2012年4月5日木曜日

NCAA 2012 Game Review vol.16 Virginia @Maryland

去年の決勝の組み合わせ。ACC (Atlantic Coast Conference)の2チーム、Virginia (2位)対Maryland (9位)の戦い。

去年はレギュラーシーズンはMarylandが勝ち、決勝ではVirginiaが雪辱を果たして優勝。

今年はメンバーの大半が残っているUVAに対し、20人近い4-5年生が去年卒業したMD。一般的にはUVA有利と見られている。

何ともレベルの高い白熱した素晴らしい試合。NCAA Division 1トップ校同士の試合として申し分無し。さすがにシーズンも深まり3月も末になってくるとどのチームもしょぼいミスも減り、圧倒的に「締まって」来る。完成度の高い個人技/チーム戦術を見せてくれる。現役選手、コーチの皆さんが見て学ぶべき点が鏤められた教科書の様な試合の一つ。

逆転に継ぐ逆転、再逆転で、エンターテイメントとしても申し分無し。

印象に残った点が多過ぎて全部キャプチャー出来るか自信が無いが、忘れないうちに書き落とすと、
  • UVA #6 AT Steele Stanwick (Sr)と#10 AT Chris Bocklet (Sr)のコンビ芸がまたしても炸裂。1年生の頃からATで出始めて4年目。大学ラクロスの歴史に名を残すコンビの一つだろう。吉本のファミリーレストラン・ハラダ氏のプロ芸人選手名鑑的に言うと、エックスでボールを持ち、シュートはもちろん、スライドを発生させつつ絶妙のタイミングで鋭いフィードにより必ず何かを発生させるボケのStanwickと、どんなパスでも涼しい顔で拾って、異様に速い反応速度とクイックモーションで絶対に外さずに鋭く安定して決めきる事で締めるツッコミのBockletの最強漫才コンビみたいな(スポーツ→お笑いなので例えの方向が逆だが...)。
  • 今回のSteeleの凄さは、やはりパス、1-on-1からの得点ももちろんだが、試合を通しての、状況がやばくなった時の「ownership(オーナーシップ)」。つまり、「この試合は『俺が負けさせねえ』、『俺が何とかしてやんよ』」という、責任感/自覚/断固たる決意と覚悟。そしてそれを実際に遂行するだけの実力と自信。これがこの人がNCAA最強のClutch(クラッチ=勝負所で普段以上の強さを発揮し、チームを勝ちに導く)と言われる所以だろう。
  • もう一点、Steeleのプレーで素晴らしいと感じるのは、フィードを投げる際に、常にレシーバーのスティックではなく、「スペース」に投げている点。つまり、レシーバーが走り込んで来るであろう/走り込んで来るべきスペースにボールを投げている点。これによりどフリーで、どボックスで受け手がボールを受け、確実に得点に繋げる事が出来ている。見習いたい。
  • あと、超マニアックな話だが、お気づきの皆さんも多いかもしれないが、実はSteele、メッシュ全盛のこの時代に於いて、NCAA Division 1トップ校の中で唯一、Traditional Mesh / Traditional Stringingのヘッドを使っている(革ひも4本を縦に通し、それをダイヤモンド型のstringingで繋ぐ目の粗い穴のあれ)。曰く「こっちの方が安定する」とのこと。実は僕自身も現役時代は2-3年生時代に使っていたので良く解るが、こちらの方が①ポケット内でボールが動かずに安定する、②従ってホールド力が上がる、③よりスナッピーにクイックモーションで投げられる、④強いwhip(ひっかかり)を作れるため、速いシュートが打てる、などのメリットがある。一方で、調整に時間が掛かるなどのダウンサイドもあるが。彼のtradを見て気付いたのだが、"Rock-it"などの変則ではなく、通常のTrad編みなのだが、実はボトムのサイドレースを少し緩くする事で、通常上ポケットになり易いTradを上手く下ポケットにアジャストさせている。これにより、スティックを立てての片手クレードル時にボールがこぼれ易くなるというtradの弱点を防ぎ、ボトムにボールを乗せられるというメッシュの良さと、上記のトラッドの良さの双方を両立させると言う裏技を成し遂げている。「へーっ!考えてんなー!」と思った次第。(ってtradを見た事無い皆さんには何のこっちゃだが...)
  • Bockletに関しては、相変わらずクリースでのフリーの作り方の巧さ、そしてシュートの上手さが神。振り向き様に一瞬で鋭く縦に振り抜き、高低差を作り。コースを読ませてない。
  • UVA MF #24 Rob Emery (So)がえげつなく凄い。アウトサイドのシュートが鬼。今のNCAAでは恐らくTime and Room(スタンディングシュート)ではトップ数人。California出身のまだ2年生。身長190cmか。高校時代まではCaliforniaなので完全に大学デビューだが、それでこれってマジかと。
  • 両ゴーリー素晴らしい。特にMarylandの#31 Niko Amato (So)はいくつか鋭い目の覚めるセーブを見せた。
  • UVAのDFに対して3Q MDが攻略法を見つけたのか、面白い動きを何回か使い、効果的に決まっていた。多分Man-toのDF相手にだったと思うのだが。MFが上から縦に抜き、ゴール横付近まで来た所で、"J"の文字の様に、スライドが戻った所でグイッと内側にU-turnしてゴールの表側に振り向いて戻り、表側に登って行く動き。これによりマークマンのDFが背中から追い掛けることになり、Adjacentのスライドが帰った後にゴール前の危険な角度と距離の場所にグイッと抉って行く事が出来ている。「ん?こんな簡単にシュートまで行けるのか?」と感じた以外な抜け穴。恐らくMD HC John Tillmanの策略の一つだろう。OFコーチは研究/分析してみてもいいかも。
  • あと、全体的に、ハイライトを見ても感じるが、とにかく両チームとも(特にUVAは)シュートが本当に上手い。ミドルレンジ、ロングレンジのシュートが特に。かなり早いモーションで、かなり速い球を、かなり正確に叩き込んでいる。従ってシュート成功率が異様に高い。MarylandのAmatoというNCAAトップクラスのゴーリー相手に。徹底した縦振り/Quarter振りでスティックを体から離してトルクを生みつつスティックを体で隠し、コースを読めなくしている事に加え、相当数反復しまくっている事がわかる。#24 MF Emery (So), #34 MF Briggs (Sr), #3 MF Ryan Tucker (Fr, 元Hopkins All AmericanでUS代表でPhiladelphia Wingsの優勝経験者&HCのJohn Tuckerの息子)のMF 1st stringの3人は特にやば過ぎる。シュート上手くなりたい選手は何度も何度も反復して見て目に焼き付けたい。

Highlight



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