2011年2月28日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.02 Georgetown @Maryland

両チームのプレビュー: MarylandGeorgetown

感動した...Marylandの体現するラクロスに。大量得点祭り。Spectacularの一言。60分間ドキドキさせられっぱなし。強い。間違い無く。今年の優勝候補の一つと確信。20-8で強豪Georgetownを圧倒。

特筆すべきはその超エンターテイニングなラクロススタイル。超攻撃的でハイスピード。60分間休む事無くハイペースで攻め続ける。速攻でガンガン得点しに行き、セットオフェンスでも相手に全く休む間を与える事無く波状攻撃で攻め続ける。DFもガンガンプレッシャーを掛け、ダブルチームで相手を圧倒。ライドもフルコートでプレッシャーを掛ける。後半に掛けて相手が完全に息切れして対応しきれずパニックになり、自壊して行く。あとはもうやりたい放題。祭り。過去のNCAAでも、ここまでアグレッシブでスピードあるチームは正直余り見た事が無い。一瞬MLLかと錯覚させられた。土曜の夜に集まって皆でビール飲みながら見るならこの試合。Marylandの試合。また、同時にこのチームを見て学ぶべき点は非常に多い。この試合はシーズンの中でも特に必見の一試合になるかと。

Harvardから来た新コーチJohn Tillmanも堂々と指揮を取っていた。正にMarylandが持っていた爆発力、スキルの高さ、経験値の高さ、フィジカルの強さと層の厚さ、それらが彼の下で発揮され、鎖から解き放たれた猛獣のように縦横無尽に伸び伸びとプレーしている。Georgetownは決して悪いチームではない。相当高い技術と能力を持つチーム。それをここまで弄ぶ。やばい。今年のMD。

思い返してみると、3Qで既に勝敗は見えていた。それでも最後まで決して手を緩めなかった。10点差付いても尚、見ていてワクワクさせられ続けた。試合終了後も「まだ見たい!」という余韻が残った。"Finish strong(最後までやりきる)"を完璧に体現。実はこれ、日本のリーグ戦と違い、所謂「得失点差」が無く、勝敗がほとんど全てのNCAA Div 1に於いては簡単なことではない。それをやりきれるというのには特別な何かがある。選手全員が(いい意味で)何かに取り憑かれたように最後まで無我夢中で一つの目標に向かって全力で走る、勝利を越えた価値に導かれる一つの大きなエネルギーの塊を作り出していた。恐らくだが、新コーチ、John Tillmanがそれを生み出している面もあるのだろう。このコーチはもしかしたら凄い方なのかも。

以下、試合での見所

Marylandは今回は白ではなくゴールド(黄色)のホームコートユニフォームを着用。やっべカッコいい...グラブもSTX Assaultsの白×赤×黄を合わせている。痺れる。

Terpsは5人トップクラスのATがいるため、1st string MFでOF MF 2枚として出している。セットオフェンスの攻撃力が凄い。全体を通してMDのボール回しの速さ、脚の動かし度合いが明らかにNCAAの中でも突出して高い。

Maryland 6点目の#27 Young to #1 Catalinoのクリースでのフィードを受けての振り向きざまの得点。背中側でDをぐっと抑えて、その場でコンパクトに小さくスッと回るロールで向き直し、サクッとシュートまで。夏にインドアで経験を積んだCatalino。正にインドアの技術。

MD 7点目 #27 Young to #32 Sniderへの得点を生んだ、Ryan YoungのXからのダッジと視野、フィード。しっかり視野を確保して、スティックアップし、相手をリードするスポットパス、というfeedingの基礎をきちんと実戦している。

MDのライドが鬼過ぎる。フルコートでガンガンにプレッシャーを掛けて行っている。相当脚を動かし続けている。Cardio(スタミナ)のトレーニングを相当積んで来ている事が伺い知れる。

MD 8 & 9点目、全く同じ形でCatalinoのトップからのTime and room shot(アウトサイドのスタンディングシュート)。相変わらず。コンパクトなモーションで貰った瞬間リリース。ピンポイントでゴールの隅にシュパンと突き刺して来る。トップでちょっとでも離して持たせたら終わり。これがあるとfast breakが一気に楽になる。11点目はセットオフェンスのシチュエーションで。トップからのMFの1 on 1に対し、自分のマークマンがスライドに行き、フリーになった数秒の隙を見逃さず。

全体を通して、MD LSM #37 Brian Farrell (12位 Boston Cannons指名)のオフェンス参加の凄さ。基本スティックスキルと機動力がshorty以上なので、原則オフェンスになったらフライせずにそのまま残ってオフェンス参加した方が攻撃の流れを止めずに、圧倒的に得点機会を増やせる。ポイントは、ファーストブレーク、スローブレークはもちろん、その後のセットオフェンスもそのまま残ってクリースでオフボールのフリーを作ったり、ボールを普通に要求して1 on 1を掛けるところまでやっている点。Long stickであってもここは目指したい。

3Q MD13点目のパス回し。3本つないでクリースでどフリーで簡単に得点。Spectacular。つかもはやプロかと。(確かにプロ選手がオフェンスに3枚いるので、まあ、文字通りプロのプレーってことなんだけど...)

AT の4年3枚や3年のJoe Cummingsがこれまでフィーチャーされ勝ちだったが、ここに来て2年生の#13 MF Owen Blye辺りの伏兵の活躍が目立ち始めている。MFのCome aroundからのランニングシュートの技術が非常に高いので注目。ゴールから離れながら角度を作りつつ、下半身と体幹を上手く使ってバチッと体重を乗せてパワーのあるシュートを打てている。この辺のRole playerたちのstep up、層の厚さがトーナメントでは特に鍵になって来る。

16点目。Catalino本日5得点目。またトップでフリーになってTime and room。職人の領域。ちょっとこの人のアウトサイドショットは異次元だ。多分ゴーリーも解ってて警戒してるのに止められない。ガキの頃から裏庭でバケツにボール100個入れて毎日延々シュート打ち続けるという努力の成果か。

4Q残り8分でGoalieのRed-shirt FreshmanのNiko AmatoがRideで囲まれての落ち着いた処理とスティックワーク。ファウルを貰って尚落ち着いてパスを投げる。最近この手のshort stick並みのstick skillがあったり、走れたり、フェイスダッジやロールダッジで相手を交わせるGoalieの選手が増えてきている。もうゴーリーにとってもそれは必修科目の時代になってきているのだろう。ゴーリーの選手も壁打ちバシバシやりつつ、ダッジの練習もばっちり積んでおきたい。ショートスティック持ってstick skillの練習を積むのを日常的に取り入れてもよし。

19点目のRyan Youngの得点でのロングスティックのトレイルチェックを身体でばっちり隠すstick protectionの技術。片手で完全に身体の逆側に持って行き、背中で完全にスティックを覆っている。

いやー、マジでスカッとした...

(一方で、こういうチームが再び天敵Notre Dameと対戦したらどうなるんだ?というこれまた気になる疑問も残っている。NDは絶対に思うようにこのペースではやらせないはず。去年のDukeの様に付き合った上で力でねじ伏せるのか、気合いでこのペースを貫き通して勝つのか?レギュラーシーズンでは対戦が無いため、当たるとしたらプレーオフ。うおお...考えるだけでワクワクしてきた。)

ESPNのハイライト(リンク

2011年2月26日土曜日

NCAA 2011 Season Preview #1 Syracuse

いよいよ最後の1チーム。優勝候補大本命、Syracuse Orange。NY州北部、Canada国境近くに位置する。ラクロスではJohns Hopkinsと並ぶ10回の優勝回数を誇る。古くはGait brothers、Powell brothersなどラクロスの歴史に名を残した偉大な選手達を多数輩出。大学としては他に男子バスケが有名。毎年ちらほらNBA選手を出している。最近では現DenverのCarmelo Anthony(先週NY Knicksに移籍)。

2008年は#22 AT Mike Leveille、#44 MF Steven Brooksに率いられ、準決勝でVirginiaを劇的逆転勝利で破り、決勝では#9 Paul Rabil、#24 Kevin HuntleyのHopkinsを破って優勝。2009年は#22 AT Dan Hardy、#3 Matt Abottら4年生が決勝でCornellをこれまた終了間際の同点、延長でのCody JamiesonによるSudden deathゴールで劇的優勝。高い期待値の下、新たに#22を継いだJamiesonと共に三連覇を掛けて挑んだ昨年は、まさかのArmyによるupsetで一回戦敗退。全スポーツを含めたNCAAトーナメント史上最大のupsetとも言われ、ラクロスファン以外にもそのニュースは伝えられた。91年以来のホームCarrier DomeでのPlay offに於ける敗戦。試合終了後の無言で顔面蒼白のSyracuseの面々が未だに忘れられない。

雪辱を掛けた今年、昨年の主力メンバーがほぼ全員残留。栄光の#22を継ぐのは昨年#1を背負い1年生らしからぬ活躍を見せていたJoJo Marasco。HopkinsからはTom Palasekが加わり攻撃陣に厚みを与えている。


MLLドラフト(リンク

48人の枠中、最大の7人が指名。AT, OFMF, DFMF, LSM, Close DF, Gと、全てのポジションに4年生のAll American級の選手が揃う。
  • 2. Rochester Rattlers: Joel White, LSMF
  • 6. Hamilton Nationals: Jeremy Thompson, M
  • 8. Rochester Rattlers: Jovan Miller, M
  • 10. Boston Cannons: Josh Amidon, M
  • 16. Boston Cannons: John Lade, D
  • 20. Rochester Rattlers: John Galloway, G
  • 25. Hamilton Nationals: Stephen Keogh, A

チームロースター(リンク

Mark Dixonの解説(リンク

  • 7人のAll Americanクラスの4年生がいる。もし今年優勝すれば、98年のPrinceton以来の、4年間のうち3回優勝を経験した代ということになる。
  • 既に2回優勝しているが、去年Armyに一回戦でまさかの敗北を喫し、尚ハングリーなはず。
DF
  • 全米No.1。G #15 John Gallowayは去年のNo. 1 Goalie。セーブ力はもとより、ATまでレーザービームでパスを通して来るスティックスキルを持つ。司令塔として最強DFを統制するリーダーシップも。
  • #40 John Ladeは3年に上がる際にVillanovaから転校して来た。基本に忠実で超粘り強い。若干身体が小さいが、ハートでカバー。
  • 2年 #10 Brian McGillが脇を固める。Ladeのカバーがあるので安心してボールを奪いに行ける。
  • 全米最高LSMの#11 Joel Whiteはドラフト2位指名。身体能力とスティックスキルが高い。
MF
  • Jeremy Thompson、Jovan Miller、Josh Amidonの4年生MF軍団。
  • #4 ThompsonはFO, DF, OFとフルに使われ若干後半消耗した感あり。FO支配率58%。
  • #9 Josh Amidonは去年14点だが、もっと点取れるはず。
  • #23 Jovan Millerは元々DF Shorty MFだったが、オフェンスも急速に成長している。
  • MFは層が厚く、その他も強力な選手が控える。
AT
  • 昨シーズン若干課題だったのは、オフェンスを統制し、ボールをdistribute出来るQuarter Back(司令塔/バスケで例えるならポイントガード)の不在。
  • 今年のSyracuseは、昨年怪我で余り試合に出ていなかったJoJo Marascoという適役を見つけるに至った。(JoJoはそれに伴い去年までの#1を脱ぎ、栄光の#22を2年生で早くも背負うことに。)Mark Dixon曰く、彼が今年のSyracuse浮沈の鍵を握ると。
  • 次はHopkinsからの転校生、3年生#14 Tom Palasek。ダッジ力は即戦力。
  • #28 4年生Stephen Keoghはスナイパーのフィニッシャー。
  • Coach Deskoの息子3年Tim Deskoも去年要所要所で得点してチームをピリッと締めていた。
4年生の強さでは間違い無く一位。2007年に期待されながらPlayoff進出を逃した後、その悔しさをバネに2連覇を成し遂げた。それを今回も繰り返せるか。

HC John Deskoインタビュー(リンク

  • 基本去年と一緒のチームだねと。DF/OF共に去年のメンバーがほとんど戻ってくるので。
  • 2010年のチームは非常に良くやったと思う。レギュラーシーズンでは結局一回しか負けてないし。

2011年2月24日木曜日

NCAA 2011 Season Preview #2 Virginia

いよいよ大本命。昨年の試合のDVDを見ている選手の皆さんはよくご存知の通り、今年はSyracuseとVirginiaが頭一つ抜けている。今回はVirginia。

3年前に、NCAA最高のリクルーティングクラス(学年)と騒がれた、今年の4年生。その中でもShamel/Rhamel Bratton兄弟は入学前から全米の注目を集めて来た。1年目からチームを優勝に導き、4連覇も夢じゃないとも言われながら、ここまで優勝を果たせず。今年こそはと言われた去年も、プレーオフ直前に起きたMFの選手による女子ラクロス部の選手の殺人事件という衝撃の影響もあってか、結局準決勝で姿を消した。

今年優勝すれば、過去数年の苦労、特に去年の苦悩と準決勝でのDukeとの大接戦の末の惜敗もドラマの筋書きの一つということになる。Syracuse、Virginia、どちらが優勝したとしてもStory endingとしては出来過ぎなものになるだろう。

チーム名はCavaliers(騎士)。Quintの解説でもよく出て来るが、(昔の応援のかけ声から取った)Wahoosというニックネームも。(Wiki

MLLドラフト指名選手(リンク)

意外にも、実は指名は3人のみ。既に去年のDFの大黒柱Kevin KlausenやMFでキャプテンのBrian Carrolが卒業してMLLにドラフトされてしまったこと、及び主力の多く(特にAT)が3年生以下というのもあり。NCAAトーナメントの最後の競った局面では、やはり精神的支柱となる4年生が厚く強いチームが強いという印象が強い。その辺がどう働くか。(まあ、でもSteele Stanwichの異様な落ち着きを考えると心配無いか。)
  • 4. Boston Cannons: Shamel Bratton, M
  • 17. Long Island Lizards: Rhamel Bratton, M
  • 45. Denver Outlaws: Adam Ghitelman, G
今月に入って、ESPNのBlack History MonthのCMでBratton brothersがフィーチャーされている。Shamelは特に、既に、プロフェッショナルアスリートとしての太々しさというか、風格というか、オーラが漂う。

チームのロースター(リンク

Quintによる分析(リンク

Quintによる解説も非常に深くて詳しい。この解説自体がある意味ラクロスを学ぶ素晴らしい教材になっている。是非聴いてみて下さい。

  • 去年は16勝。負けはDukeとの2敗のみ。
  • Shamel/Rhamel Bratton兄弟を擁する4年生はNCAA高い期待値と共に入学したが、未だチャンピオンリング無し。
  • 何と言ってもその爆発的オフェンス力はVirginiaの代名詞。去年の平均得点は13点。今年は15点は行くと予測。理由は3つ。①AT/MFのタレントのレベルの高さ、②加えて層の厚さ、③スタイル。身体能力を生かした速いラクロス。
  • Question markがあるとしたら、short stick DFMFとDF。結構失点を許すはず。ただまあ、死ぬ程点取るだろうから大丈夫だろうし、見てて単純に楽しいよね。
  • 昨年のシーズンが始まる時点ではいくつか不安要素があったが、全て昨シーズンを通して解決されている。一つはATの若さ。Steele Stanwickは点も取れてfacilitater/QBとしてオフェンスをコントロール。リスタートで常に他よりも一歩早い(逆に、DVDを見ると解る通り、身体能力は決して高くなく、爆発的なスピードがある訳でもない)。29 goal/32 assist。
  • Chris Bockletも53 goalsと去年2年生として爆発。GBでの本能的強さ、オフボールの巧さ。
  • Matt WhiteとConor Englishも全然点取れる。
  • MFはひたすらスピード。Bratton兄弟と、2年 #44 Chris LaPierre。Rhamelはちょっとnorth-southで直線的に抜くのではなく、east-westでちょこちょこ動いて抜けないという悪い癖があったが修正されてきた。Bratton兄弟は常に相手DFにとっては頭痛の種。いくつかのチームはLong pole 2枚をBratton兄弟に付け、AT 1枚を捨ててShortyに着かせるという作戦を取ったが、Shamelはpole相手でも問題無く抜いて来るし、Shorty ATからも抜かれて止められなかった。
  • 脇役MFも強いくて層が厚い。
  • 昨年2枚卒業したShorty DFMDをどうするか。下級生を使うか、Bratton兄弟とLaPierreをDでも使って、Transition goalも狙わせるか。
  • Close defenseはそこそこの選手達が残っている。
  • Gの#8 Ghitelman(トルマン...ってカタカナ表記すると相当発音とギャップが出ちゃうが...ギにstressでtの音はほとんどlとくっ付いてて控えめでマに繋げるイメージ。ルマンって感じ)はセーブも強く、クリアパスはSyracuseのGallowayと並んで鬼。
  • シーズンの大事な試合が比較的前半に来る。3/4のSyracuse、3/12のFace Off ClasicでのCornell。そこでのパフォーマンスである程度見えて来るだろう。

HC Dom Starsiaインタビュー(リンク


(オマケとしての)個人的な予想

僕自身は今年は3/12のFace Off Classic(BaltimoreでのIL主催の集客イベント)で会場にて観戦予定。非常に楽しみ。

個人的な予想では、間違い無く、レギュラーシーズンもプレーオフも勝ちまくるはず。オフェンスがどう考えても神過ぎる。層も厚く、主力が一人くらい怪我で倒れても大勢に影響は無い。若干Dがどうなのか読みきれてない部分があるが、まあ、15点20点取るからあんまし関係無いって言う。順等に行けば決勝でSyracuseというのが一番筋書きとしてしっくり来る。

が、Syracuseとの3/4の勝敗次第で、トーナメントでどっちの山に入るかがある程度見えて来ると思うが、直感的にMarylandと準決勝で当たる山になる気がする。そうすると、ちょっと準決勝で「きな臭い」感じがしなくもない。

仮に決勝でCuseとになった場合、どうだ?すげえ点の取り合いになる気もするが、穴の無さ、4年生のリーダーシップや気合いという意味ではCuseの方が上な気がする。Syracuseの4年生は既に1、2年生の時に2回優勝を経験してる上、去年1回戦でNavyにupsetを喰らった反省から、謙虚に優勝に向かって準備してくるはず。決勝の舞台で相見えた時に、メンタルの「揺らぎ」の度合いで比べたらどうだろ?「本来持っている実力」×「どれだけそれを発揮出来るか(セルフイメージ)」に因数分解すると、想像するに、やはりSyracuseの方が後者に分がある気がする。

2011年2月23日水曜日

NCAA 2011 Season Preview #3 North Carolina

#3 North Carolina

North Carolina州Chapel Hillにある州立大学。私立のDukeとは眼と鼻の先にあるライバル校。バスケも名門で最近では2005年、2009年にNCAAを制覇しており、82年には後に史上最高のバスケットボール選手になるMichael Jordanを擁し、優勝を果たしている。チーム名はTar Heels(直訳するとタールの付いた踵。昔のNorth Carolinaの人々の呼び方だったらしい。Wiki)。

ラクロスでも80年代の全盛期に三度& 91年と4回優勝を経験している。が、その後暫く低迷。09年にOhio Stateから連れて来たOBのHC Joe Breschiにより復権を果たす。Joe Breschiはいろんな選手のインタビューを聴く限り、人間力/人格に優れ、選手から全幅の信頼と尊敬を勝ち取っている。今年彼がUNCに来てリクルーティングした1年生は全米最強と言われており、リクルーティング力の高さにも定評がある。現NCAAを代表する名コーチの一人と言えるだろう。

昨年前半は10連勝無敗と爆勝街道を突っ走り、優勝候補筆頭だったが、4月以降の後半戦で失速し、最後の5試合では平均16失点とDFが崩壊し、準々決勝ではDukeに17失点しベスト8で敗退。今年の鍵はDFがシーズンを通して頑張れるか。後のILでのMark Dixonの解説や記事でも出て来るが、秋から冬に掛けて、シーズン開幕までに怪我でMFのメンバーをごっそり失っており、MFが相当薄くなっているとのこと。ILのPre-season reviewは秋の練習の時点で作られているため、既にこの3位という順位は現実の実力と離れてしまっているとも指摘される。(Quintは開幕前の次点でUNCを10位圏外にランクしている。)

ちなみに、UNC出身の最大の有名人、Michael Jordan。僕の好きなGatoradeのCM。引退間際のMJが、まだ若かった頃のMJと1 on 1をする。力で圧倒しようとする若いMJを、老練なMJが技でいなし、教え諭す。すると、UNC時代のMJが...

MLL Draftでの指名選手(リンク

A/M/Dからそれぞれ1人ずつで3人。
  • 3. Denver Outlaws: Billy Bitter, A
  • 7. Hamilton Nationals: Ryan Flanagan, D
  • 36. Chesapeake Bayhawks: Michael Burns, M
チームロースター(リンク

Mark Dixonによる分析(リンク

  • DFの柱は何と言っても#24 Ryan Flanagan。でかくてAthletic。去年VirginiaのKen ClausenとBest DF賞を分け合った。
  • LSM 1枚目の#29 4年 Milton Lylesは秋のLoyolaとの練習試合でのACL(前十字靭帯)損傷で今シーズンは終了。
  • Gは誰が出るかが固まっておらず不安。
  • ATの#4 Billy Bitterは現NCAAで最も爆発力とスピードのある選手(COP: Change of pace, COD: Change of directionだけでトップクラスのDFを簡単にかわすそのダッジ力はMark Millonの後継者とも言われる)。2年前に2年生で既にNCAA最高のATだった。が、去年は怪我に苦しむ。スポーツヘルニア、脳震盪でボロボロに。シーズンを通して本調子ではなかった(相手チームのDFは早いスライドを飛ばしまくり、時として悪意を感じるlate hit/cross-checking to the headを当てて負傷退場を狙って来る)。もしシーズンを通して健康を維持出来れば、MVPも有り得る。
  • AT #1 2年のMarcus Holmenは去年1年生で活躍。
  • また、注目は全米No. 1ルーキーの#34 Nicky Galasso。ここまで1年生らしからぬプレーで早くもチームの主力になっている。
  • MFは#20 3年のJimmy DunsterがAll American候補。結構1年生の層が厚く、1年生を使って来ると思われる。
  • FOは1年生2枚回し。#25 RG Keenanは高校全米No. 1 FOGOで相当才能あり。また同じく1年生の#14 Frankie Kellyも。

ILのPreview記事(リンク

いくつか怪我やその他の出場停止の状況について触れている。
  • Mark Dixonが触れていたLSMのLyleに加え、
  • Sean Burke (MF/Sr.) and Tyler Morton (MF/Jr.) retired from lacrosse for medical reasons
  • Cam Wood (MF/So.) suffered a knee injury that will cause him to redshirt after playing in every game his freshman year
  • UNC is also short a backup goalie with redshirt sophomore Steven Rastivo dealing with what Breschi described as “NCAA issues.”
ミディーの土台を固める選手達が結構怪我でやられている。試合に出ているメンバーのうち約半分の10人が1年生...いくらNCAA最高のリクルーティングクラスとは言え、さすがに上位校との試合は荷が重い。これで昨年同様Bitterが怪我でやられたら、結構しんどい事になりそう。

チームのwebsiteでのシーイズンプレビュー動画(リンク

如何に去年の結果がdiappointingだったかが解る。また、チームでラダートレーニングやウェイトトレーニングをがっつりやっている姿が印象的。選手や主力選手の素顔と肉声に触れられる。今シーズンに懸ける想いには相当なものがある。であるが故に2戦目の敗戦は極めて悔しいはず。切り替えて体制を立て直せるよう応援したい。これでturn aroundしたら結構ドラマだ。

2戦目でOhio StateにUpset

と、ここ所まで書いた後に、この記事をアップする前のタイミングで、3月19日の土曜に早速Ohio Stateに13-8でUpset(番狂わせ)をくらった。一気に黄信号点灯。週明けのPole/Rankingで一気に10位圏外まで転落。大きなturn aroundが必要な感じだ。去年のDukeやNotre Dameの例もあるし、一敗が致命的な日本の学生リーグ戦と違い、結局プレーオフという本番で勝ちゃいいので、初期にちょっと躓いたからと言って即ゲームオーバーという訳でもない。が、去年のDukeの様に、明らかに個々は強いのに何かしっくり来てない、という感じではなく、駒が根源的に足りてないという印象。1年生の急成長と奮起に相当期待せざるを得ないか。

2月19日(土)のOhio State戦のハイライト
にしても、このブログでも再三述べて来ているが、本当にNCAA Div 1は(というか、Div 2/3、MCLAも含めて)この5年で間違い無く中堅校/下位校のレベルがぐんぐん上がり、どんどんcompetitiveになって来ている。ジュニア/高校レベルでの爆発的普及は間違い無く多くの大学に恩恵を与えている。10年前にはOhio Stateなんて「中西部のラクロス僻地の弱小チームだろ?」という感じだったのが、今やハードコアなcontenderになり、UNCを食ってしまう。上位校のコーチがよく「昔と違い、今のNCAA Div 1に消化試合/楽勝試合なんてもう存在しない。15試合全てがシーズンを変え得る。毎週全力でスカウティングし、準備しないとマジでやられる。厳しい時代になったよ」という話をしているが、正にそれを如実に表す結果だ。アメリカのラクロスは益々面白くなってきている。

2011年2月22日火曜日

NCAA 2011 Game Review vol.02 Duke-Notre Dame

待ちに待ったレギュラーシーズン公式戦の放映一発目。第三のInside Lacrosse主催の集客イベントとして今年から追加されたSunshine Classic in Jacksonville, Florida。注目のカードは昨年決勝の再戦、Notre Dame vs Duke。日曜にサクッと試合の録画を見たので、忘れないうちにQuick and dirtyで書き留めようと思う。全体を通して、2月のシーズン初期ならではのミスの多さや未完成さは見られたが、試合としては非常に面白く、十分に楽しめた。

各校のSeason previewは以下: DukeNotre Dame

結論から言うと、12-7でNotre Dameが雪辱。前半はお互い固さが目立ったが、2Q以降経験の差が思いっきり出た感じ。(ILのIn-game blog



全体を見てバクッと印象に残った事を箇条書きすると:

Notre Dameは、想像していたよりもいいチームになっていた。これは思っていたよりも強いかも。6位というPre season順位が全くおかしくないどころか、ガチで今年も行ける感じがして来た。
  • まず、最大の誤算は…守護神Scott Rodgersの後釜として、Too big shoes to fillと言われていた2年生Goalieの#1 John Kempが、無茶苦茶いいセーブを連発していた。去年はRodgersの陰に隠れて良く解らなかったが、もしかしたらかなりいいゴーリーなのかも...何と言っても、1 on 1やシュートに対するpoise/composure(落ち着き)が凄い。至近距離のからの怒濤のシュートを冷静に連続セーブする姿は正に去年の決勝のRodgersそのものだった。また、クリアやパスの技術もしっかりしている。
  • DFは相変わらず鬼。#35 RidgewayらClose DF陣が仁王軍団の様相。1 on 1でATから抜くのが相当厳しい。LSMの#50 Irving, Shorty DFも固い。組織/システムとしての完成度も相変わらず高い。Duke AT陣はほとんど攻められていなかった。
  • #28 Brenneman, #33 Earl以外のMFとAT陣が成長していた。去年のプレーオフを通して自信を付け、実際に上手くなっている。去年は「ザ・脇役」という感じで弱点呼ばわりされていたが、今年はDiv 1のスターターとして堂々とやれている。特にAT、Brenneman, Earl以外のMFから普通に1 on 1で攻められるようになってるのは強い。意味不明なミスもほとんど無くなっている。
  • そして、BrennemanとEarl、特にBrennemanが、去年から更に成長しており、正にMLL級の選手になりつつある。去年あった若干の「粗(あら)」の部分が確実に修正/洗練されて来ている。Quintは14年のTeam USAとして彼の名前を挙げていたが、今日のパフォーマンスを見て、シリアスにその可能性を感じた。
  • そういうのを全部ひっくるめて、チームとして一本太いロジックの通った、ラクロス全体の整合性が高い、且つmatureな(成熟した)いいチームという印象。Gに問題が無いとなると一気に話が変わって来る。
一方のDukeは評判通り、経験不足の才能ある若手軍団という感じ。
  • 思った以上に、でかくて、身体能力が高い。スティックスキルやシュートだけ切り出して見れば、やはりトップ校。日本の感覚で言うと、パッと見、体育大学/体育推薦入学軍団という感じ。
  • が、やはり単純に経験の無さが如実に感じられる。(主力が16人抜けたんだからそらそうだ。)
  • 特に文字通り全入れ替えのDFが明らかに只今模索中。基本的なコミュニケーションの部分から修正を重ねて行かないときつい。
  • 個人としても経験不足が露呈。パスミス/キャッチミスも多く、状況判断の間違いも多く、turn overが多い...クリアミスも。
  • Gの2年生 Wigrizerも、去年に引き続き、やはりちょっとセーブに不安を感じさせる。
  • 3年の#12 Justin Turri以外のMFが抜けない。Howell以外のATが攻められてない。(でもこれはちょっと相手がNDの強力DFなのでフェアに見られてないかも。)
Quintも指摘していたが、例年シーズン初期は結果が非常にバラつく傾向にあり、余りこの時期の勝敗は当てにならない面もあるので注意が必要とのこと。まあ、確かにそうだなと思う。去年のDukeも前半ボロボロだったし。

が、どうだろ。今年のDukeはやっぱりちょっと時間が掛かる気がする。相当伸びしろがある事は間違い無い。もちろんHC Danowskiもそれは百も承知でじっくり育ててくるはず。が、今年は経験を積む年、という感じになってしまうのかも知れない。今シーズンの後半、どこかで「おっ!」と思わせる試合をするだろうが、やはり本当のブレークスルーは今年の核となっている3年生が経験を積んで4年生になる来年以降か?

以下、個別のプレーや選手で印象に残った点

試合とは関係無いが、NDのCascade Pro 7のメットが去年までの(ダサいと不評だった)Riddellメットより明らかにカッコいい。そして、何と言ってもDukeのWarrior TIIメット。青地に大きめに白のカッティングを入れている。カッコいい。ユニフォームに合わせると思った以上にシャープで、いい。

Quint曰く、2月の最初の1ヶ月はどのチームもしょぼいパスミス、キャッチミスがあり、ターンオーバーが多いもの。従って、去年のプレーオフの感覚からすると両チームちょっとsloppy(凡ミスが多い)に見える。また、特にシーズン後半、プレーオフに明確にPeakingを持って来るためにシーズン前半はある程度じっくりと土台固めに使う考え方が強いDanowskiは、敢えて多くのメンバーを出場させている。

BrennemanのEMO中にパスを二つスキップしたことに対するQuintのコメントが印象的だった。「MFでプロ/代表レベルで活躍出来るようになるには、普通にパスを回せるだけではダメで、敢えてこうやってスキップしたり、セオリーを越えた所にリスクを取ってパスを出す事でオフェンスをクリエートする視野と技術が必要になって来る。Brennemanは正にそれを昨シーズンから今シーズンに掛けて出来るようになりつつある。」

ND #33 MF David Earlの2-way middie(O/D両方やる)としての能力、そしてクリアの能力、ブレークを生める機動力(ある意味Syracuse 09のMatt Abbottの機能か)。大車輪の活躍。NDにとって彼の存在が非常に大きい。Quintも指摘しているが、昨年の決勝のスローペースの試合の印象があまりにも強いが、実はその前3試合を見れば解る通り、実はNDはスローのセットOFと、ブレークでの得点という両極端な二つのペースを使い分けるチーム。準決勝までは得点の多くをブレークから稼いでいる。後者を発生させる鍵となる選手。やはり彼の様にO/D/Transition/GB全てに於いて頼りになるMFというのが本道なんだなと改めて思わせられる。特にMLLではそれは大きなedge(強み/差別化)になってくる。

後半以降、ND #28 Zack BrennemanがMLL 5位指名の名に恥じない活躍を見せる。
  • まずは、3Q 7点目。得意技、Long pole相手にNorth southダッジからのoff handの右手でのキャノン砲のランニングショットをドゴーン!とぶち込む。ぶほっと吹いた。
  • 逆に8点目は利き手の左。
  • 更に9点目を生んだのは、同じく左に直線的に抜き、警戒して早めに来たスライドを冷静に見て、ゴール横のATに縦にフィード。やばい。成長してる。間違い無く。
  • 10点目も左からMLLの2 point shotに近い距離から三たび長距離running shotを突き刺す。もう笑うしか無い。鬼だ。この人。Long poleでも関係無い。右からでも左からでも極めて危険なシュートを繰り出して来る。かと言って早いスライドを飛ばせば、よく見て空いた選手にフィードしてくる...
  • ん?このパターンどっかで聴いた事あるぞ...そう。Paul Rabilですね。Shamel Brattonも凄いが、サイズ、左右両方で点を取れる徹底度合い、器用さ、弱点を確実に潰して強みにしてくる学習力/成長力を考えると、もしかしたら数年後に本当に凄い選手になってるのはBrattonよりもむしろBrennemanの方かも、という気ぃすらして来た。Off handのシュート、ダッジ、去年からの修正幅を考えると、間違い無く物凄い量の個人練習を積んでる人だと思う。RabilやStriebelの例からも解る通り、長期的に見ると実はその要素が一番効く世界なので。

DukeのエースAT #21 Zack Howellも、やはり去年ほど伸び伸びとプレー出来ておらず、点を取れていない。一部のコーチは、「あくまで(去年のエースAT)Crotty/Quinzaniがいたから点を取れてただけだ。システムが生んだプロダクトだ。」と低く評価し、一方で何人かのコーチは「去年はCrotty/Quinzaniの脇役で目立たなかったけど、いやいや、実は何でも出来る危険なATだ」と言ってると言う。今日の試合を見る限り、残念ながらCrotty/Quinzaniの穴を生める程の活躍は感じさせなかった。まあ、もちろん相手がRidgewayでかなりタイトに付かれてたのでちょっと客観的な判断が出来ないが。

Duke #12 MF 3年Justin Turri 6点目のTime and room shot(アウトサイドショット)。相変わらずのスムーズで素早いリリースからのレーザービーム。Quintがヒップと体幹の使い方の巧さを指摘していた。シュートフォームを学ぶ上ではいい教材。3年生ではNCAA最高のMFとのこと。という事は来年1月のMLLドラフトの注目選手。

2011年2月21日月曜日

NCAA 2011 Season Preview #4 Cornell

今週末はビール飲みながら奥さんと犬とまったりNBA All Starをテレビで観戦。Slam Dunk Contestでは先日の記事でもちょっと触れたLA Clippersの次世代ヒーローBlake Griffinがその身体能力を遺憾なく発揮し堂々の優勝。個人的には一発目の360が一番カッコいいと思う。最後の車を飛び越えてはファン投票のルールとファンの心理をよーく理解した上でのプレゼンテーションとして非常に賢く、クリエイティブな選択。にしても、でかい(高いだけじゃなく分厚い)上に、飛べるし走れるし、超ボディコントロール/ボディバランスいいし、器用。これは多分これから彼が10年掛けて築いていく伝説の1ページ目という感じなんだろう。

ちなみに、その前に行われたLive eventは、開催地LAらしく、地元Korean Town出身のFar East MovementによるRocketeer。Far East Movementは日系/中国系/韓国系American達の混成チーム。去年のLike A G6辺りからよく耳にするようになった。この曲自体は所謂(別に悪い意味じゃなく)チャラいelectroどポップだが、何故か物凄い耳に残った。LyricsにはTokyoとかスーマリとか出て来るし、見た目は日本人/韓国人/中国人だし、 非常に印象に残った。

America's Best Dance Crewなどで一気に知名度を高めたJabbawockeezなどもそうだが、アメリカでガチの実力でこうやって評価/尊敬されるアジア人を目にする機会が時々あり、自分も頑張ろっと。と思わされる。



#4 Cornell

去年まで、現NCAAベストコーチとも言われるJeff Tambroniの下、4年間で3度のFinal 4進出を果たして来たCornell。特に去年は大黒柱でキャプテンでTewaaraton (MVP)のMax Seibaldが抜け、下級生中心で経験不足が不安視される中、レギュラーシーズンでも中位校に星を取りこぼしながらも、シーズン後半に掛けピーキングし、準々決勝では組み合わせにも恵まれ(ArmyがSyracuseを食ってくれた)、準決勝まで進出。特にDFとGはほぼ全員一年生という状況でそれを成し遂げている。(Tambroniのコーチとしての凄さについての去年の記事

今年も去年の主力メンバーの多くが残り、結構期待出来るようにも見えるが、最大の変更は、コーチTambroniのPenn Stateへの移籍。アシスタントコーチから昇格した新コーチBen DeLucaの下、Tambroniの突出した指導力と戦術眼抜きでどこまで行けるか。DeLucaはcoach Petro, Tambroniと、二人の偉大なコーチの元でアシスタントを勤めて来た。選手のインタビューを聴く限り、リーダーシップ/指導力にも優れている方らしい。今後のCornellが彼の下でどうなっていくか興味深い。

(Tambroniの移籍の背景、彼が抱えていたであろうリクルーティングでの、Ivy League校という学問名門校ならではのチャレンジに関しては去年の記事をご参照。体育推薦枠/体育学部や一芸入試が使えず、入学試験がセレクティブで、加えて入学後の学業面での負担も重いというハンデを抱えながら、限られたタレントで努力/工夫しながら勝とうとする点に於いては、東大に似ている部分もあり、PrincetonやCornellには何となく共感を感じてしまう。そして、であるが故にSyracuseやVirginia以上にチームとして見て学ぶ点が多いとも感じる。)

チーム名はBig Red。マスコットは熊(Wiki)。

チームRosterのページ(リンク

ちなみに今年1月のMLLドラフトで48人の枠に指名された4年生はゼロ。主力のほとんどが3年生以下というのもあるが、Princetonの一人と合わせ、やはりIvy Leagueの素材の限界を表している。

Quint Kessenichの分析(リンク

  • 自分たちの強み弱みを冷静に理解した上で、確固たる戦術/システムを持ってプレーし、且つ全力を出し切るという点では最強。
  • 加えて、与えられた選手の素材を4年間で最大限に育成し、最大限に使い尽くす。入学時点ではさして注目されていなかった1年生が4年生でAll Americanになるような育成力を持つ。
  • SOS(Strength of schedule)がきつい。強豪校とアウェイで多く対戦。
  • 個人的に生で彼らを見る機会があったが、去年一年を通しての成長に驚かされた。
  • OFは引き続き強く、DFも去年より改善しているはず。ただ、主力以外の脇役選手(role player)に不安がある。
  • エースは何と言っても去年 2年生でBest AT賞を受賞している#3 Rob Pannell。シーズン29得点もさることながら、51アシストというのが突出した数字。スピードがある上、DFにとっては嫌ーな、ジグザグのダッジ、Re-dodge(一回止められてもステップバックして隙を見てまたダッジしてくる)でゴリゴリ抜いて来る。He's got eyes on the back of his head(後頭部に目がある)のようにいつでもどこでもオープンな見方を見つけて正確なフィードを入れて来る。周りの選手、特にカット出来る選手にとっては最高の味方。(ちなみに、そんなPannellも、高校では遅咲きで、Cornell入学前に一年浪人を経験している苦労人。)
  • 2年のAT #6 Steve Mockは去年一年生で活躍。今年も相当点を取ってくるはず。
  • MFは、まあ、オッケー。
  • DFは去年と同じかちょいいいはず。組織で守るチームDFの教科書。スライドのタイミング、スライドに行くべき局面と行くべきじゃない局面の判断、2枚目3枚目のスライド、相互のカバー、全てに於いて完成度が極めて高い。
  • 去年1年生でケイジを守ったGの#47 AJ Fioreは去年素晴らしいセーブをいくつも見せたが、同時にしょぼいシュートを許すという不安定さがあった。今年はある程度修正されてsave %も上がって来るはず。
さて、コーチTambroni不在の穴をどこまで埋められるか。先日のESPN Expertsでの議論では、基本的にシステムや戦術そのものはチームに残っているので、大きな影響は無いという意見が多かった。Rob Pannellは更にリーダーとして成長し、オフェンスではほぼ選手兼OFコーチのようにリーダーシップを発揮していると言う。

個人的には、与えられた素材に比した伸び率と達成度では、NCAA最強だと思うチーム。ただ、これだけ高校までのジュニアレベルのラクロスが成熟し、優秀な選手を争奪するリクルーティングが勝負の最大のドライバーになってしまった今となっては、恐らく今後Cornell/Princetonが優勝候補筆頭としてトップレベルに再浮上するのは相当難しいんじゃないかと見ている。正にMax SeibaldとJohn Glynnの09年が最後のチャンスだったんじゃないだろうか。(なので、その貴重な優勝のチャンスをあと一歩の所まで迫りながら最後に逆転で失ったTambroniの悔しさは想像に難くない。そして、であるが故に、TierneyはPrincetonを去りDenverに行き、TambroniはCornellからPenn Stateに行き、TillmanもHarvardからMarylandに行ったという面もあるんだろうし。)

今年は3月12日にBaltimoreで行われるInside Lacrosse主催の集客イベントその2、Konica Minolta Face Off ClassicでVirginiaとの対戦を会場で観戦予定。楽しみ。

2011年2月20日日曜日

NCAA 2011 Season Preview #5 Duke

Quick update

開幕2週目。OnlineでJHUの試合とUNCの試合を観戦。早速、恐れいていたupset(番狂わせ)が。Pre seasonで3位にランクされながらも相次ぐMF/LSMFの怪我で1年生依存度が高くなり、初戦もRobert Morrisに辛勝と、かなり雲行きが怪しくなっていたNorth Carolinaが、中西部の新興校Ohio Stateに13-8でUpsetをくらった。試合を見ていた感じ、①Ohio Stateがそこそこ強い。特に去年のUnder Armour All America(高校オールスター)で目立っていた1年生軍団と、Canadian達が結構やる。②UNCが、かなり、しんどい。ぶっちゃけ。思った以上に厳しい。Billy Bitterに相手のエースDFが付いて早めスライドされると、MFが薄過ぎて一気に攻め手が無くなる。Bitterも頑張っているが、やはり怪我をする前の09年シーズン程の爆発力を感じない(MLLでやっていけるのか?)...Gも弱い上、致命的な事にクリアの成功率が低く、turn overが多過ぎる...結構UNCはきついシーズンになるかも、という気がして来た。やっぱり強い上級生が一握りしかいないと、どうしても苦しくなる。大事です、穴の無い強さと層の厚さ。

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#5 Duke

さて、去年の優勝校。Defending Champion。Duke Blue Devils。僕は個人的にこの5位という順位は間違い無くoverratedだと思う。本来は10位前後じゃないかと。(Quintも同様の指摘をしている)

Rape scandal(冤罪)による出場停止の1年を経験した最後の代、Ned CrottyやMax Quinzaniら率いる5年生と4年生合わせて16人もが卒業。得点源の6割、Close DF 3枚に加え、多くの主力選手をごっそり失う。ほぼ全員が新人/去年までの脇役という布陣で挑む。例え才能ある選手を多く抱え、現NCAA Div 1最高のコーチの一人であるJohn Danowskiと言えども、さすがに大きな後退は避けられないと見ている。但し、身体能力の高い、才能ある下級生が多く、彼らが今年経験を積む。来年、再来年再び優勝争いの舞台に戻って来る可能性は十分にある。

MLLドラフト指名選手(リンク

MLLで指名を受けた4年生は2人。しかも結構下位。やはりCuse, UVA, Marylandに比べると4年生の厚さが圧倒的に落ちる。
  • 26位 Rochester Rattlers: #11 Tom Montelli LSM
  • 46位 Boston Cannons: #21 Zack Howell A
Rosterのリンク

Mark Dixonの解説(リンク

  • 今年のOFを率いるのはAT #21 Zack Howell。去年まではQuinzani/Crottyがガンガンに崩してパスしてくれたので、フィニッシャーとして機能していた。見た感じやろうと思えば自分でもガンガン抜ける力はある。オフェンス全体をクリエイト出来るか。
  • 1年生では、去年DVDを送った高校All Star、Under Armour All Americanでも最も目立っていた#31 Jordan WolfがMax Quinzaniの後を継ぐと言われている。すばしっこさで勝負するスタイルは正に。
  • MFでは去年play offで結構点を取っていた3年#12 Justin Turri。
  • DFは3人入れ替え。LSMでFinalの延長で決勝点を決めた CJ Costabile。
  • Gは1年生で優勝を経験した#4 G Dan Wigrizerが恐らくシーズンを通して先発するはず。
以上。なるほど、ここまで聴きながらメモって、確信したが...明らかに、スター不在。

John Danowskiインタビュー(リンク

先日US Lacrosse MagazineのPodcastでDanowski(父)のインタビューがあったので紹介。これまでいろんなインタビューや記事で彼の言葉に触れる中で、本当に傑出した人物、素晴らしいコーチであることを強く感じさせる。
  • 心の存在と、その心が持つ重要さを心底理解し、それをしっかり強く、しなやかに、ポジティブに育てて行くことを重んじている。
  • 選手一人一人に個別に誠実に接し、一人一人の個性と人格を尊重し、acknowledgeし、respect/appreciateし、支援することで、個々人の才能を最大限に伸ばし、後の人生にもポジティブな影響を与える。
  • 練習でも、選手たちの自主性を重んじ、彼らと相談しながら、一緒になって考えながら作って行く。
  • あくまで大学4年間は教育と人格形成の場。勝てば/優勝すれば終わり・ラクロスだけしてればいいという訳ではない。しっかり学問も、スポーツ以外もしっかりやるのが本道という考え方。
  • 多くの選手や卒業生が彼に心からの感謝と尊敬の言葉を惜しみ無く捧げ、多くの選手の父兄が「彼の下になら息子を送って4年間を送らせたいと心底思う」と言うのにも頷ける。
今回のインタビューを聴く中でいくつか印象に残ったのは以下の点。
  • 06年のレイプスキャンダル(冤罪)を経験した最後の世代が卒業し、やっとそのネガティブな見られ方から解放される年。
  • 明確に、スター不在。突出した個はいない。言うなれば、全員一丸で、Committeeとしてプレーするスタイル。
  • でも、逆にいい点は、皆それを解っている点。1日目から、「去年の優勝チームはもう過去の話。俺たちは完全に別のチームで、これはまたゼロからの挑戦」と、Hang over(二日酔い)ゼロで奢り無く、躊躇無く切り替えられた。(ポジティブだ。)
  • 今年のチームは、athleticism(身体能力)は過去最も高い。また、最も均質。レベルのバラつきが小さい。「そこそこ」の選手が無数にいる。ただ明確に弱みは経験値。
  • また、インタビューの中で、秋の間のウェイトトレーニングの実績やそこでの取り組み、成長を事細かに選手ごとに覚えており、それを名指しで数字を上げて褒めているシーンが非常に印象的だった。一つはそこまでウェイトトレーニング/フィジカルを重視しているという点、もう一つはそこまで個別に選手のことを良く見て、成長を褒めて上げている点。ここで名前を挙げられた選手は間違い無く大きなセルフイメージとセルフコンセプトを手にし、より大きく成長しようと頑張るはず。ちなみに、小柄な(175cm/77kg)Jordan Wolfのベンチプレスは、入学したての1年生で既に250lbs(115kg)と言っていた。なかなかインプレッシブ。
  • DukeはアカデミックのチャレンジがACCの中でも高く、高校時代にいい成績をより長い期間取り続ける必要があり、リクルーティングの難しさが若干ある。
  • 今年もHarvardから一人来ているように、毎年1-2人Ivy Leagueからのトランスファーがいる。Ivy Leagueから来る選手達に共通するのは、当然学問的に賢い事、そして、わざわざIvy Leagueの名門校からラクロスのためにDukeに来るという選択をするだけあって、ラクロスに懸ける熱さが尋常じゃない。(こうやって他校から志願して彼の下でやりたいからと転校してくる選手が多いのもDukeの特徴。これもJohn Danowskiのコーチとしての実力と人徳の為せる業だろう。)
「学年の波」のマネジ

さて、タレントが密集した上級生がごそっと抜けた後のリバウンドの年。どうマネジするのか。そこだけを見れば、ある意味今年の東大に状況が似ていると感じる。

学年の波をどうマネジするのかはラクロスに限らず全ての大学スポーツに共通するチャレンジだろう。サステイナブルに毎年勝ち続けるのは簡単ではない。強い塊の世代があれば強いが、その下が経験不足になる。逆にタレント不足で低迷を続ければ、強くて数の多い下級生が入れば経験を積め、数年後にブレークするきっかけにもなる。強くて太い人材のパイプラインを毎年維持し続け、下級生時代に確実にモチベートし、育成し、試合経験を積ませる仕組みを組織として如何に作り込むかの勝負になる。ここを環境や運に預けてしまっては、「たまたま優秀な素材が集まったら勝てるけど、そうじゃない年はパッとしない」という、典型的な中堅校のトラックレコードに陥ってしまう。如何に意思を込めて人為的に「常勝」を作り込むかのゲーム。

(その好循環に乗れているのは、やはりSyracuseだろうか。毎年確実に有能な選手を塊で抑え、加えて上級生でのトランスファー(転校)も集まって来る。築き上げたブランドと立地(CanadaとUpper state NY、Long Islandへのアクセス。若干昔の石油等の天然資源争奪戦のGeopolitics/地政学を連想させる...)も影響している。今年の1年生レベルのパイプラインを維持出来ればNorth Carolinaもそうなって来るかも知れない。TambroniのPenn Stateも近くそうなるだろう。逆にその常勝サイクルが回らなくなっているのがHopkinsとIvy League。)

去年、同じく全米制覇を成し遂げたDukeのバスケ部は、今年何人かの主力が抜けたにも関わらず、残った下級生と強い新人のパイプラインにより、今年も再び優勝を狙えるポジションにいる。現NCAAバスケ最高のコーチ、US代表も率いるCoach KことMike Krzyzewski [マイク=シャシェフスキー]の名コーチたる所以だろう。Coach Danowskiには、この劣勢と、「今年はダメっしょ」と言う世間の見方を跳ね返せるだけの「何か」を感じる。去年だってプレーオフであれだけ無敵だったDukeも、シーズン前半はボロボロだったが、シーズンを通して成長し、ビタッとプレーオフにピークを持って来た(逆にUNCは前半独走、後半消耗して一気に失速)。個人的にシーズンを通して見守りつつ、応援させて頂きたい。今年は4月3日にNYで行われる集客試合イベント、Konica Minolta Big City ClassicでDuke-Syracuse戦を会場で観戦予定。今から楽しみだ。

個人的な見立て

個人的な予想は...まず、大前提として、ぶっちゃけ一番読めない。今年のDukeは。余りにも去年試合に出てたメンバーが少な過ぎて。Ned CrottyもDanowskiコーチも、「素材は物凄い揃ってる」と言う。ある程度本当なんだろう。でも自分のチームだし、当然バイアス掛かってるはず。

シーズン当初は多少ぎくしゃくしながらも何とか乗り切りつつ、後半に能力は高いが経験不足の若いメンバーが経験を積んでグッと強くなる。一方で、やはりCuse, UVA, MDの壁は崩せず、プレーオフは進出するも、2回戦で上記3チーム辺りと当たり、Best 8で消え、今年はMemorial Day Weekend (Final 4)には進出出来ない、というパターンじゃないかと。但し、来年再来年はまたSerious contenderになってくると。

今年の一発目、明日20日に行われる去年の決勝の再戦、Notre Dame戦が大きな試金石になってくる。もし本当に凄い選手達が、たまたま去年偉大な4, 5年生の陰に隠れて見えてなかっただけで、実はまるまるもう一チーム分の優勝候補校の選手が隠れてました、なんて事が判明したら、一気に勢力図が変わって来る。

2011年2月18日金曜日

NCAA 2011 Season Preview #6 Maryland

6位Maryland

やはりこの辺から一気に重量感というか迫力が出て来る。優勝の2文字を感じさせてくれる強豪という感じ。AT3枚を中心に、大量のタレントを抱える学年が遂に4年生に。昨年も優勝候補の一角と目されながら、Quarter FinalでNotre Dameに僅か5得点に抑えられ、ベスト8で敗退。直後に8年Marylandを率いて来たHCのDave Cottle解任が告げられた。(Dave Cottleはその後NCAA Div 1への新規参入が決定したMarquetteのconsultant/advisor、そしてMLL Chesapeake BayhawksのPresidentに就任した。)

新コーチはHarvardを率いていたJohn Tillman。コーチが新しくなると、戦術の違い等から上手く行かなくなることもあれば(去年Bill Tierneyが去った後のPrincetonもその気があった)、これまで培っていたものが新たなリーダーシップの下一年目から花開くこともある(逆にTierneyが新しく指揮を取った去年のDenverがいい例)。

毎年複数人のMLL選手を輩出し、代表クラスの選手もちらほら出している。特にDefenderは堅くてアグレッシブな大型athletic DFが多いイメージ。

期待されながらも3年間涙を飲んで来てきた4年生、今年こそは悲願の優勝を遂げられるか。

ちなみにチーム名はTerrapins(ダイヤモンドバックテラピン:亀)、略してTerps。

相当どうでもいいトリビアだが、2000年前後からラクロスでも流行り始め、今や完全に定着したUnder Armourは、元Maryland Footballの卒業生が作った会社。故にUAとの縁が深い。ユニフォームもUA。

MLLドラフト指名選手(リンク

MLLドラフトでは48人の枠のうち、Syracuseの7人に次いで多い5人が指名。
  • 12. Boston Cannons : #37 Brian Farrell, D, Maryland
  • 15. Denver Outlaws: #44 Brett Schmidt, D, Maryland
  • 19. Hamilton Nationals: #4 Dan Burns, M, Maryland
  • 21. Denver Outlaws: #1 Grant Catalino, A, Maryland
  • 23. Long Island Lizards: #27 Ryan Young, A, Maryland
ちなみに、NCAAではより話題に上る事の多いAT二人よりも、LSM, DF, DFMFが先に指名されている点がMLLドラフトの力学を表していて非常に面白い。ATは技術ヘビーで選手生命が長く、チームの軸として長くやる必要があるため、スポットが少なく、上位指名はごく一部の超有望株に限られる。一方でDやLSM、特にversatileでphysicalなMFはある程度消耗品としてガンガンいい選手のパイプラインを大量に持ち続けていないと苦しくなるという仕組み。

Quintの解説(リンク

  • Quintは個人的に6位よりは上だと見ている。去年のリーグ戦での実績、メンバーのほとんどが残っていることを考えると。
  • 特に#1 Grant Catalino, #27 Ryan Young, #2 Travis Reedの4年生ATトリオは何年前からいるんだってぐらいずっとMDの主力を張り続けて来た。
  • Catalinoは去年のDVD見た方は記憶に残っていると思うが、ウィングからのシュートの貰ってから撃つまでの早さ/速さと正確さが半端無し。ガキの頃から家のbackyardでボール100個バケツに入れて毎日延々シュートを打ち続けて来ただけある。でかい(196cm/100kg)割にかなり動ける。夏にはカナダでインドアリーグに参戦していたとインタビューで語っていた。更に一段上のスティックスキルとスピード感、ラクロスIQを身に付けて帰って来る。
  • Youngは司令塔。Quint曰く、もっと自分から抜けて点を取れると強いと。
  • ATの層が厚く、恐らく4枚目以降のATをガンガンOFMDで使ってくるはず。特に#19 OFMF 3年 Joe Cummingsが去年から効果的に点を取り目立っていた
  • DFはほとんどのメンバーが去年から残る
  • 注目はHamilton Nationalsに19位で指名されているDF MFの#4 Dan Burns。Team USAとの試合でPaul Rabilがそのスピードとカバーの速さにimpressされたと。
  • LSM #37 Brian Farrellは明らかに去年から目立っていた。でかくて機動力があり、オフェンス力高し。
ちなみに、去年OFMFで出て目立っていた超大型(198cm/120kg)MFの#23の4年Will Yeatmanは、年始に既に閉幕したfootballのタイトエンドとしても活躍。現時点でNFLのドラフトで指名されるか否かの瀬戸際と言われており、NFLのキャリアの可能性に懸けるため、残りの期間はラクロスをやらずにfootballのトレーニングに集中するらしい。(ILの記事のリンク)スティックスキル等がトップレベルだったとは言えなかったが、ボールを持って突っ込み/リーンして、鬼シュートを叩き込むという点で強力な戦力だった。

HC John Tillman Interview(リンク

  • 伝統の強豪校でコーチを出来るという栄誉に与れて嬉しい。
  • 経験と実力のある選手がたくさんいる状況なので助かる。
  • やはりある程度チームとして出来上がっているので、あまり変え過ぎず、これまであったものを如何に生かすかがコーチとしてのチャレンジ
  • Brian Farrellのリーダーとしての資質、賢さを挙げていた。
チームウェブサイトでのシーズンプレビュー(リンク)。相当来合い入ってる。20分と長いが相当がっつり選手達の声を聴ける。ダイハードMarylandファンの方は是非チェックしてみて下さいな。

個人的には、今年のMarylandは結構来るんじゃないかという気がする。去年NDに負けたことで、相当雪辱に燃えているはず。いくらコーチが変わるとは言え、主力選手達は過去に3年間一緒にやって来てる訳だし。Championship Weekend (Final 4)には出て来るような気がする。後は、Syracuse、Virginiaの双璧をどこまで攻略出来るか。このチームがMemorial Day Weekendの最後に優勝トロフィーを掲げる絵を想像しても正直そんなに違和感を感じない。

2011年2月16日水曜日

NCAA 2011 Season Preview #7 Notre Dame

さて、先週末からついにシーズンが少しずつ開幕。Delawareを皮切りに、DukeやUNCなどいくつかの上位チームが先行して開幕した。今週末から本格的に全チームがリーグ戦に入っていく。怪我により多くのメンバーを失い早くもQuintから10位圏外の評価を受けているUNCは、全米No.1 Rookie AT Nicky Galassoが4得点と活躍するも、中堅校のRobert Morrisに14-11で辛勝。先が思いやられる船出となった。頼れるMF不在なのがきつい。もしBitter始め他の主力が怪我で倒れたら本格的にやばくなりそう(ILの記事)。

また一方で、記事やファンからの書き込みで指摘があるように、対戦相手のRMUが意外と強いという話もある。HofstraやStony Brook、Lafayetteなども正にそうだが、高校レベルでのラクロスの裾野がこの10年で約3倍と爆発的に広がったことにより、これまで有望な選手を独占していた上位校から溢れたかなり高いクオリティの選手が中堅レベルの学校やDiv 2/3の学校にカスケードしていくという現象が顕著になり、ここ数年で10~20位前後にいる学校のレベルがグッと上がってきている。特にここ10年で10倍に増えているCanadian NCAA選手の影響が非常に大きい。RMUにも複数の有力Canuck選手が在籍している。たった数人のCanuckが入るだけで30位のチームが5-10位のチームを食い得る爆発力を身に付けてしまう。その辺もまた競争の力学の変化として興味深く、NCAA lacrosseの一つの見所でもある。

シーズンを通して随時アップデートされるInside LacrosseのNCAA Div 1の試合日程と結果はこちら、Media/coach poll/rankingはこちら

#7 Notre Dame Fighting Irish

さて、昨年の最大の台風の目。去年国際親善で来日しているのと、梅ちゃんを始め家に選手をステイさせていた選手/スタッフも多いと聞いているので、特に親近感があるんじゃないかと想像する。中西部Indianaに位置するアメフト/バスケ等スポーツの伝統的名門校。「闘うアイルランド人」。(去年の夏までいたSanta Barbaraで教えて貰っていたゴルフのコーチの弟さんが丁度NDの体育会Golf部に入部した。Californiaのジュニアではそこそこ有名な選手だったらしく、今後の活躍を祈りつつ応援したい。)

超保守的で手堅いDFと守護神Scott Rodgersの活躍により、プレーオフ出場ギリギリの所から一気に決勝まで駆け上がり、決勝も延長一点差というギリギリの所まで迫った。Rodgersが卒業し、大きなダウングレードが生じるが、それ以外はほとんどのメンバーが残り、特にMFの二枚目以降、ATは去年のプレーオフから秋の練習に掛けての成長が著しいと言われている。普通に行けばトーナメント進出くらいは行けるはず。Gが機能すれば、また今年も結構いい線行く可能性。

DFの堅さは間違い無い。去年のプレーオフを通して、AT出身の僕ですら感動を覚えた。DF/Gの選手が見て学ぶものが多いチームのはず。クリース前を鬼パックし、統制の取れたチームディフェンスで、危険な場所からのシュートをほとんど打たせない。で、外から/薄い角度から無理矢理打たせて、鉄壁ゴーリーのRodgersが確実に仕留める、というスタイルで並みいる強豪を次々と沈黙させた。(去年のPlayoff 4試合の失点を見ると、Princeton 5点、Maryland 5点、Cornell 7点、Duke 6点と、トップクラスの攻撃力を持つ上位校をことごとく衝撃的なレベルの失点に抑え続けている。ここまで抑えられれば、よっぽどの事が無けりゃそりゃ負けないわ...)

一方で、スローペースで保守的な試合運びに対し、多くのファンが不満/批判を口にし、ショットクロック導入の議論に油を注いだ(スポーツとしてのラクロスの今後の方向性に関する前回の記事)。ちなみに個人的には、ショットクロック導入はもはや時間の問題だと見ている。今後数年で試験的導入が始まり、5-6年のスパンで導入されてくるんじゃないかと。NLL/MLLの試合の展開の速さと面白さを体感すると、どう理屈で考えても導入するべきとしか思えない。

MLLドラフトでは正に今年のNDの可能性を示すべく、何とSyracuseの7人に次ぎ、Marylandと並ぶ5人が選出。去年のプレーオフ、特に全国ネットで放映されたDukeとの決勝でのインパクトが強く、若干評価がインフレしている感は否めないが、それでも尚、DF/MにMLL級の選手が複数人ずついるということ。プレシーズン7位という評価も頷ける。2週間前のUS代表との試合では、比較的しっかりした試合を見せていた。

これまで中西部のパッとしないチームという事で、いまいち実力に見合った評価を得ていなかった面もあるが、去年の躍進で一気にリスペクトを受けることになった。(ちなみにその辺の「正当な評価を得てこなかった」歴史と理由については去年の記事を参照。スーパーどうでもいいが、懸案のメットもCascade Pro 7に修正され、ビジュアル的にも洗練された。)

(当たるかどうかは一切無視して、個人的な予想を言うと、この7位という順位はちょっとoverratedな気がする。恐らく今年も勝ったり負けたりで場合によっては10位前後に落ち着き、プレーオフにはギリギリ進出、1-2回戦で結構早めに負けると見ている。確かにDは強いし、MLL MFも2枚いる。でも、一歩ステップバックして冷静に考えると、やはりGはRodgersじゃない。彼の抜けた大きな大きな穴を埋めるのはほとんど不可能だ。そして、ATと他のMFが強豪校からは明らかに一段落ちる。去年だってRodgersがいなければそもそもプレーオフに出られてなかったし、プレーオフでのupset三連発も起こらなかった訳で。最悪リーグ戦敗退という結果になっても正直驚かない。)

Mark Dixonの解説(リンク

  • 冒頭のMark Dixonのコメント、"Cliche goes offense wins games and defense wins championships"(Cliche [クリーシェイ] /格言曰く「オフェンスで試合に勝つ事は出来る、でもディフェンスが無ければ優勝は出来ない」)が非常に印象的。正に真理を表している。多くのNCAAのHCがDefenseからチームをビルドアップする事の必要性を口にしている。
  • Dは相当鬼固い。Syracuseに次いで、全米No.2のDFを誇る。
  • GでRodgersの後がまの2年生John Kempがどこまでやれるか。(数週間前のTeam USAでの試合では、前半こそ得点を許したが、全体を通し、最高峰の選手達のシュートを比較的落ち着いて止めていた。)
  • #50 4年 LSM Andrew Irving (33位: Denver Outlaws)は小さい(175cm)が機動力があり走れる。(Team USAとの試合では強いMFを抑え、GBも着実に拾い、ブレイクも発生させ、最も高い評価を受けていた)
  • Close defenseは2枚の強力DF。去年はNo.1 DFと言われながら怪我で試合に出ていない#32 Sam Barnes (190cm, 29位: Long Island Lizards)、去年Cornell Rob PannellやDuke Ned Crottyを封殺してその名を轟かせた#35 Kevin Ridgeway (198cm: 18位: Hamilton Nationals)。でかくて、DFの基本姿勢がしっかりしてる立ち姿が二人ともえれえカッコいい。というか、見るからにDFが超堅そう。こんなん2枚いたら相当泣きそうになる。(しかし、去年は大黒柱のBarnes抜きであの堅いDFだったということ...いかに強力なdefenderのパイプラインを確保出来ているかを物語る)
  • 二人ともチェックでボールを奪えるだけじゃなく、ポジショニングも素晴らしい。
  • OFは何と言ってもMFの2枚。#28 Zack Brenneman (190cm/100kg, 5位: Long Island Lizards)。決勝でのNorth-south dodgeでぶち抜いて、ゴールを吹き飛ばさんばかりの鬼シュートをぶち込んでいたのが記憶に新しい。本ハイライトでもクリアで相手をペシャッと潰すダッジ(?)を見せている。相手Dとしては相当厄介。
  • #33 David Earl (13位: Hamilton Nationals)も何でもやりつつ得点源。

HC Kevin Corriganインタビュー(リンク
  • 毎年恐ろしく堅実なDFを作って来る事で有名。Gとタフで手堅いDFの選手を毎年確実にリクルートする能力にも定評あり。
  • 彼も言っているが、多くのコーチが「チーム作りはDFからbuildする」という言い方をする。
  • 「DFはほとんどのメンバーが残っているので頼もしい。」
  • 「プレッシャーは無くはないが、まあ、これは大学スポーツなので、去年上手く行ったって事は何も意味しない。NBAのように去年のメンバーがほとんど残るゲームじゃない。基本的には主力は卒業し、若い奴らが入って来て、雰囲気も含めて毎年全く新しいチームとして振り出しからスタートするというゲーム。なので、去年準優勝したからってプレッシャーを感じるってのは無い。全く新しいチームによる全く新しい挑戦なので。
Brennemanインタビュー

また、今月号のInside Lacrosseのインタビュー記事でのBrennemanのコメントが印象的だった。「去年のDukeとの決勝に関して、ロースコアな展開を指して『NCAA史上最もつまらない決勝だった』と言う人がいるけど、俺から言わせるとそれはラクロスの事を本当に解ってない人のコメントだ。」と。これは己の強みと弱みを解った上で、本当に強い意思と自信、そして実力が伴っていないと言えない言葉だ。正直痺れた。Defensiveで保守的な試合を否定するなら、アグレッシブで攻撃的なラクロスでそれをねじ伏せてからにしろ、という強い覚悟と断固たる決意。

エンターテインメントとしてのラクロスの振興、好き嫌いや、興行/ビジネスとしての成功を無視して、勝敗のみを見れば、はっきり言って正論だ。去年に関して言えば、Notre Dameのラクロスを批判することを許されるのは、唯一、決勝で勝ったDukeだけという事だろう。「文句があるなら勝ってからにしろや」と。個人的に、その揺らがなさは大好きだ。

2005年前後に(まだ日本の格闘技が元気だった頃の)PRIDE武士道時代のウェルター級で超玄人受けする闘い方(所謂「弱者の戦略」)で確実に判定勝ちを重ねて行った、全盛期の郷野聡寛選手の言葉を思い出した。当時毎回欠かさずobsessiveに有明コロシアムや名古屋レインボーホールのリングサイドで武士道を見ていた僕は、素人ながら、彼の試合は無茶苦茶スタイルが出てて美しいと感じた。才能や腕力で勝てないなら、頭を使って、勝てる戦い方をすればいい。それも一つの真っ向勝負の形だと思う。

(激しく脱線するが…)にしてもしかし、未だにこのPRIDE武士道の煽りVの和太鼓の音を聴くとアドレナリンがドクンッと溢れて来るのが解る...「総合格闘技は万人受けはしない。地上波には向かない。数十万人のコアなファンに深く鋭く刺さるコンテンツを作ればいい」という榊原社長の哲学に基づく、計算され尽くされた、音、空間、匂い、間、振動。ドラマと、キャラ。エンターテインメントのイベントとしての完成度は極めて高かった。競技としての格闘技を純粋に突き詰めたUFCには無い、また違った形のMMAの一つの理想型があったんだと感じる。こと煽りVに関しては、このPRIDEのVが生む最大瞬間風速の興奮は、UFCの会場では決して感じることは出来なかった(どっちがいいい悪いじゃなく、種類が違うという意味で)。この時代に生まれ、PRIDEの盛衰と、UFCの隆盛、そして昇華という歴史に立ち会えた事に感謝。

2011年2月14日月曜日

NCAA 2011 Season Preview #8 Stony Brook

Face Off Year Book Pre-Season Ranking第8位、Stony Brook。チーム名はSeawolves(海の狼/海賊)。

昨年、Notre Dameと並ぶ台風の目となったStony Brook。Hofstraと同じくNYの東、第二のラクロスホットベッド、Long Islandに位置する。去年のプレーオフはQuarter FinalでVirginiaを一点差まで追いつめ、一気に全国区にのし上がった。


現NCAA No.1プレーヤー、Kevin Crowley

何と言っても目玉はCanada代表で主力として活躍し、先月のMLLドラフトで全体1位指名された、Gary Gaitの跡を継ぐ大型Versatile Canadian MFと言われる、Kevin Crowley。Virginia戦での獅子奮迅の活躍、そして脅威のリーンからのロングレンジのBTB (Behind the back)に、全米のラクロスファンが度肝を抜かれた。

VirginiaのHC Dom Starsiaもインタビューで彼の30年のラクロス人生の中でGary/Paul Gaitの次に印象的な選手として彼の名前を挙げていた。ほとんどフライせずにフィールドに残ってプレーし続けるという魂とスタミナに感銘を受けたと。他のコーチのコメントで、「John Grant Jr.がもしMFをやっていたらこんな感じになっただろう」というものも。193cm/90kgと大型。身体能力も高くて技術的にもCanadianならではのstick skillを持ち、Canadianには珍しくDFやトランジッションも含めてマルチに何でもこなせる。恐らく今後5年10年、MLL、Canada代表の顔として活躍するかも知れない。今年のTewaaraton(MVP)候補の最有力候補。


PodcastでのKevin Crowleyのインタビュー(リンク

Inside Lacrosse PodcastとInside Lacrosse MagazineでCrowleyのインタビューが載っていた。いくつか面白いと思った点をピックアップして紹介。
  • (ATとしてフィニッシャーを任される事が多いCanadianの中で珍しく)なぜそんなにwell-rounded(全部何でもこなせる)なのか?という質問に対し、バスケットボール選手だった父親の方針で、子供の頃から敢えていろんなスポーツをやらせられた。バスケ、ゴルフ、サッカー、バレーボール、そしてラクロス。特にサッカーやバスケでは、徹底してDFと走る事の重要さを叩き込まれたとの事。今でもオフェンスだけでなく、Face-off, Transition, DFと全てをやる事が大事だと思っていると。ラクロスでも始めた当初は下級生としてDやTransitionの選手として試合に出して貰い、その後シュートが入るようになってからオフェンスもやるようになる、という育ち方をしたから、とのこと。
  • 大学入学時はNCAAのコーチの目に留まらず、scholarship(スポーツ推薦)を貰えなかったため、NCAAではなく、MCLA(非体育会の大学ラクロスリーグ)に属するSimon Fraserに一度入学し、そこで活躍して名を上げ、やっとSBのSowellの目に留まったという。それでもSowell自身もここまで傑出した選手になるとは思っていなかったと言う。
  • (→Billy Bitterのラクロス浪人の話じゃないが、彼も結構最近まで日の当たらない道を歩きつつ地道にブレークを夢見て準備し、やっと花開いたパターン。アメリカのラクロス界では意外と多い。この手の雑草話。)
  • Ricky Sowellという、人間的にも尊敬出来、選手の自主性を重んじてくれるコーチの下でプレー出来て、こういうチャンスを与えられた事に感謝しているとのこと。
'10 WLCでアメリカとの大事な試合でトップレベルのDFと対戦し、プレーでもメンタルでも多くのことを学んだと言う。今年はもう一皮剥けた彼が見られるのかも知れない。インタビュー等から伝わる印象では、down-to-earthで奢る事無く、感謝の気持ちを忘れない、高い社会力/人間力の持ち主だと感じた(まあ、だから今のレベルまで成長して来た訳だろうし)。今後もそのメンタリティを持ち続ければ、間違い無く変化を続け、素晴らしい選手に育って行くだろう。個人的に応援したい選手だ。


MLLドラフト指名は4人(リンク

また、MLLのドラフトでは、 4人の4年生が指名。
  • 1位 MF #21 Kevin Crowley: Hamilton Nationals
  • 14位 AT #11 Jordan McBride: Rochester Rattlers
  • 28位 AT #23 Tom Compitello: Boston Cannons
  • 31位 FOGO #10 Adam Rand: Hamilton Nationals

ここ数年でHC Ricky Sowellの努力により、Canadianを始めいい選手が徐々に集まり始め、去年一気に花開いた。学校としても男子ラクロスへの注力を強めている。今年は去年の主力がほぼ残る。予想通りに行けば、またプレーオフに進出し、場合によってはもう一歩上、Championship weekend (Best 4)も照準に入って来る。


Quintによる解説(リンク

  • DFとGoalieが大きく入れ替わるのが不安。
  • オフェンスはほとんど残る。
  • 特に期待されてなかった中躍進した去年と違い、今年はプレーオフでのインパクトが残り、注目度も高い。プレッシャーをどうハンドルするのか、相手からの徹底したスカウティングにあった時にどう対応出来るか。
  • Kevin Crowleyは去年からDouble/Tripleされても窮地を切り開いて来た。
  • Quintの見立てでは、Kevin CrowleyとJordan McBrideのCanadian 2枚看板はもちろんなのだが、それ以外のcomplementary players(脇役選手)が意外とレベルが高く、点を取れると評価。
  • 後はDとGが失点をどれだけ抑えられるかが肝。
  • この動画では触れていないが、今日のESPNU Expertsというシーズンプレビュー番組で、Quintが、Stony Brookは去年Virginiaを追い詰めて話題になったが、よくよく考えると実際に上位チームを倒したのはその前のDenverだけ。それ以外は何一つ強豪に勝っていない。それだけでこれだけ評価するのはちょっとインフレし過ぎじゃないか?と指摘していた。(うーん...確かにそれも当たっている気がする。)

HC Ricky Sowell(リンク

  • Dartmouthをturn aroundした後SBに来て5年、CrowleyやMcBrideを発掘し、過去最高の成績を達成。ここに来てコーチとしての評価を上げている。去年のUS代表ではPresslerの下Assistant coachを勤めている。恐らく選手の意思や個性を尊重するスタイル。
  • 去年出ていた(そして2年生くらいから塊で主力でプレーして来た)4年生ががっつり残っているので基本的には去年よりも上だと。

悲しいかな、長年続く伝統的強豪校ではないため、ESPNの放映でレギュラーシーズンの試合はカバーされていない...(この辺がアンチHopkinsファンが、「大して強くねえHopkinsの試合放映が多過ぎだろ!つか贔屓だろ!」とムカついてる理由の一つだったりもする)去年同様Kevin Crowleyをテレビで見られるのはPlay offまでお預けか...Strength of Scheduleが緩く、強豪との試合が少ないため、tournamentに出るためにはほとんど負けが許されない。レギュラーシーズン中に格下に足下を掬われない事を強く祈る。

(最後に、僕個人の予想。一切当てにならないけど。個人的には、応援したい。CrowleyもMcBrideも素晴らしい選手。が、8位は明らかにoverratedに見える。何となく、DelawareやTowsonやUMBC辺りの中堅校のどこかにひょろっと負けちゃって、あれ?気が付いたら20位前後をうろちょろして、Tournament出られませんでした...なんてオチになっちゃう気が何となくする...例えどんなにOFにスター選手がいても、DF/Gが変わる事のインパクトはやはりでかい。チーム力に凸凹があり過ぎるのと、主力の誰かが怪我した時のインパクトがreplace不能なレベルででか過ぎる。やはり10位以内に確実に入るチームという感じはしない。)

2011年2月12日土曜日

NCAA 2011 Season Preview #9 Hofstra


NBAもAll Starが近づき、シーズンの折り返し。いよいよプレーオフの出場枠争いも佳境に入って行く。ここ数ヶ月、ある新しい世代の選手が毎朝のESPN Sports CenterのNBA Highlightを席巻しつつある。LA ClippersのBlake Griffin。Oklahoma大学で爆発的な得点力を見せつけ、昨シーズン全体1位指名で大物ルーキーとして入団するも、怪我で一年目のシーズンはお預け。実質デビューの年となる2年目で、その才能を遺憾なく発揮しつつある。でかくて、走れて、ボディコントロールも抜群で、跳躍力が物凄い。柔らかくて上手さもある。明らかに頭(basketball IQ)もいい。滞空時間と最高到達点が異次元。トップアスリート軍団のNBAの中にあって、「雑魚を蹴散らす感」満載。基本、跳びさえすれば、他が先に地面に着くので、勝手にフリーが作られるパターン。特に、この「跳んだら勝ち」、という点に於いてはMichael Jordanを彷彿させる。ダンクの派手さではLeBron並み。



ちなみにClippersは元々同じくLAのLakersの陰に隠れ、ひっそりとマイペースでやって来た球団。毎年下位の成績のため、ドラフト上位指名権を手にし、Griffinを獲得し、ここに来て急激に注目を浴びつつある。敢えて金の掛かるFAのスターを取らずに、コストを限界まで抑えることで、弱小/人気もいまいちながらもビジネスとしては黒字というスポーツ経営学的には面白いチームだった。が、今後数年でGriffinを軸に全うに闘えるチームになっていく可能性を感じる。勝敗に関係無く、彼のプレーを生で見たいという観客を会場に呼び込める希有な選手。




Chi
cagoのDerrick Roseといい、Oklahoma City ThunderのKevin Durantといい、ここ数年でLeBronやCarmeloやDwight Howardのもう一歩次の世代のスーパースター達が台頭して来つつある。NBAも目が離せない。

#9 Hofstra Pride(リンク


NYの東側、第二のラクロスホットベッド(苗床)、ロングアイランドにあるHofstra Pride。Prideは誇と共に、「獅子の群れ」の意味。'02 & '06 US代表のMF Doug Shanahan ('01卒)やDenver Outlaws/Colorado MammothのBrian Langtry ('98卒)といった高い攻撃力を持ったOffense選手に加え、Nicky Polanco ('01卒)やBrian Spallina ('00卒)と言ったアグレッシブDFなど、強力な「個」を輩出している。鼻っ柱の強い、時にちと意地悪な、生粋の東海岸っ子というイメージだろうか。(ロングアイランドは伝統的にイタリア系移民の子孫が多く、イタリア系の苗字が多い。カテナチオディフェンダーを多数輩出しているのも文化由来か。)特に地元Long Island Lizardsとのパイプが強い。現Duke HCのJohn Danowski (Mattの父)も'06年にDuke HCに就任するまではHofstraで指揮を取っていた。

去年もNCAA Tournament一回戦でMarylandに一回戦負けするも、可能性を見せてくれた。今年も、オフェンスを中心に主力が残留し、例年に無く強いっぽい。Pre-seasonではPrincetonやHopkinsよりも上の順位。特にオフェンスがスティックスキルが高く、華があり、去年の試合も非常に見ていて楽しかったと共に、top of top校以外にもこんなにレベルの高いチームがゴロゴロしてるとは、やはりNCAAは懐が深いなーと思わされた記憶がある。オフェンスの見た目のカッコ良さ、という意味ではVirginia、Syracuse、Marylandに並ぶと個人的には思う。

ちなみに、年明け前のILのランキングでは9位だが、開幕直前の2月10日現在、Quintは自身のランキングで6位にランクしている。Quintの場合は主力のほとんどが卒業したDuke、未だ光の見えないHopkinsを10位以下に置き、早くも怪我に苦しんでいるUNCやコーチ体制の変わったCornellをHofstraよりも下と見ている。冷静にHype(噂や過剰な盛り上がり)を排除して客観的に見る彼のランキングは往々にして露出度/スターバイアスに引っ張られ勝ちなメディア/コーチポールよりも正確。先週の練習試合でSyracuseに勝っている点も勘案している。実際にどうなっていくかに注目。

  • オフェンスが相当選手層厚く、強い。3枚の4年生ATがガンガンに引っ張る。2枚のスナイパーAT、MLL上位指名のCanuck #20 Jay Card (11位指名: Long Island Wizards), #8 Jamie Lincoln。加えてQBの#14 Stephen Bentz。
  • MFにはLafayetteからのトランスファー、大学院生の#5 Steve Serling (9位指名: Denver Outlaws)、DFMFの#27 Steve DeNapoli (30位指名: Chesapeake Bayhawks)のMLL指名選手も。
  • MFは層が分厚く、3セットで回して来る可能性がある。
  • Dは、まあ、悪くない
  • 問題があるとしたらGか。去年はそこそこのG 2枚でどっちがスタートするかを探りながらだったため、どうしても安定しなかった
如何せん超名門ではないため、試合のTV放映数は相当限られる。残念...多分トーナメントまでお預けか。

HCでHopkins出身のSeth Tierneyのインタビュー(リンク


(最後に、当たる保証ゼロの僕個人の予想。このチームは結構ガチで行く気がする。レギュラーシーズンの順位で5-8位に入って来て、場合によってはFinal 4が視野に入って来ても驚かない気がする。経験値がある。オフェンスが間違い無くトップレベルに強い。Strength of schedule [SOS]的には、実は強豪との試合がレギュラーシーズンでは入っていない。CornellとDelawareぐらい。全勝シナリオも全っ然有り得る気がする。)

いたる@13期

2011年2月9日水曜日

NCAA 2011 Season Preview #10 Princeton

恒例の一瞬脱線。先週末の日曜は家で飲んだくれながら毎年恒例のイベント、NFL Super Bowl観戦。Green Bay Packersが悲願の優勝。QBのAaron Rodgersは3年間スーパースターBrett Favreの控えを経て、その才能を存分に開花させ、NFL最高のQBの一人としての地位を不動のものにした。08年にFavreの後がまとしてスポットライトが当てられたとき、多くのファンが「あんなパッとしねえ奴で大丈夫か?」と心配したが、彼は極めてdown to earthで「批判があるのは解ってる。でも僕は自分のやるべきことをやるだけだから」と、極めて淡々と自分、今、自分がコントロール出来る事に集中し、揺らがぬセルフイメージを維持し、徐々にパフォーマンスを開花させて行った。

さて、試合とは別に毎年話題になるのが、CM。アメリカでは年に一度のお祭り。1億人が生で放送を見る。各企業はここぞとばかりに金を突っ込み、一発勝負の一回限定のCMを力を込めて作り込んで来る。僕が行っていたKellogg Business Schoolはマーケティングを強みとしている学校である事もあり、当時取っていたAdvertisement Managementの授業で、Super BowlのCMを一つ一つ、どのオーディエンスに向けた、どういう意図の、どういうメッセージの広告かを分解/分析するという事をやっていたりした。その時の記憶もあり、今回も試合よりもむしろCMに注目してしまった...いくつか特に印象に残ってるのが、以下。

全体を通して、やはり車と映画と消費材のCMが多く、特に車ではHyundaiとKiaという二大韓国メーカーの隆盛が強く印象に残った。

EminemとDetroit (Michigan大学の近所)をフィーチャーした、ChryslerのCM。ボロボロに落ちぶれたアメリカ自動車産業だが、アメリカ人の心の底に眠る誇り、琴線に触れるものがあったんだろう。


個人的にはこれが一番好きだったかも。思わず笑ってもうた。ちゃらい二人が想像でCamaroのCMを作ってるっていう。超Americanなノリのサラッとしたショートコメディ。


あと、Cokeのこれ。たった一回のCMのためにここまで作り込むんかい...っていう。映像のクオリティと世界観の作り込み具合。


ラストこれ。二度目も爆笑してしまった...


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
名門Princeton(記事のリンク)。名将Bill Tierneyの下、92年から01年までに6回の優勝をとげ、一時代を築いた。その後、リクルーティング競争の激化の中、academicのハードルが高く、コミットのタイミングが遅い等のハンデにより徐々に後退。優勝から遠ざかっている。その後昨年TierneyがDenverに移籍し、アシスタントコーチだったChris Batesが昇格。昨年は新しい体制に若干の戸惑いを感じながらも何とか11勝5敗でシーズンを乗り切り、Ivy Leagueを制し、NCAAトーナメントに進出も、一回戦でNotre Dameにやられる。

どうやら今年もDとGの強さは健在だが、懸案のOは引き続き苦しいようで、ファンからも「ま、ぶっちゃけいまいちじゃね?」と言われているっぽい。Princetonの栄光の時代は残念ながらもう去っちゃったんだろう。

名門で知名度も高く、今年もESPNUのカバレッジでは結構放送されるっぽい。DF/Gが教材として見て学ぶ/楽しむには持ってこいのチーム。

ちなみに1月のMLLドラフトで42人の枠に指名された4年生は、27位でDenver Outlawsに指名されたATのJack McBrideのみ。やはり4年生が薄い。

Quintの分析(リンク

  • Quint自身は10位より上にランク。
  • 強みは、明らかにDefense。全米トップレベル。層も厚い。3年#9 Chad Wiedmaier(ウィードマイヤー)、3年#28 Jonathan Meyers、3年#3 John Cunningham、4年#41 Long Ellisと、All American級の選手が揃う。(なので、DFの選手はDVDを見て参考になることが多いはず。)
  • Goalieの3年 #6 Fioritoは1年生から守護神。
  • ちなみに、Wiedmaierが怪我でいなかった試合はFioritoのsave %は43%、彼が復帰したら一気に63%に上がったという。一人のDFの能力によってgoalieのセーブ率に大きな差が生まれる例とのこと。
  • 弱みは、ShortyのD。Long stickの強さもあり、相手からスカウティングされ、相対的に弱いshortyからガンガンisolation 1 on 1/invertを掛けられまくった。(激しいcompetitionの中にあるNCAAでは相手をスカウティングしきって、データに基づき弱い所を徹底的に攻める合理的なアプローチを取って来る。弱みがあるとこうやってえげつなくやられる訳だ。大事です、穴の無いチーム力と層の厚さ...)
  • Chris Batesのピックを多用する、2 on 2重視のユニークなオフェンスシステムが、昨年前半はワークしたが、後半強い相手と対峙した時に機能しなくなった。恐らく今年は2年目で、そのオフェンスシステムはより効率的に機能することを期待したい。
  • ATはオッケーだが、「Great」になれるか?唯一MLLにドラフトされた#14 4年Jack McBrideは高いシュート力はあるが、自らもっと抜いてチャンスを演出出来るかがチャレンジ。
  • スケジュールがえぐい。初っ端@Hofstra-@JHU-UNCと三連発。そこを乗り切れるかが鍵。

Coach Chris Batesのインタビュー(リンク

しかし、Chris Batesに限らず、NCAAのコーチというか、アメリカのスポーツのコーチ/指導者のインタビューや記事を見るたびに本当に感じるが、自分の選手達を本当によく見ているし、褒めるし、信頼している事をきちんと名指しで口に出して伝えている。Chicago Bulls-LA Lakers HCのPhill Jacksonの「ゴミ溜めの中から一輪のバラを見つけ出す能力」じゃないが、どんなにダメなチーム/選手の中でも必ずポジティブな要素を見つけ出し、そこを見ている。

「○○は本当に素晴らしい選手で、努力をしている」と、メディアに対して喋る。これを聴いた選手達は間違い無く、セルフイメージを大きくし、質のいいセルフコンセプトを作り、その期待に応えようと頑張るはず。所謂、北風と太陽で言うと完全に太陽アプローチ(もちろん、毎日のフィールドでの練習では叱って怒鳴ることもあるんだろうけど...)。ただ、闇雲に手放しで褒めるのではなく、個々人をよく見て、ピンポイントで心からAcknowledgeし、Appreciateし、Cheer upする。コーチ力/社会力/人間力の高さを感じさせるコメント。職業としてのプロコーチの存在、深く長いアメリカのスポーツの歴史、スポーツ心理学とリーダーシップマネジメントの成熟によるものなんだろう。

いたる@13期

2011年2月7日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.01 Notre Dame-Team USA

...の前に一瞬脱線。ジムで運動しながら、今週末行われたMMA (総合格闘技)のUFC 126を観戦。
全身鳥肌が立つ瞬間が二つあった。

Middle級タイトルマッチ

一つは、ここ数年Pound for pound(全階級を通して最強)と言われる、MiddleのAnderson Silva(アンデウソン=シウバ)。PRIDE時代はパッとしなかったが、UFCに本格参戦し出した06年辺りから急激に力を付け、今や敵無し。UFC PresidentのDana Whiteをして「He is the best fighter in the world, period」と言わしめる。一方で、相手との力の差があり過ぎ、モチベーションの維持に苦しみ、やる気の無いファイトからファンの怒りを買って来た。そんな彼にとって最も危険な相手と言われたVitor Belford(ビトー=ベウフォード)。1R開始早々、前蹴りをボディーにフェイクしつつ顎にアッパー気味に入れて一発KOという、格闘技史上に残る鮮烈なKO勝利を飾った。K-1も含めた立ち技系格闘技にも詳しく、自身もテコンドーチャンピオン出身の解説者Joe Roganですら、「空手、ムエタイ、テコンドー、全ての格闘技を通じて、こんなKOは未だかつて見た事が無い」と言わしめた。ぶっちゃけ、もう世の中に対戦相手がいなくなってしまったんじゃないだろうか?その位Anderson Silvaの技術レベルがぶっちぎりで抜きん出ていることを印象づけた。

Light heavy級の新星Jon Jones

もう一つは、新世代代表格、Light heavyのJon "Bones(ガリガリ)" Jones。弱冠23歳のエリートアスリート。相手はリアリティショーコンペティション、The Ultimate Fighter Season 8の優勝者でNCAA All AmericanレスラーのRyan Bader。共に次代のUFCを背負って立つと言われる二人。Baderもここまで無敗で、大きく身体能力も高く、技術的にも伸び盛り。戦前はどっちが勝つか?と言われていたが、始まってみて衝撃を受けた。これまで多くの難敵を圧倒して来た、あれだけ大きくAthleticなBaderをいとも簡単に弄ぶJones。危ないシーンを一切見せず、冷静に、Submissionでサクッと仕留めてしまった姿を見て、全身に鳥肌が立った。Jonesは正にReal dealだ。恐らく次の試合で早くもShogunへのタイトルショットを手にする可能性もある。仮に今回勝てなくても、間違い無く今後5-10年はUFCの頂点で戦い続けられる才能。でかくて、身体能力が高く、well-roundedで、動きがcreativeでtricky。未だに鋭く切り立ったLearning curveの真っただ中にあり、試合の度に技術的に大きく成長している。しかも、極めて賢く、謙虚で、相手へのリスペクトを忘れない。試合の度に「自分はまだ技術的に未熟で、もっと練習が必要だ」と発言している。もう一人の絶対王者誕生の予感。MMAは最早、NBAやNFLでトップにいるようなアスリートと同じレベルの選ばれたDNAを持った者だけが頂点に立つ事が出来る、本当のメジャープロスポーツの時代を迎えつつある。


二人の日本人ファイター

日本から参戦した山本KID徳郁選手、小見川選手は残念ながら共に判定負け。ひっそりと行われ、PPVの放送にすら乗れなかった。2000前後の、日本が世界の総合格闘技の震源地だった古き良きPRIDE時代は去り、残念ながら日本のMMAは今やアメリカのトップレベルとの比較感で、4部リーグ、三軍以下に成り下がってしまった。ここまで、秋山選手、五味選手、青木選手と日本のトップクラスの選手達のUFCや(レベルはかなり落ちるが)Strikeforceへの挑戦が続くが、今のところ中堅級の選手相手にやられ、ことごとく上手く行っていない(例外は早くからUFCで地道に実績を積んで来た岡見勇信選手くらい)。もはや、MMAで世界最高峰を目指すなら、テニスの錦織、バレエの熊川哲也、サッカーの10代や20代前半で欧州移籍する選手達のスタイルで、かなり若い段階から本場の熾烈な環境に身を置いて鍛えて行くしか無いんじゃないかという気がする。それくらい、この10年間で、環境やコンペティションやハングリーさ、結果としての技術と競技レベルに埋め難い差が生まれてしまった。(ちなみに、やれピークを過ぎたとか、やれマッチメークで過保護されてきたとか、公私ともにいろいろとメディアや世間から批判されることの多い山本KID選手だが、個人的には、こうやって劣勢の中高いレベルの舞台に挑戦するその想いや姿勢には純粋に敬意を感じるし、応援したいと素直に感じる。恐らく数試合限定、場合によっては1試合のお試し契約だろうから、もう余りUFCでは見られない気もするが...)

と、ラクロス以外の余談はほどほどにして、本題...

US代表2011

さて、お待ちかね、2011年のNCAA DVD 1発目。1月30日に行われた、NCAAシーズン開幕前の集客試合。US Lacrosse Champion Challenge。2011年度のUS代表とNotre Dameの試合。Florida州Orlandoにて。

今回のUS代表はNLLに参加しているメンバーが含まれていないため、本来のフル代表からは数段落ちる。実質的には過去のUS代表メンバー+非NLLメンバー、特に昨年卒業した社会人一年目のメンバーが中心。また、今後数年でMLLの最前線に躍り出て来るであろう2011年卒業組が含まれておらず、Shanahan、StriebelやKevin LeveilleなどOver 30のベテランも含まれているため、実際にこの中から2014年のUS代表に入って来るメンバーは数人程度じゃないだろうか。

とは言え、Peet Poillon (Chesapeake)やMike Kimmel (JHU '10-Chesapeake)など、2014候補と目されているメンバーも何人か入っている。

MFのBrooksとShanahanは'10年も代表入りすると一部から言われていたが、怪我等もあり漏れたパターン。特にBrooksはまだ若く、'14年の代表入りを目指すとのこと。

WLCの次年から即代表チームを始動させる事で、ラクロスコミュニティ内での注目を保ちつつ、候補選手達の中にも一定の緊張感と競争意識を保ち続けるという協会側の戦略。今回も、本来フル代表には入っていなかったかも知れない若手がstep upし、ベテラン選手、今回呼ばれていない選手達の立場を脅かしている。

2011 Champion Challenge Team USA Roster (リンク)

Attack
  • 恐らくATは実際のフル代表と一番大きく顔ぶれが変わるポジションのはず。NLLのシーズン中で今回は参加出来ていないMundorf, Westervelt, Crotty辺りが入ってくると思われる。
Steven Boyle – Boston Cannons – Johns Hopkins ‘10
Craig Dowd – Long Island Lizards – Georgetown ‘10
Kevin Leveille – Rochester Rattlers – Massachusetts ’03 ^
  • '10代表では控えとして帯同。今年は結婚式やら何やらでMLLは1年休むが、復活して14年代表を目指すとのこと
Max Quinzani – Boston Cannons – Duke ‘10
  • 10のDVDを散々見てる皆さんはご存知の通り。準決勝のVirginia戦での決勝ゴールは未だに瞼に焼き付いている。難関Dukeを成績優秀で卒業し、NYの投資銀行で働きながらMLL。凄い。
Chazz Woodson – LXM Pro Tour – Brown ‘05
  • 帰って来たトリックスター。BrineのCMでMikeyと共にフィーチャーされてる彼。

Midfield

Michael Kimmel – Chesapeake Bayhawks – Johns Hopkins ‘10
  • 14代表の本命の一人だろう。去年のJHUでは孤軍奮闘。MLLでユーティリティプレーヤーっぷりが開花。
Matt Striebel – Rochester Rattlers – Princeton ’01 *#$
  • 三度のUS代表。MLL創設時からの大ベテラン。さすがに次は無いんじゃないかな?
Stephen Berger – Long Island Lizards – Washington College ’04 ^
Stephen Peyser – Long Island Lizards – Johns Hopkins ’08 *
  •  NCAA 07決勝DVDを見た方は強烈に印象に残っている、Rabilの片割れ。10代表でも主力。
Steven Brooks – LXM Pro Tour – Syracuse ’08 ^
  • 怪我から復帰。楽しみ。だが、LXM Proに参戦しており、MLLには出ていない。どうなる?
Chris Eck (FO) – Boston Cannons – Colgate ’08 ^
  • Alex Smithと並ぶMLLを代表するFOGO。Alexも26歳とまだ十分行ける。どっちがFOGOポジションを取るんだろうか?
Doug Shanahan – Rochester Rattlers – Hofstra ’01 #$
  • 01年にHofstraで初代Tewaaraton (MVP)、02年US代表でWLC MVPの大ベテラン。Hofstra時代は二足の草鞋でFootballのDefensive backとしても突出した選手。NFLのNY Jetsと開幕ロースター一歩手前まで残った超エリートアスリート。
Peet Poillon – Chesapeake Bayhawks – UMBC ‘09
  • 先日のUMBCの記事でも紹介した、雑草中の雑草から這い上がって来た超新星。ラクロス部の無い高校で自らチームを立ち上げ、短大で活躍してProveし、転校したOhio Stateで更にProveし、更に転校したUMBCで大活躍しながらもMLLからは注目されず、練習生で参加してスタメンを勝ち取り、大活躍。このハングリーさ/雑草魂は半端ねえ。小さいけど速くて上手い。個人的には強く応援したいし、14年代表にも入って欲しい。

Defense

Matt Bocklet – Denver Outlaws – Johns Hopkins ‘08
Lee Zink – Denver Outlaws – Maryland ’04 ^
Steven Waldeck – Toronto Nationals – Stony Brook ‘10
Adam Crystal – Tobay LC – Drexel ‘07
Ricky Pages – Long Island Lizards – Ohio State ‘08
Nick O’Hara – Long Island Lizards – Duke ’07 ^

Goalie

Scott Rodgers – Toronto Nationals – Notre Dame ‘10
  • 来ました。昨年ND準優勝の立役者。影のMVP。でかくて熱くて速くて上手い。MLL初参戦の去年は「見かけだけですぐ化けの皮剥がれんだろ」などフォーラムで散々叩かれてNatsに入団したが、1年間で見事にMLLにアジャスト。Brett Queenerと出場枠を二分するまでに育った。
  • DFを統制する姿も頼もしい。Natural leader。もしこのままパフォームし続ければ、14年代表は十分有り得る。
Adam Fullerton – Denver Outlaws – Army ’08 *
  • 10年WLCでは副ゴーリーとしてDocの後ろから支えた。実力十分。今回の試合でも上手さと落ち着きを見せる。

Coaches: Kevin Cassese *#$, Brian Dougherty *~
  • 共に10年US代表優勝の立役者のCasseseとDocはコーチに退き、裏から支える。

* member of 2010 U.S. men’s national FIL world championship team
^ member of 2009-10 U.S. men’s national training team
# member of 2006 U.S. men’s national team
$ member of 2002 U.S. men’s national team
~ member of 1998 U.S. men’s national team

注目のプレー

1点目、Kimmelの1 on 1からのK Leveilleのクリースへのカットが技巧派。Quintの、「もし自分がアタックで、オフボール状態で対面のDのヘルメットの後頭部が見えたら(相手が自分から視線を切ったら)、それは最高のカットのチャンスだ」というコメントが非常に解り易い。

また、NDのいつものクリース前を鬼パックして、超っ早でスライドに行くDFに対して攻めあぐねるUSに対して、「このタイプのDには一人で突っ込むオフェンスは効かない。また、パスするにしても一発のホームランパスで決着を付けようとすると思うつぼ。複数の細かいパスで繋がないと。」とQuint。

全体的にUS代表のベテランMF軍団のロングシュートが印象的だった。NDの様に外から打たせて取るDFだと、この手のロングシュート力が高い相手には弱い。(まあ、裏を返すと、NCAAでここまでロングシュート力のあるチームなんてほとんど無いので、それだけ効果的とも言えるが)
  • 2Q 5点目のDoug Shanahanのstanding high bound shot。かなり手前でバウンドして、ゴールの上に突き刺さる高低差。Old school。シューターとしては、こういうパターンも引き出しに入れて打ち分け出来るようにしておきたい。
  • 6点目のSteven Brooksの左のStanding shot。MLL時代に2 point shotを量産したミサイルは健在。下半身の土台の安定っぷりが半端無い。
  • 4Q 9点目のPeyserのMiddleもまた違ったタイプ。取ってワンクレイドルからスナップでスパッと突き刺す。

また、前半USのゴールを守ったAdam Fullertonの好セーブが光る。

去年はJHU最高学年で、FOにDFと全てに於いて大車輪の活躍をした一方、疲弊して本来の力が発揮出来ていなかったMike Kimmelが伸び伸びと輝きを放っている。

4Q残り10分、Peet PoillonのクリースへのカットからBTB (Behind the back)が美しい。Ohioなんて不毛地帯出身でここまでナチュラルに...しかも身長も175cmしかないのに...

Notre Dameは、思ったよりいろんな選手が点が取れるようになって来ている。去年のプレーオフはATがボロボロと言われていたが、その激闘と、その後秋の練習を通して成長したっぽい。リーグ戦を通してMLLに上位指名された主力MFのBrennemanとDavid Earlが徹底マークに合うことが予想される中、どこまでATや他のMFが奮起出来るか。GoalieのKempが頑張ればまた今年もそこそこいい線行くかも。

にしても、冒頭の注目選手紹介の写真で、NDのエース、MLL 5位指名のZack Brennemanが見れば見る程、ザ・たっちに見えて来た...

Highlight (リンク)


いたる@13期

2011年2月6日日曜日

NCAA 2011 Season Preview #11 Johns Hopkins

(これまで意識的に隔日更新のペースで来ましたが、ちと、ここから数週間、書きたい内容の特性上、ネタを短めに小分けにして更新頻度を上げて日刊のペースでガシガシ上げて行きます。一回吐き出しきったらもう一回頻度落とす予定。)


ここ数週間、IL Videosで、あと数週間で開幕するNCAAの2011年シーズンのプレビュービデオが多数ポストされている。基本的には上位20チームの①ESPNアナリスト(Quint Kessenich or Mark Dixon)による分析/解説、②ヘッドコーチのインタビューという構成。

以下のIL videosのリンクで"season preview"と入力して検索して頂くと、全ての動画が表示される。(リンク


これまで1日1チームのペースで更新されており、この記事を書いた2月5日現在、11位のJHUまでがアップされている。今後開幕までに2位のVirginia, 1位のSyracuseまで全てのチームがアップされるはず。


シーズン開幕前にがっつり予習して、仲間と「やっぱSyracuseの総合力だろ」「いやいやVirginiaの爆発力だ」「意外とMaryland来るかもよ」と盛り上がるもよし、今後数ヶ月で毎週送って行く予定の試合DVDを見る際に、該当チームの注目ポイントや選手を確認するのに使うもよし。


現時点で特に面白いなと思った動画をいくつかピックアップ。

Quintによる分析/解説(リンク
開幕前順位で11位と低く位置づけられたHopkins。2007年のRabil-Peyser時代に優勝し、08年のRabil-Huntley時代にFinal 4で破れて以来低迷が続く。去年も負け越し。加えて、去年そこそこ強かった上級生スターKimmelとBoyleは卒業してMLLへ。不安視される中、10年入学組の中では最強と言われながらも昨年はぱっとしなかった新2年生の強力MF軍団がそろそろ真価を発揮して来ると言われている。JHU出身のQuintとしても内心は早く名門復活を成し遂げて欲しいという気持ちで応援しているんだろう。(スゲー余談だが...99年シーズン前に、先代の東大のユニフォームをデザイン、導入した際に、当時主流だったブロック体の文字、縞模様の袖のライン、目の粗いメッシュ生地等を排し、(当時の)cutting-edgeなデザイン、シンプルでゆったり目のデザインを目指すべくNCAAやアメリカのクラブチームのユニフォームをリサーチした。その際に、当時導入されたHopkinsの色遣いと番号のMac的な丸い字体が新しく、個人的に気に入ったので、それを思いっきり参考にさせて頂いたのを、この動画のHopkinsのユニフォームを見て10年ぶりに思い出した...)



Coach Petro (Dave Pietramala)のインタビューリンク)。いくつか記憶に残ったコメントは、
  • 4年間の中で最も大きな成長が起こるのは一般的に1年生から2年生へのジャンプと、3年生から4年生へのジャンプ。
  • 高校から入った1年目はスピードやパワーの違い、学校生活やチーム/戦術への慣れに戸惑い、多くの場合活躍出来ず、2年目にブレークスルーするケースが多い(Quintも、加えて、特にMFでその傾向が強いとコメントしている。相手となるMFの身体能力/技術がグンと上がること、Goalieのレベルが高校から数段上がる事で、これまで入っていたロングシュートが入らなくなり、unlearningが必要になること、加えて、O/D/FOといろんなことを学ばねばならない分、時間が掛かる点を挙げていた)
  • 3年から4年での成長はもっと精神的なもの。最高学年、リーダーとしての自覚と責任が、一段上のレベルへのステップアップを生む
  • 4年生エースAT Kyle Whartonはいいcatch & shotのロングシューターとして知られているが、彼が本当にチームを勝たせたいなら、選手/リーダーとして一皮剥けたいなら、その得意分野から勇気を出して一歩踏み出してもっと(抜いたり、フィードしたり、オフェンスをコントロールしたり)いろんなことを出来るようにならなくちゃだめだ。相手も得意技を潰して来るし。(最初に試合に出るためには一芸に秀でる必要があるし、強みを伸ばし続けることは必要だが、長期的に成功し、選手/リーダーとしてもう一歩抜きん出るためには、やはり居心地の良い得意技に安住する「だけ」ではダメで、それを敢えて一歩踏み越えて、"get out of your comfort zone"しなくちゃいけないという話として非常に印象的だった。世界の舞台で闘える経営人材/経営リーダーを目指す上で、一日本人、一プロフェッショナルから、敢えて踏み出して、Global general manager/Value-based leaderへと脱皮/成長することが求められる、という自分自身のビジネスパーソン/経営人材としてのキャリアやチャレンジにも非常に重なる部分があり、心に刺さるコメントだった。)


ちなみに、1月のMLLドラフトでの指名は何と42人の枠中ゼロ...上級生タレントの不足を物語っている。


いたる@13期

2011年2月5日土曜日

NLL 2011 Game Review vol.04 Colorado Mammoth @Philadelphia Wings

(NLL観戦ガイド記事はこちら。NLLの裏側が見られるドキュメンタリーの紹介記事はこちら。)

第5戦。ホームでColorado Mammothとの再戦。今回もスタジアムのWells Fargo CenterのWingsベンチ裏で観戦。何と、ここに来てWingsの快進撃が止まらない。開幕以来2連敗でファンの心をべっこり凹ませた後、AwayのColorado, Bostonで2連勝。1戦目にホームでボコられたBoston Blazersには11-5で快勝。この日も地元ファンの前でPhillyオフェンスが爆発。点の取り合いのfist fight(殴り合い)の末、詰め寄られながらも持ち前の固いDで1点差を守り切り、勝利。何とこれで破竹の3連勝。会場で叫び過ぎて声が枯れた...


何が復調の要因か?
  1. DFのミスが修正され、連携がしっかりしてきた
  2. 引き続き、Goalie Brendan Millerのセーブが神過ぎる。現時点で80%超のセーブ率でリーグをリード
  3. オフェンスでは、怪我による2年のブランクから復帰したNooch(ヌーチ)ことAthan Iannucci(エイサン=アイアヌーチ)が本調子を取り戻しつつあり、得点を量産
  4. Westervelt, Mundorf, Boyle等アメリカ人Forward達のターンオーバーが確実に減り、ロールからweak handなどフィールド仕込みの個人技を中心としたオフェンスが決まり始めている
  5. Max Seibald, Kyle Sweeny, Paul Dawsonら、DFとTransitionの選手達が相手のターンオーバーを確実に速攻に結びつけ、高い確率で得点出来ている
ちなみに、前日の1月29日(金)の第4戦、Boston Blazers戦のハイライトLive streamでの試合のリプレイ。Bostonはこの試合から加わった、Caseyの弟Ryan Powellがまだ本調子ではなく、オフェンスが機能不全に陥ってしまっていた。

背景

Coloradoは#24 John Grant Jr.#6 Brian Langtryがキープレーヤー、控えには2010年Dukeを優勝に導いたNCAA MVPでUS代表の#4 Ned Crottyも。

Wingsはこれまで3試合の紹介で散々語って来たので割愛。一言で言うとTeam USA軍団 + G Miller + DF P Dawson + Nooch。今回から2009 Syracuse優勝メンバーで現MLL Denver OutlawsでOFMFとしてMundorf, Westerveltと同僚の#9 Dan Hardyが結構試合に登場し始めている(主にオフェンスの脇役/スクリーン要員としてだが)。ますますPhiladelphiaはAll American軍団の様相を呈している。


試合の見所

毎回漫然と見てもつまらんので、一回一回テーマを決めて見てみようと試みている。今回のテーマは、①「Vision(視野)」と②「スクリーンショットの重要性」。

①Vision

NLL/Indoorならではの特に重要な技術に、視野の広さと、コート上の状況を常時、瞬時に把握する認知力が挙げられる。フィールド以上に狭いスペースでDもタイト。シュートチャンス/フィードを投げ入れられるタイミングのウィンドウが一瞬しか無く、如何にそれを常時見ていられるかが肝になっている。今回の試合でそれが如実に出ていたのが:
  • Colorado 4点目のPower play (EMO)でのJohn Grant Jr. のトップからのアシストの視野。シュートのプレッシャーを掛けながらも、フィールド上の全員、4人の味方と5人のDを見て確実にチャンスを見つけてフィードしてくる。
  • EMOに限らず、Jr.がボールを持つたびにDに身を切るような緊張感が走る。スティックを左肩で背負い、Dを背中でブロックしながら、フィールド全体を見渡しながら、シュートも常に狙っている。真に危険な選手とはこういう選手のことだろう。
  • 3Q Colorado 8点目もそう。Jr.の視野。やはり常に全部見えてる。

②スクリーンショットの重要性

NLLを見始めて、「スペースのある場所でフリー(1 on 0の状況)を作ってシュートを打つ」、というフィールドラクロスの定石が必ずしも全てじゃないという事を嫌という程思い知らされつつある。

フィールドで一般的に言われるのは、相手DFをon/offボールでかわして、相手のいない場所でシュートを打つ、というシンプルな2次元の、ホワイトボード上でのX's and O'sの考え方。特にゴーリーのいないバスケだとこの考え方をする。が、NLLでは必ずしもそれだけではないことに気付かされる。「シュートを打『てる』状況」、及び「シュートを打つ『べき』状況」がフィーイルドと大きく異なっている。

まず、Longもおらず、ハーフコートの人数が5 on 5で1人少ない上、コートが小さくDFがコンパクトなNLLに於いては、シュートを「打てる」という意味では実はかなり近い距離から打つ事は比較的容易。

そして、どちらかと言うと重要なのが後者の「べき」の違い。どんなにフリーであっても、ゴールが小さくゴーリーが大きいNLLでは、例え近い距離であっても、ゴーリーにがっつり構えられてしまうと基本的に入らない。なので、例え完璧なシュートモーションでなくても、ゴーリーが見えない/準備出来ていない状況で意表を付いて打つ、という騙し/ずらしの技術が極めて重要になっており、相手や見方をGの視野の妨げに使うスクリーンショットが非常に重要なオフェンスの技術になっている

つまり、「より確率の高いシュートを打つ」を突き詰めた結果、返ってDFを前に置いた状況で打った方が、DFを抜いて/交わしてフリーで打つよりも上手く行く、という逆説的な現象が相当な頻度で起きている。

これまで見て来た感じ、WingsのNooch, BostonのCasey Powell, ColoradoのJohn Grant Jr.など、ミドルシュートでの得点が多い選手は例外無くここが極めて上手い。そして、彼らNLLの選手がMLLでも特に効果的にlong rangeの2 point shotを決めているのにはこの辺の理由があるんだと思う。
 
今回の試合でいくつか例を上げると、以下
  • Mammoth 1点目のLangtryのミドルシュート、対面のDが真っすぐ自分に向かってくる状況は相手をスクリーンに使う最大のチャンスという考え方。Dの肩越し、背中越しに狙った所を射抜く練習を繰り返したい。
  • Wings 2点目のNooch (Iannucci)のシュートも完全にそう。インドアを知り尽くした彼ならではのスクリーンショット。普通に相手を全く持って抜いてない状況で、単純にステップバックして間合いを取っただけで足下からスパッと打って得点。「え?こんなんで点取れちゃっていいの...?」単純にゴーリーが見えない/予想してない状況でシュートを打てばこんなにも簡単に得点出来てしまうという衝撃。
  • Coloradoの3点目、John Grant Jr.の得点も同じ。わざとDが距離を詰めに来るのを利用して軽く、瞬間的に、正確なシュートをスパッと打って決めて来る。
  • Wings 6点目、Westerveltの得点も同じく。ロールして、全く相手を抜いてない状況でそのまま振り抜きざまに打っちゃう。で、入っちゃう。

と言った辺り。是非注目してみて下さい。特にスクリーンショットに関してはフィールドラクロスでも相当通じる部分がある。これらのシュートを見て強く感じたのは、(少なくとも自分が知っている)日本のラクロス(特に学生ラクロス)はちょっと奇麗にフリーの状態で打つことに縛られ過ぎちゃってる部分が多いかな?という点。自分自身への反省/自戒も合わせて。

バスケやサッカー出身の選手は特にそこに固定観念が入っちゃってる気がする(僕自身バスケバックグラウンドだったのでそう感じる)。ラクロスの大きな違いは、ボールが小さいため、DFが前にいても全く持って問題無くシュートが打てる点。Dを背負って打つ「方がいい」という発想の違い。「捕われない/柔軟な」セルフコンセプト。それを何度も何度もトップレベルの選手が積極的に意思を込めて使っているのを見て、目から鱗が落ちる思いがした。

また、忘れてはならないのは、この技術、重要なのは相当程度練習と実践によって学習/習得/習慣化可能な、trainableな技術だということ。自分の前にパイロンを置いたり、そこにロングスティックをくっつけて高くしたり、かかし的なダミーを使ったりして、Dが前にいてもメットの脇や背中越し、足下から、躊躇無く鋭いシュートを狙い通りに打てる練習を繰り返せば、相当実戦的な得点力が身に付くはず。最後は恐らくテニスボールやソフトテニスのボールを使って、実際にダミーDFの人に(ちょっと厚着して貰って?)着いて貰って練習して磨き込めば、更にもう一歩実戦性が高まるはず。後は意識的に試合で使って感覚をシャープに研ぎ澄ませて行くだけ。

DFも慣れておらず、抜かせないことに必死でまさか打たれるとは思ってないケースも多いだろうし、ゴーリーもフィールドの感覚に慣れており、フリーで正対して打つのに比べると圧倒的に無防備で反応が遅れる。全力のシュートじゃなくても、スナップでスパッと打つシュートでも十分に得点出来るはず。こんなにROI(費用対効果)の高いオイシい未開拓領域はそうそう無い。


その他、個別の選手/プレーの注目点

1点目、Wings Max Seibaldの得点。Swim dodgeから左。完全にフィールドのプレー。インドアのDFは守り慣れてないため奇麗に決まっている。

Coloradoは今回は4番のNed Crottyを時々オフェンスで出して来ている。が、まだまだ機能出来てない。Dとの間合いが掴めずもろにボディチェックを喰らったり、パスが微妙にズレてたり、何とか活躍しなきゃと苦し紛れのシュート打ってがっつりセーブされたり。やはりフィールドからインドアへのアジャストには多少時間が掛かるものなんだろう。

Wings 9点目のNoochのロールからの得点。ゴール前でDを押し込んで、ロール後に敢えて持ち替えずにそのままインサイドの手で打つ動き。ラップチェックも防げる上ゴールに対してより角度を作れる。この身体の使い方はマスターしたい。

4Q Philly 12点目、Drew Westerveltの速攻からのダイブショットがカッコ良過ぎる。文字通り宙高くダイブ。スラムダンクを思わせる。この日会場で一番盛り上がったのはこれだろう。観客全員総立ち絶叫。

試合終了直前、Colorado #24 John Grant Jr.による最後の同点弾!残念ながらクリースバイオレーションで無効になってしまったが、クリース直前でそれまでの直線的にゴールに向かう動きから突然横に移動して完全にゴーリーを外して得点。スローを見た瞬間「何ーーー!?」と全身に鳥肌が立った。会場全体がカイジばりにザワザワザワッとなったプレー。これぞ世界最高峰。


結果と感想

前半に爆発的に貯金を作ったPhillyが結局逃げ切り1点差で勝利。やべえ。Wingsどんどん良くなってる。まずもってDFが異様に固い。加えてGのMillerが鉄壁。そしてOFはそこそこ点を取れ、速攻で点を取るという効率的なラクロスが出来ている。これで2連敗後の3連勝、一気にEastern Division最下位から2位に駆け上がった。この調子に行けばプレーオフはもちろん、優勝争いにすら絡んでくるんじゃないかという勢い。今後どうなる?地元民として全力で応援しようと思う。

Highlight


Livestreamでの試合中継のリプレイ
リンク

いたる@13期

2011年2月4日金曜日

Stick innovation

これまた完全にちょいネタだが…先週年一回のラクロス展示会、US Lacrosse Convention (通称Lax Con)がBaltimoreで開かれ、そこでいろんな講演会や各メーカーからの新製品の発表が行われた。(要は東京モーターショーやゲームショーのラクロス版。)
 
Tribe 7
 
その紹介記事がいくつもILに載っていたのだが、その中で一番個人的に面白いと思ったのが、Tribe 7なるメーカーのOptimus 7というヘッド。

既存の常識/先入観を完全にぶち壊して、投げ捨てて、プロのエンジニアが、ゼロからの発想、「理想解から逆算したらどうなる?」で最適のヘッドの形を考えるアプローチを取り、その一つの答えがこれとのこと。

ヘッドの写真と動画が見られるILの記事のリンク

既存の常識にチャレンジ

「そもそも地面って平らなのに、何でヘッドの先端を丸くする必要あるんだっけ?」で作られたヘッドの先端のライン。ほぼ垂直にスティックを立てた状態でもヘッド全体を使って拾える。線ではなく面/帯でボールを拾うため、スクープの失敗を防げるという発想。直感的にグラウンドボールからトランジッションを誘発したいロングスティックに向いている気がする。

また、「そもそも先端が鋭角に尖ってるのって、意味あるんだっけ?だってボールは丸くて、ボールの下を掬う訳でしょ?ピンポン球やパチンコ玉大のサイズのボールならまだしも、今のラクロスボールのサイズを考えると、先っぽを薄く尖らせる意味なんてある?尖ってても地面の突き刺さるだけだよね。丸みを帯びさせた方がいいんじゃない?地面を滑らせた方がいいんじゃない?」ということで先端のフレーム部分も円筒状に。

更にメッシュも、ヨット競技に使われる特殊繊維を使い、耐久性に優れ、完全にwater proofで一切縮まないメッシュ。

ストリンギングの発想も合理的で新しい。縦にガイドレール的にストリングを通す考え方はtraditionalにも近い。

いずれも、理屈の上では確かにごもっとも。

このページの真ん中辺りで、スクープのし易さを数字で紹介している(リンク)。
 
もちろん、ブレークスルーは簡単ではない 
 
もちろん、Tribe 7は決してメジャーなメーカーではなく、現時点では「色物」としての見られ方が大半。実際には多くのプレーヤーに使われて、レビューにさらされて初めてsurvive出来るかどうかが決まるだろうから、今の時点でこれが大ヒットに繋がるか、メインストリームになるかは分からない。また、実際には人気選手がCMをやってるかどうかというマーケティング部分が大きく効くので、有名選手を引き入れない限り爆発的には流行らない気もする。(それこそ数年したら廃業してるかも知れない。)
 
今後のスティック開発への影響?
 
が、一方で、これが世に出たことで、ユーザーやメーカーのデザイナーに、既存の枠組みを壊す発想が少なからず植えつけられたのは間違いない。もしかしたら今後のBrineやWarriorのヘッドも少しずつこの形に近づいて行くのかも知れない。
 
コメント欄では早速、「キモい」、「こんなのインチキのまがいもんだ」、「女子のスティックみたいだ」、「胡散臭い」など手厳しい意見もある一方で、「ま、少なくとも試してはみたい」や、「でも、確かに理屈の上ではmake senseなことをしている」という好意的なものも。
 
いずれにせよ、こういうイノベーションがどんどん出てきて更にギアとスポーツを進化させていけばもっともっと面白くなるはず。いいっすね。既存の枠組みを破壊する新しい発想。


プロモーションの発想も面白い。Statistically有意なサンプル数を確保した上で、既存のスティックと比べてスピードが6-7%上がり、正確さも向上したと(本人は主張する)。もし、それが本当なら、間違い無く金でパフォーマンスを買いたい選手達は興味を持つはず。



Tribe 7のウェブサイトにいろんなデモンストレーションが載っている。突っ込み所満載過ぎる変なおじちゃんだが、確かにスティックとしての性能は「おっ」と思わせる物がある。要はポケットの位置が高く、かなりホールド力があるため、相当振り回してもボールが落ちない(リンク)。こういう変ちくりんな新しい発明に寛容なのも、またアメリカらしい。Bill Gatesも、Steve Jobsも、批判や常識を恐れない変ちくりんな発明家から全てが始まった訳だし。

いたる@13期

2011年2月3日木曜日

4人目のPowell兄弟

皆さんご存知、ラクロス界の至宝、Powell brothers。Casey, Ryan, Mikeyの三兄弟。全員ATで、95年から04年の約10年間に渡りSyracuseでAll Americanを総なめにし(全員1年から4年まで毎年All American...)、優勝も経験し、MLL/NLLのみならずUS代表でも主軸として活躍してきた。(先日RyanがNLLのBoston Blazersに新たに加わる事が発表され、先週からCaseyとRyanは再びコンビでプレーしている。Mikeyはもう完全に引退しちゃった感じだが。)

Syracuseのニュースブログを何気なく見る中で、そんなPowell兄弟に実は4人目がおり、今高校生だというニュースを目にした。なにーっ!?またあのSyracuse全盛期が訪れるのか!?と思いきや、よくよく見ると…という話。

リンク

4男、末っ子のMason。16歳。見た目はシュッとしててMikey寄りか?Casey, Ryanがもっさりキコリ系で、下二人がより今時仕様になってく流れか…
 
が、何とやっているスポーツはラクロスではなくアイスホッケーとのこと。しかもゴーリー。ラクロス的には残念だが、何とも面白い。

もともと裏庭でお兄ちゃんたちとラクロスをやっていたが、なぜか子供の頃からラクロスにはハマらず、ホッケーのゴーリーに憧れていたらしい。メットがカッコよくて、なぜか惹きつけられたとのこと。その後地元のチームでやったりやらなかったりしていたが、高校で本格的にゴーリーに集中しているとのこと。記事を読む感じ、遅くから始めたのでさほど現時点で突出したプレーヤーではないが、まあ、いいものは持ってるという感じだろうか。

ただ、読んでて非常に印象に残っているのが、「彼は彼だし、お兄ちゃんたちはお兄ちゃんたち。彼は彼のやりたいことをやればいいと思ってるし、応援したいと思っている。無理やりラクロスをやらせるつもりは無かった」という両親の話。本人も、「ま、俺は俺だし、自分のやりたいことやるよ。」とのこと。「何でラクロスやらないの?とかいろいろ文句言われてるのも知ってる。でもそんなの気にしねえよ。俺は俺だし」と。

“There’s always going to be critics,” Mason said. “I play my game. I zone them out. There might be nights where I have a good game or bad game. I just go see what I can do. I’m not being a Powell brother. I’m being Mason. I’m not trying to live up to expectations. I’m doing what I do.”

子供のやりたいことを尊重し、支援してあげるという、アメリカ型、支援型の子育て方針だなーと思って興味深かった。逆に言うと、そうやって「好き」や「得意」を大事にして、「自由に」「自分の意思で」「自己責任で」やらせて行ったからこそ、その先に、Casey, Ryan, Mikeyのような偉大なスーパースター、fantasistaが生まれたということなんだろうな、と感じた。巨人の星スタイルじゃああはならないよなと。面白いっすよね。こういう話。

Powell三兄弟がESPNUのニュースで取り上げられた際の動画。バックヤードで憧れの選手(Gary Gaitなど)の動きをMimicして(コピーして)遊んだり、兄弟で技バトルをしていた慣れの果てが彼らのトリックの源泉とのこと。

キャンプ等を紹介しているPowell Brothers Lacrosseのウェブサイト

いたる@13期

2011年2月1日火曜日

NLL 2011 Game Review vol.03 Philadelphia Wings @Colorado Mammoth

先週末はTVでWinter X-game、会場でNLLを観戦。Winter X 15のSuper pipeではShaun Whiteが他を寄せ付けぬ圧倒的な強さを発揮し、前人未到の4連覇。ShaunはもはやMichael Jordan, Tiger Woodsの域に達しつつある。幼少の頃からSkateboard, Snowboardの天才児として常にスポットライトを浴びて来た彼。潤沢な資金を背景に自分自身の大型パイプを作り、日夜「闇練」に励んで毎回新しいトリックを出して来る。強いから楽しいし儲かる。儲かるから強くなる。というスパイラルが加速され、誰も追いつけない領域に到達しつつある。完成度、スタイル、メンタル、「好き」や楽しむ心、全てに於いて負ける要素が全く感じられない。


(特に2000年代前半までは世界である程度のプレゼンスがあった日本も、X-game全盛時代を迎え、プロツアーの大型パイプに対応出来ずどんどん蚊帳の外に取り残されつつある。FIS Snowboard World Championshipという「公式」大会にトップレベルのプロが出場しなくなり、そこで勝つ意味が薄れつつある。國母選手を始めとした真駒内出身の選手達も苦戦が続く。アメリカやヨーロッパのプロツアーにガンガン参戦して行くしかもう世界のトップを目指す手段は無いんじゃないだろうか?この辺のビジネスが競技そのものを進化させて行くメカニズムが非常に面白い。)



さて、Philly Wingsのシーズン第三戦のDVD。AwayでColorado Mammothと。(NLLの観戦ガイドはこちら。)

Wingsは三戦目にして念願の初勝利!前半ボロボロから後半一気に爆発し、大接戦の終盤は家でテレビ見ながら大盛り上がりで「ぬああああキターーー!!!」やら「イェスッ!!!」やら絶叫してしまった...

背景

Colorado Mammoth(チームHP

NLLでは今期、オフシーズンにリーグ史上例を見ない程大きなトレードが相次いだ。その一つがJohn Grant Jr.のRochester KnighthawksからColorado Mammothへの移籍。膝の病気から復帰して以来昔の輝きを失ったが、それでも尚リーグ屈指のクラッチシューター。他には地元密着型でMLLのDenver Outlawsも引っ張るベテラン、戦う教師、Kidsに大人気のBrian Langtryがいる。

また、Canada西海岸はVancouver出身、Nenad, Ilija, AlexのGajic三兄弟(「イチ」と発音。クロアチア/セルビア系の名前かな?)も主力として活躍。次男Ilija、三男AlexはDenver大学出身で地元でも大人気。また、NCAAからは今年からNed Crotty (Duke), Ken Klausen (Virginia)が加入。(残念ながらCrottyはまだほとんど目立っていない&KlausenはACL(前十字靭帯)の怪我でリハビリ中)

Colorado州Denverは非東海岸地域として最近ラクロスが爆発的に伸びている都市。2014年のWLC会場にもなっている。NLLのMammoth, MLLのOutlaws共にファンベースが濃く、熱い。またDenver大学にPrincetonからHC Bill Tierneyが来て強豪校の仲間入りを果たしつつある。特にジュニアからハイスクールレベルでの伸びが著しい。スタジアムをパッと見て、客入ってんなー!という感じ。集客数でもMLL/NLL共に全米No. 1を誇る優良フランチャイズ。恐らくNBA Denver NuggetsやNHL Avalanchも保有するオーナーのStan Kroenkeの商才によるんだろう。会場の雰囲気の作り込みも、メディア戦略も一段洗練されている感じを受ける。

WingsHP

対するWingsはここまでの記事で紹介した通り開幕2連敗。Brendan Mundorf (A), Drew Westervelt (A), Ryan Boyle (A), Max Seibald (M), Kyle Sweeney (D)といった'10 US代表軍団を擁しながら、ここまでうまく機能せず。何とか初勝利が欲しいところ。

試合全体を通しての見所

何試合かTVでNLLの放映を見る中で、少しずつ試合を観るスキーマ(認知/思考の枠組み)が出来つつある気がする。いくつかこの試合を通してNLLならではの非常に重要な局面/要素だなと改めて感じた点をピックアップ。

フィールドと違い、ゴールが小さく、ゴーリーも大きい。基本的に構えられた状態でシュートを打ってもほとんど空いているエリアが無く、どんなに速い球であっても確実にセーブされてしまう。で、どうやってゴーリーが構えていないサイドにシュートを打つか?というのがオフェンスの最も重要な命題になっているように見える。基本的には、A. ボールを持った状態で自分自身が大きくゴール前を横断するランニングショットやダイブショットか、B. ボールそのものを動かしてゴーリーが今立っているポジションの逆に振り、ゴーリーがポジションを修正する前に打っちゃう、という2通り。前者は試合の映像見てれば口あんぐりなプレーが連発されるので放っておいてもインプットされると思うので、今回は後者について深掘り。

①リバウンドの重要さ
  • もちろん、フィールドでも重要だが、NLLを見ていると得点の2-3割がリバウンドから生まれているように感じる。シュート直後でゴーリーの体勢が崩れている状況、別の角度からのシュートに反応してポジショニングを修正出来ていない状況で生まれるゴールの空きスペースを狙うことが肝になっている。
  • 試合を見ていると、場合によっては恐らく端からリバウンド狙いのシュート(ある意味、ゴーリーの身体や後ろの壁に当てる「パス」)じゃないか?と思われるものもある。30秒のショットクロックもあるため、尚の事積極的にシュートを打って、とっととリバウンド、という傾向が強い。
  • またクリースにいるForward(=AT)も基本的にはシュートの瞬間から、場合によってはその前から得点機会としてのリバウンドをかなり明確に狙った動きをしている。イメージ、バスケのスクリーンアウトのようにシュートの反射軌道を予測してゴール前のポジションを争うゲームが起きている。また直接シュートに繋がる拾い方、ダイブしながら転がったボールを直接ゴールに押し込むタッチ等、フィールドでクリースをやることの多いATの選手に取っては恐ろしく参考になる動きが多い。是非注目してみて下さいな。
②ボールを逆サイドにパスで振って即シュートの重要さ
  • 逆サイドに展開してゴーリーがポジションを移してゴールの空きスペースを埋める前に如何にシュートしてしまうかが極めて重要になっている。所謂クリース横でのquick tap shotだけに限らず、ミドルレンジのシュートでもnon-cradleのquickで打ってしまっている。
  • さすがにquickでのミドルシュートはNLL選手と言えども簡単ではなく、時々キャッチミスしてしまっている。それでも尚、ミスのリスクを負ってでも、これを打つ事によって点が取れる可能性がある(そうでもしないと点が取れない)ということなんだろう。
  • これもフィールドのクリース周囲のエリアで出来ればロングスティック相手に相当な脅威になるはず。ゴールのサイズが大きいので、多少精度を捨てても成功する可能性が圧倒的に高まるし。
  • 現役の皆もよく二人組で、EMOやfast breakのウィングポジションを想定して、パスを貰って小さいワンクレイドルで瞬間的にシュート、を延々反復してると想像するが、ノンクレイドルのクイックでのミドルシュートもドリルのルーティーンに入れれば得点力がまた一段上がるはず。
上記2点共に、Canadian finisher達がNCAAで大暴れしている理由の大きな要因になっていると改めて感じさせる。

また、今回の試合は試合自体も非常にエンターテイニングで面白い。波の行き来がかなり明確。前半はWingsは相変わらずのダメダメっぷり。ターンオーバーが多く、単発低確率シュートが多い。が、後半になってPhillyの単発攻撃が決まり始める。身体能力の高いAmericanの強引にも見える攻撃が、Mammothの疲れもあってか決まり始める。ああ、これがやりたかったコンセプトなのね。というのが少しずつ見えてくる。そして最後の最後まで勝敗の読めない、手に汗握る接戦。点の取り合いのシーソーゲームというNLLの醍醐味が存分に出たいい試合。

NLLは一回一回の攻撃が短く、ガンガンシュートを打ってトランジションするので、この辺のmomentum(波/流れ)の行き来がフィールド以上に明確に出る。

個別のプレー/選手の注目点

2Q Wings 2点目、Max Seibaldのクリア後の1 on 1からロールしてシュートまで。セットオフェンスまで待たずにチャンスがあれば積極的に1 on 1でシュートまで行く。スペースがあるので、相手との力の差があればセットよりも確実に点が取れる例。(ちなみにロールから左のシュートは完全にフィールドラクロスの動き)

2Q Mammoth 6点目、Langtryの3点目。この人は本当にロングシュートが上手い。何で入るんだ?タイミングのずらし、上下の高さの騙し、そしてスクリーン使いがむちゃくちゃ上手い。元々フィールドの選手で、昔はイケイケでとにかくガンガンシュートを打っていたが、歳を重ねるに連れ確実に学び、チームでボールを共有する事を学び、NLLにアジャストし、老練な頼れるベテランへと成長した。サラサラロングヘアーがカッコいい。

3Q WesterveltによるWings 6点目。ん?この人このシュート毎試合決めてるぞ?恐らく確実に決められる鉄板の得意技。Fade away気味にGLEからトップに向かいながらスクリーンを利用して意表を付く右手のミドルシュート。成功率かなり高い。これもフィールドでも凄い有効なんじゃないかな?是非完コピ目指しちゃって。

Wings #18 Max Seibald ('09 Cornell captainでUS代表)によるクリア時の激突ダッジ。フィジカルに明確に差がある時はいちいち相手をかわさないで、正面からぶつかって潰す...

John Grant Jr.によるMammoth 8点目同点弾。6割くらいの力でスナイパーのようにパイプ内側の角を射抜くミドルシュート。次の9点目も。手首を異様に柔らかく「シュパンッ!」と振り抜いているのが解る。機動力は落ちているが、この辺のシュートの巧さ、勝負強さは健在。8割の力でより全身を使って打つシュートとセットで覚えて、状況に応じてギアを使い分けられると圧倒的に得点の幅が広がるはず。

Highlight

Live streamでの試合中継のReplay

来週は地元Phillyで再戦。会場でばっちり応援させて頂きます。

いたる@13期