコントラストがvivid。番号はラウンドシェイプのフォントでで影を付けている。メットは全員Cascade CPR-Xで統一。VisorがPro-7よりボテッとしてて好きじゃないが、単色だと結構カッコ良くなる。)

全体を見ての感想

試合は、序盤Cornellが突き放し、終止リードを維持するも、最後に力尽き、Virginiaの底力に屈し、結局11-9でVirginiaが手堅く勝利。

が、試合を通して、Cornellが非常にいいチームであることが感じられた。サイズや入学時点の身体能力/技術で劣る部分を、入学後のフィジカルトレーニングと練習により限界まで磨ききり、Virginiaと伍すレベルまで持って来ている。特にDFがVirginiaの強力なAT & Shamel Brattonをほぼ完璧に封じていた。OFも頭を使って効率的に攻めている。

一方のVirginiaは、ATとShamelが珍しく沈黙。CornellのDが良かった。が、改めて、その層の厚さを感じさせる結果に。これまで目立っていなかったRhamel、そして伏兵だった2nd stringsのMF陣が粛々と点を積み重ね、気が付けば逆転。ShamelとLapierre以外にもDiv 1でエースを張れるレベルのMFが5-6人いる感じを受ける。

個人として印象的だったのは何と言ってもCornell #3 Rob Pannell。これまでQuintがベストプレーヤー候補と言っていたが、個人的には「そこまで凄いっすかね?」と思っていた部分もあった。この試合を見て「さーせんっした!!」と土下座せんばかりに間違っていた事に気付いた。いや、ムチャクチャ凄い。巧い。今年のATの中ではベストだと思った。場合によってはここ数年のNCAAのATの中でも結構突出して凄いかもというくらい凄い。試合の映像を見て頂ければ一発で納得行くと思うが。去年から比べても確実に成長している。Xからの1 on 1の技術、そのまま直線的に走りながらfade awayでの振り向きざまのシュートのバラエティーと巧さ(もちろん左右両方)。最大限に視野を取り、危険なところに確実にパスを出して来るフィード力。それらを支える身体の強さやボディバランス。全てを兼ね備えたコンプリートATになって来ている。

Quintも試合中に最近で言うとMikey Powell以来のコンプリートATっぷりと指摘していた。いや、本当にそのくらい凄い。今まで舐めててすいません。ATの選手は見て学ぶ事が相当多い。この活躍を続け、CornellがまたしてもFinal Fourに残って来るような事になれば、マジで3年生でMVPも有り得るなと感じさせる。

にしても、09年に一年生として既にチームの大黒柱として準優勝を経験し、そこから更に相当な成長を感じさせる。この人は極めて高いレベルにありながら、更にその上の高みを目指してイッちゃったレベルの努力を続けられる希有な人なんだろう。これまで何人かの選手を見て来た感じ、実はここから先のステージでの成功に於いて最も大事なのは、大学卒業時点での才能や実力ではなく、この「努力して成長し続けられる力」。Mark MillonもMatt StriebelもPeet PoillonもPaul RabilもBrendan Mundorfも、突き抜けたレベルに到達している選手たち全員に例外無く共通する要素。彼には間違い無くそれがあると感じる。だとすると、特にこの後のキャリア、来年の4年生の1年、プロや(選ばれれば)US代表でのキャリアでも結構凄い選手になる可能性を感じさせる。今年の開幕前はBilly BitterがAT 1位、PannellかStanwickが2位だね、と言われていたのが、今や間違い無くPannellがbest ATになっている。今後に大きなワクワク感を感じさせてくれる選手だ。

(Cornellのアップは軍隊方式で超統制されている。ランニングもビタッと二列で。ストレッチも中学校の運動会の行進を思い出させる隊列をビチッと組んで、全員でしっかり合わせてやる。何か、強そうな感じが漂う。)

個別に印象に残った点

Virginia 2点目、2年生MF #44 Chris LaPierreのランニングショットがゴールネットを突き破る。会場でもほとんど音がせず「シャクッ」と抜けて行った感じだったので、audienceも一瞬何が起こったか解らず会場中に「?」マークが渦巻き、その後大画面に映されたリプレーを見てザワザワッザワッとカイジっていた。OFの選手なら、選手として一度はやっておきたい試合でのゴールネット破り。

CornellはとにかくRob Pannellが完全にフィールドを支配している。2点目、再びXからの1 on 1。Finalizerが完璧に決まり、相手のDFが思いっきりゴールネットに捕獲され、バタッと倒れて楽に得点。やられたDFは陵辱された気分。マークマンのDとの力の差があると見るや、徹底的にカモりに行く冷酷さ。近くで見てカーフ(ふくらはぎ)の太さに引いた。見るからにフィット。相当努力してウェイトトレーニングを積んでいるはず。

試合中にQuintがCornellを指して言っていた、「優勝するチームになるためには二つのペースを使い分けられなくてはならない」というコメントが印象的。昨年Run & Gun主体で勝ち上がりながらも、決勝ではNotre Dameのスローペースに真っ向から対応して勝ちきったDukeの記憶が新しい。やはり理想は速い展開、遅い展開を状況に応じて使い分けられること。試合のペースをコントロール出来る事。

試合を通して強く感銘を受けたのが、Pannellのフィードの動きと技術。特にステップワークと視野。スライドが来たりマークマンに詰められても、背中を向けてロールせずに、その場で足踏みしながら、または真っすぐステップバック。その際に胸を張り、これでもかと言うくらい視野を取り、スナップでフワッとフィード。で、それを警戒して距離を詰めに行くとザクッと抜かれる。やらしい間合いでピクッ、ピクッと抜くプレッシャーを掛け続けて来る。これはDFとしては悪夢のように手強い。

今回の試合で一躍全国区になった選手の一人がUVA #34 MF Jr Colin Briggs。小さいストライドでトコトコトコと速い回転で小回りを効かせながら走り回り、コンパクトで速いモーションのシュートでサクッと得点。それだけで3点を稼いでいる。脇役の選手がここまで能力高いというのがVirginiaの本当に恵まれている点。

3Q Cornell 6点目、またしてもRob Pannellの斜め前からの1 on 1、ロール直後のクイックターン&フェーダウェイジャンプショット。毎回この辺の振り向きざま、フェーダウェイ、走り抜けながら、え?それで点取れるの?!という驚きを毎回残す。相っ当、相っっっ当練習を繰り返してるはず。この辺のシュート。恐らく相当意識的にDFやGの意表を付くタイミングでの(且つ強烈な)シュートを練習している。特に、走り抜けながら完全にゴールに背を向けた状態からのシュートの技術はAT、インバートをやる可能性のあるMFの選手であれば何度も何度もスロー拡大再生して夢に出るまで焼き付けておきたい技術。職人技。

もう一人、VirginiaのMFの層の厚さを感じさせたのが、#24 1年生 Emery。3Q 7点目。EMOでのミドルシュート。右上の角にピンポイントでズバッと。鳥肌が立った。NCAA Div 1のトップレベルの1年生ってマジで鼻血出そうなくらい凄い。

今日はShamelがスティックが引っ掛かっているのか、全くもってパッとしない。時々ATとして使われており、その辺の慣れなさもあるんだろうか。長距離キャノン砲がことごとく枠を外している。その分を補っているのが弟Rhamel。4Q 8点目のBehind the backなど芸術品。

UVA 10点目、EMO #10 AT Bockletの右前からのover handのhigh to low。Quintも若い選手は本当にBockletのシュートフォームを見習うべきと指摘。Paul Carcateraも実演して説明しているが、先日のJoe Walterのシュート講座の記事でも書いた、スティックをゴーリーからしっかり隠すこと、大きなtorque(トーク:捻転)を使っている点を指摘。



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2011年3月20日日曜日

NCAA 2011 Game Review vol.08 Duke @North Carolina

東海岸の南側、North Carolina州の中央部、Duke大学のあるDurham(ダーラム)、North Carolina大学のあるChapel Hill、空港のあるRaleighの三都市からなるエリアを、"Triangle Park"または、Triangleエリアとよく言う。DukeとNorth Carolinaは車で約20分の距離。アメリカ的には完全に目と鼻の先。あらゆるスポーツで競合する"The biggest rivalry(ライバル関係) in college sports"とも言われる。私立の小規模金持ちエリート学校のDukeと、州立の庶民派大学のUNCという構図から、毎回街全体を巻き込んで大きく盛り上がる。水色対青。特に共に何度も全米制覇を達成しているバスケは、North Carolina州最大のスポーツイベントとも言える。そんな2チームの激突。

(ちなみに、NCAAではバスケ/アメフトを中心に、この州内の代表的私立校vs州立校のライバル関係は多い。他に有名なのは、Michigan-Michigan State、UCLA-USC [University of South California]、Oregon-Oregon State、Oklahoma-Oklahoma State、Kansas-Kansas State等々)

ここまで、双方若手主体のチームで、シーズン序盤は苦戦。DukeはU-Pennに、UNCはOhio StateにそれぞれUpsetを喰らう。が、その後徐々に成長し、チームとしての形を整えつつある。今シーズンのNCAA Div 1の勢力図に大きな影響を与え得る極めて重要な一戦。

結論から言うと、がっぷり四つに組み合うも、個の戦いに勝ち、チームとしてもより質の高いラクロスをしたDukeががっちりと14-9で勝利。

試合を通しての感想

まず、双方非常に良くなっている。間違い無く。1年生主体のUNCも、1年生達がかなり堂々とプレーしている。実質的にNotre Dame戦がデビュー戦だった選手が多かったDukeも、肩の力が抜け始め、Ground ballやFast break、シンプルな1 on 1、2 on 2をきちっとやろう、という基礎の基礎から作って行く素晴らしいラクロスが実を結び始め、持ち前の個の素材としての強さが発揮され始めている。やはりNCAA Div 1のレベルのチームですら、シーズンを通じてここまで大きく成長していくものなんだなと改めて実感。その変化を生んでいるUNCのJoe Breschi(ブレッシ)、DukeのJohn Danowski両コーチの育成力、セルフイメージを最大化する「心の力」、人間力、コーチ力に感銘を受けた。やはり小さな結果の積み重ねに一喜一憂する事無く、一つ一つ目の前の変化を見て、毎日こつこつと石を積んで行く事が大事なんだなと改めて教えられる。

全体を通して、両チームの1年生の活躍にまたしても驚かされた。

試合前のimpact playerとしても名前を挙げられていたUNCの1年生Faceoffer #25 RG Keenan。これまでの勝率0.641。マジか?Div 1で1年生だぞ...?実際に試合を見ても、face offer同士の一対一に於いてはほぼ勝っている。ただ、その後のGround ballで相手のLSM Costabillaに拾われたり、wingとの連携が上手く行かず取られたりしている。あと、単独速攻を出せた場合も、ちょっとシュートの改善が必要だなと感じた。どのチームもスカウティングレポートに、「#25にフェースオフで独走されたらATからスライド行かずにそのまま打たせろ。シュートしょぼい。」とかって書かれてそう...この辺がCuse #4 Jeremy Thompsonとの差だろう。

同じく1年生のUNC #34 AT Nicky Galassoの落ち着きっぷりと老獪さが相変わらず半端無い。つか4年生かと。1 on 1の時の下半身の安定、顔の上がり方、視野の取れ方が半端無い。でまたフィードがドンピシャ。Millonも言っていたリードパスの考え方を完全に体現している。パスもまた速いけど優しい。パスによって他の選手を操縦し、オフェンスをクリエイト出来る希有な選手。シュートも巧いし、オフボールや貰い際の動きも一個一個が偉く老練。どういう幼少時代を過ごしたらこんな一年生に育つんだ?Billy Bitterがパッとしない中、もはやUNCの大黒柱になりそうな雰囲気すら感じる。

あとはUNC MF #43 Mark McNeilが引き続き荒削りながらも高いポテンシャルを感じさせる。でかくて身体能力が高く、サクッと数人抜けるタイプ。今後成長次第でどうなっていくのが非常に楽しみでもある。

そして何と言ってもこの試合で真価を全国ネットで知らしめたのはDuke 1年 #31 AT Jordan Wolf。昨年のUnder Armour All Americaでも大活躍し、Max Quinzaniの後継者とも言われる。試合を重ねるにつれ急速に大学レベルにアジャストしつつあり、この日も完全にチームの得点源に。Xからの1 on 1で直接シュートという防御不能な鉄板がある。UNCのAll American DF、4年のRyan Flanaganを相手にしても完全にズゴッと抜いている。(多分試合前に、「まあ、あの一年坊主はRyanが着きゃ大丈夫っしょ。特にスライド早めの決めごとは無しで」って話にでもなったんじゃないだろうか。修正出来ずに3回同じ形でやられている。)でまた5 & 5あたりからの振り返り際のジャンプショットがムチャクチャ巧い。Come "around"せずに、直線的にトップスピードで走り抜けながら体幹と下半身の強さと体軸の捻りを最大限に使ってかなり速いシュートを叩き込んでいる。んでもって驚異的な事に両手でかなり近いレベルで打って来ている。というか、そもそも両方のシュートを見ると、どっちがstrong handかよくわからん。(多分そうは言っても右なのかな?右に抜く事が多いので)このXからの1 on 1からの直接シュートだけに限って言えば多分今のNCAAではCornell #3 Rob Pannellと並ぶか場合によってはそれ以上かも。Agility/爆発力が別次元。

あと、毎回ひたすら気がかりなのが、UNC #4 AT Billy Bitterがいまいちパッとしないこと。1点は正にBitterの「ならでは」が発揮された得点。三人交わしてゴール前まで持ち込み決める。が、それ以外は全く上手く行かず。早めのスライドに囲まれて落とされたり、無理なシュートでセーブされたりチェイスを取られたり。「ピットブルが勇ましく高速道路で車を交わそうとしているようだ」と比喩されていたが、言い得て妙。もしかするとこのスタイルってノーマークの下級生時代は通用しても、スカウティングされてスライドガンガン飛ばされたら通用しないんじゃないか?という気ぃすらしてくる。しかも毎回ゴール前でぐちゃっとやられている。また怪我をするのも時間の問題という気も。残念ながら現時点でのPlayer of the Year Watchの10人にももう名前は挙らなくなっている。3位で指名したDenver Outlawにとって、もしかしたら最大の「やっちった」指名ということにもなり兼ねない気が若干し始めている...もうちょい早くフィードが出せればまた違って来る気もする。どうなんでしょ。本人の表情からも相当なフラストレーションが伝わって来る。で、何とかしようと無理して突っ込んでさらにやられるという悪循環。観客を総立ちにさせられる数少ない選手。何とか頑張って本来の輝きを取り戻して欲しい。

全体的に、Dukeが難しいことせずに、ただただひたすらに基礎をしっかりやろうとしていること、且つそれを、(まるで高校球児のように)全員一丸となって、全力でやろうとしていること、そして、その一生懸命をエンジョイしていることが非常に伝わって来て、清々しい気分にさせられた。Ground ballを超意識して、とにかく低く、直線的に走り抜ける事を意識していたり、必ず速攻やbroken situationではゴールに向かうこと、Offenseでもセオリー通り、Xからの1 on 1で崩して、上からのスライドに対してトップのスペースに出してシュート、クリースのフリーでシュートと、超教科書然としたことを淡々とやっている。で、それだけでUNCと真っ向勝負して勝っている。でまたそれをチーム全員が一メンバーとしてお互いをチアアップしながらチームの為に貢献しようとひたむきに走っている。John Danowskiコーチの指導者としての哲学、強さを見た気がした。試合中に映されたTime out中の指示でも、グラウンドボールの基礎、しっかり走り抜けること徹底して話していた。このレベルのラクロスですら、そしてこの大事な試合の真っただ中、しかもチャンピオンチームのHCのTO中の第一声が、尚、グラウンドボールの基礎というこの事実。

ILのハイライト(リンク

2011年3月18日金曜日

Fiddlestick vol.02

以前紹介した、STXのFiddlestick。先日近所のモールのDick's Sporting Goodsに買い物に行った際に見つけたので早速買ってみた。(STXの商品ページのリンク
色で選んでUNCモデルの水色(UNCの今後の健闘を願いつつ...)。20ドルなので、日本円にすると1,600円。お手軽価格。
ボール一個が付いて来るが、念のため予備のボールも購入。
実際に手に取ってみて納得。全然オモチャじゃない。完全に通常のスティックの相似形の縮小版。ストリンギングの穴も同じ。シュートストリングもVで入っている。家の中で振り回すには正に丁度いいサイズ。早速家のマンションの駐車場でwall ballしてみたが、全く違和感無し。サイズ的には3/4という感じだが、感覚的には半分くらいのコンパクトさに感じる。
ボールも一回り小さく、軽くて柔らかい素材。
壁打ちの時の感覚も、リアルボールのように「ドカッ!」という音じゃなく、「ポコッ」という感じ。軽過ぎる感じも無く、丁度良い。

子供の練習や、引退したOBが何となくラクロスをしたくなった時に手軽にやるには正に持ってこい。別に試合をしなくても、ちょっと壁打ちしてボールを投げるだけで自然と笑顔になれる。家で鏡の前で振り回すだけでも、ソファーにボスボスぶつけるだけでも十分楽しめる。スティックトリックで遊ぶのにも持ってこい。ボールを落としても響かないので迷惑が掛からない。一発でファンになった。

2011年3月17日木曜日

NCAA 2011 Game Review vol.07 Syracuse-Georgetown

3月12日(土)にMaryland州BaltimoreのNFLチームBaltimore Ravensの本拠地、M&T Bank Stadiumで行われたIL主催の集客試合、Konica Minolta Face Off Classicを会場で観戦した。その一試合目。

試合のレビューの前に、いくつか会場でのobservationと感想
  • 会場ではFan Zoneとして多くの店/メーカーのブースが出されており、多くのファン/子供達が群がっていた。(ILの記事
  • 各ブースでは契約選手のMLL選手たちがファンと握手したりサインしたり。
  • ESPNUの小型ラクロスケイジの中では同じみMikey Powell(Syracuse '04/USA '06)がKidsに囲まれて新しい遊び方&練習方法を説明。
  • 試合では、2006年にBlood Cancerで命を落とした元HofstraのNicholas “Head” Colleluoriにちなんで作られた、Blood Cancer患者を支援するNPO、Head Strong Foundationのシンボル、Lime Green(蛍光黄緑)のゴールネットと審判のユニフォームを使用
  • 観客を見渡した感じ、半分近くがkidsやジュニアの選手たち。特に地元Baltimoreは正にラクロスのHot Bed(メッカ)。この国のラクロスの懐の深さを思い知らされる。隣に座っていた高一くらいの選手たちの話を聴いていて感じたのは、非常によくチームや選手のことを名指しで知っていることと、プレーや戦術、ルールに関しても相当深いレベルで理解しているなということ。「今のJoJoのプレーは彼らしくないね」「いや、でもあいつ高校時代あれよくやってたよ」みたいなクソマニアックなコメントを中三の子達が交わしてるみたいな。
  • ちなみに、先日ILで取り上げていた例の新ヘッド、Tribe7の名物オジさんが店を出していた。気さくでエキセントリックな面白いおじちゃんって感じ。結構皆面白がって群がっていた。「見ろよ!先端が平だからスティック垂直に立ててもスクープできるだろ!?」と熱くアピールされた...


    Syracuse vs Georgetown

    両チームのプレビュー: SyracuseGeorgetown

    戦前は手堅くSyracuseが勝つかな?と思っていたが、意外にも一進一退の接戦に。Run & Gunが持ち味で、得点力が売りの両チーム。点の取り合いになると思われていいたが、Georgetownの作戦により、真っ向からのノーガードでの打ち合いでは分が無いと踏んでか、Zone Defenseを軸にローペースな展開に持ち込まれる。1-2点差でSyracuseが終止リードするも終了前残り数秒で同点を許し、延長戦に。延長ではSyracuseの頼れる4年生エースAT #28 Stephen Keoghが手堅く決めて辛勝。最後は図らずもNCAA Tournamentじゃないかぐらいの大盛り上がりに。

    改めて、NCAAの上位20校は、極めて高いレベルでチーム間の実力が拮抗していることを再認識させられる。現時点でトップ争いに絡んでいないGeorgetownにも能力の高い選手はゴロゴロいて、チームとしても戦術としても素晴らしいラクロスを見せ、トップ校を食う一歩手前まで迫る。近年盛んに指摘される競争の激化と実力の拮抗を如実に感じさせる。

    いくつか、試合前のアップを見て感じたこと

    考えると、NLL/MLLはChicago時代(07-09)、そしてPhillyに来て今シーズンを通して会場で観戦して来た。が、NCAAをTVではなく会場で観戦するのは実は08年のFinal Four @Boston以来。久しぶりに会場で至近距離で試合を見て、改めて「うをっ」と感じたのが...

    (MLLやNLLの会場でも毎回感じるが...)まず、選手たちが思った以上に、デカい。最前列に陣取ってウォームアップから眺めていたが、やはり日本の感覚からすると2-3回りくらい大きい印象。画面で見ると相対的に小さく見えるSyracuseのAT陣も、普通にでかい。平均して180前後はある感じ。Cuseの小さい選手が日本だと結構大型選手になる感覚だろうか。DF陣に至っては190前後の巨人軍団という感じ。ひょろっとしてる訳じゃなく、がしっとした巨漢軍団。#11 Joel Whiteとかも普通にずるいぐらいでかくて歩幅もリーチもえれえ長い...

    もちろん、国民/民族としての平均サイズの違いもあることながら、competitionの厳しさから、結構このレベルに選抜されてくる過程で、サイズも含めた才能で相当タイトに上澄みが選ばれて来ている。実際にアメリカでアメリカ人に囲まれて学校に行ったり仕事をしていて感じるのは、日本にいた頃(映画やスポーツを通じて)先入観として感じていた程は一般の平均的なアメリカ人は大きくないということ。まあ、言っても一回り、身長にして5-10cmくらいの差のイメージだろうか?感覚的に。思った以上に小さい人も細い人も多い。国際大会のフィールドで生じるサイズの差の因数としては、実はそういうDNA由来の違いではなく、この辺のボトムのプール(競技人口)のでかさと、そこからの淘汰のタイトさの差が実は日本との最大の差なんだろうなと感じた次第。

    「アメリカ人だからでかい」は恐らく要因としては1-2割で、「膨大な人材プールの中で相当数の弾をパイプライン内に確保した上で、(巧くて身体能力高いだけじゃなく)結構でかくないとトップでやれないくらい激しい競争と自然淘汰を通じて選手の上澄みを選べてるから(そしてそういう仕組みを作ったから)でかい」という要因が8-9割、というのが正しい認識だなと思った。(逆にここをしっかり理解してメスを入れて行かないと、国としてのholisticで効果的な強化策は打てない気もする。例えば、今早い段階で野球やラグビーに流れてしまっている、サイズを伴った本当の上澄み日本人エリートアスリートを本当に何割かラクロスに奪い取ることが出来れば、恐らく体格差はかなり埋まるはず。日本代表に集まった駒をどれだけ育てられるかではなく、そもそも集まる駒そのものの質を上げる部分を戦略変数として思いっきり梃入れしに行く考え方。)

    そして、もう一つは、高さだけじゃなく、「太さ」というか「厚さ」。至近距離で見て結構な「塊」感がある。カーフ(ふくらはぎ)もかなり太い選手が多い。Cornellの#3 Rob Pannellのふくらはぎとか、つか太ももかいって感じ。もちろん元々のBody frame(骨格)のでかさもありながら、やはりコンタクトスポーツとして、体育推薦メインのvarsity sports(ガチの体育会)としてプロのトレーナーを付けて相当徹底してweight trainingを積んでいることが一目瞭然で感じ取れる。セミプロのアスリートの身体を作り込んで来ている。

    以下、いくつか試合全体を通しての感想

    まず、GeorgetownのZoneがバチッとハマった。真っ正面から点の取り合いをしても格上のチームには勝てないことは既に前回のMaryland戦で身を以て理解しているHoyas。Syracuseの良さを潰すという戦略に。試合を通して、Zone DF主体にして試合のペースをスローにしてコントロール。トランジッションの数を一気に減らした。また、途中で所謂Box-1 (1人がman-toで残りがZone)の"Combo" DFや、マンツーを状況に応じて使い分け、Syracuseは非常に攻めあぐねていた。この試合だけを見た感じ、SyracuseにはZoneは相当有効に見えた。DF陣の皆はこれ見て学ぶ点は多いはず。

    一方のCuseも、Zone対策のOFを頭できちんと理解した上で、セオリーに沿って攻めようとしていた。いくつかは上手く行かずに失敗し、いくつかは思惑通りに攻められて得点。EMOのように全体を動かしながらパスを回し、少しずつ包囲陣を狭め、動きの中でフリーを作りミドルレンジやクリースでシュート。見ていて感じたのは、散々コーチに言われることだとは思うが、改めて、Zoneを攻略する上では高いスティックスキルが必須だなという点。パスを回す中でプレッシャーにやられてボールを落としてしまっては思うつぼなので。

    全体的に、Syracuseのライドが効果的に機能していたのが印象的。Georgetownのクリアを結構な確率で阻止出来ていた。Zoneを攻めあぐねたにも関わらずリードを許させなかったのにはこの辺もボディーブローのように効いていた。ATがかなり気合いで走っている。

    あとは、メンタルの話で、反面教師として参考になるなと思ったのが、Syracuseの慢心と、対照的に見習いたいGeorgetownの「締まった」感じ。Syracuseは先週のVirginia戦に気持ち的な照準を合わせていた部分もあってか、明らかに試合前の雰囲気からも緊張感が欠けていた(一言で言うと舐めていた)ように見えた。一方のGeorgetownはMarylandに派手にやられ、高い緊張感を持って、強い意志を込めてupsetを狙いに来ている感じがした。やはり、揺らがず、結果を見ず、今やるべき事/変化を見る、都度都度切り替えて全力を尽くすことでセルフイメージを最大化し続けるというメンタルは本当に重要で、パフォーマンスに大きく影響するなと改めて感じた次第。


    以下、個別のプレーで印象に残っている点

    2Q残り7分のCuse G GallowayからATへの直接パス。相変わらずクソ効果的。この試合でも何回か彼のレーザービームパスを見ることができる。自陣でセーブした数秒後に相手ゴールにシュートが打たれているという早さ。完全にバスケのリバウンド後のショットガン&ワンパス速攻。アップを見ていたが、Gallowayはやはりかなりthrowingにこだわりを持っているのが見て取れた。キャッチボールでも相手の「どボックス」に直線的な(というか、イメージ豪速球投手のストレートの様にボールの高速回転でグインとホップするイメージさえ受けるような)弾を投げ続けていた。また、最後にゴーリースティックでゴールにロングシュートを打っていたりしたが、ピンポイントでゴール左上の角にビシッ!ビシッ!と鋭いシュートを連続で当てていた。スティックの振りが完全にショートスティック。間違い無く相当壁打ちを積んで来ている。強い下半身と体幹を土台としてドシッと安定させ、ズビシッ!!としっかり振り切り、フォロースルーが力強い。巷でよく見る「振りかぶってー、よいしょー!」みたいな典型的なダメGoalieの、大きくて遅いへたれスローと明らかに異なる。Goalieの選手は是非ここを目指したい。会場でも下手な得点よりも歓声が上がり、目立っていた。

    2Q Syracuse 3点目、#4 MF Jeremy Thompsonのミドルシュートを生んだ一連のオフェンス。Zone DF対策のチームOFはこうやれ、というお手本。動きの中でボールを動かして、少しずつ狭め、ポジションを変えて、スキップパスを通してスライドが追いついていないポジションで打つ。チーム全員の高いミドルシュート力が必須。そして相変わらずオーラが...引くぐらいカッコいい。

    Cuse #28 AT、CanadianのStephen Keogh 4点目。Syracuseの中で彼の気持ちの強さが特に際立った。全身で気持ちを表現する熱いファイターという感じ。大事な所で気持ちで確実に決めて来る。Garbage goalも見逃さない。責任感の強い頼れる4年生。髪型もMohawk(モヒカン)。ベンチでも率先して声を上げてチームを引っ張っているリーダーシップに感銘を受けた。コーチとしては頼もしい限りだろう。

    ハーフタイム。ESPNUの放映ではDuke 08/LI LizardsのAT Dino (Matt Danowski)のAT 1 on 1講座。Xからの1 on 1後、ゴール右前の5 and 5 spot(ゴール斜め前5 yards x 5 yards) からのシュートのパターンを説明。(なんか、年を追うに連れこのWarrior Skill講座がどんどん実戦的なものになって来ている...)①通常のインサイドロールだけでなく、②表に抜いて右で打つ、③プッシュを利用してrollしつつ、左手でjumping fade-away shot、または、④間合いを利用してそのまま右でstanding shot。なるほど...まず、これだけ技のレパートリーがあったのか...特に最後の2個は一歩応用に入っており、学生レベルでは技として持っている選手も少ないだろうから、練習しまくって安定したレベルで身につければDにとってかなり脅威になるはず。また、これだけ技を形式知化して、意識化して引き出しにストックするというアプローチが非常に参考になる。Dinoでさえナチュラルに何も考えずにやってる訳じゃなく、相当左脳を使って意識的に技術を使い分け、習得してるのねと。

    3Q途中で挿入される、Paul Carcaterraの実演付き解説とQuintの指摘が非常に印象に残った。KeoghのCanadian独特の、スティックを短く持ち、身体に近づけて持ち、スティック自体をほとんど動かす事無く、肩と身体でフェイクし、完全にゴーリーを転ばした上で得点するという至近距離でのGoalie 1 on 1の技術。Quint自身もHopkins時代にGoalieとしてSyracuseと対戦した際に、「神様」Gary Gaitの同様の技術に完全に翻弄されたと言っていた。とにかくスティックの位置そのものを犠牲にすることなく、スティック以外の身体全体の動きでめっさシュートっぽいフェイクを掛けて来ると。Keogh自身もPodcastのインタビューで小さいゴールと大きいパッドを付けたゴーリーを相手にしたインドアの技術が生きていると言っていた。

    にしても、全体を通して、Georgetownの良さが非常によく出ている。前回見たMaryland戦では完全に相手の得意なフィストファイトに真っ正面から挑み、スピードに着いて行けず玉砕していたが、今回はペースをコントロールしたことで良さが出た。よくよく個々人の選手を見ると非常に能力の高いいい選手が多い。#5 AT Davey Emala (So)、#13 MF Zack Angel (Jr)、#7 MF Brian Casey (So)、#23 DF Dan Hostetler (Sr, Boston Cannons指名、ロン毛がメットの後ろからover-flow)など、下級生から上級生まで、かなり個として強く、ラクロスを知っている選手が多い。いずれも地元Lacrosse Hot BedのMaryland州出身。一人一人を見て学べる事は多いので是非注目。

    あと、試合全体を通して、会場で見て改めて気付かされたが、Syracuse G #15 GallowayのChaseの反応とダッシュとダイブの気合いがむちゃくちゃ凄い。試合の大事な場面で複数回ボールを奪っている。これ、恐らく彼自身相当意識的に技術として意識し、練習して試合で使っている気がする。シュートが枠から外れると解るや否や、ほぼ延髄反射でゴールの裏にスルッと瞬間移動してそのまま躊躇無くエンドラインに向かって猛ダッシュ&ダイブ。「一応走りました」じゃなくて、ガチでボールを奪い取りに行っている。

    多分、「Chaseは大体OFが取るもの」という先入観/常識から意思を込めて自分を解き放っている。「Chaseは努力/工夫すりゃ半分くらいGoalieが取るもの」ぐらいのマインドセットで挑んでいる感じを受ける。確かに、これでボールを奪うのはある意味DFがボールダウンしてグラウンドボールを拾ってturn overを起こすのと同じだけの重みがある訳で。Face off一本取るのと同じ重みがある訳で。いや、OFの凹みっぷりや会場やチームの盛り上がりを考えると、「流れ」を呼びこむmomentum shifterとしてはそれ以上のインパクトがある。これをGが当然の習慣として自分のものにし、試合中に実際に何度かボールを奪えれば、ポゼッション/得点への貢献度は相当なものがあるはず。実はセーブ数やセーブ率、DF全体の防御率といった数字に現れていない極めてインパクトの大きな技術だなと思った次第。

    (あと、Gallowayのダッシュ&ダイブのハッスルっぷりが相手ATの涼しさ/ルーティーン感と対照的で、審判から見ても咄嗟にGallowayにポゼッションあげたくなるかもなと感じた。実際ほぼ同着でグレーな時はGallowayにあげちゃった方が観客からのブーイングも少ないだろ的な...大事っすこの辺の印象点。)

    Gallowayは全体的に極めて頭を使ってプレーしていることが感じられ、Gの選手が見て学ぶにはいいかも。GPA 3.5と、結構勉強も頑張っている。Quint曰く、理論家で完璧主義者。見ていて本当に素晴らしい選手だなと感じさせる。

    最後のKeoghの決勝点のシュートも完璧。本当に魂が込もっている。彼は今年はヒーローになるかも。

    てな訳で、油断もあり、Zoneに苦しみ、ちと危ういところを見せたSyracuse。でも一方で、これで再び緊張感を持って挑めるだろう。加えて、ハイレベルの競った展開で、やはり層の厚い頼れる上級生の存在の重要さを再認識。

    ILのハイライト(リンク

    2011年3月16日水曜日

    Virginia HC Dom Starsia Interview

    Glory days blog podcast

    ILのPodcastで、Glory daysというインタビューシリーズがある。ラクロス界のシニアなコーチや元選手、関係者にインタビューをし、昔のラクロスの試合や、往年の名選手、ラクロスの歴史や、彼ら自身のラクロスキャリアや四方山話を聴いて行くと言うもの。

    昔のラクロスが今のラクロスへと、どうやって大きく進化して来たのかなどの事情を知ることが出来る。

    Virginia Head Coach Dom Starsia

    その中で、先週、UVAのヘッドコーチ、Dom Starsiaのインタビューが載せられていた。非常に学びが多く、また感銘を受ける点も多い内容だったため、いくつかかいつまんで紹介。Wikiのリンク

    記事とPodcastのリンクはこちら。英語のリスニング力アップも兼ねてiPodに落として聴いてみてもいいかも。今後の世界の構造を考えると、ほとんどの仕事で英語を仕事で使えるかどうかで明確に得られるオポチュニティに差が出てしまうので(それはビジネスに限らず、スポーツでも芸術でも学問でもエンターテインメントでも)。そしてその構造は加速する事こそあれ、巻き戻されることは絶対に無いので。ラクロスという楽しみながら英語に触れられるせっかくの機会を利用しない手は無いので。

    以下、印象に残ったコメント

    彼自身のラクロスとの出会い、選手としてのキャリア
    • 元々は高校までアメフトの選手で、70年に入学したBrown大学にもアメフトの選手として入学した
    • ところが、そこでラクロスに出会い、文字通り、一発でハマった
    • 特に、アメフトではwide receiverで、余りボールを持って走る事が無かった自分に取って、ボールを持ってフィールドを駆け回れるというのは最高の楽しみだった。
    • その後クラスメートのラクロス選手だったNative Americanの友人と一緒に暫くReservation(Native Americanの保護区)にステイしたりして、そのスポーツの魅力にどっぷりハマった。
    • あの木のスティックの木や皮のの感じ。Native Americanが受け継ぐ魂や歴史、全てが自分に取って最高のスポーツだと思えた。
    • Brown lacrosseでは持ち前のサイズと身体能力を生かし、DefenderとしてAll Americanに。

    コーチとして
    • その後74年にBrownでコーチをやるに当たり、当時は大学スポーツとしてのラクロスも今程大きかった訳でもなく、サッカー部のコーチとラクロス部のコーチを兼業していた。
    • 実は今の大物コーチの多くもこのパターンを取った人は多いとのこと。Princeton-DenverのBill Tierneyも同じだったと言う。(ちなみに、サッカーW杯でアメリカを率いたBruce ArenaもVirginiaでサッカーとラクロスのコーチを同時にやっていた。)
    • コーチの仕事は、ある意味、セールスマンの仕事に似ている部分もあるとのこと。選手やスタッフをまとめ、convinceするプロセス。人間の行動を変えるプロセス。正しい戦術や知識を持っているだけではスタートラインにしか立てない。最後は結局人の行動を変えるという、極めて人間の本質に関わる仕事。
    • 当初自分がラクロスのコーチを一生の仕事にするとは思っていなかった。ただ、自分は、ロッカールームが凄く好きだった。そして、若い選手達と関わること。彼らに影響を与えて、彼らを人間として、選手として成長させることが凄く好きで、やりがいを感じ、そして次第にそれが自分の仕事だと感じる様になった。
    • リクルーティングは今の大学ラクロスに於いて非常に大事な位置付けにある。そして、凄く大変。全米を回って選手を見極め、話して勧誘する必要がある。ただ、自分は、(それを全部楽しんでいるとまでは言わないが)少なくとも、凄くそれが好き。選手と話し、親と話し、自分がやチームが彼らに何を出来るのかを話し、納得してもらい、Virginiaを好きになってもらい、来てもらうプロセスが好き。
    • Virginiaに来るような選手は、ほぼ全員例外無く、高校まではスーパースター。神童として持ち上げられ、王様としてプレーして来た選手達。ある意味Virginia大学での練習は、その我の強さ、エゴ/我がままをいなし、チームとしてプレーする事、エゴをコントロールすることを教える場。多くの選手は大学4年間でそれを学び、アジャストし、チームプレーヤー/チームリーダーへと脱皮して旅立って行く。でも何人かは結局変わらないまま卒業して行く。でも、そういうもの。そしてそのエゴはある意味健全なものだとも思う。それが無いと始まらないので。「俺がやってやんよ!」という強い「我」がある事が前提。それを如何に正しい方向に導くか。
    • (ちなみに、インタビュアーのILのJeff Dudleyのコメントが面白かった。後にVirginiaを99年の優勝に導き、MLLでMVPに輝いたATのConor Gillを高校時代にコーチする機会があったらしいのだが、当時から完成されたプレーヤーだったGillを見て、他のコーチと、「うん。彼は凄過ぎる。俺らが下手にいじくって変なことになったら大変だ。大学レベルのちゃんとしたコーチに預けるまで、少なくとも彼をダメにしちゃうことだけは避けよう。彼のやりたいようにやらせよう」と話したとのこと。「Conor、今日もいいね!あのさ、シュートはさ、毎回上に打つんじゃなくて、たまにはちょっとバウンドで打ってみてもいいんじゃないかな?」ぐらいしか教えなかったと...)

    今のNCAAラクロスのルールについて
    • 今のNCAAのルールに関して、自分はよくshot clock導入の支持者だと見られているが、自分は単純にラクロスをより魅力的なものにしたいだけ。shot clockは最もシンプルで、フェアで、試合を面白くものだと信じる。(既にMLLで導入されている)2 point lineも同じ。
    • 自分のVirginiaやSyracuseは、攻撃力があり、スピードと爆発力があるラクロス。VirginiaはRun & gunの代名詞。でも、今のルールをベースにすれば、Notre Dameの様に、ローペースで保守的な戦術を取るのは理解出来る。それが劣っているとも卑怯だとも思わない。去年のDuke-Virginiaの準決勝は点の取り合いで素晴らしいゲームだし、決勝のDuke-Notre Dameはまた別の意味で非常にレベルの高いラクロスの試合だったことは事実
    • 近代ラクロスでは、Defenderがより大きく、よりathleticになり(高い身体能力を身に付け)つつあり、例え攻撃力のあるATであっても攻略するのは容易ではなくなりつつある。それに伴い、Shorty相手のMFから攻める、invertで攻めるという合理的な考え方がどんどん主流になりつつある。昔のようにMFはひたすらGBを拾って前後のコートをひたすら行き来してボールを運ぶ人、オフェンスはATがやるもの、という考え方は薄れつつある。如何にMFで攻められるかが非常に重要になって来ている(Paul RabilやKevin CrowleyやShamel Brattonを見ても解る通り)。

    最も凄いと思う選手
    • 今まで見て来た中で最も凄いと思う選手は?という質問に対し...
    • 一人目はやはりSyracuse '90で四度のWLCでCanada代表の主力を勤めた、史上最高のプレーヤー、ラクロスのMichael Jordanとも言われるGary Gait(現Syracuse女子HC。先月NLLのRothester Knighthawksを引退し、約20年のプロ選手生活を終えた。)。間違い無く。最も大きく、身体能力が高く、技術もあり、全てが出来、どこからでも点が取れる。一人だけ別次元。弟のPaul Gaitがその次。
    • それから'09 Cornellの主将、Max Seibaldも非常に印象に残っている。プレーだけではなく、リーダーとしての資質、人格として。彼は正にチーム全体を鼓舞し、チーム全員の力を引き上げる事が出来る、真のリーダーシップを持った稀有な選手だと思う。
    • そして、最近で言うとやはり昨年の準々決勝で対戦し、今年はMLLにドラフト1位指名され、Virginiaと再び闘うことになるStony Brook 4年のMF Kevin Crowley。上手い事は勿論だが、自分が一番評価しているのは、全てをやること、そしてフィールドに残り続けること。チームの勝利の為に、ディフェンスはもちろん、自分の体力が許す限りフライしないでフィールドでプレーし続ける。その姿勢は素晴らしい。

    などなど。こういう、普段試合の映像で難しそうな顔をしてベンチで指揮している姿しか見ないコーチ達の裏側や人生、哲学が垣間見えるこの手のインタビューは非常に興味深く、学ぶ事も多い。

    2011年3月14日月曜日

    NCAA 2011 Game Review vol.06 North Carolina @Princeton

    昨日、3月12日(土)にMaryland Baltimoreで行われたFace Off Classicの会場で、第一試合のSyracuseとGeorgetownの試合開始前に、地震の被害で亡くなった方々の為に、選手と観客を含めた会場の全員が遠く日本に向けて黙祷を捧げた。アメリカで流されるCNNのニュースでは文字通り24時間日本のニュースを伝えている。一刻も早い救助と回復を心から祈ります。
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    両チームのシーズンプレビュー: UNCPrinceton

    今年二度目のOnline/TVでのUNCの試合の観戦。前回はOhio State戦での後半失速からまさかのupsetを喫している。一方のPrincetonは先週Hopkinsを完封

    戦前の注目

    見所は、両チームで主力として活躍する一年生対決。今年のリクルートクラスの1位、2位が顔を合わせる。PrincetonのMF #22 Tom Schreiberは名門のラクロス一家出身で、ここまで堂々の活躍。そして何と言ってもUNC #34 Nicky Galasso。高校No .1プレーヤーとしてその名を轟かせ、UNCでも一年生にして既にスタメンどころかチームの柱としての風格を漂わせつつある。解説でも触れられていたが、ここ10年でラクロスがスポーツとして成熟して来る中で、この、高校までに選手として完成し、大学一年から主力で活躍出来る選手が昔に比べて増えて来ているという。(Powell brothers等の一部の突然変異体的な例外を除くと)特にNCAA Div 1の上位10チームで1年生がスタートとして出るというのは以前であればかなり珍しかった事を考えると、これもまた一つの大きな潮流ということだろう。

    UNCはHCのJoe Breschiが就任後初めてリクルートしたクラスが現1年生。上級生の怪我による戦線離脱もあり、何と1年生10人が試合に出ている。Galassoだけに留まらず、1年生にしてFOGO最強とも言われるRG Keenan、高い身体能力とポテンシャルを感じさせる#43 MF Mark McNeil、1年生にしていぶし銀の#22 MF Duncan Hutchinsなど、NCAA Div 1で一年目から戦えるレベルの選手がそろっている。

    また、UNC #4 でMLLドラフト2位AT Billy Bitterと、先日HopkinsのATをほぼ完璧に封じきったPrincetonの強力DF陣、#9 Chad Wiedmaier、#41 Long Ellisらとの対決も注目。Bitterはここまで期待程の活躍を見せているとは言い難い。一昨年見せていた爆発的なダッジは陰を潜めている。本当にMLLで活躍出来るのか?という不安が少しずつよぎり始めている。

    試合での見所

    解説でも指摘されているが、Princetonは引き続きHC Chris BatesによるIndoor outdoor hybrid offenseを展開。スペースを作って、はい、1 on 1仕掛けます、ではなく、2 on 2とピックを流動的に連鎖させる事でフリーを作って来る。

    全体を通し、Princeton DF Long EllisのBitterに対するDFが非常にいい。脚でしっかりと着いて行き、ポジショニング/角度をきっちりとマネジし、下手にプッシュし過ぎず、チェックし過ぎず、Xからの1 on 1に対し、ひたすら上へ上へと少しずつ少しずつ押し上げて行く。無駄に押し過ぎてズルッとロールで抜かれるということも無い。背負った状態で力の無い無理なシュートを打たせセーブすることに成功している。もちろんBitterが昔のダッジ力を取り戻せてない事もあるが、Ellisの1 on 1 DFの技術は間違い無く素晴らしい。DFの選手としてはスピードのあるダッジャー対策として是非参考にしたい。

    UNC 3点目、Xからの#1 AT Holmanの1 on 1に対して#34 Nicky GallasoのマークマンのDがスライドに行った瞬間のpop upが超絶妙。DFの動きをよーく見て、かなり大きく速く外にpop outし、両手を挙げてボールの呼んでいる。その後のシュートもルーキーとは思えない落ち着きとスナイパーっぷり。本当に18歳か?信じられん。

    中盤、#43 McNeilの高い身体能力が垣間見える。Kyle Harrison以降、SyracuseのJovan MillerやVirginiaのBratton BrothersらAfrican Americanの選手がどんどん増えて来ている。彼もその流れの一人。1年生で技術は荒削りで未完成だが、今後経験を積み技術的に洗練されて行けば、あと3年でかなりの選手になる可能性を感じる。

    しかし、試合を通し、UNCの1年生FOGO #25 RG Keenanが引くぐらいFO強い...後半特にイリプロを取られて勝率自体は落ちているが、局地戦ではほぼ全勝に近いくらい勝っている。Pinch & popやってるのかな?毎回居合い抜きを連想させる秒殺でサクッと相手の背中側に掻き出し、単独速攻を作り出している。これはFace offersの選手たちは是非注目。何か秘密があるはず。(ただ、シュートが...改善の余地大。Princetonもそれを解って意図的にDFはATのマークを外さず、そのままどフリーでKeenanにシュートを打たせている。怖くねえと...で、実際それで得点出来ていない...大事です。Face offerのシュート力。逆にCuseの#4 Jeremy Thompsonが恐いのはここ。)

    3Q UNC 7点目3年AT #3 Thomas Wood の点を生んだ1年AT #34 Nicky Gallassoの1 on 1からのフィードがむちゃくちゃすげえ。この試合を見て、なぜ彼が学年No. 1選手と言われているかが非常に良く解った。安定したフィジカルはもちろんのことながら、相当しっかりしたスティックスキル、そして何と言っても視野とフィードを出すタイミングと判断。引くぐらい上手え。「周りにいる全ての選手のパフォーマンスを数段引き上げる」と言われる理由が解る。でこれで1年生ってんだから恐ろしい。UNCは間違い無く来年、再来年、再々来年と確実に強くなってくるはず。

    同じく1年生、Princetonの4点目、MF #22 Tom Schreiberのトップの1 on 1からの左のロングシュートで更に一気に目を醒せられた。むあじかっ!?Off-handの左だぞ!?Splitで一歩交わしてトップからoff-hand左でピンポイントでぶち込んで来た。1年生でこの動きはどう考えてもおかしい。1年生にして既にチームの大黒柱になっており、上級生が、「一発お願いします!」とパスを預けている。今後3年間でどうなっていくんだろうか。

    試合最後、十分なリードを持ってのUNC徹底したコントロール。絶対にシュート打たないでとにかく時間を殺して行く。ゴールがら空きで確実に点が取れる状況でも決してシュートを打たず、チームの勝利を最優先。この徹底したdiscipline。得失点差の概念の無いNCAAでは、この辺の、リードを守り、時間を殺し、確実に勝つ確率を上げに行くという考え方が非常に洗練/徹底されている。下手に得点しに行って相手にポゼッションを与えてしまい、momentum(流れ)をシフトさせてしまうリスクを負うくらいなら、1点差でも確実に守って試合を終わらせちゃうという考え方。確かに、仮に点を取れたとしてもその後のFO以降相手にポゼッションを支配され続ければ負ける可能性が出る訳で。日本でもトーナメントの状況を想定すると是非ともこの辺の試合のマネジの巧さと徹底度合いは真似したい。

    全体を通しての感想

    UNCが非常にいい試合をしたという感じ。ペースとポゼッションをコントロールし、またFOとground ballを頑張り、出来るだけPrincetonにオフェンスの機会を与えなかった。オフェンスでは、broken/unsettled situationで確実に点を取り、セットではPrincetonの固いチームDFをよーく研究し、オフェンス陣全体が高いラクロスIQを持って、スライドの発生し際をよーく理解し、見極めた、非常にいいチームオフェンスをしていた。ちょっと抜いてスライド引き出してすぐそこで攻める、とか、逆にスライド来なかったらそれをよーく見て思い切って打っちゃうとか。Princetonは途中から珍しくDFがそれに対して対応出来ずちょい崩壊気味になっていた。

    Princetonはちとturn overが多過ぎた。先週のJHU戦での完勝で若干気持ちが緩んだか。

    いずれにせよ、やはりシーズン初期、特に若い選手の多い両チーム。共に初期は結果が大きくバラつき勝ち。この辺の一進一退、勝ったり負けたりの中で如何にシーズンを通して揺らがず毎試合ベストを尽くせるか、そしてそのプロセスを通して成長し続けられるかが大事なゲーム。今後5月下旬までの2ヶ月ちょい、どう変化していくかを見守りたい。特にUNCは間違い無く前回のOhio State戦から多くの点を修正してきている。しかも一年生主体なので、あとはただひたすら成長するのみ。結構楽しみだ。

    若干気がかりなのが、UNCエースAT #4 Billy Bitterの影の薄さ。この日も無得点。もちろん、相手も最も危険な選手として徹底的にスカウティングし、エースDFを付けて来るし、スライドも早めに飛ばして来る。にしても、2年前の彼であればそんなもん物ともせずに持ち前の爆発的スピードで蹴散らしていたはず。この試合でもボールを持ってねちょねちょやって何も起こらない(最悪転んだりチェックされてボールを失ったり...)、というケースが散見された。ヘルニアや脳震盪といった去年の一連の怪我以降輝きを失っている。本当にMLLでやっていけるのか...?

    ILのレビュー(リンク

    2011年3月11日金曜日

    Indoor vs Outdoor、カナダ対アメリカ

    先月号のILに非常に興味深い記事が載っていたので紹介。アメリカ国内で、キッズからユースレベルを対象とした、全米レベルのインドアラクロスの協会、American Indoor Lacrosse Association (AILA)が昨年立ち上げられたという話。(AILA website

    創立はNLL Philadelphia WingsのGeneral Manager、Johonny Mouradianら。基本的にはルール、イベントや組織といった競技としての枠組みを整理し、kidsを中心として各州のリーグを管理し、クリニックやトーナメントを主催し、インドアラクロスの米国内での普及に努めるということらしい。

    その背景にある話が非常に今のアメリカ/カナダのラクロス事情を表していて面白いなと感じた次第。インドアとアウトドアという似て非なる両競技間のせめぎ合い、そしてアメリカとカナダという2大ラクロス大国による覇権争いの構図。

    ちなみに、アメリカでラクロスをfollowし始めて非常によく解ってきたのが、本当にラクロスというスポーツ/エンターテインメントの全体像、特に世界のトップクラスのラクロスのダイナミクスを理解するためには、アメリカのNCAAやMLLだけを見ていてもだめで、この辺のカナダ人、インドアラクロス、NLLの話を理解しないといけないという点。フィールドラクロスを知っているだけでは、実はラクロスというスポーツの半分しか見ていないことになる、という盲点。以下、何でそう感じるに至ったかも含めてつらつらと。

    (にしても、同じ「ラクロス」の括りの中でも男子と女子という全く異なるスポーツが存在しており、更に同じ「男子ラクロス」の中でもフィールドとインドアという全く異なる二つのスポーツがお互いかなり高いレベルで成熟/完成された形で共存している。パッと思いつく範囲でそんなスポーツ他に聴いた事が無い。このスポーツの特殊さを端的に表している。)

    (Philadelphia Wingsのホームゲームで試合開始前の練習でボールボーイをするKidsたち)



    昔から脈々と続く、アウトドアのアメリカ対インドアのカナダの構図

    ここは皆さんもご存知の通り。カナダの国技はアイスホッケーと並び、インドアラクロス(もちろん規模や人気ではアイスホッケーに劣るが)。アメリカはアウトドアが基本。ほとんどのカナダ人ラクロス選手はカナダでインドアラクロスをやり、アメリカ人はアメリカでアウトドアラクロスをやる。長きに渡りそのボーダーラインは厳然と存在していた。


    ところが、その垣根がここ10年で大きく崩れ初めている

    先日の「NCAAでプレーするカナダ人が激増」の記事でも紹介したが、カナダからは多くのインドア出身者がアメリカのアウトドアのNCAA/MLLに雪崩れ込み、一方でNCAA/MLL出身のアメリカ人トッププレーヤー達がNLLでプレーしている。境目がどんどん薄くなり、ボーダーラインがぼやけて来つつある。


    そんな中でも、ここまでは明確にカナダ人のフィールドラクロスへの流入の方が圧倒的に勝って来た

    増え続けるインドアのカナダ人によるフィールドラクロスへの「侵略」

    過去数回のWLCの結果を見ても一目瞭然。'06年もTeam Canadaが圧勝で優勝。'10も予選ではCanadaが勝ち、決勝のアメリカ勝利もギリギリだった。カナダは基本的にはインドア有りきで、アウトドアはあくまでサブでしかないこと、逆にアメリカにとってはアウトドアこそが本業であることを考えると、これは結構物凄い事だ。そして、アメリカにとってはある意味非常に恥ずかしい現状でもある。

    また、NCAAでのカナダ人選手の大量来襲とそこでの大活躍を見ても同じ事が言える。古くはSyracuseのGait Brothersに始まりJohn Grant Jr. (Delaware)今年のMLL Draft No.1のKevin Crowley (Stony Brook 11)を始め、ここ数年でKevin Huntley (Hopkins 08), Zack Greer (Duke 08), Curtis Dickson (Delaware 10)と言った偉大な選手達が多くAll Americanに名を連ねている。中堅校が躍進しているケースではほぼ間違い無く得点源にカナダ人アタックが絡んでいる

    一方で、アメリカ人のインドアへの流入はかなり限定的

    もちろん、無くはない。現在もNLLで活躍するアメリカ人も1割に満たないが、いる。個別に見れば、Casey Powellが昨年MVPを取ったように、突出した活躍をしているケースも、ある。

    が、やはり全体で見ればかなり限定的。特にカナダ人のアメリカのアウトドアへの侵略度合いと比べると、圧倒的に負けていると言わざるを得ない。

    (また、NLLの開幕前のトライアウトから、練習キャンプを通して開幕までの間の脱落練習生のリストを見ると尚の事明確に解る。多くのMLL選手達がNLLの門を叩き、開幕ロースターに残る前にカナダ人との椅子取りゲームに負けて脱落して行っている。Matt Danowskiなども開幕前に消えている)

    結局NLLのコートに立っているのは、Offenseの中ではCPやDrew Westervelt, Ryan Boyle, Brendan Mundorf, Brian Langtryと言った、本当の超一流レベルの選手達で、且つインドアにアジャストしきった最後の上澄みの選手と、Max SeibaldやPaul Rabil、Matt Abbott、Kyle SweenyやKyle Hartzellのようなサイズと身体能力と勤勉さを売りにしたTransitionプレーヤーかDefenderのみという状況(本来GoalieのBrett QueenerもTransitionとして気合いで食い込んでいる)。が、全体として見れば決して成功しているとは言えない

    そして、(インドアが普及していない日本では余り知られておらず、アメリカですら存在感は薄い)WLCのインドア版、World Indoor Lacrosse Championship (WILC)では、2003, 2007とCanadaが優勝し、USに至ってはIroquoisに次いで三位...(Wiki

    なので、結果、相互の乗り入れの規模の大小、結果としての成功度合いを見た場合、カナダのインドアの圧勝、ということになる。

    (写真はPhiladelphia Wingsの試合のハーフタイムにexhibitionで試合をする地元の小学生チーム)



    明確に存在する競技間の「一方通行」

    つまり、(個別論を全く無視して全体でバクッと語れば)明らかに、ファクトベースで、インドア→アウトドアの方が、アウトドア→インドアよりも遥かに移行し易く、成功し易いというメカニズムが成り立っているということ(後者が全く無いという訳じゃなくて、圧倒的に数が多く、一般論としてやり易い)。行ったり来たり、ではなく、明確に片方がもう一方を侵略するという構図が成り立っていることになる。

    例えば、同じ身体能力と才能を持った幼稚園児100人の人材プール2組を、片方はカナダで育ててボックスラクロスをやらせ、もう片方はアメリカでフィールドラクロスをやらせ、高校の後半から大学生ぐらいのタイミングでお互いの競技に乗り入れをさせた場合、恐らくカナダ人のグループの方はもちろんインドアで圧勝し、アウトドアでも元々アウトドアをやってきたグループにアウトドアでもいい勝負を演じ、数年アウトドアを練習した時点でアウトドアでも確実にアメリカグループに勝ってしまう、という事が起こってしまうんじゃないだろうか。

    (もちろん、これは極端に単純化したシミュレーションで、実際には個々人の能力や努力による部分が大きいし、且つDFや機動力勝負のトランジッションMFに関してはそうは言ってもフィールドの選手に分があるケースも多いんだろうけど。一般論として。)


    背景には、競技のネイチャーとしての優位性

    何故か?この記事でも触れられていたが、インドアが持つ競技としての特性、そこで培われる技術、そしてそのレベルの高さが、正に本来アウトドアで必要な物そのものズバリだからという話。
    • 狭いスペースの中で、ギュッとタイトにパックした中で高速で行われるスピード感、状況判断、スティックスキル
    • 壁に跳ね返りアウトオブバウンズやチェイスが無く、ノンストップで繰り返されるトランジッションと数段速い展開ペース
    • フィールドの10人を常時理解し続けるvision(視野)
    • 二手先、三手先を読む力と、そこでのベストな動きを瞬時に引き出すラクロスIQ
    • 小さいゴールと大きいゴーリーに対して求められる針に糸を通すような正確なシュートと、タイミング/間合い/スクリーンショット/目線や身体でのずらしや騙しの技術と、creativity(創造力)
    • 一人でオフェンス、ディフェンス、トランジッションの全てをやらざるを得ない状況で生まれるversatility(ユーティリティプレーヤーっぷり)
    • OF/DFでもセットの状態での全ての出発点となる、2 on 2とピック
    • ショートスティック限定で脚とポジショニングで守らざるを得ないディフェンス
    (あんまし整理されてないが)パッと思いつく範囲でも相当ある。そして、どれを取ってもまるでフィールドラクロスのトレーニングのために作られたかのような錯覚すら覚えるほど、超重要。

    要は、一度インドアの中で揉まれてしまえば、アウトドアなんて簡単、という考え方。もちろん、Weak-handの技術や、細かい戦術の慣れ、ロングスティックへの対応など、アジャストしなくては行けない部分(借金の部分)は存在する。それでも、インドアからアプライ出来、且つ周りの選手に対するエッジとして使える部分(貯金の部分)に比べると、差し引きで遥かにお釣りが来るという考え方。

    これに対し、アウトドアからインドアにアジャストするのは逆に貯金が少なく、借金が多い、という状況になるようだ。過去に何人かのNCAA出身のアメリカ人NLL選手、及び挑戦したが叶わなかった選手達のインタビュー等で何度も耳にする。「スピードが数段速い」「求められるスティックスキルの精度が全く違う」「思った以上にバックハンド/over the shoulderで咄嗟のパスを捕れない」と言う。「いや、やったら何となく感覚で出来たよ?」という人は聴いた事が無く、「まあ、徐々に楽しみながら学んで努力したら出来るようになったよ」と言っていたのはCasey PowellやPaul Rabilなど、MLLでもトップクラスの選手か、守備力や身体能力頼みでサバイブしているDFやTransitionの選手達のみ。しかも、恐らく相当努力している。


    気になる今後の勢力図の変化

    当分は、恐らくこのCanadian Indoor優位の流れは変わらない、いやむしろ暫くは加速度的に強化されて行くだろう。前回のカナダ人流入記事でも書いた通り、より多くのカナダ人がより若いタイミングからアウトドアへのアジャストをし始めている。今後NCAAに流れてくるカナダ人の数はどんどん増えて行くだろう。

    注目は、一方で、アメリカ人によるインドアへの乗り入れをどこまで作れるか?という点。

    今回のAmerican Indoor Lacrosse Association (AILA)の設立には、アメリカ人ラクロス関係者たちのそういう意図も結構あるように見える。


    実際にどう立ち上がって行くのか?

    が、どうでしょ。実際アメリカの中でどれだけインドアが普及して行くのか。これはなかなか一筋縄では行かない。そもそも目の前にあれだけカッコ良くて解り易いNCAAとMLLがある。NLLが爆発的に人気沸騰しない限り、ほとんどのKidsにとってロールモデルは引き続きアウトドアの選手であり続けるだろう。また基本北海道以上の極寒地域というカナダと違い、インドアラクロス用のボックスがそうそう無いというインフラの違いもある。

    AILAは壁を使うが外でやるような、アウトドアとインドアのミックスの様なスタイルを考えているようだが、一体どこまで選手達を引き込めるか。

    個人的にはラクロスの普及には間違い無くプラスになるし、このカナダ対アメリカの対決に新たな一面を加え、面白さを増してくれるだろうから、是非とも応援したいと思う。

    が、どうでしょ。冷徹に客観的に見ると、恐らくカナダ人のインドアからアウトドアへの侵略の度合いとスピードに比べれば、どうしてもゆっくりとしたペースにならざるを得ないんじゃないかと想像する。そして、もしそうだとすると、今後WLCでは暫くアメリカとカナダの拮抗は続き、場合によってはカナダ優位が強化されるかも知れず、またIndoorのWILCでアメリカがカナダに勝つという絵柄は僕らが生きている時代には見られないのかも知れない。


    最後に付け足し。留学先として

    さて、毎度の付け足し。現役選手の皆さんへの留学先提案の仕事もせねば...ってことで。どうでしょ。Michiganの既存事業に加え、新規事業として、1-2人からで構わないので、カナダの地元インドアクラブチームにステイするってのは。

    皆が皆やる必要は全く無くて。興味がある選手、フィールドもいいけどインドアも面白いと思える選手、ちょっと変わってて、人と同じ事やるよりは獣道を歩きたい選手。是非チャレンジしてみてもいいかも。環境的にもなんだかんだ言って国は違えど同じ中上流階級出身のホワイトカラー子弟の名門大学生たちと生活するMichigan留学と違い、地元密着/生活密着でカナダの環境でやる方が遥かに刺激に満ちていて人生勉強になるかも知れないし。

    技術的にも、下手に日本でフィールドの練習を1年やるよりも、1-2ヶ月インドアの本場に身を置いた方がその後のラクロス選手としてのライフタイムに与えるインパクトは大きい気がする。NLLのビデオで伝わるあのインドア独特の高揚感とスピード感。ワクワクする衝動、チャレンジしてみたい気持ち、武者震いを抑えられない尖った選手がいれば、是非。別に上手く行かなくてもそれはそれで素晴らしい経験になることは間違い無いし、失う物なんて何も無い訳で。たった一度の人生、早いタイミングでガンガンget out of your comfort zoneして行こう!ということで。