2016年12月28日水曜日

2017 Face-Off Yearbook Pre-Season Top 20

12月に入り、首を長くしていたInside Lacrosse誌のFace-Off Yearbookが手元に届いた。気になっていたPre-SeasonのNCAA Men's Division 1のランキングは以下。
  1. Denver 
  2. North Carolina 
  3. Maryland 
  4. Notre Dame 
  5. Loyola 
  6. Yale 
  7. Syracuse 
  8. Duke 
  9. Navy 
  10. Brown 
  11. Towson 
  12. Johns Hopkins 
  13. Albany 
  14. Virginia 
  15. Richmond 
  16. Penn State 
  17. Fairfield 
  18. Air Force 
  19. Rutgers 
  20. Marquette
なるほど。いくつか個別に気になる点はありながらも、全体としては非常に納得感あり。

1位のDenverは納得。Princetonで90年代以降6度の優勝を成し遂げ、現代ラクロス戦術の礎を築いてきた名将、Headcoach Bill Tierney氏が率いて7シーズン目。2015年の優勝の後、OFのタレントが引き続き残ってる。FOも強い。2016年は、DFが若くて未完成だったように見えたが、そこが今年しっかり立て直してくるとなると、確かに優勝候補筆頭という事になってくるはず。(まあしかし、90年代後半、2000年代にラクロスを見ていたファンとしての感覚からすると、当時NCAA D1に加入すらしてなかった/した後も超弱小だった西のDenverが優勝したりPre-Season Rankingで1位だったりってのは、想像すら付かなかった現象。改めて驚愕。ラクロスのチーム作りに於いて、不可能は無いよね、枠組みに囚われちゃだめだよね、と改めて思い知らされる。)

2位は2016年優勝のNorth Carolina (UNC)。まあ、どうでしょうねー。2位はちょっと買い被りすぎかなと。昨年優勝の印象がちょっと乗っかって盛られちゃってるよねと。ただ、確かに、個別に中身を見ると、メンバーはかなりごっそり残っている上、去年それほど出ていなかった才能のある下級生や、U-19で活躍していた選手も含め複数の強い1年生が入ってくる。うまくハマれば、確かに2年連続Final 4も不可能ではないように見える。優勝の結果、Assistant CoachとVolunteer Coachを失っており、その辺が細かく影響するようにも思える。どうなるか。地元なので今年もUNC推しで応援していこうと思っている。

3位のMaryland。優勝まであと一歩を過去6年で四度。2016年も、盤石の体制で今年こそは、と言われていたが、本当に最後の最後で1センチ及ばず…メンバーはかなり残っている。決勝でのDFの混乱に若干不安が残るが、間違いなく悔しさをバネに断固たる決意で挑んで来る事を考えると、個人的には、Marylandが優勝する気が。

ここ10年で3回優勝のDukeが、8位と珍しくちょっとランキングを落としている。昨年いた大エースのMyles Jonesが抜けてしまった穴を埋めきれてないか。ただ、間違いなく優秀な選手は多く取れてるし、Coach Danowski氏も引き続き素晴らしいコーチなので、これまたFinal 4行っても全然おかしくないはず。

僕が個人的に大好きな攻撃的&クリエイティブラクロスのSyracuseは7位。まあ、どんなランキングであろうと、楽しいラクロスを見せてくれれば満足っす。

東大ラクロス部が遠征時にお世話になった古豪Hopkinsは残念ながらまたしても10位圏外。やはり、ここの所トップレベルに返り咲けていない。リクルーティングで勝負が大きく分かれる現代NCAA Lacrosseのゲームに於いて、学校の規模や知名度、専攻の偏り等、環境要因の変化に伴う構造的な弱みが出始めている。加えて、鬼軍曹で知られるCoach Petro (Dave Pietramala)氏のスタイルが、今時のMillenialの高校生選手から敬遠され、必ずしも全米からベストな選手を多く集めきれてないようにも見える。素晴らしい人格者で、心から尊敬できる指導者なんすけどねー。(ベンチでブチ切れて怒鳴ってる姿をテレビで見ると、学校選びを考えてる選手や親が躊躇するのも解らなくもない。)

という感じですかね。2月の開幕が今から楽しみだ。

2016年11月25日金曜日

Jacksonvilleの新体制

2017年のシーズンも引き続き地元North Carolina州Chapel HillのUniversity of North Carolina (UNC)を応援して行こうと思っているが、一つ、頭の片隅で気になっているチームがある。

南のFlorida州で唯一のNCAA Division 1のチーム、Jacksonville大学Dolphins。(リンク

2010年に加入した新設チームで、現時点ではまだ下位に止まっている。最初の年にそこそこ才能のある選手を集めて話題になったが、その後まだ飛躍できずにいた。

そのJacksonvilleで、今シーズンオフ中に、コーチ陣の刷新が行われる事が発表された

Head Coachは、Syracuse '11のGoalie、John Galloway。NCAAの歴史の中でも最高クラスの実績を残したゴーリー。MLLでも長年Rochester Rattlersで守護神として君臨してきた。Syracuseを卒業した次の年に、DukeのHC Danowski氏の下でAssistant Coachとしてコーチの勉強をしており、どこかのタイミングでコーチに転身するのかなと思って見ていた。選手時代のインタビューやプレーを見て、明らかにLacrosse IQが高く、賢くて、人間的にもMatureで、素晴らしいリーダー、コーチになりそうな雰囲気をビンビンに醸し出していた。卒業から5年、27歳でのNCAA Division 1のHead Coach就任は、アメリカのラクロス界の中でもかなり異例の若さでの就任。

加えて、Assistant Coachには、同じくSyracuse '98で、LacrosseのMichael Jordan、生ける伝説こと、Casey Powell氏が就任。NCAA時代には優勝一度、MVP二度、All American First TeamをATで一度、MF一度獲得。MLL/NLL/US代表で大活躍し、MLLではなんと40歳の今年までプレー。現在Floridaに住んでいるとの事で、ロケーションもあっての事だろう。

さて、この新しいSyracuse出身のスーパースター二人の体制の下で再出発するJacksonville。今後数年でどうなっていくのか非常に楽しみだ。間違いなく言えるのは、リクルーティングで強さを発揮するであろうという点。今の高校生とその親達に対しては間違いなくブランドの二人。加えてFloridaを始めとしたSouth Eastエリアは、決して伝統的にラクロスの盛んだった地域ではないが、ここ何年かで草の根で競技人口が増えてきており、近年でも何人かトップクラスのAthlete/選手を輩出し始めている。

1-2年でどうこうという事はないだろうが、長い目で見たときに、4-5年後にどうなってくるか、非常に楽しみでもある。

新チームのカッコいいTeaser。

あーシーズン開幕楽しみー!!

2016年10月31日月曜日

Face-Off Yearbook 2017

2017年シーズンのInside Lacrosse Face-Off Yearbookが予約受付を開始した。早速申し込み。(リンク)海外からでも買えるはずなので、日本の選手/ファンの皆さんも手元に一冊置いて予習に使うってのでどうでしょ。

いやー今から楽しみになって来た。いくつか気になるのは、
  • Defending ChampionのUNC (University of North Carolina)はどこまで維持できるのか?まあ、ぶっちゃけ今年の優勝は「(まぐれ/奇跡とまでは言わないが)下馬評以上のベストケースシナリオ」だったので、またしても強運を引き寄せられるか。
  • Tewaaraton Trophy Winner (MVP)の#4 AT Dillan Molloyが4年生で戻ってくるが、ヘッドコーチが変わって主力が卒業で多めに抜けたBrownは昨年程の活躍を見せられるのか?
  • 惜しくも今年準優勝のMarylandが2017年も圧倒的に安定してるはず。ほとんどの主力が戻ってくる。2017年こそは悲願の優勝を成し遂げられるか?決勝の試合後のベンチで悔しさの中雪辱を誓っていた選手達の顔が印象的だった。
  • Denverも今年は特にDFが再建の年のイメージだったが、OFは主力が残り、DFも経験を積んで手堅くなってくる。また優勝に絡んでくるはず。
って辺りですかねー。

2016年10月28日金曜日

Nike Commercial - Come out of Nowhere.

灼熱のNorth Carolinaの夏が終わり、朝外を走るのも肌寒い季節になって来た。

少しずつ、冬のNCAA Lacrosse開幕に向けて、胸がざわざわしてくるのを感じる。

最近アップロードされたNikeのCM。"Come out of Nowhere."

「お前はこんな場所には場違いだ」「地元でやってろよ」「は?なんでお前みたいなやつがここでやってんの?」いろんな言葉を投げられるけど、「でも、関係ねえだろ?」「今、こうやって、君はここに立っている。」

っていうLeBronの言葉。

アメリカの地で、経営リーダーとして、世界の舞台で活躍できる経営者を目指して戦う毎日の中で、時々、ふと、「ん?何で日本人の俺がここにいるんだ?」「場違いなのか?」という疑問が頭をよぎる事がある。そんな中、「うん、でも、信じてここで戦おう。チャレンジと成長を楽しもう。最高峰の舞台で自分を磨こう」と常に原点に帰って自分に言い聞かせてきた。

そんな中、ふと、心に刺さった動画でした。

2016年6月17日金曜日

なぜUNCが優勝できたか

今回のUniversity of North Carolina (UNC) Tar Heelsの優勝、再三書いてきたが、非常に特別な物であったと共に、多くの関係者にとって予想外の結果だった。

UNCは80年代、90年代初期には四度の優勝を果たし、王国を築いたものの、その後低迷し、何と今回の優勝は1991年以来の25年ぶり。加えて、今シーズンは主力を卒業で失い、再建元年だった。シーズン序盤から格下にも負け、12勝6敗でトーナメントもギリッギリのノーシードでの参加。6敗、ノーシードからの優勝はNCAA史上初。

今年の年明けから地元Chapel Hillで試合を見つつ応援してきた地元ファンの自分も、ぶっちゃけまさか優勝できるとは露ほども思っていなかった。

なぜ、優勝できたのか。決勝戦1試合に限らず、シーズン全体、よりLong-termの視点、リーグ全体の視野も踏まえて、ILの関係者インタビューや記事等も参考にしつつ、考察してみる。

自分自身に取っても学ぶべき点があるかな、と感じたので。典型的な低迷組織のTurn Around、変革リーダーシップの事例だと思うので。日本のラクロスチームを考える中でも参考になる点があるとも思いますし。

1. Head Coach Joe Breschi氏の功績

やはり、これが最大且つ直接の理由の一つだろう。彼自身80年代後半に選手としてUNCでプレーし、卒業直後にAssistant CoachとしてUNCで優勝を経験している。

低迷するUNCをターンアラウンドするために2008年に前職のOhio StateのHead Coachから、UNCに請われて母校のHead Coachに就任。そこから8年掛けての優勝達成

今年いくつかのインタビューを聞く中で、やはり今回の優勝は彼の貢献無くしては絶対にありえなかったという事がよーく解った。個別に要素要素を見ていこうと思う。

2. 根源的な意識改革

Breschi氏が就任した頃のUNCは、典型的な二流チームだったとの事。当時、Duke, Maryland, Virginiaと4チームで構成されていたACC (Atlantic Coast Conference)では、万年ボコられ役。NCAA優勝なんてとんでもない夢。選手たちの意識レベルも低かった。

そこに、Breschi氏がやって来て、8年掛けて、優勝できるチームにまで変革させて行った。徹底して、自分たちはトップクラスのチームになるんだ、ACCの中でも堂々と渡り合って勝って行くんだ、5度目の優勝を果たすんだ、という意識を刷り込んで行ったとの事。(スラムダンクで、皆が引いてる中、ゴリが「全国制覇」をいきなり目標に掲げて、桜木と流川が頷いて、徐々にチームの皆に感染して行った、あれですな。)

Chapel Hillに住んでいてUNCの生徒や環境を見ているとよーく解るが、確かに、強豪ラクロスチームを作るのは簡単ではない事が解る。気候も温暖で冬も暖かく、街の雰囲気が優しくのんびりしており、ザ「牧歌的」。都会の荒波の中で、目をギラギラさせて、「競争に勝って優勝してやんよ!」というメンタリティには、確かになりにくい。加えて、学内での花形スポーツは常に、全米トップクラスで全国民が注目するバスケットボール。その影に隠れて、プレッシャーを受けずにのんびりとラクロスができてしまう環境。

そこからの改革の歴史だったらしい。

3. 早朝練習への切り替え

大きな切り替えが、それまで午後にやっていた練習を、午前7時からの朝練に変えた事。

授業に出て、(人によっては出ずに昼ぐらいまでのんびり寝て)午後からの練習では、集中力も散漫になるし、欠席/遅刻者も出るだろうし、加えて夏から秋に掛けては(アメリカ南部に位置するNorth Carolinaは)気温も湿度も高く、練習の質が確保できない。という事で、早朝の静かで涼しい中、グッと集中して2時間バチッと効率よく練習するスタイルに切り替えたとの事。これにより練習の質が上がったとの事。

4. リクルーティングの徹底的テコ入れ

誰の目から見ても明らかな変化はここ。そして、これがJoe Breschi氏の最大の貢献。

現代のNCAAラクロスに於いて、リクルーティングは最大の戦略変数になってしまっている。一流の高校生選手を十分な数確保しない事には、そもそも土俵にすら乗れない。

UNCの学校としてのブランドと素晴らしい環境に加え、Joe Breschi氏の超PositiveでSupportiveな人柄、チームの攻撃的でダイナミック、且つ「Family」と学業を大事にする哲学、「Fun」なラクロススタイルにより、8年間で急激にリクルーティング市場に於いて最も魅力的なチームの一つになり、多くの有力高校生選手を集められるようになって来た。

今回の優勝は正に、Joe Breschi氏になってからのリクルーティングが一巡して、全学年彼ががっちりリクルーティングした選手たちによる優勝だった。

高校オールスターである、Under Armor All Americaに選ばれた選手が4学年合計で20人はNCAAでも最大。選手個々人のタレント、フィジカル、個人技では、(突き抜けたスーパースターこそいないものの)明らかにNCAAでもトップクラスのチームになった。

今回のトーナメントでも、再三書いたが、明らかにアスリートとしてのフィジカル、そして選手層の厚さで、単純に走り勝つ、当たり勝つ、後半にスタミナと層の厚さという総力戦で勝つ、というシーンが何度も見られた。

5. Joe Breschiコーチのポジティブでサポーティブな人柄、スタイル、価値観

Joe Breschi氏の言動を見ていて感じるのは、「今時の選手向き」かな、という点。厳しく、理不尽な鬼軍曹スタイルとは対極にあり、Flexibleで、ポジティブで、厳しさと優しさのバランスが取れている。練習中も「いいよ!」とか「素晴らしいね!」という「褒めて伸ばす」声掛けが圧倒的に多い。個性を大事にし、一人一人の選手の自主性を重んじ、Respectを持って接する。選手たちと時に友達のように、家族のように近い距離で接しており、一緒になって喜び、楽しんでいる。(見ていると、本当にお兄ちゃんかお父さんという感じ。)

明らかに、DenverのBill Tierney氏、VirginiaのDom Starsia氏、HopkinsのDave Pietramalla氏と言った、歴代の、伝統的な厳しいスタイルのコーチたちとは違う、新しい世代のコーチ、スタイル。

今の現役選手に当たる世代は、「Millennials」と呼ばれる、Social MediaやiPhoneを経て、CollaborationやDiversityの中で育って来た、自分大好き世代。昔のようにCompetitionとDiscipline一辺倒で自分を殺しながらやりたい世代じゃない。

そりゃ今時の高校生はそっちに魅かれるよね、と。

6. 選手たちのOwnershipとLeadership

加えて、上記のBreschiコーチの哲学/スタイルにより、「コーチが指示/命令するから」、ではなく、自分たちが自分たち自身の為にやるんだ、というOwnership/当事者意識/自主性、俺たちがやらなきゃ/変わらなきゃダメなんだ、というLeadershipが自然発生的に生まれて行った。

これまで見てきたチームの中でも、明らかにこの辺の、選手自身の持つOwnershipやLeadershipが強いチームだったように見える。

7. 卒業生の巻き込み

Joe Breschi氏がインタビューで挙げていたのが、就任直後から、卒業生のネットワーク/リソースをフルにレバレッジしたという点。

金銭面での支援、試合の応援もそうだが、アイデアを貰ったり、特に数多くの高校生と会い、説得/勧誘する必要のあるリクルーティングでもいろいろ助けてもらったとの事。

確かに、UNCを見ていると、明らかに他校と比べても卒業生のネットワークが強く、試合会場で感じられる「コミュニティ感」「ファミリー感」が圧倒的に強い。

8. ピーキング

これは間違いなく今年どハマりした要素の一つ。

例年Dukeが非常に上手くやっている。

多くのチームが、2月のシーズン開始からスタートダッシュするも、4月にピーキングしてしまい、5月に失速して消えていく。

今年のUNCは遅すぎるぐらいのタイミングでピークを迎えていた。3月までグラグラ。4月にちょっとずつ良くなってきたが、まだまだ。5月に入って、トーナメントでも、本当に花開いたのは準々決勝からの最後の3試合だった。

フィジカルな完成、個々人のメンタルの安定と自信、チーム全体の統制と協業、戦術やロースター(人選)の安定など、最後の最後にグググッと加速度的に、引くほど完成度が上がって行った。

逆に、準優勝だったMarylandは、シーズン初旬から明らかに強かったが、トーナメントに入って大きく伸びたようには感じなかった。(逆に、細かく残っていた弱点/課題が最後まで潰しきれていなかった)

優勝が狙えると言われていた去年のUNCも、シーズン中は良かったが、最後におかしくなってトーナメントで沈んでしまった。

改めて、シーズン最後のトーナメントで強かったもん勝ち、というこのNCAA Lacrosseの「ゲームのルール」を思い知らされたシーズンだった。

9. プレッシャー/注目度の低さ

正直、これもあるはず。

Joe Breschiコーチも、選手たちも、再三「ぶっちゃけ誰も期待してなかった」「プレッシャーがなかった」「伸び伸びプレーできた」と言っている。

まあそりゃそうだよね。だってレギュラーシーズンで6敗もしてるし、トーナメント出場もギリだし。ぶっちゃけ地元で応援していた僕ですら「トーナメント出られたー、ラッキー♪」ぐらいにしか思ってなかった…

逆にMarylandの例で言うと、シーズン当初から「今年こそは41年ぶりの優勝の年!」と言われていたし、思っていたし、周囲からのプレッシャーは相当な物だったはず。

10. 組み合わせ

本当に、組み合わせに恵まれたトーナメントだった。数あるシナリオの中で、トーナメントの組み合わせに関して言えば、ある意味神懸かったレベルで、ラッキーな結果になった。

一回戦で当たったMarquetteは、確かにリーグ戦では多く勝っていたが、新興校で、明らかに自力でUNCの方が上だった。

元々、準々決勝で当たるはずの山には、昨年優勝で今年も一度負けているDenver、更に準決勝で当たるはずの山には終生のライバルで今年もOT 1点差で辛勝しているDukeがいたが、それぞれTowon、Loyolaに負けて早々と姿を消してくれていた。

決勝も、もしBrownのMVP #4 AT Dylan Molloyが足を骨折せずに残っていたら、Marylandに勝ってBrownと当たり、負けていたかもな、とも思う。Marylandが倒したSyracuseには今年2度がっつり負けており、天敵状態になっていた。

これ以上無い程の筋書きで、苦手な敵がバタバタと倒れていき、道が開けて行った(少なくとも、切り開きやすい敵になっていった)という印象を受ける。

という感じ。まあでも、本当に、いろんな要素が重なって、加えて強力な運もあって、成し遂げられた優勝だったなと感じる。地元Chapel Hillのファンとしては本当に素晴らしい夢を見せて頂きました。あざっした!

2016年6月13日月曜日

NCAA 2016 #20 Semi Final - Maryland vs Brown

既に試合から2週間が経過してしまったが、週末にちょっとずつ家で撮り溜めした試合を見直し。

再び時間軸を遡って、準決勝第二試合。Maryland vs Brown

1. Background

Marylandは優勝候補。

Brownも同じく優勝候補と見なす関係者は多かった。今年最大の台風の目。超攻撃的Fun Lacrosse。DFでも積極的に10 man rideでフルコートプレス、6-on-6でも頻繁にダブルでボールを落としに行き、Transitionでガンガン点を取りに行く。Long stickがそのままFast break、Slow break、更にはセットオフェンスまで残り、そして実際に点を取るというストロングスタイル。Turn-overが多くなりがちだが、それを補って余りある得点数で勝ち続けてきた。

が、一回戦のHopkins戦で攻撃の要、この大会後にTewaaraton Trophy (MVP)を獲得した、今年のNCAAのベストプレーヤー、#4 AT Dylan Molloy (Jr./AT)が右足を骨折。一気に雲行きが怪しくなる。

2. Recap

点の取り合いの接戦。非常にいい試合。

前半までは一進一退、9-8でMarylandが1点差リードの展開。

Q4で地力の差が出て一時4点差までMarylandがリードするも、そこからMarylandのDFのミスもあり、Brownが気持ちで同点にまで追いつき14-14でOTへ。しかし、最後にBrown DF陣が力尽き、スライド後にチェックアップのミスでゴール前にどフリーを作られて勝負あり。

3. 見所

最大の驚きは、何とBrown #4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)が骨折を押して気合いで出場した点。そして、実際に2点ゴリゴリの1-on-1から得点。ハート強すぎる。

あとは、何と言ってもAll America 1st Team (今年のBest 10)を取ったBrown #91 G Jack Kelly (Jr./3年)。むちゃくちゃ危ない1対1の局面をいくつもサクッとキャッチセーブしている。ゴーリーの選手は見て学べる点が本当に多い選手。

4. Highlight


2016年6月7日火曜日

NCAA 2016 #19 Semi Final - North Carolina vs Loyola

時間軸が前後するが、続いて準決勝1試合目、North Carolina vs Loyola。先週会場で見たが、家に帰って再度DVRの録画をテレビで見直してみる。

1. Background

UNCは優勝候補の一角Notre Dameを前半爆発して13-9で破って25年ぶりのFinal 4。

Loyolaは一回戦でDukeに雪辱し、準々決勝でTowsonに勝って、前回優勝の2012年以来二度目の優勝を目指す。

2. Recap

再び出だしからUNCが爆発し、一時10点差、前半終了時点で14-5。Q3にLoyolaが頑張るも、差を詰めきる事は出来ず、18-13の安全圏リードでUNCが勝利。

3. 見所

UNCの勝利の方程式が思いっきりハマって勝った試合。
  • 特に前半、FOを支配。#24 FOGO Stephen Kelly (Jr./3年)が大活躍
  • OFMFの走力、ダッジ力で崩しまくり。スライド発生させまくり
  • ATの1-on-1も効果的
  • DF手堅い。1-on-1でほとんど抜かれない。特にDFMFのでかくて動ける2枚が徹底して脚で着いて行って、鬼のプッシュで押し出し、相手のOFMFに一切仕事させない
  • 特に、相手エースの#7 AT Pat Spencer (Freshman/1年)には早めのスライドのダブル/トリプルで確実に潰しきり、パスミス誘発
  • Canadaのラクロスエリート養成学校The Hill Academy出身で、インドアラクロス(Box Lacrosse)出身のLefty #45 AT Chris Cloutier (2年/Sophomore)が存分にその能力を発揮。9得点のSemi Final史上最多得点(90年代の同じくCanadianの「ラクロスの神様」SyracuseのGary Gaitとタイ)。
4. Highlight


2016年6月4日土曜日

NCAA 2016 #18 Final - Maryland vs North Carolina

既に結果や意味合いについてはいろいろ書いたが、敢えて、決勝の試合についていくつか振り返ってみようと思う。

結局、会場で1回、ホテルに帰ってWatch ESPNのOnlineで1回、家に帰ってDVRの録画をテレビで1回と、計3回も見てしまった…

が、何度見ても痺れる程素晴らしく、ハラハラドキドキでき、そして感動して泣きそうになってしまう。Transitionも多く、最後までダレる事なく高いレベルのプレーを維持し、全力の激しいプレーを見せ、点の取り合いで、追い付き追い付かれの乱打戦。加えて感動とドラマと人間模様も垣間見れる。

IL Podcastでも、記憶に残っているNCAA Men's Lacrosse Division 1のFinalとしては、史上最も素晴らしい試合だったとコメントされていた。昔VHS等で見た事のある90年代の試合から思い出してみても、確かに個人的にも覚えている全てのFinalの中で間違いなく最高の試合だと言い切れる。それだけ素晴らしい試合だった。リクルーティングで新入生に見せる、家族や友人や彼女に見せてラクロスの素晴らしさ/格好良さを見せるなら、まさにこの試合で決定かなと思った。

1. Background

Marylandはレギュラーシーズン14勝2敗、トーナメント2回戦で強敵Syracuseを13-7で粉砕、同じく優勝候補だったBrownをOTの末15-14で破り、破竹の16連勝中。最も完成されており、穴がなく、誰もが認める優勝候補。ここ5-6年は誰もが認める強豪校だが、実は1975年以来優勝しておらず、今回は待望の41年振りの優勝を目指す。2011年以降新コーチJohn Tillman氏の元更に躍進し、2011、2012、2015年と過去6年で3度Finalに進むも、全て負けており、あと一歩の所で優勝に手が届いて来なかった。今年は上級生が多く、戦力も充実しており、本人達は勿論、メディアやファンからも「今年こそは待ちに待ったMaryland優勝の年(This is THE year.)」と言われて来た。

対するNorth Carolinaは、これまでの記事で何度も書いたが、昨年主力をごっそり卒業で失いレギュラーシーズンでは8勝6敗。シーズンの最初に格下(Hofstra、UMass)に負け、トーナメントもギリギリで出場。ファンも含め誰も決勝に来るとは思っていなかった。が、準々決勝、準決勝と、ググッとチームとして機能し出し、最高のタイミングでピーキングを迎え、一気に"Hot"なチームとしてに決勝に躍り出てきた。80年代、90年代に四度優勝の黄金時代を経るも、その後長らく低迷し、1991年以来25年振りの優勝を目指す。

2. Recap

出だしに準々決勝、準決勝で見せた最初の爆発で、UNCが一気に4得点。その後Marylandが追いついて、一進一退の追いつき、突き放し離し、逆転に次ぐ逆転でQ4まで。

Q4終了間際に13-11でMarylandがリードし、勝負あったかに思えたが、EMOと1-on-1からのシュートでUNCが追いつき、最後はOT開始のMan Downでの最大のピンチをセーブでしのいだUNCが逆にEMOを得てトーナメント合計19得点で史上最高得点のCanadian #45 AT Chris Cloutier (Sophomore/2年)がこれ以上無いPlacementでロングレンジのシュートをたたき込んで劇的幕切れでUNCが優勝。

3. 見所

いくつか、ILの記事等で指摘されていた点も含め、見所、そして、試合の勝敗を決した要素を挙げてみたい。

実は、試合開始前も、Marylandが圧倒的に有利で、10回やって8-9回はMarylandが勝つかなと予想していたし、試合中も会場で見ながら、Marylandが圧倒的に有利にいいチームだし、いいラクロスをしていたし、優位に立っていると感じながら見ていた。が、冷静になって何度か試合を見直す中で、「あれ?意外とそうでも無いかな?意外とUNCが有利だった要素も多いな」と気付いた。その辺も踏まえて。

まずは、Marylandが優れていた/勝っていた点から。

Face Offは明らかにMarylandが勝ち
  • 思った以上に差があった。19勝11敗で圧倒的にMaryland。
  • #18 Face-Offer Austin Henningsen (Freshman/1年)が素晴らしかった。反応の速さ、掻き出しの正確さ、ウィングとの連携。
  • Marylandには今年から、Face Off Academyの主催者の一人、MLL Florida LaunchのFOGO Chris Mattes氏がFace Off専門のVolunteer Assistant Coachとして参加しており、ゴリゴリにFace Offerたちを鍛えており、試合中も相手Face Offerの癖や状況に応じて的確なアドバイスを与えていた。
  • UNCはこれまで#24 FO Stephen Kelly (Jr./3年)が6割以上の安定の勝率を誇っており、重要な勝利の方程式になっていたが、彼が完全にやられてしまった。最初はClamp (被せ/挟み)で真っ向勝負したが全く勝てず、続いてRake (掻き出し)に切り替え、それでも勝てず、最後はもはや相手に取らせてGround Ballでチェックして奪う事に専念したが、それでも勝てず。
OFの得点源3枚による得点力
  • セットオフェンス、EMO、Unsettled Situationで、シュートの素晴らしさが光った。
  • #1 AT Matt Rambo (Jr./3年)、#2 AT Colin Heacock (Jr./3年)、#40 OFMF Connor Kelly (Sophomore/2年)の3枚のシューターが力を見せつけ、それぞれ3得点、2得点、4得点。
  • フリーでのシュートの作り方、Middle Range、Close Rangeでのシュートの技術は本当に素晴らしかった。オフェンスの選手は参考に出来る点が非常に多い3人。
  • 試合中も、余りにも美しいシュートまでの設計、完璧なシュートでの得点に、思わずため息をつき、敵ながら「こりゃ厳しいなー!」と何度も思わされた。
一方で、冷静になって客観的に何度か見直すにつれ、UNCの良かった点、Marylandに勝っていた点が結構有った事が解って来た。

選手個々人のアスリートとしての「個」の強さ、特に、1-on-1での強さ
  • UNCの方がサイズ、身体能力、特に走力/機動力と、スタミナに分が有った。パッとフィールドで見た際に、一目で、UNCの方が全体として、デカく、太かった。
  • 高校オールスターである、Under Armor High School All American選出の選手がUNCは20人でNCAA中最多、Marylandは14人である点からも分かる。
  • Marylandは、UNCに比べるとちょっと選手の線が細いようにも感じた。フィジカルやWeight TrainingをUNCほど重視してないのかな?とも勘ぐってしまった。
層の厚さ
  • 加えて、UNCは明らかにそれらのTop athleteの「質」だけでなく、「量/数」で明らかに上回っていたように思える。
  • OFMFの3rd set、DF MFの2nd set、Face Offerの2枚目といったベンチの控えのメンバーまで行ってもフィジカルがガクンと落ちるという印象が無かった。相手から見ると、「何で無限に強いやつ出てくるんだ?」と感じられたんじゃないだろうか。
  • 思い出すと、ここまで分厚く強い選手が控えてるチームは確かに過去のNCAAでもちょっと思い出せないかな?というレベル。UA All American 20人というのは恐ろしい数字だ。
  • 一方のMarylandは、明らかに1枚目の選手たちはトップクラス。そして2ndの二人目くらいまでは強いが、そこから先の深さはあまり感じなかったかなと。
特に、OF/DF双方に渡っての、MFのマッチアップでの差
  • ここが恐らく最も明確に勝負を分けたポイントかなとも。
  • 1st、2nd setのOFMF、DFMFの合計10-15人ずつ同士のマッチアップで、明らかにUNCが勝っていた。
  • 特にUNCの1st setの3枚#21 MF Michael Tagliaferri (Jr./3年)、元ATの#2 MF Patrick Kelly (Sr./4年) 、#22 MF Shane Simpson (Jr./3年)の3人、2nd setでも元ATの#15 Timmy Kelly (Freshman/1年)辺りは、明らかにMarylandのDFMF陣に純粋な「走力」で勝っており、1-on-1でかなり確実に抜いてスライドを発生させられていた&得点に結び付けられていた。
  • UNCは特に伝統的に高校までATで点取り屋だった走力とスティックスキルのある選手を相当数リクルーティングで集め、彼らを敢えてOFMFで使い、フィール上に常に実質ATが4-5枚(時には6枚)いるという設計にしている。今回の試合でも明らかにそれが効いていた。
  • 逆に、UNCのDFMFの2枚看板、#6 Jake Matthai (Sr./4年、198cm/104kg)、#3 Brett Bedard (Jr./3年、188cm/91kg)はクソでかいし、クソ動けるし、試合の最後まで相手OFMFに対してしっかり脚で付いていき、ゴツっと厳しいプッシュで押し出して、1-on-1で守りきり、ほとんどスライドを発生させていなかった。相手のOFMFからすると相当手を焼いたんじゃないかと思われる。
  • 実はここが試合全体の中で、UNCにとって非常に重要な安定した土台を生んでいたように見える。
ATの1-on-1の強さ
  • これもMarylandとの比較で感じた。3枚のATがそれぞれ、1試合に何回かずつは1-on-1で相手をBeat出来ている(抜いている)。
  • 逆にMarylandのATはスティックスキルが高く、ラクロスIQも高く、シュートもフィードも巧いが、決して走って1-on-1でUNCのDFを抜いていた感じではない。ここでも実はやはり攻めのオプションに違いを生んでいたはず。
Close DF(ボトムのLong Stick Defender 3人)の1-on-1の強さ
  • ここが明らかに昔UNCを見ていた頃と比べて大きく変化した点。昔のUNCは、OFでタレントのある選手が揃っていても、明らかにDFが弱点で、正直DFの選手の質が一段落ち、失点の多さで負けていた印象が強かった。
  • が、今回のUNC、特にQuarter Final、Semi Final、Final 3試合では、本当にClose DFの強さが際立った。今回もMaryland ATに1-on-1でBeatされたシーンはほとんど無かった気がする。
  • 従って、スライドも最小限に抑えられていたし、加えてダブルでボールを奪う事にも成功していた。
  • 加えて、明らかにシーズン前半と比べても、首振り、コミュニケーション、スライドのスライド等の、チームDFとしての統制のレベルが上がって来ていた。
  • FOで大きく負け、ポゼッション時間ではMarylandが圧倒的に長く、相当長い時間ネチネチと攻められ続けたが、最後まで集中力が途切れる事なく、チームとして崩れる事なく守りきれたDFが今回の勝利の大きな要因だった事は間違いない。
Goalie Balkamの活躍
  • これはもう試合を見たら一目で解るが、引き続き2年生Goalieの#30 Brian Balkamが素晴らしいセーブを何度も見せていた。
という感じだろうか。

他にもMarylandにとって不利だった要素、明らかに良くなかった点はいくつか有ったはずで、

DFのスライドの遅さ
  • 意図的に戦術的に決め事としてやっていたんだろうか?UNCのDFがかなり早めにスライドを飛ばしていたのと比べると、明らかに遅かった、または行っていなかった。
  • 特にQ1の失点、Q4最後の同点ゴールの失点等は、「ん?何でスライド行かない?」というケースが散見された。
  • 1対1で止められると過信していたんだろうか?
運。特に大事な場面で何度もシュートがパイプに当たっていた
  • いくつか、これが決まったら試合が決まるな、というシュートがパイプに当たっていた。まあ、それも含めて実力とも言えるが
  • 思えば、UNCはトーナメントの組み合わせでも明らかに強運に恵まれていた。同じ山に天敵Duke、Denverがいたが、それぞれLoyolaとTowsonに負け、一度勝っていて得意なNotre Dame、若干チームとしての総合力が落ちるLoyolaという組み合わせに恵まれた。
無駄なファウル
  • 全体的にそれほどファウルが多い試合では無かったが、特にOTの最後のCross Checkのファウル等、明らかに冷静さを失っての無駄なファウルだった。本人は恐らく今後の人生で長く後悔する事になるんじゃないだろうか。
前の試合からの疲労度の差?
  • 一つファクターとしてあったかなと思ったのが、前々日の準決勝からの疲労の要素。UNCは準決勝は前半に大差を付け、ある程度余裕を持って終わらせた第一試合。
  • 一方のMarylandは、第二試合で夕方5時過ぎまで、Brownと大接戦の末、OTまで死闘を戦い抜いた。特に1枚目の選手たちは実は1.5日間のRestで蓄積した疲労が完全に回復しきれてなかったのかな?特に決勝の最後の方は多少しんどくなってたのかな?という気もしないでもない。
なので、この試合を何度か見直した後に再度考えると、実は、まあ、10回やって、4回くらいはUNCが勝ってもおかしくなかった試合だったのね、と感じた。

4. Highlight




2016年6月2日木曜日

UNCの優勝

あれから二日経つが、未だにあの熱狂から完全に醒めていない。

本当に、今までラクロスを見てきた中で、最高の試合、最も感動した試合だった。それを、期せずして、文字どおり目の前で、生で見られた事は、本当に幸運だった。

少しずつ、いろんな事を振り返って書いてみようかなと思う。

今回のUNCの優勝が、いかに特別なものだったか。いろんな面で記録づくめの決勝、優勝だった。そして、強く記憶に残る物だった。ILの記事や、インタビューのコメント、ESPNでの解説の中で拾った中で幾つか挙げてみようかと思う。
  • UNCの優勝は、1991年以来、25年ぶり。そして、奇しくも、たまたまハーフタイムに25年前の優勝校を25周年記念で祝うイベントで、正にその1991年のチームの元選手たちが表彰されたという偶然。
  • 男女揃っての優勝。NCAAのスポーツ全体でも極めて珍しく、ラクロスでは1994年のPrinceton以来。男女揃って同じ決勝カード(UNC vs Maryland)は初。
  • UNCはレギュラーシーズン6敗もしており、ノーシードからの優勝。共にNCAA Men's Lacrosse Division 1では史上初。いかに格下からの成り上がり/下克上優勝だったかが解る。ここ10年で、昔ほど圧倒的強豪校がいなくなり、上位校のどこが優勝してもおかしくないという、「Parity(戦力均衡)の時代」ならではの結果。
  • 決勝での得点は、14-13で合計27得点。これも、2004年以来12年ぶりの最多得点。特に2000年以降はスティックの進化、戦術の進化により、ポゼッション重視で試合のペースが落ち、得点数が減ってしまった上、お互い慎重になって更にロースコアな展開になりがちだった中、これだけ大量得点の殴り合いの決勝は、珍しい。もちろん、ショットクロックの導入というルール改正の影響も大きい。
  • 2年生Canadian AT #45 Chris Cloutierの大活躍と、怒涛のゴール。トーナメント合計19得点、Semi Final 9得点、Semi Final/Final合計14得点は、全てNCAA Men's Lacrosse Division 1史上最高得点数。

本当に、今年のUNCのトーナメント準々決勝以降の3試合は、何か突然変異が起きたかの様に全てが噛み合って一気に強豪チームへと変貌した。インタビューで、#2 MF Pat Kelly (Sr./4年)が、「4年間掛けて学んだ事は、シーズン中、4月にピーキングしちゃったらダメで、明確に5月にピーキングしなくちゃいけないという事」と言っていた。完全にそれを体現したチームだった。

決勝当日の裏舞台の映像。Coach Breschiの2008年の就任以来の苦労、今シーズン当初からの苦労を思い出すと、そら感情移入しちゃうよね?

しかし、これ見ると、本当に試合前なんてかなり緊張せずにいい感じでリラックスして臨めてるなーと思う。Head CoachのJoe Breschi氏も、「ぶっちゃけ注目されてなかったからNo Pressureだよね」と明言していた。これは優勝候補筆頭として注目され続けてきたMarylandとは真逆。この辺は間違いなく勝因の一つだったはず。



2016年5月31日火曜日

NCAA Final 2016

ぬあああーーーーーー!!!マジかーーーーーーー!!!夢じゃねえのかーーーーー!?我らが地元North Carolina (UNC)が、Over Timeの末、優勝候補のMarylandを14-13で破り、遂に、まさかの、1991年以来、25年振りの優勝!!!

未だに目の前で起きた事が信じられん…シーズンの始めにこの光景を予想してた人は、ファンを含めて一体何人いただろうか?

シーズン序盤に格下に負けてまさかの3勝3敗スタート。そこからもポロポロ負けて、Syracuseには二度がっつり負けて、レギュラーシーズン12勝6敗でトーナメント出場すら危うい状況。ギリギリの出場でノーシード。ノーシードからの優勝は、過去46回のNCAA Men's Lacrosse Division 1 Championshipの歴史で初の快挙。

そこから、まさか、優勝候補Notre Dameを文句無く破り、Loyolaを封じ、優勝候補筆頭の、あの完成されたMarylandを破っての優勝。これ以上のStorybook endingはあるか!?

今日ほどこのCarolina Blueのシャツを誇りに感じた日は無い。

正に、これ以上無い完璧なタイミングでチームがPeakingを迎えた。シーズン中盤までギクシャクしていたチームのDF、OFが、トーナメントの2回戦以降、明らかに有機的に機能し出し、突如としてグイッと頼り甲斐のある強豪チームへと変貌した。

今回の試合も、本当に苦しい闘いだった。

出だしに連続得点するも、その後追いつかれ、逆転され、Behindで追いかける苦しい展開。MarylandのOFは完成されていた。それでも気合のDFと#30 Goalie Brian Balkam (Sophomore/2年)の神懸かったセーブで何とかしのぎ切り、何とか喰らい付く。

今まで勝利の鍵だったFOが本当に今日は苦しかった。前半頼みの綱だった#24 FO Stephen Kelly (Jr./3年)が全く勝てなくなり、後半遂には2枚目のFace Offerにスイッチ。それでも安定して勝てず、FOは全体で11勝19敗とポゼッションが取れない苦しい展開。それを何とか守りきって、数少ないポゼッションを確実に決めて、Over Timeへと命を繋ぐ。

Over Timeの直前にまさかの不要なPersonal FoulでMan Downスタートとなり、万事休すかに見えるも、Goalie Balkamがガッチリセーブ。

最後は一進一退のポゼッション争いの後、EMOを獲得し、最後の最後に準決勝9得点、決勝5得点と大爆発のCanadian #45 AT Chris Cloutier (Sophomore/2年)が、これ以上ない鬼クラッチ(大事な場面での勝負強さ)っぷりを発揮し、スキップパスからDFをスクリーンに使ってOff the hipのシュートをGoalieのOff Handの右下に完っ璧なPlacementでぶち込んで、劇的な大逆転優勝。

非常にレベルの高い、ミスも少なくて緊張感のある、一進一退の、本当に素晴らしいラクロスの試合だった。個々人の技術、身体能力、チーム戦術、メンタル、全てに於いて近年稀に見る素晴らしい決勝戦だったと思う。

泣いたっす。会場で声を枯らしてマジ泣いたっす。

今シーズン最も苦しい闘いだった。Marylandは、間違い無く、最も手ごわく、最も完成された相手だった。

UNCは今年はBasketballは、決勝でVillanovaに最後の最後で同点から3 Pointを決められて準優勝だった。

昨日行われた女子ラクロスの決勝は、奇しくも、男子と同じMaryland vs UNCの組み合わせで、格下のUNCが大差を付けて優勝。

これで男女揃ってのアベック優勝という極めて珍しい結果を残す事になった。地元Chapel Hillは大盛り上がりだろう。

特に、Coach Breschiは、UNCが優勝していた頃に現役だった母校UNCの選手出身。低迷するUNCを建て直し、優勝を狙えるチームにするべく2008年にHeadcoachとして招聘され、それから長く苦しい闘いを強いられてきた。2004年にOhio Stateのコーチ時代に、事故で当時3歳だった息子さんを亡くすという悲劇を経て、家族、コミュニティを大事にする、誰からも尊敬される人格者のコーチとして、いろんな批判も有る中地道にやってきた。

いやーーーーー!マジで良かったーーーー!!!感動した!ラクロスファンで良かった!UNCファンで本当に良かった!!本当に素晴らしいドラマを見せてもらいました。UNC 2016、Coach Breschi、素晴らしいシーズンを、素晴らしい感動を有難う!

Over Timeの最後の決勝点。何度見ても感動がこみ上げてくる。


2016年5月30日月曜日

NCAA Tournament Semi Final 2016 - Recap

うおおおおおーーーー!!!やったーーーーー!!!North Carolina (UNC)が遂に25年ぶりのFinalへ!!!

いやーここまでRoller Coaster Ride(ジェットコースターのように上がり下がりの激しい)のシーズンに耐えてぶつくさ言いながらも地元Chapel HillでCarolina Blueの水色シャツ着て応援してきた甲斐あったっす…マジで目頭熱くなった。

という訳で、試合の詳細はまた時間のある時に振り返るとして、サクッとRecap。

1. 1st Semi Final - UNC vs Loyola

結構接戦になると思ったが、序盤からUNCが爆発し、Q1終了時点で9-2、Q2で14-5と大差の展開に。Q3以降若干失速し追いつかれるも、最後まで安全圏リードを守り、18-13でしっかり勝利。

これまではAT 2枚目か3枚目というイメージの強かったCanadianの#45 AT Chris Cloutier (Sophomore/2年)が大爆発し、9得点のFinal 4史上最高得点で勝利に貢献。

後はやはりFace Offerの#24 FO Stephen Kelly (Jr./3年)が前半高い勝率で貢献。引き続きGoalieの#30 Goalie Brian Balkam (So./2年)が相変わらずの勝負強さを発揮。

Loyolaは後半追い上げるも、前半の大差が響いた。



いくつかILの分析等も参考にしつつ、UNCが勝った理由を挙げると、

  • UNCのMFの機動力にLoyola DFが対抗できず、かなり崩されていた(Finish自体はATが多かったが)
  • LoyolaのGが前半かなり苦しみ、Q2から2枚目に。それでも余りセーブで貢献できず。
  • Loyolaの1年生エース、#7 AT Pat Spenser対策をUNCがバチッと立てていた。ボールを入れさせない、入れても早めスライドでダブル、トリプルで確実に潰す、落とす、パスミスさせる。結果、1得点に抑える事に成功。(それでも5アシストする所が怪物ルーキーたる所以だが。)
  • UNCのDFのスカウティングによる、準備、「傾向と対策」がかなり出来ており、特に前半Loyolaに全くやりたい事をさせなかった。加えて、効果的にZone DFを混ぜるなど、Loyolaの良さを消しきった。
  • あとは、毎回書いてるが、やはりUNCはACC (Atlantic Coast Conference)の強豪校特有の、アスリートとしての土台の強さと層の厚さをまた感じざるを得なかった。単純にフィジカルが強い。素材として、デカイ、機動力高い、パワー/スピードが一枚上で、且つ層が厚い。Loyolaはやはり一枚目までは競り合えるが、UNCには2枚目、3枚目が控えてる感じ。特に後半玉際の競り合いやDFの最後の一歩で差が出ていた。
本当に、今年のUNCには驚かされる。大エースが複数人いた去年の4年生が抜け、再建1年目と言われていた。シーズン序盤で格下にいくつか負け、一時期はトーナメント進出すら危ういと言われていた。そのチームがまさか決勝に来るとは、ファンですら予想していた人は少なかったはず。

とにかく、「全員ラクロス」。特定のエースに頼らず、全員が個々人の仕事を責任を持ってしっかり果たしている。そして、レギュラーシーズン中ぎくしゃくしてたのに、急にここに来てDFもOFも、チームとして明らかに有機的に機能し始めている。これ以上無いくらい最高のタイミングで…



2. 2nd Semifinal - Mayland vs Brown

いやー、これはムチャクチャいい試合でした。

Brownのエースで、MVPを獲得した#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)が足の怪我で欠場と聞いていたが、何とQ1途中から怪我を押して気合の出場(あれ?骨折してたんじゃ…)。全力で走れないながらも、得点、アシスト、そして常時一枚DFを引き付ける事で確実に存在感を発揮していた。

前半は接戦、Q3にMarylandが突き放し、勝負が着いたかに見えるも、その後Q4にBrownが折れない心で追いつき、14-14でまさかのOver timeに。

が、最後はMarylandが完全にBrown DFを翻弄し、フリーで手堅く決めて15-14で決勝へ。いやークソ熱い試合でした。

にしても、正直、得点差以上にMarylandの強さが際立った。

Marylandは再三述べている通り、チームとして明らかに完成度が頭抜けて高い。個々のレベルが高く、現NCAA LacrosseトップクラスのHead Coach John Tillman氏に非常によくコーチされており、戦術的にも非常に統制が取れている。全てのポジションで穴が無い。



OFでは序盤からMFがスピードを生かし、Sweepしてスライドを引き連れて長めに走る事を繰り替えし、Brown DFを徹底して走らせ、後半スタミナ切れを起こさせていた。



逆にBrownは明らかに実力差が有る中、本当に良くやった。彼らとCoach Lars Tiffany氏が信じる、「Fun」ありきのラクロス。「どうせラクロスやるなら、思いっきり楽しまなきゃ、そして観客を楽しませなきゃ意味ねえだろ?」という強い信念。

Coach Tiffanyの敗戦後のインタビューの一言目は、「楽しんで貰えた?」だった。思わず鳥肌が立った。

ガンガンTransitionして、Run & gunで走って、Long stickもガンガンオフェンス参加して、リスク取ってどんどんシュートを打って、大量得点で勝つ華の有るラクロス。ポゼッション重視の行き過ぎ、ハーフコートでの決め事/フォーメーションありきの現代ラクロスに対して明確に一石を投じたと言える。学問の名門校Ivy Leagueで、入学時のGPA (平均評定)の縛りがある事もあり、必ずしもトップクラスの高校生ばかり集められる訳ではないという不利な環境でここまで来た。心から最大限の敬意と賞賛を送りたい。本当に楽しませて頂いた。

ホント、こういうチームが出てくるから、そしてこういう試合を目にする事が出来るから、ラクロスファンを辞められなくなってしまう。

3. 会場

いくつか会場について紹介。

NCAA LacrosseのFinal 4は、文字通り、世界のラクロスコミュニティー最大の祭典。数万人のファンが集まるこの会場の空気、雰囲気、熱気、全てが本当に素晴らしく、一度生で体験すると、ズッポリAddictedになってしまう。是非、無理をしてでも、一生に一度でいいので、足を運んでみる事を、強く、強くお勧めします。自分がやってるラクロスと言う素晴らしいスポーツの源流に触れる事が出来るので。自分がラクロスをやっていた事に対して、これ以上無い程の誇りと喜びを感じさせてくれるので。「あ、世界にはこんなにラクロスバカが溢れてたんだ、俺、こんなにラクロスバカになっていいんだ!」と思える事、保証します。

今回の会場は、Pennsylvania州Philadelphia (Philly)の地元NFLチーム、Philadelphia Eaglesの本拠地、Lincoln Financial Fieldにて。会場のキャパは7万人。

アメリカのラクロスの試合会場のお馴染みの光景。駐車場でKidsがミニゴールを於いてボールとスティックで戯れている。4-5年前と比べると、テニスボールを使ってる子が増えたかな?さすがにノーマルラクロスボールだと車に当たったら問題なので。

 もう一つのお馴染みの光景。これはラクロスに限らず全てのスポーツで。駐車場でトランクを開けてテントを出してバーベキューとビール。所謂「Tailgate」または「Tailgate party」。

建物の規模に未だに驚かされる。

 準決勝一試合目、UNCの入場。






2016年5月25日水曜日

NCAA Tournament Final 4 2016 - Preview

と、言うわけで、5月22日(日)の準々決勝2試合が終わり、これで5月28日(土)、31日(月)の二日間の準決勝、決勝の組み合わせが決まった。

準決勝第一試合はNorth Carolina (UNC) vs Loyola、第二試合はMaryland vs Brown

今まで散々外れまくってきた実績はさておき無理やり予想すると…

準決勝2試合目はMarylandBrownに圧勝。Brownはここまで強かったんだが、残念ながら大エースの#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)が足の骨折で欠場なので、チーム力が大幅に落ちてしまっている。Marylandの総合力の前に力尽きるんじゃないかと。前半まで食らいつくも、後半徐々に実力と選手層の厚さが出て、結構大差が付くんじゃないかと。

1試合目は、うーん、正直難しい。Notre Dameに勝ったUNCのパフォーマンスなら勝てると思うんだけど、まだUNCは結構パフォーマンスが安定せずばらつく印象が…。Loyolaも圧倒的に抜きん出て強い訳ではないが、全てのポジションで手堅く、何と言っても司令塔で得点源の#7 AT Pat Spencer (Freshman/1年)がいる。彼には相当手を焼くはず。UNCがある程度スカウティングしてしっかり準備/対策して挑めば、まあ、勝てなくはないかな、という感じ。うーん、どうしてもこの試合は地元ファンとしてのバイアスが掛かってしまう。敢えて距離を置いて超客観的に見ると…、まあ60%くらいの確率でUNCが接戦を制して勝ち、って感じだろうか。UNCはやっぱりFOが強いので、そこがもしかしたら結構勝敗に影響してくるかもなと。Loyolaのポゼッションを大幅に削る形になる気がするので。

で、決勝はMaryland vs UNCで、結構拍子抜けするくらいMarylandがボコって悲願の優勝と。やはり今のMarylandには穴が無い。贔屓のチームながら、悲しいかなUNCがMarylandに勝てるイメージが湧かない…

ってのでどうですかね。Philadelphiaの会場でしっかり見届けたいと思います。

2016年5月24日火曜日

NCAA 2016 #17 Tournament Quarter Final - Notre Dame vs North Carolina

やったーーーー!!!うおーーーーーー!!!UNCが13-9でNotre Dameを破ってFinal 4に進出!!!

週末に家で思わず絶叫してしまった。目頭が熱くなった。地元で毎試合応援してきた甲斐があった…

1. Background

これ以上無いUpset(大金星)。UNCの勝ちを予想してた人は間違いなく少数派だった。 

Notre Dameはシーズンの最初から誰もが認める優勝候補。11勝3敗の第3位シード。誰もがこの試合は無難にNotre Dameが勝って悲願の優勝に向けて駒を進めると思っていた。

UNCは、去年主力だったエースたちがゴソッと抜け、今年は再建の年だと言われていた。シーズン前半に下位のHofstraやU Massに負け、まさかこのチームがFinal 4に行くとは、僕自身も含めて誰も予想してなかった。

2. Recap

UNCは、抜きん出たエースがいないなか、文字どおり全員ラクロスで、全員が必死で食らいついて、チームでコミュニケーションして、ボールを皆で共有し、点を取れる選手が取る、というアプローチでシーズン後半立ち直り、それが花開いて、ついに優勝候補の一角Notre Dameを破って、1993年以来23年ぶりのFinal 4へ。

試合の序盤から全てがうまく噛み合っていた。DFも前回の試合でやられた点を踏まえ、しっかりスカウンティングし、準備し、うまくコミュニケーションし、しっかり受け渡しを出来ていた。

一方で、Notre Dameが本来の実力を発揮できていなかった。特に、エースでAll Americanの#16 MF Sergio Perkovic (Sr./4年)が、いつものシュート力を発揮できず、すべてのシュートが悉く抜けて上に逸れていた。スティックのストリングがおかしくなって修正できなかったか?

また、Notre Dameは、今シーズン予てから弱点だったGoalieの弱さが今回も思いっきり露呈してしまった。中長距離からバンバン打たれ、決められていた。伝統的にはNDは毎年継続的にNCAAトップクラスのGoalieを輩出して来ており、それが鉄壁のDFと相まって、毎年トップクラスの失点の少なさを誇って来ていたが、今年は明確にそこが穴になってしまっていた。逆にOFが過去に例を見ない程強かったが故に、悔やまれる。なかなか全てが上手く揃う事って無いって事ねと…

あとはやはり地力の身体能力と層の厚さの差がまた出たかなと。UNCにはUnder Armour High School All Americanの選手が10人以上。高校トップクラスの選手たちを毎年継続的に集められており、アスリートとしての素材としてはかなり強力な選手が揃っている。中盤でのGround ballの奪い合いや走り合いになった時に、特に後半走り負けない&当たり負けない。

あとはUNCの#24 Face Offer Stephen Kellly (Jr./3年)が引き続きFace Off Xを支配し続けた事、#30 G Brian Balkam (Sophomore/2年生)の素晴らしいセーブ連発が大きな勝因だろうか。

いやー、良かったー、これでFinal 4でUNCを見られる。マジ嬉しいっす。

3. Highlight




2016年5月23日月曜日

NCAA 2016 #16 Tournament Quarter Final - Navy vs Brown

1. Background

Quarter Final (準々決勝)2試合目。Brown対Navy。

Brownは、前回の一回戦の記事でも紹介した通り、レギュラーシーズンでも強さを見せ、一回戦でHopkinsを粉砕。

が、試合当日の朝、残念なお知らせが…なんと、エースでTewaaraton Trophy Winner (MVP)最終候補の#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)がHopkins戦の最後に右足を骨折してしまっていたらしく、何とこの試合欠場&恐らく今シーズンはもう絶望…オーマイガッ!!!せっかくFinal 4の会場で生で見られるの楽しみにしてたのに!泣きたいわマジで。

対するNavyは、本名US Naval Academy、所謂「アメリカ海軍兵学校」。Army (陸軍)、Air Force (空軍)と並ぶ、士官学校系3チームのうち一つ。日本で言うと防衛大学みたいな。歴史的に中堅校として安定した成績を残しており、1975、2005年に二度準優勝まで行っている。今年は比較的善戦し、滑り込みでトーナメント進出を決め、一回戦でYaleをUpsetで破って二回戦に進出。軍隊ならではの規律と気合、ちらほら身体能力の高い選手がいる侮れないチームという印象。

2. Recap

当日までBrownの圧勝で準決勝でMarylandと激突でしょ、と思っていたが、Molloyの怪我での欠場により、一気に雲行きが怪しくなってしまった。

案の定、試合開始からがっつり接戦に。

今年のBrownのお家芸の、攻撃的にボールを奪いに行くDF、速攻重視の攻め、Long stickの鬼の攻撃参加、チャンスがあったらガンガンリスクを取ってシュートまで行く、という哲学はそのまま。但し、フィニッシャー&司令塔のMolloyがいない事で、やはり決定力に欠いた。

全体的にトランジッションが多く、目まぐるしく攻守が入れ替わる非常に面白い展開になったが、一方で結構ミス/Turnoverも目立った。

NavyもDiscipline (規律)と、気合と根性溢れるいつものスタイルで、DFは手堅く守り、OFもシンプルながら確実な攻めで得点。

最後はギリギリで11-10でBrownが逃げ切り、1994年以来のFinal 4進出を決めた。

が、まあ、ぶっちゃけBrownはMolloyがいないと正直きついな…Molloy以外も点取れるとは言え、常に2-3枚引きつけられるMolloyの崩しが起点となって、または彼からのアシストによる得点が多かったのも事実。やはり彼がいるのといないのとでは正直別のチームになる印象。戦力が数段落ちた感じ。まあ、Marylandに準決勝でボコられるんじゃないだろうか…

3. 見所

今回の試合は、間違いなくGoalieの選手の皆さんに是非見て頂きたい試合だった。

双方のGoalieは今シーズン共にNCAA Division 1でもトップクラスのセーブ率を誇る、リーグを代表する守護神ゴーリー同士の試合。

Brown #97 G Jack Kelly (Sr./4年)はセーブ率62%、209セーブでNCAAトップ。Navy #14 G John Connors (Sr./4年)も57%、154セーブで10位。

実際に両ゴーリーが最初から最後まで、神セーブ連発の共演を見せてくれた。それぞれ12セーブ、21セーブ、しかもかなり難しいシュートをバシッとスティックを合わせて、足で、メットで、気合で止めまくっていた。

この試合は正直ゴーリーのセーブシーンだけで十分に楽しめる試合かなと。ゴーリー視点で言えば今年のBest Gameかも。

現役のゴーリーの選手の皆さんが見る上でも、ポジショニング、Bait(罠で敢えて特定の場所を空けてそこに打たせて取る技術)、スティックの合わせ、反応、ボールに向かってExplodeする動き、DFの統率、パスカットやルースボールへの飛び出し、クリアでのスティックスキルや視野など、学べる点が満載。

単純に見てるだけで、ゴーリーがこれだけかっこ良くて、これだけ試合を左右させられる、という事が再確認でき、モチベーション強化出来る事間違い無し。

4. Highlight


2016年5月22日日曜日

NCAA 2016 #15 Tournament Quarter Final - Maryland vs Syracuse

1. Background

レギュラーシーズン1位のMaryland対8位SyracuseのQuarter Final (準々決勝)4試合のうち1試合目。

2. Recap

Maryland強し。今年レギュラーシーズンの試合を見る機会が無かったので、楽しみにしていたが、やはり全体1位になるだけの事はある。Marylandが13-7で盤石の勝利。

これでレギュラーシーズンから継続して15連勝。恐ろしい。

3. 見所

とにかくMarylandの強さが際立った。

基本的に穴が無い。

DFも手堅く、Goalieのセーブ力が高く、Syracuseにほとんど危険なシュートを打たせず、遠距離からしっかりGoalieが準備できた状態でシュートを打たせ、サクッとセーブを繰り返していた。ACCでもあれだけ速いパス回しとMFのダッジでフリーを作って危険なシュートを打てていたSyracuseがかなり苦しみ、安いシュートを打たされまくっていた。

OFも選手層が厚い。AT, MF 1st set, 2nd set全てでAll Americanクラスの選手たちが揃い、どこからでも点が取れる。突き抜けたエースがいないようにも見えるが、裏を返せば全員高いレベルにあるからとも言える。

Head Coach John Tillman氏がHarvardから移籍して就任して6シーズン目。彼自身がリクルーティングで集めた選手たちのチームになり、戦術的にも完全に彼が思い描くチームが出来上がりつつある感じ。今年はその集大成という感じか。70年代以来の悲願の優勝を狙う。

準優勝に終わった2012年のチームと比べても、明らかに総合力が高く、バランスが取れており、層が厚い。ポゼッション超重視でしょっちゅうストーリングの警告を受けていた当時と比べて、明らかにオフェンスのテンポが上がっており、より攻撃的になっている。

いい試合になるかなと思ったが、思った以上に実力に差があった。

強豪ぞろいのACCでカンファレンストーナメントを文句なしの優勝だったSyracuseをここまで危なげなく敗るとは。来週のPhiladelphiaで生で見るのが楽しみ。今の所優勝候補最有力という感じだろうか。

選手で印象に残ったのは、Maryland #44 MF Pat Young (Sr./4年生)。3年間を過ごした近所のUMBCからのTransfer (転校生)。要所要所で4得点。えげつない身体能力とシュート力でかなり目立っていた。MLLドラフトでも2巡目全体13位でCharlotte Houndsに指名されている。MLLでも絶対活躍するはず。

4. Highlight


2016年5月21日土曜日

NCAA 2016 #14 Tournament 1st Round - Duke @Loyola

Tournament 1st Round 8試合のうちもう1試合。Duke対Loyola。

1. Background

Dukeはここ10年で見るとNCAAでトップの成績。2010, 2013, 2014と三度の優勝。2005, 2007年に二度準優勝。HCのJohn Danowski氏は間違いなく現NCAAラクロスでも最高のコーチの一人。例年明確にトーナメントにPerformanceのピークを持ってくるピーキングの考え方を持っており、シーズン前半ぐずつくも、後半に掛けてグイッとトップレベルにまで高めてくる傾向。

Loyolaはラクロスのメッカ、Maryland州Baltimoreにある小規模校。2012年にノーマークから一気に優勝してシンデレラストーリーを体現。HCのCharley Toomey氏はLoyolaのGoalie出身、若手有望株コーチから優勝を経てコーチとして確固たる地位を築きつつある。

Loyolaは今シーズンは当たり年で、13勝3敗で全体7位、Dukeは前半苦しみ11勝8敗の全体9位。レギュラーシーズンの試合では15-6でDukeが圧勝している。

2. Recap

あらら、Duke負けちゃいました。Final 4行くかなと思ってたんすけどね…

16-11でLoyolaが手堅く勝利。

3. 見所

Loyolaが勝った理由として、いくつか非常に印象に残った点が。

Dukeのエース、MLL全体1位指名の#15 MF Myles Jones (Sr./4年)を完全に封じた
  • いやー、ここまでJonesを封じられるとは…
  • やってた事は比較的単純で、スカウティングに基づき、完全に右切りして、左に流れた際に体の後ろにスティックがフラフラ出ちゃう癖があるので、敢えて付いて行かずにとっとと抜かれてTrail Check(後ろから出てるスティックを引っ叩く)でサクッとボールを落とす、というやり方
  • これにJonesが対応できずに何度もボールを失ってしまっており、無得点に終わってしまった。
  • うーん、Jonesはやっぱり素材としては凄い(身長196 cm、体重109 kg)んだけど、やっぱこの辺の技術的な面がイマイチ荒削りなままなんだよな…もう4年までやってる訳だし…ちょっと慢心して技術的な練習疎かになってないかね?果たしてMLLに行って活躍し続けられるんだろうか…何年も成長/維持してサバイブして行けるんだろうか…お節介ながら心配してしまう。MLLはコーチが付きっ切りでトレーニングしてくれるNCAAと違って、完全に自分次第。モチベーションも、Conditioningも、技術的な成長も、完全に自分次第。大丈夫かね。何か大学時代の貯金で1-2年やって、その後ひっそり消えて行く可能性が高い気が…
#7 AT Pat Spencer (Freshman/1年)がマジ凄い
  • びっくりした。こんな凄い1年生いたんだ…。LoyolaはイマイチESPNでテレビ放映されないため、完全にノーマークだった。
  • 3得点5アシストの8ポイント。X(ゴール裏)でボールを持ってのダッジやフットワークの滑らかさ、シュートやノールックでのフィードなどのスティックスキルの高さ、サイズと身体能力、どれを取っても既にNCAAトップクラス。1年生にして完全にゲームを支配していた。
  • 特に安定した上半身と、常にフィールド全体を見渡せる視野、鋭いフィード力はかなりレベル高い。
  • 恐らくかなりレアな、1年生にして1st Team All American (ベスト10)に選ばれる気がする。
  • これでしかも1年生ってよ…今後どうなっちゃうんだ?今後3年間間違いなくNCAA Lacrosseの話題の中心でい続けるはず。来年は2年生にしてTewaaraton Trophy Winner (MVP)争い絡んでくるんじゃないかね?ってぐらい凄い。
あと、AT 3枚が平均的に強くて、点取れる

Goalieの#37 Jacob Stover (Freshman/1年)もかなり手堅いし(ポジショニング、反応、スティックワーク素晴らしい)、Close DFもデカくて、走れて、プレッシャー強い。ちょっと2012年の優勝チームを思い出させる感じかなと。

逆に、Dukeはやっぱり優勝する年に比べると、明らかにいくつか足りなかった
  • 点を取れる選手の数が少ない。特に優勝していた年に比べると、明らかにMFの層が薄い印象。で、そのMFの主力のJonesが封じられると、かなり厳しくなるかなと。
  • Goalieが最後の最後まで明らかな弱点だった
という訳で、今年のDukeは残念ながら1st Round敗退。

しかし、これ見ると、改めて、Loyolaがもう昔のように中堅校ではなく、恒常的に上位に絡んでくる強豪校になったのねと感じさせる。エースのSpencerもGoalieのStoverも1年生なので、今後数年は間違いなく上位に残り続けるはず。

4. Highlight

2016年5月19日木曜日

NCAA 2016 #13 Tournament 1st Round - Johns Hopkins @Brown

Tournament 1st Round 8試合のうちのもう1試合、Johns Hopkins vs Brown。

1. Background

Hopkinsはラクロスファンなら誰もが知っている伝統校。古豪という言葉が最も当てはまるだろうか。ラクロスのメッカBaltimoreにあり、80年代に黄金期を経て、2005年2007年にHead Coach Pietramala氏の下で二度の優勝。ただその後スター選手に恵まれず、優勝から遠ざかっている。

一方のBrownは、学業の名門Ivy Leagueの一角。Ivy Leagueの中では、90年代に何度も優勝していたPrinceton、2000年代に同じくFinal 4進出を果たしたCornellに比べると、そこまでラクロスで強豪校というイメージではなかった。が、昨年のNCAA Tournament出場に続き、今年も快進撃。15勝2敗の堂々全体5位でトーナメントに。

実はこのBrown、今年是非見たかったチームの一つでもあった。#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)がTewaaraton Trophy Winner (MVP)候補でかなりデキる選手だという話を聞いていたのと、実際Final 4に食い込むだけの実力があるという話を各種Report/記事で読んでいたのと、一方で、ESPN等でカバーされる機会が少なく、まだ試合を見た事が無かったので。

2. Recap

マジびびったっす。Brownかなり強え。正直ここまでとは思わなかった。

そして、#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)は、噂に違わず、というか、正直想像していたよりも実際はかなり強力な選手だという事が解った。MVP候補というのも頷ける。今年最高の選手は彼かもなと。

Brownが圧倒的な実力の差を見せつけ、Hopkinsを17-8で粉砕。

マジ強いっす。今までちゃんと気にして無かったけど、優勝あり得る。間違いなくFinal 4は行くはず。何となく、2012年に同じく中堅校のノーマークから一気に優勝まで圧勝で駆け上がったLoyolaを彷彿させる感じ。

3. 見所

Brownがむちゃくちゃ強い&見ていて非常に楽しいチームだという事がこれでもかと言うくらい解った。評判は嘘ではなかった。見られて良かった。

ポイントをザクッとまとめて言うと、「役者/キャラが揃ってる」、そして、「ハイペースで、華やかで、見ていて面白い、ワクワクするラクロス」。1試合見て一発でファンになった。Final 4の会場で是非生で見てみたいなと思わされた。こういうチームにこそ優勝して欲しい。

個別のポイントをいくつか挙げると、

アグレッシブなDF
  • このポゼッション全盛時代、タイトにクリース前をパックして、積極的にボールを落としに行く事はご法度とされるこの時代に、大分アグレッシブにフルコートでプレス、ハーフコートでもかなり強めにプレッシャーを掛け、積極的にダブルチームで囲み、リスクを取って「ボールを奪いに行く」DFを何度も見せていた。
  • 別に接戦で負けてる訳でも無いのに、Goalieがかなり積極的にクリースから飛び出し、バシバシパスカットを狙い、ゴリゴリにプレッシャーを掛け、ボールを落としに行っていた。
  • で、実際に、上位校のHopkins相手に結構カモっていた。こんなにアグレッシブに攻めるDFはNCAAでは余り見ないので、見ていて圧巻。
Transition重視、速攻ありきのOF
  • 同じく、近年あまり見ない、ゴリゴリのFastbreak重視のオフェンス。Transitionを起こして、ショットガンの様にバーッと走って、Fastbreak、その後のUnsettled situationで、ボールと足を止める事なく、他のチームであれば迷ったり敢えてリスクを取らずに止めてセットオフェンスに持ち込む場面でも、敢えてかなりの確率でシュートまで行き、そして決めている。
  • ちょっとインドア/Box Lacrosseっぽい、バスケっぽい、90年代のラクロスっぽい、常時走って切り替える、見ていてワクワクしてくる機動力ラクロス。
  • 走って、バシバシパス回して、バンバンシュート打って。忙しくて、目まぐるしくて、でも見てて最高に盛り上がるOF。
Long stickがガンガンオフェンス参加
  • かなりの頻度でDFMFの選手がBreakに参加し、しかもUnsettled situation、もっと言うとセットOFになっても継続的に普通にShort stickと同じ様にOFに参加し、しかも普通に点を取っていた。
  • 近年の、OFMFとDFMFを完全に分業制にして担当を分ける考えの中にあって、逆説的に効果を発するアプローチ。
  • 相手のOFMFがTransitionに伴いフライしてDFMFに変わるのを防ぎ、元AT出身のOFMFがDFに参加せざるを得ない状況を作る。すると、1-on-1でも守れない上、6-on-6のチームDFの決め事であるスライドの連携がうまくできずに、チームとして機能しなくなってしまうという現象が起きていた。
  • これを意図的に発生させるという奇策。いやー、感動した。なるほどねー、そういう戦術もあるのねと。
  • もちろん、大前提として、Long stickの選手たちがスティックを短く持って、Shorty並みのスティックスキル、シュート力を持ってる事が必要となるが。
役者が揃ってる
  • 正直個々の選手のレベルの高さにちょっとびっくり。でかいし、フィジカル強いし、Ivy Leagueなのにアスリート揃い。
  • 特に、3つの肝のポジションの選手が明らかに強かった。
  • #91 G Jack Kelly (Sr./4年)。ビッグセーブ連発。クリアのパスの精度と落ち着き。
  • #36 FO Will Gural (Sr./4年)。マジ強力。今年のBest Face Offer級か?ゴリゴリねじ込んで、掻き出して、拾って。
  • #8 AT Kylor Bellistri (Sr./4年)。点取り屋。すげえシュート上手い。オフボールものすごく狡猾。
  • その他も、DFMFやLSMFなど、要所要所にExpertが揃っており、穴が感じられない。
そして何と言っても、MVP候補、#4 AT Dylan Molloy (Jr./3年)がMLL級
  • すごいすごいと聞いてはいたが、実際に映像で見て、「ほうっ!」と思わされた。
  • でかい、重い、でも動ける。シュートクソえぐい(速い&正確)。フィード上手い。DF背負って余裕でプレーできる。DF 2-3枚来てもスルッと交わせる。
  • いや、MLLの主力級でしょ。間違いなく。しかもまだ3年なので、来年もう一年ある。まず間違いなく来年の全体1位指名な気が。
  • 非常に興味深いのが、高校生時代、そして入学時点では実はそこまでの選手では無かったという点。ここまでひたすら工夫と努力を重ねる事で変化/成長してここまで到達しているという点。明らかに頭を使ってプレーしてるし、自分の成長をプロデュースしてるタイプ。という事は、今後がものすごく楽しみな選手。Final 4の舞台で是非生で見てみたい。
  • 印象的だったのが、コーチたちが当初からダブルチームを意識して、普段からLongstick 2枚付けてダブルチーム有りきの練習をさせたり、アメフトのタックルパッドでバンバン押しながらそれを交わす練習をさせているという点。なるほど、このプレッシャーの中での落ち着いたプレーはデザインされた技術なのねと…
という訳で、一発でBrownファンになりました。だって見ててワクワク出来るし面白いんだもん...

4. Highlight

と思ったら、試合のHighlightの映像が無いっすな…やむなし。って事で代わりに、過去のDylan Molloyの今シーズンのHighlight。



2016年5月16日月曜日

NCAA 2016 #12 Tournament 1st Round - North Carolina @Marquette

5月14日(土)から始まったNCAA Tournament。上位16チームによるプレーオフ。ここからの4週間でFirst Round 8試合、Quarter Final (準々決勝) 4試合、Semi Final, Finalが行われる。アメリカのラクロスコミュニティでは、NCAA Basketball TournamentのMarch Madnessに倣い、「May Madness(5月の狂気)」と呼ばれている。

その1回戦の一つ、全体6位で且つBig Eastの決勝でDenverを破って優勝したMarquette(マーット大学=「ケ」にアクセント)UNCの一回戦。

1. Background

ここで注目すべきはやはりMarquetteのバックグラウンドだろう。

場所は決して歴史的にラクロスが盛んだったとは言えない、Mid West(中西部)の北、Wisconsin州Milwaukee。バスケ部こそ中堅校としてある程度は認知されているものの(ちなみにNBAのDwyane Wadeの出身校)、決してスポーツ強豪校では無い。

2011年に大学がLacrosse部を設立する事を決定し、2012年にチームを立ち上げ。2013年からBig East Conferenceに参戦し、5年目の今年、全米Ranking 11位まで上り詰め、Big Eastの決勝では1位のDenverを10-9で接戦の末に制し、設立5年でBig East優勝という快挙を成し遂げた。

非常に面白いのがその大胆で思い切ったアプローチ。時を同じくしてNCAA入りしたMichiganと違い、それまでクラブチーム(公認の体育会ではないサークル扱い)すらなく、完全にゼロからの立ち上げ。但し、クラブチーム時代のアセットやマネジメントを残し、漸進的にNCAAへと移行して行ったMichiganとは全く異なるアプローチを取っている。

最初から既にHofstraでNCAA Division 1のHeadcoachとして十分に実績があり、且つリクルーティング力に定評のあった若手コーチ、Joe Amplo氏をグイッとヘッドハントして連れてきて、最初から鬼のリクルーティングで有力な選手を集め、「あなたのやりたい様に理想的なチーム作りをしていいよ」と施設や資金など、あらゆる面で学校が徹底してコミットしてバックアップし、一気にトップチーム入りを目指して来た。

今年の成績を見ても、1年早くNCAA入りを果たしたにも関わらず3勝10敗と下位に甘んじているMichiganと比べても、明らかに成功していると言えると思う。(東大ラクロス部はMichiganとNCAA加入前に10年間お世話になっており、個人的には応援したいが。)

今年は正にその一期生(1年目はRed-Shirt/棄権扱い〔公式戦に出てないので、4年間の出場制限に掛からず〕だったため、今年5年生として)と二期生が主力の4-5年生で合わせて19人の塊で残っている。つまり、今年は設立以来最初の勝負の年。

第6シードでトーナメントに出場している時点で快挙だが、これで更にUNCを破ってQuarter Final (準々決勝)出場という事になれば、更に大きなニュースになる。

2. Recap

序盤硬さもあって幾つかチェックアップのミスから失点したり、凡ミスTurnoverを出したNorth Carolinaも、後半に掛けて本来の実力を発揮。一時追いつかれるものの、最後は安定してポゼッションを守り、EMOでも確実に得点し、何とか10-9で逃げ切り。残念ながら設立5年目でのQuarter Finalという快挙を目指したMerquetteの夢はここで潰えた。

それでも尚、設立5年で全体11位、11勝5敗、Denverを破ってのBig East優勝は、これ以上無い程の脅威的なAchievementと言えるだろう。素直に拍手を送りたい。

3. 見所

いくつか、最強リーグACC (Atlantic Coast Conference)の強豪校UNCと、躍進中ながらもまだまだ新興校のMarquetteの差を見る中で、NCAAの全体を見渡す中で重要なInsightがあったと感じた。

層の厚さの差
  • やはりUNCに比べるとMarquetteは優秀な選手はいるもののその数で圧倒的に負けていた。
  • ダッジで抜ける選手、中距離からのシュートで点を取れる選手のオプションがUNCの方が多い為、OFの手数や攻めのVariationで差が生まれていた。
  • 加えて、チームとしてのスタミナにもその影響は及んでおり、やはり後半に掛けて、MFの2ndやDF陣が疲弊してしまい、当初程の脅威を感じさせなくなってしまった
  • やはりトーナメントのように1試合を通して全力でお互いが死力を尽くして勝ちに行く、総力戦、接戦になった際にこの差が出てしまう。
  • 大事だね、選手層の厚さ、と改めて思わされた。

フィジカル(サイズと身体能力)の差
  • あとはまあ、単純に何と言ってもサイズと身体能力。明らかにコンタクトスポーツの体育推薦のアスリート集団UNCと比べると、どうしてもMarquetteは一回り小さく、線が細い。
  • 4-5年生の圧倒的な実戦経験と、Street Smartさで何とか渡り合ったものの、特にGroundballやクリア、FOでの球際での競り合いと言った「地力」の部分で差が出ており、それがボディブローの様に後半に掛けて差を生んでいた
  • 改めて、大事ですね、フィジカル。

大舞台での経験、修羅場経験の差
  • もう一つはやはりここだろうか。UNCは毎年、毎週、Syracuse, Duke, Notre Dame, Marylandと言ったヘビー級の強豪とOTを含めた接戦を続けてきた。加えて(決勝にこそ絡めていないものの)毎年コンスタントにNCAA Tournamentにも出ている。試合のうち半分くらいはESPNUで全国放映されて来ている。
  • 対するMarquetteはここまでほとんどそういった経験が無い。今回のような大事な試合になった際のメンタルの「揺らぎ」の少なさの面でも分があったようにも見える。Marquetteにとっては5年間のチームの歴史の集大成で、最後までちょっと硬さが見られた。クリアで焦って自滅してしまったり、不要なラフプレーでMan Downを作って失点してしまったりと、やはりチームとしての経験の差に苦しんだ感じ。

4. Highlight




2016年5月10日火曜日

NCAA 2016 #11 Syracuse vs Duke

5月1日(日)のACC (Atlantic Coast Conference)のトーナメント決勝戦。Syracuse vs Duke。

1. Background

レギュラーシーズンの対戦では16-15でSyracuseが辛勝。

2. Recap

一進一退の攻防で接戦のままQ4まで。そこで雷雨による一時中止。再開後にSyracuseが爆発して、14-8で文句無しの勝利。

3. 見所

Syracuseのスティックスキル
  • 引き続き壮観。速くて正確なパス回しから、鋭くて正確なミドルシュートをズガンッと突き刺しまくっていた

Syracuse OFのスキップパスとロングシュート
  • 特に、戦術的に明確に意思を込めて、リスクを取ってやっていたのが、一枚飛ばすスキップパス。スライドを発生させた後に、Adjacent(隣)に出すんじゃなくて、更にその先、または更にもう一本先にズバッと投げる事で、フリーでのミドルシュートを多数作り出していた。
  • 恐らくDukeのGが若干弱いというのも勘案しての戦術じゃないかと。かなり効果的に決まっていた。

Syracuse Goalie #13 Evan Molloy (Jr./3年)の活躍
  • むちゃくちゃ反応早い。超Quick hand
  • 加えて、スティックスキルが高く、アウトレットパスがむちゃくちゃ速い
  • Goalieの選手が見て学ぶべき点が多い
  • お爺ちゃん、お父さんと史上初の3代続けてのSyracuseの選手との事
Dukeのクリアがかなり苦しんでる
  • 前回の試合、前々回の試合でも散々指摘されて来たが、クリアに苦しんでいる。
  • Long stickとGoalieのスティックスキルが若干不安なのと、なぜかShorty MFがハーフライン付近で走りきれずに押し出されるケースが散見される。せっかくDFが頑張ったのに、OFが出来ず、DFが疲弊するという悪い流れに。
  • この弱点は5月中旬以降のトーナメントまでにFixしておかないと必ず致命的になって来るはず
引き続き、MLL Draft 1位指名のDuke #15 MF Myles Jones (Sr./4年生)が無双っぷりを発揮
  • やはり、Paul Rabilほどの技術は無いものの、サイズと身体能力、荒削りながらもシュートとフィードは効果的。
  • Tournamentでも引き続き重要な選手の一人になる事は間違いない。




2016年5月7日土曜日

NCAA 2016 #10 Notre Dame vs Duke

Georgia州Kennasawで行われている最強リーグのACC (Atlantic Coast Conference) 4チームによるACCトーナメント準決勝2試合目、Notre DameDuke。今年のNCAAラクロスでも屈指の好カード。このまま5月のMemorial Day WeekendのFinal 4の準決勝、決勝で再び見る事になる可能性をひしひしと感じる。

1. Background

現時点でNotre Dameは9勝2敗の4位、Dukeは例年通りトーナメントにピークを持ってくる考えのため、シーズン序盤にいくつか負けてしまっており、9勝6敗で14位。但し、ここ1ヶ月で一気に完成度を上げてきており、例年のFinal 4鉄板チームに変貌しつつある。

2. Recap

来たよ。またクソ面白い試合。今年最高の試合をまたしても更新。レベル高すぎる&面白すぎる。例年ACCのトーナメントは毎年散々お互い試合している関係で、むちゃくちゃライバル心が高まっており、お互いにバッチバチに気合を入れて臨んでいる。試合中もエキサイトし過ぎて、ボールの無いところで報復で相手に肘打ちしたりスティックでぶん殴ったりと、NCAAにしてはちょっと珍しくやり過ぎなファウルが幾つか見られた。(双方そのMan Downで失点して反省していたが)

特にお互いのDFが相当完成度が上がっているため、前半非常に締まった展開から、後半に掛けて点の取り合いに。

Notre Dameが一度リードするも、最後にDukeが追いついてOT (Overtime)に。最後はMLLドラフト全体1位指名のDuke #15 MF Myles Jones (Sr./4年生)がダッジでゴリっと抜いてクリースにフィードを出し、Dukeのサドンデスの得点で試合終了。エンターテイメントとして毎週ホント楽しませてくれるよ、今年のNCAAは。

3. 見所

今回も見所多すぎて全部カバーできないので、ピンポイントで特に印象に残った点のみ何点か。

まずは何と言ってもNotre DameのNCAA最高峰のDF。マジで溜息でる。特にClose DF (ロングスティックDF 3枚)のフットワーク、チェック、スティックアップとパスカット、クリース前へのパック(凝集)、Swivle (首振り)による視野確保とコミュニケーション、スライドやスライドのスライド、スライド行く/行かないの判断等、DFの選手たちは本当に参考にしたい。相当な数のチェックやパスカットによるTurnoverを発生させていた。Duke相手に。マジで、DF見てるだけで楽しめるチームってそうそう無いが、NDは間違いなくその一つ。

Notre DameのHead Coach Keven Corrigan氏のベンチでの声に関するコメントが非常に印象的だった。何本かMFが基本的なパスミスでポゼッションを失ってしまったのだが、その際の怒鳴り声は、パスミスをした事ではなく、こぼれたボールを全力で走って追わなかった事に対して。常に120%でプレーする事を求めるCoach Korriganらしいエピソード。チームのメンタリティとして、生き方として、見習いたいなと。












2016年5月2日月曜日

NCAA 2016 #09 North Carolina vs Syracuse

4月29日(金)夕方、ACC (Atlantic Coast Conference) Tournamentの準決勝。シーズン終盤のカンファレンストーナメント。ACC 1位のNorth Carolinaと4位のSyracuseGeorgia州のKennesawにあるFifth Third Bank Stadiumにて。(ACCはカンファレンストーナメントは公平を期す目的と普及/マーケティングを兼ねて、敢えてホスト校ではなくニュートラルの会場でやる事が多い。)

1. Background

2週間前のレギュラーシーズンのリーグ戦での試合の再戦。前回は13-7でSyracuseが勝利。UNCはリベンジを狙う。

2. Recap

が、結果は10-7でSyracuseが再び勝利。

スタジアムのフィールドの芝生がまだ短く、両チーム共にズルズルに滑ってしまっていた。

となると、フィジカルと走力で勝負、ダッジで崩すことありきのUNCはきつい。逆に、スティックスキル最強のSyracuseにとっては持って来いの環境。パンパンパンっとパスを回して鋭いシュートをミドルレンジからズバッと決めまくって盤石の勝利。

ちょっとUNCはTurnoverやフライ時の混乱からのOffsideなど、基本的なミスが目立った。先週のNotre Dameからの金星でちょっと慢心してしまったか。

UNCはこれでもしかすると上位16チームが出場するNCAA Tournamentの出場権が若干厳しいか?という気もしないでもない。全体でも上位のNotre DameやDukeに勝っているので、まあ大丈夫かなとは思うけど。ただギリギリでの出場となると、1-2回戦で優勝候補と当たる可能性も高いだろうから、ちとFinal Fourで見られる可能性が下がるかなと。

3. 見所

にしても、やはり改めて、Syracuseのスティックスキルのレベルの高さが際立った。同じNCAA Division 1の上位校、ACCの強豪校であっても、ここまで目に見えて違うかねと。パスのスピードと精度、フロントコートのパス回しの際の「キビキビ感」が全く違う。「ズバッ!」「ビシッ!」と音が聞こえてくるような。加えてフリーで受けてからのシュートまでの早さと正確さ。速さ。完全にパス回しでUNCのDFを翻弄し、崩しきっていた。ここまでどフリーを作られまくるとかなり厳しい。

あと、正直今回はSyracuseのDFが素晴らしかった。かなり手堅く仕上がってきている。スライドのコミュニケーション、スライドのスライドや首振り、クリース前のパックも素晴らしいし、いやらしいチェックで結構ボールを落とし、スティックアップで頻繁にパスカットしていた。

あと、UNCの勝利の方程式の一つ、FOが勝てなかったのも痛い。SyracuseのFace Offer #37 Ben Williams (Jr./3年)がかなりボールを支配していた。現時点でStats的にもNCAA最強か?

いやー、こうやって見ると、やはりUNCは地元チームなので応援したいが、正直Syracuseがチームとして上だなと認めざるをえない。まあ、去年主力がゴソッと抜けたから仕方ないかね。

Syracuseはシーズン序盤若干苦しんだが、明らかに調子を上げてきている。Final Four行っても全くおかしくない感じ。Syracuseのスティックスキル全開の攻撃的ラクロス大好きファンとしては楽しみ。加えて、主力は結構4年生以外が多いように見える。来年がもしかしたらピークか?

正直UNCの敗戦は悔しいが、まあ、いずれにせよ、金曜夕方に酒飲みながら楽しくラクロス観戦出来たので良しとしますかね...


2016年4月27日水曜日

NCAA 2016 #08 Notre Dame @North Carolina

レギュラーシーズン、ACC (Atlantic Coast Conference)の最後の1試合、Notre Dame (1位)対North Carolina (13位)。地元North Carolina州Chapel HillのKenan Stadiumにて。

全米1位のNotre Dameとの大事な一戦という事で、気合を入れて会場で観戦。


1. Background

UNCは、4年生にとって最後のhome game。所謂、「Senior Day(4年生の送り出しDay)」。会場にも家族や生徒を含め、多くの地元ファンが詰め掛けていた。

生でNotre Dameを見るのは今年は初めて。2012年に前回アメリカを離れる前に何度か見て以来。現時点で9勝1敗の堂々の1位。かなり強いらしいという話は聞いていたので、非常に楽しみにしていた。

2. Recap

試合は、クッソ熱い展開に。前半はお互い一歩も譲らず手堅く得点を重ね、8対8の同点で折り返し。

Q3で、チームとして、そして個人としての差が露呈し、Q3にNotre Dameが14-9と突き放す。

この時点で、「あー、やっぱNotre Dame明らか格上だわー、無理ーつええよー」と観客が思い始めた矢先、Q4にNorth Carolinaが今年何度か見せてきた、異様なハートの強さを見せ、ぐいぐい追い上げ。Notre Dameのシュートが何本かパイプに当たる等の運にも恵まれ、気合いでまさかの同点、そして逆転、更に2点差へと突き放しての勝利。

いやー、まさか勝つとは思わなかった。これでUNCはACCで3勝1敗で1位。4チームで行われる今週末のACCトーナメントに1位シードで臨む事に。一回戦は先週負けているSyracuseと。勝って欲しい。

いずれにせよ、UNCは今年は昨年主力がごっそり抜けた事により、今年の成績は不安視されていた。シーズン前半こそ格下に負けて苦しんだが、後半はACCチーム3チーム(Virginia, Duke, Notre Dame)に接戦も含めて勝ちきり、いい感じで上り調子にある。いろいろ弱点はあるし、実力以上に気合と根性とメンタルで勝ち切ってる感じも正直あるが、それも含めて実力っちゃ実力なので、素直に嬉しいし、応援し続けたい。

16チームが参加するNCAAトーナメントでは、1回戦は明らかな格下と当たれば確実にBest 8までは進める見込みが高く、組み合わせ次第ではもう一つ勝ってFinal Fourに行く可能性もある。既にFinal FourのチケットとPhilly行きのFlightも抑え、応援する気満々なので、是非Final Four行きを決めて欲しい。

3. 見所

正直言って、敵チームながら、明らかに、客観的に見て、Notre Dameの方が強かった。

恐らくUNCの選手たちも、会場にいたファンもそれは感じたはず。

優勝候補筆頭として名前が上がるのも非常に納得の内容だった。いくつか記憶に残っているのは、

  • エース#50 AT Matt Kavanagh (Sr./4年)が突出して凄かった。ATとして今年のNCAAではトップクラス。怪我でシーズン当初出遅れたが、明らかに本来の実力を取り戻しつつある。スティックスキルも素晴らしく、視野もあって、むちゃくちゃ効果的なフィードを出してくる。フィジカルも強く、強力な下半身でグイッと抜く力もあり、シュートも特にLeftyで長距離で決められるため1-on-1も脅威。ボールを持つだけで流れを変えられる選手。
  • そのKavanaghとコンビを組む#24 AT Mikey Wynne (Sophomore/2年)のクリースの仕事人っぷりも凄い。むちゃくちゃ自分の役割を心得た、超Productiveな役回り。
  • あとは#16 MF Sergio Porkovic (Jr./3年)のサイズ、身体能力、突破力、シュート力はトップクラス。ゴリっと抜いて、背負ったまま強引に、安定した形で危険なシュートを打てる。まだ3年なので、来年のMLLドラフトで間違いなく最上位で指名されるはず。個人的には、DukeのMyles Jonesよりもこっちのが本格派/正統派大型MFって感じかと。Notre Dame伝統の、でかくてフィジカル強い屈強なMF軍団を継ぐ選手。
  • 全体を通して、OFがものすごくDisciplined(規律に満ちていて)、手堅い。1-on-1でATからも、MFからも、しかも2nd/3rd stringでも抜けて、スライドを発生させられて、プレッシャーのある中安定したパス回しで、かなり高い確率でフリーで危険なエリアからのシュートに繋げられている。現時点でここまで完成度の高いオフェンスを遂行しているのは、恐らくNotre DameとDenverの2チームだけじゃないかと。やっぱり優勝するチームってこういう感じだよね、という印象を受けた。
  • 伝統の強力な、そして保守的でよーく訓練された、Disciplined DFは健在。ゴール前にぎゅーっと凝集してクリース前をパック。危険なシュートを極力打たせない。派手だがリスキーなチェックは絶対にしない。脚で着いて行く。スライド正確。スライドのフェイクも状況判断で繰り出して相手を混乱させている。コミュニケーションも物凄くしっかり取れてる。スティックアップや首振りなどの基本も出来ており、パスカットでのTurnoverを結構な頻度で発生させている。
  • 2008-2012年に見ていた頃は、Notre Dameと言えば、①超優秀なGoalie、②でかくて動けてものすごく訓練されてて手堅いDF陣、③でかくて走れて強力なシュート打てるMF陣、という3点セットが毎年の定番だったイメージ。どうやらここ数年のチームには、それに加えて当時は弱点と言われていた、④NYやMaryland出身の、スティックスキルの高いエリートAT陣が揃っちゃってる。明らかにDenverと比べても総合力が上に見える。
  • 強いて言うなら、毎年NCAAを代表する守護神Goalieを輩出してきた伝統のポジションであったはずのGoalieが今年はちょっと弱いか?特にQ4での6失点は、「ん?Goalie止められないか?」と思ったシュートも何本かあった。これがトーナメントでどう出るか。
  • まあでも、それも引っくるめて、やはり現時点ではNCAA内では一番Championっぽい感じかなと。







2016年4月25日月曜日

NCAA 2016 #07 North Carolina @Syracuse

4月16日(土)の、North Carolina対Syracuse戦。Syracuseの本拠地Carrier Domeにて。

1. Background

ACC  (Atlantic Coast Conference)の強豪2校の対決。それぞれUNCは11位、Syracuseは9位と現時点でトップランクからは多少落ちているものの、それぞれFinal Fourは狙えるレベルのチーム。

Syracuseは前回の記事でも書いた通り、NCAAトーナメント優勝10回で最多。

Syracuseのホーム、Carrier Domeは、全天候型のドームスタジアムで、大学ラクロスの世界で最も手強いと言われるコート。

一般的に、日本の関東学生リーグと違い、NCAAではほとんどのリーグ戦がいずれかの学校のコートで行われる(通常特にリーグ内の試合では、1年ごとにホームコートを交代しているケースが多い)。また、広いアメリカの中でのバスや飛行機を乗り継いでの長距離移動、ホテル滞在、移動中の食事や疲労から、どうしてもアウェイチーム(ゲストチーム)は遠征先で本来の力が発揮できないケースが多く、逆にホームチーム(ホストチーム)は、いつも自分達が生活している大学の寮のベッド、食事、友人、環境に囲まれ、練習と同じノリで、慣れたコートでの試合。加えて、通常千人を超える家族、学生や、地元ファンが訪れるため、圧倒的に応援の面でAdvantageがある。

従って、NCAA Lacrosseでは、一般的にホームのチームの方が明らかにAdvantageがあるというのが共通の理解。イメージ、実力が拮抗した2チームが試合をする場合、ニュートラルの会場での勝率が50/50だとすると、ホームでの勝率は60/40か70/30くらいまで振れる感じじゃないだろうか?実際に選手の躍動感や集中力が如実に違うのが見て取れるケースも多い。

特にここ数年のように下位チームがより強くなり、実力が拮抗したリーグになってくると、かなり頻繁に格下のホームチームが格上のゲストチームを倒すというUpset (番狂わせ)が起きてくる。

そんな中でも、SyracuseのCarrier Domeは有名な、「やりたくない場所」として知られている。

Inside LacrosseのPodcastでも触れられており、今回の映像を見ていくつか感じるのは、
  • 地元ファンの数が圧倒的に多い。特に他の大都市と違い、他のスポーツ娯楽やプロスポーツチームが少ないため、大学関係者/卒業生/家族以外の、普通の地元市民にとって、ある意味地元のプロスポーツ的な応援の対象になっている
  • ドームの会場が少ないため、周囲の見え方や照明の感じなど、恐らく単純な「慣れ」の問題があるはず(他のチームにとっては2年に一度のドームでのプレー。Syracuseにとっては毎週試合してるおなじみのホームコート)
  • 人工芝がちょっと特殊なのかな?とも思える。UNCのメンバーが結構Ground ballでスティックのヘッドがザクッと刺さったり、後半如実に疲労が脚に来てるように見える。
従って、UNCにとっては恐らく実力以上に苦しい戦いが予想された一戦。

2. Recap

案の定、序盤からUNCは苦戦。逆にSyracuseは水を得た魚の様に、正にSyracuseのお家芸、Fast breakや、スティックスキルに物を言わせたパスワークからの美しいシュートでの得点を積み重ねる。

UNCはちょっと強みを発揮できず。Duke戦で爆発したATの1-on-1も決まらず、単純なパスミスやTurnoverを重ねてしまう。

結果、13対7で危なげなくSyracuseが圧勝。まあ、納得。

両者はACCのトーナメントで再戦する可能性も高い。次回の会場はニュートラル。本来の実力ベースでの対決になるはず。どうなるだろうか。

3. 見所

たくさんあるが、敢えて絞りに絞って数点。

やはり、Syracuseのオフェンス。Up state New York (New York州北部)伝統の、インドアに根ざしたハイレベルなスティックスキルを存分に見せてくれた。

特に印象に残ってるのは、
  • Q1残り14分の1点目。日本のラクロス選手たちも十分にお手本に出来る、Fast breakでの教科書通りの得点。
  • あとは、セットオフェンスやEMO中の、クリースで貰ってからのクイックのシュートの打つまでの早さと正確さ。Q2の6点目、7点目、8点目。
  • あとは、前回のDuke戦でも触れた、#48 MF Sergio Selcido (Jr./3年)のダッジのキレとShooting on the run。Q1 残り9分の2点目。3点目のオフボールで抜いて、貰ってクイックでのミドルもえげつない。





2016年4月21日木曜日

NCAA 2016 #06 North Carolina @Duke

ちょっとずつ時間軸を前後しながら、過去の試合を消化。今回は、4月9日(金)の夜にNorth Carolina州DurhamのDuke大学のKoskinen Stadiumで行われた、UNC vs Dukeの試合。

1. Background

UNCとDukeと言えば、大学スポーツのみならず、アメリカのスポーツの世界に於いて最も有名なライバル関係の一つ。特に両校共に全米最強クラスのバスケでは、毎年のリーグ戦でお互いの会場で行われる2試合はもはや恒例の一大イベントになっており、チケットも席によっては軽く数十万の金額に高騰している。

共にNorth Carolina州のTriangle Areaに位置し、UNCのChapel HillとDukeのDurham(ダーラム)は正に目と鼻の先の位置関係。車でものの15分程度の場所にある事もあり、地元住民を巻き込んでの、青対水色の対立関係が出来ている。(ちなみに僕が住んでいるのはUNCの本拠地Chapel Hillなので、当然UNCのファンという事に。)

ラクロスはさすがにそこまでの注目度は無いものの、毎年レギュラーシーズン、ACCトーナメントで、プライドを掛けたバチバチの熱戦を演じている。

2. Recap

結論から言うと、今シーズンこれまで見てきた6試合の中で最高の試合!いやー面白かった!夜寝る前にうっかり見始めて、興奮して眠れなくなっちゃったパターン。これぞNCAA Lacrosse!このエキサイティングさこそがラクロスの醍醐味だよね!と改めて実感させられた試合。ああ、ラクロスファンで良かった!と思わされた。点の取り合いで、いろんな選手が持ち味を発揮して、いろんな形で活躍し、DFやGの見せ場もあり、FOやGBの攻防もあり、正にラクロスの全てが詰まった素晴らしい試合。

例えば、家族や親戚、ラクロスを知らない友人、新人勧誘のターゲットの新入生たちにラクロスを紹介するために見せるなら、こういう試合じゃね?っていういい例。

3. 注目したい点

いくつか、選手として、チーム戦術として、そしてスキル面で、非常に面白かったり、勉強になった点があったので箇条書きでザッと洗い出し。

Duke #15 Myles Jones (Sr./4年)がやっぱりとんでもねえ

1月に行われたMLL (Major League Lacrosse)のドラフトで堂々の全体1位指名。今年のTewaaraton Trophy (MVP)候補筆頭。むちゃくちゃすごいという話は聞いていた。一方で、前回見たSyracuseの試合では、そこまで活躍しておらず、「そんなに凄いんか?」と思ってしまっていた。

が、今回の試合を見て完全に認識が変わった。やべえっす。参りました。マジえげつねえ。そりゃMLL 1位指名になるよね、っていう。

フィジカルがエグいのは周知の事実。身長196cm、体重109kg。MMA(総合格闘技)でも余裕でヘビー級。反則のサイズ。引き続き、小学生の試合に大人が一人ポツンと混ざっちゃったね状態。で、身体能力も突出。安定してるし、動ける。当たって容赦なく相手をなぎ倒していける。

で、今回は、スキル面/巧さをかなり見せてくれた。まず、シュート恐ろしい。今回の試合ではやばいコースにズガンッと決めている。

合わせて、結構驚かされたのが、フィードのスキルの高さ。さすがに4年間毎年早めのスライドをされまくってきた事もあってか、かなり視野を確保して精度の高いフィードを出し、いくつもアシストしている。なんと5得点6アシストの活躍。全16得点のうち11点に絡む怒涛の活躍…まじ一発で黙らされました。これはUS代表級ですわ…

それに対するUNCのDF戦略も面白い

面白かったのは、前半、敢えてセオリーに反し、Myles Jonesに対してShorty (Short Stick DFMF)を付け、代わりに超早めのスライドで対応しようとした点。おそらくUNCにでかくてフィジカルの強いLSMFがいないが故の苦肉の策/Creative Solutionか?

ところが、これがうまくいかず、逆にJonesに自由自在にフィードを出されて失点。

後半に入ってZoneに切り替え。これが結構ハマってTurn overを誘発。この辺のDFの戦術的な駆け引きは非常に面白い。

Dukeやっぱり完成度上がってきてる

前回のSyracuse戦の記事でも紹介したが、毎年DukeのCoach Danowski氏は明確にピーキングをトーナメントの決勝に持ってきており、前半の試合は敢えて試行錯誤/学習させるために負けを許容している。ちょうどレギュラーシーズンも終盤に差し掛かり、例年DukeがチームとしてのIdentityを発見し、徐々に優勝候補に変貌するタイミング。

今回の試合でも、負けはしたものの、明らかにチームとしてより良いラクロスをしていた。今後トーナメントに向けて一気にトップに躍り出てくる気もする。5月の末のMemorial Day Weekend (Final 4)で見られる可能性も結構高い気がする。

UNCのAT #0 Steve Ponterello (Sr./4年)のXからの1-on-1が素晴らしい

今回の試合で6得点と爆発。去年までJimmy BitterやJoey Sankeら偉大な先輩たちの陰に隠れ、ATとしての存在感は薄かった。

が、すげえ実力者なのねって事がここ数試合で明確に解って来た。

特にXからのダッジの一歩目の踏み出しの鋭さ、そこからの爆発的なスピード、GLE (Goal Line Extended - ゴールライン)を超えてからのFade Awayでのスティックの軌道を体で隠しながらの鋭いシュートと精度。無茶苦茶素晴らしい。ATの選手は何度も見直して、完コピを目指して反復練習したい動き。

身体能力だけで見たときに、そこまで足が速いようにも見えないが、とにかく一歩目の踏み出しの鋭さ。相手を出し抜く切り返しの動き。真似できない動きじゃ無い。

あと、物凄くお手本にしたいのは、裏からの1-on-1からの振り向きざまのシュートを、左右両方で同じように鋭く決めている点。これは絶対に数万本の反復練習の成果。これが利き手でしか抜けない/決められないのと、左右の選択肢があるのでは、DFの守りにくさが圧倒的に変わってくる。一人で完結する形で1-on-1でここまで得点できると、相当な戦力になる。是非とも見習いたい。



2016年4月18日月曜日

NCAA 2016 #05 Virginia @North Carolina

週末にちょっとずつDVRに撮り溜めした過去の試合を消化。今回は4月9日の試合。ACC (Atlantic Coast Conference)のConference内での試合。20位のVirginiaを11位のNorth Carolina (UNC)が迎え撃つ。

1. Background

ACCは現代のNCAA Lacrosseの中では明らかに最高峰のリーグになっている。Notre Dame, Duke, Syracuse, Virginia, UNCと競合がゴロゴロ。

が、今年は各チーム前半に格下にポロポロ負けてしまっており、現時点で順位が低くなってしまっている。

特に5度の優勝を誇る伝統強豪校のVirginiaがここまで苦戦しているのは時代の移り変わりを感じる。2011年のAT #6 Steele Stanwickを擁しての優勝以来、明らかに低迷してしまっている。開幕前は今年こそは復活の年かと言われていたが、残念ながらそうはなっていない。

2010年に、男子ラクロス選手が元交際相手の女子ラクロス選手を殺害するという痛ましい事件があり、全米でニュースになった事もあり、明らかにそれ以降リクルーティングでも苦しんでいるように見える。

このままだともしかしてトーナメント出場すらキツイか?昔から多くのラクロス選手が憧れて来た学校。Virginiaが強くないとやはり盛り上がらない。応援したいところ。

2. Recap

地元Chapel HillのUNCにとっては毎年恒例のDukeと並ぶライバル対決。バスケ、フットボールと並び、ラクロスでのVirginiaとの対決は毎年ヒートアップした激戦になる。僕が前回Chapel Hillにいた2012年には負けており、今回は勝って欲しいところ。そうは言っても相手はVirginia、接戦になるのは間違いないと思っていた。

が、蓋を開けてみるとまさかの展開。UNCのオフェンスが爆発し、Virginiaを粉砕。前半から一気に突き放し、そのままゴール祭りとなって試合終了。16-8の圧勝であっけなく終わってしまった。

3. 見所

が、いくつか今年のNCAAラクロスを見る上で非常に示唆のある試合ではあった。

UNCのオフェンスがハマると強力

なるほど、UNCのOF Coach、David Metzbower氏はこれがやりたかったのね!と思わず納得。「ザ・全員オフェンス」が炸裂。ゴリゴリとダッジでスライドを発生させ、フリーの選手を作り、そこから確実にいいシュートを打って決める。スライドが来なければそのまま直接シュート。

得点者が10人で16得点。AT、MF、しかもMFの2nd Stringが結構点を取っている。これは相手DFからすると、スカウティングで的を絞れない上、LSMF以外のところから結構失点するリスクがあり、結構嫌な相手のはず。

UNCのゴーリーの#30 Brian Balkam (Sophomore/2年)がかなり来てた

14セーブの活躍。結構大事な場面でバシッとセーブしてた。今回の試合は素晴らしい。

UNCのFace Offer #24 Stephen Kelly (Jr./3年)がFOを圧倒的に支配

25分の17で7割。ここまでFOを支配できると明確にPossessionの時間に差を生める。Virginiaは相当きつかったはず。特にDFは休む時間を与えられなかったので、相当泣きそうだったはず。

最強クラスのFace Offerを擁したDenverの試合ではかなり苦戦しており、やはり、「無敵」ではない感じか。それでも格下の試合を落とせないNCAA Tournamentの1-2回戦ではかなり重要な役割を演じる事になるはず。

Virginia大丈夫か?

ちょっと、明らかに昔のVirginiaに比べて格が下がっているのが明確に感じられる。前回見たHopkins戦と比べても、明らかにダメな部分が露呈してしまった。

Goalieが心もとない。明らかにカモられてる。セーブすべきシュートをセーブ出来ていない。

DFも連携が取れておらず、スライドに行けてなかったり、スライドのスライドがガラ空きだったりという状況が散見される。

名門のATも、元CornellでMVPだった現MLLのRob Pannellの弟、#32 James Pannell (Sr./4年)がエースという事になっているが、兄程のカリスマやインパクトは感じられず、膝の怪我に苦しんで動きも良くなく、シュートも枠に行っておらず、明らかに本調子ではない。

スティックスキルで勝負するSyracuseを始めとした「北のラクロス」に対して、身体能力、サイズ、走力、Gound Ballで勝負する、「南のラクロス」を体現するチームだったはず。伝統のでかくて走れてエグいシュート打ってくる容赦ないイメージのあったMF陣も、今のチームは数段落ちる感じだし、優勝時代は常に攻撃の起点になっていた伝統の怒涛のGround Ballの強さも感じられない。寄りで負けているし、フィジカルの強さが感じられない。

ぶっちゃけ、明らかに集まっている選手の素材の質が落ちていると感じる…正直リクルーティングでTop of topの高校生選手を集められてない感じか…

この試合の敗戦によりVirginiaはとうとうRanking圏外(25位未満)にまで降格。このままだとNCAA Tournament出場は本当に厳しくなってしまう。

このVirginiaの低迷はファンとしてはなんとも悲しい。Head coachのDom Starsia氏はラクロス界を代表する素晴らしいコーチ。なんとか引退前にもう一花咲かせて頂きたいと個人的には感じてしまう。

2016年4月11日月曜日

NCAA 2016 #04 Syracuse @Duke

3月26日(土)のSyracuse (5位) vs Duke (11位)。

1. Background

Dukeは、2006年の現John Danowski HC就任以来、2010, 2013, 2014年と、過去6年間で3度優勝。現時点ではNCAAラクロスの世界でトップを走る学校。(ちなみにDukeはバスケでも大学バスケ最高のヘッドコーチ、コーチKことCoach Mike Krzyzewski=マイク・シャセフスキーがいる)

Coach Danowski氏は例年明確にChampionshipにピークを持ってくるピーキングの考え方を実行しており、シーズン序盤はあくまで学ぶべきことを学ぶ場として使っており、結構序盤に「え?この相手に?」という相手に負ける事が多い(レギュラーシーズン15試合なので、多少負けてもトーナメントに出られるので。この点、一つでも余計に負けるとPlay Offに出られなくなる日本の学生リーグとちょっと仕組みが違う)。今年も例に漏れず、この試合の時点でHarvard, Richmond, Air Forceと、明らかな格下チームに負けている。 トーナメントまでの準備期間も残り少なくなってきた中、どこまでまとめて行けるか。ちなみにAssistant Coachには息子で2008年の準優勝メンバー、MLLのMatt Danowski氏が入っている。

Syracuseは誰もが認める、大学ラクロスを引っ張ってきたチーム。NY州北部のラクロスの盛んなエリアで、NCAA史上最多の10界優勝を誇り、Gait brothersやPowell brothers等、過去のラクロス界を代表する選手を輩出してきた。が、2009年の優勝以来タイトルから遠ざかってしまっている。(Virginia, Hopkins同様、80年代、90年代の強豪校がここ数年苦戦している例の一つ)

2. Recap

またしてもアツすぎる試合展開。最初にSyracuseが先制して逃げ切るかと思いきや、Dukeがぐっと追いつき、逆転。その後Syracuseが気合で追いつきOT (Over Time)に持ち込み、最後はサドンデスの劇的幕切れ。

あれ?今年見た4試合今の所全部OTだ…やはり今年のNCAAラクロスはかなり面白い。

3. 注目ポイント

いくつか、記憶に残った選手を紹介。

実は今回意図的にDukeの試合を見たのは、一人、絶対に見ておきたかった選手がいたから。Duke #15 MF Myles Jones (Sr./4年)。MLL全体1位指名。身長196 cm、体重109 kg。ぶっちぎったサイズと身体能力の持ち主。すごいすごいという話は聞いていたが、実際に試合を見た事がなかったので是非とも見てみたいと思っていた。実際に今回の試合でもOFMFとして無双っぷりを発揮。単純に、でけえ&身体能力が違う。正直言って、小学生の試合の中に一人ぽつんと大人が混ざってる感じ。あれ?一人だけ巨人がいる…っていう。ボールを持ったら、一人でかなり高い確率で決まりそうなシュートにまで持っていける。相手が押してもビクともせずにズドンとシュートを打てる。この素材はえぐい。ザ・規格外。ただ、どうでしょう、例えば、Paul Rabilのような、でかさと身体能力に加えた、えげつない上手さは感じないか?強引なダッジからえぐいシュートを打ってくるが、洗練されたステップワークやパス、シュートの正確さを感じさせる訳ではない。シュートの精度にもちょっと不満が残る。荒削りのまま4年性になってる感じか?ただ素材としては文字どおり何十年に一度のレベル。MLLに行って急成長しないかな?きついかな?ただまあ単純にEntertainmentとして見てるだけで盛り上がるのは間違いない。

あと、Syracuse全体のBreakやUnsettled situationでのオフェンスの「楽しさ」は健在。HCのCoach Desko氏は、敢えてシステムや決め事を作らずに、選手の創造性を尊重して自由にやらせる事に定評がある。崩れた状態でのUpstate NY出身のStick skillに優れた選手たちの華麗なパス回しからの目の覚めるシュートは、やはり見てて最高に盛り上がる。ボックスラクロスのような華やかさがある。ポゼッション超重視、リスクを取らずに、丁寧に丁寧に崩してフリーを作る、決め事の多い現代ラクロスにおいて、個人的にはやはりどうしてもSyracuseを応援したくなる。

Syracuseのオフェンスはやはり皆Stick skillが高く、Agilityもあって相変わらず強力なのだが、今回一人「うおっ」と思わされたのが、#48 MF Seogio Salcido (Jr./3年)のダッジのキレ。一歩の大きさと速さ、鋭さが、明らかに群を抜いている。ダッジ一発で観客を沸かせられる。ダッジを強みにしたい選手は見習いたい。

あとは、全体を通して、Duke #4 AT Chad Kohan (Sr./4年)、#10 MF Deemer Class (Sr./4年)の4年生OFコンビがものすごく効率的に点を取っている。#15 Jonesに対してLSMFがベタ付きする中、空いたスペースでShorty相手に伸び伸びと得点を重ねている。特に7得点の大活躍を見せているClassのLeftyのダッジとシュートは圧巻。背負ってのシュート、かわしてのシュート、Time & Room (スタンディングでのシュート)の正確さ、速さは圧巻。反復して見直して参考にしたい選手。最後の試合を決めるKohanのクリースでの持ち替え二回で狭い空間で相手をかわしてのシュートも芸術的。

Dukeは明らかに一つ一つ課題を克服して、チームとして少しずつ完成度が高まってきている感じ。明らかにチームとして機能し始めている。恐らくこのままACCトーナメントでグッとまとめていって、5月のNCAAトーナメントで一気に優勝候補としての本領を発揮してくるはず。心配な点がいくつかあるとすると、Gがちょっとセーブ力に難ありかな、というのと、結構クリアがShaky(不安定)な感じがする点かな。この辺をトーナメントまでにどこまで修正してこられるか。OFは間違いなく強いし、今後もっと精度を増してくるはず。





2016年4月3日日曜日

NCAA 2016 #03 Johns Hopkins @Virginia

3月27日(日)のJohns Hopkins at Virginiaの試合。Virginiaのホーム、Charlottesvilleにて。

1. Background

過去四半世紀に渡って長くラクロスの世界を引っ張ってきた伝統校の双璧。多くの伝説的US代表選手、MLL選手達を輩出してきた2校。

Virginiaは2011年にエースでTewaaraton Trophy Winner (MVP)のAT Steele Stanwickを擁して優勝して以来、NCAAではFinal 4に到達しておらず、長きに渡る低迷期に突入。今年はPre-Seasonで7位と、復活の兆しを見せている。

Johns Hopkinsも、長らくラクロスのメッカとして知られてきたMaryland州Baltimoreを本拠にし、80年代に複数回優勝し、最強の名を欲しいままにしてきたが、その後低迷。2005年、2007年に、後に世界最高のラクロスプレーヤーとも言われるMF Paul Rabil擁して2度優勝。その後また10年近くタイトルから遠ざかってしまっている。

双方に言える事は、やはり昔と違ってラクロスがKids/Junior世代で大幅に拡大してしまった事で、昔のように限られた数の有力選手を幾つかの強豪校が独占する、という状況が崩れてしまい、あらゆる学校にNCAA Division 1の一線で活躍できるレベルの選手が溢れてしまった事による、"Parity(戦力均衡)"の時代に突入して以来、苦戦が続いているという点。その辺の歴史的な背景、アメリカラクロス界のMacro Dynamicsを勘案すると、この試合に対するいろいろな示唆が見えてくる。

ちなみに、両チームに、数年前のエース級のATの弟の選手がいる。4-5年前にNCAA Lacrosseを見ていたファンにとっては懐かしい名前。

Virginia #32 AT James Pannell (Sr./4年)は、Cornell 2013で準優勝経験者、現MLLのRob Pannellの弟。見た感じ、兄ほどのぶっちぎった選手ではないが、それでも尚Xからの1-on-1や視野は安定している。

Hopkinsの#32 AT Shack Stannic (So./2年)は上記のVirginia出身のSteeleの弟。兄同様、今時珍しいTraditional MeshのStickを使っているのが印象的。こちらも兄ほどのインパクトは感じないか。

Hopkinsは名物HC、鬼軍曹のCoach Dave Pietramala氏が病気で欠場中。Assistant Coachによる陣頭指揮。

2. Recap

はいまたクソ面白い。また取って取り返しての点の取り合い。シーソーゲーム。そしてOver TimeからSudden Deathでの劇的な幕切れ。

なんか、明らかに、5-6年前と比べても、接戦、そしてOver Timeの数が増えている。(おそらく統計的に証明できるはず。)戦力均衡の影響がこの辺にも出ているのだろう。NCAA Lacrosseがより面白くなるという意味では素晴らしい限り。

3. Skill

全体的に、ATの選手達のXからの1-on-1からの振り向きざまのシュートが印象的。解説者で元Hopkins/MLL ATのRyan Boyle氏が、何度かコメントしているが、やはり試合中に、我慢して最後のもう一歩表側に踏み出す/走る事で、角度/シュートコースが大きく広がり、ニアだけでなくファーにも打てる事になり、シュート成功率が圧倒的に上がるというコメントが印象的。

あとは、Virginia #1 MF Greg Coholan (Sr./4年)のQ2のシュートが速過ぎて鼻血出そうになった。

Hopkins #8 LSMF Patrick Foley (Fr./1年)のFOでの活躍、そこからのOF参加とフィードを受けての得点が印象的。Under 19代表との事。Long stickが速攻後に残ってOF参加するシーンが更に多く見られるようになっている。

てな感じっすかね。いやいや、なかなか楽しめました。


2016年4月2日土曜日

NCAA Basketball 2016 Final Four

ええっと…結局その後数週間全くラクロスに時間使えておらず。

言い訳がましいんですが、仕事は落ち着きつつあるものの、実はもう一つの観戦対象であるCollege Basketballの方が大盛り上がりしちゃってまして。今シーズン応援し続けてきた地元Chapel HillのUniversity of North Carolina (UNC) Tar Heelsが快進撃を続けており、March Madness (3月の狂気=男子バスケ全米大学選手権)でFinal 4まで駒を進めており、そっちの応援と観戦で完全にフリータイムのシェアを奪われちゃってるっていう…

今年はトーナメント初戦も含めて4試合ほど会場で観戦、それ以外も重要な試合はがっちりテレビでフォローしてきた。

非常にドラマのある、感情移入させられるチーム。

  • UNCのバスケ部は、全米でも最も歴史のある強豪校の一つ。Michael JordanやVince Carterの出身校。例の、水色のチームカラー、NとCの組み合わさった、あのマークは、国民で知らない人がいない程の、「大学バスケと言えば」という認知度のチーム。
  • NBA選手6人を要した強力なチームだった2012年のチームが抜けた後に入学した1年生たちが、その後低迷の3年間を経験。多くの批判に晒されてきた
  • 加えて、現在いるバスケ部の部員が、という訳ではないが、UNCの運動部の一部の選手達に対してAcademic面での不正行為が行われた事が発覚し、一大スキャンダルに
  • 今年は、シーズン開始時にランキング1位で大きな期待を受けながらも、序盤にいくつか格下からUpset(番狂わせ)を喰らった事で、「結局こいつらメンタル弱えじゃん。結局今年もDisappointingなんだろ?」と批判され
  • ところが、シーズン終盤にかけ、上級生のリーダーを中心に、ぐっと奮起し、立て直し、Duke, Notre Dame, Virginia等に一度負けながらも次の対戦でことごとく雪辱し
  • ついには、4年生の入学以来の目標だった、ACC(Atlantic Coastカンファレンス=関東学生リーグ、みたいな)のレギュラーシーズンの優勝、トーナメントでも厳しい戦いを制して優勝
  • その過程で、上級生が「俺がこの試合ぜってえ負けさせねえ!」という気合いに満ちたプレーを見せ、下級生や控えの選手たちもグイッと成長し、活躍し出している。
  • トーナメントに入っても、前半苦戦しながらも、後半実力と選手層の差を発揮し、着実に4回戦まで勝ち抜いて、ついに悲願のFinal 4に

やべえ。あちい…マジで優勝して欲しい…ここまでの苦労や試行錯誤を見てきてるが故に尚の事。

今週末に準決勝、決勝。祈ってます。(で、終わったら、ちょっとずつラクロスに時間使い始めようかなと…)






2016年3月21日月曜日

Powerade Commercial - Derrick Rose

3年ぶりにアメリカに帰ってきて、少しずつ生活も落ち着いてきて、テレビやインターネットでいろんなスポーツを見る余裕が出てきた。

今は正にMarch Madness(3月の狂気)、NCAA Men's Basketball Tournamentの真っ最中。応援する地元Chapel HillのUNC (North Carolina)は、今年は比較的いいチームで、優勝候補の一つと目されており、今週のFirst Round, Second Roundを危なげなく勝ち上がり、来週はSweet 16 (Best 16)で、同じく伝統的強豪校のIndianaと対戦。今から楽しみだ。

さて、その試合の放映中に目にしたCMで、心の琴線に触れたものが一つあったので紹介。アメリカは日本と違い、Commercial Filmに与えられる時間の枠が長く、また文化の違いもあり、結構Short Movieのように雰囲気や音楽やストーリーで感動させるもの、泣かせるもの、シビレさせるものも多い。前回の連載時にもちょくちょく紹介してましたが(「CM」のラベルを参照)、いいものがあれば自分自身のメモとしての意味合いも含め、載せていこうかなと。

スポーツ飲料のPoweradeの宣伝。NBAのChicago Bullsを率いてきた、元MVP、Derrick Roseをフィーチャーしたもの。

彼の子供時代の、Chicagoのダウンタン南部のEnglewoodの貧しいコンクリートの街並み。そこで、Michael Jordanに憧れ、ボロボロの自転車でChicago BullsのホームスタジアムであるUnited Centerに行き、いつかそこでプレーする事を夢見る少年。

そして、実際にそのUnited Centerのコートでプレーする事になった現在。American Dream, Hoop Dreamを象徴する一本。

「We're all just a kid from somewhere」「結局、俺ら皆、最初は、どこかの場末の街並みで、片田舎で、夢を持ってたただのガキだろ?」っていう。皆そこから上がって行くんだぜ、っていう。アメリカの貧しい街や、そこでの貧困や、教育や、ドラッグや、犯罪や、そういういろんなネガティブな面を見て、自分自身、日本を出て、企業経営のフィールドで、世界の舞台で戦おうと決めて、その最も厳しいリーグであるCorporate Americaでやって行こうと決めて、Chicagoで一歩目を踏み出して、これまで歩んで来て。こういうの、何か熱くなるなと。思わずインスピレーションを貰ってしまった。


2016年3月19日土曜日

NCAA 2016 #02 Denver @Notre Dame

今年2試合目の観戦。これも素晴らしい試合で存分に楽しめた。YouTubeに試合がアップロードされてるので転載。

1. Background(背景)

シーズン序盤の頂上対決。Ranking 1位のNotre Dameがホームで昨年王者でRanking 2位のDenverを迎え撃つ。今年のTournamentの決勝になってもおかしくない好カード。

この2チームは昨年はTournament準決勝で相見えており、激闘の末、延長サドンデスの劇的なゴールでDenverが決勝に進み、そのままMarylandに圧勝して優勝。

両者共にこの5年で急激にトップに躍り出てきた、西の雄2校。伝統的にラクロスの盛んな東海岸北部ではなく、Denverは西部のColorado州、Notre DameはMid West (中西部)はIndiana州。この10年でラクロスの裾野が全米に広がり、有望な高校生選手が西や南からも輩出されるようになった事で、リクルーティングで地の利を生かし一気に躍進。

ラクロス新時代を代表するライバル校2チームの対決。過去5年間、毎年のように接戦を演じ、ほとんど毎回Overtimeまでもつれ込んでいる。

まあしかし、本当にスポーツや産業の競争環境ってダイナミックに変わるものなんだなと改めて思わされる。2000年前後の、VirginiaやPrincetonやJohns Hopkins等の伝統的強豪校がラクロス界を牛耳っていた当時、「2016年の1位2位って、DenverとNotre Dameだよ」と言われて、信じられる人なんていただろうか?

2. Recap(試合の見所)

あ、熱すぎる…早朝から絶叫してしまった。マンガかと。

序盤Notre DameのOFが苦しみ、一方のDenverがいつもの手堅いStick skillからの得点を積み重ねる。が、後半Notre Dameが一気に追い上げ。ハラハラドキドキの展開に。やべえ。面白い試合が多い。今年。

これだよ。これこれ!この手に汗握るエキサイティングな試合。だんだん思い出してきましたよと。NCAAラクロスの面白さ。

3. Skill(技術)

数点に限定して、技術的に印象に残っている点、学びたい点をピックアップ。
  • 前回も紹介しましたが、MVP候補、Denver #40 AT Conor Cannizzaro (Junior/3年)のシュート。Q1終了間際のキャッチからシュートまでの早さ。ボールをもらう時点で完全にシュートの体勢を作り、クレードル無しでクイックに、正確に、速いシュートを突き刺している。反復してコピーしたい技術。あと引き続き、XでのStep work、姿勢と、視野。Change of Pace, Change of Direction、ジグザグの動きでDFをズラし、安定した上半身と広い視野からクリース前に精度の高いフィードを送る。素晴らしい。現時点でのNCAAのATとしては間違いなくトップクラスだろう。ATの選手は本当に参考にしたいお手本のような選手。
  • またしても、Denver #33 OFMF Zach Miller (Junior/3年)のスティックスキル。NY州北部のNative Americanの部族出身。Iroquois Nationals。Indoor/Box Lacrosse出身。相手を背負ってのプレッシャーを受けながらの狭い空間でのプレー。正確なシュート。2試合連続でのサドンデスゴール。何だ?この勝負強さ。恐ろしすぎるわ。そして、Iroquois伝統のなびく後ろ髪の三つ編みがマジカッコイイ。

4. Strategy(チーム戦術)

こちらもポイントを絞って。
  • Denverの弱点として明らかになりつつあるのが、やはりBack courtの弱さ。特に去年から代替わりで大きくメンバーが入れ替わっているDF/Gの経験の薄さと、特にクリアの弱さがちょっと気になる。例年優勝するチームはこう言った際立った弱さが無いチームがほとんど。今後トーナメントまでに修正していかないと、スカウティングに基づいた「傾向と対策」で相手チームにゴリゴリ突いて来られるはず。ここからどう修正して行くか。
  • 引き続き、DenverのExtraman Offenseが極めて効果的。解説者のQuint Kessenich氏も指摘しているが、Denverに対しては、「ファウルしたらほぼイコール失点」。正確で速いパス回しで、DFを確実にスライドさせ、1対0を作って、正確なシュートで確実に得点している。ここまで高い成功率で得点が保証されると、トーナメントで接戦になった際に極めて強い。決して煌びやかなスーパープレーで得点する訳でもなく、ただただ基本に忠実で正確な、セオリー通りのプレー。それが一番高価的な得点源になっているという事実。EMOのメンバーは是非参考にしたい。
  • Mandownで失点してはいるが、やはり、Notre Dame伝統の超堅牢ハーフコートDFは健在。ギューッと絞りに絞って、クリース前をパックし、基本に忠実なStick upと、首振りによる視野確保、コミュニケーションで、とにかく危険な位置にボールキャリアを入れない。リスクの高いOver the head check等はせずに、細かいフットワークでビタッと着いていき、確実に流し切る&GLEで押し出し切る。DFの選手たちがお手本にするならこういうDF。